仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会

  1. 日時 平成13年2月27日(火) 9:00 ~11:20
  2. 場所 内閣府3階特別会議室
  3. 出席者
    樋口会長、島田会長代理、猪口委員、岩男委員、河野委員、櫻井委員、佐々木委員、田尻委員、福武委員、八代委員
  4. 議事
  5. 議事内容
    樋口会長
    それでは、時間でございますので、男女共同参画会議仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会の第2回会合を開かせていただきます。皆様、お忙しい中をやりくりしていただきまして、朝早くの会議にありがとうございます。
     本日の議題はお手元の議事次第にございますけれども、仕事と子育ての両立について有識者の方からヒアリングを行い、更に前回に引き続き委員の皆様で自由に御議論いただきたいと思っております。
     なお、途中で今の予定で9時半目途でございますけれども、総理がお見えになる予定となっております。そのときは恐らくヒアリング中だと思いますが、中断して総理のごあいさつをいただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
     それでは、議事に入ります。初めに仕事と子育ての両立支援に関するヒアリングとして、子育ての現場で御活躍の3人の方に今日はお見えいただいております。質疑応答は3人のお話が全部終わりましてからにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします
     まずお1人目は、社会福祉法人恵和会見和めぐみ保育園長の萩浦恵子さんでございます。それでは荻浦さん、お願い申し上げます。
    荻浦説明者
    ただいま御紹介にあずかりました荻浦と申します。私は、茨城県の地方の片隅で日夜、子どもと、それから働くお母さん方の支援に本当に真剣に取り組んでいる者の一人でございます。今日は、このようなところで日本を代表する方々の前でお話をするということで大変緊張しております。
     今日は、仕事と子育ての両立支援に関するヒアリングということですので、何をお話ししたらよいのかと伺いましたら、保育所の実態を話してくれればいいということでした。20分という短い時間で、話したいことのどのぐらいがお話できるかわかりませんが、私どもが日ごろ行っていることをお話できればいいと思っております。お手元の資料でございますが、これは今、社会に保育園を公開、開示するということで、私の保育園を希望する方たちに窓口で配っているパンフレットに、児童館の様子とか、老人のデイサービスセンターの様子とかを付け足して持ってまいりました。これを見ていただければ、いかに一生懸命働いているかというのをわかっていただけるかと思っております。
     核家族あるいは共働きの家庭が進んで保育所の果たす役割も大変複雑化、重要化されてきていると思いますけれども、今日私は自分の立場から4つ5つ主張させていただきたいと思っております。第1は親の仕事人としての立場からの発想ではなくて、子どもを持つ親の立場、子どもの立場からという発想で子育てを考えてほしいと思っております。地方にあっても延長保育や深夜までの夜間保育、日曜、祝日、休日の保育など、積極的に取り組んでいる民間保育所もたくさんあります。しかし、女性が深夜労働が可能だからといって保育所もコンビニエンスストアのように24時間開けておくべきだという極端な論議にはちょっと賛成しかねるというところでございます。私たちはコンビニで売っているものを相手にしているのではなくて、大事な将来を担う子どもたちを育てているという観点から申し上げているわけでございます。
     第2には、活字やテレビでは子どものためと言いながら、働く女性が預けられる保育所を締めている。子どもが大事だと言いながら、保育所がそういうことをしないから預ける保育所が少ないという報道を度々耳にいたしますけれども、全国各地の民間保育所は子育て支援と子どもたちの保育を一生懸命頑張って取り組んでおります。ここにおいでの先生方は少なくとも大都市、東京周辺をご覧になって、そのひっぱくした状態を見てそう御説明なさるのだと思います。東京は、以前は私たちから見てもうらやましい存在で、お金が豊富で、物が豊富で、人が豊富で、ああいう状態で保育をしたら私たちは幸せだろうと言っておりましたけれども、今は補助金のカットとかいろいろ言われておりまして、東京のお友達などに会いますと、東京の保育をどうするかとか、口角泡を飛ばしておっしゃっておりますが、東京の保育をどうするかというよりは、日本の保育をどうするかというところで共通点の違いがあるのではないかと考えさせられております。
     第3には、認可外保育園にも公費が援助されないと不公平であるという一部の方たちの声も耳にいたしますけれども、私たちが認可を取るということは大変なことでございまして、この最低基準が守られるために設置者も大変な犠牲と努力を払っているということでございます。このよい点に目を向けていただきたい。昨年6月に神奈川の大和市で起きたベビーホテルの例は極端としましても、保育とは言えないような子どもの預かり方をしているところが多いと思っております。水戸周辺でも3月になると行政の立ち入りがありまして、私がやっております駅前保育園も無認可の保育園ですので例外なく立ち入りをしていただいておりますが、その立ち入りをする行政の方が私のところへ来て、「荻浦さん、四十何か所今、回ってきてここが最後なんだけれども、保育をしているのは荻浦さんのところだけだよ」と言っておりました。やはり悲惨な状態といいますか、人手がない、場所がない、それに子どもたちが詰め込まれて保育をされている。あれは保育じゃないという声も聞いております。認可外の保育所にお金を出してどこでもだれでもやってもらおうというのは甘いのではないかと考えております。お金をばらまいて保育をするところを増やせばいい保育ができるということではありませんで、結果的には悪い保育を野放しにすることにならないか。私はそのような考えをしております。
     第4には、私どもは必要ならば何でもやると、お母さんたち、お父さんたちが助かるのであれば、それはひいては子どもたちのためになることであればということで大変な働きをしております。この資料にもありますように、私の保育園は朝7時から、普通の保育は夜8時までの延長保育、更に日曜、祝日、土曜日も夕方までやっておりますし、それから夜間保育所は夜中まで子どもを預かっております。そのような中で、決して恵まれた財政の中で働いているわけではございませんので、よい保育をしようとすれば財源が伴うことだと思っております。若い保育者が喜んで、この仕事は楽しい、天職だ、一生この仕事に命をささげることができると言って働けるような環境をつくっていただきたい。今は学校を卒業して希望に燃えて勤めても、子育て支援もままならない、保育も一生懸命やっているのになぜか保護者の方にしかられて、こんな仕事は嫌だと思うような保育者が多いのではないかと思っておりますけれども、どうぞ希望を持って、そして子育ては楽しいよと御両親とともに言えるような環境を、保育士にも与えてほしいと思っております。
     何をすれば私たちが十分な保育ができるかということは今、本当に途上でありまして、そんないろいろなことをするのはばかだと言われながらやっておりますけれども、本当に産休明けの保育から学童保育まで、必要であれば何でもやろうと思っている者たちが全国に散らばってたくさん輪をつくって頑張っておりますことも、どうぞ覚えておいていただきたいと思っております。
     簡単ですが、以上お話しさせていただきました。
    樋口会長
    ありがとうございました。次は、保育園を考える親の会代表の普光院亜紀さんでいらっしゃいます。よろしくお願いいたします。
    普光院説明者
    今日は、このような席にお招きいただきまして本当にありがとうございます。
     私がやっております保育園を考える親の会というのは首都圏の会員が多いんですけれども、保育園に子どもを預けて働いている親たちのネットワークということで、主に官公庁や企業にお勤めになっている女性の方が多数を占めている会です。それで、今日はレジュメを出させていただきましたが、まず全体像として子育てと仕事の両立を阻害しているものについてお話しした後、その具体的な内容として保育施策と労働施策についてお話をしてみたいと思います。
     最初に「子育てと仕事の両立を阻害しているものについて」ということなんですが、私の方で資料を用意させていただきました、男女共同参画会議資料ということでとじられておりますものがお手元にあるかと思います。それの最初のところに、1999年の会員アンケート、「仕事と子育ての両立のために至急必要なこと」の結果を掲載しておりますので見ていただければと思います。
     これは会員全員の回答ではないんですが、半数近くの方がこちらの設けました選択肢の中から、どれも多分皆さん希望はされると思うんですが、3つだけ至急なものを選んでくださいということで限定しまして選んでいただいたのがこの結果です。まず第1に認可保育園の受け皿を増やし入りやすくする、56.8%、第2に社会全体で男女とも労働時間を短くする、55.5%、第3に病児保育を広く実施する、51.1%、このときは子ども看護休暇という案はありませんでしたので、子ども看護休暇については選択肢に入っておりませんでした。それから、第4に認可保育園の保育時間を長くする、25.6%、5番目に勤務時間の短縮制度を充実する、21.6%、6番目に会社や上司に育児についてもっと理解してもらう、16.7%、7番目に育児休業をもっと取りやすくする、11.5%、以下認可保育園の保育料を安くする、認可保育園以外の保育サービスを充実する、認可保育園の保育内容の改善など、休日保育を広く実施する、夜間保育を広く実施するという順位でした。これはこちらの設けました、限られた選択肢の中ですが、それぞれ選んだ結果がこのようになっております。
     それで、これをご覧になってすぐおわかりいただけるかと思うんですが、保育問題と労働問題が交互に並んでおりまして、この両者の状況のミスマッチに働いている親は板挟みになっていて、どちらの改善も望んでいるということがおわかりいただけるかと思います。保育園に関しましては、都市部ではやはり数年前よりも更に待機児が深刻になっているのを会員の方々の声から感じております。認可保育園の場合、4月1日が一番入園しやすいわけですけれども、数年前ですとフルタイマーの方は4月1日だったら大体入れるんじゃないですかというアドバイスができたんですが、今は4月1日でもフルタイマーの方でも地域によっては非常に厳しく大変絶望的な状況になって、認可外を当たっておいた方がいいですよという形になってしまっているということがあるかと思います。 それから、こういった保育の量的な拡大と一緒に労働制度が子育てをできる暮らし方に歩み寄ってこなければ、保育だけの充実ではとても両立が容易にはなっていかないだろうと感じております。
     次の「保育施策について」という項目に移らせていただきます。まず待機児の問題、当然多くの方がマスコミ等の報道で都市部についてのこの問題をよく御存じだと思うんですけれども、ここ数年で認可保育園のニーズが急激にふくらんだのに対して、自治体の対応が遅れてきたということが大きな原因だと思います。その認可保育園のニーズが急激にふくらんだという背景には、実は認可保育園の信頼度が非常に高くなった。少し前ですと、3歳児神話などがありまして保育園に預けるのはかわいそうだと言われました。でも、今は保育園育ちも大丈夫じゃないか、むしろうまくいっているじゃないかという御意見も専門家の方からいただくようになりまして、働いている女性も、また一回仕事を辞めた方も保育園に預けて子育てをしよう、仕事をしようというふうに意識が変わってきているということがあると思います。ですから、都市部においてはこれからも保育ニーズが増えていくということをにらんで、認可保育園の数を増やすということがとにかく急務であると考えます。
     これは自治体の頑張りに非常にかかっておりまして、自治体の中には旧態依然とした家族観の下に保育政策をやっているところも多いですので、待機児があってはならない、保育行政を充実し、住民ニーズにこたえることが行政の責任だという意識をもう少しはっきり自治体の方に持っていただきたい。さらに、その待機児解消に向けての動機付けを例えば国なりからしっかりやっていただきたいと思っております。
     これから厚生省の方で待機児の多い自治体の担当者を呼んでヒアリングが行われるということを聞いております。今、地方分権で、ともすれば自治体に任せっ放しになりがちですが、国としても是非そういった動機づけをしていただけるとありがたいと思っております。
     それから、待機児の問題で必ず言われてきます規制緩和の問題なんですけれども、昨年の4月に社会福祉法人以外の参入、それから定員が20人以上で小規模でも設置でき、土地建物が自己所有でなくても設置できるという規制緩和が行われたわけですけれども、これについては保育園を増やすために必要な施策であったと思います。そして、利用者の側から見れば質のいい保育さえしてくれれば社会福祉法人であろうと、民間団体であろうと、種別は問わないということは言えると思うんです。ただ、私は1つ引っ掛かっておりますのは、ともすればマスコミ等の報道は、大企業が参入することに非常に期待が大きいんですけれども、もちろんベネッセさんのように子育てにポリシーを持った保育を目指しておられる企業さんもおられますけれども、そうではなくて普通民間企業というのは右肩上がりの営業利益を目指すものだと思うんですが、そのようなものを参入の動機としているような場合は、ちょっとこの保育事業というのは無理があるのではないかと思います。
