「共同参画」2008年 8月号

「共同参画」2008年 8月号

スペシャル・インタビュー/第4回

働く女性を支援して15年。女性の側から意識を変え、チャレンジする勇気を! MURAYAMA YUKARI

今回は、今年度女性のチャレンジ賞を受賞された村山由香里さんにお話を伺いました。

「大丈夫あなたにもできる!」

─ まずは、おめでとうございます。チャレンジ賞を受賞されたご感想をお聞かせください。

村山 本当に、身に余る光栄です。働く女性向けに情報誌を出版して、多くの読者と語りあってきました。女性自身が、女性だからといって、上にいくことを自ら抑えていたり、本当にやりたいことを、広い世界で活躍できるかもしれないのに、恐れたり、遠慮したりします。そんな女性たちに対して、「大丈夫だよ、あなたにも可能性があるんだよ」ということを言いたくて、起業しました。私自身、多くの先輩女性たちに取材などで知り合って刺激を受けて成長してきましたので、そんな読者のロールモデルになるような人を地元の中から見つけて紹介すれば、女性たちが元気になるんじゃないかと。私はメンター女性と読者との引き合わせ役だったんです。すばらしい賞をいただいて「あれ、私自身がロールモデルだったの?」となんだか不思議な気持ちです。働く女性と一緒に成長してきたと思っていますので、福岡じゅうの女性たちと一緒に賞がいただけたようでうれしいです。

─ 現在の仕事をされようとしたきっかけを教えてください。

村山 大学を出て、最初の3年間は民間企業に勤め、もっと広い世界に羽ばたきたいと退職したんですが、再就職先が全然見つからず、とりあえず市役所の3ヶ月間の臨時職員に雇ってもらいました。職員全員に一日4回のお茶汲みが仕事だということを1日目に知ります。今の日本の社会の中で、女性の労働力というのがこんなふうにしか思われていないという現実を、自分の体、自分の肌で、体験したときに、カラダが震える思いがしたんです。家庭のなかの夫と妻の役割がそのまま社会に持ち込まれている。

当時は、同世代の女性たちはほとんど同じようなことを経験されてるんですね。前の会社では「飲みたい人が自分で飲むのが当たり前」という先進的な環境でしたから、知らなかったんです。臨時職員が6人、職員が50人。一日の2時間がお茶汲みなので、時給にすると・・・、こんなことでいいのかなって。そんなときに目の前にミニコミ誌があって、アルバイトはありませんかと電話をかけたんです。その情報誌はこれから広告をいっぱい集めて大きくなろうとしていることと、働く女性たち、福岡市内の1,600企業に無料で配っている雑誌なんですよと聞いたときに、いろんな企業に勤めている女性たちと会えるかもしれない。そして、その人たちと仕事や恋愛や人生について語り合いたい。その人たちを集めて何かできる。そこに一番興味があって入社したんです。

─ その後起業され、今は、情報誌「アヴァンティ」の発行や働く女性を応援するための活動もされているようですが。

村山 さきほどお話ししました会社で、4年間広告営業をし、記事を書いて、また次の会社で4年間。小さなミニコミ誌が急激に大きくなり、最後は編集長をしたんですけれども、自分がやりたいことと方向性が違うと、ものすごく悩んで退職し、起業しました。広告主の意向だけで作る雑誌ではなく、生身の読者の悩みや喜びを表現し、働く女性たちに「大丈夫、あなたにもできる」というメッセージが伝わるような雑誌が作りたかったんです。女性の側から意識を変えて、社会を変えていく。雑誌が媒介になって、働く女性のネットワークを作り、同じ悩みを抱える女性たちが集まることで力をつけていくことができないかと思ったんです。編集方針は、「男女平等の視点で企画し、取材し、記事を書く」です。「主人」という単語は使いませんし、「夫が家事を手伝ってくれます」という表現は、家事をするのが女性の仕事だと読者に固定的な価値観を植えつけてしまいますので、書き換えるなど、細かなところにこだわります。『幸せな結婚の鍵は家事男(カジオ)にあり』なんていう特集を、10年前にしています。むずかしいジェンダー論ではなく、楽しい企画のなかで知らず知らずに時代の変化を感じてもらうことを目指しています。

最初は大赤字で大変でしたが、少しずつ応援してくださる方ができ、市場に認知されるようになってきました。道を拓いてこられた地元の先輩女性たちとの出会いもあり、お会いするたびに勇気をいただきます。今までたくさんの福岡の働く女性たちと話してきたことが、私の財産だと思います。

毎年開催する「女たちのサクセスストーリー」というトークライブでは、全国レベルで活躍する女性をメインゲスト、地元で活躍する女性をパネリストに人生を語りあいます。今年で12年目ですが、毎年400人から500人の若い女性たちが熱気に包まれるんですよ。先輩たちが築いてこられたものを若い世代につないでいきたいと思っています。

─ 最後に、これからチャレンジする方たちへ、アドバイスというかメッセージをお願いします。

村山 積極的に人と接する機会を持つことを大事にしたいですね、自分と違う価値観を持つ人たちと会って話をする。そして、自分の心を素直に表現して語り合う、ここが大事なんですよね。そうすると何か開けていくような気がするんですよね。そして、一人二人と自分にピンとくる人と出会い始めると、次々につながって、スパイラル状に広がっていくんですよ。成長できるのも、自分の世界を広げてくれるのも人との出会いだと思います。

─ 本日は、受賞の合間の貴重な時間をいただき、本当にありがとうございました。

(株)アヴァンティ代表取締役社長 村山 由香里
(株)アヴァンティ
代表取締役社長
村山 由香里

むらやま・ゆかり/1982年九州大学文学部卒業。1993年自宅マンションで起業し、働く女性を応援する情報誌「アヴァンティ」を創刊。情報発信だけでなく、読者を集めてセミナー等を開催し、年間延べ3,600人を動員。違う価値観の人との出会いが自分を高めると、刺激の場を作っている。ネットワーキングとマーケティング、社会へ女性の意見提言の3つをキーワードに、本年「働く女性研究所」を立ち上げ、新しいチャレンジを始めたばかり。