「共同参画」2010年 4・5月号

「共同参画」2010年 4・5月号

特集

第54回国連婦人の地位委員会
「北京+15」記念会合の開催
内閣府男女共同参画局総務課

今年は、1995年に北京で第4回世界女性会議が開催されてから15年になります。その節目の年である本年3月1日~12日に開催された第54回国連婦人の地位委員会(「北京+15」)の概要をご紹介します。

第54回国連婦人の地位委員会(「北京+15」)が2010年3月1日から3月12日まで国連本部(ニューヨーク)で開催され、141ケ国の代表団及び464のNGO等が参加しました。日本政府からは西村智奈美外務大臣政務官を首席代表に、目黒依子日本代表、林陽子女子差別撤廃委員会委員、NGO代表(3名)、外務省(本省及び国連日本政府代表部)、内閣府、厚生労働省、文部科学省、農林水産省、JICAの計21名からなる代表団が出席しました。

会合の様子
会合の様子

今次国連婦人の地位委員会(CSW)は、1995年に開催された第4回世界女性会議(北京会議)から15年目にあたることを記念し、「北京宣言及び行動綱領」及び第23回国連特別総会「女性2000年会議」成果文書の実施状況の評価をテーマに開催されました。

会合では、我が国も含む各国代表や国連機関、NGO代表等によるステートメントの発表、「ミレニアム開発目標達成に向けた『北京宣言及び行動綱領』実施のインパクト」をテーマとしたハイレベル円卓会合、各種テーマ(「ミレニアム開発目標達成及び『北京行動綱領』実施との関連性」、「『北京行動綱領』実施の既存のギャップと課題に関する地域的観点」、「女子差別撤廃条約採択30周年記念」、「国際経済金融危機における女性の経済的エンパワーメント」、「女性に対する暴力撤廃努力キャンペーン」、「ジェンダー平等に関する国内機構の変化する役割と地位」)での対話型専門家パネル等が行われました。

我が国からは、西村外務大臣政務官が、3月5日にステートメントを発表しました。

ステートメントを発表する西村外務大臣政務官
ステートメントを発表する
西村外務大臣政務官

ステートメントでは、「ジェンダーと開発(GAD)イニシアティブ」に基づきODAにジェンダーの視点を適切に反映すること、メリハリをつけた実効性のある第3次男女共同参画基本計画を策定していくこと、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の2度にわたる改正を含む女性に対する暴力根絶のための取組を報告するとともに、男女共同参画社会実現に向け国際社会、国際機関、NGO等の市民社会との今後の一層の協力の強化について強い決意を表明しました。また、国連ジェンダー新機関に関する議論について、国連における女性分野の活動が有機的な連携を図り、より効率的・効果的に実施されるよう積極的に貢献していくこと等を述べました。さらに、女子差別撤廃委員会の林陽子委員が本年6月の選挙で再選を果たし、引き続き女性の地位向上に貢献していくことへの希望を表明しました。

3月1日のハイレベル円卓会合では、目黒日本代表より、「北京行動綱領」及び「女性2000年会議」以降、男女共同参画の国内機構の強化や法的整備が進んでいること、昨年男女共同参画社会基本法制定10周年を記念したこと、第3次男女共同参画基本計画を策定中であること、昨今の経済危機のもとで貧困の女性化が新たな課題となっていること、新政権のもとで男女共同参画を積極的に進めていること等、日本の状況を紹介しました。

また、3月5日の「女子差別撤廃条約採択30周年記念」の対話型専門家パネルでは、林女子差別撤廃委員会委員より、女子差別撤廃条約は、30年の間に各方面にそのスコープを広げてきたこと、日本では現在、「北京行動綱領」、女子差別撤廃条約そして女子差別撤廃委員会からの最終見解も参考に、第3次男女共同参画基本計画を策定中である旨、発言を行いました。

