仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会(第3回)議事録

  • 日時: 平成19年4月11日(水) 13:00~15:30
  • 場所: 内閣府5階特別会議室

(出席委員)

佐藤
会長
岡島
委員
勝間
委員
川島
委員
北浦
委員
紀陸
委員
小室
委員
永木
委員
羽入
委員

(議事次第)

  1. 開会
  2. 「ワーク・ライフ・バランスの取組」について
  3. 意見交換
  4. その他
  5. 閉会

(配布資料)

資料1
近藤理事提出資料 [PDF形式:1030KB] 別ウインドウで開きます
資料2
羽入委員提出資料 [PDF形式:74KB] 別ウインドウで開きます
資料3
小室委員提出資料 [PDF形式:324KB] 別ウインドウで開きます
資料4
勝間委員提出資料 [PDF形式:364KB] 別ウインドウで開きます
資料5
北浦委員提出資料 [PDF形式:13KB] 別ウインドウで開きます
佐藤会長
それでは、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会を始めさせていただきます。
 今日御出席の方は、少し遅れられても皆さんいらっしゃるということです。お忙しい中、御出席どうもありがとうございます。
 本日の審議を進めさせていただきますけれども、あらかじめ御連絡させていただきましたように、本日はワーク・ライフ・バランスの取り組みについて、それぞれのお立場から御報告いただくということで、本日は日本商工会議所の近藤理事、羽入委員、小室委員、勝間委員、北浦委員の順に御発表いただきたいと思います。近藤理事は、スケジュールの関係で途中で退席されるということですので、近藤理事の御報告については発表の後に質疑をし、ほかの委員の方はすべて御報告いただいてから、まとめて議論するというやり方にさせていただければと思います。
 それでは、時間が限られておりますので大変恐縮ですけれども、大体15分程度で御報告いただければと思います。それでは、近藤理事、よろしくお願いいたします。
近藤理事
日本商工会議所の近藤でございます。今日は御説明の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 事前にいろいろ御質問事項をいただいておりますが、今日はお配りしてございます冊子、実は明日、新聞発表する予定でございまして、31ページの冊子に基づいて御説明させていただければ、大体御質問事項にお答えするような形になるかと思いますので、これを中心に御説明させていただきたいと思います。
 東京商工会議所では、平成9年から少子化問題について取り組んできており、いろいろ提言を出してきておりますが、やはり全従業員の7割が中小企業で働いているということもございまして、少子化対策を本当に実効あるものにするためには中小企業の経営者が少子化対策に取り組んでいかないと、なかなか実効が上がらないのではないかということで、特に平成16年3月に中小企業における少子化対応ハンドブックというものをつくりました。これは100ページぐらいなんですが、佐藤先生にも協力いただきましてシンポジウムなどを開催させていただいたところです。
 ところが、100ページもあるとなかなか読んでもらえません。しかも、中身を中小企業も社会的責任として取り組む必要がありますというようなトーンでまとめていますと、余計に経営者は読まなくなるというようなことを、その後の中小企業社との懇談会で指摘され、3年後に改訂版ということで、より読んでもらえるためのハンドブックという形で3分の1の31ページの冊子を取りまとめてました。
 中身については、1枚お開きいただきますと目次があります。その次に、中目次として概要がございます。前回のときは大体ネガティブな情報を随分入れ、このままいくと日本経済が非常に縮小均衡になりますよとか、売り上げも確保するのが大変ですよとか、あるいは従業員の確保も大変ですよというようなネガティブな情報を前面に出していましたが、今回は概要で5つございますように、ポジティブなものを前面に出していこうということで、ワーク・ライフ・バランスは企業の成長に不可欠であるとか、2番目は若干ネガティブなものですけれども、柔軟・迅速な対応ができる中小企業が今有利ですよ、あるいは仕事と家庭生活を両立させることで成長している企業のイメージはこんなものですよというようなこと。あるいはワーク・ライフ・バランスに取り組むことは難しいことではありませんよというようなメッセージを出しております。
 次のページに、まず、ワーク・ライフ・バランスは企業の成長に不可欠ということで、実際に気づいた社長は始めてる。その下に両立支援の最大のメリットは組織・業務体制の見直しとして、これは内閣府でまとめられた報告書の中から入れておりますけれども、特に仕事の進め方について職場内で見直すきっかけになった41.5%。職場内の理解が深まった37.2%となっております。特に中小企業などはヒアリングに行きますと、派遣ということでいわゆる代替要員を確保して対応するというのは少ないようです。ほとんどは同じ部署の現有勢力で補っていくという対応が非常に多い。そうしますと、休業者の分担をどのように皆さんで分けて補完していくかということの打ち合わせが必要になりますから、そういう中でいろいろ業務の見直し、組織の見直しが行われて、かえって合理化につながった、あるいは効率化につながったということを聞いております。
 それから、そういう打ち合わせをやることによって皆さんの意識が高まったと聞いております。上司の理解が大切だということですが、課長、部長の理解もそうやって高まっていったということだろうと思います。
 その下は、余り言いたくないんですが、先進企業はこの10年間で売り上げが27%伸びました、そうでない企業はマイナス16%ですよというのは一応出しております。
 1枚めくっていただきまして、中小企業の場合はむしろ柔軟な対応ができるので有利ではないかということが書いてあります。一番上の表にありますが、やはり規模が小さいほど両立支援がやりやすいと。大体70~80人ぐらいの規模がボトムになっていまして、それより大きくなるとまたしやすいということで、これも分析しますと、やはり70~80人ぐらいまでは中小企業の経営者が従業員の顔がよく見えているということです。しかも、従業員だけではなくて、その家族の状況まで見えている。したがって、従業員一人一人あるいは家族の状況に応じた柔軟な対応ができやすいということだろうと思います。また、100人を超えますと顔が見えなくなるので、むしろ就業規則などに落とし込んで皆さんに周知しないと、なかなか両立支援がやりにくくなるのではないかというような感じでおります。
 次のページはイメージが書いてありますが、下の方に経営者の声というのがあります。ふんだんに経営者の声を入れておりまして、全部で42入っているんですけれども、従業員の退職率が半減した、あるいはモチベーションが上がったとか、採用がしやすくなったというメリットをいろいろ書いてございます。
 次のページが、いろいろな疑問にお答えしようということですが、どうして両立支援をしようと思ったのかというと、優秀な人を獲得したいということ、そして、長い間勤めていただきたいという願いで支援に取り組んだという経営者が非常に多いようです。
 あとは、これをうまく打ち消さないと、なかなか取り組んでもらえないと思うんですが、やはりコストが掛かるんじゃないかということです。実際、コストを掛けずにうまく実績を上げている企業も多いんですよというようなことで、これも経営者の声を書いております。
 実際に取り組んでいる企業の経営者というのは、ほとんどメリットは計算されていません。従業員にとって、あるいは従業員の家族にとって、この会社で働いていてよかったという企業を目指している経営者が取り組んでいるんですね。したがって、その結果、生産性が上がりましたということはあるんですけれども、初めから生産性を上げることとか、利益を上げるということは一切狙っていないと思います。しかし、これから取り組んでもらうためには、やはりメリット論も出さないと、なかなか取り組んでもらえないんじゃないかということで、いろいろ業績を上げている企業も多いですよということで、例示で書いてあります。
 あとは、42社の中小企業だけではなくて大企業もヒアリングに行ってまいりましたので、大企業の声も入ってございます。Q1、2、3に応じてそれぞれ入れておりますけれども、両立支援をしようと思ったのは、先ほど御説明したように、優秀な従業員にできるだけ働き続けていただきたい。そのために従業員が働きやすい職場環境をつくってあげたいというようなことで始めたというのがほとんどでございます。
 4ページ、5ページがコストが掛かっていないということ。4ページの上で、建設業で別に設備が必要なわけではないから、コストはほとんど掛からないというような声が載っております。
 5ページの上から2番目、むしろ従業員が辞めてしまうことの方がマイナスなんだということで、いろいろ取り組みをやるとやる気も上がって、掛かった以上の効果があるんだというような声を載せてございます。
 次のページが、メリットはあるのかということで、これもほとんど予期せぬメリットというか効果があったということで、生産性向上に非常に成功したということを載せてございます。
 (2)では、女性従業員がいろいろ活躍できるようになりましたとか、特に(3)は、ほかでもいろいろ言われましたように、定着率が向上した、採用に有利になったということですね。特に、最近の若い人は自分のキャリアを伸ばすキャリア型よりも、生活とのバランスをとった働き方を選ぶ、いわゆるライフ型を選ぶ方が非常に増えていますので、やはりよい人材をとるためには、働きながら育児・介護ができるということがポイントになるのではないかと思っております。
 (4)の職場環境の改善は、休業者の仕事をほかの従業員複数がカバーするというのが大体多いんですけれども、お互いの連絡が密になった、従業員同士の結束が高まって、今はお互い様の精神が育っているというような評価が非常多いです。
 (5)でございますが、表彰を受けてマスコミに取り上げられて企業イメージがアップした。これによって応募者も増えたということで、企業のヒアリングでも何をしてほしいか、税制上の優遇措置はどうですかとか、あるいは融資制度の充実とかいろいろ出ていますが、表彰してそれをPRしていただくと非常にありがたいというのが一番多かったです。役所の方でも余りお金が掛かりませんので、表彰してそれを広く新聞等でPRしていただければ非常にありがたいということです。
 あとは、8ページ、9ページに、中小企業はどんな支援策をやっていますかというのをメニューランキングという形で出していますけれども、休業・休暇制度で半日とか時間単位の有休取得可能な制度ということで、例えば、みどりのおばさん当番休暇で1時間だけ休暇しますとか、子どもを病院に連れていくのに2時間いただきますとか、そういうようなことをきめ細かくやっておられます。
 第4位にファミリーフレンドリー休暇というのがありますが、子どもの行事、特に父親参観日には必ず休暇をとらせるとか、あるいは子ども誕生日休暇、奥さんの誕生日休暇とか、そういうものをいろいろきめ細かく設けてやっておられるところもございました。
 大企業でもやっておられるところは多いんですが、出産・子育てに優しい職場環境の中で、1位の職場に子どもを連れての勤務可能というのは中小企業で結構ありまして、企業の中で空き部屋がある、あるいは空き会議室を利用して子どもの遊び場に提供して、誰が面倒を見ているかというと、社長と社長の奥さんが見ている、時々手の空いた社員が面倒を見るということで、別に補助金をいただいているわけではありません、これは秋田とか地方で多かったですね。実際に見てきました。
 10ページ以降は手順だとか、東京商工会議所でございますので、東京都と23区の支援策といったものを一応参考に入れ込んでございます。
 以上、簡単でございますが。
佐藤会長
どうもありがとうございました。東京商工会議所として中小企業のワーク・ライフ・バランスに取り組みやすい情報提供とパンフレットをつくられたということですが、もう少し御説明していただきたいとか御質問があれば、どなたからでもいただければと思いますが、いかがですか。
羽入委員
大企業でも中小企業でも同じかもしれませんけれども、こういった取り組みをすることによって勤務形態だけではなくて発想が変わるとか、例えば、製造業や何かの場合は新しい製品の発想が生まれたとか、そういうような報告がありましたら、教えていただけますか。
近藤理事
私が行ったところは具体的にはないんですが、大企業で女性従業員が大活躍ということで、一度育児休業をとられると、母親としてのいろいろな視点を生かした商品開発といったものに生かすことができたというのは結構ございますね。
羽入委員
ありがとうございました。
佐藤会長
いかがですか。
岡島委員
7ページの資料を見ますと、(4)「職場環境が改善」で例が幾つかあります。どちらかというと、両立支援というのは子育て支援的な発想的で入ることが多いと思うんですが、ここで建設業の例が上がっているということは、むしろ男の方が多い職場だと思うんですが、具体的にはどういう契機でこういうことが行われたのか、あるいは具体的にどういうことが行われているのかということがもしおわかりになりましたら、教えていただければと思います。
近藤理事
私が行ったところは社長が女性です。御主人が亡くなられ、御主人が物すごく企業内託児所をつくりたいというような理想を持っておられたんですが、先ほど来御説明していますように、いい人材にできるだけ長く働いてもらいたいというのが発想の原点なんですね。そのために建設業で建築現場の確認などは女性がやられているみたいです。これはお答えになるかどうかわかりませんが、育児休業をとっておられるときに、実は建築現場の確認にちょっとだけ行ってくださいとか、女性が活躍できる部分については、できるだけ女性を活用したいということでやっておられると思います。
 あと、設計も在宅でできるんですね。ここには載っていませんが、印刷なども在宅でできるものはできるだけ在宅でやってもらうような工夫は結構されていますね。
佐藤会長
商工会議所で、以前は割合、次世代法の関係で子育て支援が前面に出て、たしか100ページの方はその傾向が強かったかなと思うんですけれども、今回も後ろの方に行くと次世代支援が載っていますが、前の方は割合両立支援、ワーク・ライフ・バランスで、今の質問にもかかわるんですけれども、その辺は、子育て中の社員だけではなくて広げるというようなことが意図的に何かあったのかどうかということが一つですね。
近藤理事
今回のヒアリングで、子育てだけではなくて教育ですかね。子どもの教育にもっともっと家庭が参画をしなくてはいけないと。そのために中小企業の経営者もそういう時間をつくってあげる努力、それから、できるだけ一緒に食事をしてコミュニケーションをとってあげる時間を確保することが必要ですよねというのが最近のヒアリングで随分広がってきているので、こういう形になってきたんですけれども。
