監視・影響調査専門調査会(第39回)議事録

  • 日時: 平成21年7月31日(金) 15:00~17:33
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席委員:
    • 監視・影響調査専門調査会:
    • 鹿嶋会長
    • 大沢委員
    • 勝又委員
    • 神田委員
    • 神野委員
    • 潮谷委員
    • 袖井委員
    • 畠中委員
    • 山谷委員
    • 横田委員
    • 生活困難を抱える男女に関する検討会:
    • 阿部委員
    • 小杉委員
    • 桜井委員
    • 白波瀬委員
    • ※生活困難を抱える男女に関する検討会と合同開催
  2. 議題
    • (1) 平成20年(度)男女共同参画社会の形成の促進に関する施策についての苦情内容等及び男女共同参画に関する人権侵害事案の被害者の救済制度等の把握について
    • (2) 就業構造基本調査 国民生活基礎調査 特別集計結果報告
    • (3) 「新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女について」最終報告に向けた論点のとりまとめ
  3. 議事録
鹿嶋会長
本日は皆さんお忙しい中、ありがとうございました。ただいまから、男女共同参画会議監視・影響調査専門調査会の第39回会合及び第14回生活困難を抱える男女に関する検討会を開催させていただきます。本日は30分ふだんより長いですので、どうぞよろしくお願いいたします。
 議題が3つございます。1つは、「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策についての苦情内容等及び人権侵害事案の被害者の救済制度等の把握について」の報告と質疑、2番目が、「就業構造基本調査及び国民生活基礎調査 特別集計結果報告」、そして最後が「新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女について」の最終報告に向けての論点とりまとめ案についての審議を行います。
 初めに、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策についての苦情内容等及び人権侵害事案の処理状況について、事務局から報告をお願いします。
日原調査官
それでは、お手元の資料1-1-1に基づきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。
 平成20年度の状況でございますが、これからお話しします内容は大きく2つに分かれておりまして、その資料にございますように「Ⅰ 男女共同参画社会の形成の促進に関する施策についての苦情内容等について」が、1つ目、大きな部分でございます。
 もう一点は、同じく「Ⅱ 男女共同参画に関する人権侵害事案の被害者の救済制度等の把握について」、これが2点目でございます。
 1点目の苦情内容等のほうですが、これは総務省の行政相談制度、各府省の行政相談窓口など、都道府県や政令指定都市の苦情処理機関などに寄せられたものを対象としております。対象となりますのは、2にございますように、法律や条例に基づく制度、公費を投入する施策はもちろんでありますけれども、そういった制度や施策の運用を含む業務運営のあり方など大変広い範囲にわたっております。
 把握したものは、平成20年度中に受け付けまたは処理を行ったものです。昨年この調査会でいただきましたご指摘を踏まえて、平成20年度中に受け付けて処理を行ったものをご紹介しております。
 それから、次の人権侵害事案のほうですが、これは大きく分けまして法務省の人権擁護機関の取組、この中で把握されたものと、都道府県・政令指定都市における人権侵害被害者の救済体制、この中で把握をされた申し出や相談で把握したものに分かれております。
 次の資料1-1-2にまいりまして、ご参考までに行政相談委員、人権擁護委員に占める女性の割合の推移、これを掲げております。このような形でご報告を始めました平成15年度から見ますと、その幅には違いがございますけれども、どちらも女性の割合が上がる傾向にあるということでございます。
 資料1-2にまいりまして、苦情処理件数の状況をまずご説明したいと思います。
 まず「1 国に寄せられた苦情処理件数」でございますが、合計で総務省の行政相談と各省庁の窓口を合せまして、合計で309件ということになっております。その推移が下にまとめてありますけれども、平成17年度、18年度につきましては、国家公務員の育児や介護のための短時間勤務制度の創設、これに関するものが大変多うございましたので、件数が大変上がっております。それから、平成19年度につきましても、国立女性教育会館の存続につきましてのご意見がございまして、比較的多かったわけですけれども、20年度につきましては、こういう特定の案件がなかったということで309件ということになっております。
 1から13までのカテゴリー別に分けてありますが、特に多かったものでいくつかご紹介しますと、2の「男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革」、これが80件ということで、50件を超えております。これはいただいた苦情の内容が非常に多岐にわたるわけですけれども、大ざっぱに分けて、ちょっと多かったものをご紹介させていただきますと、これは本当に審議が始まった最初の段階にいただいたものでございますので、今のご意見というわけではないのですけれども、この監視・影響調査の「新たな経済社会の潮流における生活困難を抱える男女」、この調査の中で、女性中心ということではなくて、例えば父子家庭の問題であるとか、そういう男性の問題も取り上げてほしいといったようなご意見も複数ございました。
 それから、同じように50件を超えて多かったものに7の「女性に対するあらゆる暴力の根絶」というものがございますけれども、この中で比較的多かったものをご紹介しますと、1つはDVの被害当事者の方に対する支援の拡充ということで、これはそれぞれの方の、例えば個人情報の保護の徹底であるとか、そういったようなそれぞれの方のご要望から施策全体にわたるようなもの。例えば法改正によって市町村の役割が強化されておりますが、市町村に対して予算を伴う支援が必要ではないかといったような制度全体に対するご意見もございましたし、一方で被害者の配偶者の方から、十分な調査を行わずに加害者として扱われたといったようなご意見、こういったものも複数ございました。
 続きまして、次のページにまいりまして、都道府県・政令指定都市に寄せられた苦情処理件数、これも平成20年度でございますが、そちらをお話ししたいと思います。全部で64件、複数のカテゴリーに該当するものを複数カウントしますと、65件という形になっております。推移で見ますと、近年は大体60件程度で推移しているということでございます。これは平成20年度からは、これは数件程度しか差は出ないのですけれども、トレンドを正確に見ていくことで、この年度において受け付けて、かつ処理を行った苦情の件数を計上していくという取扱いにしていきたいと思っております。
 その苦情処理体制の整備の状況でございますけれども、3の(1)にございますように、都道府県・政令指定都市65自治体すべてで何らかの体制が整備をされておりまして、庁内で対応されているものが32で一番多いのですけれども、26の自治体では第三者機関を取り入れられているということで、そのうちの23の自治体では男女共同参画に限る第三者機関が設けられているということでございます。
 それから、今年度からこの調査結果を少しでも実際の苦情処理の対応に役立つ資料にしたいと思いまして、(5)にございますが、苦情処理制度活用促進のためにどのような取組をされていますかということも併せて各地方公共団体に伺っております。それで拝見しますと、そこの最初の2つの「・」にありますように、県のHP、広報誌といったような通常の広報のためのツール、これを使って広報していますというお答えが多かったのですが、例えば福島県では、男女センターのHPから申出書式をダウンロードできるようにしているというご報告ですとか、あるいは電子申請制度をされているとか、時刻表のカードやミニカレンダーに掲載して配布をしているといったようなお答えもいただいております。これは資料、後のほうになりますけれども、参考資料3に各都道府県・政令指定都市からいただいた回答をまとめております。後ほどごらんいただければと思います。
 それから、資料1-4-1にまいりまして、次は「人権侵害被害における被害者救済に関する処理状況」のほうをお話しさせていただきたいと思います。
 まず1の(1)法務省の人権擁護機関が取り扱った女性に関する人権相談の件数ですが、これは法務省が地方法務局や法務局に設けておられる専用の電話相談の窓口、「女性の人権ホットライン」でございますが、それで受けられた件数。それから、「女性を被害者とする人権相談の件数」、「人権侵犯事件数」と分けております。
 それぞれの詳細については、資料1-5-1以降にそれぞれの窓口の状況をまとめてございますのでごらんいただければと思いますけれども、女性の人権ホットラインについては、配偶者からの暴力、それに相当するような区分が存在しないのですが、それ以外の人権相談、人権侵犯の事件数などを見ますと、そこにございますように、夫から妻への暴力に関するものが最も多くなっております。
 それから、都道府県・政令指定都市における相談件数の内訳、(2)でございますが、これも配偶者からの暴力が最も多くなっております。この「2 都道府県・政令指定都市の人権侵害に関する相談・被害者救済の体制の整備状況」ですが、これについても、都道府県・政令指定都市65自治体すべてが何らかの体制等を整備しておられまして、主なものではこういった事案の申立制度、配偶者暴力相談支援センター、女性相談所といったような窓口を設けられております。
 処理体制の累計で見ますと、庁内で対応されているものが一番多くなっておりますけれども、これは重複している部分もございます。
 それから、先ほどより配偶者からの暴力に関するご相談が非常に多いという話をさせていただきましたので、それぞれの窓口の相談件数の推移をまとめたらどのようになるか。これもこういうものが必要ではないかということで、去年ご報告した際にご指摘をいただいたものですが、これは資料1-4-2に掲げております。人権相談件数の中のDV相談の件数、人権侵犯件数の中のDV案件数、配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数、男女センターにおけるもの、これを掲げておりまして、それぞれ対象となる相談の定義が若干違っておりますので、合計を出したりするような性格のものではないのですけれども、ご参考までに1つの表にまとめましたものが下にありますグラフになっております。
 見ていただきますと、配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数が非常に上がってきておりまして、男女センターにおける相談件数、これもとり始めたのが平成18年度からの集計ですので短期間ですけれども、これも18年度から見ますと大分増えているという状況になっております。
 簡単でございますが、以上でございます。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 苦情処理機関については、あまりうまく機能してないのではないかといったような指摘もあるのですけれども、今回の報告で見る限りは、そんなに増えているわけではないけど、大体例年並みの推移で来ているということが言えると思います。特に苦情処理と人権擁護委員を中心にしたいわゆる人権侵害を足しますと、苦情処理が少ないというのは仕方がないと思うのですが、これは1つは、国民が男女共同参画行政に対してどの程度関心持つかという1つの私はバロメーターと思っています。それは一定数で推移してきている。しかも都道府県で見ますと、第三者機関まで通す事案が合計で13件くらい来ています。これなども第三者機関まで通して徹底的に問題の解決を図ろうといった意識のあらわれかと思いますけれども、ご意見とか質問があれば、どうぞご自由にお聞かせいただけますか。
横田委員
あまり本質的ではないのですが、ちょっとわからないのでご質問させていただきますが、資料1-2の国に寄せられた苦情処理件数、これはもちろんいろいろな苦情が寄せられているうちの、特に男女共同参画に関連しているものを件数として挙げられたわけですね。その中で、11の「地球社会の『平等・開発・平和』への貢献」というのが、どういう苦情をピックアップしたのかちょっとわかりにくい。私はこういう設問をすること自体はいいと思っているのですが、この表の中で、どういう位置づけなのかを説明していただけるとありがたいと思います。
 同じ項目は、次のページの都道府県のほうにも入っておりますが、そちらは0となっておりますので、その辺、ご説明いただけますか。
日原調査官
この項目は、男女共同参画基本計画のカテゴリーに分けて設けております。この中で比較的多かったものを紹介をさせていただきますと、女子差別撤廃条約の選択議定書の早急な批准、こういったものが一番多い要望ということで、条約関連のご要望といったものがこの中に含まれております。
横田委員
意味はよくわかりました。そこで私の意見ですけれども、そうだとすると、この表現はずれているような気がするのですね。これは日本から国際社会への貢献というイメージを与えられて、その場合に、男女共同参画とどう関連するのかわかりにくいのです。今のご説明があればここに入っていることの意味がよくわかるのですね。それの趣旨は、国際的な活動との関連で日本に問題があるというところですね。女子差別撤廃条約の選択議定書批准というのは前から女性団体がずっと主張してこられていることですから、これは大事な点ですので、それをわかりやすいように書いていただいたほうがいいのではないかと思います。
日原調査官
今後のこういった苦情の状況をご報告する際、勉強させていただきたいと思います。ありがとうございます。
鹿嶋会長
計画のタイトルなんじゃないの、単に。要するにタイトルを分類して、今、12ありますね。もう一つは推進だから13。いわゆる重点項目の中のタイトルを列挙したのですね。これはもう少し砕いたほうがいいですか。
横田委員
タイトルはそのままでいいのですが、ちょっと「※」かなんかをつけて、一言説明があるとわかりやすい、それだけです。
潮谷委員
苦情処理件数のところの中で、専従担当者数が報告されておりますけれど。
鹿嶋会長