今次CSWでは、「北京+15」を記念する様々な会合や対話型パネルも開催されました。3月2日には、「北京行動綱領」採択から15周年を記念して、国連総会の記念会合が開催され、国連総会議長、副事務総長、各地域の代表等からステートメントが発表されました。各発表者からは、共通して、「北京宣言及び行動綱領」の重要性、北京会議以降多くの進展があったが、まだ克服すべき課題も残されているという認識が述べられました。

3月3日に行われた「国際女性の日」記念式典の対話型パネルでは、北京会議で大きな貢献を果たした、北京会議事務局長のゲートルード・モンゲラ氏(タンザニア)や元CSW議長のパトリシア・リクアナン氏(フィリピン)が出席し、北京会議以後、様々な分野で進展があったが、今後はよりスピードを加速する必要があること、北京会議のプロセスは、政府とNGO代表そして男性を巻き込んだ参加型のものであり、大変独特であったこと等を述べました。

また、同記念式典では、パン・ギムン国連事務総長がスピーチを行い、「北京行動綱領」はジェンダー平等と開発、そして平和という目的を達成するための最も包括的な国際政策フレームワークである、と述べました。また、3月11日に開催された「女性に対する暴力撤廃努力キャンペーン」の対話型専門家パネルでは、事務総長から、暴力の恐怖から解放されることは、女性のエンパワーメントの必要条件であり、女性に対する暴力撤廃努力キャンペーンを、ミレニアム開発目標の達成と同じく2015年まで続けるとの発言がありました。

「国際女性の日」記念式典でスピーチを述べるパン・ギムン国連事務総長
「国際女性の日」記念式典でスピーチを述べる
パン・ギムン国連事務総長

今回の会合の成果として、「第4回世界女性会議15周年における宣言」及び7つの決議が採択されました。「宣言」には、

1、「北京行動綱領」等の再確認

2、「北京行動綱領」等実施に向けた更なる行動

3、ミレニアム開発目標等の効果的実施

4、「北京行動綱領」等と女子差別撤廃条約履行

5、「北京行動綱領」等実施にむけた国連やNGO等の貢献強化

が盛り込まれました。

また、「女性・女児とHIV/AIDS決議」(日本:共同提案国)、「紛争下における女性・児童の人質解放決議」、「パレスチナ女性の状況及びその支援決議」、「女性の経済的地位向上決議」、「妊産婦死亡率と女性の地位向上決議」、「国連機能強化におけるジェンダー4機関の統合決議」及び「女性性器切除(FGM)の撲滅決議」が採択されました。

今次CSWでも各国、国連機関、NGO等が様々なサイドイベントを開催しました。昨年に引き続き、我が国のNGO(国際婦人年連絡会、国連NGO国内婦人委員会、日本女性監視機構)は、「日本における女児・男児への教育」と題するサイドイベントを開催しました(3月1日)。日本におけるジェンダー平等教育や人権教育、理系女子の日韓比較、女児と教育分野における日本の国際協力等について、日本のNGO等からの発表後、発表者及び参加者との間で活発な議論が行われました。JICAも(社)農山漁村女性・生活活動支援協会(WELI)と共催でサイドイベント「農村女性のエンパワーメント」を開催しました(3月5日)。JICA及びWELIより日本の農村女性の現状と生活改善の歴史が紹介され、2006~2008年にJICA筑波が実施した「農村女性能力向上コース」で学んだ研修員4名(インド、ジンバブエ、セネガル、メキシコ)が参加し、日本の経験から学んだことを基に作成した「アクションプラン」の実施状況と成果を発表しました。

また、3月12日には、アメリカが開催したサイドイベントにクリントン国務長官が出席し、「北京宣言及び行動綱領」は、各々の国の女性の機会と平等を向上するための、全ての国による約束である、と述べました。

【内閣府男女共同参画局HP】

http://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_csw/chii54-g.html

【第54回国連婦人の地位委員会HP】

http://www.un.org/womenwatch/daw/beijing15/index.html