 もともと次世代育成法に根ざしてやっていたんですが、だんだん介護も必要ですし、教育も必要ですしということで、まさしく仕事と生活のワーク・ライフ・バランスという形になりつつあると。最初は、ワーク・ライフ・バランスは使うつもりではなかったんですが、最後の取りまとめではこういう形になってしまったという感じです。
勝間委員
こちらの経営者の方の特徴というのはありますか。企業として優秀だというのはわかったんですが、例えば女性経営者が多いとか、年代が年をとっているとか若いとか。
近藤理事
優秀かどうかは別として、非常に思いやりのある経営者でした。従業員の方もみんな礼儀正しかったです。それだけ大事にしているのだろうと思いますよ。
川島委員
ちょっととぼけた質問になってしまうかと思うんですけれども、商工会議所の方としては、仕事と生活の調和ということに関しまして、現状では何が問題で、その弊害は何であるという問題意識に伴ってこうした提案をされているのかを簡単に整理してもらえるとうれしいんですけれども。
佐藤会長
取り組まないと解消できない課題は何かと。
川島委員
そうですね。あえて何かを持ち出すということは、何らかの背景があって問題意識があるわけですから、商工会議所としての問題意識は何かということをお聞かせ願えればと思います。
近藤理事
問題意識は、やはりできるだけ広く中小企業の経営者に取り組んでもらいたい、そのためにはどうしたらいいかということで、これでも多分だめではないかと思うんですが、わかっている経営者は何も言わなくても取り組んでいるんですよね。だから、今も試行錯誤している段階だと思います。だから、どうしたら一番わかってもらえるのかということで、できれば第3弾もまたつくっていきたいと思います。
 一般的に聞くと、やはりコストが掛かるからだめだよとか、あとは手間が掛かるから、特に就業規則などの変更は、大体社長が総務部長を兼ねていますから、そんなのはやってられないよとか、それをどうブレークスルーしていくかということが、今も課題ではあると思っています。
川島委員
なぜブレークスルーが必要だととらえているかということなんですけれども。
近藤理事
それは最初に申し上げましたように、全会員の7割が中小企業で働いているわけですから、7割の会員がいる中小企業でこういう取り組みを広げていかない限りは、本当のワーク・ライフ・バランス社会というのは実現できないんじゃないかというのが問題意識ですね。
川島委員
要は、例えばワーク・ライフ・バランスがとられていない多くの企業は問題であって、調和がとれている企業が理想であるという大きな仮説を持たれていると思うんですけれども、その仮説の根拠をどこに求めていらっしゃるか。単に調和がとれていればいいというのはお題目では美しいんですが、具体的に現状で何が問題だから、これをした方がいいですよという提案を商工会議所としてなされているのかというのをお聞きしたいなと思ったんです。というのは、私が例えばある中小企業の社長で、これをもらっても「いや、うちは問題ないから関係ない」と見ないと思うんですけれども、うちは問題ないと思っている企業の何を問題だととらえていらっしゃるかということです。
近藤理事
その点は、なかなかお答えは難しいですね。
佐藤会長
2ページのところだとワーク・ライフ・バランスに取り組まない企業は成長できませんよと。成長できないのは人の確保とか定着とかそういうことなんですかね。
川島委員
そうすると、人材が流出しているという現状を憂えているというところが大きなバックにあるわけですか。
近藤理事
流出よりもとれないというのが現状です。更に景気がよくなっていくと、よりとれなくなっていくと思います。
川島委員
そこが一番大きな問題意識だと。
近藤理事
はい。そこでようやく気づくんじゃないかと思うんですよね。だから、現実的に問題にぶち当たらないと、なかなか気づいてもらえないんじゃないかと思っています。
池永調査課長
東京商工会議所さんで、こういう実践的なガイドブックをお作りになって素晴らしいと思います。中小企業の経営者の方にワーク・ライフ・バランスの取組をやっていただくに当たって、どういう情報提供の仕方がいいのか。例えば、全国に商工会議所がありますが、商工会議所がどういう役割を果たされようとしているのかを含め、効果的な中小企業への働きかけということについて御示唆をいただければと思います。
近藤理事
それも難しいですね。商工会議所の人間がこういうことを言ってはいけないんですが、個人的には今、行動計画は301人以上の企業ですけれども、先ほどは100人ぐらいでボトムになっていますが、基準としては101人以上を義務付けるとかそういうことをやらない限り、幾らPRしてもなかなか取り組んでもらえないんじゃないかと個人的には思っています。
佐藤会長
そろそろよろしいですか。
 それでは、お忙しいところ本当にどうもありがとうございました。

(日本商工会議所、近藤理事 退室)

佐藤会長
続きまして、4人の委員の方に順次御報告いただいて、最後にまとめて質疑したいと思います。
 では、最初に羽入委員から御報告をお願いいたします。
羽入委員
お茶の水女子大学の羽入です。よろしくお願いします。
 資料をお手元に配付させていただきました。お茶の水女子大学の取り組みとして、今回は女性研究者の育成について御報告させていただきたいと思います。この場合、特に女性研究者として自然科学系の、理農工系の女性研究者に焦点を当てました。今回特に発表させていただく際のテーマとして「女性研究者に適合した雇用環境モデルの構築」というプログラムの内容を御報告させていただきます。
 お手元にもう一つ資料としてパンフレットを用意させていただきましたが、これは開始当時につくりましたパンフレットです。コスモスの花になっていますが、これは開始したのが秋だからというわけではなく、実はほかに理由がございます。2ページ目を開けていただきますと、英語の題名で「Career Opportunity Support Model from OchanomizuScientists」としまして、この頭文字をとってCOSMOSという通称で呼ぶことにいたしました。これは昨年の夏、科学技術振興機構の振興調整費の事業として開始されたものです。
 お茶の水女子大学では、女性研究者のさまざまな取り組みを行っておりますけれども、先ほど申し上げましたように、今回は自然系の女性研究者の研究環境の整備ということで取り組んでいるものでございます。これは一つの実験として私どもは考えておりまして、これによってどういう効果が得られるのか、どこで失敗するのかを含めまして考えていきたいと思っております。
 今回このような取り組みを始めるに当たって、きっかけになりましたのは2つございます。1つは、第3期科学技術基本計画で、女性の自然科学系の採用目標25%というのが上げられました。この数字目標に少しでも貢献したいということがございます。
 もう一つは、自然科学系に特有だと思いますが、実験をしている研究者にとってはワーク・ライフ・バランスというのは必ずしも好ましいことではないと思われるのではないかということがございます。ですが、外国の研究者あるいは外国に留学して研究してきた人の話などでは、決してそんなことはなく、5時にはみんな帰っているということをよく聞きます。日本の学界ではそういうことはあり得ないという風潮がまだ強く、先ほど近藤理事の御発表にありましたように、全体的な意識改革というのがどうしても必要なのではないかと思いますが、そのようなことにもチャレンジしたいと考えております。
 もう一つ、実は独立行政法人化された後で国立大学は教員の仕事が著しく増えまして、そのような中でどうやって研究を進めるか、しかも、プライベートな生活を大切にし、かつ、大学としての生産性をどう上げるかという多くの課題を背負うことになりました。これらの問題がすべて一挙に解決されるとは思いませんけれども、何か手立てをつくりたいということが、この取り組みの始まりにございました。
 3ページにございますけれども、現実には子どもを抱え、子どもも涙し、親も涙しというところから始まるのかと考えつつ、ここをどういうふうにしたら成果が上がるのかという検証をすることを考え、そして、教育研究機関としての環境の提案をさせていただきたいというのが意図でございます。
 なぜこれが実験の場として私どもが提案したかと言いますと、実験するにはやはり対象数が多くなければいけないと思いますが、教授、准教授を含めてですが、そのうちの40%近くが女性です。自然系に限って言いましても、30%が女性の教員なんですね。そうしますと、モデルがたくさんあるということが言えると思います。これは恐らく大学としてはまれな状況なのではないかという気がしております。そのようなことがございまして、やはりモデルがたくさんあるということで、実験可能な環境にあるのではないかと考えております。それを活用しまして、できれば研究環境のモデルとして提案をさせていただきたいと考えております。
 主な取り組みの内容を5ページ目に記しました。3つの要素から成っております。1つは、質的・量的な雇用環境の整備、もう一つは情報環境の整備、3番目は啓発活動です。
 具体的な内容が6ページ目にございますけれども、質的・量的な雇用環境の整備というのは今回特に触れたいと思いますが、モデルとなる女性研究者を選びました。その研究者に対して支援メニューを提供して、それによってどのように研究環境が変化するかということを見ていくということがございます。
 もう一つは、少しマスコミでも注目していただきましたけれども、全学的にできるだけ定時に帰れるような雰囲気をつくるということを考えております。
 もう一つは、学内に保育所がございますけれども、すぐ隣接したところに独身寮がございまして、そこを活用するという、これが第1番目の質的・量的な雇用環境の整備の内容として考えているところです。
 そのほかの情報環境整備といいますのは、子育てをすること、研究をすることに伴うさまざまな情報をできるだけ多く収集して、質の高い情報を蓄積して、学内だけではなく広く社会と共有できるという体制を整えたいと考えました。
 3番目の啓発活動は、若い次世代の女性研究者、高校生や大学の学部生に対してキャリアモデル、ロールモデルを提案するということで、これから女性はどのようにして研究と家庭を両立させるかという啓蒙活動もしていきたいと思っております。
 今回御報告させていただきますのは第1番目のところです。7ページ目にございますけれども、これはこのプログラムの全体の活動の状況です。モデルとなる女性研究者というのがございますけれども、その支援プロジェクトの報告会というものを公開で全学的に行っております。
 それから、この事業を開始する前に、初期状態がどうであったかということのヒアリングを行いまして、そこから更にどういう変化が得られるかということを観察していこうと考えて活動を続けております。昨年秋には公開の講演会を行いました。「ワーク・ライフ・バランスを目指して『お茶大モデル』の構築」という大きなタイトルで講演会をいたしまして、板東局長にもお話いただきました。ありがとうございました。
 この活動の核になっております女性研究者をモデルとして5名選びました。この5名は、いずれも小学生以下の子どもを持つ女性研究者です。このモデルとなった5人に対して、1人の研究者に2人ずつのアシスタントをつけております。そうしますと、3人単位の5つの研究グループができることになります。つまり、手厚い支援をし、どのように成果が上がるかということを見ていきたいと思いました。このグループが中心になりますけれども、ほかにいわば先輩に当たるような研究者をメンターとして整えて、随時アドバイスをする、相談に乗るというような形がございます。
 右の方に女性支援室とございますけれども、これは国立大学が独法化されたときに全学の機構として11の室を設けましたが、そのうちの1つに女性支援室というのがございまして、これが全学的なバックアップ体制の元になっています。
 左の情報バンク、女性研究者支援プロジェクト推進室というのは、このプロジェクト自体を観察するチームです。
 一番下にありますアドバイザリーボードは、学外の人材育成に携わっている方々に、随時アドバイスをいただくというシステムです。このような形で全体的に9か月ぐらいの活動をしてまいりました。
 その成果として9ページをごらんいただきますと、少し内容を御報告させていただきたいと思います。5つの研究グループの平成18年度の成果ですが、研究者本人が語っているキーワードというものが面白いかなと思って、そこに書かせていただきました。プログラムが始まる前は、とにかく子育てにも研究にも教育にも大学の運営にも全力投球をして、もうクタクタで無秩序な全力投球。プログラムに入ってモデルになった時点で、統制は取れた全力投球。まだちょっと疲れているように思うんですけれども、途中でとったアンケートによりますと、「今一番したいことは何?」という問いに対して「深呼吸をしたい」というのがあって、本当に悲惨さが伝わってきます。そして、1人の研究者に対して2人のサポーターがついた3人のグループで動かしておりますので、マネジメント能力がないと3人に仕事を割り振るということができない。そこで、マネジメントの能力が少しずつついてきたということを本人たちは言っています。それはどういうことかというと、時間をちゃんと配分して集中させる。自分の研究に集中できる時間に集中しなければ、ほかに時間はないということに気がつくとか、仕事をどう割り振るかとか、どういうふうにして要らない仕事を省略するかというようなことが行われたと言っています。今後このような形にして、ワーク・ライフ・バランスのとれた研究生活を送りたいというのが研究者の意見でした。
 自分自身が反省してみた評価とか、学生の評価というものを提案して提出してくれた研究グループもございましたので、ちょっと御紹介いたします。自分の評価としては、とにかく帰る時間を決めて、この時間までに帰らなければと思って仕事をする。ですから、仕事があるだけやるのではなくて、帰りの時間のデッドラインを決めて、そこに合わせた仕事をするように習慣がつけられた。そして、子どもを迎えに行く時間ができた。
 それから、研究の面では、1人だと子育てをしているということで、1人分以下の仕事しかできないような感じがしたんだけれども、例えば1人補助がつくことによって、1+1が2以上の、もしかしたら3ぐらいの効果が上げられているのではないかというような実感を持った人もいました。学習の評価についても少し御報告したいんですけれども、研究の面では、研究者は情報はたくさん実験をしてデータをとっている。だけれども、それを整理する時間が先生たちはなかったらしいけれども、その整理がどんどん進んでいるように思われるというふうに学生が述べています。
 それから、研究室に活気が出てきたとか、それまで活気がなかったのがすごく問題ではないかと御本人も言っていましたけれども。それから、アシスタントがついていまして、アシスタントはちょっと若い年齢の人なんですが、そうすると、学生と先生をつなぐ役割を果たして、いろいろな相談にも乗れるようになったということがあります。
 全体的なプログラムについてどう考えるかという質問をしましたら、これについてもいろいろな意見がございまして、子育てをしながら研究することというのは、もともと無理なことではないかという学生もいますし、完璧な両立というのは不可能ではないかという学生もおります。
