- 日時: 平成16年3月24日(水) 10:00~12:00
- 場所: 内閣府3階特別会議室
(開催要領)
- 出席委員
- 会長
- 大澤 眞理 東京大学教授
- 会長代理
- 岡澤 憲芙 早稲田大学教授
- 委員
- 浅地 正一 日本ビルサービス株式会社代表取締役社長
- 同
- 大沢 真知子 日本女子大学教授
- 同
- 君和田 正夫 株式会社朝日新聞社代表取締役専務編集担当
- 同
- 木村 陽子 地方財政審議会委員
- 同
- 佐藤 博樹 東京大学教授
- 同
- 高尾 まゆみ 専業主婦
- 同
- 永瀬 伸子 お茶の水女子大学助教授
- 同
- 林 誠子 日本労働組合総連合会副事務局長
- 同
- 福原 義春 株式会社資生堂名誉会長
- 同
- 八代 尚宏 社団法人日本経済研究センター
- 議題次第
- 1 論点整理取りまとめについて
- 2 その他
- (配布資料)
- 概要
○事務局から論点整理(案)について説明があり、これに基づいて次のような議論があった。
- 林委員
- 用語として、「労働者性が強い従属的契約労働者」という表現が削られて、すべて「ディペンデントコントラクター」という表現に変えられている。「ディペンデントコントラク ター」のイメージとしては、「コントラクター」という中にあいまいなものが残る。むしろ、「従属的契約労働従事者」というイメージであればいい。
- 定塚参事官
- 「労働」という言葉を使うと「労働者」であり、労働者性が強いものは、たとえ形式上は労働契約でなかったとしても、労働者と見なして労働法制を適用しようというの が労働法上の考え方だ。「労働者性が強い」とか「労働者」という言葉を入れると、労働者ではなく自営業と中間的な立場の者と、本当は労働者だが、労働者ではないと雇用主が 言っているだけの場合とが混同されてしまうおそれがある。
- 林委員
- 「労働者」と言えば、そうかもしれないが、これは単に労働に従事している人のことを指している。「者」を入れないで、「労働従事者」とすべきだ。「コントラクター」では、就 業者という概念を表すことが可能かわからない。
- 八代委員
- そもそも英語に「インディペンデントコントラクター」という言葉はあっても、「ディペンデントコントラクター」という言葉があるのか。
- 定塚参事官
- 以前、樋口教授のヒアリング時に「ディペンデントコントラクター」という言葉が使われていた。
- 林委員
- 契約のイメージが強く、就業する人を示す言葉として、なじみがない。
- 佐藤委員
- これは、リクルートのワークス研究所がレポートを出したときに書いたのが最初だ。私もメンバーだったが、一般的には使われていない。厚生労働省が「労働者」というと エンプロイーと解釈するということであれば、「就業者」という言葉を使って、「従属的契約就業者」とする方法もある。
- 福原委員
- 国語研究所では、官庁がやたらと新語の英語やカタカナ語を入れることに対して神経質だ。専門の方々もわかっていない用語についてカタカナ語を使ってしまうのはど うか。
- 林委員
- 「従属的契約就業者」か「契約労働従事者」、どちらか。
- 福原委員
- 「労働」は入れない方がいい。その文字を使うことによって、労働法規がすべて引っかかってくるということだから。
- 大澤会長
- 「労働力人口」であれば、自営業も、従業者も、失業者まで入っている。どこまでそこに神経質になるかということがある。
- 福原委員
- 「就業」で差し支えない。カタカナ語でも、例えば「フルタイム」とか「パート」、「アルバイト」はいいと思うが、そうではない目新しいものはできるだけ日本語に置き換えな いと意味が伝わらない。
- 大澤会長
- 「ライフコース」あたりがボーダーラインではないか。「ライフスタイル」はいいが。
- 君和田委員
- 「セーフティネット」は経済用語で随分使われるが、一般の人には分かりにくい。「ディペンデントコントラクター」は論外という感じがある。
- 定塚参事官
