「共同参画」2012年 2月号

「共同参画」2012年 2月号

連載 その3 女性首長から

ワーク・ライフ・バランスで進める協働のまちづくり
三鷹市長 清原 慶子

三鷹市は、東京都のほぼ中央に位置し、江戸時代には徳川将軍家の鷹場がありました。1950年に三鷹町から三鷹市となり、高度成長期以降、都心から近い高環境高福祉の住宅地として、1973年には日本で初めて公共下水道100%完備を達成し、1970年代から市内7つのコミュニティ住区ごとのコミュニティセンターを公募市民による住民協議会が管理運営するなど、先駆的な取り組みを行っています。また、山本有三、太宰治、武者小路実篤、吉村昭、津村節子といった文人が多く住み、市立美術館である「三鷹の森ジブリ美術館」があることも誇りです。

さて、私は1970年代後半、大学院の学生であった頃、三鷹市の第1次基本計画を検討する「まちづくり市民会議」に学生代表の委員として委嘱されました。最年少で学生で女性である私は、書記の仕事を任せられるなど、極めて先駆的な「市民参加」の原点を経験することができました。その後、1999年から2001年までは、市長と公募市民との「パートナーシップ協定」に基づく最終登録メンバー375人の「みたか市民プラン21会議」の共同代表の一人を務め、基本構想と第3次基本計画について白紙からの素案を市に提出し、それに基づく市の案に意見を表明するという「協働」の経験もしました。こうして、私は市長就任前に、市民の当事者として、女性も、男性も、世代を超えて行う「市民参加」と「協働」を経験してきました。

市長就任後、「みたか市民プラン21会議」の提言を基礎に、参加と協働による自治のまちづくりの基礎となる「三鷹市自治基本条例」を2006年4月1日に施行しています。第12条には「市は、国が批准した国際規約等で確認されている人間の尊厳、自由、平等及び持続可能な発展を実現するため、市の役割と責任を明確にし、率先して行動するよう努めるものとする」と男女平等参画を含む「市の率先行動の基本原則」を定めています。

三鷹市政の特長の一つは多くの分野にわたる「民学産公の協働」であり、今年度は第4次基本計画の策定と、20を超える個別計画の策定・改定時期にあたることから、無作為抽出で選ばれた約100人の市民の参加による「まちづくりディスカッション」も行いました。参加者は活発に意見交換を行い多くの提案がなされました。

三鷹市は、2010年3月3日に厚生労働省の奨励事業の一環として「三鷹市 仕事と生活の調和推進宣言」を行いました。現在、2003年1月に策定された「三鷹市男女平等行動計画」を基礎に「男女平等参画のための三鷹市行動計画2022(仮称)」を策定する過程にありますが、男女平等参画審議会では、ワーク・ライフ・バランスを重点課題の一つに据え、市民、事業者、そして市の協働で取り組むという方針で検討されています。すなわち、性別に関わらず一人ひとりがそのライフスタイルやライフステージに応じて、職場・家庭・地域等で個性豊かな生活を送るというワーク・ライフ・バランスによる男女平等参画社会の実現を目指していくことが確認されているのです。

財政的に厳しい時代にあるからこそ、私は市民の皆様と協働で、ワーク・ライフ・バランスによる地域社会の活性化をはかるとともに、男女を問わず市の職員の人財育成にもさらに努力を続けたいと思います。

三鷹市長 清原 慶子
清原 慶子/きよはら・けいこ 慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程を終えて、ルーテル学院大学文学部教授、東京工科大学メディア学部長・教授等を経て、平成15年4月から三鷹市長(現在3期目)。