 賛成だけれども、子どもの時間が大事なのではないかというような意見、予想される意見ですけれども、中には非常に心強く、当然両立はできなければならないと思うし、自分も将来そうしたいという意見もございました。
 もう一つの活動として、9時-5時というのが注目されておりますけれども、随分学内では議論し、いろいろな関係者、ほぼ学内全体の部局長の話を聞き、ヒアリングをし、情報をまとめて、現在ロードマップをつくっております。先月末に一度実施をいたしました。事務局はほとんどのところで実施可能だという実感を持ったようです。ただ、年度替わりでしたので、いろいろなことがございまして達成できなかったところがこのようにございます
 今後の課題として考えておりますのは、勿論研究の支援をきめ細かくしなければいけないということもございますし、教育の面で夕方まで授業がございますので、カリキュラムをどういうふうに編成するかという大きな問題もございます。先ほど申し上げましたような情報を蓄積してそれを発信するまでに持っていきたいと考えております。
 9時-5時体制につきましては、5時になったら帰ればいいというふうに誤解を招かないようにしなければいけないと思います。私たちが今心掛けているのは、5時に帰るというのはおかしなことではないんだという、心置きなく5時に帰れるような体制をつくりたい、そういう環境が必要なのではないか。そのような環境を整えることによって、恐らくワーク・ライフ・バランスの実現というのは図られるのではないかと思いますけれども、学内で大きく変わったのは9時-5時という言葉だけで随分意識が変わりまして、仕事をすることと子育てというのは両立するのが普通なんじゃないかというような雰囲気が少しできてきた、大変喜ばしいことかと思っております。今後、科学技術基本計画に沿って女性研究者を増やしたいと考えておりますし、やはり人間としてバランスのとれた研究者が育っていくということが最大の目標ではないかと考えております。
 ちょっと時間が超過しまして、失礼いたしました。
佐藤会長
どうもありがとうございました。
 それでは、続けて小室委員から御報告をお願いしたいと思います。
小室委員
よろしくお願いいたします。ワーク・ライフバランスの小室と申します。仕事としましては、企業のワーク・ライフ・バランスコンサルティングをするというのが本業の会社でございます。
 1枚めくっていただきまして、本日の目次のところに書きましたように、2項目ですが、今、弊社に問い合わせ項目として急増している項目というものを5つ挙げまして、その5つから見える企業の課題ということと、そこに対して弊社がどういうソリューションをいつも提案しているかといったことをお話しできればと思っております。あとは、そこから見えてくる企業向けのサービス、個人向けのサービス、行政に期待することというのを後ろにつけてあります。
 自己紹介のページが次に入っています。そちらに私の今の状況が一番下に書いてありますように、実は子連れ出勤をしています。先ほど近藤委員のお話にありましたように、オフィスに子どもがおりまして、どういう形でやっているかといいますと、実はインターン生をたくさん受け入れているんですけれども、インターン生たちの名前というのがベビーシッターインターンという名前でして、採用のときにパソコンのスキルを聞くのと同じ感じで「あなたは子どもは好き?」というのを聞いて、子どもが好きだったら採用という会社でして、これをやったことによって、学生が仕事に対するイメージが沸いたのと同時に、自分が子どもを持ったときのイメージというのが沸いて、ほとんどの子が結婚したいと答えていた年齢が5~6年早くなりましたし、子どもが欲しいというふうに、実はベビーシッターインターンをやっているのは男子の方が多いんですけれども、男子はベビーシッターをすると、よりインターンの仕事にも来るようになるんですね。自分の将来のイメージが非常につかめるようになったと言って、仕事へのモチベーションも高くやってくれるという、今後のベンチャー企業で女性の経営者の方などにとっては一つのソリューションではないかと思っております。
 私自身は資生堂に7年勤めて、女性が7割の会社でしたので、そのときに職場復帰プログラムという育児休業からスムーズに復帰するためのプログラムを社内ベンチャーで開発しまして、それをやっているうちに500社ぐらいとお付き合いをして人事部のご相談に乗っているうちに、育児休業は女性だけではなくなってきていて、男性の育児休業者だとかメンタルが理由の休業であるとか介護休業というところで、企業が組織として非常に困り始めているという現状を把握して、ワーク・ライフ・バランスコンサルティングを本業でやる会社というのが日本に必要なのではないかということで、昨年起業してやっております。
 現在は、企業のワークライフバランスコンサルティングに加えて、育児休業者(男性も)や、介護休業者、メンタルでの休業者の職場復帰支援プログラムarmo【アルモ】を企業に導入しております。
 次ページに、今、弊社に問い合わせが増えている項目5つを挙げてあります。1つ目が、男性管理職意識改革セミナーというものなんですけれども、ここから見る意識というものと、2つ目が弊社のプログラムarmoの問い合わせ。3つ目が残業時間削減、これだけに限ったことではないんですが、職場全体の仕事の見直しというところから派生して、残業時間削減のコンサルティングというものも増えています。企業内託児所の検討コンサルティングというものも徐々に増加しています。ただし、後ほど御紹介しますが、かなり検討が断念されているもったいない状況ではあります。5つ目が、次世代法への対応ということで、規模の小さな企業さんですと、奨励金だとか次世代法に対応する人材がいないということで、非常にその辺の御相談が多いというところがあります。それを詳しく次のページ以降で見ていこうかと思います。
 1つ目のマネジメント層の意識改革・スキルアップというところが今企業の課題になって依頼されてくる部分なんですが、セミナーを行ったときに、セミナーの後にとったアンケートで、なぜ今までワーク・ライフ・バランスについてとか両立について積極的ではなかったんですかということを聞いてみると、ほとんどの方が人事部も行政の圧力でやっているんだと思っていたと。なので、自分の部署で無視しておけば人事部も喜ぶというふうに、あれは会社の本音じゃないんだと思っていて、それを自分のところでストップして育児休業はとらせない、残業はさせるというようにしておいた方が、実は会社のためになっている、自分は陰のヒーローなんだというような形で誤った愛社精神を持っていたというのがありました。セミナーを聞いた後に、今日は非常に腑に落ちたと、むしろ両立支援をなしいと会社に背くことになるんだという新しい考え方が入ったので、これからはアクションに移しますというようなことを書かれていました。
 そういったときに、その意識が変わったかぎになったときの情報というを聞いてみると、一番初期は両立支援にコストは掛からないということを初めて知ったと書かれていました。これは先ほどの近藤理事の冊子にもあったんですけれども、実際に計算をしてみましょうということで1人の方に休業を提供したら、コストは何が掛かるのかという話をしますと、結局、健康保険であるとか社会保険から出るだけで、実は会社は何も負担していないんだということを意外と上司は御存じなくて、休んでいるのに何十万円とお金を払っているんだろうという誤解をされているケースが多かったです。それから、1人が辞めるということに対して採用費、育成費が100万円以上が無駄になってしまうという認識であるとか、そういったものを論理的に考えてみてくださいというところでお話ししすると、すんなりと話が通るということが多かったです。
 一つ、ある企業さんで少し進んだ例ということで、休業期間中に形式上、本社の人事部配置にするという形で、実際には負担になっていないんですけれども、各自業所で1人の穴を置いておくということ自体が負担だというような企業さんの場合には、その時期だけ人事部配置にするということをするだけで、そういう感覚というのがなくなって、また復帰後は元の職場に戻るんですけれども、形式上そういう対応をとっているという企業さんもあります。
 コストについて考えて見ますと、これはある企業さんの例ですが、3,000人規模の企業さんで、当初の目標は2時間だったんですが、結果としては毎日1.2時間の残業時間の削減ができた企業さんというのが、前年と比べて年間で9億円の人件費が浮いたんですね。1人たった1.2時間を年間やるだけで9億円。プラス健康保険だとか光熱費もかなり減少したという事例がありまして、むしろコストが幾ら幾ら浮くので、これを両立支援策に使いましょうというような話で意識改革を進めると、全体が動き出す。漠然とワーク・ライフ・バランス化するとお金が掛かっていると思っている誤解を解くということで、社内が雪が解けたように動き出すというケースが非常に多かったというのがあります。次のページに入れているのが、実際にセミナーの中で使っている、日本の現状を示すグラフなんですけれども、特にこのページの印象が強いということだったので、こんなものを紹介していますという例なんですが、右側のグラフがHDIとGEMの国際比較の例で、日本は非常にヒューマン・デベロップメント・インデックスは高い、教育は非常にされている国であって、男女ともに押しなべて明日にでも働ける状態に高く教育しているにもかかわらず、ジェンダー・エンパワーメント・メジャー、GEMが非常に低い。これだけ教育にお金を費やしておいて、その育てた人材を社会が使っていない、非常に教育に掛けたお金がむだになっている国であると。
 赤丸で囲ったところなんですけれども、ここをネガティブに見るととんでもなくもったいないんですが、逆に言えばこれが潜在労働力である、明日にでも働けるのに家庭に眠っている潜在労働力であるから、ここを上手に使えた企業は2007年問題で優秀な人材のとり合いということが起きていても、幾らでもまだまだ人がとれると。このことを考えると、左側の部分ですが、女子学生採用の優位性ということと、せっかく採用した人材を長期的に育成できる環境づくりという2点をやっていくことが一番の課題ですよと。
 採用に対する優位性の確立ということは結構頑張っている企業が多いんですが、採った人をちゃんと育成していないという企業が一番実はむだが多いのです。もう一つ見落としがちなんですけれども、あと15年後になると、今は2007年問題で労働力人口が減るということには問題意識を持っているんですが、その人たちがあと15年すれば要介護世代に入りますよということで、そうすると誰が介護をするのかと言えば、団塊ジュニアである、30代の私たち世代です。そしてこの世代は1人っ子か2人っ子なので、ほとんどすべて誰かの親にはひもづいている状態ということになると、今まで明日から急に会社に来ないということはなかった働き盛りの20~30代の男性までもが、急に明日から介護休業というようなことが起きてくるんですよと。それを大多様化時代と呼んでいるんですが、明日誰が会社に来られるのか見通しがつかない時代に、あと15年も経てば入るのですというようなことをこういったデータでお話しすると、2007年問題から1つしか問題意識を持っていなかったのが、介護する人たちというのもうまくマネジメントしなければいけないんだという問題意識が出てくるというのがありました。
 それから、15年後の就職活動について考えてみると、女子学生たちは、企業を見て50代の女性の役員というのが約半分入っていなければ、選ばなくなります。15年後50代の女性役員が普通に採用した割合と同じだけいるような会社というのはどういう会社かといえば、その人たちが15年前なので大体34~35歳であると。そうすると、35歳ぐらいの女性が今時点会社を辞めなければ、採用したのと同じ割合で入っているわけなので、今35歳ぐらいで辞める人は何で辞めるのかと言えば、出産・育児で辞めてしまうと。出産・育児で辞めないようにさえしておけば、15年後に役員の中に男女が採用したのと同じ比率で入っていて、採用するときに新規の女子学生たちにも評価される会社になるんですよと。それが15年後にヘッドハンティングをして同じ割合にしていこうとしたら何億円というコストが掛かりますということで、15年後にやれば非常にコストが掛かる話を15年前の現在辞めないようにする仕組みづくりだけしておけば、ほとんど費用も掛からず、サステイナブルな企業になれますよというようなデータ、このページが非常に企業の中では印象に残ったという管理職の方からのお話がありました。
 次のページに行っていただきますと、そういった時代の中で、これからのマネジメント層に求められているマネジメントスキルというのは何でしょうかという話なんですけれども、今までは24時間会社に時間を捧げてくれる男性という、均一な人材に対して同じ手法でマネジメントするということが公平性だと思っていたし、そして、成果を出してきたと。今までというのはそれでフィットしていたのではないでしょうかと。これからはそれが変わっていきますということで、多様な人材を個々に合った手法で個別のマネジメントをするということによって、同じ成果にまで持っていくという、これはワンランク上のマネジメントなので、意識改革というよりはスキルアップですねと。現状の管理マネジメントスキルではなくて、それをもう一段階上げて、多様化時代への準備をしてくださいと。特に育児休業者は、これから来る多様化の始まりでしかなくて、その人たちへの対応するスキルを身につけることによって多様化時代の準備をしてくださいと。今そういったマネージメントスキルに変更できた人が、これから介護であったり、メンタルであったり、さまざまな状態というものが出てきても、マネジメント職としての仕事というものを果たしていけるでしょうねというような形で、やるやらないは自由なんですが、確実にこれから必要とされるマネジメントスキルはこちらですよというような話をさせていただくと、やるなら早い方がいいというような意識改革が起きてきているというところがありました。
 2つ目、8ページですが、弊社で持っている職場復帰プログラムarmoというものですが、概要は次のページに大きく1枚で入っています。休業中にe-learningができたりとか、会社の組織変更なども全部自宅で見られるようになっていたりとか、同じ会社で休業をとっている人同士が連絡を取り合えたりとか、復帰後の託児のサービスが受けられたりというのがこのarmoというサービスなんですけれども、こういったものを導入するきっかけというところで、先ほど近藤理事からも採用というところで困って初めて動くという話がありましたが、まさにそうでして、昨年までは意識の高い、本当にCSRに力を入れている企業の一部が導入ということが多かったんですが、2007年になってからの導入の仕方は、営利追求型企業の代表格みたいな企業からたくさんお問い合わせがあって、なぜお問い合わせがあったんですかというお話をすると、ほとんどが今年は非常に採用に困って、魅力付けをしなければいけないというところで考えていくと、やはり女性の両立支援をやらなければいけないというような、そういったところが導入のきっかけという傾向です。
