影響調査専門調査会(第24回)議事要旨

  • 日時: 平成15年12月17日(水) 14:00~16:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室

(開催要領)

  1. 出席委員
    会長
    大澤 眞理 東京大学教授
    会長代理
    岡澤 憲夫 早稲田大学教授
    委員
    浅地 正一 日本ビルサービス株式会社代表取締役社長
    大沢 真知子 日本女子大学教授
    木村 陽子 地方財政審議会委員
    佐藤 博樹 東京大学教授
    高尾 まゆみ 専業主婦
    橘木 俊詔 京都大学教授
    永瀬 伸子 お茶の水女子大学助教授
    林 誠子 日本労働組合総連合会副事務局長
  2. 議題次第
  3. 概要

    ○財団法人社会経済生産性本部 社会労働部長 北浦 正行氏より、在宅ワーカー・SOHO事業者について説明があり、これに基づいて次のような議論があった。

    佐藤委員
    新しい政策課題を考えるときに、在宅とかSOHOに限定してよいか。企業側は雇用者責任を回復するために業務請負で広く個人と契約しており、例えば編集のライターは家で情報機器を使って仕事をしている。在宅やSOHO固有とされている問題は、業務請負の問題と重なる。SOHOとか在宅と限定すると、ごく一部しか把握できない。業務請負といっても、例えば1社しか仕事を受けていないとか、労働時間、仕事の仕方について、事実上委託元に指揮されているものの一部は労働者性が強いとして労働法制を適用するという考え方があり、その中にSOHOも入るという施策を考える方がいいのか。もう一つは、業務請負だけではなくて、いわゆるフランチャイズのオーナーも事業主だが、業務請負でもなく、他方で、仕事の仕方、営業時間等をコントロールされていて、労働者性が高い。そういうものを議論すべきなのか。あるいは、自立させ、特定の会社に依存するのでなくて、複数の会社と契約するような方向の施策もある。その辺をどう考えるか。
    北浦部長
    SOHOの実態把握を広くとらえれば、アウトソーシングから迫っていくべきだ。SOHOの仕事はアウトソーシングになっているものも多いが1社専属かどうかという問題が残る。専属性の強く、抱え込まれている部分と、それを嫌って、なるべく複数のところと契約するという自立性を高める部分に分かれるだろうが、現状、在宅ワーカー・SOHOと呼ばれるところは、それが混在している。
    ただ、典型的な在宅ワーカーとかSOHOは、どちらかというと雇用労働・契約を敢えて避ける傾向がある。会社勤めの拘束性を忌み嫌い自立性を保っていきたい。
    しかし、SOHO・在宅ワーカーのもう一つの特徴として、必ずしも大きくならない。収入もそこそこでいいという考え方も強い。限りなく事業性を追求する方は規模メリットを追求し、ベンチャーに育つが、追加で労働者の雇用が必要な局面にくると、そこで事業規模を止めたり、仕事を他の人に切り分けて別に仕事をさせたり、規模メリットとか規模の拡大を追求しない。人間関係のわずらわしさでなくて、個人として働くという形を指向する者も出てくる。類型の中では労働者性に限りなく整理される部分もあるが、必ずしもそうでない部分も出てくる。
    本当に法的な問題を考えるのなら、在宅とかSOHOだけではなく、契約、コントラクトワークそのものも含めて、いろんな種類の類型も含めて全体的に整理をしていく方が望ましい。労働法についても、保護対象を全員かゼロかというオール・オア・ナッシング的な発想でいくのか、はっきりした区分けでなく、段階的に必要に応じ保護すべきという発想をとるのか。むしろ全体像の中でくくって整理する方がいいという感じがする。
    また、一概には言い切れないが、やはり事業者として大きくなろうというところと、現状でいいという部分、限りなく事業者になろうというところと、限りなく1社に依存するところと整理される。
    岡沢会長代理
    具体的にどの領域で膨張しそうなのか。
    北浦部長
    狭義では、データ入力とか、テープ起こし、文書作成といった軽易の労働で、やや高度になると、ホームページ制作とか、いろんなソフト、システムの設計の一部を担う。最近は、いわゆるコンテンツ制作の部分で能力を高める方がいる。会社のプレゼン資料の作成やポスター制作、雑誌の編集など。通常の産業分類、職業分類とはちょっと違った形で、才能さえあれば何でも手がけられる形になっている。
    ただ、その領域に行くには相当の経験が必要で、データ入力だけをしている世界と二分化しているのが現状で、在宅ワーカーとは主に後者を指す。
    岡沢会長代理
    これだけ技術革新が早いと、人的なスキル向上よりも、ソフトの進歩の方が早く、技術をもって始めても、ソフトに追い越される。
    北浦部長
    そのとおり。常に最新のアプリケーションソフトが必要になるという問題がある。発注者もバージョンの指示を行うので、古いバージョンだと仕事ができない。
    佐藤委員
    業務請負契約で、自営業と言いつつ、労働者性が高いところを切り出すことは、政策的に手当されていないので、必要性があるが、事業者性が高い方については、SOHOと限定する必要は無い。中小企業庁や日本商工会議所に支援策が既にある。
    北浦部長
    現実に中小企業施策の範疇に、このSOHOも取り込んできている。国民生活金融公庫はSOHO対策室を設け、金融支援をしている。しかし実態として、零細層の事業資金には届いていない。
    佐藤委員
    事業主対象の施策で、SOHO固有の問題があるのか。従来の自営業なり小規模企業の施策でSOHOが落ちてしまうものがあるのか。あるなら問題だが。