資料の何ページでしょうか。
潮谷委員
資料1-2の2枚目のところです。ここのところの(3)専従担当者数が出ていますけれど、これは平成15年からとり始められた後、この体制は固定的なのか、あるいは常勤が増えてきているのか、そこら辺のことがわかればお教え願いたいですが。
日原調査官
平成15年度からの推移ということで申し上げますと、すぐご報告できる準備がなくて申し訳ございません。ただ、昨年度と比べますとほとんど変化がないという状況でございます。最初、ご質問いただいた点は追ってまたご報告させていただきたいと思います。
潮谷委員
なぜ質問したかと申し上げますと、苦情総件数が、15年、16年まで割に高いですね。それと17年以降は比較的横ばいになっている。こういうところが専門性とかかわりあるのかどうなのか、そこらあたりのこともとても大きい要素になっていくと思いますので伺いました。
鹿嶋会長
ありがとうございます。桜井委員はどうですか。15年は100件あったんだけれども、今、60件、この60件というのは、17年度から大体同じような数字で推移していますけれども、どういうふうに見ますか。
桜井委員
私が注目したのは資料1-3でございます。そうしますと、都道府県・政令市で、処理体制を持っている、「○」が付いてはいますが、右側に件数が上がっているかというとない県が多いわけですよね。ですからこういったところは、制度、仕組みはあるけれども機能してないと考えたほうがいいかなと思っていますが、その辺がどうなのかということと、それで、横浜を見ましたら、2ページ目なのですが、常勤の担当者が2人いて、これは男女共同参画推進協会、私どものところが請け負っているんですね。しかし、これが0というか、何も出てこないというのがどういうとり方なのかよくわからなくて、私は今日は、私どもの事業報告書、昨年度のを持ってきたのですが、この中で市にも報告しているこの苦情処理の件数は8件挙がっているんですね。横浜市がどういうふうになったのか、これはこちらの問題ですので、ちゃんと調べなければいけないから、ですからブランクになってしまっているのが機能していないのか、統計のとり方か何かで落ちてしまったのか、その辺を知りたいなと思いました。
日原調査官
この件数に非常にバラツキがあるということは私どもも気になっておりまして、悉皆的な調査ではないのですけれども、調査課の職員が地方におじゃまする際に、この点は、今年度は特に聞いてこようということでいろいろご意見を伺ってまいりました。それで全部伺えているわけではないんですけれども、大きく分けますと4つありまして、1つは、相談自体が少ないですよというご意見もありましたし、それからありましたのは、特に第三者機関を設けていらっしゃるところだと思うのですけれども、第三者機関にかけるところまではしたくはないんだけれども、でも行政庁には苦情は言いたいというものはたくさん来ていますと。ただ、この調査には統計の連続性という点から第三者機関にかけたものを挙げていますというご意見と、それから、苦情はあるんだろうけれども、直接の担当部局のところに苦情が行って、男女共同参画のところには来てないのではないかというご意見も、3つ目にありました。
 4つ目は、少しご意見の内容は、今の3つとは質が違うのですけれども、何かあったときに最後にきちんと意見を聞ける場として第三者機関を設けていて、設けていること自体、そういう場があること自体すごく大事だと思っているので、件数だけであまりあれこれコメントされるのはちょっとどうかという、そういったようなご意見も伺っています。
 1点目については、ぜひ件数がこちらにもわかるような形にしたいと思いまして、今回、件数をとるときに、第三者機関にかけるまでいかなくても、その件数を把握していらっしゃるところは可能な限りご報告をお願いできればという形にしたのですけれども、年度途中のお願いだったこともあって、全部徹底できているという状況ではございません。
 以上でございます。
桜井委員
横浜で言うと、第三者機関にかけるまでいかないというのは、電話で受けて相談だけ受けたのは1年間で106件あるんですね。その中で、この制度にのって、月1回の会の先生とか、何人かの弁護士さんとか、行政相談委員とか、そういった方たちが毎月1回調査会というのをやってくれているのですけど、そこにかけたものが年間8回なんですね。ですから、いずれも出てこないので、横浜市困ったなというのか、調査の仕方なのかわかりませんけれども、その辺をもう少し、私も言わなければいけないかなと。
鹿嶋会長
ただ、相談と第三者機関は、相談は匿名でもいいけれども、第三者機関というのは実名と住所から全部個人情報出さなくてはならないから、それでためらう人が結構いるわけで、そこで取り下げますというのがかなりある。横浜もその格差は多分そういうことだと思う。
桜井委員
そのとおりなんです。それにしてもどっちも出てこない。
鹿嶋会長
あなたのところが格差があるというのはおかしい。そこは知らないけど。
桜井委員
そのブランクをどういうふうに読むか、もう一回やらなければいけないかなと。
日原調査官
いろいろまた個別に伺ったりして考えてみたいと思います。
鹿嶋会長
ほかにご意見とか質問ありますか。よろしいですか。
 それでは次の議題に行きます。どうもありがとうございました。
 次は、生活困難を抱える男女に関する検討会で進めている就業構造基本調査、国民生活基礎調査の特別集計について、ご担当くださっている白波瀬委員、小杉委員、阿部委員からご報告をお願いしたいと思います。質疑の時間はすべてのご発表を伺った後でまとめて行います。
 初めに、白波瀬委員にお願いします。どうぞ、よろしく。
白波瀬委員
よろしくお願いいたします。私のほうからは、就業構造基本調査の集計結果をご報告したいと思います。時間の関係もありますので、主なものについて簡単にご説明いたします。
 レジュメ資料2-1なのですけれども、トピックごとに「●」がありまして、分析結果のポイントが示してあります。そこに対応する図表は対応番号で後ろに添付してあります。
 今回は「高い経済リスクを抱える層」ということで、ひとり暮らし世帯、一人親世帯、この2つの層に着目しました。4時点データを用いた時系列分析も行いましたが、本日の報告では一番新しい平成19年の結果を中心にご報告いたします。本報告では経済リスクを世帯所得ではかります。就業構造基本調査で世帯所得の情報は階級値で収集されておりますので、ここでは中位点をとった連続変数として指標を算出いたしました。特にOECDを中心に、最近は日本でもよく算出されております相対的貧困率(以降、貧困率)を中心に経済的なリスクの程度を見ていこうと考えております。
 まず参考までに、国民生活基礎調査と就業構造基本調査で貧困率を算出したところ、国民生活基礎調査では18.5%、就業構造基本調査では全体としては16.2%となりました。二つの調査の大きな違いは、国民生活基礎調査が実数で世帯収入を把握しているのにたいして、就業構造基本調査では階級値で世帯収入を撮っています。両者の違いを把握したうえで、これから就業構造基本調査についての分析結果をご報告したいと思います。
 まず、「ひとり暮らし」です。図1を見ていただきますと、年齢階層ごとの一人暮らし割合の4時点の変化です。就業構造基本調査は15歳以上の世帯について調査しているという形でありますので、基本的には個人ということで分析を進めるわけですけれども、15歳から見ていただきますと、一番太いラインが最近の2007年データですが、一人暮らし割合の上昇が高齢層に顕著に認めらます。この背景には、晩婚化、未婚化で若年層は親元にとどまる傾向にある反面、高齢層では三世代世帯が少なくなって、ひとり暮らし、あるいは高齢夫婦のみ世帯が上昇しているという、いわゆる世帯分離が進むことで、高齢層のひとり暮らしの割合を増やしていると考えられます。
 本研究会はジェンダーに着目しておりますので、年齢階層別に貧困率の違いを男女で見たのが図2です。これも2007年データについてです。男女の間で年齢階層別、一人暮らしの貧困率のパターンはことなりません。いずれの年齢層でも女性の貧困率のほうが高いことが確認されます。もっとも高齢層になりますと寿命の違いもございますので、その点については考慮を入れなければなりません。それでも、年齢階層別に見たところの一人くらしの貧困率は、高齢層では若干拡大する傾向にあるということであります。
 どういう人たちがひとり暮らしに至ったのかについてかんがえてみたいと思います。就業構造基本調査は1時点の横断的なデータですので、これまでの生き方がどう現在の経済的リスクに影響を及ぼすのかを明らかにするデータではありません。しかし、その点を配慮しつつ、これまでの生き方が現在の貧困率にどのような影響をみるための一つの方法として、一人暮らし高齢者の貧困率と有業率を配偶関係別にみたのが図4です。図4読み方は、上が2007年データで、下が10年前の1997年。男女別に図が左右になっています。まず男女別のところで比較していただきますと、何が大きな違いかというと、男性の場合が未婚者で貧困率が高くなっている。逆に女性の場合はどの年齢層も離死別、就業構造は離死別でしかわからないわけですけれども、離死別の間で貧困率が高くなっている。これは10年前の1997年と全く同じパターンです。
 そういう意味では、ひとり暮らしの貧困率をもう一度全体的なところで時系列的な変化を見るために図3の上の結果を見ていただきますと、ここでの大きな発見は、A~Dまで4時点間のデータを比較して男女別のひとり暮らしの貧困率を見たのですけれども、この15年間に大きな違いはないということです。あえて言うならば、図3Aが一番新しいデータで、図3Dが一番古いデータということになりますけれども、いわゆる若年層のひとり暮らしのところで貧困率が高くて、高年層でまた高くなるというU字型なんですけれども、最近のほうが高齢層の貧困率が低下して、50代以上の年齢層間でそれほど大きな変化が見えなくなっています。
 本データは15歳からデータがとれるということで、母子家庭といった場合、20歳未満の未婚子と一緒に住む世帯となっています。そこで、同じ未婚子でも20歳以上になりますと、母子家庭というよりも、いわゆる一人親世帯というカテゴリーに入ってきます。
 そこで子どもから見て、ひとり親世帯にいるのはどういう状況かというのを見たのが図6です。細かいところは省略しますが、一人親か、二人親の下での生活状況を貧困率で表しました。し明らかに二人親のもとで暮らしているほうが、男女ともに貧困率は低いのですけれども、10代のところで大きな差がある。つまり子ども自身が10代のところで進学するか就労するかも含めて、親もまだ比較的若い状況にある。そこで、人生の若いところで一人親のところで生活をしているか、二人親のところで生活しているのかによる、経済状況の違いが大きく出ています。そこで、このような比較的若い時期の経済的な困難が経年的にどれほど継続し、その困難さがどれほど累積されるというのは、重要な政策課題です。子どもが比較的若いところで一人親か二人親かのところの経済リスクの違いが高い点はみおとせません。
 子どもが15~20歳までの就学率の違いを母子家庭・父子家庭、そして二人親の間で比較したのが図7です。二人親にいたっては9割以上は就学をしています。一方、母子家庭・父子家庭になりますと、就学率が減りまして就労するものが増える。さらに、まだ少数派ですが、父子家庭のところで若干気になる子どものジェンダー差が出ている。何かというと、父子家庭のところでの女の子は非正規で働いている者が多いのですけれども、父子家庭で男の子が無業であると答えている人の割合が女の子に比べて高い。ただ、母子家庭、父子家庭において、多数派が就学していますので、ここでの結果をどの程度強調してよいものかは注意が必要です。本研究会では男女間の違いが1つの重要な分析枠組になっていますが、親が父親か、母親かということだけではなくて、父子家庭に男の子がいるのか、女の子がいるのかというジェンダー差が世代間のところでクロスをしている点が興味深いところです。
 次は母子世帯、いわゆる親から見て、その母親の就労という形で分析結果をお見せするのが、6ページです。ここが本日強調したいところなのです。これまで、日本の母子世帯の就労率は高いということは既に言われています。そこで、就業形態を年齢別に有配偶女性と母子家庭の母親の就労をみてみました。向かって右側が女性の結果です。配偶者がいる女性の非正規就労割合と無業率、それから母子世帯の母親の非正規就労率と母子世帯で無業者の割合です。太い黒い上のラインは母子世帯の非正規就業率です。年代を通して非就労率の割合はそれほど大きく変わりません。その下の太い点線が母子世帯の無業の割合なのですけれども、これも年齢別にあまり違いはない。その一方で、配偶者がいる女性者については年齢別に非正規就労率も無業率も大きく違います。細いラインが非就業者の割合なのですが、既婚女性が中高年になるとパート就労をするようになる状況が見て取れます。言い換えれば、本調査が横断的な調査であるので厳密には推測になりますが、幼い子どもが学校に入っていくとパートを中心とした非正規就労に就くという状況が線形的な非正規就率の上昇としてきれいに出ている。
 向かって左側は男性の結果ですが、女性に比べて年齢によって働き方が大きく違ったり、あるいは非正規就労率が多数派になるような状況はみえてきません。ただ、ここでも、有配偶男性と父子家庭の父親の働き方の違いは見えてきます。20代の有配偶男性のほとんどが正規就労にある一方で、父子家庭の父親の場合には非正規雇用率が3割に上ります。
 図9は、配偶者がいるか、いないかというところで貧困率を見たものなので、ここでは親の年齢別に貧困率を見ています。母子家庭のところでは母親の年齢が高くなればなるほど貧困率は下がっているわけですけれども、父子家庭では、40代を底とするU字型です。母子家庭に比べますと貧困率そのものは父子家庭では低いですけれども、60代の父親一人と未婚の子が共に生活する状況では貧困率が高く、貧困率に代表される経済的ペナルティの高さが目につきます。
 時間がオーバーしておりまして、すみません。最後に申し上げたい点は、日本の母子家庭の就労率が高いことはすでに指摘されていますが、国際的にみて、仕事を持っているか、持っていないかということに伴う母子家庭の貧困率の差は、日本がもっとも小さいのがわかります。日本のデーたは、国民生活基礎調査を使ったものなのですが、仕事を持っていても、いなくても、母子家庭の貧困率は大きくちがわない。言い換えれば、母子家庭の母親就労が貧困を回避する機能を十分はたしていないといえます。
