男性にとっての男女共同参画シンポジウム滋賀「イクメンってどんな存在?女子会トーク」(2)

  • 第二部
  • 自分で自分のことをイクメンとアピールする男性について、どう思うか
  • 画像:男性にとっての男女共同参画シンポジウム in 滋賀01
渥美:
1年くらい前に「イクメンで行こう」という本を書いたら、女性から「イクメンってちょっと鼻につく。育児休暇を取ったと社内で威張っていて、でも期間を聞いたら、たった3日間。そんなので威張るな」など、イクメンをアピールする男性に対して冷ややかな声を聞く。このテーマについて、本音トークをお願いしたい。
浜田:
実は、AERAでは「イクメンって言うな」という企画をやったことがある。子どももいる女子部員が、まさに今仰ったように、男性はちょっと育児しただけで威張る、たまらん、と。働くママの間では、そういう声が多いというので、あえて挑戦的にやった。イクメンからは、僕たち一生懸命やってるのに、という声も起こったが、皆さんのご意見はどうだろうか。
廣瀬:
うちの旦那は、決してイクメンではない思っているが、私が滋賀でこういう活動をしていることで、ピースマムの編集長の旦那さんはきっとイクメンに違いない、みたいな噂が立ってることが、少し腹が立っている(笑)。
稲村:
私達は、自分と夫を比べているが、多くの夫達は、世の旦那さんの平均と比べて、「俺は、こんだけやってるぜ」と思うようだ。
浜田:
そうそう。
稲村:
だから、そりゃがんばっているかもしれんけど、私に比べるとどうやねん、っていう。私も今、夫様々で、何の憂いもなく、こうやって土日活動ができるわけだが、例えば、来年からうちの娘が小学校に上がるときには、学校関係の手続きは全部私。そういうことは私がやるのが当たり前で、自分の仕事じゃないと思っているのは、おかしいと思う。
浜田:
うちの夫は根っから子どもが好きで、保育園の集まりでも、自然に子どもがわーっと寄ってくる。そうすると、「いいなあ、浜田さんところって」「再婚するなら浜田さんの旦那さんがいい」という声が上がる。そうすると私がやってないって責められているように感じてしまう。
稲村:
周りよりやってるぜっていう男性も少し問題だけど、私達の側も、その罪悪感を、もっと捨てないといけないんじゃないか。
小室:
私は、その葛藤を乗り越え、今、すごく楽になった(笑)。最初の頃は、平日あんなに遅い夫が、土日に息子と遊んでいる様子を見た人が、「すごくパパをやっているよね」というコメントをくれたときに、どれだけ平日帰宅が遅いと思ってるんだ、土日は目に留まりやすいだけだ、とむかむかしたのだけれど、最近、忘年会を我が家でやったとき「今までは、旦那さんがすごく育児をやっていて、淑恵さんは何やってんのかなって思ってた。淑恵さんも家ですごく働いてるね」と言われて、ああよかった、という気持ちになれた。夫が外からイクメンだと思われ、期待に応えようとして、さらにイクメンになっていくのを、私が転がしてるんだ(笑)、と思うようにして、私は外で夫をけなすのを一切やめた。ママトークでもパパの愚痴を言いあうのを止め、「最近うちのパパはどれだけやってくれて本当に助かっている」という話しかしなくなった。そうすると、そのママからパパに伝わり、そのパパから「お前、すごいやってんだな」って外でも誉められるし、ちゃんと家でも好かれてると思うので、余計にやるようになった。そう思われたらブランディング成功だ、と思うようにしたら、ものすごく楽になった。
