第27回 苦情処理・監視専門調査会 議事要旨

(開催要領)

  • 日時:平成15年3月6日(木)9:30~12:00
  • 場所:内閣府5階特別会議室

(出席者)

古橋
会長
庄司
委員
伊藤(陽)
委員
鹿嶋
委員
佐藤
委員
田中
委員
深尾
委員
山口
委員

(議事次第)

  1. 開会
  2. 平成14年度監視「情報の収集・整備・提供」について
    • <1>関係府省からのヒアリング
      • 総務省(統計基準部関連、家計統計関連について)
      • 内閣府(女性に対する暴力に関する調査について)
    • <2>専門委員からのヒアリング
      • 佐藤博樹委員(雇用・労働分野のジェンダー統計の整備等について)
  3. 審 議
  4. 閉会

(概要)

「情報の収集・整備・提供」に関して、総務省、内閣府から説明を受け、審議をおこなった。続いて、佐藤委員から雇用分野におけるジェンダー統計の整備に関する説明を受け、審 議を行い、また、前回調査会で行えなかった伊藤陽一委員からの説明に関する審議を行った。審議の概要は以下のとおり。

(1)総務省(統計基準部関連、家計統計関連について)

伊藤(陽)委員
個票の省庁間の共有について秘密保持との関連はどう考えるか。
総務省
個票の共有化は、平成11年4月の「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画」の中で、各府省は、調査個表データについて、相互のデータリンケージが可能とな るように処理を行うということが指摘された。秘密の保持の点については、今は目的外使用の枠内でやっているということで特段の問題は生じていない。
佐藤委員
統計法の統計目的に政策評価を入れることは可能か。それには法改正が必要か。それができなければ、目的外申請の審査を政策評価に限って現状より簡易にすることは可能 か。
総務省
統計目的については、例えば、指定統計調査の目的に、あらかじめこういう統計表を作成するということが集計事項として承認されていれば、それは当該統計の目的になる。一 方、統計目的として承認されていない場合は、統計法15条の目的外使用の承認をとっていただく。
統計法の改正については、改正した例は最近でもある。御質問の趣旨は、匿名標本データの利用に際して、法改正が必要かということと理解。匿名標本データの公表・公開・提 供に関して諸外国の例を見ると、法令を設けているところもあるし、特別の法令なしのところもある。どういう仕組みとするかを、今後、「統計行政の新たな展開方向」の会議で検討 する。
古橋会長
内外のいろいろな方の意見を聞くという懇談会的なものは行っているか。
家計調査について、報酬はどの程度払っているのか。それから、今は家計簿ソフトがあってワープロで打ち込めるが、そういうような形でデータを集計することで、簡素化できるも のがあるのではないか。
総務省
統計局で懇談会や研究会は、いろいろやっている。統計調査を実施する上で、当然ユーザーの声を聞かないといけないし、より合理的な調査をやっていくために、各分野で統計 調査を企画するに際して研究会を設けている。
家計調査の報酬は、月に約2,000円程度。品物を渡しているケースと現金で渡しているケースとの両方がある。安いのではないかとの指摘もあるが、財政事情から難しい面があ る。
家計簿ソフトの利用については、約550の収支項目に分類する形で集計を行っており、世帯の人にとっては、その分類が難しい。通常売られている家計簿ソフトにすぐ乗せ変える というのはなかなか難しいが、入力についてパソコンを利用することを試験的に始めている。
庄司委員
家計調査と全国消費実態調査では、母子家庭について貴重なデータが出ているが、父子世帯についてはない。「世帯主うち男」といった表記などジェンダーバイアス的な感じがす るが、どういった考え方によるものか。
総務省
ある程度のサンプルがある場合は公表できるという考え方によるものである。

(2)佐藤委員(雇用・労働分野のジェンダー統計の整備等について)

