少子化と男女共同参画に関する専門調査会

  1. 日時 平成17年8月11日(水)15:02~17:00
  2. 場所 内閣府3階特別会議室
  3. 出席委員
    佐藤会長、阿部委員、網野委員、大沢委員、杉山委員、高橋委員、武石委員、布山委員、藻谷委員

(議事次第)

  1. 開会
  2. 調査報告について
  3. その他
  4. 閉会

(配布資料)

資料1
報告書(案)
資料2
報告書概要版(案)
資料3
第6回専門調査会議事録

(議事内容)

佐藤会長
それでは、少し過ぎましたけれども、予定の方はおいでですので、ただいまから男女共同参画会議少子化と男女共同参画に関する専門調査会の第8回会合を始めさせていただきます。委員の皆様には、夏休みの中、またお忙しい中、御参加いただきありがとうございました。
 本日は、お手元の議事次第にありますように、「報告書(案)」が議題となっております。これまでの調査結果を取りまとめた「報告書(案)」を既に皆様にお送りし、いただきました御意見を元に修正してあります。大幅な内容の変更はないですけれども、かなり構成が変わっています。もちろん細かい点、いただいた意見なども踏まえて修正してあります。
 それでは、まず最初に事務局から報告書案及び報告書案の概要について御説明していただいた後、また御意見をいただいて取りまとめをさせていただきたいと思います。それでは、事務局からまず報告書案について御説明をお願いします。
分析官
それでは、お手元の資料1の方が報告書案となっております。こちらをごらんください。
 1ページ目をお開きいただきまして、目次で構成の変更について御紹介したいと思います。皆様のお手元にお送りさせていただきました報告書案につきましては、前回の調査会で御紹介いたしました目次案に沿ったものでしたが、そこから構成として一番変わったところは、まず1が「少子化と男女共同参画に関する社会環境国際指標」ということで、最初から国際指標の方の御紹介に入る。これは、以前の目次では最初にさまざまな統計データの御紹介というものをさせていただいておりましたが、それは後ほど御紹介しますが、参考の方に回させていただきました。1.の中の構成はほとんど変わりません。
 2の方の「少子化と男女共同参画に関する施策・制度」については、先生方からさまざまな御意見をいただきまして、1つは各国の個別の取りまとめについては参考の方に回させていただいております。また、分析の仕方について若干変えましたので、それは後ほど施策・制度のところで御紹介させていただきます。
 それから、3の「社会環境国内指標」につきましても、前回の調査会で、今回は国内につきましては都道府県間の差異を見るものではないということで御紹介していたのですが、ただ、国内指標についても各都道府県のスコア等が具体的に出ておりましたので、今回はそういったところの誤解がないように、ある程度発表するデータ等について精査をして、国内指標については国際指標との関係で見るという位置付けを明確にいたしました。こちらについても、後ほど中身を見ながら御説明させていただきます。
 それから、「まとめ」につきましては前回お示ししたところに若干観点を増やしておりますので、こちらも内容は後ほど御紹介いたします。
 それから、参考2が以前の調査報告目次案では1番となっておりました「国際統計データでみる少子化と男女共同参画」で、中の構成はほとんど変わっておりません。それから、参考2の方に「各国の施策・制度概要」ということで国別の内容、参考3が「出典/定義」の一覧となっております。
 では、まず最初に次のページの「はじめに」のところからごらんください。1の「調査の背景と目的」につきましては、以前は背景から御説明して最後に目的をお示ししていましたが、その順序を変えて、最初に目的の方をお示しするという形にいたしました。「本調査は、女性の労働力率と合計特殊出生率の関係の変化に着目し、その背景となったと考えられる社会環境を把握することを目的とする」ということで、若干説明を加えております。
 そして、「調査の背景」といたしまして、次の2ページにごらんいただくような合計特殊出生率を1人当たりGDPですとか乳児死亡率との関係、そして先進国の中では合計特殊出生率と女性労働力率が正の相関関係にあるというグラフです。それから、国内の都道府県においてもやはり同じような関係が見られますという状況です。
 次のページにまいりまして、こちらも以前はOECDの図表でお示ししたことがあると思いますけれども、今回は24か国を精査したデータで合計特殊出生率と女性労働力率の70年、85年、2000年の変化というものを見ております。
 それから、図表の6ではこうした変化を国別に見ますと、一番左の日本のように70年、85年、2000年とずっと下がっている国もありますけれども、真ん中の85年よりも2000年の方が上がっているデンマークやフィンランドですとかオランダ等の国もある。そうした下がり続けている国と上がってきた国があるという状況が70年、85年、2000年の女性の労働力率と出生率の相対的な関係を変化させているということを示しています。
 それから、2.として「調査概要」ということで、報告書が大変ボリュームのあるものですので、ここで報告書の構成を御紹介して、それぞれどのような調査を行っているかということを御紹介しております。
 では、次に1.の「少子化と男女共同参画に関する社会環境国際指標」でございます。
 1の「指標作成過程」につきましては、これまでと変わりません。ただ、若干途中の分野を検討するに当たってつくりました分野のフロート図ですとか、途中の検討過程の資料につきましては今回削除させていただきました。そして、24か国における合計特殊出生率と女性労働力率の関係の70年、85年、2000年につきましては、先ほど見たのと同じグラフになりますけれども、図表1-1-2としてA3横の紙で大きくお示しして若干解説を付けております。
 次のページへまいりまして9ページ、「(4)分析対象国の類型化」ということで、これもこれまでお示ししてきたものと変わりませんけれども、80年から2000年の合計特殊出生率の変化率と合計特殊出生率の水準、それから2000年の女性労働力率の水準で分類しましたということで、次の10ページに一覧表を示しております。こちらは以前、もっと大きなA3でお示ししてありましたけれども、少しコンパクトにしましてA4でお示ししてございます。内容は変わっておりません。
 そして、それぞれの国のタイプ別に合計特殊出生率と女性労働力率、70年から2000年の5地点でどう変わってきているのかというグラフをお示ししてございます。こちらは24か国ございますので、6ページにわたっております。
 17ページにまいりまして指標分野の設定ということで、社会環境指標分野をこういった大分類5分野と、それから全体の小分野になりますと10になりますけれども、こういった設定をしているということで、総合的には「女性が社会で活躍し、かつ男女が子どもを産み育てやすい社会環境としては、「社会が安定し、人権が尊重され多様なライフスタイル選択が可能で、仕事と生活の両立が可能な働き方ができ、子育て支援サービスによるサポートも充実しており、若年層が自立できている社会である」」という形を想定して整理していると示しております。
 次の18ページからは「社会環境指標分野と仮説」でございます。こちらは、先生方にお送りした時点からとほとんど変わっておりません。若干文言について御意見をいただいた中で修正をしておりますが、基本的には変わっておりません。
 20ページにまいりまして「指標項目の設定・選択」ということで、こちらについても若干文言について精査をいたしました。
 21ページが個別の「指標項目一覧と各指標の傾向」ということで、「社会環境国際指標項目設定の考え方」ということで、例えば大分類1の「仕事と生活の両立可能性」に対して1の適正な労働時間については労働時間の短さで週当たり実労働時間を取っています。これは実際に働いた労働時間を指標項目としています。サービス残業や通勤時間の問題も含めて表すことが望ましいという意見を随分先生方からいただきましたので、そういったことについて注釈を付けております。
 それから、23ページに「指標項目一覧」についての説明を書かせていただきまして、24ページにデータの一覧表を載せさせていただいております。こちらは前回の調査会からデータが変わったということはほとんどございません。ベルギーの週当たり実労働時間がなかったのですが、こちらの方が追加できましたので加えているというような状況がございます。
 次の25ページは、その実データを点数化した一覧表でございます。
 更に次のページにまいりまして、これらのデータから見てとれる指標項目ごとの傾向ということでお示ししております。こちらの方も大きな変更はございません。
 30ページにまいりましてデータの点数化ということで、各タイプ別にどのようなスコアになっているのかということをお示ししております。この網かけしてあるところが、後でレーダーチャート化している、それから、制度分析で見ている国でございます。
 次に「分野別指標のレーダーチャート」ということでタイプAからCまでの10か国を示してございます。すみません。こちらのグラフにつきましてはもう少しグラフの線の部分を見やすくというような御指摘をいただいているのですが、まだグラフの修正が間に合っておりませんので、もう少し文字とグラフの比率を修正したいと思っております。
 次に35ページにまいりまして、タイプAからC2のグループごとの指標傾向と各国別の傾向を整理したということで、各国の指標のスコアについて書き下したような形になっております。これも先生方にお送りさせていただいたバージョンと語句について若干見直しておりますが、ほとんど内容は変わっておりません。
