基本問題・計画専門調査会健康WG

日時:平成21年12月9日(水) 15:00~17:00
場所:内閣府本府5階特別会議室

  1. 出席者
    主査
    石川 哲也 神戸大学大学院教授
    委員
    羽入 佐和子 お茶の水女子大学学長
  2. 議事次第
    • (1)論点例について
    • (2)有識者ヒアリング
        母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院産婦人科部長 安達知子 氏

(配布資料)

資料1
健康WGにおける論点(案) [PDF形式:206KB]別ウインドウで開きます
資料2
基本問題・計画専門調査会健康ワーキング・グループ(第1回)議事要旨(案)
資料3
「周産期医療サービスの現状と課題
母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院産婦人科部長 安達 知子氏
資料4
男女共同参画に関する取組と現状 [PDF形式:1167KB]別ウインドウで開きます
  1. 議事の概要

    初めに、WGの委員から事前に伺った意見を盛り込んだ論点例について事務局より説明を行った後、意見交換を行った。
    その後、母子愛育会総合母子保健センター愛育病院産婦人科部長 安達知子氏より、ご講義を頂き、意見交換を行った。

(質疑・意見交換の概要)

【ライフコースを念頭に置いた健康支援】

  • 男女が、性差に応じて適切に自己管理できるような健康教育が学校の中で行われているのかが課題。

【安心・安全な出産等の環境整備の充実】

  • 産科医・小児科医の不足については、定期的に把握した上で、女性医師支援も考えていくべき。

【数値目標の設定】

  • 学校教育の中で、HIV/エイズや薬物などを指導する大枠の時間は学習指導要領等で定められているが、指導内容のレベルを高めることができるかなども一つの数値目標として検討してみてはどうか。
  • 性差医療に関する拠点病院の数やがん検診の受診率など数値化できるものは設定し、具体的な目標として捉えていくことも重要。

【その他】

  • 投薬中の子どもが安心して学校内で教育を受けられるよう、アメリカの事例を参考にしつつ、養護教員への研修を行うなど対応策を検討してみてはどうか。

【各WG共通論点】

  • 風土の改革・機運の醸成、広報・意識啓発
  • HIV/エイズ関係の啓発教材を単に配布するだけではなく、教育資料としてどのように取り組むかなど、組織的な(統一的な)体制づくりが重要。

(ヒアリングの概要)

【妊娠・分娩の状況】

  • 高齢妊娠が増加し続けているが、高血圧や糖代謝異常などの合併も増え、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、子宮筋腫や悪性腫瘍合併などのハイリスク妊娠が増加。
  • 現在、日本は諸外国と比べて、周産期死亡率や妊産婦死亡率が低いことから、妊娠・分娩は安全であるという風潮が支配しており、社会における妊娠・分娩へのリスクの理解は不十分。
  • 安全性はもちろん、快適な分娩への要求も患者から多く、様々な要求や要請、場合によってはクレームが頻繁に発生し、このことが、医療関係者の精神的疲弊を招くとともに、モチベーションの低下につながる一因となっている。
  • 全診療科の医師数は増加(小児科も増加)しているが、産婦人科は減少。男女別医師数をみると、男性は減少し、女性は増加。女性医師の継続就労の支援を行わなければ、周産期医療は成り立たなくなるといえるだろう。

【女性医師の就労支援】

  • 妊娠・出産・育児中の女性医師にとって働きやすい環境づくりのため、まずは、労働時間の明確化や常勤医と非常勤医との対価が逆転していないかなど全体の勤務環境の見直しを行うこと。2点目としては、院内保育施設の整備など女性医師への具体的な支援策の実施、3点目として、好事例を発信していくこと。
  • 女性医師が短時間勤務でも評価されるシステムの構築や柔軟な勤務形態の実現により、仕事のモチベーションを高く保つことができるような環境整備が必要。
  • 円滑に職場復帰できるよう、育休期間中に、職場の状況などを定期的に情報提供できるようなシステムも必要。
  • メンター制度の設定に加え、子育てを経験した女性医師など身近なロールモデルの存在や、子育て中の夫婦を集めての交流会を定期的に開催するのも効果的。
  • 働く意識が高く医師になっている方が多いため、育休期間を短期で切り上げて現場復帰を図れるような体制作りも必要。

【医療事故の減少方策】

  • 15年前と比較して、出生数の減少率(8%)よりも、分娩取扱い施設数のほうが減少率は高く(診療所34%、病院37%)なっているため、1施設当たりの分娩取扱件数は増加し、そこで働く医師は過重労働になっているといえる。これはまた、医療訴訟や医療事故が増加する原因にもつながり、負のスパイラルになっている。
  • 周産期基幹施設の整備をはじめ、女性医師の離職を防ぐことや助産師の充足など人材の確保を行うことが、最大のリスクマネージメント。
  • 医療事故を減少させていくためには、患者や家族への妊娠・分娩へのリスクについての意識啓発や、医師・助産師などの医療スタッフの充実と連携強化が鍵となる。
  • リスクごとの症例取扱いに関して、施設の機能分担を明確化するため、妊産婦リスクスコアを活用するのも重要。(このリスクスコアは、妊婦本人が自己評価できることから、妊婦、医療機関のダブルチェックのもと、今後の医療施設の機能別、取り扱う妊娠の振り分けに有効と考えられる。)
  • これからの周産期医療システムとして重要なのは、ハイリスクの集約化・重点化を行っていくこと。つまり、患者をハイリスクと、低リスクから中等度リスクに分け、それぞれの分娩を取り扱う施設と、低から中等度リスク妊婦の健診だけを行う施設の3段階に分けて、適切に連携しながら施設ごとに機能分担を図っていくことが求められている。