    北浦部長
    1つは、法人であるものとそうでないもの、形態の問題がある。
    佐藤委員
    それは既存の政策で手当できる。
    北浦部長
    あとは信用力の問題となる。信用保証協会等の保証要件に満たない部分もある。制度を知らない、手続が面倒ではないかと避けるという傾向もある。実態的には、例えば金融では初期の段階で、運転資金はサラ金を使っていたところが多かった。今はネットバンクの利用が増えており、夜中の12時に落とすこともある。サラ金を使う初期の段階より状況はよくなっているが、まだそれで救われる方と、そうでない方の差があり、十分ではない。
    大澤会長
    レジュメの2ページに「単純・定型的作業では報酬額が低下気味」とあるが、信頼性の高いデータがあるのか。
    北浦部長
    家内労働等実態調査での2点間での比較という意味では信頼性があるが、家内労働等実態調査自体のサンプルが一定のところに限られ、報酬の捕捉の仕方においても、もう少し検討すべき面もある。
    大澤会長
    先ほど、90年代の後半ぐらいは勤務経験のある、電機メーカーの雇用者からの独立が見られて、最近は勤務経験のない人の参入と説明されていたが。
    北浦部長
    勤務経験のある方が入っていないという趣旨ではない。最近の特徴としては、中高年のSOHOが増えている。定年退職者や早期退職優遇制度適用者がSOHOの団体をつくっている地域もある。
    大澤会長
    勤務経験があって、そこからの独立というタイプは、依然としてあるか。
    北浦部長
    傾向としての印象論としてはあると思う。
    大澤会長
    スキルのアップグレードとか、それから、独自のセーフティネットは、経済の情報知識化が進んでいると言われるスウェーデン等北欧諸国ではどうなっているか。
    岡沢会長代理
    ブロードバンドを導入するときにスウェーデンは強引なやり方を取った。世帯、地域社会及び学校をベースにして、全ファミリーにブロードバンドをほぼ強制的にセットして、研修をさせる。自宅や会社に対して最新情報のプログラムが発送されて、全問正解だとその場に証明書が送られ、プリントアウトして人事に持っていくと給料を上げていくように、教える方も教えられる方も常に技術アップをしている。それにハード産業がドッキングして、雇用の拡大につながり、ハードとソフトの方の技術革新が非常に早くなった。 今、ITへのリテラシーは非常に高い国になっており、それにハードとドッキングしたから比較的うまくいった。
    橘木委員
    やや大胆かもしれないが、昔の家内工業がSOHOという名前で、やや高級な仕事をやっているだけに見える。封筒張り、袋張りの仕事に、資料5ページの<1>から<8>という制度があったのか。SOHOとなったから<1>から<8>の政策が出てきたのか。
    北浦部長
    <1>から<8>は、私自身の勝手な整理で、今の行政がこういう整理をしているというわけではない。在宅ワークのガイドラインは、もともと、家内労働者に対する1つの指導の準則にならってつくり上げている。ガイドラインは、家内労働の対策が横滑りになっており、家内労働についても家内労働法という法体系の中で守られている。在宅ワーカーとかSOHOと呼ばれている人たちの仕事は、家内労働法での家内労働には、ほとんど当たらないとなっており、その意味では課題が残っている。一般に製造業系が家内労働の中心で、サービス業系の方になかなか家内労働法が適用できない。ところが、ヨーロッパあたりで、適用している例もある。家内労働法の適用の問題として、もう一つ別の角度から議論すべき問題だ。
    木村委員
    家内労働と在宅ワーカー・SOHOと決定的に分離するというのはどの点か。
    北浦部長
    実態的には仕事の問題が大きい。製造業の部分。それはやはり発注者との関係において、かなり従属性の高い部分であるということが1つある。家内労働の場合は契約者として自立的にまず契約をする。家内労働の場合は原材料を供給されて、加工して納めるという形をとる。家内労働でもフロッピー入力があるが、その場合には、フロッピーは業者から渡されて、その上に書き込んだものをそのまま渡すという形になる。ところが、SOHOではフロッピーは自分たちで用意したり、契約条項に応じて自分なりに判断して、その条件に沿って納めるという自立性がある。仕事の契約の立て方として、従属性と、特定の事業者との専属性が強い。
    佐藤委員
    私の理解では、家内労働法はモノづくりで、供給して、加工して、戻す。それを想定して法律ができているので、データ入力とかソフト開発が出てきて、従来の家内労働法でカバーできない。でも実態はほぼ同じで、家内労働法をどう適用するかということで、データの加工もモノづくりと一緒だと議論した。基本的に家内労働法のモノづくりの法律体系をそうじゃないところにどう適用するかの問題。
    永瀬委員
    女性の場合は比較的低収入が多くて、男性の方は比較的自立的だというが、どういう人がかなり自立的な方に働いていけるのか。その辺の鍵は何か。
    北浦部長
    統計的にはなかなかつかめていないが、きっかけになるのは能力の高さ、能力の高さはそれによっていい仕事が得られ、高い収入が得られる、その辺が分岐点だろうと思う。1つは、経験年数が上がってきて、明らかに能力が上がっていく人はそういう方向に走る可能性は高い。ただ、もともとそういうものを望むか望まないかというのは大きいので、最初からそうではなくて、これ以上やるとワークライフバランスが崩れちゃうから、ここまでしたいと頑張る方もいる。これは考え方の問題だ。