 41ページからが「少子化と男女共同参画に関する施策・制度」でございます。こちらにつきましては内容を若干整理させていただきまして、(3)の「分析項目・分析方法」のところで3つの視点から今回整理をしています。
 1番目が、「子育てコスト」に着目した特性に分類して各国の取組を整理するということで、直接的なコストと機会費用に施策・制度を分けて整理しました。
 2番目が、各国の出生率が上昇に転じたタイミングで導入・変化のあった施策・制度について整理しました。
 3番目が、各国の主だった取組を年代別に整理しましたということになっております。 次のページにまいりまして、上の方の表が子育てのコストに注目した分類がどういうものかということで、直接的に出産・子育てにかかる費用の軽減ということでは、児童手当て、税額控除、教育費支援等、それから出産・子育ての機会費用の軽減ということでは、子育て支援で保育施設やサービスの拡充、保育利用料の助成等、それから働き方の見直しで長時間労働の是正ですとか柔軟な働き方、育児休業給付制度等になっております。以前この分類をお示ししたときには、育児休業給付制度を家庭内育児の支援というような形で分けておりましたけれども、働き方の見直しで一本化させていただいております。
 2番目の「10か国における主な施策・制度」で、それぞれの代表的な施策について各国の取組を整理してございます。こちらの中身については以前お示ししたものとほとんど変わっておりません。
 あとは構成が変わっただけでしばらく変わらないところが続きまして、50ページにまいりますと「出生率変化のタイミングにおける施策・制度の導入」というところで、こちらは各国別に若干シンプルに整理いたしまして、図表2-3-1のようなグラフですとか、2-3-2のようなグラフにコメントを付けたものとして整理してございます。
 60ページにまいりまして、大体この変化のタイミングに導入されている主な施策・制度にはどんなものがあるのかということを分野別に整理しております。この分野は先ほど整理した子育てコストの分野と同じものになっておりますけれども、見ますと特にどの分野が多いということはここからは言えない。それぞれの分野の取組が同じ程度にあるということが書いてあります。
 62ページでございますが、こちらが「年代別施策・制度導入状況」ということでございます。こちらは以前はそれぞれの国の取組の数を取りまして、その中から表を作成させていただいていましたけれども、精査をする中でやはりちょっと表にすることまでは難しいのではないかという御意見もいただきましたので、各年代の取組をこういった形で文書で整理させていただいております。
 これを簡単な短いタイトル分けにして整理したものが67ページの表でございます。
 そして、68ページに一応70年から2000年の取組を見ているのですけれども、2000年以降に注目される取組としてイギリスとドイツの取組について紹介させていただいております。イギリスは「ワーク・ライフ・バランス推進と子育て10か年戦略」ということで、雇用政策と家族政策の組合せということで御紹介しております。
 それから、ドイツの方は以前ちょっと御質問が出たところでもあると思いますが、「持続可能な家族政策」という取組について整理しております。こちらの方は家族省の方から2005年に「持続可能な家族政策」という報告が出ておりまして、その中にあります時間政策、経済再分配政策、保育政策の混合政策を推進するというような考え方が、今回お示ししているような総合的な施策・推進という考え方と一致するのではないかということでお示ししております。
 次の70ページにこの「10か国の取組の特徴」を整理してございます。こちらを見ていただきますと、1つには子育てにかかる費用を直接的に軽減させるための施策としては、配偶者を含めた家族全体を対象とする扶養控除や手当から子どもを対象としたものへ、それから税額控除から手当・給付へという動きが見られます。
 また、出産や子育てに伴う機会費用を下げるための両立支援策として、保育と働き方に関する施策を見ていますが、保育については福祉からサービスへ、支援の対象層の拡大、公的負担の対象を民間や在宅サービスへも拡大、保育と幼児教育の一本化などの動きが見られます。
 それから、働き方の育児休暇につきましては制度の導入、休業給付の導入、父親の育児休暇の権利を認めるなどの動きが見られます。また、賃金や待遇に関する男女差の解消や、パートとフルタイムの格差解消、労働時間の短縮や多様な働き方を認めることによるワーク・ライフ・バランスの推進などの動きが見られます。
 今回、対象としております国々、EU諸国におきましては90年代後半からのEUの雇用戦略の影響が強いと見られまして、今後EU諸国において雇用政策、家族政策において格差が縮小していくのではないかというようなことを示しております。
 それから、これまで見た中ではやはり子育ての直接的費用軽減策と機会費用を低下させる両立支援策、双方に各国で取り組んでいて、総合的に子育てコストを軽減化させる施策に取り組んでいるのではないか。また、先ほどお示ししたようなドイツの取組の中でも、経済再分配といいましても単に直接的な手当等だけではなくて、女性の機会費用が重視されているというようなこともありまして、そうした観点から見る必要があるのではないかということを示しております。
 次に、「社会環境国内指標」の方でございます。こちらの方は、目的のところで今回都道府県の差について示すものではないということを示しております。
 そして、(2)の方で国際指標と同様、70年、85年、2000年の合計特殊出生率と女性労働力率の関係を示しております。
 参考としまして、3-1-2では合計特殊出生率の推移と水準、それから女性労働力率の動向ということで、一応国際指標と同じ考え方で整理したものについてお示ししております。
 次のページからは、分野の設定を国際指標と同じようにしましたということを示した上で、75ページからは国内指標の項目の説明をしております。
 国内指標につきましては77ページにデータの一覧をお示ししておりますが、スコア化したデータについては今回お示ししておりません。
 78ページ以降は「社会環境国内指標の傾向」ということでございます。こちらは先生方にお送りしたところからほとんど変わっておりません。
 ここまでが内容でございまして、81ページからがまとめということになっております。まず「女性の労働力率と合計特殊出生率との関係」というのは、大体「はじめに」でも確認しているところではありますけれども、合計特殊出生率と女性労働力率の関係が固定的な関係ではないということを示しております。
 また、次の82ページの2番では「OECD加盟24か国の類型化」についてでございます。今回、1人当たりGDP1万ドル以上のOECD加盟24か国を対象にしたわけですけれども、この分類を行ったところ、ある程度文化圏ですとか社会保障システムのタイプの違いごとに区分がなされました。こうしたことから、ある程度社会保障システム等の違いと出生率変化による分類というものは近い傾向を示しているということで、出生率に対して政策的介入効果があることを示唆していると言えるのではないかと考えております。
 それから、3番目の「グループ別の社会環境指標の特徴」は、各グループの特徴というものを本文の中からピックアップしておりまして、84ページに「アメリカと北欧諸国の共通性」ということでタイプAの特徴をお示ししております。前回の調査会ではタイプCのみを御説明しておりましたので、今回はタイプAとCをそれぞれ御説明しております。
 86ページをごらんいただきますと、まとめとして、今回の分類においてタイプAに分類されたアメリカとフィンランド・ノルウェー・デンマークは、民間自由市場ベースの子育て支援・雇用策をとるアメリカに対し、公的な施策を中心とした北欧型のフィンランド・ノルウェー・デンマークというように、社会保障システム等においては異なったタイプであるものの、「社会環境」で示した場合にどちらも結果として同じように「多様なライフスタイルの選択が可能な社会」となっている点も注目されるというような形で整理しております。
 また、最後の方に、北欧諸国でも70年代には女性の労働力率が日本よりも低い水準であり、片働き中心の社会であったことを考えれば、今回指標に見たような多様なライフスタイルの選択を許容し、両立を支える社会環境が元からあったのではなく、70年以降のさまざまな取組により形成されてきたのではないかと推測されるというようなことを書いております。
 それから、87ページのタイプC2の特徴につきましては前回の調査会で整理させていただいたものでございます。
 それから90ページ、「国際指標と国内指標の傾向の違い」でございます。こちらにつきましても前回の調査会でお示しさせていただいたものですが、概要版の方で若干グラフをつくって整理してございます。
 それから、94ページは「施策・制度と社会環境指標」ということでございます。こちらも前回の調査会のまとめに入っていた内容を少し構成を変えたものでございます。先ほど見ていただきましたように、施策・制度分析で「子育てコスト」に注目して整理をしているということで、総合的な「子育てコスト」への対応が必要ではないかということを言っております。
 それから、(2)では「1970年以降の10か国の取組の特徴」ということで、施策・制度のところで見ましたような各国の取組の変化について整理しております。ここにつきましては、前回お示ししたものと変わっておりません。「おわりに」のところで、今回都道府県別の社会環境、都道府県間の差について言及するところまで分析が及んでいないということで今後の課題として挙げております。