 一方、母子家庭の母親の親と同居しているかどうかで、貧困率はおきく異なります。就労というよりも、家族が母子家庭が貧困を回避するさいの防波堤になっているということです。就労では十分貧困回避できずに、親に頼ることでしか貧困から逃れられない事実が明らかになったということは、雇用保障が十分なされていないことを物語る結果といえます。ちょっと長くなりましたが、以上です。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 続きまして、就業構造基本調査につきまして、小杉委員に発表をお願いします。
小杉委員
私の資料は資料2-2、2-2-2です。主に2-2でお話しさせていただきたいと思います。
 私が注目しましたのは、若い人の間に非正規雇用がどんどん増えていることはご存じだと思いますが、特に若い女性に多い。そこの男女差に注目して見てみることにしました。
 最初のページにありますのは、これは特別集計しなくても出てくるものなのですが、この間、非正規が多くなったというのは正社員でいる人がどんどん少なくなったということなのですが、見ていただきますと、特に女性の高校卒業レベルの方の正社員比率が異常な勢いで落ちております。2003年から景気が回復しまして、2007年段階では実は非正社員比率は低くなって、むしろ正社員が増えたという傾向があるのですが、ほかの学歴では高い学歴の人たちは正社員が増えているけれども、高卒では減っているというところが大きなポイントです。
 先ほど白波瀬先生の分析の中で、高校まではみんな行っているという話ありましたけれども、高校ではなかなか労働市場に出るときにハンディを負うような学歴になってしまっているのかなというのがここから見えてくることです。
 私の分析は次のページに示しました。この分析に沿ってこれからお話ししたいと思います。低学歴で女性が労働市場に出るということは背景に親の貧困、あるいは性別役割分業観があるのではないか、これが分析の1です。そして低学歴女性ほど、最初の仕事が最初から正社員になれないのではないか、これが分析の2です。そして、正社員ではない非正規だということは、低収入であろう、これはよく知られていることですが、一応この中でも確認しておきます。これが分析の3番目です。そして、非正規であると、企業は能力開発投資をしないだろうし、実は自己啓発もうまくいかないのではないか。非正規でいることは能力が高まらないのではないか、これが分析の4番目です。そして、その結果として、非正規と無業の間を行き来するような、そういうところにとどまる人、つまり正社員へは変われない人がたくさん出ているのではないか、これが分析の5番目です。そして、ずっと非正社員でいると、いくら勤続しても収入は増えないのではないか、これが分析の6番目です。そして、更にそれに晩婚化・非婚化が重なると非正規への固定化=貧困化ということにつながるのではないか。これがこの中で今やろうと思った分析の筋です。
 まず、第1番目の分析、親の貧困と子どもの低学歴の相関。この調査では進学率はとれないので、子どもの学歴とその子どもが親の世帯に同居している段階の親の世帯収入しかとれないという、そういう制約がありますので、子どもであって、親と一緒にいる、その子たちだけを取り上げまして、その子の学歴と親の世帯の世帯収入がどう関係があるのかというのを2時点で比較して見ております。600万~900万未満、これがこの中、このような世代層の中では平均的なところなのですが、そこでの男女の高等教育卒業者の比率と、かなり年収が少ない世帯における高等教育進学者の比率が左右に分かれております。全体として親が貧困な世帯からはなかなか高等教育卒業者が出ていないということはある程度これで言えると思います。
 更にここでは男女に分けた上で、5年間の差を見ています。そうすると、この5年というのは、高学歴化が更に進展した時代でございまして、普通の世帯では男性にしろ女性にしろ高等教育卒業者の比率がどんどん高まっていくという変化がありました。
 一方で貧困世帯の子弟では、むしろ女性の場合、男性よりも高等教育進学率が高かったのですが、それでもほかは伸びているのに伸びなかったと、そういう結果があります。そういう意味では、女性の間の格差が広がった。高等教育に進学できる持てる親と進学できない持てない親の違いが子どもの学歴に出る差というのはこの5年間に広がったのではないかということが推測できます。
 次に分析の2番目です。低学歴で学校を離れれば、最初の仕事から正社員にはなれないのではないかというところです。今回の就業構造基本調査では初めての試みなのですが、最初の仕事はどうでしたかという質問が入っています。そこで初職が各年代においてとれます。高等教育卒業者の場合には最初から正社員という比率が非常に高くて、これはどの年齢層、30代あたりのいわゆるバブリー世代、あそこが一番高いのですけれども、それでも最近のところでも高等教育卒業者の場合は女性で7割ぐらい、男性でも7割か、それ以上、最初から正社員です。ただ、それが高卒あるいは中卒で学歴を終わっている人。中卒で学歴を終わっている人は中学校卒業ですぐ労働市場に入った人もいますが、もっと多いのは高校中退者です。こういう低学歴層において若い世代ほど正社員比率が低いという、最初から正社員になれてないという可能性がとても広がっている。もともと男性と女性の間には低学歴のほうを見ていただくとはっきり違いがあるのはわかると思います。男性のほうは、どの世代でも女性よりも正社員比率は10%からそれ以上高い。男女の間の差は今も同じように継続されています。そこに最近の変化としては、20代後半より若い層、その部分においては、低学歴の場合の非正社員比率が高まる、
 3番目の下に3行書いたところなのですが、90年以前から男女間の初職雇用形態差はある。これは日本社会の雇用形態の持つ基本的なジェンダーであろうと思います。それに90年代以降の構造変化の中で、労働力需要の変化だと思います。高学歴者のほうに需要が集まるというような労働力需要の変化を背景として、最初から正社員になれない高卒、あるいは高卒以下の学歴の人たちが増えている。この両方が重なるのがこの図の中では高卒女性で、高卒女性で最も正社員市場が小さくなっているというそういう状況になっているのではないかということが考えられます。
 次は分析の3番目、非正規であれば収入は低いだろう。これはほかのところでも言われているのですが、このデータの中でもそれが確認できます。この中では、先ほどありました年収、この場合には個人年収がわかるのですが、個人年収と労働時間が大体わかるんです。その労働時間と個人年収から時間当たり収入を大体は計算できます。その大体の部分なのですが、それを正社員であるか、アルバイト・パートであるかということに分けて年齢別の変化を見ています。
 一番上が高卒です。男性と女性に分けて、左側が正社員で右側がアルバイト・パートです。正社員が急激に伸びてアルバイト・パートはちょっとしか伸びない。特に女性の高卒のアルバイト・パートは伸びているとは言い難いというような形になっています。
 大卒の場合にも同じように男性と女性の違いがあって、更にアルバイト・パートの中でも男性と女性では違って、年収は大卒の場合も女性は減っているというような傾向があります。
 労働時間が正社員とアルバイト・パートでは非常に大きく違いますので、年収ではなくて時間当たり収入で見ましたのが右側です。これで見てみますと、同じような形なのですが、大卒の場合には女性の時間当たり収入そのものは年齢が高くなると高くなるという傾向がありまして、時給は高まっているという感じはあるのですけれども、高卒の場合にはそれも、これで見ても伸びている感じはしない。年齢が高くなっている層でも、賃金が伸びていないという可能性があって、非正社員でいると、低収入だというのは、特に高卒女性にあてはまる可能性が高いのではないかと思います。これが分析の3番目です。
 4番目は、非正規でいると、能力開発が進まない。能力が高まらないのではないかということです。能力開発についての質問も、平成19年、就調で初めて入った質問です。一番最初の4-1は、雇用形態によってどう違うかを見たものなのですが、正社員のほうが男性にしろ、女性にしろ、勤務先が実施した訓練は正社員のほうが多くて、アルバイト・パートはすごく少ない。自己啓発も同じように違いますが、その差は企業が実施するほどの差ではない。
 それを更に右側のほうでは、年齢に分けて見ていますが、これは時間がないので飛ばしますが、結局低学歴の若年女性が最も勤務先が訓練をいずれも行わないというのが高くなる。また男性と女性のアルバイト・パートの違いを見ますと、若い世代のアルバイト・パートをしている人たちの中で、男性のほうが自己啓発をしているという違いがあります。自己啓発するところにおいては男女の違いが、特にパート・アルバイトにおいては男性のほうが自己啓発するという違いがある。これは多分将来への展望みたいなところがちょっと違うのかなということがうかがわれます。
 時間がないので飛ばしまして、次に非正社員から正社員へのどれだけ変わっているのかを見たものです。ここでは、調査時点から1年前にさかのぼって、その1年間の間にもとは非正規だった人が正社員に変わったという比率がどのくらいあるかという比率を見たものです。2002年と2007年と同じ分析ができましたので、その変化が見られます。15~44歳についてとりました。男性と女性分けてありますが、どちらも2002年に比べて2007年のほうが正社員への移行比率は高まっています。つまりこの5年間、非正規が多いことが問題になっていましたが、非正規から正社員に移るという道は間違いなく太くなったということは言えると思います。ただし、その太くなり方が男性と女性では大きく違って、男性のほうが多くなっている。特に若年の部分についてはなかなか大きくなってない。特に若年女性15~24歳層では正社員への移行はなかなか進んでなく、むしろこの間、15歳からは減っているような傾向さえあります。拡大はしたけれども、取り残されている人たちがいる、女性、若い層という問題があります。あと、学歴をとっても同じようなことが言えます。
 次は6番目の分析は、非正社員でいれば、勤続しても収入が上がらないのではないか、勤続との関係です。これもそのとおりの結果が出ました。
 そして最後の7番目の分析ですが、これが結婚との関係で非正社員でいることが結婚にとってマイナスになって、結婚できないのではないか。男性の場合には、これは前から言われているとおりのことが出まして、この表のほうは男性なのですけれども、年収が少ないと結婚できない。雇用形態が非正社員だと結婚していないという結果がはっきりします。
 女性は、結婚した結果、非正社員になるという行動があるものですから、こんなにすっきりは出ません。そこで初職が非正社員であることが、その後の結婚と関係があるのかを女性については見ることにしました。右側の2つのグラフがそうなんですが、初職が正社員か非正社員かで実は結婚率は女性の場合変わっていなかったというのが結果の1つです。実は変わってないということは1つのファインディングですね。女性で就職のときに、私はキャリア志向でないから非正社員でいいというような言い方をする人が少なからずいるのですけれども、そのもくろみは実は関係ないといいますか、最初からもしたとえ専業主婦志向だから非正社員でいいと言ったとしても、正社員であれ、非正社員であれ、結果としては結婚率は同じだということですね。希望どおりには結婚は進まなかったかもしれない。
 下の図は難しいのですが、これは離死別の比率を見たものです。初職正社員であった人と初職アルバイト・パートであった人とこの段階で、結婚したけど離死別をした比率を見ると、アルバイト・パートで初職を始めた人のほうが離婚率が高いという、そういう結果が出ていまして、ある意味では正社員就職をしないということはかなりリスキーな選択なのではないかというふうなことが言えると思います。
 済みません、ちょっと長くなりました。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 続いて、国民生活基礎調査につきまして、阿部委員に発表をお願いします。
阿部委員
私は厚生労働省が行っている国民生活基礎調査で主に白波瀬委員と同じように貧困率を計算したものをとりあえず今回ご説明させていただきます。集計の申請をした表は、これの10倍以上の数があるのですけれども、時間的制約によってとりあえず今はまだ第一段階というところかと思います。
 まず一番最初の色のついたグラフの資料2-3-1と、その後ろに2-3-2というものがあるのですけれども、付表のほうはちょっと見にくいのでご説明せずに、表、グラフのほうでいきたいと思います。
 1ページ目の年齢3階層別、性別 貧困率というのは、これと同じ分析をお配りになられるかと思っておりますけれども、3月に出ました論点整理の中で出させていただきました。そのときには1980~2000年代初頭までの貧困率の推移を年齢3階層で出したのですけれども、そこでは80年代から高齢層はほぼ横ばいですけれども、子ども層と勤労世代層で貧困率が急激に上がっているということが示されていました。
 今回は2007年までのデータを出しておりますので、90年代後半から変化がどういうふうになってきたか、特に2000年代以降の動きということに着目しております。ごらんいただきますように、大きな変化はございません。順位的には不同であります。以前と同じように高齢者の女性が一番圧倒的に高い貧困率、それから高齢者の男性、子ども世代、勤労世代というふうになっていきます。一番低いのは勤労世代の男性となります。
 ここで、済みません、少し貧困率の定義のご説明をしておくべきだと思いますのでお話しいたしますと、これは個人ベースで集計しております。ですので、どのような世帯に属していても高齢者は高齢者、どのような世帯に属していても、子どもは子どもというふうに分類しております。ここでの高齢女性というのは、高齢者世帯にいる高齢女性だけではなくて、息子たちなどと同居しているような3世代世帯ですとか、すべて含めた形での高齢者です。
 全体的な傾向としては、これはほかの調査でも大体同じような傾向が出ているのですけれども、2001年、2002年が貧困率は日本全体で見ると一番山になり、それから2004年、景気が回復してきたということであると思いますけれども、にかけて少し下がり、今回一番新しいデータ、2007年ですが、そこでまた悪化しているというような傾向が見られます。ただし、高齢者は若干違う傾向を見せております。これは後のほうでまたよりクリアに見えてくるかと思いますので、ご説明いたしたいと思います。