     なぜならば、私たちが受けております保育というのはかなりの部分を国や自治体のお金、国民の税金で賄われております。この部分はなぜそういうふうに払っていただいているかといいますと、子どもたちが真っ当に育っていける環境を社会で保障するという児童福祉の観点に立ってたくさんの税金をかけていただいていると思うんですが、そういった限られた運営費で運営される施設の中で、その中から例えば営業利益をより多く出して株主配当なりをして右肩上がりに成長していこうというのは少し方向性として合わないということを強く感じるわけです。ですから、企業等が参入する場合も福祉マインドが絶対に必要であるし、いわゆる成長部門として認識されていてはとても保育事業というのはなじまないのではないかと心配しております。
     また、保育は労働集約型の仕事で、人手と、それから人手の質というものが保育の質に大きく影響いたします。こういう点で、普通コストダウンというのは人件費削減など人手の効率化で進めていくと思うんですが、そのコストダウンが保育の質の低下に結び付いていくのではないかという懸念が私どもの会の会員の中にも多くありまして、やはりそれは民間企業で実際に働いている方々の実感としてちょっと違うのではないかという感覚があるのだろうと感じております。
     そのようにいろいろ懸念ばかり申し上げると、ではどうすればいいのかということになるかと思うんですけれども、とにかく保育園は増やしていただかなければならないと思います。それで、もちろん第1に営利が制限されている社会福祉法人という組織を十分に活用されていかなければならないんじゃないかと思いますが、同時に小規模でも福祉マインドのある事業者、あるいは認可外保育施設も、東京の保育室などにお世話になった会員で大変家庭的でいい保育をしていただいたと感謝をしている方もたくさんおりますので、そういった実績をつくっておられる事業者の方ですとか、またはそういう福祉マインドで企業市民として社会貢献をしていこうという意識を持っておられる企業の方などに積極的に事業を認可していくということが必要なんだろうなと思います。
     取り分け小規模な事業者にとっては施設というものが最初にネックになりますので、その事業者をより分けるというのは大変難しいことですけれども、ある程度実績等があったり、参入の動機が福祉であるということが明確な事業者に対しては施設整備の補助が必要なのではないかと思います。特に、都市部においては土地が高くてなかなかままなりませんが、公共施設の有効利用、廃園になった公立幼稚園や小中学校の空き教室利用などは大いに考えられると思います。
     ただ、学童保育でも非常にこの部分がネックなのですが、自治体の教育部局というのは大変閉鎖的だと思います。学童保育が満員になって、空き教室を使わせていただきたいと言ってもなかなか許可が下りないということで、もう少し教育部局の御協力が必要なのではないかと思っております。
     認可保育園については大変人気があるということを申し上げましたけれども、その人気の理由というのは会員が言っていることを聞いておりましても幾つかあると思うんですが、1つにはやはり基準が決められていて安心だということ。特に人の問題で、有資格者、常勤の保育者が中心に保育をしているということは大きいと思います。子どもというのは施設や物がそろっているだけでは安定した生活というのはできなくて、家庭では親がいるのと同じように、保育園では一定の保育者との安定した関係というのを心の栄養にして育っていくという部分がございますので、どれだけ資質を備えた、しかもある程度定着した保育者が保育をするかということは重要な問題だと思います。
     それから、もう一つは園庭などをきちんと備えた施設が認可保育園には多いと言うことで、設備が整っているということは大きな安心材料です。
     それからもう一つ大きいのは、所得に応じて保育料の軽減があるということが人気になっておりますけれども、フルタイマーの方はどちらかというとこの期間、保育料をたくさん投資してもいずれは取り戻せるんだという展望を持って保育園に預けておりますが、パートタイマー、再就職の方は家計の必要性から働きに出る場合が多いので、認可外では保育料が高過ぎてちょっとという方が大変多いと感じております。
     それからもう一点、規制緩和の更に発展した形としてバウチャー制度についての御意見をよく伺うんですけれども、バウチャーについては一体どういう制度なのかというイメージが全くありませんので、ここで特に御意見を申し上げるほどの根拠は何もないですけれども、私の方で心配いたしますのは、認可制度と引換えになってしまうようなバウチャー制度です。つまり、今、施設にいっている補助金をなくしてすべて金券にして利用者に与えてしまおうというのは少し考えにくい。会員の方も、金券をいただくよりも安心して預けられる施設が各地に存在していることが必要であるとおっしゃいます。何にでも使える金券は一見便利ですけれども、金券だけがあっても地域に信頼できる施設がなくてはどうしようもない。お金よりも機会を与えてほしいと言われた方もいらっしゃいます。
     それからもう一つ、この資料の後ろから4枚目に「保育サービスの現況」という図を入れております。これは、私が現在の保育サービスの状況を整理して書いてみたものです。ここでは、大体週5日ぐらい10時間、11時間程度の保育のことをフルタイム保育と呼びましたけれども、数字をご覧になってもおわかりのように、ここを非常に分厚く支えているのはやはり認可保育園です。これはもちろん今、先生がおっしゃられたように都市部だけではなく、全国の地域の子育てをこのような形で支えておりまして、都市部ではここにオプションとして延長保育や夜間保育、休日保育、または病児保育、それから二重保育などのニーズがありますが、これは個別に個人がその事情によって必要とする保育で、逆にオプション的なニーズのところにさまざまな認可外のサービスが集中していることがおわかりいただけるのではないかと思います。
     そこでバウチャーの話に戻りますが、このバウチャー制度にしてもし認可制度がなくなってしまった場合、この認可保育園自体が大きく揺らいでしまうということがありますと大変問題ではないか。資金が薄く、広くばらまかれるようになりますと、例えば認可施設の経営が立ち入かなくなったり、コストの大幅削減で子どもの保育が手抜きになったり、保育料負担が非常に大きくなって保護者の方で預け切れなくなったりということが起こるのではないかということを心配しております。それで、バウチャーにつきましては、資料の「保育サービスの現況」の次に福祉新聞に書きましたコラムをとじましたので、また後でゆっくり見ていただければと思っております。
     それから、待機児問題と同時に、子どもを預ける時間、延長保育、夜間保育、二次保育など、時間についてもニーズがふくらんでおりまして拡大が求められていると思います。それで、皆さんの両立の状態を見ておりますと、できれば1日12時間以上の長時間保育というのはなるべくしないで済めば子育てがやりやすいだろうなと思うんですが、しかし個別に働く時間がまちまちだし、また首都圏では通勤時間が非常に長いということから、どうしても保育時間をもっと幅広くしていく必要があると思います。 まず延長保育については、とにかくニーズが非常に多い地域と、ほとんどない地域と本当に地域による偏りが大きいので、地域のニーズに合わせて増やしていくことになりますが、しかしこれも待機児問題と全く同じで自治体の温度差が大変大きいですので、明らかにニーズが高いと思われる地域で延長保育の実施率が低いような自治体には、国からも何らかの指導をしていただけるような形だと、地域の親たちは助かるんじゃないかと思います。
     それから、夜間保育、休日保育ニーズは、全体からすると数は多くありませんが、当然どこにも発生するニーズですので拠点的に整備が必要だと考えます。東京のようなサービス都市でも、夜間保育が豊島区にあり、品川は延長保育の変形でやっておりまして、今度新宿区に新しく認可されるということですけれども、そのくらいしかないのは本当におかしいと思います。公立でもよいというと変な言い方ですけれども、公立でもとにかく至急整備していくということが必要かと思います。
     先ほどから自治体の熱意が問われるということを言っております。地方分権の中で自治体任せということになっておりますが、もっと自治体の施策を保育行政について評価してはどうかと思います。厚生労働省のヒアリングのような取り組みを更に発展させるとか、あるいは今、保育所の評価のための第三者機関というものが検討されておりますけれども、その中に場合によっては自治体の保育施策についても意見を出せるようなものをつくってはどうかと私は思います。
     それから、公立保育園の位置付けについてちょっと意見を申し上げたいと思います。これから保育園の数を増やしていくに当たってある程度民間の力というのが重視されていくだろうと思いますし、民間委託がある程度進んでいくということは予想されます。三鷹市で新設園が公設民営でベネッセさんがおやりになるということで、都基準ではなく国基準の人員配置だったということはちょっと利用者にとっては残念だなと思うんですが、三鷹市は本当に待機児の多い市でしたので、とにかく新しく増えたということはありがたいことだなと思います。それにしても、公立がこれからどうなっていくのかということを考えていきますと、公立園は公立園で今まで大きな役割を果たしてきましたし、私が思いますのは認可の私立園、民間の園というのは先生のところのように大変よく頑張っておられるところと、どうしようもなく意識の鈍いというか、子どもの保育もいま一つだし、何となく偉そうという感じの余り質のよくないところとの格差が大きいんです。それで、公立というのはそれほど飛び抜けてすばらしいところもないが、飛び抜けて悪いところもないということで、全体の6割を公立が占めておりますので、安定したある中間層の質を保っていると見受けられるんです。ですから、こういった公立の保育の質の指標としての役割というのは、地域においても全体においてもあるのではないかなと思っておりまして、公立がどんどん民営化されていくと、どうなってしまうのか、ちょっと読み切れないところなのではありますが、多少心配しております。
     また、公立園は民間では採算が取りにくいサービスなどは当然率先してやるべき地位に立っていると思いますし、また地域に貢献する無料サービスを担っているという状況もとらえていかなければいけないと思います。例えば、港区などで専業主婦の親子を保育園に呼んで一定の日の午前中に遊んだり、子どもを遊ばせながら保育士さんが育児相談に応じたりというような活動をしておりますけれども、こういった子育て支援を全く無料で提供できるという面で公立園の役割があると思います。

    (森内閣総理大臣入室)

    樋口会長
    総理の御意向で、ヒアリングはそのまま続けたいということですから、どうぞ普光院さん、最後までお続けくださいませ。普光院さんの御説明が終わったところで総理にごあいさつをちょうだいいたします。
    普光院説明者
    それでは、失礼して続けさせていただきます。
     次に、学童保育についてお話をさせていただきたいんですが、学童保育につきましてはちょうど今、保育園で騒がれているようなことがいずれは学童保育についても持ち上がってくるだろうということです。保育園に集中してきている層が、いずれは小学校に子どもを入学させていきますので、現状のままでは学童保育は足りなくなると思います。現在、学童保育は地域によって非常にいろいろな形で行われていまして、児童館の中でやっているところや学校の中でやっているところ、また民間の建物を借りているところ、運営主体も市町村がやっていたり、民間団体がやっていたりといろいろなんですけれども、とにかく増やしていかなきゃいけない傾向になることは確かだと思います。
     そのときに先ほども申しましたが、学校側の協力が非常に現状では鈍いということが言えます。例えば、そういった空き教室の利用ということに関しても理解がない。そしてまた、教師が学童保育のお子さんはという感じで少し別に見ていたり、また留守家庭には特有の事情というのがあり、連絡など普通の専業主婦の家庭に求められるようなことができない場合もありますのでその点を配慮していただきたいんですが、そういった理解が余りなく、また学童保育の指導員との連絡というのも特に積極的にしてくださらないという方も多いんです。そうではなくやはりそういう施設の提供から指導員との連携まで学校側がもっと協力していただけると、小学生を持つ親の両立というのはもっとたやすくなるのではないかと思います。
     現在、一般放課後対象事業というのは結構広がってまいりまして、それは留守家庭の子どもに限らず、広く小学生の放課後を豊かに学校で遊ばせましょうという形で学校を開放しまして、そこに指導員を置いて放課後子どもの遊び場づくりということを各地で取り組みが進んでいるわけです。これはこれで大変すばらしいものなんです。こういうことが必要だと思うんですが、ただ、その陰でちょっと忘れられがちになっていることとして、留守家庭への配慮というのを考えていただきたい。留守家庭の子どもというのは、学校から学童保育にただいまと言って帰ってきて、確かにここに来たかどうかというのを指導員の先生がチェックしてくださったり、または学校で何かあったら指導員の先生が話を聞いてくださるといったような一種の保育と通ずるサービスが必要だと思います。
     学童保育に関する留守家庭への配慮について、「学童保育に望むこと 留守家庭の配慮」という紙をつくってまいりましたのでご覧ください。是非こういったことを配慮して留守家庭を意識した放課後事業をやっていただきたいと思っております。