浜田:
小室さん、でも、私も誰かにほめられたいんですよ、そうやって。多分。
廣瀬:
私も。私もそうです。ほめられたいです。
浜田:
だって、男の人は少し育児をやっただけで「よくやってるね」となるけど、私が一生懸命やっていても「それでもやってない」としか見てくれないから、腹が立つのかも。
小室:
それは、ほめられ不足ですよね(笑)。
浜田:
働いているお母さんは誰からもほめてもらえない。実母からも時々「ちょっとは早く帰ってきたら、せめて寝るまでぐらいには」とか、「小学校に入ったら、宿題とかちゃんと見てあげないとね」と言われる。以前は夫からも数ヵ月に1回ぐらい「もう少し子どもと一緒に過ごせる時間を作れないか」と言われ、それで落ち込む。それを解決するのを、誰か考えてほしい。
小室:
その罪悪感から、夫を余計にほめたくなくなり、悪循環になることも。長い目で見て、自分に返ってくるよう夫をほめるのも必要かもしれない。私、夫をほめるようになってから、すごく遅れてですけど、ブーメランが帰ってきて、ほめてくれるようになりました。
稲村:
こういうのどうですか。うちは古風な夫なので、妻をほめることなどない。けれど一方で、私が、家事最優先じゃないことに対して、文句も言わない。だったら、私も、一応、文句は言わないでおこうと。誉め合うブーメランではなくて、文句言わないブーメラン(笑)。
浜田:
両方とも、難易度が私には高いなあ。働いてるお母さん達、私の周りもそうだが、みんな毎日時間繰りが大変で追いつめられている。会社でも「浜田さんって、いっつも忙しそうですよね」と部下の子が話し掛けるのも躊躇するぐらい、いつもキリキリしていて。それでも何とか早く帰ろうと思ってやっているのに。
廣瀬:
毎日辛そうにしていると、子どもにも悪影響があると思う。だから、去年すごく忙しかった時期があったが、夫や子どもから「そんなにしんどかったら仕事なんて辞めたら」と思われたらだめだ、あかん、楽しまなあかん、と思って。楽しくあるべきというのがテーマになった。私が楽しそうだったら応援したくなるのかもしれないと、テンションを上げるしかない。
浜田:
唯一の救いはやはり子ども。去年大震災の後3ヵ月ぐらいは本当に忙しく、ほとんど休みがなかった。そのころ、夫の母が病気で、夫も介護休暇をとり、実家で過ごすことが多かった。「ママが仕事をしてるのは、すごく大きな津波があったからだよ」というような話を娘にしていたら、それまで仕事に行くと「いやだー」と言っていた娘が、たまに家にいると「ママ、お仕事いいの?」とか、「自分も本を作る仕事をしたい」と言ってくれたり。今や娘が一番の理解者に(笑)。廣瀬:仕事してるママが好き、なんて言われたときは、ちょっと――。
浜田:
子どもをぎゅーっとしたくなる。
廣瀬:
そうそう(笑)。