- 「ディペンデントコントラクター」という用語自体、厚生労働省でも使われておらず、書いてあることは全く新しくこの調査会で出てきたことだ。佐藤先生が言われたよう に、用語を定義して使うには日本語の方がよい。
- 福原委員
- この中のカタカナを照合したら、言い換えないといけないものがかなりある。
- 佐藤委員
- 資料38-2は平成6年と平成11年では比較できない。カテゴリーが大幅に変わった。もう一つ、「パートタイマー」のところで、「正社員として働く理由がなかった」という 者を26.2としているが、 9.0と17.2を足しているのはおかしい。
- 大澤会長
- これは5年おきの総合実態調査だが、「年々」と書くと、毎年調査をしているように受け取られかねない。「次第に」あるいは「類似の調査を経て」など。
- 佐藤委員
-
パート就業実態の個人調査で比較できる。
55ページの真ん中で「公正・透明な賃金制度を整備すること、特に」以下、「職務給を導入している場合は」と書いてあり、後ろの「賃金決定基準の明確化」というところまで全部「職 務給を導入している場合」にかかってくるが、ほかの賃金体系でも当てはまることだ。職務給をどう定義するかによるが、仕事だけで給与を払うということは国際的になくなってきて いる。仕事要素を入れる賃金制度にしていくのが最近の動きであるが、仕事だけで決めるということはなくなってきている動きと逆に、職務給を入れろと読まれるかと思った。
提案としては、職務給の場合は、職務評価の手法や職務解釈を見直すこととし、その前の部分に、「他の賃金制度も含めて賃金決定基準を明確化」する旨書けばどうか。賃金体 系のつくり方は色々あるが、透明性をきちんとしていくことが大事だ。 - 大澤会長
- それは文章が長くなる。「公正・透明な賃金制度を整備する」が全部に係るのだから、それ以下で「具体的には」として、一般論の「決定基準を明確化し、賃金表を整備 する」を先に出して、次に「職務給の場合」と限定した導入をして「手法の開発、価値の測定基準を確立すること」と2つのセンテンスに分ければどうか。
- 佐藤委員
- 28ページで、パートで30時間超えていても厚生年金に入れないとある。この内容に反対しないが、基準法の労働時間通算規定は実際上は意味がない。兼業をやれる ように無くすべきという議論がある。労働時間を通算し、時間管理をやれとなると、残業をどちらで払うかなど、実際上は兼業が難しくなるということもある。修文の必要はないが、結 構難しい。
- 八代委員
- 同じ28ページで、パートタイム、フルタイムという概念について、短時間労働者か雇用保障のない労働者かで混乱する。27ページに、フルタイムというのは、通常、雇用 に期限の定めのない正社員を想定していると書いているが、その後で「有期雇用のパートと有期契約のフルタイム」というやや矛盾したようなことを言っている。28ページの有期雇 用の短時間労働者と正規の時間で働く労働者との比較というように使い分けるべきだ。つまり、この問題ではフルタイムは雇用保障があり、パートタイムは雇用保障がないという方 に統一した方がわかりやすい。
- 定塚参事官
- 現行のパートタイム労働法では、パートタイム労働者と期限の定めのないフルタイムとを比較してその均衡を見ることとしているが、それだけではなくて、有期のフル タイムとも比較できることが重要なのではないかという提言だ。
- 八代委員
- それでは、有期のフルタイムとは何かとなる。パートタイムというのはもともと有期の中の1年契約というイメージが強いが、有期契約のパートタイムと有期契約のフルタ イムでは、何を比較するかがわからない。
- 大澤会長
- 「有期契約のパートタイム」の「有期契約の」を取ればどうか。
- 定塚参事官
- パートの前の「有期」を落としても、パートにも無期の方がいる。
- 八代委員
- パートの中の無期というのは、短時間労働者で正社員の人だ。パートには、昔からある短時間労働者という意味と、いわゆる雇用保障がないという意味が常に混在し、 読む方から見れば非常にわかりにくいので、ここをきちんと識別して書いた方がいい。パートというのは、雇用保障がない労働者と定義した上で、その中で、改めて短時間労働者と 最後のパラグラフは限定すべきだ。