 学生に絶大な人気だったある企業さんが、この数年で一気にランキング50位圏外になってしまったんですね。それまでは男女が伍して働ける、男女平等だということが評価されて、非常に女性に人気が高かった企業なんですけれども、ここ数年でいろいろな企業が男女を同じように採用するになったので、同じように働けるということは魅力ではなくなってきて、むしろ非常に男性化して働かなければいけない、仕事と家庭を両立できないイメージの方が、その企業の女子学生人気の離れた大きな原因になっていて、今は両立できる企業というのを目指したいんだという学生の傾向というのが如実に見えてきていました。
 ある学生が弊社でも言っていたのが、以前は初任給にこだわることが多かったと思うけれども、数年で辞めなければいけない企業では、幾ら初任給が高くても生涯賃金が非常に少なくなってしまうということで、働き続けられることこそが生涯賃金が高いということにつながるので、一時的な金額ではなくて、将来の金額ということで会社を見なくてはという話を学校から習ったとか、学生同士の勉強会の中でもそういう話題が出ていると言っていました。
 それから、これは携帯電話のベンチャーで300人ぐらいの会社さんなんですけれども、育児休業者が1人もいないのにarmoを導入しました。その企業さんの場合には、今20代に非常に優秀な女性がたくさんいて、明日結婚ラッシュ、出産ラッシュが起きてくるというような状況になりまして、そういったときに1人も休業者がいないからではなくて、いないうちに今後も両立できますよというメッセージを発信しないと、1人が辞めていってしまったら、どんどんと連なって辞めてしまうということで、メッセージ発信ということに重要性を置いて、経営者の方が自ら社内パンフレットなどでアピールをしたり、採用の時期にリクナビに載せるということを意識して導入したりというようなことをされています。
 導入のきっかけの2つ目は、復帰後の離職防止、もしくは復帰後に仕事を割り切ってしまうケースを防ぎたいということで導入をしています。これは、ある企業の意識調査なんですが、復帰した後に私は仕事をもう割り切っていますと8割の方が回答してしまった企業がありまして、非常に問題意識を持ちました。なぜ復帰後に仕事を割り切ってしまうのかというところで、子どもがかわいいから、仕事に対するこだわりがなくなったと考えがちですが、実際にはその裏に休業中に会社から何の連絡もなかった、会社から期待感を感じなかったという、関係が途絶えたことで、目の前にある子どもの方に気持ちがどんどんといってしまって、関係が途絶えた会社への意識が落ちた。そのまま復帰をしたので、仕事への割り切りというのが出てきてしまっているというようなことが、調査の中から見えてきました。そういったモチベーションがダウンしたまま上昇志向がなく、ずっと横ばいのキャリアで働く人を増やしてしまうのというのは、会社にとっても非常に儲からない仕組みになってしまいますので、そういったところで復帰のときにモチベーションを上げる仕組みということで、復帰プログラムを導入しました。復帰率が4倍になっているという企業もあり、復帰後のモチベーションにも大きく変化がでました。
 あとは、復帰後に辞めてしまったり、割り切る原因のもう一つに、復帰後の子どもの病気による欠勤で肩身が狭くなる現象というのが非常にありまして、子どもの事情で何回も休んでいる自分が会議で発言をするのはおかしいんじゃないかとか、堂々と仕事ができなくなるというような意識がありました。そこで、復帰後の託児のサポートというものを開始して、社内アンケートの中では肩身の狭いという気持ちはかなりなくなりました。これはベビーシッターのポピンズさんや、病児保育のNPOのフローレンスさんなどとの提携しているんですが、そういった声がありました。
 さきにあげたように採用がモチベーションとなって両立支援に乗り出す企業が多いので、社員満足度調査の内容を外に公表するとか、そういう形できちんと社内に対応している企業さんでは、採用が有利になるような仕組みというものをもとより整えることによって、取り組みが進むんじゃないのかなということを考えました。
 10ページは、armoを導入された企業さんから上がっているメリットを簡単にまとめたものなんですが、上の4つは即感じられるメリット、復帰後に即戦力になったとか企業イメージが上がったというところなんですが、非常に重要なのは5つ目で、導入してすぐには感じなくて、導入して時間が経たないとなかなか感じないところではあるんですが、休業から復帰してきた人たちが増えたことによって、さまざまな価値観で商品づくり、サービスづくりというところに幅が出てきたと。復帰をした人たちに自社の商品を非常にけなされたという企業さんも多くて、うちの会社はちっとも働く女性の動向・心理がわかっていないと。CMを入れる時間帯も昼ばかりが多いが、それでは働く女性は全然見ていない。ニュース誌だとか新聞にプレスリリースを打ったりという方が、今の働く世代の女性にはずっと響くのにというようなことで、ある食品会社さんで復帰してきた女性たちにが従来のCM手法に問題提起をして、そういった情報発信の手段をかなり変えたところ、売り上げが上がったというような例もありました。
 上記のような、復帰支援プログラムの導入急増の状況からみて、両立支援による採用優位性の向上と継続して育成できる環境づくりが、企業にとっての課題の2つ目です。
 3つ目ですが、残業時間削減コンサルティングというところですが、こういったダイレクトなメニューがあるわけではないんですが、結果としてこういったことの依頼が増えているというところから見る課題の3つ目です。両立する人だけを支援するのではなくて、職場全体の残業削減という課題が出てきていると思います。残業はやらざるを得ない状況におかれている人がいる一方で、いくつかの企業の調査で、残業の多い人と住宅ローンを抱えている人の相関性があったんですね。つまり、お金が足りないので残業しているというのが非常に如実に出てきました。それから効率よく短時間で仕上げる人ではなく、長時間提供できる人が評価される傾向の企業では仕事を効率的に仕上げるというモチベーションが働かないと困るわけですけれども、今の日本企業のかなりのところで効率的に仕事を仕上げるモチベーションが働いていないという現状があります。必ず作業能率は夕方になったら落ちるわけですが、作業能率が一番落ちている時間に一番高い残業代を払っているというような現状があります。
 ある企業では、ライフスタイルをちょっと変えてもらいましょうという取り組みをはじめました。今までは夫の収入一つで暮らしていくということがイコール家計の収入だったわけですが、そうではなくて、スライドの右側の妻の働きをしっかり支援してくださいと。その企業さんは男性の多い会社なんですが、働き方を男の人に変えてもらうことによって、自分の妻にしっかり稼いでもらいなさいと。そして妻の働き方をしっかりとあなたがサポートするように、遅い時間まで働かなくていいのでしっかりと帰りなさいと。そのことによって家計は豊かという状態に持っていってくださいと。もううちの会社1本の収入だけで暮らしていかなくてすむように、妻の支援がしっかりできるようにと。
 育児などの家庭責任を果たそうとすることで時間制約ができて短時間で効率的に仕事を進めて成果を上げて定時で帰るといった働き方への転換が迫られているのであって、「そこそこ働いてくれればいい」というメッセージではありません。時間制約をもって、そこに向かって効率的に仕事をするという人を増やしたいんだということです。
 4つ目のお問い合わせ項目ですが、企業内託児所のコンサルティングというのが徐々に増えてきているんですが、今のところは断念する事例がほとんどなんですね。なぜ断念したかというものの4つ大きいものをそこに書いたんですが、1つ目は、地域に開放して認可保育所だとかそういったものにして、社会貢献もできればと考えるところが増えていますが、すると結果的には入る人を決めるのが区の仕事になってしまうので、社員用に一定枠を設けることができないと。かといって、3人、5人といった小規模、経営が不安定になってしまうということで、せっかく地域貢献をしたいと思ってやっている企業なので、一定枠をその企業のために設けるというようなことがどうしてできないんだろうということを非常に多くの企業から聞かれました。
 それから、どうしても最初の設立費用に関しては助成金が必要ですけれども、21世紀職業財団に行ったら、もう予算が足りないので100企業待ちと言われるんですね。ほとんどの企業さんが、だったら無理だろうということで辞めてしまっているという現状があって、これだけニーズのあるときに財団の助成金はどうして増えないのかなと、予算が足りないのではないかと思っています。
 それから、助成金は5年で終わってしまいます。一定条件を満たせば延ばせるらしいんですけれども、そういった情報は公にはないので、5年で終わってしまうのであれば、やはり後が不安であるというところでつくれないというのがありました。
 それから、その地域には待機児童がいませんと言われてつくれなかった企業さんがあったんですが、待機児童のカウントの仕方というのが、そこに園があって初めて待機児童というのが発生するカウントの仕方をしているので、そこに保育園がない場合には待機児童が発生しないというカウント法になっていたんですね。実際には作ってみたら70人待ちだったそうなんです。結局、この待機児童のカウントというのはおかしいのではないかということが今言われています。
 せっかく取り組もうとしている民間企業が断念しているというのは大変もったいない状況で、国の財力だけで今十分数をつくるのは無理なわけですので、民間の財力をもっとうまく使って、その代わり、そこに何か一定の優遇をすることによって広げるという方法をとるべきなのではないかと。企業さんに電話をしてどういったものがいいのかと聞いてみたところ、つくるお金の半額、同じ金額を税制優遇などで税金で返ってくるという方がいいと。何らかの税金関連の優遇というのはないのかということで非常にお声がありました。
 そしてお問い合わせ項目5つめの14ページですが、人事担当者の負荷が限界に来ていますというところです。中小企業さんだと奨励金を取ったら赤字にならずに両立支援できるような会社さんでも、その奨励金を知らないであるとか、その申請は誰がするのかという人手がないというところでできていないところからの問い合わせが非常に増えてきていますので、取り組みの壁(1)で、担当者の知識不足と時間不足というのがあるのかなと。1人目の育児休業者が出たら、奨励金100万円出るんですよという話などをすると、何人も過去に辞めてさせてしまったという企業さんがびっくりされるんですね。なので、そういった情報というのは届いていないと。1~2名でほとんどの場合が兼任であるということで、そういった奨励金などの把握ができていないというケースが多いと。
 取り組みの壁(2)では、他企業とのネットワークがない企業さんは、他社では乗り越えている壁の同じ事につまずいているというケースが多いので、個々の企業を表彰するということだけではなくて、それがネットワーキングできる場所というものをつくっていってあげることによって、自助努力でかなり解決されていくのではないかということを感じています。
 もう一つは、外部の相談機関をもっと使うということが気軽にできるようになればいいのになと。行政だけではなくて、ほかにも相談機関を設けて、それに対して費用の補助、イギリスなどの例と一緒ですけれども、外部コンサルティングを使った場合の補助ということが進めば、中で困っているだけではなくて、外に相談に行くということができるのではないかというところを感じています。
 最後に、15ページですが、ここは企業向けに今後必要なサービスとして、かなりの企業がITで悩んでいるということをお伝えできればと思いました。情報が漏れてはいけないということで、以前は育休者にイントラ環境を提供していた企業さんも、全部それを取り上げてしまっている状況でして、安全な在宅勤務環境だとか、在宅で情報が見られる環境というのはどれくらいのレベルをクリアしていればいいのかということで悩んで、結局はコストがかかりそうでやっていないという企業さんが多いので、セキュリティ的にOKなレベルのITツールというのが幾らぐらいで、どういうふうに導入すればいいのかというような支援があればいいのかなと。
 そういったものを提供することによって、(2)ですけれども、社員同士でワーク・ライフ・バランスのノウハウの共有ができる仕組みというものをつくればいいのかなと。こちらの方は、この間松下さんの方でやられていたような社員同士でのネットワークというものをよりつくる仕組み、ソーシャルネットワークを社内でつくるような仕組みということが行政として何か支援ができればいいのではないかと思っています。
 (3)も結構依頼がよくあるのは、業務の効率化を進めるような仕事の見える化を進めるための日報ツールであるとか、そういったような情報共有ツールというのは今後もっと提供されるべきなのではないかというのが企業向けのサービスです。
 (4)は今現在弊社でやっているトータルコンサルティングのメニューにこんなものがあって、かなり使われてはいますというところで、メニューとして書いておきました。
 17ページ目ですけれども、こちらは個人向けに必要なサービスということで、私個人でも非常に思うことなんですが、保育園の普及とともに病児保育園の対応がかなり必須だと思っています。病児保育の対応の仕方で、1つは病児保育園NPOというものがあると思うんですが、もう一つは個人でベビーシッターサービスを頼むというのがあるんですが、なぜベビーシッターを頼まないのかと調査してみたら、初期登録料のハードルが高い。一日当たりの利用料などは、ベビーシッター協会の補助などを企業が入れていれば、それなりに少し出る部分もあるんですが、やはり最初の初期登録料のハードルというのが高いので、ここが何らか支援できるということがもうちょっとあったらいいのかなというのがありました。
 2つ目は、弊社でやっている学生によるベビーシッター制度ということですが、安心感がちょっと足りないという懸念があるのだと思うので、弊社でも必ず2人で見てもらっているんですけれども、2人1組で学生がベビーシッターをするというようなものをすれば、学生の保育経験にもなりますので、こういったものというのは何か制度化できないかなと思っています。
 それから、個人の漠然とした不安でもらえるお金、使える制度、地域ごとの支援というものをまとめて見られるものがないという状況があるので、こういったものが個人ですべて検索できるWebのサービスというものがあればいいのかなと思います。
 最後のページで、行政でしかできないことということで、一番上は保育園の絶対数を早急に増やすというのがあると。
 2つ目は、保育園の内定時期が今は4月に復帰する人がほとんどなんですが、2月末に受かったとか受からないという電話が来るんですが、もしそれで落ちてしまったら、その時点から探しても4月の復帰の時期に間に合わなくなってしまうので、これは石川県がやっている制度なんですが、マイ保育園登録制度というのがあって、妊娠した時点で自分の保育園を登録して、妊娠中の相談だとか復帰に向けた相談も全部そこにしながら、自分の枠というのを確保した上で、安心して妊娠期を過ごして、確実に復帰できるという制度なんですけれども、こういった内定時期を早くする、マイ保育園が登録できる、など、少なくとも4月から逆算して5~6か月前ぐらいには内定するような仕組みに変えることはできないのかと。それだけで大分違うというのがあります。