     保育については以上ですけれども、次に「労働施策について」も少し申し上げたいと思います。レジュメの方に3点挙げておりますけれども、2点目の制度利用を保障するための施策ということ、これは保育園を考える親の会の会員がかなり切実に言っております。資料の中にも働き方アンケートというものをとじておりますので後ほど是非見ていただければと思うんですが、3枚目のところに「働き方」緊急アンケート結果というのを出しております。そちらの自由記述の方に、せっかく制度が整っても利用できないのでは仕方がないということで、育児休業や育児時間を取ってそういう制度を利用したことに対して不利益な処遇をしないように、何らかの施策を打ってほしいということを言っている方がかなりいらっしゃいます。それで、両立支援ということが必要なんだということをもっと企業の経営者とか職場の方々に周知徹底していくことが必要ではないか。またもう一つ、ソフトな苦情窓口といいますか、今はどうしても労政事務所とか、労働省の窓口というのは違法でない限りは取り上げてもらえないということがありますので、助言とかアドバイスという形でもっと柔軟に応じていただけるところがあればと思います。
     労働時間短縮等についてはこの会でもいろいろ話し合われていると思いますので、また必要があれば後ほど文書ででも補足させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
    樋口会長
    どうもいろいろと御説明をありがとうございました。
     総理には第1回目に引き続き御多忙のところ、本当に後の日程も詰まっているところをおいでいただきましてありがとうございます。本日は、お3人の保育の現場にいらっしゃる説明者の方から御説明をいただくことになっていまして、今ちょうどお2人の御説明をいただいたところでございますので、ここでごあいさつをいただければとおもいますが。
    森内閣総理大臣
    3人目もどうぞ、やってください。お話を聞きに私は来たんですから。
    樋口会長
    それでは、名木さんよろしくお願いします。
    名木説明者
    名木純子でございます。よろしくお願いいたします。
     今日は本当に大切なお時間をちょうだいしたわけですから、私としましては1分たりとも1秒たりとも無駄にはできないと思いまして、大特急でお話をさせていただくことができるようにある程度書いたものとして持ってきております。
     私どもは保育園ではございませんで、家庭保育、在宅の介護を地域でネットワークにしておりますファミリーサポート事業でございますけれども、1973年に始めまして今年で27年になります。産みやすく、育てやすく、働きやすい21世紀をつくろうということでやってまいりました。私どもの活動につきましてだけを私が話しておりましたのでは手前みそになってしまいますので、一応第三者の方から見てこの家庭保育がどういうふうに見えてくるかということなども含めまして、それから今日はせっかくの機会ですので最も困難な問題といいますか、これはとても大変なんだという、特にお耳障りな部分もあるかもしれませんけれども、私としては全く言葉に衣着せずに申し上げていこうと思います。
     毎年11月に全国の幼稚園、保育園の連合協議会などが京都で行われますけれども、それなどにも出席しましてたくさんの先生方の声を集めてきて私は今日、資料としてお持ちしたつもりです。まず先に私どもの活動のブリーフを裏表にしてつくっていただきました。「もっと厳しく、もっと暖かく」、今日の日本が抱えてしまった人間つくりに関わる問題点を見つめていきたいと思います。
     子どもたちの健やかな育ちのためには、厳しくて優しい子育てをしていきたいと思っているところですけれども、現在の傾向としましてはきつくて甘い子育てに流れているように思われます。保育、教育そのほかの専門の先生方のお話を聞きましても、キーワードは常に教育と環境です。教育の世界の方々のおっしゃる困難は、俗に三間不足と言われております時間も空間も仲間も子どもたちにとって足りないという御指摘です。教育の世界ではもちろん知育、徳育、体育というのを柱として進めていらっしゃるわけですけれども、私どもはそれに今の世の中、食育が絶対にもっと必要ということで4つの柱を勉強していきたいと考えております。
     環境については、人間のための環境はほとんど人間がつくってきたと思いますから、そのつくり方の工夫次第でもっと自然に、もっと健康的によりよく共存できる方法をさぐっていきたいと思っています。それで、みんなこういったことはわかっているんですけれども、それがうまくいかないのはなぜかという問題なんですが、教育の課程ですね。人づくりのプロセスという部分で高等価値感情というのを育てる。育て損なっていると私は書きましたけれども、育つところがないがしろにされているとでも言った方がいいかと思います。五感をフルに活動させて子どもを育てよというのは昔からの教えです。それはつまり体験学習を主張するということなんですが、結果としてIQ、知能指数の方ばかりに評価のポイントがいきまして、EQという情操面でのものが軽んじてこられてしまったことです。このEQというのを最近研究していらっしゃる方もたくさんおいでになりますから、私が言うのも何なんですけれども、高等価値感情を司るもので、それがつまり誠ですとか、善悪ですとか、美に対する感覚ですとか、聖なるものへの畏敬ですとか、そういったような形で表れてくるものです。
     そして、高等価値感情は発達心理学の世界では六感、七感、八感、これを前庭覚、固有覚、内蔵覚というんですけれども、これらの感覚統合能力を育てるとでもいいましょうか、芽生えてくるのが胎児のころから0歳、1歳期に非常に多くその根っこを発すると言われています。ここの育児が大変大事ということです。自然で健康的な子どもの世界を守るために、こうしたものを損なわずに人らしく育てていくというのは本当に当たり前のごくごく自然の日常的な営みの中で行われてきたことだったはずなのですけれども、最近どうもそこら辺が危なっかしいという結果、いろいろな思春期の問題、そのほか少年犯罪等々が出てきたと感じられます。楽しい育児、明るい介護、言葉で言うのは簡単ですが、実践するためにはやはり無理のない、無駄のない、自然で健康的な施策が求められるということになります。必要な人にはすべていつでもどこでもだれでも利用できる、究極のバリアフリーのネットワークを求めて活動しておりましたら、今のようなエスクの状態ができ上がりました。
     エスクにつきましては、皆様のお手元にあります「家庭の保育のネットワーク」、これが活動の記録です。一昨年の12月に出したものですけれども、この中にわかることは私なりの言葉でまとめましたので後でご覧いただけたらと思います。
     更に今、問題になっていることについて、本当に言葉に衣着せず心配している現場の方々の声を代表いたしまして皆様に申し上げようと思います。実は持ってきました資料でこうした表があるんですけれども、これがまだ、皆様のお手元に配られていないかと思います。「保育園のパラドクス」という、これは11月の会議のときに識者の間で一生懸命製作したものですけれども、表を作成されましたのは八王子にあります社会福祉法人の共励保育園の長田先生という方です。私はこの表を見ていただきながら説明をさせていただくというのが一番いいと思ったのですけれども。
     それで、これは実は本当に時間が足りないと私は思いましたので、客観的にちょっと面映ゆいようなほめていただいている文章もこの中に入ってきてしまうんですけれども、飛ばしまして申し上げます。そのうち表が配られると思います。 保育の世界はすさまじい変革の嵐が吹き荒れております。嵐と書いたのは、この変革が社会全体を混乱におとしめる危険性も極めて高いと感じているからです。取り分け近視眼的な視野で描かれた行政の福祉ビジョンがその嵐の目になることを考えると、これは人災害の何物でもないと言わざるを得ません。本当にきつい言葉で書いてありますが、お許しください。
     実際に行政が繰り出す施策には、コストの削減やサービスの向上といった経済効率や市場主義だけにとらわれた内容しか描かれていません。問題は子どもであり、家庭であります。早晩行政が繰り出す施策は、子ども問題で根本から簡単に引っくり返されます。子どもの立場から言っております。目先のことのみにとらわれた対策が、天に向かってはいたつばのごとくおのれの顔に落ちてくる。子どもの問題はそういった性質を持っています。社会の根幹を構成する家庭や、社会の未来である子どもを軽視した施策には根本的な解決策は見当たりません。
     私は図表保育園のパラドクス、行政の施策の問題点を明らかにすることを試みました。批判をするというつもりではありません。子どもが大変だということを訴えたいためです。つまり、保育園がはらんだ問題が子ども問題として広がり、結果的には社会や企業に大きな悪循環をもたらすことを伝えたいと思ったからです。子ども問題の根本はゼロ、1歳児における親と子の関わりに集約されると言ったら少し言い過ぎでしょうか。もちろんそれだけですべてが解決されるわけではないのですが、この時期の親子関係が社会の基礎になることや、子どもの発達を考えると非常に重要な時期であることは否定できません。昨今のマスメディアをにぎわせている子ども問題の根は学齢期以前に存在しています。「三つ子の魂百までも」という昔からの格言に示されているとおりです。
    樋口会長
    名木さん、大変恐縮でございますが、それでは資料を見ながらお話を伺う方がよろしいと思いますので、ちょうどいい機会ですから総理にここでごあいさついただきたいと思います。その間に資料を皆さんに配ってください。
     名木さん、大変恐縮でございますが、それでは資料を見ながらお話を伺う方がよろしいと思いますので、ちょうどいい機会ですから総理にここでごあいさついただきたいと思います。その間に資料を皆さんに配ってください。

    (報道陣入室)

    森内閣総理大臣
    それでは、どうもおはようございます。本当にお忙しい中を皆様にお願いをしてこうして御熱心に御議論をいただいておりますことを、まずお礼を申し上げたいと思います。
     本当は私もずっと伺って、それを参考にしながらまた政府部内で具体的な策を立てたいと思ってできるだけ参加したいと思っておりますが、何しろ昨日も一日国会にずっと出席しておりましたし、今日も閣議がございまして終えましてからすぐ来ようと思ったんですが、次々と閣僚の皆さんもちょっと相談があるということで、大変途中になりまして申し訳ありません。現れたらすぐまた帰って、皆さんのせっかくの御討議の場が混乱するようなことになって、これまた大変申し訳ないと思っております。
     2月5日の初会合に引き続いてこうしてお集まりいただいているわけでありますし、また会合だけではなくて皆さんの大変お忙しい中に一つのテーマとして、それぞれ私的にも御検討いただいているんだろうと思ってお礼を申し上げたいと思います。初会合のときにも申し上げましたが、少子化、高齢化が進む我が国におきまして、男性も女性も気持ちよく子育てができる仕組みがまず必要だということが最初の大きな命題でもあるわけです。
     第1回の会合では、委員の皆様から御熱心な御討議をいただきまして、改めて今まで政府が講じてきた施策が効果を上げていないと言われるのはなぜなんだろうか。どのような施策によって仕事と子育ての両立を支援できるのか。委員の皆様にはこれらの点について引き続き御議論をお進めいただき、率直にまた御批判もいただければと思うわけです。
     今日は、現場で子育てに実際に取り組んでおられる皆様、両立させた御経験のある方をお招きをしてお話をお聞きすると、このように伺っておりますが、委員の皆様には実際の体験に根差した貴重な御意見をお聞きをいただき、またこのメンバーの皆様方もそれなりのいろいろな御経験がある方を中心にお選びをしたと伺っておりますから、皆様方が今日までおやりになってきた御経験の中で何が足りなかったのか、どんなことをもう少しやるべきなのか、時代時代によってまた環境、条件が違ってくると思いますが、そういうことを大いに御議論をし、是非樋口先生、島田先生におまとめいただければと思っております。
     今日お見えいただきました方々には、時間制限をしたりと申し訳ないことだと思いますが、どうぞこの後もせっかくお越しくださったのでありますので、どうぞひとつ率直な御意見をいただければと思います。
     この調査会におきましては、3月中旬をめどに男女共同参画会議に中間的な検討状況を報告するということになっておりますので、限られた時間でございますが、皆様の熱意をもちまして希望の持てる御検討が進められますように御期待を申し上げて、引き続きの御審議、御協議をお願い申し上げましてお礼やら今日のごあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
    樋口会長
    総理、ありがとうございました。

    (報道陣退室)

    樋口会長
    私どもの専門調査会も今日は正式には2回目でございますけれども、島田先生の御発案で長時間討論を非公式にやろうということで、ついこの間の土曜日に何と6時間の長時間討論をいたしました。
    森内閣総理大臣
    そのままテレビでやればよかったですね。
    樋口会長
    すごい熱気だったんですよ。意見が対立するところももちろんございますけれども、願いは1つ両立支援ですから、そこで本当に一緒になりました。
     それで、総理は島田先生の長時間討論の結果の御報告と、このお3方への質疑とどちらをお聞きになりたいですか。時間の制限があると思いますから、お聞きになりたい方からどうぞ。
    森内閣総理大臣
    6時間でどんなことがあったのか、ちょっと伺いたいですね。
    樋口会長
    それでは恐れ入りますが、お3方に5分いただきます。その間に資料もできると思いますので。
    島田会長代理
    それでは、今の長時間討論の要点をごくかいつまんでお話ししたいと思います。6時間は非常に熱気がございましたのでとても私はまとめられないと思いますが、幾つかに振り分けて御紹介したいと思います。