子どもをダシにして遊ぶ男をどう思うか?

渥美:
僕はもともと子ども大好きで、独身時代からずっと子ども会をやって、夏は子どもたちをキャンプに連れて行っていた。自分の子供を授かってからは、家族旅行がとても楽しみで、今年の夏も企画した。その中身が、気球に乗る、ツリーハウスを作って遊ぶ、いかだに乗せる、など。妻がそれを見て「あなた、半年前から絵本で『トムソーヤの冒険』を読み聞かせていたけど、子どもをダシにして、あなたが遊びたいことをしてるでしょ」と。やはり見抜かれていたか、と。こういうのはアリでしょうか。
稲村:
これはいいんじゃないですか(笑)。
浜田:
あわよくば、2人で行ってくれ、みたいな。うちも、よく2人で遊びに行っている。
稲村:
夫がものすごい歴史好き。娘に大河ドラマを見せ、『おーい龍馬』を読み聞かせ。この間は壬生寺に行き、娘は、新撰組の提灯をお土産に買ってもらって、部屋を夜回りしている。夫を見ていて、私より1枚上手やなと思うのは、自分がおもしろいものに、子どもを引き込んでいっている。娘のプリキュアにもセーラームーンにも付き合いつつ、自分の好きなものも見せて、自分なりに楽しみながらやっているところは、私もこの技は盗まねば、と思った。
小室:
夫も、フットサルチームを保育園のパパ友と4年前から始めた。いつか自分達の練習に、子ども参加できるようにというテーマで始め、ママ達が納得したから、パパ達は自由時間を得た(笑)。3時間のうちの最後の1時間を、子どもの練習タイムにして子ども達にちゃんと蹴らせている。そうやって子どもをダシにみんなで集まり、さらに最近では、2時間の練習タイムも、パパ達が順番で子どもを見てくれるようになった。つまりママ達が3時間フリーになれる時間を作ってくれている。パパ達は仲間作りができ、ママも時間ができ、子ども達は保育園だけじゃなくて土日も遊べるので地域の力もできた。パパ達が本当に楽しそうなので、ああ人生楽しんでるな、すごく良いことだ、と思う。
浜田:
ダシにしようがしまいが、一緒に遊んでくれると、それだけママがフリーになるというのはいいこと。うちも、保育園のパパ友がすごく仲良くて、キャンプ好きが多い。金曜日夜中に帰って、土曜日の5時から、みたいな感じでキャンプに行くとつらいけど、行けば楽しいし。
廣瀬:
息子のカブトムシ飼育などは、私にはつきあえないジャンル。そこを担当してくれると、ありがたいなと思う。
  • 画像:男性にとっての男女共同参画シンポジウム in 滋賀02

イクメンにときめいたり、セックスアピールを感じることは?

浜田:
編集部の女性記者たちが言うのは、育児も家事もやってくれる男性と結婚する方が楽に決まっていて、ハッピーになれるのはわかっているけど、どうしても、そういう人を好きになれない、と。で、結局選んじゃうのは、後で苦労することがわかっていても、俺様タイプだと。イクメンはモテるが、30代後半から上の世代にはアピールできないかな。
小室:
仕事上大学生との付き合いも多いが、最近のがんばり屋女子で、将来も仕事をしたいと思っている子は、イクメン度を大事にする。そこを重視しなければ後で後悔するぞ、失敗するぞ、ということは、知識として知っているみたいだ。本当に好きになる相手をイクメン度で見るかは全然別だと思うものの、イクメンということが非常に自分の人生に大事と、刷り込まれつつあるのでは。
稲村:
うちの夫が育児をやっているというのを聞いて、一番びっくりしたのが、姑さんとお姉さん。「和美ちゃん、苦労してるやろう、ごめんなあ」と姑さんに言われて、「え。めっちゃやってくれてますよ」と言うと、みんな「おお」って言う。一見まったくもって古風なんだけれどイクメン、というのもありだと思う。
浜田:
うちの保育園はイクメンパパが多いが、「米は玄米で」とか、「どこの米がいい」とか、主婦の会話を聞いているみたい。うちの夫も元々料理好きだったが、離乳食を作るときに、鯛を焼いて、骨で出汁を取って。
稲村:
男の人で料理にはまる人、結構いるようだ。台所の残り物じゃなくて。
浜田:
そうそう。今、夫がはまっているのは、ときめき片付け術。だんだんどっちが主婦なのかわからなくなってきた(笑)。
小室:
私は良いと思います、そういうの(笑)。夫にも出汁の取り方が一流だ、とすごく誉めますよ。これは行ける、この道で伸ばそう、と思ってくれるので(笑)。最近の若い男子は、料理好きな子が多い。毎年、うちの子どものベビーシッターをしてくれている学生達に、お礼としてクリスマスパーティーを催すが、シッターの中の1人の男の子が全料理を作ってくれる。そのまま、その道を極めて、農業系の会社に就職したほど。得意ならそれを伸ばしてほしいし、魅力を感じる。
廣瀬:
そういうタイプの独身のイクメン予備軍の子達は、バリバリ働く浜田さんのような方と結ばれるんですかね。
小室:
その料理が得意の男の子は、カンボジアのキャビンアテンダントをしている、1年中海外を飛び回っている女の子と婚約した。すごく良い組み合わせだと思う。
小室:
そのような方のために、そのような男子が出てきたわけですよ(笑)。時代に請われて。
浜田:
あ、そうだ。そのときにうちの女子達が言っていたのは、やっぱり仕事の現場で見ていて、バリバリ働いて、自分より仕事ができる男の方が格好良く見える、と。だから、そことイクメンがセットになればいいのだけど。

子育ては期間限定と言うが、勝手に子育てを卒業しないでと思うことは?

