第16回 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会議事要旨

  • 日時: 平成21年2月23日(月) 10:00~12:00
  • 場所: 内閣府本府5階特別会議室

(出席委員)

佐藤
会長
岡本
委員
大沢
委員
鹿嶋
委員
勝間
委員
北浦
委員
高橋
委員
武石
委員
永木
委員
羽入
委員
牧野
委員

(議事次第)

  1. 開会
  2. 「雇用者以外の就業者の仕事と生活の調和」に関する有識者ヒアリング
  3. 意見交換
  4. その他
  5. 閉会

○女性農業者の現状と農業者のワーク・ライフ・バランスの現状と課題

  • 農業者のワーク・ライフ・バランスは生活の質の問題としてとらえるべきであり、仕事と生活時間のバランスだけでなく、生活が持続可能であるか、単純労働だけでなく人間らしい複雑な行動ができるのか、といった観点も重要である。通常のワーク・ライフ・バランスのように産休・育休がとれるのかといった議論だけでは考えにくい。
  • 農林漁業者と非農林漁業者の生活時間を比較すると、食事の時間は農林漁業者の方が長い、仕事の時間は非農林漁業者の方が長いといった特徴がある。家事時間は農林漁業、非農林漁業とも男女差が歴然としている。
  • 女性農業者にとって子育て期は学びの時期であり、就業率はM字カーブにならないという特徴がある。
  • 子育て期の支援の要望としては、保育園の入園基準の緩和、保育時間の延長、学童保育の充実などがある。男性の家事参加も必要である。
  • 女性農業者の起業数は2007年に9,444件であったが、年間売上げ300万円以下が8割であり、経済活動として十分なものとは言えない。しかし、高齢者対策や社会的な地位向上には役立っており、また、2割程度ではあるが経営的にしっかりした団体も生まれてきている。起業支援として低利融資や税制優遇が重要と言われているが、女性農業者には使われていない。
  • 農家におけるワーク・ライフ・バランスの課題は、超高齢社会、収入の低さ、意欲的な農業者とそうでない者の二極化、性別役割分業観の強さ、保育園への入りにくさ、情報不足などである。また、ワーク・ライフ・バランスが都市生活者の中に定着すると、生産者との良い関係が作れるのではないかとの期待がある。
  • 農林業の雇用創出を考える場合、従来型の農業のイメージを変える必要があるという点については、高齢化が非常に進んでいるので10~15年で大きく変わる可能性があると思われる。

○最近の起業者動向と起業者のワーク・ライフ・バランスの現状と課題

  • 近年、若手や女性を含めて起業は増えているのではないか(ただし、昨年から今年にかけては景気悪化の影響を受けていると考えられる)。
  • 業種はサービス業が多く、女性経営者も増えている。
  • 最近の起業家の動向として、30~40代の男性だけでなく、シニアが会社を起こしたり、女性が子育て期に一度辞めて社会復帰の際に起業したり、大学発ベンチャーで若者が自分のアイディアで会社を作るなど、起業家像が多様化していることが指摘できる。
  • 起業家へのインタビューによると、女性が起業するきっかけとしては、働いていた会社で残業が多いとか、子育て支援制度が利用できないなどの事情があり、家庭と仕事の両立を望んで起業する場合がある。また、社会復帰、再就職しようとした時に適当な働く場所がなく、自分で会社を起こした人もいる。20~30代では育児関係の、40~50代では介護関係の起業が多いが、自分が必要な時に十分なサービスが無かったことが動機になっている。また、自分の住む地域を楽しく暮らしやすくしたいという発想も多い。店舗拡大とかグローバル戦略を考えている起業家は、暮らしの面よりも経営戦略の話が多い。
  • 起業家のワーク・ライフ・バランスは経営戦略そのものであり、働き手の働き方に仕事をどう合わせるかが戦略になっている。企業同士が連合して地域に託児所や介護窓口を作るようなことが課題になると思われるが、基本的には個々の企業で導入の仕方は全く異なり、一概には言えない。
  • 起業家への支援としては、資金面の支援よりも、例えば新しい働き方を考案した場合に行政や地域が応援するようなことが必要だと思う。
  • 起業と健康問題との関わりについては、健康への関心は非常にあるが、仕事に追われてなかなか配慮できないのが現状だと思う。地域貢献にも非常に関心があるが、あまり地域貢献に力を入れると事業展開に影響するため矛盾を感じながら取り組んでいる現状がある一方、地域貢献活動と事業活動が相互に良い関係をもたらして成長しているケースも少なからずある。

○自営業者のワーク・ライフ・バランス

  • 経済的自立の面で、自営業はリスクと不確実性が非常に大きいが、経済的自立が何とかなった場合には能力発揮や生きがいという面では満足度が高い。また、自営業者の方が地域との関わり方が積極的である。
  • 把握している範囲では、自営業の開業は確実に増えている。廃業が多いためストックベースでは減り続けているが、フローでは違った面が見える。
  • 自営業は開業しても2割弱は5年以内にやめており、所得も不確実性が大きい。また、競争が激しいことから多くの自営業はほとんど成長しない。新規開業の雇用創出はごく少数の企業が雇用の大半を創出している状況と考えられる。
  • 労働時間については特に傾向は無い。
  • 自営業者に生活の各分野の満足度を聞くと、「収入」や「資産」に関してはほとんどの人が満足していないが、「余暇・ゆとり」では満足度が高まる。「仕事」「心の豊かさ」「生活全般」については満足度がかなり高く、特に男性に比べて女性で高くなっている。
  • 同世代の雇用者と比較すると「収入」については、男性は雇用者の方が良いと答える人が多いが、女性は拮抗している。「時間や気持ちのゆとり」「仕事のやりがい」「社会的地位」「自分らしい生き方」では自分の方がよいという人が多く、特に女性の自営業者は「社会的地位」が自分の方がよいと考える人が多くなっている。
  • 自営業者でも家事は女性が分担している場合が多い。
  • 地域貢献活動について雇用者と自営業者を比較すると、自営業者の方が関わる必然性もあり、中心的存在になっているケースが多い。地域ともっと深く関わりたいのであれば、自営業を選択するという考え方もある。
  • 自営業者に対するセーフティネットを充実することは重要だが、一方で非常に成功しているケースもあるので、調整は難しいと思う。

(以上)