 それから、21世紀職業財団の奨励金が5年で終わらず、しかも予算が増えるといいですね。
 あとは男性の育児のパパクオーター制の導入というものも、企業の側でも意外とこういったものはやった方がいいのではないだろうかという声がありました。
 それから、労働時間の上限の設定、国際比較したときに、日本は上限設定というのがかなり甘いんじゃないかというのがあります。これは私の夫が行政に勤めているからなんですけれども、行政から実行してもらいたいなと。尋常じゃない残業をしているなというのを感じています。
 あとは、単純に広報が必要だろうと思うことというものもかなりあって、制度は何も増やさなくても、今あるもので広報を増やすだけで変わるものというのが大分あります。恐らく今後ワーク・ライフ・バランス企業大賞ということは増えていくと思うんですけれども、表彰だけではなくて、表彰された企業とされない企業という線引きではなくて、A、B、C、Dというランク付け、今DだからCに上がろうというようなランク付けで上がっていくことができるような制度の方が、すべての企業が頑張れるのではないかと。
 あとは、労働時間が短くて成果が高いという企業をランキングするような指標などを今、ファザーリングジャパンというNPOがやっているんですけれども、そういった新しい指標が必要なのではないかというところと、日本の時間生産性の低さみたいなものは意外と日本人は自分たちは働き者だと思っていて知らないので、そういったものをメディアを使って広報してみてはというところ。
 それから、男性1人の収入では今は子ども2人以上を育てられないということも、これは主に学生が知らないんですけれども、大学生などが自分の将来の図を描くときに、自分の親の世代と同じように、男性1人の収入で3人ぐらい育てられるというような誤った認識があるので、今はもうそういう時代ではないということがわかるような普及というのがあればいいのかなと。夫婦として考えてみればお金が足りないのではなくて、夫婦の働き方を変えさえすれば、ある程度実現可能というような広報がもうちょっとあればいいのかなと。ただし、そのときに保育というものだけに関しては今の現状では足りないので、低価格できちんと質の高いものが提供されればいいのかなということを期待しますというところです。以上です。
佐藤会長
それでは、勝間委員、よろしくお願いします。
勝間委員
どうしましょうか、短くしますか。
佐藤会長
無理に短くすることはないです。
勝間委員
では、資料4を使いまして説明しますので、皆さんと重なっているところは省いて、足りないところは質問していただければと思います。
 題が「ワーク・ライフ・バランス推進について、働く私たちが求めていること」となっていますのは、一応今回、私は子どもが3人いますし、今4,500人ぐらいのワーキングマザーが所属している団体の運営をずっと10年ぐらいしてきましたので、主にそこからくみ上げた意見ということで報告させていただければと思います。
 目次の2~7番までが、今回、事務局からいただいたお題でして、これに沿って少しお話をさせてください。最初の勝間の紹介は省きますので、後で読んでおいてください。特徴は、子どもが3人いて、特に珍しいのが今上の子が高2でして、21歳から子どもを生んでいることです。
 4ページ目がムギ畑です。これは多分、女性の委員の方は1回ぐらい見ていただいたことがあると思うんですが、是非男性にも見ていただきたいんですけれども、もう10年ぐらいやっていまして、5ページ目と併用して見ていただくといいんですが、今ワーキングマザー及びその予備軍というのが参加資格になっていて、一応、女性限定なんですけれども無料です。4,500人がミッションステートメント、ムギ畑を目指す者という行動規範を元に、互いにインターネット上でありとあらゆる知恵を共有しようという発想です。
 特徴は、かなり専門職やフルタイムの正社員が多いということです。均等法以後の世代が集まっていまして、ある意味よく2ちゃんねるとかマスコミとかで文句を言われるのが、ムギ畑は敷居が高くて普通の女性には入りにくいとか言われるんですけれども、逆に、その分これまで活躍しているワーキングマザーのこれだけの母集団を見たのは珍しいということで、いろいろメディアの方とかあるいは企業からの注目がある程度集まっています。
 6ページ目、ムギ畑が目指すものということで、これがミッションステートメントです。逆に細かい規則というのは余り決めていませんで、この4つに対してできることはやっていこうということで、インターネット内での会議室もありますし、年に数回か大きなオフ会と呼んでいるんですけれども、みんなで旅館の一フロアを借り切って100人ぐらいで旅行で騒ぐとか、あと、年末に都内で大きなパーティを開くとか、あと、それぞれ地方ごとに自ら主催した講演会をやったり、普通の食事会をやったりしながら、みんなで知恵の共有というものをやっています。その上で、自分たちだけが楽しむだけではなくて、自分たちの社会であるとか周りに、どういうことを貢献していけるかということで励まし合い、時にはしかり合いながらやりましょうというのがポリシーになっています。
 あとは、営利を目的としていませんので、みんな持ち出しでして今は40人ぐらいのボランティアが運営していまして、ちまちまと企業さんにたまにバナー広告を出してもらったり、あるいはよくあるのはメディアさんがこういうスペックの人を紹介してくださいというと、その広告を載せて数万円ずつもらうという形での運営になっています。
 7ページ目からが本題です。まず、ここに集まっている私たちが何を求めているかということなんでけれども、2段階あるんですね。最初の段階というのが、初心者のころの段階のというのは自分たちがサバイブするだけで正直言って精いっぱいでして、働きやすい職場がどこかとか、どこが住みやすいとか保育園、学童にはどういうアピールの仕方をしたら優先順位を上げてもらえるとか、そういうことをずっとやってきていますし、ちょっと発達して管理職などになってきますと、どうやって子連れ出張しますか、いいホテルはありますかとか、あるいは短時間勤務はどうやっていきましょうみたいな具体的なケーススタディがだんだん求められてきます。
 この段階が大体長い人で5年ぐらい掛かるんですが、大体みんな3年ぐらいで一通りマスターしてしまうんですね。グルグル普通に動いてしまいますと、はたと気づくのは2番目の段階でして、どうも自分たちの自助努力だけではだめなのではないかと。結局限界が出てきまして、問題になったのは2番目の働き過ぎ、うつ病、夫婦不和です。これは余り実はメディアで報道されていないと思うんですけれども、統計はとっていなくて直感的になんですが、30代半ばぐらいから、特にワーキングマザーの人たちにうつ病がどんどん増えてくるんですね。やはりこれは働き過ぎで、心の余裕がちょっと足らなくなってきてしまって、体が休めと言っているのかなと。
 あとは、これも統計をとっていないので直感的な印象ですが、離婚がすごく多いです。これも結局、家にいて仕事と育児ばかりやっていると、なかなか旦那との関係が不和になってくるケースが多いんですね。ある意味、お金がないと離婚できないんですけれども、働いているので離婚もできてしまうので、気がつくと本当に直感的な印象としては半分近いんじゃないかというぐらい離婚しているという形です。
 もう一つ問題なのが、アンケートなどもたまにとって本などもつくっているんですけれども、結局両立できているのは一部の企業と外資なんですね。それ以外のケースですと、本当にたまたま親族企業で恵まれているとか、すごくいい経営者とめぐり会ったとかでないと、システマティックにはうまくいっていません。
 あと、もう一つ言っているのが、私たちはトキじゃないんだから絶滅する存在のように珍重しないでくれと。必ずみんなそれぞれの企業で何とかの専門職第1号とか、何とか推進室をやってくれとか、スピーチをしてくれとか、そんな話が多いんですけれども、そうやって逆に特別扱いをしないでくれというのは話をしているところです。
 やはり望んでいるのは、恵まれた一部の人だけではなくて、働きたいと思っている人が普通に働けるような環境をつくりたいというのか私たちの願いです。
 サービスでどんなものが必要ですかという話で、先ほどの話もありましたけれども、3つ主に挙げました。1つ目ですが、まず細かい情報共有というのが必要だと思っています。実はムギ畑の中に、是非女性の方は会員になっていただきたいんですが、話が本当に細かいんです。例えば「○年の保育園戦線、かく戦いき」が毎年出るんですけれども、大体12月から1月にそれぞれ各地方自治体の保育園の募集が始まるんですが、そこで全部点数制度がこう違うとか、どこどこにはこれで入ったとか、こちらはこれくらい待機児童があるからだめだということが、地方自治体名と具体的な保育園名まで出て、ぐっとツリーが盛り上がる。あるいは、民間のベビーシッターサービスやファミリーサポートという地域のボランティアのサポートの仕組みがありますが、こういうものも大体どういうところがいいとか、価格帯がこれぐらいでこういうことをお願いしているということが出てきいます。
 ちなみに、私たちがファミサポと呼んでいる大体時給800円ぐらいで、地域の主婦の方たちが子どもたちの面倒を見てくれるというサポートはすごくいいんですけれども、多少問題が出ていまして、やはりプロじゃないので、突然すっぽかしが起こるんですね。たまたま自分のお子さんが病気になってしまって迎えに行けなかったとか、親戚に不幸があったみたいな形で、これがプロだとさすがにそういうことは起きないんですが、どうしましょうかということで、そういう細かい話をしています。
 あとは、育児や家事の細かいノウハウというものも本当によく共有していまして、中学生の子どもがいるんだけれども、野球部員を7名連れてくるのに何を食べさせたらいいかというので、こういう料理が手軽でいいんじゃないのとか、保育園を見に行くのだったら白い靴下を履いていけと。なぜかというと、夕方に行くといい保育園だとちゃんと掃除が行き届いていて汚れないんだけれども、悪い保育園だと汚れるとか、地域の人にベビーシッターを頼むチラシを入れるのだったら、門構えが立派で掃除が行き届いた家がいいとか、そういうような非常に個別具体的な話をずっとしています。
 2番目として、特にどこを効率化するかということで、家事の効率化に非常にサービスを重視していまして、やはり育児の効率化というのはどうしても限界がありますし、やると弊害も出てくると。そうなると、家事の方を短くしようということで、ここに書いてある自動皿洗い機、ガス乾燥機、24時間風呂、この普及率がかなり一般家庭より髙いです。あとは、食材通販や家事サービスもどこがいいかというのも、いろいろディスカッションしています。
 実は、本当に必要なのはサービスより3番目でして、家族の協力と企業の理解です。まず、こういうアウトソースのサービスを入れようとか保育園に入れようとした瞬間に、まず出てくるのが3歳児神話でして、3歳まではかわいそうだからということが少なからず親戚とか親とかあるいは企業から言われてしまうということ。
 2つ目として、夫と実家の両親とかが全部協力してくれる家庭というのは2~3割ですか。半数以上の人たちはまだまだ総論賛成・各論反対で、ワーク・ライフ・バランスも大事だし、こういうものが大事なのはわかっているんだけれども、自分の奥さんのためには苦労したくないというのが正直なところです。
 3番目として、職場とのコミュニケーションでして、制度の利用についても、どういうふうにコミュニケーションするのかというのは、みんなすごく工夫してやっています。どうしてかというと、後で説明しますが、平気で肩たたきが企業の側から行われるんですね。これもムギ畑でもよくやっているんですが、上司に対していつ妊娠を知らせるか、いつからいつまで休むか、どういう復帰のプログラムを組むかということについては、かなり気を配っています。
 9ページ目で、これを企業や組織から見た場合どうなるかということですけれども、まず、もしお時間があれば見ていただきたいのが、Webだけではやはりアピール力が足りないということで、アンケートに基づきまして本を編集しました。ここに『ハッピー・ワーキングマザーBOOK』という部分です。エッセンスを2つお話ししますと、1つ目が意外な結果だったんですが、働きやすい職場について、これは働きやすいということは何で決まるのか。私たちは職種で決まると思っていたんですけれども、実は職種ではなく従業員規模でした。従業員規模が大きい会社ほど働きやすいと思っている会員が多かったということです。
 2つ目として、中小企業は何が問題なのということで、ちょっと調べたり、会議室なども見ていたところ、やはり単純に肩たたきが日常的に行われるということです。大企業は建前上は一応制度がありますし、やってはいけないというコンプライアンスの概念もあるのでやらないんですけれども、中小企業になるとそこまで配慮していられないので、どうしても現実問題として起こっているというのが実情です。
 2番目として、企業側はどうなのかということで、女性推進室系の方とお話をする機会が多いんですけれども、やはり男性側がどうしてもやりたくないという気持ちが暗黙にあるようなんですね。できればやりたくないと。そうすると、揺るぎない証拠が出てこないと、やらない言い訳を一生懸命つくってしまうわけです。なので、これも総論賛成・各論反対で、やはり強制力を持たないとだめなのかなと。
 3番目に書いたのは、今、行政では30%なるべくいろいろなところに女性を入れましょうということをやっていますけれども、民間の側でも意思決定者の30%を女性にしていくべきだなと思っています。社員で30%以上のところはたくさんあるんですけれども、管理職比率になりますと10%を切るぐらいの状況が続いていますので、これが30%ぐらいになっていくと、世の中が変わっていくかなという印象を持っています。
 5番目、行政や組織に何を期待するかということなんですが、行政には無理なく育児ができるようにということをお願いしたいと思います。なぜかというと、今は無理をすれば普通にできるんですね。一生懸命この地域を選ぼうとか、こういうサービスを組み合わせようとか工夫をすれば何とかなるんですけれども、私たち側がすごく工夫をしなくても、どこの行政に行っても保育園には普通に入れて、学童クラブも問題がなくて、私立学校に入れなくても済むというような状況がないと、やはりすごく難しいです。特に、びっくりしたのは、学童クラブというのは何でこんなに予算が少ないんだろうというぐらい予算がなくて、保育園に比べると非常に貧乏だという印象を受けています。
 私たちは関東に住んでいる人たちが特に中心なんですけれども、中学受験と仕事の両立というのが毎回問題になっていまして、中学受験をきっかけに退職とか休職というケースも増えています。
 あと、企業及び組織の全体は言わずもがなですけれども、やはり全体の働き過ぎの是正というものをやりたいです。私たちは自分たちのことを時間貧乏と呼んでいるんですね。いろいろなことをやらなければいけないので、その中でどうしたら時間がつくれるかと。ワーキングマザーたちは時間をつくるということは割とたけてきたんですけれども、私たちだけやっても逆に白い目で見られるだけで、みんなでこれをやれるような雰囲気にしなければいけないということを期待しています。