 1ページめくっていただきまして、これは年齢階層(5歳刻み)別の男女の3か年、2007年、2001年、1995年で見てみたものです。論点整理のほうでは、同じ年の男女という形で出しているのですけれども、男女格差のパターンは、済みません、2つのグラフに分かれてしまっていて見にくいかもしれませんけど、それほど変わりありません。というのは、若年層のときには男女格差はそれほど大きくなく、子ども層の頃はほとんどゼロに近いものでありまして、高齢期になればなるほど、特に60歳代以降に急激に男女格差が大きくなるということがわかりまして、それは今でも同じような傾向が見られます。
 ただ、時系列ではかなり動き方に男女の差があります。上が男性ですけれども、これで見ますと、男性では20歳代~25歳というところでスパイクがもともとなだらかな山が緑の線であるのですけれども、それがかなりシャープな形で山になっているということがおわかりになるかと思います。
 逆にこのように、20歳代において急激な山ができているというようなことは女性では見られません。若干20~25歳のところでちょっと角張ったというのがあるのですけれども、これが特に2001年、2007年にかけてどんどんこの山が大きくなっているというような傾向は女性で見られませんでした。
 また、逆に男女ともに共通して見られる傾向としては、高齢期の貧困率が下がっていて、若年期の貧困率が上がっているということです。上の男性で見てみますと、一番古いデータが緑の線ですけれども、それが年齢の高い層でそれが一番高くなっていて、一番新しい棒が濃い紫色なのですけれども、それと2001年がほぼ同じぐらいで高齢層になっている。
 女性でも同じように、一番古いデータ、ピンクのラインが1995年です。これが高齢期で一番高くなっていて、2001年、2007年はそれより下になっているということで、若干高齢期にとって貧困の改善が見られるかと思います。女性の最後の80歳代、75、79歳のところでかくっと折れた違う動きを見せているのですけれども、これは先ほど申し上げましたように、すべての80歳代の女性が入っていますので、子どもと同居することになるのか、または施設に入るかどうかなどというようなことによって大きく左右されてくるかと思いますので、最後のほうのスパイクについてはそれほど意味深いものがあるとは思いません。
 次のページですけれども、これは主な活動別の性別の貧困率を出してみました。
 平成19年は、今までは仕事、通学、家事、その他というように4つぐらいに分かれていたのですけれども、かなり細かく分かれた活動別になっておりまして、「主に仕事」、「主に家事で仕事あり」ですとか、細かく分かれています。ここで上が勤労世帯、下が高齢者世帯になります。上が「主に仕事」がもちろん一番低くなるのですけれども、ここでの男女格差は今でも顕然に残っているということになります。このグラフはほとんど大体想像するとおりのものなのですけれども、1つ興味深い点がいくつかの活動によっては男性のほうが貧困率が高い。それが例えば「通学のみ」というようなところにあらわれるかと思います。ただ、これは同居率の違いというのも顕著に影響してくるのではないかと思います。女性で「通学のみ」としている人と、男性で「通学のみ」としている人では親との同居率が大分違うであろうと考えられますので、それで出てくるかもしれません。
 ただ、データの集計上、学生で「通学のみ」であって、かつ世帯主である学生さんというのは集計から外しております。というのはそういう方々は仕送りのみで生活していると思いますので、それが必ずしも彼らの生活水準をあらわすとは考えられませんので、それは抜いてあります。
 下は高齢者のほうですけれども、高齢者では今でも高齢女性の貧困というのがすべてのカテゴリーに見えています。また、驚くべきなのは、高齢者でありながらも「主に仕事」と言っているような方の貧困率が少なからずあるということ、特に女性でその貧困率が非常に高いということになります。構成比で見ますと、「その他」、つまり家事もしてなければ、仕事もしてなくて、通学もしてないというような引退世代ですが、一番多くなるのですけれども、その中でも女性の貧困率は非常に高いものがあって、高齢者の貧困問題がいまだに非常に強くあるということ。高齢者であっても、まだ働きながら、かつまだ貧困であるというような方々も少なからずいるということがわかります。
 次のページをめくっていただきます。これは先ほど男性の20~24歳でスパイクがあったということで、ここを詳しく見てみようということで、20~24歳の男性の活動別にどこが貧困率上がっているのかを見てみたものです。ここで上がる要因としては、主に2つあるかと思います。まず「主に仕事」としている人の構成比が減ったということです。この20~24歳であっても、「主に仕事」の人たちはそれほど貧困率が高くないのですけれども、この構成比が減った。それから、「通学のみ」としている人たちの貧困率が上がったという2つの要因が見られます。
 これは深読みするのが難しいのですけれども、1つ言えば、20~24歳では、男性が雇用労働市場の状況が悪くなったので、労働することを選択するのではなくて、学生にとどまっている。その学生にとどまりながらも、親の収入も必ずしも、これは独立している人たちだけではないので、親の収入もそれほどいいわけでもないので、世帯全体からして貧困が高くなってしまっている。例えば学生でありながら兄弟と一緒に住んでいるというような世帯主でない場合は入っていますので、そのところでそういう方々が増えているのではないかと思われます。
 次は雇用形態別ですけれども、これも平成19年のものです。ここで主なファインディングというのはそれほどないのですけれども、予想どおりという形になっておりまして、ただ、男性であっても、男女ではもちろんパート・アルバイト、派遣、契約・嘱託というようなところが貧困率が高くなるのですけれども、特に男性でそういう雇用形態で働いていらっしゃる方の貧困率が女性よりもかえって高くなっているということが挙げられます。これは1つには、パート・アルバイト、派遣をしている女性の中には結婚なさっていて、ご主人が非正規の場合もある。または正規でなくてもダブルインカムである場合があると。ただ、男性がパート・アルバイトである場合、たとえ奥様がいて、その方が働いていらっしゃるにしてもそれほど貧困から抜け出せるほどの収入を得ることができないというようなところをあらわしているかと思います。
 その次の下の小さな表ですが、これは小さく書いてあるのは、先ほど申し上げましたように高齢者世帯、高齢者のみで構成される世帯というのは貧困率は横ばい、または下降気味。母子世帯・父子世帯、その人たちについては横ばい、または山型というような形で景気を如実にあらわしているということがわかります。
 5ページに行きます。5ページ目は配偶関係別で、平成7年と平成19年、一番最初の年と一番最後の年を見てみました。上が高齢者になります。高齢者では大きく上昇しているのが未婚の女性の高齢者の貧困率が上昇していること。死別の女性の貧困率も上昇しているということが見られます。離別はもともと高かったのですけれども、それほど大きく上昇していることは見られません。また、男性では離別の男性の貧困率が大きく伸びています。これは多分構成比というものもあるかと思いますけれども、配偶関係と高齢期の貧困が男性にも非常に色濃く出てくるようになってきたことが見られるのではないかと思います。
 下が勤労世代ですけれども、上の高齢者もそうですし、下の勤労世代もそうなんですけれども、有配偶である場合は貧困率は下がっている、または横ばいなのですね。ですけれども、それ以外のところ、有配偶者でない場合が貧困率が上がっていることが見られます。未婚では男性も女性も貧困率が大きく上がっており、特に未婚の男性は未婚の女性を上回る数値になっております。また離別女性はもともと高いのですが、離別男性の貧困率も上がっています。
 最後、次、1ページめくっていただいて、これも簡単にご説明いたしますと、これは居住地区別に男性、女性別々に貧困率、年齢層別に見たものです。ここで一番目立つのが、20~24歳のスパイクというのが大都市になればなるほど大きいということが見られます。同じような傾向は女性には見られません。その隣が、時系列で見たもので、大都市だけピックアップしてみたものなのですけれども、7ページになります。大都市、平成7年の時点では、大都市における若年男性の貧困率のスパイクというのが見られなかったのですけれども、年度を追ってくるごとにどんどん大きくなっているということがありまして、若年男性の貧困率の上昇は大都市で近年起こっている現象かと思われます。
 ただ、スパイクというところがみそでありまして、その次の年齢層ががくっと下がっているんですね。ですので、これは女性に一番よく見られる貧困の恒久化といいますか、ずっと継続した貧困をあらわすのか、20~24歳の一時的な貧困という現象をあらわすのか。それはもうちょっと詳しく、できればパネルデータを使って分析してみなければわからないことかと思います。
 以上です。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 何か意見、質問のほかに、例えば大変関心を持った指摘で、ぜひ報告書にそういう視点を加えるべきだとか、そういうのもありましたら指摘していただければと思うのですが、ご自由にどうぞ。あるいは、今のお三方の委員から、今回の調査分析でこの視点は発見だとか、いくつかそういう指摘もあったような気もしますけれども、報告書にぜひ盛り込んでほしいといったような要望等々がありましたら、そういう指摘でも結構です。それは白波瀬さんたち、委員のほうからお願いしたいですが、この視点はぜひなんていう視点がありますか。特に今のところ、意見、質問がありませんので、取りまとめ、最終報告書にこういう視点を入れたらどうですかとか、そういう指摘があれば、ぜひお知らせいただきたいと思うのですが。
白波瀬委員
私が担当したところで特に強調したい点は、未婚男性のひとり暮らしの貧困率が高いことと、母子家庭における就労の貧困回避機能が乏しいという点です。前者は、未婚で生涯を過ごすことに伴う経済的ペナルティは女性以上に高く、これまでとは違った生き方への社会的制裁が高いこと。後者は、母子家庭というこれまでには少数派であった子どものいる世帯の有り様に対して、母親がみずから働いて家計を維持していくことへの高い困難です。ここでの問題を解決するには、働くからには一定の生活をすることが保障される程度の賃金が保障されなくてはなりません。この点、同一労働同一賃金、最低賃金のこととも関連して重要ではないでしょうか。
鹿嶋会長
ありがとうございます。今の白波瀬委員の指摘についてどなたか更に質問、ご意見いいですか。
阿部委員
今回、白波瀬委員または小杉委員のご報告も踏まえて、私が今、一番感じるのが以前は、男性であるか、女性であるかというような性別というのが1つの大きな不利としてあったのですけれども、これは前回の委員会のときでも話したのですけれども、それ以外の不利というのが重層的に重なってきた場合、それが低学歴であったりとか、結婚できなかった。できなかったという言い方は語弊がありますけれども、しなかった、または離婚した、死別したというようなことがあるですとか、就労形態が正式処遇でないですとか、もともとこれらのことはすべて貧困に陥る確率が高いと言われるようなことなんですけれども、それが重なったときの貧困率が、そこが悪化しているということだと思うんですね、時系列で見ると。そういう標準型から外れてしまった、モデルから外れてしまったときのペナルティーがより高くなっているということが非常にクリアに出ているのではないかと思います。
 そういう意味を考えますと、セーフティネットのところをもう少し張っていかなければいけない。それも今までのような高齢者を中心としたセーフティネットでないような形にしなければいけないわけで、そこのところを非常に強調すべきではないかと思います。
鹿嶋会長
ありがとうございます。阿部委員のところは、シャープな山が男性のところなんかできていますけれども、これについては更に分析が必要だということですね、さっきの説明ですと。
阿部委員
そうです。
横田委員
2点ありまして、簡単なことなんですが、1つは、貧困率というのはOECD方式とおっしゃられたのですが、簡単にどういうものを基準にしているかをどこかに書いておいていただいたほうがいいなと思います。恐らくはフローだと思うんですね。資産のほうが、わかりませんが、高齢者の中にはかなり資産といっても、莫大なものではないとしても、例えば持ち家がどうかの違いというのはやっぱり生活の、同じフローの収入が200万円でも全然違うわけですね。そういうところが実際にデータに出てくるかどうかわかりませんが、一応貧困率はフローでやっているのだったら、フローのところをちょっと書いておいていただくと読み方がより正確になるかなというのが1つお願いです。
 もう一点は、これは2007年までのデータでやっておられるのですが、それでシャープに上がっているところがあるようなんですが、我々一般的な印象としては、昨年の夏頃から秋にかけての経済金融危機によってかなり貧困率への影響がデータ的に出てくるだろうと思います。ただし、データないんですね、今は。ですから書きにくいのですけれども、そのことは常に念頭に置いてやらないと、実情に合わない報告書になってしまう心配があると思います。メディアなどでは、むしろ昨年の秋頃から今までの動きの中での若年層の人の失業率なり、パート・派遣の人たちの生活の困窮なりが、報道されていますが、このデータはそのことを裏づけるものではないわけですので、その点、どこかに書き記しておいたほうがいいかなと思います。2点です。
鹿嶋会長
横田委員のフローだというようなことについて、お三方の先生たちで、何かご指摘がありますか。
阿部委員
フローというのは確かで、資産のところは考慮していません。ただ、国民生活のほうでは、資産、貯蓄高もとっておりますので、フローで見た貧困、低所得者に貯蓄ゼロという方々のかけた集計表も報告書には入れるつもりでございます。
白波瀬委員
今、ご指摘のように、いわゆるOECDが採用している貧困率の算出は、相対的な位置を強調しています。そしておっしゃるとおり、ここでは所得というフローに注目していまして、資産を含むストックの不平等はさらに重要です。ただ、ストックの不平等をみるためのデータの信憑性や、過小申告といった問題が国際的に共通してあります。ここで見ている指標は、全体の世帯の中でどの程度の人がいわゆる低所得層にいるかということの1つの指標なので、そういう意味では経済的リスクというのはいろんな形で捉えることができると思いますが、既に国際比較で使われていて、算出、解釈ともに比較的容易であることがここで相対的貧困率を用いた理由であります。