- 佐藤委員
- 現行法では、通常の労働者より時間が短い人はみんなパートに位置づけられる。その人と通常の労働者を比較する。通常の労働者は、行政解釈で、いわゆる正規型 の労働者となる。いわゆる正規型社員がどんどん減っていって、1年契約で40時間働く契約社員が増えている現状では、現行法で時間が短いパートと比較できる「同じ仕事に就 いている通常の労働者」がいなくなってしまっている。1年契約のフルタイム(例えば販売員と比較するような法律になっていないので、そこを比較できるようにした方がいいという 趣旨だ。
- 八代委員
- 趣旨は全く賛成で、表現の問題だ。
- 佐藤委員
- パートタイムを通常の労働者より時間が短い人としか言っていないので、28ページのところも、「有期契約」を取ってはだめか。つまり、パートタイム労働法で言う短時間 の人と有期契約のフルを比較する。比較対象のところを広げるとしたらどうか。
- 定塚参事官
- そうすると、有期契約ではない無期のパートの人を、有期のフルの人と比較していいのか。無期の短時間正社員でありながら有期の人と比較することが、今度は逆 に適切なのかという問題がある。
- 佐藤委員
- そうすると、もとの方がいいか。基本的には、「通常の労働者」は正規だけではなくて有期でフルで働いている人まで拡張しろという趣旨だ。
- 八代委員
- わかりました。
- 林委員
- 比較の対象を、有期のフルまで拡大することによって、働きに応じた処遇の考え方の浸透につながるという趣旨だろうが、拡大することで本当にパートタイム労働者の 大きな利益につながるのか。正社員はどんどん減って、そこに有期のフルタイム社員がいるから、その人と比べてようということになる。いわば水準がやや低く、安く雇われている 人と比較しようとなると、プラスになるのか、マイナスになるか、あまりいい方向ではないような気がする。
- 八代委員
- ここが一番大事な点で、私は意見は全く反対だが、何と何とを比較するかだ。有期契約のフルタイム社員は決して賃金は高くないが、賃金の低いパートと比べれば、は るかに条件はいい。ただ、雇用保障を持っている正社員と比べれば、確かに条件は悪い。今の多様な働き方の中では、一番低いところを少しでも上げていくことは、当然、パートタイ ム社員の向上につながるのではないか。すべてを公務員のような働き方にすることは非現実的であり、望ましくもない。
- 永瀬委員
- ヨーロッパでは、そういう比較を入れるときには、今度は、有期フルタイムの人が最悪の待遇と想定されると聞いている。パートに関しては均衡処遇が明確に入っている が、均衡処遇がない有期のフルタイムについては最悪になる。そうすると、その人たちをどのように掌握するかということが一つのテーマだったように思われるが、フルタイムの有 期と、フルタイムの無期の間の処遇をどうするかということを何も入れずに議論してよいか。
- 大澤会長
- 職種が違えば、一概に有期フルタイムが最悪とは言えない。ここでの課題に限定すれば御懸念はもっともだが、原文の方がむしろその懸念が避けられるように書かれ ている。つまり、職務が同一の正社員は存在しないから均衡など考えなくていいということではなく、有期契約でフルタイムの人がいて、もう少しいい処遇を得ているなら、せめてそ の人たちとの均衡を考えろと。それが伝わるように書いてあればいいのではないかと思う。原文から削除された部分を生かせればいい。
- 佐藤委員
- 厚生労働省は折衝ではどのような主張だったのか。基本的には、フル・パートの比較の問題と、その処遇を雇用契約に定めがある人、ない人についてどうするかは別 の議論だ。これはまた別に立てないと難しい。ここは、時間の長短をメインにした方がよく、日本の場合、フルとパートといったときに問題になるのは、フルというのは正社員を想定し ているというところを、少し広げた方がいい。
- 定塚参事官
- 突き詰めた議論ではなく、無期のパートまで有期のフルタイムと比較する必要があるのかという点が指摘された。