    ○続いて佐藤委員からパートタイム労働について説明があり、これに基づいて次のような議論があった。

    浅地委員
    私も、パートタイム労働法の策定を手伝ったが、そのときは、疑似パートという言葉をなくそうという話がありました。雇入通知書をつくって、就業規則の基本部分がそこに記載されるということだった。今回の議論の方向は、いわゆる英語の「パートタイム」というものではなくて、短時間正社員という概念を持ってくる。フルタイムで正規社員、パートタイマーが非正規社員という形態だったが、最近では全て派遣として、勘定も人件費だけでなく、事務費、あるいは外注費で処理するなど分かりにくい。結局、経営者が実態に即してやってきている。会社が雇う時には、その人の将来も一応予測しながら雇っている。従って、長時間パートはあり得なかったが、それが崩れてきている。正社員とパートを、どこで整理するか。入り口を同じにしろというご主張だろが、実務的に言うと、入り口が違っている。会社に入社して就職するということと、このジョブでいくら貰って、こういう条件で仕事に就くということとの違いが、パートと普通の雇用形態の間に現実にあるのではないか。入り口を同じにすると、正社員のパート化となり、賞与交通費も時給に組み入れたり、定期昇給も無くなって、必要に応じて上下する。 それから、今までのパートは、例えば、ある店を閉めるとなれば、暗黙の了解で辞めていたが、今後は仮に不都合が会社に生じた場合も就職先をあっせんすべきとなれば、実施が大変になる。入り口で短時間正社員だけじゃないパートも含めて正社員化するという議論で法が実施されるなら疑問がある。
    佐藤委員
    パートタイマーについては、地域の労働市場で初任賃金が決まる。パートタイマーでも、3年、5年勤めて能力が高まって、例えば売り場主任をやることもある。そうしたときに、正社員の売り場主任との賃金の違いは、5年前の初任賃金の格差に由来するでは説明がつかない。同じ仕事に就いていても、異なるキャリア管理という場合は、同じ仕事をしているので水準を配慮してほしい。入り口では能力差があるから、差を格付けたが5年後まで引きずるのはおかしいという趣旨だ。働く人にとっても納得できないし、企業も、そういう人を売り場主任として活用することは、人事管理上もマイナスではないか。正社員と同じ仕事をしているとなると、キャリア管理が違うにしても、バランスをとることが大事だという処遇水準均衡配慮方式だ。
    浅地委員
    現実が余りにも多様化しており、変化への対応が難しい。
    佐藤委員
    正社員に職能資格制度を導入している例があるが、パートについても資格制度を入れているところがある。その時、従来であれば、パートの売り場主任と正社員の売り場主任の資格等級を変えていたものを同じにすれば実現できる。その人の持っている能力が正社員と同じだとして売り場主任につけるのだから、パートか正社員かで物差しを変えることの方がおかしい。仕事が違えば、その人の能力に応じた処遇にすれば良いが、実は同じ仕事を雇用形態の違う人がやっていて、時間の長短以外差がない。それは以前の能力差だけでは説明できない。
    林委員
    3つ質問する。1つ目はレジュメの2枚目で、指針改正について説明された部分で、現状では労働組合内の理解の違いも大きいとされたが、これは何を指すのか。
    2つ目は、和服売り場の例を出されて、パートとフルタイム正社員では、同じ和服売り場にいたとしても、長期的に見れば違ってくるという趣旨だが、そうであれば、それはパートとフルの違いではなく、有期契約か無期かという違いではないか。
    3つ目は、パートか、正社員かという職域分離がなされているのであれば、処遇差があっていいというお話だが、その際に、現状でも、パートタイマーの中での女性の比率が7割ないし8割ある中で、職域分離のところに性の偏りが生まれてきた場合、性の偏りがを生まれて処遇差があっても良いとならないか。
    佐藤委員
