「共同参画」2011年 9月号

「共同参画」2011年 9月号

行政施策トピックス

女性に対する暴力に関する専門調査会報告書『「女性に対する暴力」を根絶するための課題と対策
~パープルダイヤル(性暴力・DV相談電話)の結果を中心として~』の概要について

内閣府男女共同参画局推進課暴力対策推進室

内閣府においては、平成22年度補正予算において、配偶者からの暴力や性暴力の被害者を対象とした電話相談「パープルダイヤル-性暴力・DV相談電話-」を開設し、緊急かつ集中的に電話相談を行いました。パープルダイヤルでは、配偶者からの暴力に加えて、政府としては初めて性暴力による被害や男性からの相談に対応するとともに、外国人の相談者向けに6か国語による対応を行いました。原則24時間相談を受け付けることにより、潜在化している被害者に相談を促し、期間中、2万件を超える相談対応を行いました。パープルダイヤルの実施を通じて、女性に対する暴力被害の深刻な状況と支援の課題等が改めて明らかになったことから、女性に対する暴力に関する専門調査会において、それら課題を中心に、配偶者からの暴力や性暴力の防止と被害者の保護に関する更なる取組について、4回にわたり議論を行いました(第53回~56回)。平成23年6月、『「女性に対する暴力」を根絶するための課題と対策~パープルダイヤル(性暴力・DV相談電話)の結果を中心として~』(報告書)を取りまとめたので、本稿では、本報告書の内容について御紹介します。

1 「パープルダイヤル-性暴力・DV相談電話-」について

(1)実施期間:平成23年2月8日午前10時から3月27日午後10時までの48日間

(2)相談の対象:配偶者からの暴力の被害に関する相談、性暴力の被害に関する相談

(3)電話相談の種類:女性相談者向け、急性期の性暴力被害女性向け、男性相談者向け、外国人相談者向けの4回線

(4)結果概要

(ア)女性相談者向け回線に寄せられた、配偶者暴力に関する相談8,970件

・10代から70代まで幅広い年齢層から相談が寄せられた。

・加害者は、「配偶者等」81.0%、「交際相手等」16.9%。

・4人に1人(26.8%)が10年以上暴力を振るわれ続けていた。

(イ)急性期の性暴力被害のうち、強姦・強制わいせつに関する相談540件

・相談者のうち「10代」15.0%、「20代」27.8%。

・午後10時から翌朝8時までの間にも全体の3割の相談が寄せられた。

・加害者は、「知っている人」57.4%、「知らない人」15.7%、「不明・無記入」26.9%。

(ウ)男性からの相談1,378件

・配偶者からの暴力に関する相談、暴力の加害に関する悩み、その他日常生活に関わる不安、問題、悩み、社会や会社への不満等様々な相談が寄せられた。

(エ)外国人からの相談879件

・配偶者からの暴力に関する相談、地域での人間関係、在留資格、子どもの教育に関する悩みなど、在日外国人として日本で暮らす中での様々な悩みが寄せられた。

2 課題と対策

(1)女性に対する暴力の予防と根絶のための基盤づくり

ア 職務関係者に対し、被害者の置かれた立場を理解し、必要な支援を行うための研修が必要ではないか、またそのような支援を行うことができる専門職員の養成・配置が必要等との課題が指摘された。

【対策】 職務関係者に対する研修の充実、相談しやすい体制等の整備/男性を対象とした意識啓発、若年層向け予防啓発の実施

(2)配偶者等からの暴力の防止及び被害者の保護等の推進

ア 官官・官民の連携を進め、すべての地域において適切な被害者支援を行うことができる体制づくりが必要。また、連携体制を構築することの必要性や、関係機関の連携の中核を担う配偶者暴力相談支援センターの市町村レベルでの設置の促進が必要である等の課題が指摘された。

【対策】 地域における関係機関・民間団体の緊密な連携の促進/市町村における配偶者暴力相談支援センターの設置の促進

イ 被害者に過重な負担を掛けることなく支援を行うことが必要、また、地方公共団体内の関係者が連携し回復支援を行うことが必要等の課題が指摘された。

【対策】 ワンストップ・サービス(複数の手続きを一つの窓口で行えるようにすること)の構築、同行支援等の推進

ウ 各地域の支援体制などの状況に合わせ、男性に対する幅広い相談から加害者更生までニーズに応じた支援体制を検討、開発していくことが必要等の課題が指摘された。

【対策】 加害者に対する取組の情報収集、調査・研究

(3)性犯罪への対策の推進

ア 関係機関の連携した体制づくりと研修制度の確立の必要等の課題が指摘された。

【対策】 性犯罪被害者を支援する警察などの関係機関、医療機関、民間支援団体などの連携の強化

イ 性犯罪被害に適切に対応できる体制の構築と、二次被害防止のための専門の相談窓口が必要等の課題が指摘された。

【対策】 ワンストップ支援センター(医師による心身の治療、医療従事者、民間支援員、弁護士、臨床心理士による支援、警察官による事情聴取等の実施が可能なセンター)の設置の促進

ウ 性犯罪に関する諸外国の動向を踏まえて、強姦罪をはじめとする性犯罪を見直すべき等の課題が指摘された。

【対策】 強姦罪の見直しなど性犯罪に関する罰則の在り方の検討

エ 被害をすぐに相談できる体制づくりが必要等の課題が指摘された。

【対策】 被害を相談しづらい原因究明とそれに基づく啓発、体制づくり

(4)男性からの相談への対応

男性相談窓口の増加と男性相談に対応できる相談員の養成が必要等の課題が指摘された。

【対策】 男性相談窓口の周知、相談体制の充実

(5)外国人からの相談への対応

外国人相談窓口の更なる周知と通訳者の養成が必要等の課題が指摘された。

【対策】 外国語対応可能な相談窓口の周知、通訳の手配など関係者の連携

3 まとめ

本調査会においては、「第3次男女共同参画基本計画」及び本取りまとめに基づく関係府省、地方公共団体、関係機関等の取組の進捗状況を注視し、必要に応じて更なる取組を促すとともに、今後、女性に対する暴力の根絶に向けた更なる実効的な取組について議論を進めていくこととしています。