- 佐藤委員
- そこは想定していない。無期の中で、例えば育児とか介護のときの短時間勤務で出てきている人たちは、基本的には時間比例でやっており、議論しなくて良い。
- 大沢委員
- パートの中で有期雇用の人が増えている。正社員をどう定義するかは難しいが、ある程度安定した職業プランが立てられる多様な働き方が増えることが望ましいとい うことを前提に考えると、有期・無期と書いてしまうことによって、むしろ有期を増やす可能性が多いのではないか。不安定就労が多い中で、有期契約のパートタイム労働者を増や して臨時労働者との間での均衡を図っていくことが、将来的な男女共同参画社会の形成にプラスに働くとは思えない。有期契約のフルタイム社員というのは正社員のことではなく、 派遣とか臨時社員の中で均衡を図りなさいとなっている。確かに、パートタイム労働者の労働条件を上げていって多様な就業形態が選べるようになることは重要だが、もっといい処 遇の仕事で選択肢を拡大しようというトーンで議論すべきだ。正社員とパートとして何を想定されているのかは、論点整理の中では明らかには書かれておらず、あいまいさが残って いて、その中で法制度をつくってしまうと逆に非正規を増やすインセンティブになる。
- 八代委員
- いい仕事は雇用保障がある仕事だと単に結びつけてよいのか。たとえ雇用が保障されていても辞めざるを得ない状況があり、そこに男女格差がある。男性なら、基本 的に経済的条件で動けばいいから、雇用が保障されていれば自ら辞めることはないが、女性の場合は、いろいろな理由で辞めざるを得ない場合が現にある。そういうときに、雇用 保障を厳格にすることが本当に女性にとって良いのか。逆に言えば、中途採用機会を狭めるということになる。男性だけで考えたときに通じる議論と、女性も含めたときに考えた議 論を一緒にしていいのか。雇用保障は良い面と悪い面が必ずあり、一概に雇用保障がある仕事がいい仕事だと考えることが、公務員的な発想だと考える。
- 大澤会長
- 比較の対象になる正社員がいるのに、それと比較せずに臨時だけで比べるべきだと思っている委員は一人もいない。むしろ、均衡処遇ということを、もっといろいろな ケースに適用されるように広げていきたいということが共通認識と考えていいのではないか。だとすれば、やはり削除前の原文を生かし、「しかし」の後ろに、「パートタイム労働者と 職務が同一の正社員が存在しない場合には、」を生かして、その後に「均衡を考慮しなくてよいのだろうか」と書いて、その後、「均衡を考慮するに当たっては」とすれば、比較対象 になる正社員がいない場合でも、やはり均衡ということを考えたいという意図が伝わるのではないか。
- 定塚参事官
- 修文は、各委員にも御相談しながら決めさせていただきたい。
- 林委員
- ここで、「職務が同一の社員が存在しない場合」が問題になっていた。職務が違っても職務価値が同じであればというこの考え方を、それがすべてではないにしても、そ の考え方は大事にするような記述を残したい。
- 大澤会長
- 現行のパートタイム労働法やその指針にまだ入っておらず、そこまでをここに書くのはちょっと無理だ。
- 佐藤委員
- 現行の指針でも、同じ仕事に就いている人がいなくても、基本的には仕事内容や貢献に応じて処遇しろと言っている。事実上、職務価値において処遇するということと 一緒だ。
- 大澤会長
- 指針の「職務が同一の正社員が存在しない場合」は、狭く解釈している。
- 佐藤委員
- 職務が同じ正社員がいない場合に、パートが従事する職務内容や貢献に応じて評価の仕組みをつくってくださいという書き方である。
- 大澤会長
-
「存在しない場合に均衡を考慮しなくていいということにはならない」という趣旨で、全く問題ないのではないか。
15ページ下の方に、大卒・高卒云々ということが出てくる。データも含めて補充したが、こういう逆相関はほかの国で見られるのか。 - 大沢委員
- 見られない。
- 大澤会長
- 普通は、高学歴の人の就業率が高い。だから、これは日本の特殊な異様な状況で、いかに人的資源を生かしていないかということだ。