     1つは基本的な考え方とかスローガンですけれども、基本的には一度きりの人生で自分の生き方を自由に選択できて、子どもをきちんと育てていける。それを同時に実現することを支える社会が必要だと。それから、非常に多くの方がおっしゃったのは、日本というのは一体子育てをさせようという気持ちのある社会なのかどうかということが問われているということなんです。 そして、やや具体的ですけれども、先ほども待機児童の話がありましたが、待機児童をゼロにすることを目標にしてはどうかという御議論ですね。それから、家庭そのものは一人暮らしや核家族化が進んでいますけれども、地域社会としては4世代同居社会、みんなが助け合うというようなことがあり得るのではないか。それから、まちづくりの基本戦略として職住近接として地域に保育所をビルトインするということがあるんじゃないかということですね。
     それから、保育所について言いますと、保育所を増やすということは先ほどもずっと御議論がありました基本的な問題ですね。そして、既存の保育所との競合をどう考えるか。それから、官庁等の公的施設が施設内に保育所をつくってはどうか。企業内に保育所を呼び掛けてはどうか。都心等のオフィスビルを週末の保育所として一部開放するというようなことを考えてはどうかということです。
     それから、大きな点として現在の保育所の使い勝手をもっとよくするということを考えるべきではないかということですね。保育時間の延長、育児休業取得との関係を改善する。入所期間のフレキシブル化、緊急時の対策、病気とかですね。それから失業中の利用、能力開発のための利用、それから第2子が生まれたときに長子が保育所に入れないということがあるのでそういうことのないようにできないかという問題ですね。それから、公立保育所の営業終了後、民間が引き継いで更に子どもを預かるような工夫ができないか。
     それから、またもう一つ大きな点としては公設民営型の保育所を普及する必要があるんじゃないかということですね。大都市や周辺部では、施設は公が用意して運営費を補助する形で民間が経営する形式の普及が望ましいのではないか。民間の場合、ランニングコストをやや押さえられるんじゃないかということもあるわけですね。
     それから、情報公開とかサービス水準のチェックということを十分に行わせる。そういうことによって運営の質を確保することが必要だ。また、サテライト保育所というのもあっていいんじゃないか。駅を分室として、駅に親御さんが来て子どもを預けてシャトルで往復可能な地域に本保育所があって、そういうネットワークをつくるというのも使いやすいのではないか。
     それから、先ほどもありましたが学童保育の充実ですね。すべての学校に学童自習室を設置してはどうか。特に大都市周辺では需要が大きいのではないかということです。それから、学生さんとか生徒さんがボランティアとしてそういうものに参加するということもいいのではないか。一種の兄弟みたいな関係をつくるということですね。それから、経営は市町村が行うけれども、民間に委託するということもあっていいんじゃないか。それから、教員のOBの再雇用とか、育児ママは大変苦労されているわけで、この育児ママさんへの危険負担を公的にサポートする仕組みがあってもいいのではないか。名木さんのところなどは育児ママネットワークを展開しておられるわけですけれども。
     それから育児休業等、これは会社の方あるいは制度への期待になってまいりますが、育児休業制度をもっと充実させる。北欧諸国でやっているパパクォータ制というんですか、そんなことを日本でも考えていいのではないか。あるいは、段階的な育児就業、育児休暇の貯蓄引出し制。ただ、制度をつくっても日本で本当に機能するかどうかという議論も随分ありました。それから、男性も、奥さんが子どもを産んだときに数日ですけれども出産休暇があっていいんじゃないか。そして病児休暇制度の導入。
     それから、企業についても随分注文がございまして、両立支援に積極的な企業が実は業績がいいということをデータとして示せないか。制度は整っているけれども、実はリストラとの関係などで実際の取得環境は厳しいという御指摘もありました。それから、企業を本気にさせるにはファミリーフレンドリーな企業へのいろいろな意味での税制優遇等も検討する必要があるんじゃないか。国が子育てに本気なのかどうかというのは、こういうところでも問われるのではないかという議論ですね。それから、フレキシブルで多様なコース別人事とか、短時間勤務の制度化とか、とにかく男性社員が実際に育児を経験するということは非常に重要で、そのことで職場の雰囲気も変わっていくんじゃないかということですとか、派遣、パート労働者にどう対応するかということですね。
     そのほか幾つか重要なポイントはありましたけれども、急速に工業化して都市化していく中で、子どものことを全く知らない親が出てきているという御指摘もありました。親の教育が必要なんじゃないか。それから、奉仕体験というようなことも必要なんじゃないか。それから両親学級というのがあるんですが、平日の昼間に行われてしまうために働く親が参加できないとか、PTAもやはり平日の昼間やられるので働く母親は参加しにくい。
     最後に皆さんの広い意見だったんですけれども、この委員会で広く国民に子育てについての意見募集を行うべきじゃないか。皆さんの全国の期待というものを一回集めてみるべきじゃないかというような御議論がありました。以上でございます。
    樋口会長
    どうも長い6時間の議論を大変上手にまとめていただきまして、その間には大熱気だったわけでございます。論争もありまして、まだこれはこれから引き継がれているわけでございます。
    森内閣総理大臣
    それでは、私からちょっと質問と意見を申し上げていいでしょうか。それで失礼したいので。
     6時間のおまとめをあえてお聞きをしたんですが、幾つかお尋ねもしたいし、今日お答えいただかなくていいですし、また御協議いただければいいと思うんですが、一番最初に基本的な考え方の中にちゃんと子孫を残し、社会を支えることが必要というところで、子どもを産み育てるということに対して今の若い人たち、これから続くであろう親となる成人に達する人たち、この人たちが一体どういう考え方を持つのだろうか。私はこれは教育の問題なんだろうと思いますが、ここは基本ではないか。少子高齢化が非常に早く進む。これはやむを得ない事情です。しかし、このままずっとそれでいいのか。よく1.37の出生率では何百年後に人がいなくなるなどと簡単に言ってしまいますが、これからある時期がきたら子どもがやはり必要なんだと日本人みんながそういう意識を持つのかどうか。もっと我々よりも早く進んでいる国はどういう傾向があるのか。子どもを産みなさいなどと言うのはとても失礼なことなので、これは夫婦の問題であって、特に女性の価値観の問題だろうと思います。だから、そういう意識を持ってもらえるためにはどうあるべきなのかという視点がまず一つあると思います。
     もう一つは、ではなぜ嫌なのか。子どもを産んで結婚する適齢期というんでしょうか、結婚の時期がだんだん高齢化していった。そのためにどうしても多く産めなくなるということもあると思います。女性の皆さんですからものすごく言葉を選びながら死ぬような思いでしゃべっているんですが、そういう環境の変化というのはやむを得ない事情だと思いますが、意識としてもっと子どもが欲しい、子どもをたくさん産み育てるのは楽しいと思うような教育というのが必要なんじゃないかと私が勝手に思うんです。そういうことの議論というのはもうちょっと別で、この会議にはなじまないのかもしれませんが、そこが中心だなという感じがいたします。
     それから、日本は子育てをさせようという気があるのかどうかということですが、これはみんなあると思います。あるからどうしたらいいのかということを議論しているんだろうと思うんです。
     それでもう一つの視点は、本当は日本で一番大事なことは都市と地方で、全然生活形態が違うんですね。現に待機児童をゼロにするなどということは地方では笑ってしまいますよね。地方は施設が余っているんですよ。地方では、どうして保育所に待機しなきゃ入れないんでしょうなどということでみんな不思議がります。ところが都会、東京では当たり前。どうも皆さんは東京の視点で物をおっしゃっている。地方は全然違うんです。逆なんですね。この辺の議論がどうなっているか。
    樋口会長
    今日のヒアリングで地方の実態をお話いただきました。
    森内閣総理大臣
    そういうことももちろんあったんでしょう。国の施策ですから、やはりそういうことも分けてお考えいただくことが必要なんじゃないかということです。
     それから、公的な支援、地域社会のみんなで支え合って育てていくという保育の見地というのは社会福祉の見地なんですね。保育所というのは児童福祉法に関わるものでしょう。しかし、児童の教育というのは学校教育法で言うと幼稚園というシステムもあるわけです。これは我々の怠慢なんです。怠慢というのは、幼保の問題というのはどうにもならない行政の対立なんですね。恐らくこの議論も出たと思います。
     では、幼保が一元化するというのは厚生省と、本当は文部科学省が一緒になれば一番よかったんです。ところが、全然そうじゃないところへまた分かれちゃった。ますます保育園は守らなければならぬという人と、幼稚園は幼稚園でそういう人がいる。それで、今度はお互いに相互乗入れをしようということで、できるだけ間口を広げて、時間がきてもいつまでも預かれるようにしようという方向でいろいろやっているはずですが、保育園は延ばすことについては何ら問題はないんですね。保母さんたち、先生の給料も何もかも全部公的に援助していくわけです。しかし、幼稚園は私立ですからそんな手当はない。仮に幼稚園を夕方5時、6時、お母さんが帰る7時、8時まで延ばせば、それを賄う先生の給与、賃金が必要になる。これは国から補填はありません。幼稚園の経営者がやらなきゃならない。そこに非常にバランスが取れていないといいますか、不公平さがある。
     第一、保育園というネーミングが児童福祉法から言えば、親が働かなければどうしようもないので子どもを育てます。親に代わって、家庭に代わって子どもの面倒を見ます。これが保育所、保育園ということです。幼稚園はそうではない。わかりやすく言えば、経済的にゆとりのある人は幼稚園であって、ゆとりがないから保育園だというふうに子どもの中にそういう差を付けてしまっていいのかということになる。地方へ行きますと、絶対に幼稚園をつくらない町村が結構あります。それは、そういう子どもに分け隔てをさせてはおかしいという町長の考え方だと思うんです。子どもたちにはわかりませんけれども、親がそういう目で見てしまいます。ですから、この辺はむしろ先生方にお願いするよりも、我々がもっと勇気を持って取り組まなければならぬことです。
     私がそんなことを言ってはしようがないですが、正直言って私は文部大臣をやっているときにこの一体化をやろうと思って、これはすごいものだということがわかりました。そういうようなことも一つありますので、要は親たちが子どもつくっても安心なんだよという社会のベースをどうするのかというのがやはり私は大事な視点だろうと思いますし、それを我々としては是非期待をしたい。今までもいろいろな議論が出てきているんだと思いますが、今までの、政府がしてきたこういう議論をもう少し外してもらって、先生方の貴い意見を私はお聞きをしていただいたらいいのかなと思います。
     それから、企業の問題について、働きながら女性が子どもを育てることができるという会社の一つはIT化があると思うんです。これがどんどん進んでいきますと、今でも、男性でもほとんど会社に行かないで1日に1回、あるいは3日に1回ちょっと行ったりして、ほとんど後はパソコンやインターネットで全部連絡を取って仕事をしているというケースがあり、これが非常に多くなるので、これは女性にとって最も私は採用しやすいと思います。こういうことはどうしたらでき得るのか、こういう視点も御検討いただければという感じがいたしました。
     要は今、ほかの国でスムーズにいっているのに日本ではなぜうまくいかないのか。ほかの国がみんなうまくいっているとは私は思いませんよ。ただ、そういうことをこの間、ちょっと私はどこかで申し上げたんですね。アメリカへ行ったらニューヨークで働いている女性が3人ほどいて、日本に帰らないのと聞いたら、日本に帰ったらこんなことはできません、ニューヨークだからできたんですとすぱっと言われてしまいまして、ではなぜなんだろうということはちょっと聞きましたけれども、これは島田委員の分野だと思うんです。そういう分野での起業、ニュービジネスということで、それはニュービジネスで割り切ってやらせる。では、お母さんたちが安心して子どもを任せられるシステムはどういうものになったらいいんだろうか。非常にそこは日本の国の中の基本的な問題で、例えばアメリカなどは外国の方たちにお願いをするとか、いろいろなやり方があるんでしょうね。
     しかし、日本の場合はそれができるのかなという問題が一つあるんですけれども、私はそうじゃなくて、リタイアをしたり子離れをしたお母さんたちがたくさんいらっしゃるわけでしょう。その皆さんがそういう企業に参加をする。これこそ第3セクターでできるんじゃないかと思うんです。そこに預ければもう安心ですよということができるような形、それをやっても子どもを産むか産まないか、これまた価値観の問題ですけれども、そんなようなことを私は思いながら樋口会長に期待をいたしておるわけでございます。
    樋口会長
    第1回目から皆さんで過激な意見を言おうということでやっておりますので。
    森内閣総理大臣
    私は全部聞かないで勝手なことを言ってはいけないんです。いけないことはわかっていて、ちょっとお時間をいただいたので。