 参考は、先ほど言いましたように各統計データ等の紹介と、それから各国の制度、それから定義/一覧でございます。こちらの統計データのお示しの仕方ですとか、施策・制度についても先生方から大変丁寧に御意見をいただきまして、そういったものをできるだけ反映させております。
 以上、若干長くなってしまいましたけれども、もしよろしければ続けて概要版の方についても御説明した上で御意見をいただければと思います。
 概要版は資料2になります。まず頭のところに、先ほどのまとめのところに入っていた観点の中から4つポイントを抜き出しております。1つ目が「女性の労働力率と合計特殊出生率との関係」、2つ目が「OECD加盟24か国の類型化」、それから「アメリカと北欧諸国の共通性」、「国際指標と国内指標の傾向の違い」、そして最後に「総合的な取組の必要性」ということで、大体まとめで先ほど御説明した内容をピックアップしたという形になっております。次のページからそのグラフを付けてコンパクトにしてございますので、ごらんいただきたいと思います。
 2ページの方で「研究概要」といたしましては、「本研究は、女性の労働力率と合計特殊出生率の関係に着目し、両者の背景にあると考えられる両立と社会環境を定量的に把握することを目的とする。
 分析対象は、「OECD加盟国のうち1人当たりGDP1万ドル以上の24か国」とする。両立を支える社会環境指標について、国際間の傾向と国内における傾向の違いを把握するため、国内についても、国際指標の考え方に準じた指標を作成する。
 少子化と男女共同参画の関係を明らかにするとともに、我が国が少子化の流れをかえるための課題を検討する」ということになっております。
 まず「はじめに」のところでは、1人当たりGDPと合計特殊出生率、それから乳児死亡率と合計特殊出生率の関係を示しまして先進国というもののポジションをお示ししておりまして、大体共通して人口置換水準以下のいわば少子化国になっているということを示しております。
 3ページにまいりまして、その先進国ということでOECD24か国を取り出しまして、この中における15から64歳の女性労働力率と合計特殊出生率の関係を見ますと、女性の労働力率が高い国ほど合計特殊出生率は高いという関係がある。国内47都道府県についても同様の関係が見られるということを示しております。
 次のページへまいりまして、「はじめに」のところにありました70年、85年、2000年の状況、その背景の各国の状況を示しております。
 それから、5ページ目がこの分類の表になります。
 6ページ目に、今回設定しました「指標分野と国際・国内の指標項目一覧」、そしてこの中からデータの収集度が高かったということと、それから各タイプからピックアップするという観点で8か国取り出しましたので、こちらの方のグラフを示しております。それぞれ上の方のグラフに合計特殊出生率と女性労働力率の5地点の変化、それから下の方に今回つくりました社会環境指標のスコアのレーダーチャートを示しております。
 次のページに、タイプA、タイプB1、タイプB2、タイプCのそれぞれの特徴を整理してございます。
 それから、国際指標と国内の違いということに関しましては9ページの方に「国際指標と国内指標が同じ傾向を示す指標項目例」ということで4つのデータについてお示ししております。こちらは「保育利用の容易さと合計特殊出生率」、「教育費の公的負担の高さと合計特殊出生率」、「男性の家事・育児への参加度と合計特殊出生率」、「若者の雇用不安の低さと合計特殊出生率」、この4つについてはOECD24か国の間においても国内47都道府県の間においても同じ関係が見られるということでございます。
 これ以外にも、一般の失業率を指標としました雇用不安ですとか、それから地域活動への参加度なども同じ傾向を示しておりますが、代表的な項目ということで4つ抜き出しております。
 それから、次に異なった傾向を示すものというので6項目示しております。1つが「男性の短時間就業者割合の高さと合計特殊出生率」、これは働き方の柔軟性の項目として取ったわけですけれども、国際指標としてはそういった見方ができるのかもしれませんが、国内に関して言うと柔軟性というよりは雇用の不安定さの指標になってしまっているのではないか。
 それから、「家族サービス給付の高さと合計特殊出生率」については、国際指標では家族サービス給付割合と出生率は一応正の相関ということになっておりますが、国内の方は相関していない。ただ、東京がかなり外れた値になっているということがございます。
 それから、「三世代同居割合の高さと合計特殊出生率」につきましては、国際では平均世帯人員を取っているわけですが、これは合計特殊出生率とほとんど相関がない。国内につきましては合計特殊出生率と三世代同居率がこれまでも随分言われておりますが、正の相関があるということで、国内においては家族支援に依存した構造になっているのではないか。
 それから、「女性の管理職割合の高さと合計特殊出生率」につきましても、OECDの方では正の相関が見られるのですが、国内については若干負に傾いているように見えますが、ほとんど相関がないという状況でございます。
 次のページにまいりまして、上の方の図表18は「サービス産業化と合計特殊出生率」ということで、第三次就業者比率を見ております。こちらを見ますと、やはりOECDでは正の相関ですけれども、国内ではそれが負の相関関係になっている。
 それから、「経済的豊かさと合計特殊出生率」ということで1人当たり国内総生産と1人当たり県民所得を見ておりますが、これもやはり逆の関係になっております。枠の中で今、御説明したような内容についてコメントを加えております。
 ここまでが内容で今、御説明したようなことを総括した内容を1ページ目に書かせていただいておりまして、参考の方には国際指標のデータ一覧と国内指標のデータ一覧を示しております。
 以上、駆け足ですが、概要版の方の説明を終わらせていただきます。
佐藤会長
それでは、まず最初に報告書の案の方の御議論をいただいて、それが終わった後、概要を見ていただくことにしたいと思います。それで、報告書の案ですけれども、皆さんにお送りしたものと大きく変わっているのは、この調査会でやるべき課題ですね。女性の労働力率と女性の社会参加、これは女性が社会参加すると出生率が低下するのではないかという議論はあるけれども、そういう考えは認められるのか。そうでないとすれば、どういうような社会環境が背景にあるのかということを検討しようということですので、そちらの部分を前半に出したということになっております。ですので、前回、前の方にあったものが参考資料の方に移っているというふうな大きな構成の変化があります。
 まず最初に、この構成について御意見をまず伺ってから1章ずつ伺えればと思いますが、構成についていかがでしょうか。前のは、読んでいるうちに疲れてしまってなかなか本題に入れない。今回もなかなか結論にたどり着くのは大変ですね。構成はよろしいですか。これで変えないという意味ではありません。一応大きく変えたことについてです。
 それからもう一つ確認なのですが、この調査会での責任範囲はまとめまでで、参考資料は参考だということでいいですね。参考資料までここで我々が責任を持つものではないということにしたいんです。その方がいいと思うので、それは問題ないでしょう。つまり、まとめまでが調査会報告書で、後ろは参考資料だという理解でいいですか。
 では、そういうふうな形で参考資料も活用しながら本編をまとめたというふうな理解にしたいと思います。
 それでは、「はじめに」も含めて第1章、ここは一番多いので御意見を伺えればと思います。40ページまでと少し長いですけれども、細かい点も含めて御意見あるいは気付いた点からで結構です。
 では、皆さんの前に私からいいですか。社会環境指標というのはどこにも定義がないんですね。社会環境指標というのは何かということがどこかに書いていないんです。最初に出てくるのはどこですか。1ページの「どのような社会環境を」と書いてあるところですね。だから、書いた方がいい。
分析官
概要版の頭には入れてありますが……。
佐藤会長
概要は入れたんだけれども、一応施策・制度・価値観などと書いてあるんだけれども。
分析官
では、1ページ目の最初に入れますか。
佐藤会長
2行ぐらい書くか、あった方がいいと思います。余り一般的に使われていないから、ちょっと説明があった方がいいと思います。
 ほかにはございますか。
武石委員
このタイトルが「少子化と男女共同参画に関する」ということで、男女共同参画の指標を女性の労働力率で代表させているということをどこかで書いておいた方がいいかという気がして、男女共同参画というのはいろいろな指標があり得ると思うんですけれども、これは女性の労働力率だということを。
分析官
では、頭からいきなり今、女性の労働力率と合計特殊出生率に着目しと言ってしまっていますけれども、その前に少し書いた方がいいですか。
佐藤会長
「調査の背景」の最後の2ページの3行を1ページの前に持ってくるかですね。それも書くようにしましょう。
阿部委員
本質的な話ではないんですけれども、図表がたくさんあるのですが、本文中ではどこも図表を参照していないんです。ですので、読み手にとってはかなりどこを見ているのかがわかりづらいようになっているのではないか。
佐藤会長
では、一応文章で、括弧をして図表4とか、そういうことにしましょう。
阿部委員
私は図表1-1-4というのは非常に好きというか、これを入れてくれと言っている本人なので、これに対するコメントが本文中にはないような気がするんです。結構コメントはできるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