- 大沢委員
- 柔軟な働き方というか、正社員の働き方の考え方が硬直的すぎて強い雇用保障があるがゆえに、男性をそこで縛りつけて、女性を自発的・非自発的にかかわらず辞 めさせているということが、この資料43の背後にある。諸外国で言うパートタイムは、正社員の常用パートと有期のパートと両方あり、常用パートも比較的多い。その人たちは、育児 期に常用パートに移ることによって経験を蓄積できるが、日本は、そこがないため辞めてしまい、後になってパートで参入するという特殊構造を描いている。この調査会でも、男性 の雇用保障のあり方と硬直的すぎる働き方が議論されたが、正社員の働き方に柔軟性が出てこないと、男性もいずれは辞めていくようになっていき、次世代育成支援のような、男性を巻き込んだ男女共同参画や個人単位の制度がつくれない。正社員の働き方が問題であり、そこを聖域にすると人的資源の活用が難しくなる。さらに言うと、在宅で働いている 人と専業主婦と外で雇用者として働いている人で出生率を比較すると、年齢層を比較的同じにしても、雇用者のみが低い。その他のところでは、在宅勤務の人の出生率が高い。少 子化の鍵は働き方にあり、パート就労だけではなく、在宅就労も含めて、あまりコストをかけずに子どもと仕事が両立できるような就業形態を選んで、女性は仕事と育児の両立をし ている。そういう点で、諸外国ではそういった傾向が見られないことにも触れてもいいのではないかと思う。
- 大澤会長
-
これは、簡単に補充できるような資料があるか。「逆相関が見られる。」の後ろに「しかし、」がちょうどついているから、その後ろに「諸外国ではこのような傾向は見られ ないし、我が国の大卒女性でも潜在的有業率は」と続ければいいのだが。
そのバックデータも含めて検討を。ここは、日本が女性の人的資源を全く活用できていないということを示すために非常に大切なので。 - 定塚参事官
- わかりました。
- 林 委員
- 高学歴の大卒の女性の方が、パートナーの収入が高いということと、その賃金体系が世帯主賃金であるということとの関係で出てくる。
- 大澤会長
- もちろんそうだが、諸外国では、高学歴同士の結婚でも、夫の給料が高くても妻も働いている。日本はそうではないことに問題がある。
- 大沢委員
- 若い世代で、関連が弱くはなっている。
- 定塚参事官
- 若い世代の就業率は、高学歴の方が高いので、結局、再就職の方だけ高学歴層の就業率が低くなっている。適した職が見つからないからではないか。
- 永瀬委員
- 16ページで、母子世帯について、「結婚、出産、育児等による退職後の再就職が困難」とあるが、再就職はしているが、生計維持が可能な再就職は困難だということで はないか。
- 定塚参事官
- 「結婚、出産」以下の記述は一般論で、母子世帯にはかかっていない。
- 永瀬委員
- 20ページで、妊娠・出産後の有期雇用者の雇い止めの問題で、繰り返し雇われている人は解雇できないという記述が加わっているが、積極的な面よりも、例えば育児 休業が実際はほとんど取れないという消極的な面の方が大きい。18ページでは、育児休業については、就業規則に明記していない、存在を知らない、職場の雰囲気として取りにく い場合があるとするが、有期雇用だから取れないということも大きい。
- 定塚参事官
- 前回も永瀬委員から御指摘があったため調べたが、有期職員についてそういう事例が増えているというデータが無かった。一般的なデータとして、均等室の援助事 例については、妊娠・出産を理由にした解雇等の事例が8割とかなり多いが、それが有期なのか無期なのかは、区分されていない。
- 永瀬委員
- 厳密な制度論として有期雇用者は育児休業を取得できるのか。
- 佐藤委員
- 現行法だと、基本的には有期雇用者は対象から外れている。働き続けることを前提に雇っている人が、育児でも辞めなくても続けられるようにするというのが法の趣旨 で、有期雇用者は長期の就業継続を想定されていないので、法の適用外だ。だが、通達・指針で、事実上、常用雇用者と見なせるような契約を繰り返している人については、通常 労働者と同じだと見なして育児休業が取れる。今回は育児・介護休業法の改正が国会に提出されており、一定の範囲に限って有期雇用に適用拡大する案だ。