 それから、もう一つ、報告書と今現在起こっていることの間でずれがあるという点です。確かにそれはおっしゃるとおり、分析できるデータとしてどれだけ迅速に整備されているかということもあるとは思いますが、今、この場で起こっているということを実証データで検証し検討することはできません。ただ、中心となる社会的問題はそうやすやすとは解決されないし、大きくかわるものでも有りません。
 分析結果として提示できるものは実際には5~6年前のデータであることが少なくありません。ただ、そこでデータが5~6年まえであるから分析結果が無効であるともいえません。
鹿嶋会長
ありがとうございました。小杉委員、ご自分の報告書の中で、ぜひこのあたりはというふうなこと、報告書の中に取り込んでほしいということありましたら。
小杉委員
確かに2007年までの話ではあるのですが、例えば私の中ですと、8ページの5の1で示したように、誰が非正社員から正社員に変わっているかというような問題。経済の環境がよくなったから正社員になるわけですが、でもなりやすい人となりにくい人がいるんですね。その構造は多分環境が変化しても同じような構造を引きずるのではないか。つまり男性と女性の違いがあったり、学歴間の違いがあったり、年齢差の違いがあったり、その部分は使えると思うんですね。そういう意味で、特に5の1のようなものは一番使ってほしいものの1つです。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
大沢委員
本当にすばらしい研究結果で、大変印象深く、かつ重要なインプリケーションがたくさんあるという意味で教えていただきました。ありがとうございました。そして、コメントですが、白波瀬委員もおっしゃったように、就労していてもいなくても貧困率が変わらないと。この点が非常に重要なのかなというふうに思いました。そして、それをもう少し考えてみると、日本のセーフティネットというのは、働けない人に対して生活保護を提供していくということであったわけですが、ここでのファインディングスはその前提に疑問を投げかけているわけで、それが非常に衝撃的であり、報告書の中でぜひこの点を強調されたらいいのではないかと思います。つまり就労支援が効かないという、そうするとセーフティネットの考え方そのものを変えていかなければいけないということになります。それを報告書のなかで言われたらどうかと思います。
 そして小杉委員の点ですが、おっしゃるとおり、本当にそうなんだということがよくわかったと同時に、やはり日本の場合には内部労働市場に入れるかどうか、うちにいるか、外にいるかということが非常に大きいということで、この結果を見ますと、内部労働市場そのものがシュリンクしている可能性があると思うんですね。そうすると、そこに入れない人たちがどうスキルを獲得していくのか。特に小杉さんがおっしゃるように、これは経済社会の中で知識基盤社会化を背景とした労働需要が変化したと、いうことは構造的な変化ということになりますので、世間では非正規就労を選んだ人の自己責任が問われることもありますが、ここでのファインディングスは労働市場の需要構造が変化したことによって起きているのであって、個人の意識が変わってもこれが変わる可能性は低いということをおっしゃっているのだと思います。その点も報告書の中で非常に重要になってくるのではないかと思いました。
 3点目、阿部委員のところで、確認なのですが、そこの図のところで思ったのですが、貧困率を世帯類型別に見ていらしたと思います。4ページの付表のところですが、貧困率の類型の中でその他の世帯と言われているところが割合的にはもちろん低いのですが、少し上昇傾向にあるというような点が見られます。これも労働市場の構造の変化を考えていくと、低い水準ではあるけれども、今後増大していく可能性もなきにしもあらず、これについてコメントいただけたら後でいただきたいと思います。
 最後の点なんですが、横田委員からの質問で、これとリーマン・ショック以降の労働市場の変化において、より事態が深刻になっていることがあるのかどうかということを聞かれたように思ったのですが、しかし、その点で言うと、今、私、雇用保険の受給者の男女別、年齢別の推移について見ているのですが、気になる変化として、30~34歳とか、40~44歳ぐらいの人たちの正社員の男性の人たちの受給者が増えているんですね。ということは、雇用調整において、周辺部分から影響を受けていくわけですが、その影響が今後中核のほうに向かっていく可能性というのもあると思います。その点については、報告書で触れることは難しいと思うのですが、共有されるべき情報として、今後注目する必要があると思っています。
 以上です。
鹿嶋会長
今の大沢委員の意見に対して、お三方の先生方、何かコメントすることございますか。
阿部委員
世帯類型のところ、質問ありがとうございました。ここでのその他世帯というのは、高齢者のみ世帯ではなくて、母子世帯でなくて、父子世帯でない世帯というので非常にごったな世帯なんですね。全体の8割、9割方の人たちはここに入ってしまうのですけれども、済みません、その次の資料2-3-2の付表の11ページ目から世帯構造別貧困率ということで、もう少し詳しく見ております。ここでは単独世帯は抜きまして、これは白波瀬先生の中にもありましたので、11ページ目の一番下のカテゴリーになりますが、夫婦のみ世帯もそうですし、1枚めくっていただいて、夫婦と未婚子世帯、未婚子は子どもが成人の場合も入ります。それから、ひとり親世帯を1つ飛ばしまして、その次の三世代世帯、13ページ目になります。
 これらをみんな見ても、大体2001年が、3つの年しか出してないのですが、2001年が一番高くて、2007年に向けて下がっているというような構造になっているんですね。ただ、その一番最後の14ページのその他世帯、これは人数で見ると全体の約1割になるのですけれども、このところの貧困率だけが上昇しているんです。このその他世帯というのはどういう世帯かというと、ごっちゃ混ぜで、簡単にこういう世帯ということができない世帯なんですけれども、通常の夫婦のみ世帯ですとか、夫婦と未婚子世帯ですとか、三世代世帯というのが普通の世帯形態だとすれば、それに外れる形の世帯ということになりますので、ここでも標準型から外れた、ちょっと言い方が悪いですけれども、そのような世帯というところに貧困率が高まっていると考えることができるのではないかと思います。
大沢委員
阿部委員がおっしゃった、標準モデルから外れるということをおっしゃったのですが、そのモデルから外れる確率のリスクが高まっているということは言えるように思うんですね。例えば離婚してしまうとか、リストラされてしまうとか、要するにリスク社会の中で、そういうことが起きたときに、女性のほうがリスクによって貧困に陥る確率が高いと言えるように思うのですが、そうすると男女共同参画のレポートの中で、そういうリスク社会の中でリスクに陥って貧困になってしまった場合にどうそれが救済されるのか、セーフティネットのあり方というのがもう一つやり直しができる社会に向けての条件整備という、そっちの視点も必要なのではないかなと思いました。
 以上です。
白波瀬委員
標準型からの逸脱という話は、実はしばらく前から取りくんでおりまして、ここで1つ注意しなければならないのは、標準型だったらいいのかというわけではないということです。例えば、貧困にある子どもたちの世帯類型をみると、母子世帯といっても1割に満たない程度で、父子世帯はもっと少ないのです。少ないから問題ではないというわけではありませんが、子どもの貧困と言う場合、過半数が二人親世帯にあります。これは全体社会に占める母子世帯割合自体が小さいし、父子世帯となるとさらに少なくなる。ですから困難を抱える層に着目する場合、標準型にはまりきらない世帯にいることが一つの解釈にもなりえますが、政策を考える場合には、社会全体の中で問題を検討することが大切です。
 あともう一つは、就労が貧困回避になっていないということを申し上げましたが、子どもの貧困問題は母親の就労支援に伴う稼得収入の程度によりますが、子どもの問題については、現金給付のみならず、教育、医療を含む現物給費についても議論しなければなりません。現金給付がだめなら現物給付でといったことにはなかなかならないと思います。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 どうしても最後の質問という方はおられますか。もしなければ、次の議論に移りたいと思っております。お三方の先生方、本当にありがとうございました。
 では最後の議事に移ります。「新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女について」の最終報告に向けての論点整理についての審議をしたいと思っております。初めに事務局から前回の審議を踏まえて修正した内容について説明をしていただきます。
髙村分析官
それでは、資料3-1、3-2、3-3のほうをお手元にご準備いただきたいと思います。
 まず資料3-1でございます。こちらのほうは、ページをめくっていただきますと、目次がございますけれども、6章というところに該当する部分になります。施策の調査というところと、それから施策の調査を踏まえた今後の取組についての方向性というところを書いている部分でございます。そして、ここに関しましては、前回、先生方から貴重なご意見をたくさんいただきまして、それをもとに今回大幅に加筆をしております。その内容につきまして、ご確認いただきたいというのが1点です。
 それから、資料3-2でございます。これは最終的には合せまして1つの報告書になるのですけれども、7章のまとめに該当する部分ということで、こちらのほうは前回構造だけをお示ししまして、そこに関してやはりご意見をいただきました内容をもとに少し肉厚にしているという状況でございます。
 順にお話しさせていただきたいと思いますが、6章のほうにつきましては、前回大分ご議論いただきましてご確認という意味でごらんいただきたいと思います。
 そういたしましたらば、こちらの資料3-1ですけれども、実際に内容として始まるところが9ページでございます。9~15ページのところが課題、ア.イ.ウ.エ.と挙げたうちの「ア.自立に向けた力を高めるための課題」になります。
 まず最初が、若年期におけるキャリア教育とライフプランニングの話でございます。9ページの一番下【施策の現状を踏まえた取組の方向性】というところにご意見のほうを盛り混ませていただいております。9ページの下から始まるところ、キャリア教育に該当する部分でございます。この前のご指摘を受けまして、キャリア教育というところで、青少年一人ひとりの個性、特性、こういったものを見きわめていくことが重要ではないかというようなご指摘を入れさせていただいております。
 そして10ページ目に行きまして、1つ目、2つ目の「○」につきましては、キャリア教育に関する記述でございます。2つ目のところでは、学校のみならず地域ですとか、地域の企業といったところの連携が必要であるという部分です。
 それから、その次のところですが、これも委員からたびたびご意見いただきました社会で自立していくための対人関係能力、これを育むということがキャリア教育で必要だという点を踏まえて記述しております。これに関しては、文部科学省で中央教育審議会で検討している部分というのがございますので、その審議を踏まえて適切に行っていく必要があるというふうな記述にしております。
 その次がライフプランニングに関する記述でございます。ここでは固定的性別役割分担意識の影響によって選択の幅が狭められることがないようなという記述をしております。
 それから、その下の2つが進路に関するところでございます。上のほうですけれども、これも前回ご意見いただきました進路の決定に関しましては、本人の選択ということもある一方で、進路指導、就職指導という面からも見る必要があるということで、ここでは非正規労働者となること、あるいは正規労働者となることの長期にわたる影響などについての情報提供の重要性を記述しております。一番下は、進路の中でも分野の話になっております。
 11ページのところからは、若年期の自立支援の話でございます。
 取組の方向性というところにつきましては、12~13ページのところに記述させていただきました。上から4つの「○」が若者支援の内容になってございます。最初のところですけれども、これは若者の自立に関する支援は、幅広い主体による支援の取組が始まっているということ。ただし、これは今後一層広がりが期待される部分であるという御指摘でしたので、そのような記述にしております。
 それから、2つ目ですけれども、この7月に「子ども・若者育成支援推進法」が成立しまして、これがまさに教育、福祉、雇用と各関連分野におけるネットワーキングを進めて、それで若者を支援しようという法律ですので、そのことにつきまして記述しております。
 それから、児童福祉施設などを退所する若者、特に自立が厳しいという若者の支援が重要であるというご指摘を書かせていただいております。
 その次が、将来の困難層ということで、ニートですとか、あるいは女性の中で潜在化しやすい家事手伝いなどの問題についての記述でございます。
 その下が教育と仕事の両立という話でして、下から2つ目が、これも委員よりご意見いただきました定時制の学生への支援というところ。
 一番下ですけれども、これは学校教育の中で労働法規について学ぶ必要があるというようなご指摘もございまして、それについて政府の取組が今こういうことがあるということを書かせていただいております。
 13ページに行きまして、中退防止の話になります。また、中退防止の中では、望まない妊娠による中退ということをご指摘というか、ヒアリングの中等でも出てまいりまして、それについても記述をしております。
 一番最後、若年期での妊娠の問題ということになってございます。
 それから、14ページから始まるところでございますが、これはDV被害者の自立の項目になってございます。14ページ、下から2つ「○」がございまして、上のほうは全体としての政府の取組ということで、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が制定され、それに沿いまして体制の整備が進んでいるということですけれども、一番下の「○」はその政策に対する評価が総務省より今年5月に公表されましたけれども、実施の状況が必ずしも十分ではないというような指摘もあったということで、それについては必要な措置をとるべきであるという記述をしてございます。
 15ページに行きまして、1つ目の「○」ですが、これはDV被害者の方の自尊意識の回復あるいはそれを支援するための相談者の専門性の確立というようなご指摘を記述してございます。