 では、どうやってやるのということですが、3つ考えています。これはムギ畑ではなく私が考えたことです。1つ目が、流動性の拡大です。先ほどから皆さん採用が難しくなるとか、人が辞めてしまうという話があると思いますけれども、私はもっともっと辞めてもいいと個人的には思っているんです。こういうことをやってくれない企業や地域からは、どんどん人が出て行ってしまえばいいと。逆に、やってくれるところに人が集まっていけば、自ずとそういうことをみんなやるようになるだろうと。
 2つ目としては、SRIがもう少し出てくるといいかなと思っています。私の本職は金融なんですけれども、SRIというのはどれくらい意識が高いかなと思って機関投資家さんにインタビューをしますと、全然だめなんですよ。やはりパフォーマンスが一番で、SRIは二の次というのが印象ですので、逆にお金を運用する側も、もう少しソーシャル・レスポンシビリティということを考えながらやってくれると、少しはフィードバックグループが働くのかなと。
 3つ目として、これは行政側からも幾つかアイデアが出ているようですが、やはりエコマークぐらいのレベルの認知度があるワーク・ライフ・バランスマークでも何でもいいですが、そういう記号が欲しい。その記号に逆らう人は悪だぐらいの価値観をつけてしまった方がいいと思うんですね。あとは映像ですね。「不都合な真実」のようなわかりやすい映画でもドラマでもいいんですけれども、何か映像でもう少し訴えるようなものを、ビデオはいただきましたが、あれよりもっとセンセーショナルなものでもいいんですけれども、つくっていただきたいなと思っています。
 7番、個人にとってワーク・ライフ・バランスをどのように考えるかということなんですけれども、これも私見なんですが、1点目として、過当競争・過剰要求から来ているのかなと思っています。結局、日本というのはクラスの意識が薄いですし、実際の格差はなるべく是正しないようにということで仕組みができていますので、頑張れば報われるということが身に染みついてしまっていると。そうすると、頑張り続けることが美徳になってしまって、仕事でも何でも先ほど全力投球という話がありましたけれども、とにかくどこでも全力投球をしてしまって、最後にそれが中途半端になってくたびれてうつ病になってしまうというような印象を持っているんですね。
 そうではなくて、頑張るべきところは当然頑張るんだけれども、頑張らなくていいところもつくって、いい意味でめり張りをつけるような訓練というのが、個々人一人一人にとって日本人には必要なのかなということを考えています。
 最後のまとめですけれども、4点です。1点目が、特にワーク・ライフ・バランスと言うと女性優遇とか育児支援になりがちになんですけれども、女性とか育児だけを過度に優遇すると、全体のソリューションがかえっておかしくなってしまいますので、もう少し全体解が必要ではないかと。特に、過剰労働から離れること。
 2つ目としては、やはり日本人の美徳意識として限りない努力というのがあると思うんですけれども、別に限りない努力が悪いとは言いませんが、もう少し限りない努力の場所の見直しというのが必要なのではないかと。
 3点目としては、どうやって見直しますかということですが、やはりアウトプットに基づく生活指標の仕組みであるとか、世の中の雰囲気がさっきのSRI、ワーク・ライフ・バランスマークでもいいですけれども、それが大事なんだよというアプローチを多面的に行っていくということ。
 4つ目として、最後に過剰労働は格好が悪い、ワーク・ライフ・バランスが格好がいいんだぐらいの意識づくりが、エコマーク並みに一人一人満ちてくれば変わってくるのかなというのが、現在ムギ畑を通じて考えていることです。
 以上になります。
佐藤会長
どうもありがとうございました。
 それでは、最後になりましたけれども、北浦委員、よろしくお願いします。
北浦委員
では、一番最後でございますが、私の方から多分重なるところもあると思いますので、その辺は少し省略させていただくのと、それから、生産性本部というところに所属しておりますので、そこで私の方で今独自の取り組みをしておりますので、そのことについて少しお話をしたいと思っております。
 レジュメは1枚でございまして、ほかの方々のように立派なあるいは美的なものではございませんので、ちょっとお見苦しいと思いますが、これでごらんいただければと思います。
 御質問が幾つかあったんですが、企業の取り組みについてということで、私ども自身が企業の個々の事例を申し上げると重なりますので避けたいと思いますが、ここに書いていないこととして、1つ前提として、ワーク・ライフ・バランスについての理解、定義は結構まだバラバラな感があるということ、これはあろうかと思います。会社側の思いと個人の側の違いもございますが、それぞれの会社の経営者の方に聞いてみましても、焦点がかなり違っている、これはまだまだ現象として整理が足りないところではないかと思っております。
 もう一点は、そういった中でも、これは一番最初の商工会議所さんのお話にもありましたが、やはり子育て支援的なところでとらえて始まっていたところがありますが、ここ1~2年で急速に子どもさんを育てていらっしゃる方だけではなくて、すべての従業員の問題であるというふうにだんだん変わってきた感じがあります。
 そういった意味で、このワーク・ライフ・バランスの意味をもう一度きちんと整理して、すべての従業員のためにやっていくものであるという、先ほど全体解というお話がございましたが、まさにそういったようなスタンスで取り組むことが大事なのではないかと思っております。
 そのことを前提といたしまして、まず第1点でございますが、必要性の認識のところで一番最初に書いてありますが、ワーク・ライフ・バランスは企業からの立場、個人からの必要性と両方あるわけでございますが、企業からの経営者の気持ちとしては、やはり一番の動機付けはインパクトがあったというのは人口減少の問題だろうと思います。この中において、シナリオ的に今後労働力人口が減っていく、人材確保が難しいというお話がさっきございましたが、それが現象としても確かに、今年の大企業戦線もそうでありますけれども、中小企業もだんだんとりづらくなってくる。そのような中において、やはり労働力も非常に貴重になってくる。そういった中で、すべての人たちが働いていかないと日本を支えられないぞという思いから、その辺の少子化の危機感というような言い方をよくされますが、それが割と根っこにあるというか、経営としてどちらかというと経済合理性というようなことから考えますと、そういったところに響くところではなかろうかと思っております。
 そういったような意味では、その前提がだんだんと染み渡ってきているし、現実の認識としても出てきているのかなと思いますが、一方においてそういう理由だけではなく、やはり個人としてのワーク・ライフ・バランスの意義というものもあるわけでありまして、個人がいびつな生活を送っていることがメンタルヘルスの問題を含めて、精神的あるいは身体的な健康に影響を与えていく、それが健全な社会づくりを阻害していくんだといったような面からも見ていかなければいけない。そういった両方の側面というのは、少しずつ認識として広がってきているのではないかと思います。
 もう一つ、企業のメリットというようなこと考えますと、とりわけ大企業の方が言われるようなこととしては、従業員というのは多面的な能力を持っている。その多面的な能力というのは、仕事の場においてすべて発揮あるいは育成されるだけではなくて、仕事以外のいろいろな場において持っている場面での活躍の場において、それが育成されたり発揮されていく。それによって、会社はその効果を持っていくので、従業員に総合的な力をつけていただくことが、これからの強い人材なんだという意識を持っていらっしゃるようなところも多いと思います。
 そういったように、ワーク・ライフ・バランスはメリットかどうか、これはコストかメリットかいろいろ議論があったところでございますけれども、それぞれあることは事実でありますが、メリット面について大分研究も進んできておりますが、そういった認識も少しずつ出てきているのではないかと思います。
 しかし、そういった中において2つ目にございますように、企業規模間の違いの問題がございます。比較的大企業においては、そういったような意味で先進事例なども増えてきておりまして、制度的な整備はかなり進んでいる面があります。そういったような意味で、むしろ制度が実際に使われるかという運用が十分かどうか、そんな焦点があるわけですが、その一方において、中小企業はどうかということについてはいろいろ議論があろうかと思います。これも商工会議所さんの資料あるいは中小企業白書でも指摘されているところで、むしろ中小企業の方が柔軟に適用できるからいいんだというような御指摘もあるわけですが、統計表を見てみますと、中だるみといいますか、100人規模ぐらいのところが一番低いという現象が出ている。これは一体何だろうかと。それは制度をもってやっていくというのが一つありますが、制度をやっていくところの限界と個別運用だけではやり切れないということの限界と、いろいろな意味での中堅的な規模のところ、これは実際にヒアリングなどを聞きますと、50~100人ぐらいの企業さんのところで一番難しいということもございますので、今後においてはそういった規模別の差異というものも含めて、もう少しきめ細かな対応が要るのだろうと思います。
 ただ、その場合よく言われますが、制度というのはあった方が私はいいだろうと考えておりまして、制度というのは公平性の意味でみんなが違うような形でやっていくということが、だんだん適用される人が増えれば不公平という議論になりますので、公平性の観点もございますし、それから、予見性といいますか、こういうことができるんだ、こういうことがあり得るんだということをインフォメーションとして知らせていく意味においても、なるべく制度、つくり方はいろいろあろうかと思いますが、それは小さい規模においても徐々にルールとしてつくっていく、このことは必要なのかなと思っております。
 その後、育児休業の問題については、いろいろ既に御指摘されております。ただ、総じて、男女共同参画会議の関係でございますが、ポジティブ・アクションに熱心なところ、つまり女性の活用に熱心なところにおいては、優秀な女性を引きとめようという動機付けが働く。これは逆の見方もあろうかと思いますけれども、まず優秀な従業員を発見する、そのときに動機付けというのはかなり聞いてくる。中小企業でも恐らく優秀な人を引きとめたい、それがゆえに個別にいろいろ対応している、こういうように働いていくのだと思いますので、まずは従業員自身を大事にする、それから、優秀な人をいかに育てていくか、この基本姿勢がベースにあるのだろうと思います。そういったような意味で、ポジティブ・アクションを含めたいろいろな施策、先ほどもございましたけれども、女性の管理職登用の問題もあったと思いますが、そういった男女共同参画的な施策と相まっていくということの必要性というのは、まだまだ声を大きくしなければならないところではないか、こういうふうに思います。
 それから、育児休業の問題もございますが、その後の復帰後の問題ということで、その中で今既に指摘されているのが、言わば長時間労働の問題になっているわけで、あるいは柔軟な勤務スタイルの問題になっているわけであります。これについては既にいろいろ手がついているところでありますが、まず1点は、先ほどもありましたように、一部の方だけに実現してもしようがないと。みんながやる体制をつくらなくてはいかんと。だから、ノー残業デーが必要だとか、あるいは全員が9to5の姿勢で行くという体制でないと浮いてしまうなというのはあるのだろうと思います。そういった意味で、焦点がだんだんとそちらの時間効率性というところに移ってきているし、これはかなり本腰を入れていかなければいかんだろうといろいろなところで感じております。
 そういった中で一番問題となりますのは、では、そういったときに果たして生産性は大丈夫だろうかと。時間は減らした、しかし、現実的には仕事が回らないということでは浮いてしまうわけであります。ある企業さんにも聞いてみましたところ、ノー残業デーを実施して、時間になると電気が切れてしまうという会社があるんですが、その後、個人が個別につけに行くというんですね。結局そういうふうにしてつけざるを得なくなったと。このようなこともあるわけで、建前としてのノー残業デーはあったとしても、現実的に回らないような体制が出てくる。これはやはりある意味では人の数というのがかなり絞り込まれてきている中において、相当忙しい。先ほど大学での導入例でアシスタントをつけてというのがございましたが、一般の会社ですと、どちらかというとそのアシスタントをどんどん減らされていくような状況の中において、なかなかゆとりというのをつくりづらい環境があるのではないかと思いますが、いずれにせよ、そういった効率性をどう実現するか、ここが難しいところだと思います。そのときのエビデンスとして、そういう測定が今はきちんとした方法があるかというと、生産現場ですとかなり見えてまいりますが、ホワイトカラーでは見にくい面もございまして、その辺も含めて共同のナレッジとして共有できるようなものはつくっていかなければいかんだろうという感じがいたします。
 最後のところでございますが、それ以外にもこれも先ほどお話がございましたように、個人のキャリア形成であるとか、あるいはCSRといったような取り組みを熱心になさっているところも、企業外の価値を大事にするという姿勢があるところでは、やはりワーク・ライフ・バランスの関心が高いので、そういったようなキャリア形成への支援の取り組みであるとか、あるいはCSRの取り組み、さっきはSRIという別の言い方もございましたが、そういうものも含めて、企業の価値観というものも多様化していくようなそういった流れの中でワーク・ライフ・バランスができるということで、ワーク・ライフ・バランス専一の対策というよりは、総合的な中で解決をしていくということで関連の施策との連携が必要なのだろうと思っています。
 2番目に生産性本部の取り組みですが、そのようなことを申し上げたんですが、そんな思いで産業界の方を中心に、ワーク・ライフ・バランス推進会議というものを立ち上げ、次世代のための運動というものを今起こしております。そういった流れで、今言ったようなことが実践できるかどうかというのは、口では言っておりますが、まだなかなか難しい段階でございます。
 今現実的にワーク・ライフ・バランスの日というのを11月23日の勤労感謝の日をあえてその日にぶつけまして、そんなことを提唱してみるなど進めておりますが、この4月以降少し運動を加速化してまいりたいということになっています。その際の焦点は2つ目にございますが、先ほど申し上げました生産性との兼ね合いということもございますので、そういったような時間問題に本格的に取り組むと。日本はやはり時間問題のところが一番あいまいで来たということ、時間の意識をきっちり持つという働き方を考えようではないかということで、残業削減であるとか、年休完全取得、国の財政諮問会議でも似たような議論がなされているやに聞いておりますが、そういったものを進めてまいりたいことと、それから、とりわけこれを現場に近いところでやっていかなければいかんだろうということで、都道府県との連携のもとで市町村段階も含めてモデル的にやっていきたいと。それを全国的に波及するような形で、少しずつやってまいりたいと考えております。