    樋口会長
    まさにそういうことを含めながら私どもは論議していきたいと思いますし、私がこの間ちょうどある地域の高等学校の家庭科の先生の集会に行きましたらこのことを知っていまして、政府の一番近いというか、総理直属で仕事と家庭の両立と言ってくれただけで不覚にも涙がこぼれたという高等学校の先生がおりました。一生懸命やりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
    森内閣総理大臣
    昨日、予算委員会でちょっと答弁したんですが、これは学校教育の話ですけれども、子どもたちの目を見ていて最近本当にいい気持ちになったのは、横浜の三ツ沢というところに小学校があって、そこへちょっと見学に行ったんです。そうしたら、完全に地域と一体化しているんです。驚きました。それは、僕は校長も偉いし、先生も偉いと思うんです。先生は大体、外の親たちや社会の人たちが入ってくると嫌がるでしょう。そうじゃなくて、どんどん入れているんです。80歳のおじいちゃんが一生懸命に、さくをつくるのにどういう縄の縫い方、結び方をしたらいいか。そんなことができますか。子どもに求められてもできないでしょう。それは人生を長く生きてきた植木屋さんのおじさんだからできることなんです。それを子どもたちに教えて、さくをつくらせる。
     それから、キクの花の種を持ってきて、これをただ植えて花を咲かせましょうというのならばだれでもできるんです。そうじゃなくて、全部自分たちで鉢を買ってきてまず土をつくって、それから堆肥をつくって、そこからやらせて、さあ秋になったら咲くだろうかと。
     それから、学校の後ろに小さなせせらぎがあったのを市がきれいにしてくれて遊歩道をつくった。そこにホタルが生息するか。これは、ホタルはどういう条件で育つかということを一生懸命調べてきて、そこにいろいろな自然、タケを植えたりいろいろやっているんです。全部そういうことを好きな子どもたちがやっている。
     そうじゃないのは、おじいちゃんおばあちゃんと健康体操をやっているんです。ちょうど私たちが行ったらもめているんです。なぜもめているかと思ったら、「ソーラン節」を先にやるか、「オッハー」を先にやるか。すると、すごいおばあちゃんが来て「だめよ、先にやるのはソーラン節よ」と言うと子どもたちはちゃんと従うんですね。年長者の言うことを聞く。それで、おばあさんと子どもたちは「ソーラン節」の体操をやっているんです。その後は、今度は「オッハー」をやっている。私は「オッハー」というのは孫がやっていて意味がわからなかったけれども、初めてわかりました。
     そういうことをやらせたり、それからいわゆる障害を持っているお母さんが出てきてみんなに手話を教えているんです。それで、その通訳を子どもがするんですね。明るいものすごいいい雰囲気です。
    樋口会長
    それは小学校単位ですか。
    森内閣総理大臣
    小学校で自由にやらせているんです。そういうことをしていくためには、先生にはそんな知識はないですよ。ところが、簡単なことで地域におられるおじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さんはみんなできるんです。そういう専門家たちが学校が来て全部ボランティア、支援グループです。それは先生、生徒、そういう地域支援一体となっています。
     子どもたちはとっても楽しくて学校が面白くてしようがないんですね。だから帰らない。終わってからまたその後も作業をやる。だから、普通は先生は早く自分でも家に帰りたいから3時になったら早く帰りなさいと言うけれども、その学校は子どもたちに自由にさせる。その代わり、時間になったら親たちが来て参加して一緒にやっているということです。いいことづくめの話をしましたから難しい問題もあるんだと思いますが、とてもいいなと思っておりました。
     ちなみに校長先生に不登校はどうですかと聞いたら、八百何十名いますが1名もございませんということでした。
    樋口会長
    実にいい実例をお話いただきまして、また幾つかの項目も大変私どもの検討課題であるテーマを御示唆いただきまして、本当にありがとうございました。
    森内閣総理大臣
    ここのテーマとはちょっと似合わないんだけれども、子どもたちにそういう希望、喜びを持たせるということでとてもいい教育をしていらっしゃるなと思ったので、ちょっと私はうれしくなって昨日も国会で答弁したんです。
    樋口会長
    いついらっしゃったんですか。
    森内閣総理大臣
    半月ほど前だったかと思います。今のこのテーマとは違うんですが。
    樋口会長
    テーマだと思いますよ。
    島田会長代理
    すばらしい御示唆をいただきました。
    樋口会長
    私たちも地域が4世代同居でやって、地域全体のということでいっていますから。
    森総理大臣
    そうなんですね。それで私は都会と地方のことで、私たちの田舎ではもうそんなあれは余りないんですね。もちろん出生率、人口は減っていますが、大体子どもをみんなどんどんつくっちゃうんですね。それで、あの辺はおじいちゃんおばあちゃんが見るのはごく当たり前だと思っている社会なんですね。
     言いたいことだけ言ってすみません。
    樋口会長
    この次、またいらしてください。
    森内閣総理大臣
    先生方、申し訳ありません。それでは、よろしくお願いします。
    樋口会長
    では、議論を続けさせていただきます。今日は本当にお忙しいところをありがとうございました。

    (森内閣総理大臣退室)

    樋口会長
    中断いたしまして、申し訳ございません。そういうことですので、ではさっき申し上げましたように名木さん、5分と区切って申し訳ないんですけれども、この図を御説明いただけますか。
    名木説明者
    保育園は上手にその機能を働かせることができれば非常に有効な役割を果たすことができます。家庭の代替えにはなれないが、集団として子どもたちを保育、教育し、同時に親の人生設計の応援をしながら親と子のきずなを深め、親が親として育つ機会を提供できるすばらしい機能を持っています。そこを活用していただきたいと思います。その保育園に無理な役割を押しつけたり、単なる便利屋やコンビニエンスストアにさせてしまっては困ると思います。
     図の方の説明ですが、子育てが外注化されている傾向、産業や企業の構造改革、フェミニズム運動、少子化問題などから発生してくる行政への要望が図の左側の中心になります「子育ての外注化」を促進させています。行政の要請を受けて展開されるさまざまな保育サービスの推進で、保育園には過剰な負担がかかってきます。「親子の関係性の喪失」、豊かで便利な社会が家庭を変化させ、家庭が本来持ってきた基本的な機能を失わせてきました。結果として気になる子、困った親が増大し、保育園は大きな問題を抱えることになってきました。「子育ての外注化」は、「親子の関係性の喪失」を招いてきます。「親が親として育たない」の悪循環ですが、子どもとの関係性が保てないために、親が親として育つ機会を失います。その結果、親は子どもをいとしいと思う気持ちや、思春期に必ず起こる子どもとの問題に真正面から対峙する力を育てられないでいます。世代間連鎖で問題が複雑化、深刻化します。問題点のみ言っておりますから、大変きついと思いますが、全部がそうということではありません。
     「保育園」。「気になる子、困った親」の増大は保育園に過大な負担をもたらし、保育士には息切れ症候群が起き、蔓延します。結果として疲れた保育士は退職し、経験や実力不足の保育士が補充されてくるということになります。
     「学校の崩壊」。子どもの問題は簡単には対処できず、それらは学校へと先送りされます。その結果、学級崩壊、学校崩壊へと進んでいきます。心に不安を持ったままで学業に心を配ることはできないということです。心の穴、不安ですね。親との関わりを求める一番大切な時期に親の愛で満たされないという不安は、子どもの心の中に大きな穴を空けてきます。子どもの自我を育てるには、支えとなる心のつえが必要です。その心のつえの不在が更にこどもたちの心の中に不安を増殖させて、子どもの社会に不安定な状態をつくります。これがいじめや不登校、学力低下、自殺、殺人などに表れてきている子どもの問題の真の背景を構成する根本的な原因と言えます。
     「産業」の悪循環です。学力の落ちた子どもたちが成長し、就職する段階を迎えます。ところが、企業が望む基礎学力が付いていない。以前は企業が教育できましたが、教育が成り立たない子どもが多数になるので対応し切れません。その結果、世界での競争力が著しく落ちる。企業は重要な部門を外国人で賄うなどということになるという心配も案じられます。
     「行政」の悪循環です。荒れた学校は青少年の犯罪の増大を生み、治安コストの増大を招きます。当初、コスト削減を主目的にしていた行政のもくろみはいとも簡単に壊されます。社会不安が増し、行政はその責任を追究されることになるというのは大変です。
     保育園の役割と新しい社会システムの構築ですが、保育園には限度があることを知るべきです。家庭の役割は代替できません。その上で、保育園の役割を考え直す必要もあります。集団ならではの保育という言葉に象徴されるように、保育園の制度それ自体が集団を対象にしています。一人ひとりを大切にするという気持ちは当然尊重されなくてはならないけれども、集団の保育、教育も重要な役割を果たす。個と集団は背中合わせの問題で分離することはできない。両方とも必要です。子どもの発達を理解し、安定した親子関係をベースに、子どもたちの発達意欲を大切にしながら運動機能や感覚を養う。
    樋口会長
    恐縮でございますけれども、いろいろイレギュラーなことが起こってしまいましたので、大体これで名木さんのお時間ですので、ここから先は質問でやらせていただきたいんですけれども、今日せっかくお3人それぞれお立場の違うといいましょうか、それぞれのお立場をお持ちの方がいらしてくださいましたから、御質問をどうぞ。
    八代委員
    お3人の方から非常に貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。時間も限られておりますので、私は普光院さんに代表して御質問させていただきたいと思います。
     普光院さんは先ほどの非常にまとまった御説明の中で、今の保育所の問題というのは限られた運営費で運営しなければいけない。そういう意味で福祉マインドのある事業者が必要なんだと言われました。それはそうなんですが、ただ、そういう動機を基準にある事業者が良くてある事業者が悪いということを認可の時点だけで見るというのは限界があるのではないか。今のような事前的規制といいますか、認可のときは非常に厳しくするけれども、その後は放りっぱなしという規制をむしろ事後的規制といいますか、きちんとどういうサービスを本当にやっているのかということを事後チェックするというか、そういう機能が今、非常に抜けているんじゃないかと思います。そういうことについてどう考えられるか。子どもを扱うサービスというのはお金を預かる金融機関以上にやはり厳しい監督下になければいけないんですが、今はそれが余りにもおろそかにされているということです。
     そこで公立保育園の位置付けなんですが、普光院さんは私立と公立との違いは質のばらつきがないことだとおっしゃったんですが、しかし、一方でコスト格差というのが極めて大きいわけです。公立保育園と社会福祉法人の間にはかなり大きなコストの格差がある。そうであれば、限られた運営費というふうに考えれば、やはり公立保育園というものよりも民間の社会福祉法人等により大きな期待、役割を担ってもらう方が全体としてのサービス供給量は増えるんじゃないだろうか。むしろ公立保育園の公務員というのはそういう監視機能に特化する。民間にはできないような政府としての役割に特化するというふうな考え方に対してどう考えられるかということを是非お伺いしたいと思います。
     それから、公立保育園は採算の取れないサービスを率先してやるべきだというお話はもっともなんですが、現実には逆であって、夜間保育とか休日保育をやっているのはむしろ民間の社会福祉法人であって、公立は公務員の制約からそういうことは余りしていないわけです。ですから、そういう柔軟性ということを考えたときに、民間と公立の役割分担ということをどう考えられるか。
     それから、最後にバウチャーであります。バウチャーというのはまだ制度として確立しておりませんが、私のイメージは介護保険と同じイメージです。要介護認定をすることによって給付が介護保険で与えられるんですが、同じような形でやはり母子家庭であるとか、あるいは所得格差に応じて一定の認定をして、そういう人たちに対してより多くのバウチャーを給付する。そのバウチャーをもらった母親が自分が最もいいと思える保育所を選ぶ。民間であろうが、公立であろうが、企業であろうが、社会福祉法人であろうがですが、そういう考え方というものがなぜいけないのだろうか。
     結局、問題は消費者の判断能力への信頼度の違いなわけですね。消費者が判断能力がないという考え方であれば、やはり政府が一方的に規制してやらなければいけない。しかし、本当に親というのはそんなに自分の子どもに対する判断能力がないのであろうか。今、限られた公立保育園に入れた人は非常にハッピーですけれども、ものすごく長いウェイティングリストの中で全く補助なしに無認可保育所を使わざるを得ない人たちがいるわけです。そういう不公平ということをどう考えるのか。そこがバウチャーの一つの考え方だと思いますが、その点についてもお話を伺いたいと思います。以上です。
    樋口会長
    ありがとうございました。それでは、普光院さんどうぞ。
    普光院説明者
