男性にとっての男女共同参画コラム 「中高年男性にとってのワークライフバランス」

今年は団塊世代が65歳になり始め、この3年間に600万人以上が高齢者になる。2000年に導入された公的介護保険の現在の要介護・要支援認定者は約5百万人だが、後期高齢者の要介護出現率は前期高齢者の7倍にも上り、10年後に団塊世代が後期高齢者になると日本はまさに“大介護時代”を迎えるのである。

このように増え続ける高齢者の介護を一体誰が担っているのだろう。厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成22年)によると、要介護者の3人にふたりは主に同居する家族に介護されている。次いで事業者による介護や別居する家族による介護となっているが、傾向としては同居家族による介護が減少し、事業者による介護が増加している。

同居または別居する家族の主な介護者の性別をみると女性が7割を占め、やはり介護の担い手の中心は女性だが、男性比率は年々上昇し、介護の担い手の男性シフトが続いている。また、年齢別では男女ともに50~60歳代が全体の5~6割を占めており、仕事を持っている中高年介護者が増えている。そのため介護を理由とする離職者も増加しており、その8割以上は女性だが、男性比率は確実に上昇している。

その理由として40~50歳代の女性の就業率が高まり、共働き世帯が増加していることが考えられる。同居する主な介護者として「子の配偶者」(主に要介護者の息子の妻が想定される)が大幅に減少しており、働く妻が増えて夫の親の介護まで手が回らないのだ。このように多くの中高年男性にとって親の介護は妻任せにはできない時代になっているのである。

この“大介護時代”を乗り切るためには介護サービスの外部化が必要になるが、今後の介護ニーズに応えるには介護人材不足が懸念される。また、長寿化に伴って認知症高齢者が2015年には250万人に達すると推計されており、そのケアには長時間にわたる家族などによる日常生活のサポートが必要だ。

介護は子育てと違いその負担は徐々に重くなり、将来の見通しが立ちにくい上に、今後は要介護者と介護者の高齢化が同時進行して老々介護が増える。これまで少子化対策として「仕事と子育ての両立」がワークライフバランスの重要な視点だったが、これから高齢化が一段と進むと「仕事と介護の両立」も重要になろう。ワークライフバランス社会の実現はだれもが幸せに暮らすために、子育て世代だけではなく企業の中枢にいる中高年男性にとっても世代を超えた喫緊の課題となってくるのである。

  • ニッセイ基礎研究所 主任研究員
  • 土堤内 昭雄