監視・影響調査専門調査会(第31回)議事要旨

  • 日時: 平成20年10月3日(金) 9:30~12:00
  • 場所: 内閣府5階特別会議室

(開催要領)

  1. 出席委員:
    • 監視・影響調査専門調査会:
    • 鹿嶋会長
    • 植本委員
    • 大沢委員
    • 勝又委員
    • 袖井委員
    • 橘木委員
    • 畠中委員
    • 山口委員
    • 横田委員
    • 生活困難を抱える男女に関する検討会:
    • 阿部委員
    • 白波瀬委員
    • 湯澤委員
    • ※生活困難を抱える男女に関する検討会と合同開催
  2. 議題
    • (1) 橘木委員発表 「深刻な日本の貧困問題」
    • (2) 阿部委員発表 「日本における貧困の実態」
    • (3) これまでの意見と当面の作業について
  3. 議事要旨

■橘木委員発表 「深刻な日本の貧困問題」
・ 現代の日本の主な貧困層と、また年金、生活保護、最低賃金制度などの社会保障制度の現状と問題点について説明。

【発表を踏まえての意見交換】

  • 日本において低所得者を考えるときは、家族の変容の影響が非常に大きい。地方から東京への労働移動が高度経済成長期以降非常に特徴的な事象だったが、地方での就職口の少なさから来るこうした変化が、家族の変容、世代間の別居を促進した側面もある。
  • 公的年金制度が貧困の緩和に大きな役割を果たしているという指摘だが、今の年金制度は機能していても、将来的に見て制度を変えていく必要があるのではないか。また、パートタイマーの低賃金の問題において、最低賃金を上げるのもひとつの有効な手段だが、そもそもパートタイマーの賃金は何故こんなに安いのか、という問題提起が必要ではないか。
    → 公的年金制度は現在機能しているが、次世代でも機能するかどうかはわからない。日本は最低賃金が非常に低いので、その底上げがパートタイマーの所得増加にも繋がると考える。
  • パート労働者の低賃金が女性や若者の貧困の背景にある。同一価値労働・同一賃金の原則が法律に規定されていないといった、法律的あるいは制度的制約についても言及すべき。主婦や若者は低賃金でも生活が成り立つという前提がこれまではあったが、この論理ももはや通用しない。

■阿部委員発表 「日本における貧困の実態について」
・ 日本の貧困の実態について、国際比較データや男女別・世帯別・配偶関係別・年齢別の貧困率の分析結果を解説。

【発表を踏まえての意見交換】

  • この分析に、ホームレスのデータは入っているか。
    → この分析には入っていないが、厚生労働省は国際的にも珍しいホームレスに対する調査を実施している。ただ日本のホームレスの定義は野宿者・路上生活者のみと狭い。欧米では友人宅に転がり込んでいる人なども住居弱者としてホームレスに含まれるため、調査が極めて困難。
  • 貧困について先進国の中での日本的特徴を上げるとしたらどういうものか。
    → 高齢者が多いことと、ワーキングプアが多いこと。若者は外国でも貧困層を多く占める。
  • 日本の場合は就労率を上げても貧困対策にならないと言うことか。
    → 日本の母子世帯の母の就労率は諸外国と比べてとても高い。欧米諸国では、両親共稼ぎが子どもの貧困対策として非常に有効であるので、母の就労を推奨しているが、日本では母の就労による貧困対策の効果が薄い。
  • 日本では子どもの世帯で再分配後に不平等が拡大しているが理由は何か。
    → 子ども世帯への負担が多く給付が少ないということ。再分配の国際比較には消費税が入っていないため、消費税を入れると、日本の他にも逆転する国があるかもしれない。勤労世帯の負担が大きいのはある程度やむを得ないが、他国では低所得世帯の子どもにはもう少し手厚い。

■事務局から「専門調査会・検討会においてこれまでに出された意見(要旨)」を説明。

【発表を踏まえての意見交換】

  • 女性の貧困の問題は、欧米では大きな政策テーマである。日本では、これまであまり言及されてこなかった女性の貧困を大きく打ち出すことが重要ではないか。
  • 全国と地域、また農林漁業などの分野について、ジェンダーの視点から目配りをして施策提言を行うべき。
  • これまであまり言及されていない女性の資産について調査ができればよい。高齢者の経済状態はフローだけでは測れない。
  • 父子世帯については既存の調査が乏しいので、支援グループのヒアリングが必要。
  • いわゆる障害者以外に、健康を害して職を失い貧困に陥ったような層について、ターゲットを絞って支援を手厚くし就労へ繋ぐといったことも可能ではないか。女性に視点を絞るなら産前産後の保護の程度も視点に含めてよい。
  • 現在雇用保険は正社員を中心として設計されており、適用されない人も多い。経済財政諮問会議の労働市場改革専門調査会でも生活保護と雇用保険の不整合について指摘がなされている。
  • 今の日本では親世代が子ども世代に経済的な援助を行うというマイナスの所得移転が行われており、そうした現象は韓国と日本だけであるとの指摘がある。親の支援で顕在化していない潜在的困窮者がいると思われるが、そのあたりも深めてはどうか。
  • バングラデシュではグラミンバンクが出てくるまで、女性は返済能力がないとみなされ融資を受けられなかった。日本においても、女性が制度面も含めて様々に差別され、女性を含む家庭・家族が貧困に陥るという問題を明らかにすべき。
  • 介護の担い手が主に女性であることから、その負担のため女性は働くことができないといった状況を的確に把握して提言に結びつけたい。
  • 資料3「専門調査会・検討会においてこれまでに出された意見(要旨)」に「男は働くべきもの、女は結婚すればよい、という考え方が背景にあることをどう考えるか」という記述があるが、そういう考え方が背景にあることがおかしい、とはっきりと打ち出すべき。
  • 論点整理に向けて、概念図が必要ではないか。
  • いきなり生活困難の定義からはじめるのではなく、テーマそのものを貧困として、では貧困を生じる生活困難要素は何か、と展開した方がわかりやすいのではないか。
  • 男女共同参画基本法が指摘する社会保障政策における性の中立性への課題が分析結果から導かれ、施策提言へつながるような調査が望ましい。
  • 母子家庭へのヒアリングにおいて、DV等によって母子家庭が生じる要因分析にも言及して、家庭内暴力の連鎖が貧困の連鎖と深く結びついているといった指摘ができないか。
  • 女性の犯罪等、貧困が犯罪を生み出すという問題をどう考えるか。
  • 現行制度が社会の変化に対応しておらず、非正規社員や転職が多い人など、これまでの雇用のあり方から外れた人が貧困に陥っていると感じているが、その背後にある家族の変化をひとつのテーマとしたい。家族がその機能を失った分それに替わるネットワークが必要。その在り方を考えていく必要がある。

(以上)