 もう一つは、ワーク・ライフ・バランスの日ということで11月23日を設定したわけですが、その辺にいろいろな関連するイベントが行われているところもございます。例えば、前日は「いい夫婦の日」というようなものもあったりするわけで、そんなものを含めていっそのことワンポイント、しかも23日は休日でございますので、それだけではなくて、企業の方にアピールするためには、その前後1週間ぐらいをキャンペーン期間として週間というものを名付けて、そこのところでいろいろな方のいろいろな取り組みが集中して行われるようなこともあっていいのかなと。あるいは、企業においてはそういうときにノー残業デーをあえて積極的に実施していただくとか、あるいは日ごろできないようなことをモデル的にやるとか、そんなことがそういうキャンペーン活動の中でできないだろうかということも、私どもが少し考えているところでございます。まだまだ中途半端なところで、資料を別に用意してございませんが、順次これは公表してまいりたいと思っております。
 最後に、行政の役割でございます。これもいろいろ出ておりますので4点ほど簡単に書いてございます。1点は、働き方改革、これは別のところでいろいろ議論が出てきております。先ほど時間という問題を申し上げました。そういった観点から申し上げると、やはり柔軟な時間管理、とりわけ従業員のニーズを含めた自己管理型の時間制度の有り様というのは、今回も国会の法案上程の段階でもいろいろ議論があったところでありますが、そこのところは本格的に検討していかなければいけないのだろうと思います。そういった場合に、自己管理、設計をしていくような勤務制度というもの、これは時間面もございますが、例えば先ほど在宅勤務の難しさ、これは特に情報面からの制約というのがあるということでございますが、それも含めた在宅勤務の問題などを少し本格的に法的関係も含めてもっと整理を図っていくことを急がなければならないだろうということ。それから、新しい就業形態をできるだけどんどんとアイデア的に提起していくこと。アメリカ辺りを見ますと、相当いろいろな働き方も出てきております。今はなかなか現行法制との考えでできる・できないというのはございますけれども、そういった新しい就業形態についてのモデルであるとか、あるいは問題点といったことも含めて、いろいろな働き方を用意していくと。その働き方改革の促進というものが1点あろうかと思っております。
 2点目でございますが、ワーク・ライフということになりますと、ライフの事情は地域差というものが非常に大きいと思っております。ワーク・ライフ・バランスも東京のワーク・ライフ・バランスの議論と、九州や北海道のワーク・ライフ・バランスの議論はかなり違うところがあります。都市部、農村部といったようなことを考えますと、私はこういったことの推進役は自治体であろうと。ですから、国も当然でありますけれども、自治体とりわけ都道府県あるいは市町村といったところが連携をしながら、それぞれの地域需要に即した生活環境の中でのワーク・ライフ・バランス施策というものを総合的に考える必要があろうかと思っております。私どもの研究会でも、ワーク・ライフ・バランス推進法であるとか、基本法であるとかいろいろ呼ばれていますが、そんな提案をしてございます。そのねらいというものも、まさにそこにございまして、地域段階においてワーク・ライフ・バランスの推進をその地域事情に即した形で実施していく体制をつくるということでございます。
 このことは、先ほどいろいろな議論が出てまいりましたが、やはり自治体からのサポートというのが非常に重要になってまいります。ただ、この基本は企業と個人それぞれの努力であるわけでありますが、その中間が大事。そうすると、地域の自治体の施策、地域事情に応じた取り組みが必要でございましょうし、場合によっては地域段階でのNPOなどもございます。そういったところの力を結集していくような、やはりこれは地域という角度でないとなかなか見えてまいらない。ですから、ワーク・ライフ・バランス問題をできるだけ地域の視点でとらえるということが今後必要ではないかと思います。
 最後にございますのは、これもいろいろアイデアとして既に御指摘になっているんですが、ワーク・ライフ・バランスを企業に普及していく意味において、一つの品質基準という考え方でのプライス、賞を与えていくような仕組みというものがあろうかと思います。これは先ほど何とか大賞というようなアイデアもございましたが、あるいはそれをマーク化していくなどあろう思いますが、そういったようなものがやはり一つ必要だろうと思います。それを格付けまで持っていくかどうかは別ですが、いずれにしても、そういったようなものを社会的な一つの認知の指標としてもたらすことと、そのことが実効性を持つためには、例えば発注条件とかそういうようなものなどに、こういうものを条件の中の一つにうたっていくとか、そういうような片手間一つでこういう存在というのがアピールできるのではなかろうかと思っております。
 こんなところで、類似の試みは既に出てきておりますので、そういったものを活用していくのか、あるいは統合していくのかわかりませんが、こんなことを最後に1つだけ申し上げさせていただきます。
 以上でございます。
佐藤会長
どうもありがとうございました。
 余り時間がないですけれども、議論に移りたいと思います。今日のお話を伺うと、子育て支援ということからワーク・ライフ・バランスという、もう少し広い働く人の生活と仕事の調和というような考え方に移ってきていますし、それを実現するためには制度も勿論大事ですけれども、その制度を活用できるような仕事の仕方、時間管理の仕方を変えていかなければいけなくて、そのためには日本の職場風土、管理者の意識というものを変えなくてはいけない。結構ハードルの高い議題ですけれども、働き方を変えることによって、日本の社会の在り方を変えることになる。働いている人たちが家や地域でやるべきこと、やらなければいけないことをちゃんと担える社会に変えていくということだろうと思います。
 どこからでも議論していただきたいと思いますが、中小企業は結構働きやすいという議論があって、私は中小企業というのは二極化していると思います。厚生労働省のパネル調査を見ると、企業規模別に見ると、明らかに小さい企業になればなるほど女性が出産しながら続ける人の比率が低くなるんです。中小企業では妊娠・出産前に辞めているんですね。そういう意味では、子育てしながらは働きにくい。働きやすい企業がたくさんあるのも事実ですが、全体の平均で見れば、やはり中小規模では仕事を続けにくいとは思っています。
 それでは、この前と同じやり方で、まず御質問を受けてお答えするという形にしたいと思いますので、どなたにという形でまとめてお願いします。どなたからでも。皆さん報告しているので、余り牽制し合わないで。
川島委員
まず、北浦先生のお話を聞いて、私は頭の中を整理されたんですが、やはりワーク・ライフ・バランスを考える上で一番アクティブなプランとしては、勤務時間を短縮するというかなり積極的なプランが提唱されてきたと。そういった中で、お茶の水女子大での取り組みで9時-5時というすばらしい制度を展開されていて、実は大学の学者さんたちの場合、我々もそうですけれども、アウトプットの評価というのは意外とほかの企業よりはしやすい。そういった意味で、お茶の水女子大学でアウトプットに変化が現れる兆しが出たか。多分1年未満なので、まだ出ていないんですけれども、出そうな兆しがあるか。例えば、学者さんたちですと論文の生産といったようなことに関して、9時-5時制度がポジティブに働く可能性を見いだしているかというのは非常に重要だと思うので、そこについて質問したいと思います。
佐藤会長
では、一つずつお答えいただくということで。
羽入委員
さっき申し上げましたように、今年まだ始めて10か月ですから、それがすぐに論文数に反映したということは特にないんですけれども、既に投稿している論文がたくさんありますので、成果としては来年上がるだろうという見通しは立っています。
 もう一つは、補助者がついたことですね。後で説明しなければいけないかもしれませんけれども、それによって競争的資金のチャレンジする機会がとても増えたということがございます。それによってまた生産性と言ってはいけないのかもしれませんけれども、論文数が増えるということもあるかと思います。
 それから、もう一つは、学会へ子連れで出席するということが非常に増えてきたということがありまして、それは意識が変化してきた結果かもしれません。3年ぐらい経つともっと大きく展開していくのではないかと思っております。
佐藤会長
女性研究者だけ補助者をつけるとか、別枠で予算をつけているんですよね。本人が取ってきたお金じゃないですよね。今後は男性教員も欲しいというような議論があると思うんですが。
羽入委員
女性教員でも私も欲しいです。
佐藤会長
今のは実験だから通ると思うんですけれども、今後はどういうロジックで。
羽入委員
今後はちょっと長い期間を掛けなければいけないと思うんですが、つまり仕事の役割分担をきちんとする、サポーターと言ってもテクニシャンと言われる人を大学で独自に育成するということによって、これもまた女性が大学に帰ってくるといいますか、主婦を大学に戻そうというプログラムを今やっていますけれども、そういう形で既に潜在的能力を持っている人をブラッシュアップして、補助者として雇用するという方向で能率を上げていくということを考えています。
佐藤会長
ほかにはいかがですか。
小室委員
勝間さんにお伺いしたいんですが、かなりムギ畑に参加されている方たちは能力があって転職が可能な方が結構多いと思うんですね。そのときに、やはりこのことで悩んでいるわけですから、ワーク・ライフ・バランスのとりやすい会社という視点で選ばれるケースが多いと思うんですけれども、皆さんのコミュニティの中でこういう会社に転職した方がいいという議論が起きていたりするかとか、こういう指標でそれが判断できるという見方の指標みたいなことはどういう話題になっていますか。
勝間委員
まず、ヘッドハンターとかエージェンシーはどこを使った方がいいというところから始まりまして、あと、ポジティブな影響があったのは、結構みんな子連れで転職しているので「なんだ、子どもがいても転職できるんだ」ということで、転職率は高まっています。
 あと、日本にとっていいことかどうかわからないですけれども、やはり外資の方が比較的受入れが大きいです。また、外資に行ってしまった先輩が、更に後輩をムギ畑に引き込むもので、ますますみんな外資に行くとか、あと子連れで留学するケースか増えているんでね。子連れ留学で帰ってくるときも、やはりどうしても8割方外資になってしまうんですよ。なので、そこはすごく残念だなと思っています。
小室委員
外資と言ったときに、何が外資と日本の会社と違うんですか。
勝間委員
結構いろいろな外資なんですよ。だから、本当にIT系であったり、メーカー系であったり、あるいはそういうサービス系だったり、先ほどの採用難という話とつながっていると思うんですけれども、特に関東近辺で優秀な人を中途採用しようとすると、外資にとっては女性でも採用しやすいらしいんですね、圧倒的に。
小室委員
そうすると、外資側が女性で子連れであっても積極的に採用するから、そこに行くということになるんですか。それとも転職する側が、外資だとこれがあるから、日本企業とこの違いがあるからということで選ばれているんですか。
勝間委員
両方ですね。ある意味で、ぐるっと回ってみるんだけれども、結局結論としては外資しか採用してくれなかったという結果になるケースが多いです。
小室委員
ありがとうございます。
佐藤会長
ほかにいかがですか。
紀陸委員
小室さんに伺いたいんですが、資料の11ページ、残業時間削減のコンサルティングという話は、非常に悩ましい難しいことを言っているのだと思いますが、現実にはこういう形というのは結構多いと思うんですけれども、先行き夫の収入、要するに個人でなくて世帯単位で物事を考えていこうというようなことですよね。こういうふうなものがいいのか、我々も思想が非常に混乱しているんですけれども、下の方に書いてありますが、要するに、成果を挙げて短時間で基本的には定時で帰る。先ほども9時-5時というのが一つの目標に掲げられていたんですけれども、やはり一つのねらう方向としては残業をなくして定時に帰る。定時の枠の中で仕事をして、妻も夫もその方がみんながハッピーになるなという、これをねらうのがワーク・ライフ・バランスなのか、オーバータイムの是正というもので切っているのだと思うんですけれども、これがワーク・ライフ・バランスだよと言うのはいかがなものかなと。勿論メニューの一つで。だから、ワーク・ライフ・バランスをどうとらえるか、北浦さんが冒頭に言われたように、このとらえ方というのは非常に難しいのだと思うんですね。それによって答えが出てくる方向がさまざまで、こんぺいとうみたいにいろいろなところに出てきますよね。ワーク・ライフ・バランスの概念というのは本来そういうものだと思うんですね。それはさまざまあっていいので、でも、やはりその中で核になるのは、むだに長時間働かないというようなことだというのが一つあってもいいと。しかも、それは非常に大事なことだと思うんですけれども。
小室委員
これは、1人の収入で暮らしていくのは、もうあきらめようということではないんです。実はかつてから、日本の家族は別に1人の収入で暮らしていなかったのが、核家族になって家族の収入を担う人が1人になった、そういった形態になってからの歴史のほうが浅いんです。2世代同居家庭では、親も収入がある状態が多く、2本で家計を担っていたんですね。それが現在では、男性のみが働いていれば家庭の中に1人しか収入を担う者がいないことで家計のプレッシャーというものが、非常に高まっているんですね。ですから、核家族になったときに今度は夫婦で収入を持つということによって2人でリスク分散をしようというところに変わってきているだけで、いずれにしろ1つのコミュニティを1人で支えるということがプレッシャーであるということが、違う形で分散になるというだけなのかなとは思っているんですね。
 それから、1人の収入で十分暮らせれば収入面ではいいのかもしれないんですけれども、実は収入面だけではないつらさがあるんです。核家族になって親の世代と同居しなくなったことによって、相談する相手のいない女性の育児の不安が増えたというのが言われていたわけなんですけれども、実は同じことが男性の方でもあって、仕事の悩みを話し合う人が核家族になっていなくなった。かつては妻の親だとか、自分の親と同居していたので、帰ってきて部長がとか組織がという話をしたときに、何々君、それは違うんだよという話をしてくれた人が家庭の中にいたのが、今は男性の方も実は仕事の悩みを抱えて孤独化しているという現象がありまして、女性が働くことによって、女性側が仕事を同じレベルで相談に乗れる人になるという新しいメリットがあります。育児の悩みも男性が一緒に考えられるというメリットがあって、とにかく分担してしまって誰かが1つしか仕事をしていない状態というのは、常に悩みが分かち合えなくて辛いということで、それがかつては大家族の中で2人以上が収入を持っていたり、2人以上が家事をやっていたりということがあったのが、核家族になったときには、2人ともが仕事も育児もやった方が、同じレベルで悩みが分かち合えて精神的に楽というような部分があるのかなというのがあります。そういった収入以外の部分で、悩みの相談相手という新しい価値というのが出てきているかなと思います。我が家でも感じます。