- 林委員
- 18ページにあるように、有期雇用の更新を繰り返している労働者については育児休業も適用可能だが、そういうことを知らないという実態にある。その根拠になるのが、 解雇はできないという解釈だ。
- 永瀬委員
- 18ページの○印の2番目のところに記述を入れる必要はないか。日本の育児休業制度は、取得可能な身分の労働者が企業の了承の下で初めて取得でき、雇用保険 から育児休業給付が下りる。しかし、パートやアルバイトなど、それが得られない人たちがたくさんいる。出産1年前に有職だった人の約3人に1人はパートやアルバイトで、出産し たために無職になった人の約5人に2人がパートやアルバイトだ。こういう人たちは、育児休業を取っても今後も契約が続けられる状態で初めて育児休業給付が出てくるので、あ る意味では、条件が恵まれた一部の人にしか出ていないというのが実態だ。基本的には、正社員には社会保障でいろいろな手当てがなされたが、非正規の人には何も無い。その 格差の実態を記述しなくていいのか。
- 佐藤委員
- 子育て期間中の所得保障について、現行法上、雇用保険から出していること自体もおかしい。子育て期間中の所得保障について、永瀬委員が言われるところまで雇用 保険で適用ということはまずあり得ない。逆に、なぜ今雇用保険から出しているのかが問われる。本来、所得補償は、どういう形で働いている、働いていないは関係なく、ユニバー サリーで出すことが筋だと思うが、いろいろな経緯で、所得保障のところは雇用保険から出すという形にしてしまった。
- 永瀬委員
- それは国によっていろいろで、児童手当をユニバーサルに出すほかに、働けなくなったという事由で、一定期間だけ雇用保険から出しているという国もある。
- 佐藤委員
- しかし、自営業の人までは雇用保険で手当てしてない。
- 大澤会長
-
18ページの下から2番目の○印に、有期雇用労働者について、適用がどうなっているか簡潔に触れる。50ページで共稼ぎが「主流になっている」とあるが、資料のグラ フは01年で終わっているので、「主流となっている」と言い切ってしまえるかどうか微妙だ。「多数になっている」とするか、近年のデータを足して、言い切るか。
52ページの社会保障のところで、「給付の際は2階部分も」と、いきなり「2階」と言って理解していただけるのか。むしろ、 <2>;の方には、「1階部分(基礎年金部分」となっているの で、「2階部分(報酬比例部分」とした方がよい。 - 福原委員
- 50ページの部分は、「既に主流となっている」ではなくて、「既に世帯数は『片稼ぎ』世帯数を上回っている」でいい。「主流」というのは、やや引っかかる。
- 木村委員
- 44ページの1番目の○印、「また、各省庁において」のところ、「定員法の適用は受けない」という一文がある。これは、定員法の適用を受けないために、就業条件がど う違うかということをインプリケーションとして含まれているのか。なくてもいいなら削ったほうがいい。ここに引きずられてしまう。
- 定塚参事官
- 定員法の適用があると厳密に人数が管理されるが、定員法の適用を受けないと人数が柔軟に移動できるという確認程度の記載なので、削除しても差し支えない。
- 木村委員
- 定員法の適用を受けるか受けないかで処遇に決定的な差があって、その差が報告書の論旨と適合する場合には入れるべきだし、もう少し説明を入れるべきだけれど も、関係ないのであれば、「定員法の適用は受けない」と強く書く意味はあるか。
- 浅地委員
- 私が以前質問した趣旨は、実態はどうなのかと。トレンドとしては、法律は法律としてあるけれども、こういう裁量の部分で雇っている部分もあるのかということを聞いた ら、こういう形で書かれた。
- 林委員
- 定員法の適用を受けないがゆえに、物件費として扱われている。
- 木村委員