    大変多岐にわたりましたのでうまく説明できるかどうかちょっと心配ですが、まず事前規制が必要なのかというお話なんですけれども、参入規制などについて社会福祉法人以外であってもいいということでかなり大幅に緩和されたと思うんですが、私がこだわっておりますのは、特に子どもの保育に直接関係する設備面であるとか、あとは保育士の配置及びその資格の部分ですね。そういう子どもの保育に直接関係ある部分、そしてまた間接的には経理の関係で子どものために支給されている運営費、税金が企業の営業利益に上がってしまわないようにということ、そういうことはこだわっておりますが、その参入障壁を高くすればいいというふうには考えておりません。
     ですから、今ある国の保育基準というのはあくまでも最低基準で実質的にも最低基準だと思いますし、3歳児につき20名に1人の保母さんというのも実は欧米の基準と比べても子供の数が多いですし、まだもっとよくしていく部分もあるのではないかと思っているぐらいですので、子どもの保育の状況に直接関わる基準というのは事前規制だけれども絶対に最低限必要なんだという考え方は必要だと思います。その上でいろいろなそういうことができる人たち、そして利益がそんなに上がらなくてもやろうという人たちが取り組めるように環境整備をしていくということが必要なのではないかと思っております。
     それからコスト格差についてなんですけれども、このコストの問題というのは主に人件費の部分でして、地方公務員の給与に非常に大きく関わっているわけです。それで、保育園については非常にコストという部分が民間との比較で語られますけれども、例えばそこら辺の出張所の住民票1枚発行するコストが幾らなのかみたいなことはだれもおっしゃらない。その中で、なぜ保育所だけがそう言われるのかということは非常に見るべきではないか。
     ただ、もちろん保育所を増やさなければならないときにそのコストというのは無視できませんので、どうやって削減していくかというのは知恵を絞らなければならないとは思うんですけれども、そのために公立保育園がだめだということは利用者としても考えにくいかなと思います。
     でも、民間委託というのはこの情勢ですので進んでいくだろう。その中で、公立園がすっかりなくなってしまってよいかどうかというのは私も今ここではっきり論拠を申し上げられませんが、もっと現場も含めて議論していく必要があるんじゃないかと思います。
     それから、夜間保育などのサービスは民間の方が進んでいるのではないかということですけれども、確かにそういうことがありますので、公立保育園の意識改革というのが必要です。
     ただ、私などが預けていたころの公立保育園というのは、非常に融通が利かないとかいろいろな不安、不満があり、預かってやるという態度が耐えられないといった面でもいろいろな不満があったんですけれども、こういう保育改革が進む中で公立保育園の意識はかなり変わってきまして、保母さんの意識や園長の取り組みなども相当に変化しているなというのは会員の方の意見を聞いていても思っております。
     それからバウチャーについてなんですけれども、これは細かい部分で何かしっかりまとまったものがあればそれはそれで検討できるかもしれないんですが、まず保育にバウチャーという制度が世界中まだどこでもありませんし、バウチャーというのはますます自由市場に保育事業を展開していこう、どちらかというと自由市場の中で保育をやっていこうとなると思うんですが、現状アメリカなどではそういうことになっているわけですね。それで、今、アメリカの保育の研究家の方が3人ぐらい私のところに日本の認可保育園の研究で訪ねて来られているんですが、皆さんアメリカの保育は格差があり過ぎて、しかも供給が十分ではないということを大変不満におっしゃられて、日本の認可保育園の制度はすばらしいとおっしゃられています。ですから、そういう意味でも完全に自由化がそんなにうまくいくのかということがありまして、バウチャーでは特に供給不足になるおそれ、それから質の格差が多くなり、お金のある人はそれなりの質の保育が買えるけれども、貧しいというか、経済的にきつい人にはそれなりの悪い保育しか手に入らないということにもなりかねないのではないかということを心配しております。
     それから、親の判断能力ということにつきましてはもちろん私自身親ですからちゃんと考えていますと申し上げたいんですが、ただ、私も初めての子どもを保育園に預けるときは子どもが大きくなっていったらどういうものが必要なのかということが全然見当がつかなくて、単に雰囲気で保育園選びをしたようなところもあって、偶然すばらしい保育園に当たりましてよかったなと思うわけですけれども、初めての親にはわかりにくいということと、あとは保育サービスというのはライフラインなんですね。ですから、一たん預け始めると途中で変えるということができません。何か悪い材料を耳や目に入れても気のせいと目をつぶって預け続けてしまうようなところもあります。ですから、非常に親の選択というのが制約されているサービスだということはちょっと頭に入れておいていただけるとありがたいかなと思います。
    樋口会長
    ありがとうございました。それでは、本当に時間をせかして申し訳ないんですが、あとお2方の説明者の先生方に御質問がある方はどうぞ。
    河野委員
    ちょっと視点が違うんですが、森総理のおっしゃっていた人材というか、教育の視点から考えると、今回のこのテーマというのは非常に日本を揺るがす大きい課題だと思っています。単なる両立じゃなくて21世紀に出てくる社会人を育てるベースだということで考えていただくと、先ほど名木さんがおっしゃっていた最後の方の部分は非常に重要だと思います。
     逆に、普光院さんの対象者である個々の女性たちの意見も含めると、ちょうど荻浦先生のところでやっていらっしゃるようなこのようなプログラムをだれもが望むのではないかと思います。実は私は息子は2人とも私立の幼稚園なんですが、知育、徳育、体育をすべて運営されているところで、これは多分これからの母親は望まれると思うんです。私がちょっと知りたかったのは、こちらの社会福祉法人でやっていらっしゃってそれでも大変だと。これを民間でやったときのコストはどうかなというのがすごく心配ですが、逆にこれが一番望まれるスタイルかなと思うんです。それで、たまたまうちは私立でしたもので親の協力、寄附金ですとか、さまざまなことがあって成り立っていたように思うんですけれども、荻浦先生の所は、保育だけではなくて教育ですとかすべてやっていただいている辺りで、それでも大変だとおっしゃっていたので、今後の展開で逆にこういうものが全国にあったときに何かコスト的な、またはそれを国が見るべきだと、そのような御意見も含めて御意見を伺えればと思います。
    荻浦説明者
    私は大変行政に明るくないものですから、普光院さんのお話を随分代弁していただいたなと思いながら伺っているんです。1つ訂正させていただきたいことは、先ほど森首相がいらして、保育所は公立と全く同じで延長保育に対してもすべてのことに対して公費が使われているというふうなことをおっしゃいました。幼稚園も保育園もけんかしているわけではございませんで、それぞれ立場が違いますので、いろいろと意見の違うことはあると思うんですが、幼稚園さんは時間が短いということや何かで比較的安いお金で保育をされております。
     それで、保育所の場合は長時間いろいろなことをしなければならないということで、親の負担も多いし、それから国とか県とか市の負担も多分多いんだと思うんですが、それで果たして保育園が潤っているかどうかというのは全く疑問なところで、森総理が言われたようなことは私は完全に否定したいと思っております。
     それで、今の御質問ですけれども、この資料「新エンゼルプランと私たち」というのである程度の筋をずっと拾い出してきたんですが、新旧エンゼルプランが確立されてからいろいろな目玉が厚生省から出ました。これは、必要だと思う保育者側が、今この時代にあったことはこういうことじゃないか、こういうことも声が挙がっているから必要じゃないかということで先を走る。その先を走っているけなげな姿を見て、厚生省なり行政が何かしてやらなきゃならないんじゃないかと言って財政的な幾ばくかの負担をしていただいているというのが現状でございます。
     ですから、今も大変問題がたくさんで、資料には言いたいことをいっぱい箇条書きにしてきたんですけれども、今日は何も申し上げないで、この活字の間から少しでもくみとっていただければありがたいかなと思う感じでこの小柱を立ててきました。何をやったら今の子どもたちはいいのかというのは、私たちはこれだというものはわかりません。というのは、余りにも目まぐるしく社会が変わり過ぎて、つい最近までは親も子どももきちんとおはようございますとか、さようならとか、お世話様とかという言葉を交わし合っていたと思うんですけれども、この5、6年の間には大変様変わりして、私も園庭でお疲れ様とか、お母様今日はお早いのねとか声をかけても、つっとわきをすり抜けていくようなお母さんたちが多いです。あの「オッハー」がはやって、なんでもあいさつできればいいというのが社会に広まったときに、初めは何ということをと思いましたけれども、今は全く納得で「オッハー」でもいいやという感じです。
     ですから、私たちがやっていることは必要じゃないかと思ってやっていることであって、何も後ろ盾があるからやろう、金がぶら下がっているからやろうと言っていることではありません。これから確立したものがどういう形で出てくるかはわかりませんけれども、むしろ私たちは大変な中でこれを今、切り開いております。私も普光院さんのところの保育園を考える親の会に入って、保育園も考えるし、親の立場も考えるけれども、保育園で働く保育者のことも考える会をもっと大きくしてくださらないかなと思ったりしております。
    河野委員
    本当にすばらしいイベントや企画がたくさんあって、これは私も全部体験していますのでいいと思うんです。それで、伺いたかったのはこういうことをするに当たってこちらのお立場もあるかとは思うんですけれども、それぞれもっと原資が必要ですよね。御両親や何かの寄附金と言ってはいけないんですが、御協力や何かを得なければできないだろうという。
    荻浦説明者
    全く保育園は親からお金を取ってはいけないというシステムの中でやっておりますので、何もいただいておりません。ですから、私はむしろ受益者負担と言って親から何がしかの負担を取っても今はいいのではないかと思っておりますけれども、親からお金を取ってはいけないという思想がずっと根強くありますのでとても大変なことです。
    樋口会長
    今の河野委員の御質問に関しては、お金は取っていらっしゃらない、保育所のシステム上ということでよろしゅうございますか。
    荻浦説明者
    結構でございます。
    樋口会長
    それではほかの方、名木さんに御質問のある方ございませんか。
    名木説明者
    多分私は話し切っていないから御質問は出ないと思うんですけれども、まとめの部分だけ、そうしたら話させていただきます。
     解決への糸口を求めてというところです。21世紀、この年に厚生省と労働省は一体となって厚生労働省となり、これが意味するところは大変大きいと思います。具体的な施策はまだこれからかもしれませんけれども、是非ともうまく機能していただきたい。キーワードは、満2歳までの育児休暇の完全実施と子育て中の親の労働時間の短縮です。子どもをよりよく育て、両立していこうと思ったらということです。これなくして日本の社会は救われないのではないか。何しろ家庭が成り立つ時間がない。経済優先主義では社会が壊れる。デンマークでは、子どもの問題から親の働き方や社会の在り方を問い直した1985年からの取り組みに自分たちの人生に対する真剣な姿勢がうかがわれます。
     これについてのレポートは「働くことも子育ても」ですとか「EUの子育て支援施策」などを見ていただくと紹介されています。デンマークでは、会社は4時に閉まるようです。これは気候の問題もあると思いますが、午後5時には保育園からすべての子どもはいなくなり、夕方の家族そろっての楽しい時間を持てるようにしたと聞きます。ある日本の保育関係者が、保育園でもっと預かってほしいという親からの要求はないのですかとデンマークの保育士に質問したら、子どもに残業をさせる気ですかと返されたそうです。オランダでは1.5稼働施策を実行しまして、人間の社会を考え人々が暮らしよいシステムをつくっている。日本はこれらに学ぶべきです。学ぶべき先は先ほど普光院さんも言われましたけれども、アメリカではないのではないかと私も思います。
     子どもは明るいうちに家に帰るべきと申します。地域に子どもがあふれないと地縁が育ちません。エスクの仕事はここでは言い切れないものがあるのですけれども、とりあえず子どもの生活を守るという意味で、国がファミリーサポートセンターという形にシステムを踏襲していただきましたけれども、今なおまだ基本的に少し違っているように思います。日本を救おうというのはちょっと大げさなんですけれども、子どもたちの未来のために大事に育てる、自然に育てるということを主張しますと、やはり便利というようなこととか、荷物のような預かり方みたいなものは早急になくしていただきたい。
     できないことよりもできると思われることで私が提言したいと思いますのは、大型保育所の設置はやめていただきたいと思います。できるだけ小規模なものをたくさんつくっていただきたい。そうすれば、保育を仕事とする人たちの雇用の機会をつくり出すということにもなると思います。小型の保育所をたくさんつくれば子どもにも目が行き届きますし、また家の近くに保育所があるということにもなりますし、異年齢集団を比較的たやすく構成することができます。そうすることでおじいちゃん、おばあちゃん知恵なども導入しやすくなりますし、とにかく今の地域における子ども集団というのは全く体をなしていないので、これだけは早急に何とかしていただかないととても子供社会を守っているという体裁になっていないというのが私たちの強い要望です。子どもは明るいうちに地域へ帰る。それから、地域での保育の体制をそれぞれ考えていくというのが大切な取り組みじゃないかと思います。
