「共同参画」2012年 6月号

「共同参画」2012年 6月号

取組事例ファイル/団体編

全国女性農業委員ネットワーク

1.農業委員会・農業委員とは

農業委員会とは、農業者の公的な代表で構成する行政委員会で、全国約1,700の市町村に設置されています。基本的な役割は、(1)農地の権利移動の許認可業務、(2)地域農業の振興、(3)農業者の公的代表としての意見の公表、行政庁への建議等です。農業委員会の委員は、地域の農業者から選挙で選ばれた者と関係団体や市町村議会に推薦された者になります。

農業委員は、農業者の公的な代表であり、女性の登用促進が期待されています。

2.女性農業委員組織の活動

女性農業委員による自発的なネットワークづくりは、1997年に発足した「鹿児島県女性農業委員の会」をスタートに都道府県段階から広がりました。現在では37府県で女性農業委員組織が設立され、個々人の能力向上の取り組み、女性農業委員同士の交流のほか、登用促進に向けた研修会や、県知事等への要請活動など積極的な取り組みをしています。また、多くの県で女性組織が出来たことを受け、2011年3月には全国組織として「全国女性農業委員ネットワーク(会長船ヶ山美津子(宮崎市農業委員会))」が発足し、全国の女性農業委員の声をまとめて社会へ発信しています。

3.女性農業委員の増加

全国女性農業委員ネットワークの取り組みの成果として、女性農業委員は増加しています。2011年7月(沖縄県では9月)に、3年に一度の農業委員統一選挙が行われ、2,059人を超える女性農業委員が誕生しました。これは、全農業委員36,080人の5.7%にあたり、初めて女性の割合が5%を上回る事になりました。

従来、農業委員のほとんどは男性でした。実際、平成8年では、農業委員60,997人のうち、女性は394人(0.6%)と、きわめて稀な存在でした。その後、男女共同参画社会基本法が施行(1999年)され、また地域での女性の活躍もあり、徐々に女性農業委員数は増加していきます。第17回農業委員統一選挙が行われた2002年には、初めて2,000人を超え、約4%を女性が占めることとなりました。その後、市町村合併等の影響があり、農業委員数自体が大幅に減少する中、女性の人数も減少しましたが、今回の選挙で再び2,000人を突破することとなりました。

また、栃木県と山口県では、全ての農業委員会で女性農業委員が誕生しました。

4.さらなる活躍に向けて

農業者の約半数が女性ということを考えれば、女性農業委員の割合が5.7%というのは、まだまだ少ないといえます。また、4割以上の農業委員会では、女性は一人もいません。農業委員会で、唯一の女性委員というのは、プレッシャーを感じることもあるかもしれません。そのため、最初の一人になるには勇気や覚悟が必要となることもあるでしょう。また、実際に女性が農業委員になる際には、家事などが多く女性によって担われているという現状を考えれば、家事や生活の面などから、家族の理解、支援は欠かせません。

全国女性農業委員ネットワークは、すべての農業委員会で複数の女性農業委員が登用されるとともに、女性農業委員が、地域のため、農業のために活躍できる環境作りを進めていきます。

図1 女性農業委員数の推移
図1 女性農業委員数の推移

2011年3月に32の府県女性農業委員組織を会員として発足。現在37会員。活動の目標は、(1)女性ならではの感性と生活者としての視点を活かし、「行動する農業委員」としての活動を果敢に進めていくこと、(2)女性の農業委員への更なる登用・選出に向け、相互研さんと情報の交換・共有を行うこと、(3)農業政策に対する意見の公表、女性農業委員の組織化と組織活動の強化に取り組むこと、の三点。