- 今は委託する場合も物件費だから、物件費が人間かという話にはならない。
- 大澤会長
- 削除して構わないでしょう。
- 君和田委員
-
論点整理の前提に含まれている話だろうが、労働組合が、女性の職場進出という問題に関してどのようなかかわりをしているかには、微妙な問題がある。例えば家 族手当の見直しも、流れとしてそうなっているが、それに代わるものとして、ここでは生活面への影響を勘案することを求めており、妥協的にならざるを得ない面がある。今の労働 組合は、リストラとか賃金カットという問題にエネルギーを注がなければいけないという同情すべき点もあるが、時に女性の職場進出のネックにもなりかねない部分がある。
私の会社では、昨年、組合と会社でチームをつくり、女性を生かすプロジェクトを答申した。この論点整理の前提にはもちろん組合を巻き込んだ形がイメージされているとは思 うが、もう少し労使が一緒になってやる形の運動ができたらと思う。現在の権益を守るということになってしまうと、それが女性を排除する形に働く局面がある。 - 林委員
- 御指摘のように、労働組合の方が企業の動きよりもむしろ後れているということは実情としてはあると思う。ただ、方針的には、家族手当などが男女の賃金格差が生まれ る大きな要因になっているというデータを取り、大きな賃金ダウンにはならないような配分の問題を考えて見直していくという方針を持っている。そういうことで、幾つかのところは進 んでいるところもあるが、全体としては、今の春季生活闘争の中間的な要求の中身を見ても、決して上がっているとは言えないという状況がある。労働組合も巻き込まなければなら ないとの指摘は、私も受けとめてさらに進めなければいけない。むしろ、先進的な取組みなどについて、シンポジウムで説明をしていただき、それぞれの企業の中に所属する女性た ちが問題提起できるようにという努力をしている段階だ。
- 君和田委員
- 組合には女性も入っているが、女性の間でも利害が合わないことが起きる可能性がある。また、家族手当の見直しのところに「子どもへの家族手当に振り替え」とあ るが、子どもだけなぜ残すか。組合との交渉では、原則論的な交渉も避けて通れない。合意しないとできない問題が多々あり、ぜひ組合を巻き込んだ形の運動にしていただきたい。
- 福原委員
- こういうことを社会に発信すると、経営者も時代から取り残されてはいけないので、経営のやり方とか哲学を変えざるを得ない。組合の方々も勉強していただかないと時 代後れの組合になって、だんだん支持を得られないことになってくるのではないか。実態的には、組合を指令して何かを変えることはできないので、そういう社会の空気をつくってい くということがこの目的ではないか。
- 大澤会長
- 一部調整が残っている部分があるが、中身についてはおおむね御了解いただけたと思う。表現も含めて、残りの部分の扱いについては私にあずからせていただけれ ば。
- 永瀬委員
-
50ページの下のところ、家族の再生産ということをどう考えるのかという趣旨で前回入れていただいたと思うが、個人単位化といったときに、全員が働くということを通じ て年金や失業保険などの手当てを受けるのであれば、個人単位化は可能だ。あるいは、全員が育児や介護を行ったとしても必ず働ける制度をつくった上で、働くことを通じて手当 てされるという形をとれば個人単位は可能だと思う。しかし、そうでなければ、例えば無償労働に対して社会権を与えるような形の個人単位化ということがもう一つ可能であって、そ の一番古い形が世帯主タイプだと思う。
ここでは世帯主タイプから脱して個人単位化と書いてあるが、具体的にどうするかについてあまり話し合われていなかった。3号被保険者の年金分割の問題でも、3号に限って分 割するという案だと、3号被保険者が働きに出ようと思ったときに、自分の年金が減ってしまう、分割されている場合が一番いいと。特に離婚しようと思ったら、なるべく3号にとどまっ ていた方がいいという制度だ。どういう形で個人単位化すればみんなが幸せに暮らしていけるのかということを話さずに、個人単位化と号令のように書いても、それは、例えば家族 が持ちにくくなる、子どもが持ちにくくなる、みんなが独身で働いていけばどうにか給与をもらっていける、そういう社会に向かってしまうのではないかという意味で、私は家族や児童 の配慮をちゃんと入れてくださいとお願いしたところ、こういう形で入ったのであるが、私が入れてほしいのは、社会的にどういう形で配慮するのかということだ。