分析官
これそのものだけについてのコメントということですか。
阿部委員
あるいはタイプA、B、C。
分析官
そうしましたら、その前のページの9の1-1-3で、余りにもあっさりしていますので少しここに追加をさせていただいてよろしいでしょうか。それで、図表1-1-4参照ということで。
阿部委員
そうですね。そうしていただけるとありがたいです。
佐藤会長
3ページは図表の3と図表の4があるでしょう。国内と海外ですが、横軸の目盛りが違うんです。縦は一緒ですが、これは大きさも違うんですよね。目盛りは一緒だけど。
分析官
縦は一応合わせたのですが。
佐藤会長
比較するときはできれば同じ目盛りの方がいいという気がします。何か意識的にやっていると疑われるから、一応比較するときはできれば尺度とか目盛りは同じ方がいいかなということです。
 これもそうですね。日本と国際が同じですと言っているわけでしょう。できれば同じ方がいいかなという感じがするんです。
分析官
2つの間で揺れていまして、御意見をいただいていろいろ見本についてもいただいたのですけれども、図表3と4のようなものはできれば各プロットが大きく表現できるようにぎりぎりの尺度で取るということと、これは佐藤会長からも厳しく御指摘をいただいたのですが、次のページの図表5の2000年の数値の縦横の比率と、それから3ページの図表3の縦横の比率が大体同じになるようにということで、図表5の方は出生率が4.6まで取っていますのでこういう縦長の関係になったというようなところでございます。できるだけ工夫したいと思いますので、また何かよいお知恵がありましたら。
佐藤会長
これで難しいのは、図表3で見るとすごく立っている感じがするんです。ところが、次の図表5を見るとそんなに立っていない。だから、実際に同じものなんだけれども、そうするとすごく図表3を意識的につくったと言われてるので、目盛りはどちらかにそろえた方がいいと思うんです。
網野委員
今のような統計あるいは図表の表し方ということで、もう一つ感じていたのですが、31ページ以下の図表の1-2-7ですね。これもそれぞれのタイプごとで数字、データで違いがあることを背景に説明しているわけで、統計的に有意かどうかは数が少ないですし、国ごとの比較ですからこれは非常に難しいとは思うのですが、ただ、もしタイプとして分けていくということを本当に示すならば、例えば0.0から五十幾つまでの幅ですね。タイプAとタイプCの違いをこの図で何か説明しようとするならば、逆に0.0から五十幾つまでもっと拡大して示さないと、これだとざっと見るとそんな違いを感じないデータというふうに受け止められそうなんです。
 例えば、それぞれのタイトルを数値化する。例えば、ローマ数字でVが社会の安全・安心とかありますね。それを数字化して、むしろもっと数字のデータにして、グラフを中心にして描くという方がこちらの意図が通じやすいかという感じがします。
分析官
そうですね。100までを取っていると確かに小さくなってしまうので、これもいろいろ大きさも検討したのですが、おっしゃるようにただ拡大してもなかなか難しくて、やはり目盛りを変えないと、というところはあるのかもしれません。
佐藤会長
一応これは日本を中に書いていただいているので、Cとほかとの違いなんですね。AとBとかというと、それほどかなということになっていて。
分析官
概要版の方の同じレーダーチャートについては文字の大きさの比率は大分変えたのですけれども、ただ、今、網野先生がおっしゃったような最大100というところは動かしていないので、これがぎりぎりというところになるかと思います。本編の方のレーダーチャートはさっき申し上げたようにまだ変えていないので、修正はしたいと思うのですが、10か国で言うと最大値が68くらいなので、70くらいになると思います。
佐藤会長
では、ちょっと御検討いただきましょう。ほかにはいかがですか。
大沢委員
修正ということではなくて解釈なのですが、最初のところで各国で見ても、24か国で見ても、日本の国内で見ても、労働参加率が高いと出生率が高いということが4ページ辺りの図でいろいろと示されていますが、どうしてかというか、そういうことについて余り触れられていないように思います。
 もしその理由づけをするとしたら、日本の場合の出生率が高い地域というのは三世代居とか、雇用者よりもどちらかというと自営とか、家族従業が多い地域ではないかと思うんです。そういった就業形態として家でできる仕事だと、雇用者ではなくてむしろ柔軟に子どもと仕事との両立ができる。日本の場合はそれが家族従業とか自営という形でくくられていて、諸外国では雇用者という形になっているので、一見見ると違いがあって、日本と諸外国の労働力率と出生率がどう関連しているかわからないように思うのですが、そういう働き方を日本の家族従業とか自営を柔軟に働ける、家庭と仕事が両立できる働き方というふうに解釈し直すと、両方の整合性がかなり見えてくるのではないかと思います。
 ですから、出生率に何が効くかというときに、柔軟な働き方というのはかなり効くのではないかということが国内でも言えて、もう少しサンプル数を先進国というところに拡大しても言えるわけなので、結果として結論として出てくるものというのは、日本ではこれから雇用者が増える中で出生率の問題を取り上げるとすると、やはりその働き方というところにどうしても焦点を置くことが重要になるというような結論がこの報告書の中で読み取れるのではないか。
 私の意見ですが、その概要版でもそこら辺が触れられていますが、もう一歩踏み込んでその共通性ということに触れたら、この報告書がもう少しその後の施策として働き方が重要ということになり、かつ機会費用の軽減というところにつながるのではないかと思いました。意見です。
分析官
働き方を分析している中でちょっと感じたのは、やはり国際指標で働き方に関するデータが国内に比べると十分いろいろな角度から取れていないなという感じがあって、なかなか踏み込みづらいところもあるというふうには感じています。
 それで、第三次産業就業者比率などを参考値として加えたわけですけれども、その辺りでもう少し何か入れることがあればと思います。
 あとは、国内の方の地域間格差について十分分析していないので、その辺りも今回踏み込まなかったということが1つあります。
佐藤会長
日本の場合、労働時間の短さ、通勤時間の短さ、帰宅時間の早さは、就業者だからGMは全部入っているんでしょう。雇用者で取ったんですか。就業者で取ったものがあるでしょう。そういう意味では、もしそうであれば大沢さんのものは入っているのではないか。たしか国内は就業者で取ったでしょう。違いましたか。
大沢委員
多分、入っていると思うんです。それで、労働力率と取っている中身の違いをはっきりさせると、どの指標で国際比較と日本で共通に見られる違いがあって、どこで日本と諸外国で違った傾向を示しているかという違いがわかっていくのではないかと思うんです。
 男女の均等度などではほかの国と日本で違いが見られるというのは、やはりそういった自営とか家従が日本の場合は第一次産業、二次産業に偏っているところがあるということです。
高橋委員
今のことに関連して、図表の3と4がスタートの時点で非常に重要なデータになるということですね。ですから、図表の4に関しては別に雇用労働力率と合計特殊出生率という補完するものがもう一つ押さえてあれば、その本質的な違いということが強調できるのではないかと思います。
大沢委員
そうですね。
佐藤会長
それも一応取れるようにはデータ的には……。
 たしかこれは変わらなかったんじゃなかったかな。先ほどのはどうでしたか。
調査課長
就業者の男性で、94ページです。
分析官
社会生活基本調査なんですよね。
佐藤会長
では、雇用労働力について見てみるようにしましょう。
高橋委員
もし雇用労働力率も同じように相関が強いとなると、それでしっかり押さえることができるわけですね。
佐藤会長
そうですね。ほかには1章についていかがですか。
 では、2章でもいいですか。また戻ってきますので、40ページ以降、いわゆる制度のところです。国内に入る前で、ここはなかなか難しいところで皆さんからいろいろ御意見をいただいて、70ページまでです。かなり結論部分だけをまとめるという形にさせていただいたのですけれども、なかなか文書資料だけで施策を見ていくというのは難しいところがあって、ある程度精査していただいています。
 よろしいですか。では、先ほど出た国内のところで、71ページからまとめの前まで、80ページまでです。ここは、先ほど大沢さんが言われたようなことを含めて少し見ていただくということにします。ですから、通勤時間の短さとか、帰宅時間の早さとか、それは確かに大沢さんが言われるように自営とか家従の場合には当てはまるわけです。
網野委員
国内の場合は指標を中心にまとめていまして、それより前の国外といいますか、それに関してはいわゆる政策とか、それぞれの国の政策全体あるいは国の施策が言及されていますね。それで、例えばその傾向として所得控除から税額控除あるいは税額控除よりも税を還元して子育て家庭へ手当を支給するとか、そういう一つの特徴がありますね。これについて、国内の場合に都道府県別にいろいろ分類する中ではこういうことはとらえにくいですね。あるいは、先ほどのお話もあると思うのですが、全体的に企業や国や自治体が公的に支援するのか、家族支援に耐えるとまでは言わなくてもそういう制度が多いのか。
 要するに、国内指標に関して、もうひとつ我が国の政策とか施策とか見解の部分は触れなくてよろしいのでしょうか。多分これが最終的には考察とかまとめで結構関連してくるのではないかと思うんです。
分析官
