「共同参画」2008年 4・5月号

「共同参画」2008年 4・5月号

行政施策トピックス/地方自治体の施策紹介 TOPICS Part2

福岡県久留米市のDV対策 における機関連携と ワンストップサービス 内閣府男女共同参画局推進課

久留米市は、人口約31万人の福岡県南西部に位置する中核市です。平成9年にDVと性暴力を啓発する広報紙を市内全戸に配布するなど、早い段階から同市の男女平等推進の主要な課題としてDV問題等への取組みが始まっています。

施策の推進体制と機関連携

庁内では、男女平等政策室が行動計画の策定など総合調整を担当し、DV相談の窓口は、平成13年に開設され市が運営する男女平等推進センター(以下「センター」)相談室と、婦人相談員が配置され、緊急一時保護事業などを担当する家庭子ども相談課となっています。

大きな特徴の一つは、最前線で活動し、被害者が必要とする支援を最もよく知りうる立場にある民間団体との連携です。支援の現場である民間団体と行政の相談窓口が把握した課題を男女平等政策室に報告し、庁内の関係窓口を交えて協議を行い、現場の課題が行政の施策として反映されて、再度現場にフィードバックされる仕組みとなっています。様々な課題に応じて、男女平等政策室を中心に民間団体を交え、庁内の関係窓口とセンター、家庭子ども相談課が協議・検討を行う場として、DV被害者支援に関する会議が、平成18年から設置されています。

連携の場としては、このほかにセンター主催の庁内関係部署による「庁内ネットワーク会議」と、庁内関係部署に加えて女性相談所、児童相談所、法務局、裁判所、警察署、職業安定所など庁外の関係機関や弁護士会、医師会、民間支援団体も参加した「相談関係機関ネットワーク会議」の二つが設けられ、それぞれ年1回開催されています。この会議の場で、各機関の被害者対応について報告・情報交換が行われています。

また、センターでは、センター職員と外部有識者からなるワーキンググループを設け、行政におけるDV被害者支援の現状とあり方について、庁内の関係窓口の課長及び実務担当者との意見交換を2年がかりで行い、覚書を「被害者支援対応のマニュアル」として平成18年6月に作成し、徹底が図られています。これにより担当者個人の裁量に左右されない、被害者支援システム化が進められています。

相談・手続きなどのワンストップ化

家を出た被害者が地域で生活を始める際には、何か所もの行政窓口を訪ね、窓口ごとに家族の状況や暴力被害の経験など、同じことを繰り返し話すよう求められ、負担が大きくなりがちです。また、手続きのために、頻繁に被害者が窓口に出向くことは、追及の危険性を高めることにもなりかねません。実際に、手続きのために民間支援団体が同行支援した際、加害者と遭遇しそうになったこともあって、被害者の安全確保と手続きの迅速な処理、また、被害者の負担軽減のためのツールとして、平成16年度から「DV被害者相談共通シート」が導入されています。

このシートは、庁内ネットワーク会議の中で作成・合意されており、被害者の個人情報保護のため、どの窓口にも共通する最小限の情報を記載するよう配慮されています。保育所入所など具体的な行政サービスを必要とする場合、被害者に説明した上でシートを作成し、被害者がこれを持って行政窓口の一つを訪ねれば、そこに他の関係部署の担当者が出向いて相談に応じ、速やかに手続きを進める方式が定着しています。また、シートは保育料の減免措置など、諸手続きの際の証明の役割も果たしています。