「共同参画」2008年 9月号

「共同参画」2008年 9月号

連載/その3  DVに対する取組事例3

ゴールドマン・サックス証券のDV被害者の就労支援 内閣府男女共同参画局推進課

ゴールドマン・サックスは、幅広い金融サービスをグローバルに展開している投資銀行です。その社会貢献活動には、「他の支援が及ばない領域に焦点を当てる」という基本的考え方があり、こうした考え方の下、日本のゴールドマン・サックス証券(株)(以下「GS」)ではDV被害者への支援に取り組んでいます。

「明日へのドレスアップ」など

GSでは、DV被害者などの就労支援活動として、就労を目指す被害者女性などに、社内で集めた面接用のスーツや靴、鞄などの小物類を寄贈する「明日へのドレスアップ」プロジェクトに平成14年から取り組んでいます。集められるスーツや小物類は、社員にとって就職活動や面接に使用してきた大切な思い出の品です。贈る品々には、それらを身につけてもらい、「明日に向かってともに歩いていこう」という思いを込めたメッセージも添えられます。また、いずれも、クリーニング済みで状態の良いものに限ります。これまでに寄贈したスーツは合計で1,800着に上り、就労支援に取り組んでいる民間の支援団体などに贈られています。

この取組を一歩進めてDV被害者の就労を応援しようと、平成16年から「キャリア・ワークショップ」を実施しています。

これから就労を目指そうとしている被害者を会社に招き、リラックスした雰囲気の中で、ボランティアの女性社員がパネルディスカッションやグループディスカッションを通じて、仕事や職場の人間関係などでの困難をどのように乗り越え、克服してきたか、自分たちの体験や経験を参加者と共有します。

当初は参加者と社員の女性とでは話がかみ合わないのではないか、と心配しましたが、応募してきた社員は、DVの問題に理解や関心があり、事前に話をする際の留意点などを伝えていたこともあって、ワークショップでは両者の間の壁がなくなり、参加者からは「勇気づけられた」、また、社員からは「被害女性と直に接することで、DV問題への理解が深まった」という感想が寄せられています。

さらに、普段母親以外の大人と触れ合う機会の少ないDV被害者などの子どもたちが、社員ボランティアとの交流を通じ、大人たちにとって自分たちが大切な存在であると感じてほしいと考え、「お出掛けプロジェクト」が企画されました。子どもとほぼ同数の社員ボランティアが、安全に配慮しながら子どもたちを科学館や動物園などに連れて行き、1日一緒に過ごします。子どもたちは、その日はボランティアに思い切り甘えることができ、母親は子どもが手を離れ、自分の時間を過ごすことができると好評です。また、母子とのバーベキューなども行っています。

社会貢献活動のメリット

 ゴールドマン・サックスは、世界中の社員が、地域コミュニティにおいても良き企業市民としての役割を果たすとの理念の下、企業のPRとして社会貢献活動を行うのではなく、社員にコミュニティのことを知ってもらい、部署の垣根を越えたチームワークを経験してほしいと考え、ボランティア活動に取り組んでいます。GSでは、社員の約7割が活動に参加しています。

地域の活動に参加して普段の仕事とは異なる分野や人たちに接することで、社員の視野が広がりバランスのとれた人材が養成されるというメリットも生まれています。

  • GS社内でのスーツ収集の様子
    GS社内でのスーツ収集の様子
  • 集められたスーツの数々
    集められたスーツの数々