男性にとっての男女共同参画コラム 「男性たちに男女共同参画の重要性を認識してもらうために」

男女共同参画というと、やはりまだ多くの方が「女性の問題」と思われるのではないかと思う。しかし、この課題は、「男性の問題」でもあり、もっといえば、「日本社会の未来」をめぐる課題なのだ。

少子高齢社会は、これまでのように男性だけが社会を支える仕組みでは維持できない。老若男女の共同参画で社会を支える以外に、日本の将来は考えられない状況なのだ。昨年秋に出されたIMFのレポートCan women save Japan? が指摘したように、社会・経済の活力にとっても、女性の参加・参画は不可欠だ。

ところが、男性の多くは、性別分業の発想から脱却できていない。社会の中軸をこれまで担ってきた男性たちの意識と生活スタイルが変わらなければ男女共同参画は進まないだろう。女性のもっている力を見抜き、女性が活躍できる社会形成を進めなないと社会の安定した発展は形成できないということを、男性たちにもきちんと認識してもらう必要がある。

1970年代以後、日本社会で急速に拡大した「男性は長時間労働、女性は家事・育児(さらに条件の悪いパート労働)」という仕組みは、日本の経済成長を支える一方で、さまざまな問題を生み出してきた。何よりもまず、この性別分業体制が生み出した「ひずみ」に男性たちは気づくべきだろう。

国際社会のジェンダー平等の動きは、1970年代以後、女性の労働参加を急速に拡大した。当初は、経済の発達していた国の中では頭抜けて女性労働力率が高かった日本だが(1970年段階でアメリカ合衆国よりも10%以上高い女性労働率があった)、30年ほどの間に女性労働力率を30%から40%程度上昇させた欧米の諸国に、いつの間にか置いてきぼりにされてしまった。30年で女性の労働力率がわずか5%しか拡大しなかったOECD加盟国は日本だけだろう。女性のもつ潜在能力に、日本の男性はいまだ気づいていないのだ。

また、現代の日本では「家族の絆」が崩壊しつつあるという声を良く聞く。こうした家族の危機の背景には、男性たちの長時間労働による「家庭不在」にもその原因があるはずだ。

こう考えると、男女で社会を支え、家庭・地域を担う男女共同参画社会の形成は、崩壊しつつある家族の再生、地域社会の新たな再編、さらに日本社会のこれからの活力を生み出すためにも必須の課題であることがわかる。

男女共同参画を進めるには、何よりもワーク・ライフ・バランスが前提になる。ワーク・ライフ・バランスを、「仕事を抑制し私生活を大切にすること」と考えている人もいるようだが、そうではない。生産性を高めつつ男女で効率よく働き、ともに家庭・地域に責任をもつこの仕組みがうまく形成できれば、子育てや高齢者介護の面でも(もちろん、保育所や高齢者施設等の社会的サポートを充実させつつ)、多くのプラスを生み出すはずだ。

男女共同参画の必要性を男性に知らせるために、さまざまな工夫と努力が今求められているのである。

  • 京都大学大学院文学研究科・文学部 教授
    伊藤公雄