「共同参画」2009年 1月号

「共同参画」2009年 1月号

連載/その3  DVに対する取組事例6

女性ネットSaya―Sayaの子どもたちの力を取り戻す「びーらぶプログラム」について 内閣府男女共同参画局推進課

NPO法人Saya-SayaのSayaは、インドネシア語で「私」の意味、自分の回りの人との「つながり」を取り戻し、人生の再構築を支援する女性のネットワークです。女性も男性もお互いに尊重される暴力のない社会を目指し、女性と子どもたちの安全な生活と心の回復を支援する活動を行っています。

平成12年にDVなど暴力や依存症からの自立を地域の中でサポートする活動からスタートし、現在は、DV被害者からの電話相談、カウンセリング、被害女性や子どもたちに向けた心理教育プログラム(びーらぶ)、暴力防止のための予防・啓発プログラム、就労支援としてのIT講座、レストラン運営、工房の開設など幅広い活動を行っています。20年7月にNPO法人になりました

びーらぶ(Beloved)プログラムとは

 DV家庭で育つ子どもは、その人生の当初から暴力行為の目撃者になっています。そのような子どもたちは、DVの影響により心理的に大きな傷を抱えたまま育つ過程で、対人関係や自我の形成に大きな問題を抱えることが多く見られます。びーらぶプログラムは、DVを目撃あるいは直接被害を受けた子どもたちに対して、自分を大切にして、周りの人と安心で安全な関係をつくれるようになるための心理教育プログラムです。母親たちにも並行して実施することで、その効果を高めています。

「びーらぶ」は、子どもの発展段階にあわせて「就学前用」、「小学校低学年用」、「小学校高学年用」、「思春期用」の4種類あり、それぞれに全12回行うスタンダードプログラムと1~4回行うショートプログラムが用意されています。地域の中で新たな生活を始めた母子や母子生活支援施設などに入所する母子などを対象にしています。

スタンダードプログラムの内容

 スタンダードプログラムでは、1回目、2回目で、グループメンバーの顔合わせを行い、グループが安全であることを感じてもらいます。3回目以降、子どもたちは遊びやロールプレイ、人形劇などを通じてグループで学び、「怒りと暴力の違いを知る、怒りを暴力以外の方法で伝えることを考える」、「自分を守ること、守っていいことを学び、自分を守るために何ができるか準備しておく」、「いじめられる子に責任はないことを知り、問題があったときに役に立つ解決方法を学ぶ」、「家族の中であった暴力の話をし、話を受け止めてもらえる経験をする」、「自分の感情を表現する、他人と違っていいことを学ぶ」、「男女の性別役割を考え直し、思い込みに気づく、様々な家族があることを知る」、「人が人を支配せず、お互いに尊重しあいながら、分かち合うことを経験する」、「自分が世界でたった一人の大事な存在であることを感じる、肯定的なメッセージのシャワーを浴びる」こと、そして最後に、「みんなの様子をお互いに聞きあって体験を分かち合う」ことを身につけていきます。母親たちは、ワークやミーティングを行います。

プログラムに参加した子どもたちは、自分一人ではないことを知り、他の子どもたちのことをよく見よく聞くこと、話し合うことを通じて、力を取り戻します。プログラムの前後では、子どもたちの表情も見違えるほど生き生きとしてきます。

Saya-Sayaでは、このプログラムを東京以外の地域でも実施できるよう、インストラクターの養成にも力を入れています。

  • 手作りのぬいぐるみ。DV被害者と支援者による手作り、売上げはDV被害者の支援活動の運動資金として活用。
    手作りのぬいぐるみ。DV被害者と支援者による手作り、売上げはDV被害者の支援活動の運動資金として活用。
  • DV被害者の母と子どもの心理教育プログラムとして開発されたびーらぶのポスター
    DV被害者の母と子どもの心理教育プログラムとして開発されたびーらぶのポスター

(問合せ先)NPO法人女性ネットSaya-Saya
電話:03-5850-5244