 それから、④高齢者の自立の問題ですけれども、これは昨年の監視・影響調査専門調査会の報告書の中で、男女の視点からということで高齢者の自立の問題を取り上げてございますので、そちらのほうで報告の中に挙げられた施策については着実に推進していく必要があるという記述にしてございます。それから、16ページから始まる部分が、雇用・就業の課題についてでございます。
 まず16ページのところでは、「雇用の場の改革」ということになってございます。政策としましては、ことしの緊急経済対策の中で非正規労働者へのセーフティネットというところがかなり充実して対応されておりまして、その内容についての記載がございます。
 そして取組の方向性は17ページからですけれども、最初の3つがそのセーフティネットに関する記述でございます。1つ目のところは、緊急経済対策によってセーフティネットが提供されているということで、3つ目のところですけれども、それが恒久的な制度として構築されるということが必要であるという記述を入れております。
 それから、一番下のところと、18ページにかけて一番上のところが非正規労働の「均衡」の問題になっております。17ページの下のほうがパート労働者の「均衡」の問題で、こちらは昨年の4月に施行されたパート労働法の改正によって、賃金のほか教育訓練、福利厚生といった点についても、正社員との均衡のとれた処遇が求められていることを入れてございます。
 それから、次ページは施策ヒアリングをしたところでございますけれども、派遣労働者に関しても均衡に向けての取組が行われていることを記述しております。
 最後、ワークシェアリング、短時間正社員などの問題についての取組ですけれども、これは新たな雇用形態ということで一層の定着が望まれるということを書いてございます。
 続きまして、19ページ目から始まるところ、これは就業継続、再就職に関する課題でございます。取組の方向性につきましては、20ページ、21ページに記載をしてございます。最初、上から4つの記述がワーク・ライフ・バランスに関する記述でございます。一番上ですけれども、一番最初のところはワーク・ライフ・バランス、これは女性が就業継続を図るということ、再チャレンジをしていくという観点によって経済的自立を図るという、そういう意味からも重要であるということを書いております。それは女性自身のエンパワーメントにもつながりますし、また、子どものいる世帯の経済的困難に陥るリスクを低減するという意味からも重要であるという、生活困難からの視点も入れてございます。
 それから、2つ目のワーク・ライフ・バランスなのですが、これは実は今回関連施策一覧表のほうにも追加してございますけれども、こちらのA3のほうに今回もご参考ということで関連施策一覧表をお配りしておりますけれども、整理番号の40番に該当するワーク・ライフ・バランスの取組でございます。こちらのほうなんですけれども、政府の中でも関連府省が連携し、外部では労働団体、経営者団体、地方公共団体等と連携を図りつつ、ワーク・ライフ・バランス社会の実現に向けて取組を行っているというところでして、ワーク・ライフ・バランス憲章、済みません、ちょっと間違いがありまして、新たに登録されたワーク・ライフ・バランスの施策は37番でした。整理番号でいいまして、大変失礼しました。
 こちらはワーク・ライフ・バランスの行動指針の中にございます数値目標の設定というものがありまして、目標を設定した取組でございます。
 それから、3つ目、ワーク・ライフ・バランスに関する、これも記述なのですけれども、ここでは、ワーク・ライフ・バランスの進展というのが職場ということにとどまらず、男女共同参画社会の進展を促進し、そして家庭ですとか地域とのつながりを結び直すことにもつながっていくことが必要ではないかという記述も入れております。それは生活困難という観点から言いますと、家庭や地域でのつながりということを強めていくことが生活困難のセーフティネットを強めるということになったり、あるいはそれがまた生活困難の方への支援を提供する社会的な資源となっていくのではないかということを記述しております。
 それから、4つ目のワーク・ライフ・バランスの観点なのですが、これは生活困難を抱える方のワーク・ライフ・バランスということで、前回も委員からご指摘ございましたけれども、現在ワーク・ライフ・バランスはどちらかというと正社員を中心で議論が進んでいるようだけれども、実際には、例えば母子家庭の母などの方々で必要ではないかというご指摘がございましたので、それを踏まえた記述となっております。
 その下ですけれども、これは学び直しの話でございます。母子家庭、生活困難を抱える女性が学び直しをするときの一人親家庭に対する託児サービスなどの施策があることと、それからちょっと飛ぶのですけれども、21ページ目の2つ目の「○」でもう一つ、学び直しの話を入れてございます。ここのところなんですが、これは先ほど小杉委員から ご説明がございました就業構造基本調査特別集計をもとにして記述しています。ここのあたりは今日初めてのことですので、ご意見あろうかとは思うんですけれども、学校卒業直後に非正規労働に就く者の割合が増えているということと、特にそこで学歴の影響というのが見られるということがありますので、中学卒業ですとか、高校中退、これも中学卒業ということで、先生の先ほどの集計の中に入ってくるということですけれども、そこに該当する方たちへの学び直しの機会が提供されることが望まれるのではないかということを書いてございます。
 それから、あと、先ほど20番で残りましたところと、21ページの最後のところなんですけれども、どちらも社会保険の問題、最後のほうは第三号被保険者の問題というところの記述になっております。
 それから、22ページから始まるところが親子が安心して生活できる環境づくりということになってございます。最初のところが困難を抱える親子を地域で支える仕組みづくりのところでして、22ページ目のところは、母子家庭の母の就学支援でございます。
 23ページ目に行きまして、上から2つの「○」のところがDV被害者の自立支援でございます。それから、3つ目のところが、先ほども出てまいりましたけれども、生活困難にある親子のワーク・ライフ・バランスの実現というところでございます。
 それから、最後のところですけれども、父子家庭についての記述を入れてございます。それから、23ページのところでは、生活困難の次世代への連鎖を断ち切るための取組ということになってございまして、取組の方向性については、24ページのところに記述がございます。一番上の「○」につきましては、これは総論的なところなのですけれども、生育家庭の経済的状況というのが進学機会や学力、意欲などにおいて差を生まないような教育の仕組みづくりが必要だということを書いてございます。
 それから、その次につきましても、幼児教育の無償化の話でございまして、こちらの生活困難の視点から言いますと、保育所の幼児における幼児教育の無償化のあり方についても検討が必要であるということを記述しております。
 それから、下から3つ目ですけれども、奨学金のことに関しまして、緊急経済対策でも対応されているのですけれども、この前のご意見としまして、貸与だけではなくて、給付型の奨学金なども検討されるべきではないかというご意見がありまして、このあたりを踏まえて記述してございます。
 それから、24ページの下2つですが、教育の機会の拡大と並びまして、生活困難世帯への連鎖の断ち切りとして、女性の就業継続を進めていくことの必要性についての記述でございます。特に一番最後の一番下のところというのは、今もご議論がございましたけれども、女性が就業継続するということが貧困の低下につながっていくような環境整備が必要であるという指摘を書かせていただいております。
 それから、25ページ目のところは、国際化に対応した支援体制の強化というところでございます。25ページの下、4つの「○」のところですけれども、それに対応した記述でして、一番上のところがDV被害者の支援に関する記述です。
 それから、下3つですけれども、これは子どもの教育ですとか、就学支援に関する記述です。これは前回ご議論ございましたとおり、現状についてより把握をした上で、現状に合った対策が必要ではないかという、そのご指摘を踏まえた記述としております。
 それから、エのところでございます。26ページ目になりますけれども、ここに関しまして、1つ目、「家庭や地域における男女共同参画の推進」というところがございまして、上から2つのところに関しましては、前回のご議論を踏まえて記述をさせていただいております。最初のところなんですけれども、ここでは男女が性別にかかわりなく個性と能力を十分に発揮し、あらゆる分野の活動に参画し責任を分かち合う、こういうことは生活困難の視点から見たときには、経済社会的なリスク負担を分散とか、あるいはリスクを低減させるということにもつながるのではないかという記述をさせていただいております。また、女性の生活困難を防止するといった観点からも固定的な性別役割分担意識の解消を図り、就業構造ですとか、社会制度の改革を進めていくことが必要ではないかということを書いてございます。
 更に男性側から見たときの指摘として、先ほどもございましたけれども、固定的性別役割分担意識、特に社会のリスクが変わってくる中で、意識のところが従来どおりというところで、男性意識のプレッシャーというのが強まっているというご指摘も従来からございまして、男性のほうではそういった影響があり、結婚ですとか、家族形成への障害となっているというご指摘についても書かせていただいております。
 それから、27ページのほうにまいりまして、こちらのほうは「自立概念の捉えなおしと支援チャネルの多様性」というところになります。
 「○」が3つございまして、一番上の「○」については、前回の委員会でもご指摘がございました発達障害者の支援という点でございます。発達障害者支援法についてここでは記述をさせていただいておりまして、ライフステージに応じて一貫した支援を目指すという目的で実施されている法律ということを書いてございます。2つ目がDV被害者に対する支援の話。そして3つ目が若者に対する支援の話になっております。
 それから、28ページに行きまして、「制度の狭間への対応や個人のニーズに応じた一貫した支援」ということでして、ここは前回ご提出した資料と変わっておりません。こちらの専門調査会で実施したヒアリングの内容を29ページに掲載するということにさせていただいておりまして、30ページのところでは、それらを踏まえた指摘になっております。こちらもほとんど前回どおりということになってございますので、ご確認していただければと思っております。
 それから、31ページのところでは、「施策の全体的な傾向」ということで、関連施策の一覧表のほうに掲載しております「ア.男女別の状況やニーズの反映、男女別データの有無」、「イ.関連する主体や施策との連携」、「ウ.施策の実績・効果等の把握の有無及び男女別把握の有無」というところについて横断的に見た傾向についての記述をしております。
 こちらのほうでは、31ページの一番下ですが、前回ご指摘がございましたアウトプットからアウトカムへの評価につなげていくこと、それが重要であるというご指摘いただきましたので、その点についての記述をしてございます。
 資料3-1については以上でございます。
 続きまして資料3-2についてごらんをいただきたいと思います。
 こちらも前回ご意見いただきまして、それを踏まえてこちらは変更してございます。全部で3部構成になっておりまして、1つ目が「『生活困難』をどうとらえたか」という定義のお話です。2つ目が「基本的な考え方」ということでして、3つ目が「今後の取組と課題」ということになっております。
 基本的な考え方につきましては、前回、私のほうからは、「社会のひずみ」という項目と、個人のエンパワーメントと2つの項目をお示しさせていただいたのですけれども、制度のひずみというところをもう少し具体的に中身のわかるように書くべきというご指摘、それから、「世代間連鎖の断ち切り」というところが非常に大きな論点であるというご指摘がございましたので、「世代間連鎖を断ち切る」ということに関しましては1つ大きな項目として立てさせていただきました。
 2の(1)ですけれども、「経済社会の新たな潮流と社会システム再構築の必要性」というタイトルにさせていただきまして、その中ではまず経済社会の新たな潮流ということで、外部要因につきまして、前回書き込みが足りなかったのですが、今回は家族の変容の問題、雇用と就業の問題、グローバル化の問題ということで論点整理どおり、3つの視点を盛り込むことにしたいと思います。
 それから、セーフティネット再構築の必要性、きょうも大変ご意見いただきましたけれども、その再構築の必要性ということについて記述をしたいと考えております。
 3点目につきましては、こちらの専門調査会としまして、男女共同参画社会実現の必要性ということについて記述をしたいと思っておりまして、ここは特に今回の生活困難ということで議論してまいりました中から、女性の生活困難防止の観点といったところからも、こういった男女共同参画を実現していく必要があるということを記述したいと思います。
 そして、世代間連鎖の話でございまして、ここはまず1つ目のところでは、生活困難の世代間連鎖がどういうものかということを少し記述したいと思っております。1つ目、2つ目は論点整理にもある内容ということでございます。
 3つ目につきましては、前回の検討会で、阿部委員から国民生活基礎調査の特別集計の結果をお聞きしまして、その内容を書き込んだのですけれども、ここについては世代間連鎖のところに書き込むことが適当かどうかということも踏まえて、後ほどご意見いただければと思います。先ほどの年齢のところで、子どもの世帯と親の世帯のところの貧困率が併せた形で上昇しているというところを書いたのですが、ただ、これが世代間の連鎖と言えるかどうかというところを書いた後で私もどうかなというふうに思いまして、このあたりはご意見いただければと思っております。
 それから、世代間連鎖を断ち切る必要性というところに関してなのですけれども、まずここについては世代を超えて連鎖をさせてはいけないということを書いておりまして、そのための方法ということで、1つが教育機会の拡大ということで書いてございます。
 もう一つが、女性の就業継続、再就職ということの環境整備でして、経済的に自立していく、そういう環境整備が必要であるということを書いてございます。
 3点目は「個人のエンパワーメントの必要性」ということでして、最初の「○」が「男女のエンパワーメントに向けた取組」ということになっております。ここがやはり個性や能力に応じて自立を図っていくことが必要であるということを書いていることと、あと精神的な回復が必要な人々に関しては、その回復を支援する仕組みが必要であるということを書いてございます。