鹿嶋委員
30人以上の規模の調査を29人以下規模の調査まで絞り込める可能性はあるか。
坂東局長
労働力調査を充実させるとか、就業構造基本調査でカバーする方がより現実的なのではないか。
佐藤委員
小さな規模になれば、基本的に個人調査でないと難しいだろう。就業形態が多様化し、パート・アルバイトが増えてそこに女性が多いわけなので、個人に調査をするというのは一 つの選択かと思う。また、一人一人がどのくらい教育訓練をやっているかとか、今、非労働力化している主婦等がどのくらいの人的資源ストックがあるのかというのもわからない。こ れは大きな問題ではないかと思う。
庄司委員
いろいろな調査研究の中でやろうと思えば、現行の手続きの下でもやれるものがあると思う。再分析をしていく努力が、専門家側にももっとあってもいいという気はする。
佐藤委員
ですから、目的外申請はできるが、審査のときに役所から上げていくときと、個人が出すときとは異なる。また、国立大学と私大とでも異なる。そこがフォーマルにされていないとい うところが問題である。
古橋会長
要は、統計へのアプローチの仕方についての情報公開というか、全体をまとめたノウハウみたいなものをつくる必要があるのではないか。
佐藤委員
現状の枠内でやれることは勿論あると思う。ただ、非常に限定的である。そこで、目的外申請で政策評価については認めていくというのが一つだと思う。
鹿嶋委員
制度調査と個人調査の件で、男女共同参画の視点からは小規模企業の実態把握は必要だと思う。特に、女性が多く働いている29人以下の小規模企業は実態がほとんどわから ない。だとすれば、制度的にも男女共同参画という視点から言えば、もう少しきめ細かな調査手法があっていいのではないか。そういう提言を出してもいいのではないか。
佐藤委員
全国中小企業団体中央会が雇用状況の調査を行っていて小規模も入れている。ただし、国がやっているわけではないので、回収率の問題や30人以上規模とリンクの問題があ る。業界団体的なところでやっているものはある。そういうものがあることを知った上で、今言われたような整備というようなことを言うのはあると思う。
古橋会長
ファミフレ施策の基準がよくわからない。厚生労働省はファミリー・フレンドリー企業を表彰するときの基準をつくらざるを得ないのではないか。
佐藤委員
質問が一つしかないのでわからない。均等調査のとき両立2~3問、両立調査のとき均等2~3問と入れるようなれば、もう少しきちんとわかるようになる。

(3)内閣府(女性に対する暴力に関する調査について)

古橋会長
暴力に関する意識調査は、世の中の啓発という見地から言えば、継続して行われる必要があると思うが、今後とも継続的に行うのか。
前回の調査で「20人に1人が命にかかわる配偶者からの暴力を受けた」との結果がでたが、この「命にかかわる暴力」の定義、基準を教えていただきたい。
内閣府
調査は、平成11年度、平成14年度とそれぞれ単独で行っている。配偶者暴力防止法の広報において「約20人に1人の女性が・・・」という数字が幅広く利用されているので、そうい う点からも継続されることが必要ではないかと考えている。
「命の危険を感じるくらいの暴行を受ける」については、平成11年度調査では、命の危険を感じるくらいの暴行を受けることがあったかということを聞いた数字になっている。今回の 調査では、具体的に「なぐったり、けったり、物を投げつけたり、突き飛ばしたりするなどの身体に対する暴力を受けたことがあるか」と聞いて、こういった行為等が「ある」と答えた方 に対して、「命の危険を感じたか」という質問で、感じたか感じなかったかを聞いている。今回の調査では、こういった行為を受けたことがある人の数と、こういった行為を受けたことに よって命の危険を感じた人の数が出てくる。
鹿嶋委員
地方自治体でも内閣府と同じ設問で調査しているところは結構ある。命にかかわるような暴力を受けたことがあるかというと、大体20人に1人いる。そうすると、命にかかわると思 うようなことは、意外と客観性もあるんだと思う。
庄司委員
東京都の調査も、北海道や幾つかの地域で同じ質問を使っても、ほとんど同じような結果が出るので、地域性はそれほど極端に出ない。
鹿嶋委員
この手の調査の難しさは、回答者にバイアスがかかってくることだと思う。夫婦仲がいい人が夫婦で見ながら回答するのと違って、極めて日常的に暴力を受けている家庭は、多 分夫が会社に行ってから隠れるようにして回答するのかなという感じがする。調査に回答者のバイアス、調査の精度の問題として、加害者、夫に対する遠慮など、そういうことはど うか。
内閣府
例えば、妻に暴力を振るっている加害者である夫に調査票が届いて、これがきっかけでまた暴力が起こるということもあり得るので、そういう点では難しさはある。
鹿嶋委員
時系列でわかるような設問というのは何割ぐらいを占めているか。
内閣府
例えば、公的機関の介入についての部分は時系列で見ることができる。夫婦間で行われた場合に「暴力」にあたると思うかという部分についても、共通する項目については時系 列で見ることが可能である。

(4)伊藤陽一委員(ジェンダー統計の整備等について)