当初、検討したとき、国内はやはり自治体の取組との関連で社会環境を見るのであれば、都道府県よりも市町村で見るべきではないかというような御意見もありましたけれども、ただ、統計データを中心に見ていくということになると、やはり一応都道府県単位でまとまって傾向を見るということがいいのではないかということで、今回こういう形で見ているのですが、先生がおっしゃるように取組との関係を言うのであれば更に進めて都道府県ごとの違いにプラスして市のところにいかないと、なかなか難しいのではないかという気はいたします。
 今回、いずれにしろ都道府県についてはちょっと中間取りまとめ的な形になりますので、この状態で更に何かを言うというのは厳しいのではないかと思っているのですが。
佐藤会長
国際化ということで取り上げているような大きな施策というのは、日本の場合は一律で、もちろん保育サービスなどとは自治体等で違いますけれども、なかなか国際比較でやったような施策を都道府県でやるのは実際上、難しいだろうということで今回はあきらめたんです。
 もちろん自治体に降りて自治体によって違う施策に焦点を当てるというやり方はあり得ると思うんですけれども。
網野委員
それは確かにありますよね。市町村ごとに児童手当をとか、いろいろありますけれども、どちらかといいますと70ページですね。10か国の取組の特徴ということでまとめられている内容から照らし合わせた場合、日本ではどうかということは触れる必要があるのではないかという趣旨で今、申し上げたんです。
佐藤会長
日本のインプリケーションということですね。
網野委員
つまり、それは都道府県や市区町村によって違うということよりも、やはり制度政策ですね。それによる相違というものが、男女共同参画社会とか労働力率とか合計特殊出生率と関連しているかどうかを比較考察する上では、これはほとんど国の方向ですね。確かに自治体の集合体としてもあるかもしれませんが、特にアメリカは本当に難しいとは思うんですけれども、連邦政府がというよりもどうとらえていいかわからない部分がたくさんあるかと思いますが、でもほかの国々はおおよそ国の制度政策ですね。
佐藤会長
女性の労働力率と出生率の関係というものは、2000年以降、正の相関になった。だから、これは固定的な関係ではなくて時代によって違うわけですね。そうすると、多分その背景には、ここでは社会環境というふうに言っていますけれども、社会環境の変化があって、両者を正の相関、女性が社会参加しても出生率は落ちないような社会環境をつくってきたということがあると思うので、そうやって取り上げると結論的には多様なライフスタイルの選択可能な社会だろう。
 それで、それをつくる上で大事な施策について少し先生が言われたように取り上げて、まとめのところでもう少し書けるか。では、まとめのところでまた議論をするということでよろしいですか。
網野委員
調査というものではないとは思うんですが、現状ということになると。
佐藤会長
それでは、女性の社会参加と出生率がプラスの関係を持てるような社会環境をつくっていく上で多様なライフスタイルの選択が可能な社会、それを進める上で今、日本がとっている施策で十分なのか、あるいはそういう環境がうまくできている国から学ぶことがあるのかどうかという点はまた後で少し議論をさせていただければと思います。
 国内のところはいかがですか。そういう意味では、都道府県ごとに施策というのはできないので、一応社会環境指標を国際指標と比べてどういう労働力率なり出生率、プラスの相関があるものとそうでないものと分けて議論をするという形になっております。
 では、まとめの81ページから見ていただければと思います。何度も繰り返しになりますけれども、女性の労働力率と出生率の関係は固定的ではなくて、両者が正の相関になるような社会環境というものができれば、これはつくり得るということを議論してきたわけで、正の相関が取れるようになるためには子育て支援だけではなくて仕事と生活の両立可能性とか、特にライフスタイル選択の多様性というものはすごく大事だというようなことを導き出したわけで、それが84から86に書いてあるわけです。
 特にC2とAを比較するとそういうことが言えるということですけれども、それでずっと書いてあって、そういう意味で総合的な施策の必要性ということが94に書いてあるわけですが、どこまで今回の研究から女性の社会参加と出生率が正の相関を持てるような社会環境をつくる上で今、日本政府が取り組んでいる施策で更に足りないものなり、あるいは強力に進めるべきものについてもう少し書き込めるかどうかということだと思いますが、そのことも含めてまとめのところについて御意見を伺えればと思います。まとめについて何かありますか。
分析官
先ほどいただいたように、細かい個々の施策についてなかなか言及するのは難しいのではないということを正直思っておりまして、先ほどお話が出ました手当なのか税額控除なのかという議論につきましても、例えば手当1つを取っても今回、給付の水準について表には整理しましたけれども、実際に検討するとなればそれが国内の児童のどれくらいをカバーするものなのか、あるいはどういった層をカバーするものなのかとか、またはそういった手当の水準がフランスで議論されているように、女性の就労に対して影響を与えているのか、与えていないのかとか、細かく見ていくとそれだけで多分一つの大きなテーマになるので、今回そういったところまで下りて見ていっていないということです。 ただ、そういった点について言及すると、恐らく影響が大きいのではないかと思いますので、まだ十分検討できていないということでそういった視点はまとめには入れていないというところでございます。
佐藤会長
94ページの6以下は政策的インプリケーションの話なんですね。それで、総合的な取組という言い方をされていますけれども、子育て支援だけでもだめですよということを書いていただいているわけですね。
分析官
ですから、今回、大きな方向というのは機会費用と、それから直接的な費用ということに着目すると今、出たような手当、税額控除というようなやり方と、それから女性の就労の両立支援というようなことの相互の影響を全体的に見ながら比較検討するということの重要性をひとつ言っているんですけれども。
佐藤会長
ここで皆さんのコンセンサスが得られれば少し重点を置いて書くということは、めり張りを付けるという書き方はあると思うんですけれども、これだというふうに具体的な施策に落とし込むところまでというのは、結構ほかの国を今回レビューした程度では難しいかもしれないという印象です。
 それでは、また戻ってきますけれども、概要の方を見ていただくと逆に大事な点が落ちているとかわかるかと思いますし、多分多くの人は概要しか読まないですね。ですから、必要十分、我々が主張したいことは少なくとも全部入っているかどうかということだと思いますので、概要を少しじっくり読んでいただいて、それがうまくこちらの本論の方で主張されていればいいと思います。いかがでしょうか。
 これは、本論のまとめの結論のようなものというのはないんですね。ずっと見ていくと、1枚目が主張で、後ろは細かいデータの解説という考え方ですか。これは1枚目が大事なんですね。
分析官
そうですね。もともとこれを最後にまとめとしてつくっていたのですが、まとめを頭に持ってきました。
佐藤会長
1枚目がまとめで、後ろはそのデータがくっ付いているというような感じの書き方ですね。例えば、「総合的な取組の必要性」などというのは後ろにはどこにも出てこないですね。後ろはデータの説明だけという書き方ですか。
分析官
後ろの方の構成として、基本的には丸囲いをしてあるところがどういったことを見ているかというところを書いていまして。
佐藤会長
もしそうだとすると、1枚目のところでここは大事だよというところのデータは何なのかというリファーがないんです。だから、少なくともこれが根拠になってこういう主張をしていますということが1枚目にあった方がいいかなと。
 例えば、多様なライフスタイルの選択が可能な社会が大事で、ではどこを見るんだと言われたときに、レーダーチャートなんだということであればレーダーチャートのCとAを比較ということなのかもわかりませんけれども。
布山委員
本体の方にも関係するかもしれませんが、このデータは男女共同参画を女性の労働力というところで見て、それと少子化や出生率の関係を見ているものですね。ここでは女性の労働力が高い方が出生率が上がるということで、そうするにはどうしたらいいかということで議論をしているのですが、ライフスタイルの多様性ということも強調しているように、人それぞれ生き方があるので、専業主婦という選択肢もあるということをどこかに記さないと、それを選んでいる方々に違和感を持たれるのではないかと心配です。
 したがって選択肢はいろいろとあることを前提とした上で、今回の調査は男女共同参画の一つの指標として女性の労働力率で見ているということを「はじめに」のところに書いた方がいいのではないかという気がいたします。
 また概要版の方にもその記述がないと、この研究会に出ている方以外、その前提が見えにくいかなという気がいたします。その上での研究であるということをわかるようにした方がいいと思います。それから、それに関連して概要版の1ページ目の4つ目の「○」の部分ですが、国際指標と国内指標を見た中で、その前の「○」のところでライフスタイルの多様な選択が可能な社会というものが示唆としてあるのではないかということの上で、日本においても社会環境の在り方を変えていかなければいけないというある意味結論のようなものを示していると思うのですが、ただ「ほかの先進国のように社会的有意性を支援するように変革していく必要があるのではないか」とここまで言うかどうかとなると強すぎるのではないかと思います。「多分効くであろうから両立できるようなものに変えていく」とか、もう少し表現を和らげた方がいいのかなという気がします。そこまで言い切るのであれば、本体の方の結論もそのようなものがないとまずいのではないかと思います。概要版なので凝縮して書いたのかもしれませんが、本体にそこまで書いてあるわけではないと思うので少し気になりました。その2点です。