 あと、特に女性はという話でして、出産・育児などライフイベントを経て持てる力を発揮していける、そういうエンパワーメントをしていく必要があるということを書いてございます。
 それから、エンパワーメントを支援するに当たっては多様な主体の連携が必要であるということを書いてございます。
 続きまして、「3.今後の取組と課題」なのですが、ここも中が3部構成になっておりまして、1つ目が「横断的に見た課題と取組」、2つ目は「中長期的課題」、3つ目が「分野別に見た当面の課題と取組」という内容になっております。
 まず「横断的に見た取組と課題」なのですけれども、ここの中でも3点ございまして、1点目が「『生活困難』のより具体的な把握と対策」ということでございます。こちらの専門調査会では、生活困難につきまして、既存のデータですとか、ヒアリング、そして政府統計の特別集計ということで状況把握をしてまいりましたけれども、どのような人が生活困難に置かれて、どのような課題を抱えているのか、どういったニーズがあるのかということについて、更に多面的なデータを取得して把握していく必要があるのではないかということを書いてございます。
 2つ目でございますけれども、「男女共同参画社会の実現と生活困難の防止」ということで、ここも繰り返しにはなりますけれども、「生活困難の防止」という観点からも男女共同参画を進めていく必要があるということを書いてございます。
 それから、3つ目なんですけれども、政策に関しても企画から評価までのプロセスで男女別視点というものを導入していく必要があるのではないかということを記述しようと考えております。
 それから、2番目では「中長期的な課題」ということで、書かせていただいております。
 ここは1点目が「学び直し」をした方たちを受け入れていく教育とか、労働市場みたいなものの改革という話でございます。2つ目が若年期の妊娠に対する取組という話でして、3点目がDV被害者のエンパワーメント、精神面での支援ということになってございます。それから、4つ目が、生活困難者への自立支援を行うところでの施設等の効率性と、職員の方の専門性の確保などとの両立についての検討ということです。
 その次が、正規社員・非正規社員の話でして、ライフコースの一時点でどちらを選んだとしても、その状況が固定化されないというような社会的な仕組みをつくっていく必要があるという記述になってございます。その次がワーク・ライフ・バランスの実現の必要性ということでございます。
 それから、外国人やグローバル化への対応ということでして、日本語教育の話です。最後は支援に向けての連携の話です。
 一番最後の「・」があるのですけれども、これは上にあることとちょっと重複しておりまして、こちらのミスなのですけれども、これは削除ということでお願いしたいと思います。
 それから、3番目の分野別のところでございますけれども、こちらは先ほどのア.イ.ウ.エ.の区分けに従いまして、6章で書いた内容を記述をしております。
 最初の「ア・自立に向けた力を高めるための課題」では、6章に沿いまして、キャリア教育のところから始まりまして、次のページに行きまして、ライフプランニング、若者の自立支援、中退防止、そして仕事と教育の両立、DV被害者の支援、高齢者の自立という内容になっております。
 それから、「イ.雇用・就業の安定に向けた課題」のところですが、こちらも6章を下敷きにした記述になっておりまして、5ページの一番下から、セーフティネットの話がございまして、6ページに行きまして、ワークシェアリング、短時間正社員などの新たな勤務形態の話。それから、その次ですけれども、女性の雇用継続や再チャレンジの話。あと、第三号被保険者問題を含む社会保険の問題ということになっております。
 それから、ウ.のところですが、同様に「○」がございますが、最初が母子家庭の自立支援、DV被害者の自立支援、父子家庭、教育に対する就学支援、最後が外国人に対する支援ということになってございます。
 それから、6ページ、エ.のところですけれども、こちらのほうも同様に、最初男女共同参画の課題について書いてございまして、それから若者支援の話、発達障害支援、DV被害者ということで、最後に分野ごとのワンストップサービスの話ですとか、相互の連携ということについて書いてございます。
 あと、「オ・施策全体に関わる視点からの課題」としましては、多様な主体間の連携というところを引き続き進める必要があるということでまとめてございます。
 以上でございます。
鹿嶋会長
大分長いものなんですが、まず皆さんからご意見いただきたいのは、資料3-1の6章の部分、7ページ以降ですが、「○」大分増えました。大変安心したのですけれども、皆さんの意見がきちんと反映されているかどうかということのご確認をお願いしたいと思います。
 それから、ここには、先ほど白波瀬委員とか小杉委員から新たに視点が出されました。これは現状分析の中、3、4、5章あたりで書いて、更に特出するものがあれば、6章のほうに「○」で持ってくるということが今後作業として行われる予定です。
 今日皆さんに初めて提示するのが、第7章、資料3-2でございます。3-2について具体的な意見をお聞きしたいということであります。もちろん3-1についての意見も結構ですが、できましたら3-2についてご意見あればお伺いしたいと思っています。どうぞ、山谷委員。
山谷委員
済みません、申し訳ないですけど、3-1のほうから先に。先ほど阿部委員のご説明を聞いていてふと気がついたのですけれども、貧困についても地域的な違いが出てくると。つまり大都市と人口15万以下の郡部がかなり違うというところ、それを資料3-1の31ページ、(2)のア.のところ、男女別のここに入れればいいのかどうかわかりませんが、このあたり、どこかに入れていただけないかなと。そうでないと、6月で補正予算組んでどかんどかんとお金がついているんですけど、何かターゲットを間違っているような気がしていまして、そこら辺をもう少し何か考えていただきたいために、地域的な貧困の特性に応じた施策のつくりを考えてくれと。エビデンスベースの政策ということで、これが1点目です。
 資料3-2のほうなんですが、これ多分皆さんよくご存じの話だと思うんですけど、4ページ目の先ほどご説明いただいた、上から7行目、「効率性とともに経験や専門性が確保・蓄積されていく運営方法について検討が求められる」、これちょっと言葉が弱すぎるのではないか。つまり都道府県とか政令市とかいろんなところで皆さんのご関係のところで、今、何が起きているかというと指定管理者制度で、ジェンダーの主流化ならぬ効率の主流化が発生しておりまして、マクドナルドのアルバイト料よりも安い賃金で専門的な人が仕事をしている、こういう悲惨な状況が発生しているというのが散見されるわけなので、そこのところを何とか考えていただくために、ここにもう一つ何か、もうちょっと表現を強くしていただくか、きちんと効率だけではだめだと、効率一本やりでは、専門性をもう少し重視した運営を考えてくれというふうなことを入れていただきたいと思います。
 以上です。
鹿嶋会長
ありがとうございました。特に最後の指摘、大変大事なところですよね。桜井委員は補足ありますか、今の点。
桜井委員
それを入れていただけたらありがたいです。
鹿嶋会長
一番身近に感じているでしょうから。
桜井委員
はい。
鹿嶋会長
ほかにご意見あれば、どうぞ。
畠中委員
質問ですけど、特に7章、最終的にはどういう形になるのでしょうか。これは論点の取りまとめだから、こういう書き方でいいんですけど、最終的には各省に対して具体的にああせい、こうせいまで言うわけですか。
鹿嶋会長
各省までには言わない。
髙村分析官
前例で言いますと、昨年の高齢者の自立、その前の年には生涯学習のテーマで報告書を出しておりまして、そのときには具体的にどこの省がといった記述はしてございます。ただ、それもそうしなくてはいけないということではございませんので、ご相談させていただく内容かと考えております。ただ、パブリックコメントを予定を今しているところなんですけれども、その段階で入れるということを、今、考えておりませんで、もし入れるとしても最終報告の段階ではないかと事務局では考えております。
鹿嶋会長
各省どうですかね。例えば生涯学習なら、これは対象が絞られてきますからいいんですけど、かなり広範囲なんですよね。各省まで指定して、入れるような書き方ができるのかどうか、私は疑問に感じておるんですけれども、先生のほうで何かいいアイディアがあればぜひ。
畠中委員
論点の取りまとめで公表されるというならいいですけれど、もっと具体的に監視・影響調査ですから、各省に対してもっと具体的に何かやれと、ああせい、こうせいということまで考えておられるのだったら、前の例のように、省庁名まで書いて、もっと具体的に書いたほうが、各省に対してはいいのではないかと思いますよ。そうしないと、受け取った各省、ああそうですか、ということになりかねないと思います。
鹿嶋会長
今までの監視・影響調査の報告書も必ずしも各省特定はしていないんですよ。おのずとわかるだろうという、そういうような呼吸で出していますので、でも今の指摘も検討させてください。
 ほかにご意見あれば。
畠中委員
それから、1点、7章の3ページ、政策の評価のところの男女別視点の導入ですけれども、これは基本的には私も賛成でこうすべきだと思うんですけれど、資料3-3を見ると、関連する男女別のデータの有無の欄があって、かなりの省庁の施策について「×」のところがありますね。とってないと。これはとってない理由があると思うんですよね。要するに必要ないからですね。各省の施策、事務事業を評価するに当たって、男女別のデータをとる必要がないからですね。だからとってないんですね。ということもありますので、ぜひとも必要なものについては男女別のデータをとるべきだと思うんですけど、押しなべて全部、全施策について男女別のデータをとれというのは、ちょっと無理なのではないかと思いますね。
鹿嶋会長
私事で申し訳ないんですが、これについてもジェンダー分析の基本は男女別だという認識で、数年前に既に報告書出しているわけですね。ただし、とるべき調査の中でとってないというのはかなりあるんですね。ですからこれはきちんととらせるということが大事だと思うんですが、ただ、その点については、とっていただくという単純な議論ではなくて、もう少し監視・影響調査機能を強めるということが課題としてありますので、監視・影響調査を強める中で1つの手段として男女別データの徹底ということで、もう少し深い議論はしていくつもりです。ただ、今回の報告書にはこういうことも少し書き込んでいきたいということです。
横田委員
5点ほど簡単なコメントがあります。まず最初に3-1の資料の10ページ、「○」の3つ目、2行目のところなのですが、1行目から読みますと「結果としての選択の幅が狭められることのないよう」となっています。これだけですと「誰の選択の幅か」がわからない。多分意図からいうと女性の選択の幅だろうと思うのですね。それをはっきり書いたほうがいいと思います。2番目は、そのすぐ下の「○」の2行目の、この前もちょっと発言したのですが、「本人及び親の意識が弱い」という表現が、私の感覚からいったらひっかかるのですね。表現としては、例えばの話ですが、「ニートについては、女性の自立に向けての本人及び親の意識が伴わないといった指摘がある」という書き方の方がいいのではないか。つまり自立に向けての意識が伴わないといった表現がいいかなというのが私の提案でございます。
 3点目が、3-2のほうに移っていただきまして、4ページの最初の1行目、前のページから来ているのですが、若年者の妊娠の問題ですが、これは本人にとって不利な状況をもたらす場合があるということが指摘されているのですが、私はそのことに関連して、生まれてくる子どもが非常に制約受けるということがあるものですから、一言ここに、前から言われている「世代間連鎖の問題をはらんでいる」ということも加えた文章にしていただけるとありがたいと思います。
 4点目は、今のページの「・」の5番目ですが、いきなり「第二言語」が出てくるので、ここは「在留外国人」か、何か一言入れていただかないと、読む人にとって、わかりにくいと思います。
 それから、最後の点ですが、7ページ、先ほど山谷委員のご指摘にも関連するのですが、一番最後の「施策全体に関わる視点からの課題」というところなのですが、ここでは「地域の実情に合った支援が望まれる」ということが全体として書いてはあるのですね。ただ、個々人の実情というのも考慮に入れてもらいたいという気がしますので、「地域及び個々人の実情に合った」というような表現で、もうちょっときめ細かにという趣旨を書き込んでいただけるとありがたいと思います。以上です。
鹿嶋会長
ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。
袖井委員
先ほどの鹿嶋さんがご指摘になったけど、男女別でとっていても公表してないのも結構あるんですね。だから全部とれということだけではなくて、基本的にジェンダー・センシティブな統計表現をお願いしたいということもどこか入れられないか。というのは、今回、既存統計の再分析をいろいろやっていただいて、本当に新しいことが見えてきたんですね。ところが今までの白書類なんかだと、本当に決まりきった分析しかしてないんです。ですからジェンダー・センシティブな統計分析をもっと行っていくことをぜひ書いていただきたいということです。
 それから、もう一つ、今回、白波瀬委員がご指摘になったような、就労支援が役に立ってないって、これ物すごく重要なことで、どういうふうに書くのかわかりませんけれども、例えば、今、政府全体としてウェルフェアー・トゥ・ワークという考え方ですよね。それで例えば、特別児童扶養手当とか、ああいうものをだんだん削減していって、就労支援に転換するということですけれども、現実に就労支援は役立っていないということなので、その辺、どういうふうに書いていいのか、あるいは具体的な施策面まで取り上げていくかどうかわかりませんけれども、就労支援というのはそう簡単なものではないということははっきり打ち出したほうがいい。要するに働けない人たちが物すごく多いということですね。母子家庭の方たちは。ですから簡単に就労自立というふうに言ってしまわないことをぜひ強調していただきたいなと思います。
鹿嶋会長
それは3-2の7章のほうにも触れるということですね。
袖井委員
はい。
桜井委員