    最後の点については、基本的には仕事が違えれば比較対照が無い。パートと同じ仕事に就いているフルタイマーがいない場合、比較対照がないので、低いとか高いとか言えない。その場合は、今パートが就いている仕事なり、その人の持っている能力に応じて合理的な処遇が行われているどうかを議論する必要があるが、比較対照がない以上フルとの比較はできない。均等法の方で、職域分離をなくすことは別の形でやっていくが、パート労働法の範囲では、処遇についてはそういう議論しかできない。職域分離のあり方を変えていくということは勿論やっていかなきゃいけない。
    2番目の点で無期か長期かだが、事実上今のパートタイマーの人の半分は有期契約でもない。それを除いて、和服売り場で和服を売るということに業務を限定として、その専門に雇われているパートタイマーがいるとする。その人については、例えば出来高で給与を決めている。一方で正社員が和服売り場に配属された。この人については、将来和服のバイヤーにする、あるいは和服だけでなくて、婦人関係の服のバイヤーにするとして、キャリア管理の一環として例えばそこに3年いるとする。そうした場合、正社員については出来高ではなくて、従来の職能資格制度の中で給与を決めて、賃金制度を異にする合理性がある。正社員についても出来高にすべきといっているわけではない。同一処遇決定方式にしなくてもよく、賃金制度を異にする合理性がある。キャリア管理の実態として、同じ仕事をしていても、賃金制度、処遇決定の仕組みを異にする合理性がある。これをキャリア管理の実態という。ただし、同じ仕事をしているのだから、2倍も3倍も給与差があるのはおかしく、処遇水準については均衡を配慮してくださいというのがルール6だ。経営側が管理キャリア管理の実態が違うといいながら、事実上、異動させていない実態があっては困る。ただ言っているだけじゃだめで、実態がなければだめで、ただ、処遇制度を異にするというだけで認めているというわけではない。
    1番目、これは企業別組合については相当違う。経営側とほぼ同じような考え方を主張している組合もあり、一部では、本当に同じ仕事なら同じにしなきゃいけないと言っている人もいる。均等なり均衡をどうすればいいかについては、企業別組合の中でも、ばらつきがある。企業別のばらつきを産業別としてまとめる努力や連合の立場も理解しているが、経営側のばらつきとそんなに変わらない。
    浅地委員
    外食産業では、店長が本社から派遣されて、いろいろな訓練も本社から来て、働く人たちだけがいて、そのうちに慣れてきたから、君、店長をやりなさいといわれる。キャリアを積んだパートタイマーはそれなりに遇する道を開いた方がいいと思うが、パートというのは入り口でジョブという考えをもっている。
    佐藤委員
    キャリア管理として、パートについてジョブを限定して雇用していて、正社員についてはジョブを限定していない。このように正社員とキャリア管理が違うことがあるなら、同一処遇決定方式はやらなくてもいいと言っている。従って、同一処遇が適用されるのは四、五%で、これは狭すぎるという批判がある。ただ、原則を決めることが大事だと考える。これをどう広げるかという問題はあるが、たとえ5%であっても、つまりキャリア管理の実態も同じでなければいけないが、同じであれば、処遇も同じにしなければいけないという原則を打ち立てたことは大事だ。
    大澤会長
    ここで、来年度の税制改正について、個人住民税の均等割制度の見直しが男女共同参画と関係している。改正の内容と改正がもたらす影響として考えられる論点をまとめているので、その内容を簡単に事務局から説明願う。
    定塚参事官
    現行制度の個人住民税均等割の制度の概略について、税額としては、都道府県民税として1,000 円、市町村民税として2,000 円から3,000 円、市町村の人口規模によって額が決定されており、この合計で3,000 円から4,000 円の均等割という住民税がかかっている。均等割・所得割とも非課税となる者については、生活保護を受けている者、障害者、未成年者、老年者、その他給与所得が一定水準以下の者については非課税。均等割のみ非課税となる基準としては、現行では均等割を納める夫と生計を一にし、同一区市町村に住所を有する妻という規定があり、昨年末の本調査会の報告の中で、個人住民税の均等割については、規定に明示的な男女差が存在するということを指摘。