佐藤会長
いずれも大事な点で、後者の点だと他の先進国も全部じゃないんですね。そういう国もあるし、そうではない国もあるので、前者の点はいかがですか。
杉山委員
専業主婦で働かない人たちがいるということをとにかく書き記すということで、それはそこに配慮をするということで、どういう配慮なのかということがよくわからないんですけれども。
布山委員
選択肢はいろいろあるけれども、今回その中で女性が働くということを男女共同参画の一つの指標として見たのであって、そもそもどのような選択をしてもいいということが前提になっているはずです。その前提がどこにも記されていないと、この指標が誤解して見られてしまうかもしれず、これではまずいかなと思ったのです。
高橋委員
今のことに関連してですけれども、ヨーロッパ社会にしても日本の社会にしても女性が労働力化するということが必然の社会であるという位置付けを明確にしておく必要があると思うんです。これから生産年齢人口が減って労働力供給が小さくなっていくと、高齢者と女性しか国内には労働力人口が確保できないわけですから、そういう流れが必然で起きている途上にあって、それが少子化との関係で言うとトレードオフの関係を生んでしまった社会があった。それを乗り越えた社会があるというふうに、全体として歴史的な展開の中でという、その位置付けが必要なんじゃないかという気がします。
阿部委員
本文よりもこの図がかなりわかりやすいと思っているんですが、1ページ目の「女性の労働力率と合計特殊出生率との関係」から書き始めるのではなくて、多分ここで日本は労働力率が5%くらいしか伸びていないにもかかわらず、出生率はほかの国よりも一段と落ちているというのが明らかにわかるグラフだと思うので、ここから書き始めてほかの国ではそうではない。特にアメリカとかオランダとか、あるいはフィンランド、フランス、ドイツとか、イギリスは少し下がってしまっているのかもしれませんけれども、ここの違いが社会環境の違いだというところから始めていけば、すとんと落ちてくるのではないかと思うんです。
 確かに最初の出だしのところで、このグラフからこの調査会というのは始まっているから、それはよくわかるんですけれども、余り縛られないで書いたらどうかと思うんです。それで、むしろ日本はそういう意味では危機的状況だと。では、なぜそうなのかと言ったら、やはり多様なライフスタイルを選択することが難しいからだという結論にしたらどうですか。もちろん高橋さんが言われたように、今後ますますこういう問題を解決しないと日本社会も日本経済も難しくなっていきますよということも話すんでしょうけれども。
佐藤会長
高橋先生の言われたこともよくわかるんですけれども、そのときに政府が取り得る政策というのは、基本的には働きたいという意欲や可能性のある人に働ける機会を提供するという施策だと思うんです。その上で、働き方についての選択肢を増やす。
  そのことを進めたことが更に人口を減らすことになるのでは困るので、そうではない社会環境づくりがある。それが可能性があるのかどうかということを見ていくということだと思うんです。ですから、基本的には働く意欲や希望がある人の機会をつくっていくということはすごく大事で、それを進めるとますます少子化が進むのではないかというと、でもそんなことはないんだ。それは可能性もあるけれども、少子化が進まないような社会環境をつくるという選択肢もあるんだということが今回の研究会のすごく大事な点だと思うんです。ですから、その辺をうまく書いてもらえればいいかなと思うんですけれども。
分析官
基本的に男女共同参画の目指すところは、希望する人に希望するライフスタイルをということなんですけれども、女性が労働力化していくという状況にあった場合において出生率との関係はどうなるのかということに対して示したと。
佐藤会長
阿部さんの言われたように、日本の場合、これまでを見れば女性の社会参加が進んだから少子化になっているわけでもないんですね。にもかかわらず少子化がすごく進んできたということなので、そのことも少し書いた方がいいかもしれないけれども。
分析官
もう少し頭のところでそれを言うべきかもしれないですね。何度もこの図を見ていたので、すっかり当たり前のようになってしまいましたけれども。
佐藤会長
そうですね。皆ここを誤解しているんです。皆、働くようになっているかというと、そんなに変わらない。もちろん増えてはいますけれども、ほかの国はもっと増えている。
高橋委員
ただ、日本の場合、図表の9の中で70年から2000年に労働力率がそんなに上がっていないというのは、労働力の中身が大きく変わったということがもう一つあるのではないでしょうか。
佐藤会長
そうですね。もともと家従などがすごく多かったですから。
杉山委員
何となく日本が主人公のはずなのに本当にさまざまな国の一つというような取り上げ方で、報告書なのでそれは仕方がないのかもしれないんですけれども、やはり参考にさせてもらって我が国のありようをどうしようかと考えたいということであれば、先ほど阿部先生がおっしゃられたように、ここからスタートして物語を展開するではないんですけれども、ほかの国を見ていったらというようなありようでまとめていくというようなやり方もあるのかなというか、せっかくまとめるので訴えるものがほしいと思っていて、何かパンチがないというのか、特に概要版とかを見ても、ああそうですかで終わってしまう。総合的な取組が必要なんだという感じで、もういいよというか、少子化がここまで言われていて、ここまでやってそれはないだろうという気持ちが少しするので、もう少しパンチがあってもいいのかなという気がします。
佐藤会長
この「はじめに」のところを、高橋先生の御意見とか、布山さんの御意見とか、阿部さんの御意見を踏まえて少し御検討ください。確かに我々が理解していても、とにかく女性は働かせて、かつ子どもを産めというような感じになってしまうのも困るわけで、意図していることが何かということを少しわかりやすいように、特にライフスタイルの多様な選択と言うわけですから、それと齟齬がない議論なんですよということがわかるようにしていただければと思います。なかなか難しいですけれども、大事な点ですので検討させていただきます。
 それでは、もう少し概要の部分の御意見をいただきたいと思います。
高橋委員
概要版で、「アメリカと北欧諸国の共通性」という文書の中に「働き方の柔軟性が高いこと」と書いてあるのですが、もう少し具体的に働き方の柔軟性が示されないのでしょうか。多分、働き方の柔軟性というのは納得できるんですけれども、では具体的には一体何を差しているのかということがちょっとぴんとこない気がしました。
佐藤会長
確かに、もう少しこれは詳しくていいのかもしれないですね。キーワード的なものの中身がわかるようにする方がいいかもしれない。
高橋委員
勤務時間がフレックス制とか、正規就業に戻りやすいとか、そういうようなことですね。
大沢委員
先ほど布山委員がおっしゃった専業主婦という選択もあるということに関連してですが、今までの日本の女性労働の施策というのはどちらかというと育児休業ですとか、継続就業をしていくということが基本にあったように思うんです。それでキャリアが継続されていく社会がよいという前提にあって、女性もそれに合うという選択肢もあると思うんですが、もう一つは再就職しやすいというか、フレキシビリティというのは必ずしも働いているときのフレキシビリティではなくて、一度辞めてもまた戻る。再教育を受けてまた戻るというフレキシビリティがあるんだと思うんです。そのフレキシビリティということをもう少し多様に解釈していくと、アメリカの場合は継続して働くときのフレキシビリティよりはもう少し専業主婦でいても資格を取ってまた再就職するというか、その移動が比較的自由で、かつ技能訓練が、再教育の機会が社会にあることによってライフスタイルの選択が多様になるわけですね。
 ですから、日本の場合の問題というのは専業主婦の問題よりも、むしろ長い間、就業を中断したときの機会が非常に限られるというようなところにあると思うので、どの年齢になってもやり直しができるというか、そのフレキシビリティという考え方をもう少し広めにとらえていくと、アメリカだけではなくて北欧諸国も同じように再教育の訓練を与えたり、移動ができることによって自分のライフスタイルを自分で最終的に選び取っていく社会というのが出てきますので、そこら辺がアメリカとの共通性というところで触れられるのであれば触れていくと。専業主婦の問題というのはいろいろな時点で働く、働かないという選択を私たちはしていくわけですけれども、それにペナルティが課されないというのでしょうか。自分で技能形成なり、ふさわしい訓練をして、柔軟に自分が主体となって生きる社会というものがもう一つ多様なライフスタイルを選ぶということにあって、それができることによって出産のタイミングというか、かなり晩婚化が解消される。
 日本の場合、少子化の問題の一つは晩婚化にありますが、アメリカでも一時、晩婚化が進んで、その次の若い世代で出生率が回復していくんですね。その過程を経て2000年の正の関係にいくんですが、そのときに社会全体の意識が非常に大きく変わって、子どもを持つことにペナルティが課されない。それが、自分が何かを選択するときの足かせにはならないという意識が非常に広まったんです。それで、アメリカの若い人とも話しましたけれども、それは問題ないということになって結婚も早まりましたし、出生率もそれほど大きく下がらないということを考えると、そういう日本の場合の問題というのは働き方においての柔軟性と、それからライフスタイルにおいての柔軟性と両方が欠けているところに問題があるというようなことも思い切って触れてはどうでしょうか。
