「共同参画」2011年 12月号

「共同参画」2011年 12月号

連載 その4

「PKOで活躍する女性たち」
内閣府国際平和協力本部事務局(PKO)

「女性、平和、安全保障」から11年

前回ご紹介した歴史的な決議である、安保理決議1325(女性、平和、安全保障)には、紛争下における男女のニーズの違い、性暴力は戦争犯罪であり、女性や子どもを性暴力から保護すること、PKOを含む平和構築のすべての活動へジェンダーの視点を入れると同時に女性の十全な参画を徹底することが盛り込まれていましたが、その後も実行力を強化するために、昨年までに更に4つの決議が採択されました。10年目の昨年はPKOの現場でのジェンダー主流化の効果をまとめた報告書が国連から提出されました。その中では、主に実績のあった分野として、治安部門改革で警察や軍に女性を増やしたこと。選挙に女性の参画が増えたこと、今まで見落とされてきた元女性兵士以外の紛争に関わった女性層(スパイ、料理係、メッセンジャー、性労奴隷等)を広げ、社会復帰参加へ女性の数を増やしたことや、PKO要員に女性が増えたことで、受け入れ地域の治安が良くなったこと、性暴力の報告が上がってくるようになったこと等が挙げられています。

女性のみの警察部隊─インド他

リベリアでは1989年から2003年まで14年にわたって内戦があり、停戦後、リベリア・ミッション(UNMIL)が2003年に駐留した後も女性への性暴力が絶えませんでした。2007年の2月、インドから112名の女性のみの警察部隊がUNMILへ派遣されました。インド隊は大統領官邸周辺と近隣の村や町のパトロールを徒歩で行いました。彼女たちのおかげで強盗が65%減少し、女性たちに安心感が広がった等の報告がなされました。インド隊に続き、他のPKOでも、2010年にはバングラデシュの女性警察部隊がハイチに派遣、少数ですが同年、サモアの女性のみの警察部隊がルワンダへ派遣され活躍をしています。

また、UNMILのジェンダー部門が現地の女性団体と協力して、特にDDRR(武器の撤収、軍の解体、社会復帰と統合)に多くの女性を平和構築の主体者として参画させました。2005年にはアフリカ初の女性大統領としてエレン・ジョンソン・サーリーフ氏がリベリア共和国大統領に就任。UNMILはリベリア警察と軍の20%は女性にと目標を掲げ、大統領の強いリーダーシップと協力体制のもと、2010年までに警察の15%が女性となりました。同様に、東ティモールでもUNMIT(東ティモール統合ミッション)の支援の下、2010年には東ティモール警察の20%が女性となり、双方とも紛争後の治安回復を女性たち自身の手で行う模範の姿を示しています。

図1 警備をするインド女性警察部隊。
2007年より半年毎に要員を交代し現在も駐留している(2011年8月、リベリア)

図1 警備をするインド女性警察部隊。2007年より半年毎に要員を交代し現在も駐留している(2011年8月、リベリア)
(c)UN Photo/Staton Winter

図2 任期を修了し、記念式典で表彰されるバングラデシュ女性警察部隊(2011年4月、ハイチ)
図2 任期を修了し、記念式典で表彰されるバングラデシュ女性警察部隊(2011年4月、ハイチ)
(c)UN Photo/Logan Abassi

日本の女性自衛官の派遣も

日本もPKOに女性自衛官を2002年から累計50人を派遣してきました。今年3月には、UNMITの軍事連絡要員に女性自衛官初の個人派遣を行いました。彼女の業務は、現地の村落等を訪問し、地元首長や国家警察などから治安情勢等に関する情報をUNMIT本部へ報告するものでした。彼女は特に女性や子どもとの接触を心がけたとのことで、紛争時の女性への性暴力被害を聴収する機会もあったようです。このような情報は、紛争被害者の支援のみならず、和平プロセスの中で課題となる当事者間の和解と移行期正義(補足参照)、法制度整備支援を含む包括的な平和構築支援へとつながっていきます。女性が女性へ行う支援は重要であり、国連は2014年までにPKO要員の20%を女性にするとの目標を定め、加盟国へ更なる強化を呼びかけています。

(内閣府国際平和協力本部事務局 国際平和協力研究員 与那嶺 涼子)

補足

「移行期正義(Transitional Justice)」とは、独裁政治による圧制や、紛争後に、その国が民主主義国家へと移行するときに過去に起きた甚大な人権侵害に対し、当事者双方が結果と向き合う努力のこと。被害者への補償、裁判、法整備等を行い、敵対している当事者間の和解を促進し、平和定着、民主主義社会の基礎を作ることになる。