「共同参画」2012年 2月号

「共同参画」2012年 2月号

取組事例ファイル/企業編

福井県済生会病院

ワーク・ライフ・バランスの充実までの経緯

福井県済生会病院では「病院の差は中で働いている職員の差」であり、高い職員満足度(以下ES)が患者さんに満足していただける医療サービス提供につながると考えています。その指標の一つとして、毎年満足度調査を実施しています。2006年と2007年の結果から課題として挙がったのが、5~10年目のES低下でした。この年代は結婚、出産、子育てと体力的にもメンタル的にも厳しい年代の職員層であるとともに、専門職業人としてのキャリアを積んだ重要な戦力であり、組織を牽引する貴重な人材です。そこで、ES向上を目標として、ワーク・ライフ・バランスを充実させる為の様々な取組を開始しました。

まず2007年の年度目標を「働き甲斐のある職場を目指して」と設定。ESの高い企業をベンチマークし、特に女性の働きやすい職場の理由を探りました。また、NPO法人ejnetの働きやすい病院評価事業(ホスピレート)に参加し、認証を受けました。院内では「働き甲斐のある職場作り」や「看護師の離職防止」などのワークアウトプロジェクトを実施。2008年度からの3カ年ビジョンでは更に、BSCの学習と成長の視点に「職員満足度を2倍にする」を掲げ、人材育成に関する内容を盛り込みました。

取組内容

具体的な取組では、選べる勤務体制、子育て支援、キャリア支援がまず挙げられます。選べる勤務体制、子育て支援では、多様な勤務体制(看護部では約20種類)を導入しました。例えば育児・介護中などの職員を対象に短時間正職員制度や夜勤免除制度を設け、1時間から勤務可能なパート職員を多く雇用しました。24時間院内保育も利用可能です。またキャリア支援では、認定看護師などの資格取得をバックアップし、自己実現への動機づけを高めています。専門性の高い職員の活動の場は院内だけに留まらず、地域での講演会や連携施設での指導など、地域全体の医療の連携の為に活動を広げています。

さらに働き甲斐を高める為、CS(患者満足度)向上セミナーやリーダー研修など勤務年数に応じた研修や、理念に沿って行動した職員を表彰するホスピタリティー賞など、職員自身が自分の存在意義を感じることができる制度を導入しました。また、職員と家族のコミュニケーションを目的に慰安旅行では家族同伴の対応もしていますし、2010年からは小学生の職場体験も開催しています。その他、リフレッシュ休暇(1週間程度)取得は全職員に義務化。職員の健康サポートの面では、定期的な健康診断、各種ワクチン(インフルエンザ、サーバリックス等)の接種補助、無料乳がん検診、メンタルヘルスケアなどを実施しています。

職員満足が患者満足へ

このような取組の結果ESは向上し、全国平均よりも高水準の結果となりました。また、ESと連動してCSも年々向上しています。ESの高い職員によってより良い医療サービスが提供され、結果CS向上につながったと考えられます。今後もESとCSの更なる向上の為に、職員全員で取り組んでまいります。

病院全景
病院全景

福井県済生会病院プロフィール
済生会は明治天皇の「恵まれない人々のために施薬救療し、済生の道を広めるように」という済生勅語によって1911年に創立されました。そして当院もその済生の心を受け継ぎ1941年に開設され、昨年70周年を迎えました。現在、病床数466床、職員数約1200名の地域中核病院となっています。保健・医療・福祉を統合した「地域で支える病院」を目指して、地方でも最新の医療サービスを安心して受けられる体制を整えています。