「共同参画」2012年 7月号

「共同参画」2012年 7月号

連載 その2 女性首長から

こどもにやさしいまちから男女共同参画社会づくりへ
沖縄市長 東門 美津子

沖縄市は、世界40カ国余の国々の人々が暮らす国際色豊かなまちであり、伝統文化と異文化が融合する「芸能・音楽のまち」として、エイサーをはじめ、ジャズ、ロック、民謡、琉球舞踊等々、沖縄の戦後文化を創造・発信してきました。しかし、一方では、今なお市域面積の約35%を米軍基地が占め、基地から派生する事件・事故は、市民生活に不安と負担を与え、基地の問題はまちづくりにおいても大きな制約要因となっています。

私は市長就任以来、「人こそ力、人こそ財産、人こそ希望」を市政運営の信条に、市民一人ひとりが輝くまちをめざして、まちづくりに取り組んでいます。

男女共同参画社会は、人間尊重と信頼の下に、未来への希望を一人ひとりが実感できる、人間らしい、やさしい社会を実現することだと考えます。しかし、残念ながら、まだ、多くの人々が暴力や貧困などによって人間としての尊厳を傷つけられ、厳しい生活を余儀なくされる状況にあります。

沖縄においても、度々米兵による女性の人権を蹂躙するような事件が起こり、また、DVや児童虐待という痛ましい状況に、改めて行政の役割と責任を感じずにはおれません。

沖縄市では「男女共同参画推進条例」の制定をはじめ、男女共同参画社会づくりの活動拠点となる「男女共同参画センター」を整備するとともに、「男女共同参画計画(ひと・きらめきプラン)」に基づき、男女が社会の対等な構成員として、社会のあらゆる分野に参画する機会が確保され、利益を等しく享受し、共に責任を担う社会の実現に向け取り組んでいるところです。

男女共同参画社会を押しすすめる上で、男女が社会の一員としての誇りを持ち、自らの人生をポジティブに生きることが大切であり、そのための環境を整え、支援することが行政の重要な役割だと考えます。

本市では、母子生活支援施設(レインボーハイツ)を建替え、生活環境が厳しい状況にある母子の自立支援や、就労支援センターを設け、専門の相談員による子育て世代などへの就職支援・スキルアップに力を入れているところです。

市民生活の基盤づくりをすすめながら、「元気のある、やさしい社会」をつくるために、私は「こどもが宝」を市政運営の柱の一つに掲げ、「こどものまち」を宣言するとともに、国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ(キジムナーフェスタ)の開催など、こどもたちの未来を創る事業を推進しています。

こどもは社会の鏡であり、こどもたちが未来に向かってすくすくと育つ環境をつくることは、福祉、教育のみならず、産業の振興や雇用、そして生活の安定、家族の絆や地域コミュニティの形成など、人が幸せに暮らすための社会の実現にほかならないと考えます。

私は、こどもにやさしいまちは、すべての人にやさしいまちであることを確信しています。そのためには、こどもたちの今が輝き、すべてのこどもたちに等しく未来の可能性がもたらされる社会を大人たちが協力して築かなければなりません。そして、その不断の努力こそが、人間尊重や貧困問題、あるいは、ジェンダーやポジティブアクションなど、男女が共に協力しながら解決していくための土壌になるものと考えます。

沖縄市長 東門 美津子
とうもん・みつこ/1942年生まれ。66年、琉球大学卒業。69年オハイオ大学大学院修士課程(コースワーク)終了。その後、クバサキ・ハイスクールの教諭として勤める。91年より沖縄県国際交流財団専務理事を務める。94年沖縄県副知事に就任。2000年6月衆議院議員に就任し2期務める。2006年5月沖縄初の女性市長として沖縄市長に就任、現在、2期6年を迎える。