「共同参画」2011年 8月号

「共同参画」2011年 8月号

特集

子ども・若者白書
内閣府子ども若者・子育て施策総合推進室

内閣府子ども若者・子育て施策総合推進室では、平成23年6月7日(火)に、平成23年版子ども・若者白書を公表しました。ここでは、そのポイントを紹介します。

1 はじめに

「子ども・若者白書」は、「子ども・若者育成支援推進法」(平成21年法律71号)に基づき毎年国会に提出することとされている年次報告書で、法定白書としては、今回で2回目の作成になります。

この白書は、「第1部 子ども・若者の現状」、「特集」及び「第2部 子ども・若者に関する国の施策」から構成されています。

2 子ども・若者の現状

第1部の「子ども・若者の現状」では、子ども・若者関連の各種データに基づき、子ども・若者の現状について明らかにしています。

主なポイントとしては、以下のようなものがあります。

(1)子ども・若者人口

子ども・若者(0~29歳)人口は、3,723万2,000人(総人口の29.1%)であり、子ども・若者人口及び総人口に占めるその割合は、昭和50年以降ほぼ一貫して減少しています(図表1参照)。

図表1 子ども・若者人口及び総人口に占める子ども・若者人口の割合の推移
図表1 子ども・若者人口及び総人口に占める子ども・若者人口の割合の推移

(2)正規の職員・従業員以外の雇用者比率(在学者を除く)

若者について、雇用者(役員を除く)に占める正規の職員・従業員以外の雇用者(在学者を除く)の比率をみると、15~24歳では、30.4%となっています。

(3)若者の失業状況

若者失業率は、平成21年以降、景気後退の影響から上昇しています。また、全年齢計との比較では、常に高い状態が続いています(平成22年は、全年齢計5.1%に対し、15~19歳9.8%、20~24歳9.1%、25~29歳7.1%)(図表2参照)。

図表2 若者失業率の推移
図表2 若者失業率の推移

(4)フリーターの状況

フリーターの人数は、平成15年の217万人をピークに減少が続いていましたが、平成21年に増加に転じ、平成22年は183万人と2年連続の増加となっています。年齢階級別にみると、15~24歳が86万人と前年に比べて1万人減少し、2年ぶりの減少となっています。25~34歳は97万人と、6万人増加し、2年連続の増加となっています。

(5)若年無業者の状況

若年無業者(15~34歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者)の数は、平成22年には60万人と、前年より3万人(4.8%)減少しており、ピーク時の64万人と比べて4万人(6.3%)減少しています。

内訳としては、15~19歳が9万人、20~24歳が15万人、25~29歳が15万人、30~34歳が17万人となっています。 なお、参考までに、35~39歳の無業者についてみると、平成22年に21万人となり、近年、緩やかな増加傾向にあります。

(6)児童虐待の状況

全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は増加を続け、平成21年度には4万4,211件(前年度比3.6%増)となっています(注)。

虐待の内容では、平成21年度は身体的虐待が39.3%と最も多く、次いでネグレクトが34.3%、心理的虐待が23.3%となっています。 また、児童養護施設への入所理由については、「父母の虐待・酷使」4,542件(14.4%)、「父母の放任・怠だ」4,361件(13.8%)が近年多くなっています。一方、父母の離婚や行方不明は大きく減少しています。

3 高等学校中途退学者の意識と求められる支援

今回の特集では、高校中退後概ね2年以内の者が、どのような困難に直面しているかなどについて調査した「高等学校中途退学者に対する全国調査」(内閣府調査、平成23年3月公表)の結果を踏まえ、高等学校中途退学者の意識や求められる支援等について紹介しています。

(1)高卒の資格の必要性

中退したことを後悔していない者の割合(46.9%)が後悔している者の割合(23.7%)を上回る一方で(図表3参照)、中退後に高卒の資格が必要だと考えた者の割合は78.4%に上っています(図表4参照)。

図表3 高等学校を辞めたことを後悔しているか
図表3 高等学校を辞めたことを後悔しているか

図表4 中途退学後に高卒の資格は必要だと考えたか
図表4 中途退学後に高卒の資格は必要だと考えたか

高等学校中途退学者を支援する際には、中途退学したことに対する後悔の低さと高卒資格は必要だという認識の高さという一見相反する感情を抱えている者がいることに留意する必要があります。