佐藤会長
今回のもので、国際指標の働き方の柔軟性の1つは転職の容易性と、国内は無業の女性で就業希望者の比率が低いというものを取っているので、キャリアブレイクで辞めてももう一度入れるようなものは一応取っています。あとはライフコース選択の自由度は国際比較で取っています。
 ただ、そのデータがうまく取れているかは別ですけれども、大沢さんの言われているような趣旨のことは大事だというふうには社会環境の変数はつくっています。
武石委員
この概要版で、今の大沢先生の関連で、日本のことを書いているものが最後の「総合的な取組の必要性」だと思うんですけれども、ここが非常に抽象的な表現になっているので、働き方の多様性とか、ライフスタイルに向けた多様性が多分一番低いのではないかと思うんですけれども、そういうことをここできっちり言う必要があるのかなという気がします。ちょっとインパクトがないかと思います。
佐藤会長
そうですね。もう少し社会環境の内容がわかるように。
原田審議官
私は最後にお尋ねしようと思ったのですが、概要版の9ページ、10ページ、11ページで、国際指標と国内指標で同じ傾向を示すものと異なる傾向を示すものの例示が載せられていて、その意味するところの私なりの解釈なので間違えていたら教えていただきたいと思います。
 全体として、労働力率と出生率が正の相関を国際的にも国内的にも示すということは、9ページのようなちょっとラフに言えば重要な指標については正の相関を示す形で機能している。
 ただし、10ページ、11ページのような一部の項目については国際指標と異なる傾向、特に影響しないというならばともかくとして、逆の相関傾向を示す指標、例えば一番上の男性の短時間就業者の割合であるとか、三世代同居率とか、11ページのサービス産業化との関係などですね。
 これは、私流に解釈すると、このまま放置すれば、日本におけるような短時間勤務の状況がそのまま拡大すれば更に悪くなる。それから、三世代同居は当然、傾向としては少なくなっているでしょうから、そうすると家庭におけるおじいちゃん、おばあちゃんの世話というものが期待できなくなる。それから、サービス産業化は取りも直さず都市化の進行ですから、全般的な傾向が日本全国に及ぶ。だから、放置すればもっと厳しくなる状況がこの指標で伺えるんだ。だから、これに対して、より適切な対策を講じていかなければならない。こういうメッセージと考えてよいのでしょうか。
 政策的に語れば、短時間就業者というのはパート労働の問題がありますが、要は短時間正社員のような制度を導入していくとか、三世代同居に関してはプライベートの支援のレベルからもう少し社会的な支援のレベルを拡充していく。それから、やはりサービス産業化、都市化の進行についてはもう少し構造的な、答えはなかなか見出しにくいのですが、全般的な施策を講じていく。こういうふうなことを、このデータは日本に突き付けているのではないかということと理解していいのでしょうか。
佐藤会長
ただ、一つひとつの相関だけで議論できるかというと非常に難しくて、図表16だと海外は相関は弱いわけです。日本はプラスです。これは何かというと、例えば図表12や図表10を見ると、ほかの国は社会的な保育サービスとか、家庭内の夫、配偶者のサービスとかでやっていて、日本はその相関の程度が低いということは逆に言えば三世代の方、家族の方でカバーしている。だから、そういうふうにセットで読まないと難しいと思うんですけれども、そういうふうに読めばインプリケーションは幾つか引き出せると思います。
原田審議官
先ほど来、国際的な分析は非常に分厚く出ているんですけれども、日本の現状、それからこれから取るべき対策編が少しインパクトが弱いのではないかと、まさに私もそういうふうに感じ取っている部分があるんですけれども、共通の傾向を示す指標で言えば、やはり日本はまだまだ両立支援策のレベルが非常に低い水準にある。右肩上がりの左下の方に位置しているということはまさにそういうことだと。
 それから、10ページ、11ページの日本が独自に抱えている課題、今まで3世代で支えてきた部分が必然的に弱くなるので、それに対する対応策も必要であるということを我々は受け止めていくべきだというふうなメッセージで、今後の課題につなげていくという分析はちょっと行き過ぎでしょうか。
佐藤会長
例えば図表の18のサービス産業とありますね。普通は、多分サービス産業化では短時間就業がすごく多いと思います。それを短時間就業が多いということと、だけどほかの国では出生率はプラスだけれども日本はマイナスというとまた別の話なのかもしれない。
 だから、この先というのは結構推論が幾つも入ってきて、いろいろ議論はできると思うんですけれども、難しいと言えば難しいですね。図表の19なんてどう考えるのか。いろいろな媒介変数があって、多分この県民所得が高いところは都市地域ですね。だから、県民所得が高いから下がっているのではなくて、国内について言うと多分これは都市化の程度を表しているのかもしれないです。
分析官
これについては、国内の方が日本国内で思われている常識で、都市化が進めば出生率は低くて当たり前というのが、国際間を見るとそうではない関係をつくってきているんだということの方が重要なのではないかと思います。
佐藤会長
つまり、図表の19は経済的豊かさを表していないんですよね。言っていることは都市化等を表しているだけという可能性があるわけですね。だから、これは確かに誤解を招く可能性があるんです。
原田審議官
言いたかったのは、国内編でどこまでコンセンサスの下で言えて、どこから更に分析する必要があるよということで今後の検討課題とするか。その辺の線引きの話です。
佐藤会長
いかがですか。これは私は落としてしまうのも一つかなと、結構難しいと思っているんです。国際指標と国内指標を比較すること自体、一つひとつ取り出してやること自体が難しいのではないかと思っているんですけれども、皆さんどうですか。こちらに入れているから概要におけるウェートが大きいじゃないですか。どうしましょうか。
分析官
これを落とすと、更に日本のことが言及できなくなるかと。
佐藤会長
全部取り上げなくて、ある程度推論がしやすいものだけ残すというやり方はあると思います。媒介変数が幾つも入って説明するようなものは落とすというやり方はあるかもしれないですね。
大沢委員
今、矢島さんがおっしゃっていたようなことを文章にしたらいいんじゃないかと思うんです。つまり、それが多分重要で、自然に任せておいては下がる一方なんだけれども、それは経済原則みたいなものがあって、機会コストとか直接的なコストで共通性があって、日本もほかの国も同じような要因によって下がったんですが、その後については国によってそれぞれ効いている変数が違いますが、それが重要だということがこの報告書の一つの大きなことだったんでしょうか。
佐藤会長
図の18とか19はやめてしまうというのはどうですか。
分析官
18、19をやめると、女性の管理職割合が……。
佐藤会長
17は残して、サービス経済化と経済的豊かさを落としてしまうというのはまずいですか。
分析官
今回、この調査の出発点として、先ほど高橋先生が言われましたけれども、女性の労働力化というものが必然であるという共通認識が国内にあるのであればこのような議論はしていないわけですね。そういうところから出発しているので。都市化やサービス産業化と関係なく、女性の管理職については国内では違う状況があると言われてしまうと、むしろ日本では管理職を減らす方がいいのではないかと。
佐藤会長
そういうふうになってしまいますか。
 でも、管理職を増やすような状況は当然これから出てくるわけですよね。それで、今のままだと出生率が下がってしまうから施策が必要だという議論で。
分析官
この中に図表3のような正の相関というのは今までにも随分似たようなものを見ていらっしゃって、前提ということかもしれないんですけれども、必ずしも日本においてその認識は前提になっていないということで、今回の調査はできるだけそういうところでフラットというか、かなりデータについても精査しましたし、そういうところで公平な議論をしたとしてもこういう結果があるということをきっちりと示そうとしています。
 今まで皆さんが御議論いただいたように、確かに踏み込んでいないんですね。踏み込む前に、基本的なデータについてとにかくコンセンサスというか、常識にしないとその先へといけないというのが事務局の方で検討、整理している中で感じていることでして。
佐藤会長
どうしましょうか。18、19を出すとある程度なぜかということを説明しなきゃいけないでしょう。
分析官
19は先生がおっしゃるように豊かさではなくて都市化の指標であるとしてもいいと思うんですけれども、逆に国内の状況ではなくてそれと同じような感じのOECDの状況というものが一般には理解されていないというか、そういうふうになっているということは共通認識としてないんだと思うんです。
 ですから、今回言っている70、85、2000というものの変化につれてほかの指標もOECD各国ではどういう関係にあるのかというところの理解というか、常識というものは基本的にまだないのではないかということです。国内の方のこういうデータはよくは紹介されているものですので、逆にこちらが余り目新しいというものではないのです。
佐藤会長
では、違いがなぜあるのかということについてもう少し説明を加えるんでしょうかね。