意見なんですが、今、母子家庭のお母さんたちがやっている全国的な、例えばNPO、シングル・マザーズ・フォーラムですとか、ああいったところで、働け、働けと言うなというキャッチが出ているくらいなんですね。それはとてもよくわかる。役に立っていなそうだというのもよくわかる。しかし、じゃ、何か現金給付していく、そういったやり方がいいのかということなんですけれども、私は就労支援というのは必要であろうと思っています。現在役に立っていないというのは、もう少し分析する必要があるのだろうと思って、皆さんも当然だと思われると思いますけれども、受け皿がないと。働く気はあります。母子家庭のお母さんたちも9割はもう働いているという状況があるわけですよね。その人たちが働いていても、最低賃金に近い職・仕事しか手に入らないという状況があります。
 それから、公共職業訓練のコースに入ろうと思っても大変ハードルが高い。それは例えばハローワークでいろいろ根掘り葉掘り聞かれて2次被害に遭ったりとか、それから、今、こういう状況で、派遣切りとかでハローワークにすごくたくさんの人たちが押し寄せると、その中で女性が行っても十分に対応していただけないとか、この間、厚生労働省より、新しい緊急雇用対策の話を聞きましたけれども、私はそういったことも必要ですが、しかし今やっている就業支援事業を本当に母子家庭のお母さんとか、ニートの女性たちとか、その人たちが実際に受けることができる、そこの施策のところを受けることができるきめ細かなというか、それがほとんどないのだろうと思うんですね。この間、5人でしたか、厚労省の方が見えたときに、例えば雇用能力開発機構の、ここは公共職業訓練のコースをつくっているところですが、その方たちに研修をなさっているんですかと、例えばこういう生活困難な方たちのチャレンジをもう一度、再チャレンジをするためのコースというのはどういうあるべきかという研修をなさっているんですかとか、それから、ハローワークのところで、DVの被害を受けた人とか、女性ニートですとか、そういった方たちのことを理解するような研修というか、その人たちにどういう支援をしていったら窓口でいいのかということをやっていらっしゃるんですか、と言ったら、全然やってないと。緊急雇用対策の中にそういったことは一切入ってないわけですよね。
 私は一律に就業支援事業がだめだということではなくて、施策としてはあるけれども、それが機能していないというとらえ方のほうが現実的ではないかというのが意見です。
白波瀬委員
桜井委員がおっしゃったところ、まさしくそのとおりだと思います。ですから就労支援をする必要はないとは言っていなくて、もちろんきめ細かな就労支援が必要であるというところは絶対そうなんですけど、もっと言うと、母子家庭の就労支援を越えたところで、労働市場の根幹的なところの問題が母子家庭の就労に顕在化しているので、結局は突き詰めたところの施策を改善していくしかありません。ですから、もっと言うと、母子家庭の就労支援という細かいところ、限定的なところではなくて、正規・非正規の間の格差の話、もっと言うと、男女賃金格差は十分解消されていませんので、そこのところがいま取り組むべき問題だと私は思います。
鹿嶋会長
ありがとうございました。どうぞ。
小杉委員
私も今のご意見に賛成なんですけれども、今回、正規と非正規の移行の壁の話が大変大事だと思ってそこに突っ込んだ分析をしたのですが、そこの部分だと思うんですよね。格差があって、そこの間には乗り越えられないものがあって、私のほかの分析では初職というのは非常に大事で、それが後々まで影響してしまう、今の、まさにさっきおっしゃった内と外がはっきり分かれている労働市場という、この国の特徴なんですよね。それにどうやってかけ橋をかけるかというところが大事で、その中で大事なのが、多分職業訓練政策のところになると思うんですが、やっているといっても、実は本当に届いてないところが問題ですね。
桜井委員
そうなんです、本当に届いてない。
小杉委員
やっているといったって、本当に受けられる人は実は少ない。雇用保険やっているといっても、受けられる人は実は少ないと同じで、やっているといっても、実は受けてない。受けるところまできちんと届いているかどうかをきちんとフォローするということが多分大事で、予算を取ってきただけでなくて、その後、誰にまで効果を及ぼしているかというところまできちんとフォローすることを省庁の中で考えてほしいと思います。
神田委員
今の就労支援のことなんですけど、おっしゃることはそうだと思うんです。ただ、年齢の問題をちょっと、最近、高齢者も働いたほうがいいというような方向が非常に強くなってきているので、ちょっとそこら辺ひっかかるんです。高齢者の生活困難者、貧困層が増えていますね。だから、その層についても働いたほうがいいという方向でいくということについてはちょっと私は無理があるかなと思っていますので、年齢層の問題をそこに加味して、ある意味ではきめ細かくということかと思います。
鹿嶋会長
母子加算については、年齢層が大体特定されてきますのでね。
桜井委員
今の年齢の話ですが、若い頃というか、母子家庭になったときに、ちゃんと正規の働き方をして、年収が二百何十万でなければ、年を行って年金だって、そこそこ受けられるという状況になりますが、今の就労の所得が百七十何万だということになると、高齢になっての年金も大変少なくなってくると、こういう連鎖があるわけですよね。ですからここでは、年齢で何とかということではなくて、ちゃんと必要なときに正規のというか仕事に、ちゃんと人生やっていかれる収入が得られる仕事に就けるような支援が必要。そうすると年金というところでも、高齢化して、いつまでも働かなければいけないという状況にならないということだろうと思うんですね。貧乏のおばあさんをつくらないためにもぜひそういうことを。
神田委員
その点には、現状での政策と、それから将来を見通した政策とは区別していかなければいけない。だから現状では高齢者が貧困層から脱出するのに働くということでは無理があるわけですよ。過去を引きずっているから。だからそこら辺をきちんと区別しないといけないと思っております。
鹿嶋会長
さっき労働市場の根幹ですけど、これは横田先生がよくおっしゃる、同一価値同一賃金のようなものがないと、これだけ非正規が増えてきますと、みんな正規というのはまず無理なんですよね。だから、その議論があまり進んでないし、現実味伴ってないでしょう。だからどうしてもそういう議論を置き去りにして小手先でやろうとしてもなかなかできないということがあって、根幹の議論に結びつくような報告書であればいいかなと思っているんですけれども、ほかにご意見あればどうぞ。阿部委員。
阿部委員
確かに根幹の議論というのが一番重要かと思うんですけれども、そこに到達するにはすごく長い道のりがありまして、先ほど小杉委員からの発表にあったように、景気がよくなっても一番先にいくのは恵まれた人たちで、一番不利な人たちは一番最後なんですよ。それを考えると、今、緊急的にその間だけでも、労働市場がよいほうに向かうのだとすれば、20年かかるかもしれない、30年かかるかもしれない。その間に何かをしなければいけないという状況だと思うんですね。そこはやはり訴えていく、根幹の議論をしながらも、いくら職業訓練をしても、出口が今のままの労働市場、また、フリーの労働市場だったら絶対にそれは無理なんです。
 実際に母子世帯のお母さんが、実は公立の保育園に勤めているけど、非正規だとか、ワーキングプアだとかというようなことが、今、起こっているので、例えばそのような雇用をもっと公の意味での母子世帯に対する直接雇用みたいなことも考えられるだろうし、あと、もう少し突っ込んだ、職業訓練以上の突っ込んだ話をするべきではないか。少なくとも検討を始めるべきではないかと思うんですね。
 あともう一点は、確かに職業訓練ですとか、労働市場も大事なんですけれども、今はとにかく悪循環を断ち切るということが重要であって、悪い労働市場にあることによって2つの仕事を持って、3つの仕事を持って体を悪くして、それでうつ状態になってとかというような悪循環を切るためにはとりあえず現金収入、現金保障というのが非常に重要だと思うんですね。そこの点は労働市場がすぐには変わらないという前提の中で、それを悪化させないために、より今、労働市場が悪くなっているのだったら、そういうところに補填しなければいけないというような視点を打ち出していく必要があるのではないかと思います。意見です。
鹿嶋会長
大変ありがとうございました。さっき、山谷委員もおっしゃったけど、効率の主流化という言葉なんですね。そうですよね。みんなそれで安い賃金で働かされているようなところがあるから、そのしわ寄せが多分母子家庭あたりに一番最初に押し寄せているのだろうという感じがしますが、非常に難しい議論で、根幹の議論が必要だと思うんですが、あしたの救済にはならないといった視点も確かにあるわけですね。まとまりがなくても結構ですが、ご意見があれば、もう少し聞いておきますので、こんな問題、すぐに結論出るなんて思いませんので、ありますか、ご意見は。もう出尽くしたと見ていいですか。
桜井委員
済みません、私が意見、先ほど言わせていただいたところの関連なんですが、資料3-1の20ページの下から2つ目の「○」なんですが、方向性というところで、生活困難を抱える女性が学び直しの職業訓練を受ける一人親家庭に対する託児サービスなどの施策が講じられたと、これでもう終わりという感じに見えてしまうので、これでは十分ではないわけなので、そこのところを、これでもうよしというニュアンスでないような書き方をしていただきたいと思います。
 それから、もう一つ、今度は3-2の、先ほど山谷委員がご指摘になった4ページの上から2つ目の「・」なんですが、「生活援助指導員や母子指導員」、こういう方たちと並んでニート支援の場合には、若者塾ですとか、若者サポートステーションといったNPOが担っているところも多いわけですよね。ですから、そういったところはなおさら根拠法がない中で、厚労省から委託みたいな方でやっていますので、大変低賃金で働いて、大事なことを担わされている。しかも途中でカットになったりとか、受託料が来なかったりとかということで、今、大変厳しい状況にありますから、ここのところで、そのことも併せて言っていただけたらいいなと思いました。
 以上です。
鹿嶋会長
どういうふうに入れるの。
桜井委員
ここのところは、母子家庭の支援のことを主に言っているのではないかと思いますので、併せてニートの自立支援についての若者塾ですとか、若者サポートステーションですか、そういったところの指導員、その人たちはNPOの人たちですので、指導員についての、そういったところへの専門性への確保・蓄積、これは同じでいいと思いますが、並べていただければいいなというふうに思いました。
鹿嶋会長
ありがとうございました。それではもうよろしいですか。
袖井委員
7番のどこに入れたらいいのか、ちょっとよくわからない。例えば5ページ目の上の「○」2つぐらいのところかなと思うんですが、例えば「役割分担意識等の影響によって結果としての選択の幅」、この辺は非常に抽象的でよくわからないのですが、同じような役割分担意識によって、男性のほうにもかなりプレッシャーがいっているということは今までも出てきたので、そのあたりもどこかにいれてほしい。、これは女性のライフプランニング支援ですけれども、ここで、横浜のNPOの方たちのお話などを聞いたら、男の子のほうにひきこもりとか、いろいろ問題があるというようなお話ありましたね。ですから現代の日本の社会における性別役割分担意識みたいなものが、女性の生き方あるいは女性の考え方を非常に拘束していると同時に、男のほうにもかなりプレッシャーがかかっていると思うので、ジェンダーの問題として、ここは男女共同参画でどちらかというと、女性に有利にというか、女性優位にと考えるのですが、そういう固定的な性別役割分担意識が男性のほうにもかかっているという問題。それから、それは父子家庭の子どもの問題ですね。先ほどの白波瀬委員の報告にもあったのですが、だからその辺、ここにも1項目ぐらい入れられないかなということでございます。
鹿嶋会長
ありがとうございました。
 今までのご意見を次の会までに反映したいと思っておりますが、更に何かあれば、いつ頃までペーパーでもらったらいいだろうか、今週いっぱい。
髙村分析官
実は次回の監視・影響専門調査会を再来週の月曜日に予定しておりまして。
鹿嶋会長
10日なんですね。
髙村分析官
できましたら、月曜日の朝とかいただけるとありがたいなと思っております。ただ、ご意見はぜひいただきたいと思っておりますので、タイミングによっては、もしかすると、対応させていただけない部分はあるかもしれないんですが、いずれにしても、まだ最終報告までは時間がございますので、タイミングについては、ご相談なんですけれども、ぜひご意見をお願いしたいと思います。
鹿嶋会長
月曜日の午前中ぐらいまでに、もしありましたら、ぜひ事務局のほうにお送りいただきたいと思います。今度の会議に反映できなければ、最終報告までには、また更に検討を加えたいと思っております。
 事務局のほうで、連絡があればどうぞ。
髙村分析官
本日は長時間にわたりましてご審議いただき、貴重なご意見どうも大変ありがとうございました。今、会長のほうからお話ございましたとおり、次回の監視・影響専門調査会では論点整理に6章をつけ、そして7章をつけるという形で、先生方にごらんいただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 日時についてなんですけれども、ご案内させていただいておりますとおり、8月10日、ちょっと迫っておりまして、近い間隔でお集まりいただくのは大変恐縮なんですけれども、月曜日、時間は同じく3時から5時までということで、場所は永田町合同庁舎第1共用会議室のほうで開催予定でございますので、ご多忙中のところではございますが、よろしくお願いいたします。
 あと、本日の資料の中で、確認いただきたいものがございまして、今まで資料としても使いましたものに加えまして、5月に開催いたしました第35回監視・影響調査専門調査会で、厚生労働省からヒアリング、説明を受けた際に、ご質問のありましたことへの回答が参りました。一度回答いただいているんですけれども、集計のタイミングということで、新しい集計を踏まえた回答ということでありますので、これをごらんいただければと思います。
 それから、本日の資料の中で、ちょっと説明足りてなかったもので、(P)と書いてあるところがあるのですが、そこはまだペンディングということで、それ以外にもまだ表現の問題で不適切な箇所は今後修正していきたいと思っております。資料3と付いているものに関しましては、今の段階では非公表ということで、お取り扱いいただけたらと思っております。
 以上でございます。
鹿嶋会長
それでは、これで本日の第39回監視・影響調査専門調査会、第14回の生活困難を抱える男女に関する検討会合同開催を終わります。本日はどうもありがとうございました。

(以上)