    樋口会長
    大変いい具体的な御提案を含めて、ありがとうございました。時間短縮その他は私どもの方の長時間討論でもいっぱい出てきているところですけれども、会長代理から何かございましたらどうぞ。
    島田会長代理
    エスクのメンバーは今、何人くらいいらっしゃるんですか。
    名木説明者
    現在メンバーというのが私ども会員制でやるしか方法がないものですから、世帯数で数えております。2万4,000世帯くらい、始まりまして13年目くらいに2万を超えました。それ以来、ずっと子どもが減ってきたのもあるでしょうけれども、卒業していく人もいるわけですから。
    島田会長代理
    25年間ぐらいおやりになっているんですか。
    名木説明者
    満27年になろうとしております。
    島田会長代理
    全国的ですか。
    名木説明者
    はい。北海道からとりあえず沖縄まで45都道府県で活動していると思います。それで、それは少ないところもありますから、なくなったり、またできたりというようなことで今、青森県がないとか、そういうことはありますけれども。
    島田会長代理
    今、エスクさんに連絡を取ると名木さんの住所になっているようですけれども。
    名木説明者
    私の家の一部を事務所にしているという関係で1階と地階とで仕事をしておりまして、2階と3階で暮らしておりますから。
    島田会長代理
    2万4,000人の世帯のメンバーですと、事務量とか大変でいらっしゃいますでしょう。
    名木説明者
    はい。ですから、いすといすの背中が当たってしまうような小さな部屋に相談デスクを13卓入れていますので。
    島田会長代理
    会員になるときの会費というのは幾らくらいなんですか。
    名木説明者
    入会金が今1万6,000 円でございます。年間費は1人について1万4,000 円です。
    島田会長代理
    それで、家庭的保育を提供するについてのノウハウみたいなものを。
    名木説明者
    研修会を年間60回くらい全国各地でやっております。これは公開にして皆様お好きな方はいつでもというふうにしておきますと、子ども家庭支援センターの職員の方ですとかふれふれテレホンの窓口の方などもよく参加してくださいます。
    島田会長代理
    それは皆さんニュースレターをもらってやるわけですか。
    名木説明者
    そうですね。このニュースレターも実は財政が乏しいものですから、個々にダイレクトメールで送らないんです。預かり家庭の方で関係者に手渡し、手配りしてもらうというようやり方で、非常に苦労をして伝えている状態になっております。
    樋口会長
    どうもありがとうございました。まだ御質問もたくさんあると思うんですけれども、自由討論の時間も是非欲しいと思いますので、お3人の専門家の方々、本当に今日はお忙しい時間を割いて私どもに大変有益なお話をいただきありがとうございました。これでヒアリングの部分を終了させていただきたいと思います。どうぞごゆっくり御支度をなさって御退席くださいませ。今後とも御発展のほど、また私どもに御協力のほどをよろしくお願いいたします。
     さて、それでは自由討論の前に御説明を伺うのですけれども、第1回の議論について意見をまとめたものを皆様にお配りしてあるかと思いますけれども、事務局から御説明をいただきたいと思います。
    事務局
    男女共同参画会議事務局の総務課長をしております綱木と申します。よろしくお願いいたします。
     お手元に資料2と書かれた資料があると思います。「第1回専門調査会における意見」と題するものでございます。この資料は、去る2月5日の委員の方々の御意見をあくまでも今後御議論を進めていく上での一つの目安としていただければという趣旨で、事務方において7つにグルーピングさせていただいたものでございます。
     1番の「基本的問題認識」として参画会議及び本調査会の基本的な問題認識、そして本調査会の進め方、3番目に「提言の方向性について」、4番目に当該施策全体に対する政府の取り組み方、あるいは姿勢も含めたものといたしまして「政府の施策について」、それから具体的施策を保育に関するものと企業に関するものの2つに分けております。7番目は「その他」でございます。
     時間も限られておりますので、今回内容の御説明は割愛させていただきますが、御参考にしていただければと思います。以上でございます。
    樋口会長
    ありがとうございました。それから、前回の厚生労働省からの御説明のときに委員の方から要求がありました資料について、厚生労働省で御用意いただきましたので御説明いただきたいと思います。
    厚生労働省
    お手元に「都道府県別合計特殊出生率及び出生数」と、それから2枚目が「東京都における合計特殊出生率」、これはご覧いただいたとおりでございます。
     それから、マップを2種類配らせていただいております。大きな地図でございますが、市町村別あるいは都道府県別にどのぐらい待機児がいるか。これもご覧いただければこのとおりなんですが、2枚目以降に市町村別の数字も載せてございます。お気付きだと思うんですが、待機児がおられる市町村でも実は入所者よりも保育所の定員が多いところがあります。要するに、地域の中で定員割れしているのも結構ある。厳密に計算したわけではないんですが、約5割が待機児がいながら定員割れをしている。それで、5割が定員以上に入所して、かつ待機児がいるというのが細かなところでございます。
     それから、これも前回少し申し上げましたが、昭和62年をピークに保育所は減ってまいりました。ただ、このマップは12年4月現在ですが、12年4月から今度の13年4月まで初めて保育所がネットで増えます。中身は197か所の新設があって、142か所の廃止がある。ネットで初めて55、この10年間なかったんですが初めてです。ですから、その結果今度13年の4月に待機児の調査をしますが、それでまたどうなるかというのが若干注目されるところであります。
     それで、都道府県に落としたものもご覧いただければと思いますが、やはりより明らかになるのは東京と大阪、それからその周辺の埼玉、神奈川、それから非常に特別な例でこれは御案内かもしれませんが、右下の沖縄県は特異な存在で、5歳以降はほとんど義務幼稚園化しているということがまず1つあります。それから、認可保育所と無認可の保育所の割合が全国では9割以上認可保育所なんですが、沖縄はほぼ半分ぐらい、要するに非常に無認可が多くかつ待機児が少なくない。お話を聞きますと、沖縄では共稼ぎが一般化し、かつ無認可も子育ての場としてお母さん、お父さんが受け入れながらやってきたという歴史があるということでございます。
    樋口会長
    説明者のどなたかがおっしゃっていましたけれども、待機者の多い地方自治体のヒアリングは何時やるんですか。
    厚生労働省
    150人以上待機児童がいる全市町村について、4月に入ったら順次各県等の御都合を聞きながらやります。それで、個別に本当にプログラムづくりができるのかできないのか。それから、私どもの施策も先ほど普光院さんもおっしゃいましたが、市町村の取り組みは大分改善しているとこの中にもありますので、他の市町村の事例もお示ししながらどういうプログラムができるかについて、待機児童の多い市町村を有する県との意見交換を順次やらせていただきたいと思います。
    樋口会長
    その結果がまとまりそうなのは中間的にでもいいんですけれども、いつごろでしょうか。
    厚生労働省
    幾つか聞いた後、感じぐらいは御報告できると思います。ですから、4月ですから急がせて半ばぐらいにとりあえずの感触が御報告できるかどうか、というところです。
     それから3つだけ、育児休業中の事実だけ御紹介をさせていただきます。育児休業中の場合に保育所入所対象となるか、これは通知で対象になりますということがまず第1点です。
     それから、育児休業終了後の場合、これも通知で書いてありますが、できるだけその育児休業対象の児童とそのお兄さんお姉さんは一緒の保育所に入れなさい。その場合は定員の枠は考えなくて結構ですから、定員枠を超えても一緒の保育所に入れてくださいというような指導を今しています。
     それから失業中の場合ですが、休職活動をやっていればその状態を見ながら十分入所対象となると、こういう通知が一応出ています。ただ、それが現場でどういうふうに取り組まれているかというのはなかなか悩ましい問題ですが、私どもの統一的な通知はそうなっているということです。
    樋口会長
    ありがとうございました。先ほど島田会長代理から6時間のお話については5分でお話いただきましたが、この長時間討論は御日程の都合上御参加できなかった方もいらっしゃるわけですけれども、改めて議論の対象にしたいとか、御欠席の方でこういうことは話に出たんだろうかとか、そういう方がいらっしゃいましたら、あと15分ぐらい延長して、20分ぐらいの間で、その日は出席できなかったけれどもこういう話は出ていなかったんじゃないかとか、あの日に出したんだけれども改めて正式の会議の場で説明したいという方、どうぞ挙手をいただきたいと思います。
    猪口委員
    私は出席しました。今日の普光院さんのお話にもありましたが、懇談会全体が公設民営型の保育所の普及で、それはランニングコストが抑えられるしという前提で合意してしまったようになってますけれども、私は強く公立保育園の拡充も合わせて必要ということを主張しました。今日の普光院さんのお話でもおわかりのとおり、それは地方公務員の給料云々が言われますが、そのときも懇談会で私も申し上げたんですが、なぜ主として女性が雇用されている場における賃金の上昇についてそこまで厳しく議論の対象となり、主として男性がついている職業の場においてはそういう議論が余り聞かれないかということも含めて、議論にやはりジェンダーギャップがあるというふうに感じます。ですから、まとめるときにそういう違う意見もあったと、つまり、公立保育園の役割が非常に重要だという意見もあったとしてほしい。この間、佐々木さんは日本の公立保育園は世界一いいとおっしゃいましたが、私も全く同じ意見なんです。だから、この専門調査会の全員の意見がこういう公設民営型の普及でオーライだというふうな印象に導かれないようにお願いしたいと思います。
     それからもう一つは、受益者負担の話も出まして、そういうこともある程度仕方がないかもしれない。だけど、その場合には保育料の税制控除が必要だという話をしました。税制の問題で何としても保育料は税制控除の対象になるべきだと思いますし、そのことを検討していただきたいことは十分にお願いしておりますので、しっかりと押さえていただきたい。
     もう一つ、今日のお話の中で本人には聞きづらかったのですが、名木さんの話で0歳から1歳の所ですね。おっしゃる主旨は分かりますが、他方で少年犯罪云々と、あるいは虐待の問題とかと結び付けると、実際には専業主婦家庭の行き詰まり感というのがすごく深い根っこにあるでしょう。だから、家庭保育で0歳から1歳は手元でというのは、そうなんだけれども、でもそれだけでは解決しない部分というのがあるということはちょっと押さえなければいけないと思います。以上です。
    樋口会長
    さっき一言言っていただきたかったですね。
    猪口委員
    そうですね。もう時間が押しているかと思ったので。
    岩男委員
    特に日本の場合、3歳児神話にいまだに縛られている人が非常に多いんですね。私は心理学者として非常に責任を感じる部分があるんです。心理学が責任を負わなければいけない。ですから、名木さんのお話で実はよほど申し上げたかったんですけれども、ああいう形で結び付けることがものすごい母親のストレスになり、それが母親を追い詰めているわけですね。
     それともう一つ、是非そういうときに合わせて言わなければいけないのは、例えば0歳から1歳のときにうまくできなかったことも後で、若干時間はかかることもありますが、必ずやりなおすことはできるんですね。ですから、それを同時に強調する視点に立たないとちょっと問題が深刻になり過ぎるようなことがあると思います。
    福武委員
    長時間討論には参加できなかったんですが、大変いいまとめをされていらっしゃるんですけれども、今日の話を聞いて私なりにまとめてみると、3つあると思うんです。今日も保育園の量と質と負担のコストの問題がいろいろありました。これは、例えば総理からも御下問があった国とか自治体とか企業も含めたインフラ整備をどうするかという中で保育園の数をどう増やしていくか、考えていく流れだと思います。また、さっき猪口先生もおっしゃった税制控除の問題とか、あるいは我々も社員にヒアリングしたんですけれどもユニバーサルデザイン、例えばスロープもない駅なんかいっぱいあるわけですね。1つ目はそういったものも含めて、やはり女性がもっともっと子育てしながらできるような制度とハードのインフラ整備の問題。
     2つ目は企業の態度というか、多様な働き方選択できる自由をどのようにきっちりとしていくのかということ。
     3つ目は、社会の意識の変革をどうするんだと。これは男性の子育ての問題とか、あるいは母親の意識の問題もちょっとありました。未熟さの問題ですね。あるいは、家庭のしつけの問題とか教育の問題もあるんでしょうが、そういう意識の問題ですね。この3つをやはり一緒にしないように議論した方がいいと思ったんです。