古橋会長
例示として上げなくてはいけないというものはどれか。
伊藤(陽)委員
指定統計を中心に例をあげると、調査票と報告様式では,就労条件総合調査(深夜業関連を除いて)、雇用管理調査、屋外労働者職種等賃金調査(軽作業員を除いて)で性別が ない。事業所・企業統計調査、法人企業統計調査、商業統計調査、サービス業基本統計調査などの事業所・企業統計関係は従業員総数のみで性別の無い調査が多い。世帯単 位の調査では、全国消費実態調査の「年収・貯蓄等調査票」には世帯主の性別が無いケース、貯蓄動向調査のように世帯主にはあるが他の世帯員に性別はないケースがある。
報告書の統計原表での性別表章では、調査票で性別を調べながら個人企業経済調査の従業者に関する統計表で、毎月勤労統計調査の賞与等で、貯蓄動向調査の世帯主で、 単身世帯収支調査の勤労者世帯で性別集計表がない。家計調査と全国消費実態調査の事業・内職収入で性別がない。
性別と重要項目とのクロスが不足の例としては、調査項目がありながら統計表でクロスされていない例として、家計調査と全国消費実態調査での収入について世帯主の性と年齢 のクロス、さらに職業や勤務先規模とのクロスの欠如、毎月勤労統計でのクロスの不足などがある。質問項目を追加することで実態の把握が深まるできるものがある。例えば、不 払い残業については、日本の場合は世帯・個人調査の労働力調査と事業所・企業調査の毎月勤労統計調査の差をとって不払い残業を出しているのが定番なので、質問項目とし て入れてもいいのではないか。労働時間の短縮問題は、共同参画を考えていく上で非常に重要だと思う。
古橋会長
「国民への提供」については、データアーカイブの問題に触れた方がいいのではないか。統計法を改正しないでできるところからこういう問題をやっていきましょうということと、長期 的に見れば統計法の改正が必要であるということまで提言で踏み込む必要があるのかないのか、これは皆さん方に御議論いただきたい。
また、伊藤委員から御指摘の男女共同参画統計書が必要というのは重く受け止めて、男女共同参画局でどういうものをつくるかということを検討していただきたい。
伊藤(陽)委員
その点で、日本の統計制度を考える場合に、統計全機関がジェンダー・メインストリーミングとなってもらいたいと考えている。共同参画局が全部やってしまうと各省はお任せとな る可能性もある。そこで、総務省統計局と共同参画局が連携をとりながら統計についてしっかり考えていただく、あるいはつくっていただくことが必要である。
古橋会長
それは各省でジェンダー統計をつくったら、常に公表していくというのが必要なのではないか。メインの役所は当分の間は、男女共同参画局で意識的にやっていかないとできない のではないか。統計表の集大成をどういうふうに考えていくか、男女共同参画局が基本になるものをつくり、各省も関係するものについてはつくる、そして、それを合わせたようなも のもつくるのかつくらないのか。
坂東局長
例えば労働統計要覧、教育統計要覧、地方自治統計要覧など立派な体制が整っている歴史と伝統のある省庁は大体そういうものをつくっているが、我々のところはまだそれだけ のマンパワー、蓄積が足りないので、白書の参考資料等で代替している。
古橋会長
統計の整備というのは基礎的なものだから重要視してやっていく必要がある。特に、男女共同参画についていろいろな議論が行われているときに、それに対して数値を持って説明 するというのが一番いいのではないか。
山口委員
例えば参画局で委託ということはできないか。男女共同参画の視点に立っている統計を全部集めて、毎年改訂版を出していくことが必要ではないか。
古橋会長
各省の統計部局に担当者を置くという伊藤委員からの御提言があった。まずは、男女共同参画局の中に統計に関する責任者を決めることが必要ではないか。当分の間は、その 当事者として人的支援を投入することは決してむだではないと思う。
鹿嶋委員
男女共同参画統計といった解説抜きの統計集ならどうか。影響調査専門調査会で出した報告書の後ろに統計が載っているが、ああいうものを独立させてコンパクトなものにまと めてもらうだけで大分違う。
古橋会長
男女局における統計というのはどういうものが必要かここで議論したらいいと思う。
庄司委員
今、若年層も高齢層もシングル化がすごく進んでいる。例えば、単身世帯の収入調査などは、圧倒的に多い勤労者世帯の性別がないとか、基本的な調査で性区分がないのはな ぜかと思う。特に、経済統計に関してはジェンダーに関心ない。他にも、例えば、不動産の所有者は男性が圧倒的であったがシングル化が進んで、女性シングルで不動産の所有 者が増えているという変化に全然ついていけてない。
古橋会長
こういう政策が今は必要ですよということを表面に出して、そのためにこういう統計を整備しようということで、今回の提言の中に入れたらいいのではないか。
今回の目的は、各省が持っている調査について指摘をする。業務統計的なものについてもできるだけ整備するということを指摘するが、今回は第1回目として、ある程度重要なも のについて例示をすると同時に、各省が持っているいろいろな問題についても、そういう観点から検討すべきであるというのを指摘をする程度にとどまるのではないか。