佐藤会長
紀陸さんが言われているように、どういう働き方ができるとワーク・ライフ・バランスが実現できる社会なのかということはすごく大事で、確かにみんな9時-5時に帰らなければワーク・ライフ・バランスできないじゃないかというのは違うと思います。ただし、やはり社員の中にはいろいろな社員がいて、ある時期週に2日ぐらい定時で帰るとか、あるいは短時間勤務したいときに、それが受け入れられない働き方だと、やはりまずいだろうと。勿論、残業する人がいても必要があればそれはいいと思うので、その辺は少し整理していく必要はあるかなとは思います。
 ほかに何かございますか。
永木委員
ワーク・ライフ・バランスに関しては、従来は女性の育児支援というところがターゲットになって進められてきた中で、私自身がそういった経験の中で女性だけというのは今はだめだなと。みんなにとってのワーク・ライフ・バランスということを本当につくづく思うんですけれども、勝間委員にお伺いしたいんですが、ムギ畑の方に男性の共働きの人たちが入会したいというような要望があるのかどうかということと、こういったコミュニティの運営に際して、弊社の方でも先日御紹介はさせていただきましたものの、最初のころは結構、建設的・協力的な意見というのがたくさんあったんですが、徐々に年数が経つにつれて、足の引っ張り合いをするような話も出てきたりするんですね。そういったところ、どういうふうにレベルをキープされているのかという工夫をお伺いしたいです。
勝間委員
最初の男性なんですけれども、年に数人ぐらいいらっしゃいます。
佐藤会長
これは男性も入れるんですか。
勝間委員
入れないんです。一応、入会希望の方にも女性のみと書いてあるんですけれども、それでも何名か入りたいといらっしゃる方がいるので、そういう方たちには男性の育児支援をしているホームページがありますので、そちらを御紹介してこちらは入れませんと。
 入れない理由なんですけれども、私たちは女子更衣室のようなものだという話をしているんですね。そこで、どうしても不妊の話とか離婚の話とか、かなりプライベートな話も出しますので、ちょっと男性には聞かせづらいという話題がありますので、そこは一応男性は御遠慮いただいているという形です。
 あと、コミュニティの問題については、ミッションステートメントをつくっているのが一番大きいです。そのミッションステートメントに対して反した行動を起こした人たちというのは、私たちスタッフが注意するまでもなく、ほかの会員が注意をしますので、例えばよくあるのは愚痴に近いような相談とか、自慢に近いような相談があるんですね。それについては「一体、ここで何を解決したくて、あなたは私たちの時間を今とろうとしているんですか?」と、かなり厳しい反応が来まして、そこで逆にとけ込めずにやめていってしまう方も正直言って多いです。ですから、そこは割り切っています。万人に向いているというよりは、ある程度自助努力で問題を自ら解決したいという人には門戸を開くと。そうでない人たちまで私たちは助けませんよというスタンスです。そうすると、敷居が高いとか文句をいろいろ言われるんですけれども、それは価値観による割り切りです。
佐藤会長
ほかには。
 小室さん、いろいろ問い合わせが多いようですけれども、企業の特徴というのは最近は多少求人などの宣伝というのもあるようですけれども、どんな特徴がありますか。
小室委員
意外と偏りがなくて、IT系の企業から旅行系の企業のメーカーと。
佐藤会長
業種もいろいろ、企業規模もいろいろですか。
小室委員
そうですね。企業規模も4万人の会社さんから……。
佐藤会長
先ほど人事の人が少なくてというか、中小企業ばかりでなくて大手もあるわけですか。
小室委員
そうですね。かなりの大手で、今やっと2人選任を置きましたという企業さんとか。
佐藤会長
ワーク・ライフ・バランスについて。
小室委員
そうですね、そういうところがあります。そういう方たちが後発組なので、別にほかに企業に聞きに行けば幾らでもやっている事例を聞けるのでしょうけれども、微妙に系列が違うとか、交流がないとか、そういうことで聞けないようでして、人事管理の勉強会などにも参加されている企業さんは3個も4個も交流会に入ってやっていらっしゃるんですが、そういうネットワークに入っていない企業さんなどは、一々こういうことを取り組むにはどういう意味があるのかというのを担当者がまず1人で悩んで、何か月も経って社内で論破できずというような形ですね。非常に孤立化しているので、その辺をネットワーク化できるものと、あとは私たちの会社がほとんど無料でいつもやっているのは、データ出しなんですね。時間生産性が日本はこんなに低いというデータはどこにあるんですかと言われて、こういうデータはどこのホームページのどこどこのURLにありますよとか、データを張ったらきれいに写りませんでしたとか言われて、では、つくり直して張ってあげますとか、社内でのプレゼンに勝ち抜いていかないと進めないというのを支援する作業がものすごくたくさんあって、それはほとんど無料でいつもやっています。
佐藤会長
勉強不足という感じもしないでもないですね。
小室委員
そうですね。ただ、企業がどういうことをやるかというと、人事部の中からそういうプロジェクトをやってしまうと、従来のしがらみと思い込みでできないのと、業務量がそもそもいっぱいあってできないので、人事の素人の方を推進室に入れたりするので、ネットワークもなければ、そういったデータのある場所も知らないという方が担当になることが多いのだと思います。
佐藤会長
ほかにはいかがでしょうか。
池永調査課長
小室さんにお聞きしたいのですが、起業されてから大変御活躍をされており、本当にこういうコンサルティングビジネスが重要だと思うのですが、この手のコンサルティングビジネスは日本で今どの程度発達しているのか、つまり、まだ少ないのか、大手の外資系のコンサルティング会社などが本気でそういうことをやりそうなのか。あるいはこうしたものは、必ずしも利益追求でない部分があるので、ビジネスとして発達しないのか。この手のコンサルティングを実施する主体と現状の展望についてお聞かせいただければと思います。
小室委員
まだこれを本業でやってビジネスになるという考えを業界的には持っていないと思います。どうして弊社がこれで成り立っているかというと、armoがあるからなんですね。コンサルティング自体は単発ですし、企業もまだそういったワーク・ライフ・バランスのコンサルティングに幾ら払ったらいいのかということが未知数なので、非常に少ない金額しか払わないです。私たちはどちらかというと社会起業家なので、社会問題の解決のためにやっているというところがあるので、金額問わずどこでも相談に乗るんですが、こういったことが今ビジネス主体でやっているところが即できるかというのは、まだわからないところではあります。
 ただ、何で企業はそこにお金を出せないのかというと、それに対して社内がメリットにつながる投資であるという考え方を持つためのデータがないからなんですね。企業の戦略コンサルティングでも何でも、ああいうものを発注しさえすれば、その後に会社がちゃんと儲かるということがわかっていて投資がきくので、でなければ、投資しないのは当たり前なので、投資するとどれだけ企業のメリットになるのかというデータがそろってきさえすれば、社内でそこに予算が割けるというところも出てくると思います。
 あとは、やはり外部の目を入れた方がすごく進むんですね。自社内でやっているとしがらみに負けてできなかったり、歪んだ形で見栄えのいい2~3項目だけつくることになったり、行動計画のためだけにやったりという形に歪むので、やり方としては外の目を入れさせるような方向に持っていかないと、本質的に変わらないのではないかと思っていまして、恐らくイギリスなどが外のコンサルティングに発注した場合の費用を補てんするということをやったのは、社内で独自にやらせるよりも外の目を入れた方がちゃんと進むからという判断で、そういったところを補てんしたのだと思うんですよね。そういった費用を補てんするには業者が多くなければいけないので、うちだけではだめなんですけれども、もう少し増えてきさえすれば、そういったところに費用を補てんするということによって、一気に進むのかなというのはあります。
 近いことをやっているのが、社会保険労務士の方たちが個人で商歴の相談に乗ったところから、結局そういうコンサルティングに近いことをやっていらっしゃるという方が、個人の事務所を構えてそういう相談に結果的には乗っていらっしゃるという方がいるんですが、企業内で働いたことがない方が多いので、組織の難しさみたいにことに関してはソリューションがなかなか提供できないというところがあります。
 あとは、人材コンサル系の企業さんの外資出身のところがやられるケースというものもあるんですけれども、それが日本固有の組織の難しさみたいな話で余り進まないというケースがあると思います。
勝間委員
その話に関連して、実はワーク・ライフ・バランスのコンサルティングではなく、商品のマーケットはまだあるんじゃないかという仮説を持っています。なぜかというと、年末にワーキングマザー手帳というのをつくりまして、何かというと、大した工夫じゃないんですけれども、欄が全部ワークとファミリーに分かれているんですね。日々とかマンスリーなどが。これが実は思っていた予定数の3倍ぐらい売れたんです。実はそういう商品のニーズがあるんだけれども、誰も開発していないのでないのではないかということは考えています。
小室委員
そういうものを発想する人が社内にいないという企業の限界ですよね。本当にそう思います。
佐藤会長
勝間さん、SRIなんだけれども、ファミリー・フレンドリー・ファンドが2年ぐらい前にできてどうなっているかわからないけれども、そういう可能性はあるのかどうか。
勝間委員
グッドバンカーさんともよく話をしますし、実際に残高を見たりして、あと商品開発の人とも話をするんですけれども、正直言ってかなり厳しいです。パフォーマンスが上がるんだったらやるよというのが皆さんの意見で、パフォーマンスが上がるどうかはバックテストやってみたんですけれども、何か難しいかというと、そのときの優良企業がやるんですよ。そうすると、バックワードで5年、10年はすごくパフォーマンスがいいんですが、フォワードルッキングにしてしまうと逆によくないんですね。そうすると、日系225ファンドを買っているのと何が違うのみたいなことになってしまって、CSRはお金に余裕があるからやるんじゃないのと言われてしまうところが今すごくあります。
佐藤会長
小室さんので、男性の育児義務化の中身についてです。女性についても育児休業は義務化されているわけではないですよね。だから、そこは女性もとらなければいけないのかということではなくて、女性もとりたい人は育児休業をとると。だから、0歳で預けて働くのは悪いわけではない。そうすると、男性の育児休業取得の義務化というのは、どういうふうに考えられていますか。
小室委員
女性がとるのであれば4分の1義務化というのがいいと思います。これは本当に自分が実感したんですけれども、私は子どもが生まれて2か月で気が狂いそうになったんです。夫は経済産業省に勤めているわけですけれども、夜中の3時ぐらいにならないと帰ってこないというのが、子どもが生まれようが生まれまいが、同じ生活のスタイルを続けていたんですね。そのことで私は2か月で限界が来て、もう二度と子どもは生むかとそのときに思って、そのときに夫が職場にいろいろヒアリングをしたところ、意外と育児をしている人がちゃんと聞いてみたらいたとか、でも話題にできなかったと。娘の弁当は俺がずっと詰め続けてきたという人がいたりだとか、いろいろな方法で育児参加しているんだということを夫は初めて知って、何だみんなもやっているならということで、朝早く起きてお風呂に入れて御飯をつくるというのを平日毎日やるようになったんですね。そのことによって、急に私の精神的にずっとおかしいと思っていたことが晴れて、朝2時間やってくれるだけですから、あとは全部私なんですけれども、相変わらず夜も遅いんですが、平日の朝と土日の逆L字型を自分がやるよと言ったんですね。私は平日の長方形をやって、面積が同じになるようにという、妙に論理的にやると言い出したんです。そういう意識があるということによって私は急に楽になって、そもそも私の育児の時間はそんなに減っていないんですけれども、急に2人目はいつ生もうかという気持ちに変わったんです。同じだけやって、自分のやっていることを理解しているのかどうかということは、非常に気持ちとしては違うので、女性が育児休業をとるのであれば、その間、いかに家で孤独で、いかに行き詰まってというものを、たった4分の1でいいからちゃんと体験するべきだと思うんですね。
永木委員
その関連で、男性の育児休暇の義務化というのは、ある意味いいかなと私個人的に思いますのは、弊社の中でそういう育児関連制度の取得のしやすさとか活用できたかどうかのアンケートを男女共にとったんですね。そうすると、男性は年代が若くなれば若くなるほどとりたい人が多い傾向があるんですが、翻って、職場はそういう制度をとりやすいですかと聞いたら、年齢が下がれば下がるほどとりにくいと言い出すんですね。だから、ある意味そういう義務化によってとりたかった人がとれるようになるというのもあるのかなと。
 あと、在宅勤務の試行を推進したときに、男性でやりませんかと聞いて「いやいや」と言った人たちは、上司の命令があったらやるけれどもねと。実はやりたい気持ちはあるんだけれども、そこのところが強制されないとできない人たちが男性には多いと。
小室委員
義務化になって初めて自分の意思が言えるという。
佐藤会長
それは私もよくわかります。企業としてそういうことをやるのはあり得るかなとは思うんだけれども。
 では、そういうことも含めてこれから議論したいと思います。今日は少し長めにしていだたいて、皆さんに報告していただきました。まだ議論はいろいろあるかと思いますが、予定の時間にもなりますので、この辺までにさせていただきます。
 それでは、事務局から連絡事項についてお願いいたします。
池永調査課長
本日はありがとうございました。次回の専門調査会ですが、4月20日の13時から15時ということで、会場は今日と同じ永田町合同庁舎の会議室です。植本委員、紀陸委員、岡島委員から、それぞれのお立場から御意見を発表いただくとともに、民間企業の連携の取組でワーク・ライフ・バランス塾というのがございますので、そこの参加企業の方から御発表をいただきたいと予定しております。その後、皆様に意見交換をしていただくということでございます。
 前回同様、発表をお願いしている皆様には、御参考までにあらかじめ質問項目をお送りしておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
佐藤会長
かなり連続してお願いすることになりますが、まとめの時期がかなり限られておりますので、可能な限り御協力いただければと思います。またよろしくお願いいたします。

以上