(2)現在していること

現在していることとしては、「働いている」が56.2%、「在学中」が30.8%となっています(図表5参照)。

図表5 現在していること(複数回答)
図表5 現在していること(複数回答)

働いている者の内訳としては、「フリーター・パートなど」が77.2%と非正規職員が多くなっています(図表6参照)。

図表6 現在「働いている」人の内訳(複数回答)
図表6 現在「働いている」人の内訳(複数回答)

(3)世帯構成

高等学校中途退学者の家庭は、ひとり親世帯の比率が相対的に高い状況が見られました。経済的な問題も含め複合的な問題を抱えている可能性があり、その要因を見極めた適切な支援を行っていくことが必要です(図表7参照)。

図表7 ひとり親世帯の割合
図表7 ひとり親世帯の割合

(4)求められる支援

本調査の対象者にとって必要なものを見ると、「進路や生活などについて何でも相談できる人」が66.6%、「生活や就学のための経済的補助」が63.1%となっています(図表8参照)。

図表8 必要なもの
図表8 必要なもの

7つの質問項目中5つの項目で半数以上の人が「必要」あるいは「ある程度必要」と回答しており、支援のニーズは高いと言えます。

4 子ども・若者に関する国の施策

第2部では、「子ども・若者育成支援推進法」に基づく大綱として、施策の基本的な方針等を定めた「子ども・若者ビジョン」(平成22年7月23日子ども・若者育成支援推進本部決定)の構成に沿って、平成22年度を中心とする子ども・若者に関する国の政策について紹介しています。

 その章立ては、以下のようになっています。

第1章 子ども・若者育成支援施策の総合的・計画的な推進

第2章 すべての子ども・若者の健やかな成長の支援

第3章 困難を有する子ども・若者やその家族の支援

第4章 子ども・若者の健やかな成長を社会全体で支えるための環境整備

第5章 今後の施策の推進体制等

今回は、第1章で、「子ども・若者ビジョン」について、子ども・若者(中学生以上30歳未満の300名)の意見・評価をメールを通じて聴取した結果を記載しています。

その中では、「子ども・若者ビジョン」に「共感」できるとした意見が4割程度を占めており、「子ども・若者ビジョン」の基本的な方向性は子ども・若者から賛同を得ていると思われますが、「非共感」・「分からない・分かりにくい」の意見も2割程度あり、今後は、子ども・若者の立場に立って、具体的な例示や分かりやすい用語を用いて説明すること等により、「非共感」・「分からない・分かりにくい」の割合を減らすことが求められます。

また、この度の東日本大震災で被災した子ども・若者に対するケアは重要な課題であり、本白書でも「トピック」として項目を立て、政府の行っている様々な支援(児童相談所職員のチームによる各避難所の巡回、教職員の加配措置、教科書給与、就学支援等)について紹介しています。

5 コラム

さらに第2部では、コラムとして、国や地方自治体の施策の掘り下げや民間団体等の子ども・若者への支援等を取り上げています。今回紹介しているものは以下のとおりです。

(1) タイ・ミャンマーの子どもたち支援事業(大分県青年国際交流機構)

(2) アウトリーチ(訪問支援)研修に参加して(特定非営利活動法人こうべユースネット)

(3) 非行少年を生まない社会づくりの推進について(警察庁)

(4) いじめからの立ち直りについて(開善塾教育相談研究所/特定非営利活動法人東京シューレ)

(5) 児童ポルノ問題の根絶を目指し公開シンポジウムを開催(内閣府)

(6) 「青少年のインターネット利用環境実態調査」結果から見えてきたこと(内閣府)

(7) 「1億人のネット宣言もっとグッドネット」を目指して(安心ネットづくり促進協議会)

(8) 「神奈川県青少年保護育成条例」の改正について(神奈川県)

(9) 人権の花運動(法務省)

(10) 東日本大震災における若者等によるボランティア活動への支援(独立行政法人国立青少年教育振興機構)

(注)平成22年度の相談対応件数の速報値は55,152件(宮城県、福島県、仙台市を除いて集計した数値)となっています。

 (平成23年7月20日公表)