大沢委員
それがあるとわかりやすいですね。日本のインプリケーションが、この2つを直接に比べるだけだとちょっとインプリケーションが弱いかなという気がしますが。
阿部委員
あとはもっと詳しく。私は、これはこのままの方がいいと思いますし、ただ、図表が先にくると皆それを必死に読むわけですね。勝手なことを考える人もいますので、まず解説は図表と近いところに置いておく。図表10だったら図表10の解説を必ず上に置くか、下に置くか。図表11の近くに置いておくということをやった方が、私はいいのではないかと思います。その上でどう考えるかはお任せするということです。
佐藤会長
右と左で、左に文章で右は図みたいなA3のものにするとか、そうしないとこれは結構難しいですよね。ちょっと工夫をして。
 ほかには概要についていかがですか。研究会の趣旨がまずわかるようにという本報告書の概要も含めて書いていただくということと、今までのインプリケーションをもう少し書いていただいたらということだと思いますので、そういう工夫をしていただきいと思います。ほかには何かありますか。あとは本編集も含めて全体で思い出されたことがあればどうぞ。
網野委員
字句のことなのですが、本論というか、報告書の95ページの「おわりに」の上のパラグラフで、イギリスについて家族主義が取られていると書いていて、ドイツでも同じく家族主義であると書かれていますね。
 全体的にずっと読んでいって、これは何を意味しているんだろうということがわかりにくい言葉は本当に少ないのですが、この家族主義に関しては誤解も含めてもう少し丁寧に表現しないと正確に伝わらないのではないかという気がします。
 要するに、子育ての責任を家族に置くか、社会に置くかという指標で語るならば、何かそのような意味の内容で、あるいは先ほど来議論をされていますように、母親とか妻が家庭で子育てをすることを大事にするという価値観で表現しているならば、またそれはそういうふうにも受け止められますので、ここでは一番何を説明しようとしているのかという点で言葉を変えるか、あるいは家族主義という場合にこういう意味の家族主義というものがわかるとよろしいかと思います。
佐藤会長
藻谷先生、いらした早々申し訳ありませんが、お送りしたものと相当変わっているのですけれども、お送りしたもので何かあれば。
 内容が大幅に変わったということで、構成が大きく変わっていますので、もし事前に見ていただいたもので何かコメントがあればいただければと思います。ほかに本論も含めていかがですか。
網野委員
ちょっとこだわる部分があって、議論の概要版の異なった傾向の中で図表15ですね。これは削除した方がいいかと思います。概要版の10ページで、議論をされていました共通の傾向というものと異なった傾向ですが、これは家族サービスとして受け止めてしまうかもしれないですね。日本はやはり楽にというふうになるんでしょうが、実際に児童福祉費という内容から照らすと、やはり保育に関する費用が相当高いと思うんです。
 だから、いわゆるOECD諸国の所得サービスの給付という実質と、日本の場合の児童福祉費の実質で比較できるかどうかという問題がちょっとありますので、日本の場合、家族サービスの給付が高いところほど合計特殊出生率が低いということがあれば、あるいは児童福祉費の内容にもよるんですが、いろいろな解釈ができますので、かえってそういうことで先ほど来の議論でもう少しきちんと説明しようということであれば、私はむしろ図表15は除いた方がいいかと個人的には思います。
佐藤会長
確かに両方取っているものが違うということもあることはありますね。今のことはいかがですか。OECDの家族サービス給付割合で取っているのは何でしたか。
分析官
社会保障給付に占める家族サービス給付です。
佐藤会長
日本は1人当たり児童福祉費ですか。しかし、その問題もデータが違うということですね。
網野委員
蒸し返して申し訳ないのですが、ちょっと気になりましたので。
佐藤会長
その辺はいかがですか。
武石委員
それでいくと図表16の世帯人員・三世代同居というのはかなり違うものなので、やはり違うものは比較しない方がいいかなという気がします。
佐藤会長
片方は絶対値で、片方は比率なんですね。
網野委員
1人当たり児童福祉費というのは人口で割ったものですか。
分析官
17歳以下人口です。
藻谷委員
遅れてきていきなり言って大変恐縮ですけれども、久し振りに聞きまして一言、都道府県別なので何か言わなければいけないと思って考えていたことで、同じ図表なんですけれども、よけい議論をややこしくするかもしれないんですが、東京と沖縄がアウトライヤーなもので、それを隠した瞬間に傾向線が変わるものが幾つか実はあって、今、議論になっている16、15も実は右下にある東京を消してみると傾向線が右下下がりかどうかは必ずしも言えないんです。
 そういう議論は既にあったのかもしれませんが、そういうこともあり、都道府県の比較というのは非常にトリッキーだなということを申し上げなければいけないと思って来たんです。15もそうですし、実は一番極端なのが図表19で、沖縄と東京が左上と右下にいるんですが、これをどけてみるとこんなにはっきりした傾向線は実は引けないです。それから、18も沖縄と東京は右端にいるんですが、これは外しても傾向線は同じなんですけれども、この2つがいつも端にポジションを取るものですから、ちょっと傾向線だけ見て判断する人には誤解を与える可能性が図表によってはあるということを思いました。特に15は右下の東京を消してみると右上がりなのかなという感じがしないでもないです。
分析官
両方とも相関はほとんどないという結論でしょうか。
藻谷委員
そうです。
佐藤会長
ただ、15は比率と絶対額というのは、平均だけれども、平均の絶対額というものはちょっと違うかもわからない。片方は比率だから。
分析官
一応、都道府県市町村財政に占める割合も見たのですけれども。
佐藤会長
今更変えるわけにもいかないから、比較ではやはり違うものはそれによる傾向の違いというふうに言われたら終わりだから落とした方がいいかもしれないです。それぞれの中で議論するときはいいと思いますけれども。
分析官
三世代同居については、国内は世帯人員も一応見ているんですけれども。
佐藤会長
国内指標を選ぶときにはこういうふうに並べるという発想で選んでいないから、もしこうやるんだったら全く同じものを選んだ方がいいので、そこはもしこういうふうにやる場合は同じ変数を取るという方針の方がよさそうですね。それでいいですか。
 では、そういうことにさせてください。ほかにはいかがですか。確かに外れ値みたいなものは統計上、結構難しいですね。
阿部委員
ただ、外れ値になっているかどうかは随分前に検討しましたよね。それで、外れ値にはなっていなかったと思うんです。統計上は3シグマ以上ではないので、これは図表には入れておいても問題はないと思います。
佐藤会長
それでは、時間がまいりましたので、これからの作業ですけれども、今日いただいたことで幾つか大事な大きく直さなければいけないことはありますが、全体としては御了解いただいたのではないかと思います。今日伺った意見を踏まえてリバイズドしたものをつくっていただく。それで、当初のものとかなり構成も変わっていますので、今日のものを是非夏休みにお読みいただいて、できれば来週の月曜日ぐらいまでに細かいところも含めて御意見をいただければありがたいと思います。
 それで、今日いただいた意見と、来週の月曜日までにいただいた意見を踏まえて改定版をつくっていただいてざっと見ていただく。
分析官
概要版については、今日いただいた御意見を反映したものを明日できれば送らせていただいて、それで見ていただきたいと思います。本編については今のベースで、概要版と違うところは見ていただくということで御意見をいただければと思います。
佐藤会長
最終の調整は私にお任せいただくという形でよろしいでしょうか。
 それでは、よろしくお願いいたします。公表時期については、最終報告ができてから事務局と相談して決めさせていただきたいと思います。公表日程が決まりましたら、皆さん方に日程を事前にお知らせいたしますのでよろしくお願いいたします。
 あとは連絡事項がありましたらよろしくお願いします。
分析官
ありがとうございます。本日の資料の取扱いですが、こちらの方は公表までは委員の皆様限りということでよろしくお願いいたします。
 また、議事録でございますけれども、本日お手元に第6回の議事録と第7回の方を委員の先生方にはお示ししております。第6回の方は本日をもちまして公開になりますが、第7回は修正等がございましたらお手元にあります議事録の上の方にあります日付までに事務局の方まで御意見ください。
 それから、今後の予定でございますけれども、以前皆様にはお話させていただきましたようにこの後、男女共同参画が経済や企業に与える影響という次のテーマでまた検討をさせていただきたいと思っておりますので、お手元に10月の御予定について示させていただきましたので、そちらに御予定を書いていただきまして戻していただければと思います。また、事務局の案で少し調査手法等について検討いたしまして、調査会の前にもしかしたら打合せ会の先生方には少し御議論いただいた上で調査会にお諮りさせていただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 ですので、次回の調査会の日程は追って事務局の方から御連絡させていただきますので、何とぞよろしくお願いいたします。
佐藤会長
どうもありがとうございました。
 それでは、これで第8回の専門調査会の会合を終わらせていただきたいと思います。まだ9月以降も続くようですので、よろしくお願いいたします。

以上