その社会的配慮については、みんなが働き続けながら子どもが育てられるような制度がいいと考える人、子どもは家庭で育てるけれども、その人たちには何らかの休業補償のよ うなお金が出る方がいいと考える人、いろいろいて議論は分かれると思うが、そのことについての話があまりされていない。ここのところは、もっときちんと議論されるべきではない か。 - 大澤会長
- 2002年12月の報告書では、年金に則して個人単位化について、少なくとも3つの定義を示している。その中で、どれが正しい個人単位化であるというところまでは言い 切っていないが、一口に個人単位化と言っても、A、B、Cとこういう考え方があるのではないかと一応議論はしている。しかし、御指摘のように年金制度以外のところ、税あるいはほ かの社会保険制度についても、個人単位化とは何であるのかということはまだ議論していないので、今後の課題になってくるかと思う。
- 永瀬委員
- 例えば、「片稼ぎ世帯を前提とした制度・制度運用から、個人単位の制度・制度運用に変更し」、今まで無償で行われていた部分をどうするのかということに対する社 会的な配慮が伴って初めて個人単位化が可能だと思うが、そこをあまり書き込まないで、ただ個人単位化といってもできないのではないか。そこには、ただ単に家族の役割を否定 しないというだけではなくて、社会的な配慮を追加する必要があると思う。
- 大澤会長
- 恐らく、マーケットオリエンテッドな解釈でいけば完全に社会的な配慮のない個人単位化で行くべきだとなるだろうし、社会的な配慮がきちんとついていることによって、 本当の意味での個人単位化ができると考える方もいて、人によって分かれるだろう。御指摘のように、今まであまり議論がされていない中では、社会的配慮があってこその個人単 位と今日直ちに書き込めるとは思わない。「ワーク・ライフ・バランスを取っていくことができる社会を目指すものである」というあたりに、それがにじんでいると思っていただきたい。
- 定塚参事官
-
この部分は、前回の報告書を踏まえて、特にそれを補足するような形で書いたものであり、委員が御指摘のように、それではそのときに配慮として何が要るのかとい う議論は必要かもしれないが、今書き込むことは難しい。
むしろ、これから影響調査会で議論をしていく中で、税制等についても、どういうものが個人単位化なのか、それに際して何が必要なのかというものを議論していっていただくこと にしていただきたい。 - 大澤会長
- それで御一任をお願いしたい。それでは、私が今後事務局と確認しながら、各省と最終的に確認を行う。この論点整理については、今月中に取りまとめ、パブリックコメ ントに付し、来月の男女共同参画会議に私から報告したい。次回調査会では、最終報告の取りまとめに向けた議論を行いたい。最後に、題名について <1>;「男女共同参画と雇用・就 業制度」に関する論点整理 <2>;「男女共同参画と雇用・就業に関する制度・慣行」についての論点整理 <3>;「ライフスタイルの選択と雇用・就業制度」に関する論点整理 <4>;「ライフ スタイルの選択と雇用・就業に関する制度・慣行」についての論点整理の4つの案を示されている。
- 大澤会長
- 「ライフスタイルの選択」というのは、この専門調査会のグランドテーマなので、これは維持したい。
- 佐藤委員
- 入れた方がいい。
- 大澤会長
- 長いが、 <4>;が一番正確。
- 永瀬委員
- <4>;がわかりやすいと思う。
- 佐藤委員
- わかりやすいですよね。
- 大澤会長
- では、<4>;「『ライフスタイルの選択と雇用・就業に関する制度・慣行』についての論点整理」に決めたい。
(以上)