カルビー株式会社
- 設立 昭和24年4月(1949年)
- 本社所在地 東京都千代田区丸の内1-8-3 丸の内トラストタワー本館22階
- 事業内容 菓子・食品の製造・販売
- 従業員数 連結 3,728人(2016年3月31日現在)
【ご協力】
人事総務本部 ダイバーシティ委員会
宮島志津子様
経営戦略としての支援制度
――社内の女性の活躍をどのように進めているのでしょうか。
当社では、女性の活躍を成長するための経営戦略として考えています。2009年に就任した松本(代表取締役会長兼CEO)が、従業員の男女比率が半々であるのに女性の管理職が約5%しかいないのはおかしいと指摘したことをきっかけに、翌2010年に社内にダイバーシティ委員会が組織されました。現在、女性の管理職は22.1%まで増えています。
――女性の活躍を経営戦略として位置づける中で様々な両立支援の制度を導入しているとのことですが、不妊治療支援などの制度の具体的なアイデアもトップダウンで決まるのでしょうか。
トップからのメッセージは、『(ダイバーシティ推進に)障害があればスムーズに取り除くように』という大変シンプルなものです。松本は、以前に外資系企業の日本法人の社長を務めており、会議などの場で、「日本はなぜこんなに女性が少ないのか」と各国から指摘され、強い問題意識を感じていたようです。そのメッセージを受けて、障害を取り除くという観点から、実際のアイデアは社員が具体化し、必要な経済的支援を様々な分野にわたって行っています。その取組の一つとして不妊治療支援も位置づけられています。
不妊治療に対する経済的支援制度について
――不妊治療に関する支援制度の内容を教えてください。どのような仕組みですか。男女ともに対象となるのでしょうか。
当社の健康保険の被保険者と被扶養者を対象に、自由診療の範囲内で治療にかかった費用の実費につき、10万円を上限として、年度1回、最大5回まで給付金を支給しています。申し込み先は健康保険組合であり、上司への申請などは不要であるため、不妊治療について周囲に知られる心配もありません。地方自治体の助成金を受け取った場合には、実費から助成金を控除した金額について補助を行います。2015年までに5名がこの制度を利用しました。なお、男性不妊も想定しており、男性従業員であっても給付金を受けることができます。
――なぜ給付金という形にしたのでしょうか。
不妊治療は高額になるため、経済的な負担がとりわけ大きいと聞きます。それを会社としても認識しており、そこに対する支援には、大きな意味があると考えているからです。不妊治療支援に限らず、その他にも、様々な経済的支援を行っています。
――不妊治療支援の金額の設定に当たって参考にしたものはありますか。
社内の他の補助制度を踏まえて調整した結果、最大10万円としました。不妊治療の全額を賄うことはできませんが、これを5回まで利用できるということで、補助制度の中でも比較的高い金額となっています。
支援制度と女性社員に対する「期待している」というメッセージ
――他にはどのような補助制度がありますか。
育児休業は最長2年間取得できますが、出産から1年以内に職場に復帰した女性従業員を対象に、子が2歳になるまで、毎月1万円を支給する『早期復帰感謝金』や、つわり等の症状に対し就労を免除する『妊娠出産障害休暇』などがあります。
女性は、妊娠や出産など男性よりもライフイベントが多いので、安心して働ける制度が必要です。子育てをしながら働こうと思うと、ベビーシッターや病児保育などについても費用が必要です。中には、それらの費用は投資だと割り切る社員もいますが、お金の問題で仕事を辞めてしまうこともあるかもしれません。それはもったいないことですので、会社がその費用の一部を負担することで、少しでも本人の負担を軽減できればという考え方が根底にあります。一つ一つは小さな取組ですが、いろいろな経済的支援を受けられることが仕事を続けるインセンティブにもなると思います。
また、会社がダイバーシティ推進のメッセージを発信するとともに、このような制度の整備を通じて、女性従業員が自然と「私は期待されている」というマインドを持ってくれることを期待しています。
ダイバーシティ推進に関する従業員意識の改革
――ダイバーシティ推進や女性登用を大幅に進めることについて、社内に反対の声はなかったでしょうか。
毎年11月に開催するダイバーシティフォーラムをはじめ、その他の社内フォーラムやワークショップ、動画配信などを通じて、ダイバーシティ推進が会社の基本的方針であることについて、トップのメッセージをはっきり伝えています。中にはその考え方にすぐについて行けない従業員もいるかもしれませんが、そうした従業員の意識改革も重要です。
また、女性も、今でこそキャリアに関する考え方がしっかりしてきましたが、育児などで休んでいる間にどうしても気持ちが揺らいでしまうので、男性とは違うアプローチで明確なビジョンを持ってもらうことが求められます。さらに、幹部に対しては、幹部が集まるワークショップの中で、女性登用についての目標共有をおこなう時間を設けることで、女性登用にむけた明確な意識付けを行っています。
――女性登用を進める上で重要なことは何だと考えますか。
当社は昔から女性従業員が多かったので、従業員の適応能力が元々高かったこともあるかもしれませんが、女性管理職比率の少なさに現れていたように、知らず知らずのうちに女性から成長の機会を奪う無意識のフィルターがあったように思います。女性の登用について、当社は他社よりは進んでいると思いますが、海外は新幹線のスピードで進んでいるのに対して、日本はローカル電車だと言われます。だからこそ、議論なんかしている暇はなく、とにかくやらなければならないのです。
――本日はどうもありがとうございました。
【支援制度の概要】
制度名称 | 制度概要 |
---|---|
不妊治療に対する 経済的支援(給付金) プラン休業 |
・自由診療の範囲内で治療にかかった費用の実費(地方自治体等の助成金を受け取った場合には、実費から助成金を控除した金額)を給付 ・給付金額の上限は10万円で、年度1回、最大5回まで ・被保険者、被扶養者の男女とも対象 ・請求対象は健康保険組合(上司への申請不要) |