渥美:
以前、仕事で、「夫・父親として何点だと思うか」自己評価してほしいと聞かれたことがあり、自分で勝手に何点と付けると後で絶対に妻からクレーム来るなと思って、事前に「俺、こういう質問受けたんだけど、何点か?」とすごくドキドキして聞いたら、95点って言われて、びっくりした。でも、5点の減点が気になり「なんで5点引いたの」って言ったら、「2人の息子達が、あと30年後にイクメン、カジダンになって、いいパートナーと結ばれたら、あなたは卒業ね。勝手に小学校に入ったから卒業とかってだめよ」と釘をさされた。
廣瀬:
息子が小学校1年生で、長女が小学校4年生なので、保育園のときと小学校になってからの子育ては全然違っていて、やっぱり勉強が主になる。この前、全国の都道府県を全部暗記し、漢字も全部書けるようになりましょうという問題を私は書けなかったが、主人のがすごく得意で全部できていて、娘が「パパすごい」みたいな感じになって。親子の会話がこれからもっと増えるんじゃないかなと期待して見ている。
稲村:
夫が言っていたことだが「終わりよりも最初や」と。父親と娘なので、私は「何歳までかな、こんなふうにお父さん、お父さん、って来てくれるの」とたまに嫌味を言うけれど、夫はそんなことはわかっている、と。中学生にもなれば、娘は父親のところには来ない。「3歳ぐらいから、ちょっと楽になったから、子育てちょっとおもしろそうやし、手出そかというのがあかんのや。3歳までがんばるんや、父親も」と言う。いや、もちろん別にいつでも遅くはないけれど、本来は母親がやるべきものをちょっと手伝うというスタンスではなく、一緒にお互い責任持って育てていこう、関わっていこう、と考えるなら、最初に、それこそ1ヵ月なら1ヵ月関わってみてほしい。
小室:
最近の男子で、イクメンになる子達は、自分が父親と接点がなかったという子が多い。就職活動のときにも、日経調べで、3年連続仕事と生活の両立のできる企業を一番重視している学生が多い。これほど景気が悪くてもワークライフバランス重視で、その背景にあるのが、一番多感な時期に男親と全然話せなかった。自分も上手に話せず、父親からも会社で部下を諭すようなことしか言われない、大半の悩みは父親には話せない。自分は、将来は自分の父親のようではない父親になろうという、反面教師イクメンの子が急増している。多感な時期、中2ぐらいからの時期こそ、男親が「非常に悩みがわかるよ」と親身に話をしてあげるのが、一番大事なんだろうと思う。私の息子も、いつか私の手に負えない悩みを持つようになるだろうし、その時うちの夫がコミュニケーションを取ってくれるかどうかが、生涯を通じた教育の上で、すごく大事になるだろう。
浜田:
最近の大学生は、就職活動のときに、親に勧められて会社を選ぶ子が多い。親の世代の価値観でのいい企業と、現在のいい企業は全然違うから、できれば自分で判断してほしい。私達の時代より、今の若い子の方が、むしろ親の価値観に縛られている気がする。親離れ・子離れができていないケースが多い。自分の子どもには、できるだけ自分のことは自分で決めてほしい。子育ては永遠だと思うけれど、むしろある意味では、子どものほうから早く卒業してもらいたい。両親とも、やっぱり子どもは別人格と早めに思っていた方がいいんじゃないか。