     それで、今日最初にちょっと言いたいのは、保育園の量と質と負担のコストの問題をどう考えるかというところです。多様な参入がいっぱいあっていいと思います。公立とか私立という認可型の保育園というのは圧倒的に多いわけですね。そこに公設民営という話もありましたけれども、私立というと社福法人というとらえ方が余りにも多過ぎる。そこにやはり民間企業がもっともっと入れるようにする。民間企業が入ったところで、数から見てもそれはマジョリティになることはないわけです。そういう風穴をもっともっと空けるような制度をつくってもらいたい。そのためには、土地建物、施設とサービスを基本的に分離することによってイコールフッティングできる。施設整備費補助は撤廃でしょう。出すなら新しく参入が認められた主体にも同じように出してもらいたい。弊社が三鷹でもやらせていただいたが公が責任を持って民間に委託するやり方だってあるわけですね。そういう土地建物、施設とサービスを分けることこそが1つは質を担保することだというコンセンサスが私はまだできていないと思うんです。
     それからイコールフッティングをするということも、量、あるいはコストの問題、それから質の問題、この3つを同時に解決することなんだということがもっときちんと理解されないと、やはり既得権というのがあって既存の方々だけがいいということになる。公立はそういう点からすると私は猪口委員とは違うんだけれども、もっと減らすべきだと思うんです。公設公営は施設とサービスの分離ができていないからという面があります。公があってもいいんだけれどもあくまでもそれは施設整備、インフラ整備の部分だけで、サービスは民間企業や社福法人に委託をするというプロポーザルコンペティション方式をもっととってもらいたい。
     というのは、公というのは言葉は悪いですけれども、基本的にサービス精神にインセンティブがないんです。サービスをよくしても、この前申し上げたと思うんですけれども、待遇がよくなるとか、あるいは報酬がよくなるとかというインセンティブが構造的に働かないわけですから、私は公がサービスをする施設というのは基本的には置くべきではないと思っているんです。そこはやはり現場の意識の部分だけにどうしても頼ってしまう。施設設置主体とサービス運営主体の分離は是非お願いしたいと思うんです。サービス主体は、民間企業という意識をもっと公共団体にも持ってもらいたい。そうすることによって風穴を空けるんだと。
     御案内のように地方自治法の244条ですか、あれで民間企業に施設整備費を出してはだめだという大きな壁があるわけですね。それを崩すためには八代委員の仰った制度しか今、方法論がないわけです。自治法の問題をきちんとクリアをすることによって民間企業にも、もっともっと進出でき、そこからいろいろなサービスを提供して、いろいろな主体が競争し合って質を高めていくチャンスを与えるという構造をもっとつくっていただきたいなと思うんです。
    樋口会長
    ありがとうございました。
    佐々木委員
    土曜、日曜とどうしても子どもとの時間が大切なものですから残念ながら今回は出られなかったんですけれども、先ほどの福武さんのお話もそうなんですが、本当にいい企業はいろいろあると思うんですが、やはり私は公立の先生がどんどんよくなって一生懸命やってくださっている姿を毎日見ていると、公立の保育園が増えていって、逆に世の中の人が公立保育園はしっかりやっているということを認めていく姿勢ということがすごく重要だろうと思っています。それを元にこの前も出ましたが公立の施設を使って民間の方が夜間を引き継ぐとか、休日を引き継ぐとか、そういった両者のいいところが強調されるのがいいかなと思っています。
     具体的には先ほどの零歳、1歳児の話というのは、これはもっと3歳児、4歳児まで響いてくることだとは思うんですが、私は常々公立の保育園が月曜日から土曜日までフルタイムで働いている人などを順序付けて入園審査をしているシステムに疑問を持っております。ある曜日だけ預けたいとか、あるいは1日の午前中だけ預かってくれれば仕事ができるのにというようなタイプの働き方の女性も多いだろうし。あるいは本当に虐待をしそうになってしまう専業主婦を少しの時間解放することも大切だと思っています。子どもにしても零歳児なりのコミュニティというのがやはりあるのを見てきていますから、そういったことから、親も少し風穴があくということもあるでしょう。公立の保育園が今あるスタイルを継続し、拡大しつつ、新設の保育園の中には必ずしも毎日預けなくてもよくて、週2回の人、3回の人、朝の人、夜の人と組み合わせることで、定員が10人でも実際は30の家庭で預けることができる。こういうことができたら随分と満足度が増え、待機児という意味でも減っていくと思います。
     あとは最後に1点、学童保育についてです。どうしても、私も、自分の子どもが保育園に行っているときには保育園のことばかり頭でいっぱいになるんですが、この前申し上げましたように上の子が小学校に行くに当たり、小学校の保育が5時までで終了しているということに多くの親が強い不満があることを知りました。これが7時までというのは難しいことではないような気がしてなりません。これがすぐにこの4月からでも夏からでも実施できればいいと思います。
     それから、私の家の近くには公立小学校が3つほどありますが、学童保育がある小学校にほとんどの働く家庭が越境というんですか、学校を変えるものですから、私の家の目の前にある、歩いて10秒の小学校は毎年1クラスしかありません。それで、その隣の15分くらい行ったところは学童保育があるものですから、その地域に住んでいる人よりも何十人も回りの地域からそこにわざわざ来る。唯一みんな学童保育だけを求めて来ているようです。
    樋口会長
    それは品川区ですか。
    佐々木委員
    世田谷区です。
    樋口会長
    学区域以外で校区は選べるんですか。
    佐々木委員
    今はどこでも申請をするとほとんど全員が行けるんです。それで、私はそれを見たときに、やはりどの学校も2クラスあればいいのになと思ったんですが、1つの学校は例えば3クラス、4クラスあり、1つの学校は1クラスというと、そこの学校の人気がだんだんなくなっていって。私はそれが理由で結局私立とかいろいろ受けたりして、目の前に学校があるのにもかかわらず行かれなくなってしまったという悲しい体験を今回しましたので、どの学校にも学童保育があれば随分と変わってくると思いました。
    樋口会長
    御意見が各委員さんで違うのは当然だと思いますし、今、結論を出すことではなくて、結論ではなくてもいろいろな御意見を闘わせながらいずれどこかに集約するとか、最終的には少数意見と書いたりすることもあり得るんだろうと思います。
    河野委員
    先ほどの女性の個人にとってなんですが、やはり学生時代からライフ・アンド・キャリア・プランを持つですとか、あとは例えば組合をうまく巻き込んでいただいて、企業に入って年齢で例えば25歳や28歳のときに、今後のキャリアとライフをデザインするという、これは教育というより情報提供を一度することでかなりの方が自分の責任で保育園や幼稚園を、それぞれの視点で価値観で選べると思うんです。ですので、サービスが多様化する中で、社会人の教育としてライフビジョン、キャリアビジョンというのを考えなさい、その中で育児ビジョンも入れなさいというようなことをどこかが示唆していただくということはとても重要だと思います。
     もう一点は、産んだ女性たちの今後ですけれども、これは私がすごく心配していることなんですが、企業の中で40代、50代のキャリアモデルはありません。それで、もしも両立支援していただいた結果残ったとしたら、私は第3のリストラくらいになってしまう可能性もあるかと思います。第1のリストラが50代のホワイトカラーでした。第2がバブル世代の30代の大量採用時代です。それで今、実は起こっているのが40代の女性たちです。別に子どもがいようがいまいが関係なく、キャリア開発していないので仕事がないんです。ですので、両立支援はもちろん重要なんだけれども、その先にちゃんと人材として活躍できるということが必要で、これはポジティブアクションの見地だと思います。ポジティブアクションと両立支援というのは違うとは言っても、私は結果的に重なる部分は大きいと思っていまして、やはり必要な人材にとって企業は何でもしますから、その辺りをもう少し動かすことで企業の問題の方も少し解決してくるのではないかと思います。
     それから、コース別人事の多様化などと一言で言っているんですが、これは一つひとつについて、レベルとボリュームが違うのですが、保育全体ぐらいの中身があるので、見え方として例えば外に出たときにもっと専門的な用語をきちんと並べるなどしておかないと、余り企業は動いてくれないかなという気がいたしました。以上です。
    樋口会長
    櫻井委員、いかがでしょうか。
    櫻井委員
    結構でございます。
    樋口会長
    それでは、田尻委員どうぞ。
    田尻委員
    この間、6時間かなり集中的に話しましたので割と満足しております。企業をやはり我々は変えていかなければいけないのではないかという視点を皆さんと共有したいと思います。以上です。
    樋口会長
    それから、長時間討論で申し上げたんですけれども、公式な会議での意見になっておりませんが、広報の意味も込めましてこれから皆様からの両立支援のための具体的な意見提言を募集したいと思うんですけれども、この会で御承認いただけますでしょうか。

    (拍手起こる)

    坂東局長
    その案を今、配らせていただきます。

    (ペーパー配布)

    猪口委員
    それでは、その間にもう一つよろしいですか。
     先ほど総理もこうしたらいいということがわかっていてもできないというようなこともおっしゃったんですけれども、この専門調査会は男女共同参画会議の下にあるわけですね。それで、会議になった非常にいいメリットといいますのは、ほかの大臣に意見をすることができるという新しい体制なんですね。ですから、現状を嘆くだけではなく、そしてそれは山のように動かないものだと考えないで、しっかりと大臣に意見をすることが重要だと思うんです。そういう観点から煮詰めていくべきだと思います。要するに、現状を嘆くのではなくて変えるということですべて考えないと、一体何のためにこういう作業をやっているのかという感じがするんです。つまり、ここに出ている問題点は大抵いろいろなところで言われているのですが、今まで変えることができなかったもので、私たちは変える立場にあるんだという認識をみんな持たなければならないと思うんですね。
     例えば今日のヒアリングでも出てきている中で、すべての学校が学童保育をやってもらえればいいという話がありました。あるいは私が申し上げていることで、学童自習室という形で教育系で放課後児童の受け皿、あるいは土曜児童の受け皿とかというものを学校内に正式に設けるべきで、すべての子どもが行くのは学校だから、そこにすべての子供の放課後の受け皿があるようにしていただき、そして福祉系の学童保育も合わせて地域で両立して選択の余地があればいいと思うのです。そういうことであれば、男女共同参画会議として文部科学大臣に意見をするべきだと思うのです。そして、もしそれができないというのであれば理由をたずね公開するべきだと思うんです。そのようにして、学校側の協力をこの際引き出すべきだと思うのです。それがこの4月に間に合えば非常にいいんですけれども、ちょっと無理なので、少なくとも来年の4月からは小学校に上がったすべての子どもは学校の中で安心して、少なくとも5時まで、できれば6時ぐらいまで場所があるということを実現したいですね。さっき意見がありましたように、ただ好きな子が来て遊んでいるというやり方ではなくて、出席を取って、来ているか確認して、管理した時間が送れるという形に持っていくことを決意してやれば、やはり時代が変わったということをすべての人が実感できる。すべての人の子どもは学校に行っているわけですから、最大多数の人々がその変化を実感できるんだと思います。
     重要なことはほかの大臣にこれだけはやってほしいということの協力を要請するポイントをどこに絞っていくかということなんです。
     それから、例えば先ほど言った税制のことです。これは財務大臣に保育料が控除にならないとすれば理由は何か、そしてそれをできないと言うのであればどういう根拠でそうなのかを問うべきなんですね。そして、これは控除にならないのは男女共同参画社会の精神に反する意見を会議として言いたいと思うのです。
     ですから、会議の方でこれは引き取って大臣に意見をしますので、今までは官僚の壁が多くてできなかったことも、これからはその大臣に意見をしてこのポイントだけはやってくれという方向に持っていきたいので、そういうことをまとめていただければと思います。
    樋口会長
    是非よろしくお願いしたいと思っております。
     それでは、本当に今日はいろいろハプニングもございましたけれども、本当に公式な会議でありながらハプニングが出てくるということは大変楽しいことでございまして、これからもますます皆様の活発な御意見をいただきたいと思います。今日はこういうことで終わらせていただきますが、事務局から次回とかその他について何かございますか。
    坂東局長
    事務局の方としましては、今日はこの意見募集について会長の方からもお話がありましたが、例えば福武委員のところのネットワークですとか、河野委員のところのネットワークですとか、あるいはまた教育研究所のところですとか、いろいろな手段でまた広報をしていただければと思います。田尻委員のところも育児連の方の意見などにもちょっと声をかけていただけるとありがたいと思います。
     次回は3月16日午前10時から12時にこの同じ場所です。今日は本当にイレギュラーな早い時間で申し訳ありませんでした。
    樋口会長
    それでは、どうもありがとうございました。またこの次よろしくお願いします。

(以上)