    今回の税制改正の中で、均等割について見直しをしようという方向性が出ている。具体的には、政府税制調査会答申にも、「均等割の納税義務を負う夫と生計を一にする妻は、いくら所得を得ていても均等割は非課税とされる。課税の公平の観点から、この非課税措置を廃止すべきである。さらに、均等割の税率は、これまでの国民所得や地方歳出等の推移と比較すると低い水準にとどまっており、その税率の引上げを図る必要がある。また、市町村の行政サービスは人口規模別に見ても格差がなくなってきており、市町村民税均等割における人口段階に応じた税率区分を廃止すべきである。」とされている。本日、夕刻に与党の税制改正大綱が出る予定だが、この大綱の中では、政府税調答申とほぼ方向を一にしており、まず、均等割については妻の非課税措置を廃止する、ただし、来年度は、とりあえず非課税措置を継続して、再来年度から2か年で段階的に廃止するという方針と聞いている。段階的にというのは、再来年度はまず2,000 円、その次は 4,000円という形で均等割をかけるという予定だ。
    更に、この額について更に引上げを図る、特に国と地方の間での税のあり方ということを今後見直す中で均等割、所得割を併せて住民税の引上げを図るという議論もなされている。
    こうしたことで改正が行われると、男女共同参画への影響はどうかという論点については、規定の明示的な男女差が撤廃される点は評価できる。ただ一方で、一定金額以上の収入のある妻へ、均等割課税が開始されると、わずか4,000円だが、課税後の手取り逆転現象が起こるおそれがある。所得が100 万円を超えると課税されるということになる。課税後の手取りが、4,000 円の範囲だが逆転する。現行の配偶者控除や特別控除制度については手取り逆転現象は解消されているが、パートタイム労働者が就業調整をするという問題が起こっている。一方で4,000 円とはいえ、制度の中で逆転というものが生じてしまうと、就業調整問題に影響を与えるおそれはないかと若干懸念される。
    次に、現行の4,000 円では大した話ではないからということであったとしても、今後引上げということになると問題を生じさせるおそれがないかという点。
    更に課税最低限の問題で、給与所得が一定水準以下のものについては、この均等割が課税されないという仕組みだが、課税最低基準を決めるに当たって、控除対象配偶者等の数というものを勘案して最低基準を決めるもで、夫が会社員で妻が専業主婦、子ども2人の場合には、均等割と260 万円から課税される。一方で、そういうものがいない妻、共働き等の場合には、年収100 万円から課税され、課税基準が変わる。
    大澤会長
    9月まで当専門調査会の委員でいらっしゃった神野教授に事務局がいろいろと御教授を受けてきた。問題の根本は、住民税均等割は税としての性格があいまいなために、男女共同参画社会に与える影響が複雑になっているとのこと。もともとの均等割のコンセプトは、家屋敷を所有している人に対して実際に住んでいなくても、地域社会の費用を分担させる会費というような、戸税あるいは物税的な性格があったのが、近年において個人の所得額を課税基準とするというふうに人税としての性格が強くなってきたのに、戸税の性格も払拭されていない中で、配偶者とか、扶養親族に控除額を設定する世帯の最低生活費への配慮というのも、所得税本体と同じように複雑に大きな配慮がなされている。このように税の性格があいまいであるために影響が複雑だという御指摘だ。今後税額を上げていくとなれば、そういった税の性格をきちんとピュアなものにしてからということが望まれる。いかがでしょうか。
    大澤会長
    それでは、本日御欠席の委員の御意見も伺った上で、この件については、この調査会としての意見を報告として取りまとめたい。案文は事務局で作成し、明日にでも各委員にお送りする。その上で意見をお持ちでしたらお知らせいただき、その後の進め方については、私に一任していただけると幸いです。いかがでしょうか。

    (「異議なし」と声あり)

    大澤会長
    ありがとうございました。次回は1月26日、月曜日の16時から第25回会合を開催する予定です。

(以上)