影響調査専門調査会(第20回)議事要旨

  • 日時: 平成15年6月26日(木) 10:00~12:00
  • 場所: 内閣府第3特別会議室

(開催要領)

  1. 出席委員
    会長
    大澤 眞理 東京大学教授
    会長代理
    岡澤 憲夫 早稲田大学教授
    委員
    大沢 真知子 日本女子大学教授
    君和田 正夫 株式会社朝日新聞社専務取締役編集・出版担当
    高尾 まゆみ 専業主婦
    永瀬 伸子 お茶の水女子大学助教授
    福原 義春 株式会社資生堂名誉会長
    佐藤 博樹 東京大学教授
  2. 議題次第
  3. 概要

    ○はじめに、慶応義塾大学教授 樋口 美雄氏より、男女共同参画と雇用システムについて説明があり、これに基づい て次のような議論があった。

    岡澤会長代理
    日本は、北欧型とは違い、労働と経営が歩調をとるメカニズムをもっていなかった。サービス残業をする 心理をどう分析したらよいのか。進んでサービス残業をすることが、仲間の雇用機会の喪失に繋がることになぜ気付かな いのだろうか。
    福原委員
    経営者は成果を求めるため、能力が高い人に仕事を割り当てる。この結果、サービス残業も増える。賃金と 能力をどう考えるかを根本的に考える必要があるのではないか。
    君和田委員
    例えば、記者の場合、人数を増やすとワークシェアリングによって残業時間が減るような性質の仕事では ない。サービス残業が単にサラリーマンの忠誠心や恐怖感のみで成り立っていない場合もあるのではないか。
    福原委員
    仕事を多くこなすことによって自分の能力が上がると考える人もいるのではないか。また、日本の場合は、互 助的精神が強いためもあるのではないか。
    樋口氏
    サービス残業について、それに従えない人たちを排除してしまうという外部効果をどう考えるかが問題ではない か。
    大沢委員
    常用雇用が減った分、30代の若年層の子育て中の男性の労働時間が長くなり、妻の負担が増えるといった 問題もあるのではないか。
    樋口氏
    あると思う。また、一方で、従来では会社を背負っていくと思われた者が、自分の生き方に疑問をもち、就職して 2~3年後に退職し、もう一度学校に入り直すという選択肢も増えてきており、会社にとって問題ではないか。そこで、私は リカレント教育のキャリアブレイク制度などの提言をしてきている。
    大沢委員
    残業をさせた方が企業にとって合理的な仕組みは変えていく必要があるのではないか。
    樋口氏
    労働基準法や施行規則に、残業の割増賃金の算定基準となる賃金に諸手当が含まれないと定められてい る。税制、社会保障制度における働き方に対する中立性の観点からも、このように法律が介入していることは疑問であ る。
    坂東局長
    雇用主が半分負担をしている社会保障費を回避しようと、正社員を減らすといったことはあるのだろうか。
    樋口氏
    業種によってパート比率が異なり、働く側にとっての中立性の問題と同時に、雇い方についての中立性の問題 があり、労働の資源配分を歪めているのではないか。
    特に国際競争をしている業種はパート比率が低い分社会保障費負担があり、国内産業は社会保障費負担が少ない分、 割と優遇されている。
    佐藤委員
    拘束性とは、時間の長短ではなく、会社が勤務地や労働提供範囲等の人事権を持つ度合いによるのではな いか。
    また、会社が人事権を持つことに対する見返りとして雇用保証があるとすれば、その拘束性を緩めて人事権を制約する際 に、雇用保証の程度も分けなければいけないのではないか。
    樋口氏
    労働時間比例でなく仕事によって給与を決める裁量労働の議論が起こっているが、結果としては労働時間が長 くなってきている。そこで、裁量労働へ女性が進出しにくい面もでてくるのではないか。企業の中での階層化に繋がること も懸念される。
    また、経営側が、労働時間短縮に反対した理由は、給与が時間給で図られていないからではないか。ワークシェアリング の議論の際には、一般労働者についても時間給という考え方をする必要があると思う。また、パート労働者の有給休暇の 日数も、時間比例にして一般労働者と同じにした方がいいのではないか。
    佐藤委員
    有給休暇も時間換算にする必要があるだろう。また、均衡処遇を考える際に、法が従来の正社員とそれ以外 を想定しており、フルタイムの有期契約とパートの比較を考慮していないのは問題である。雇用の変化に合わせた法の見 直しが重要ではないか。
    大澤会長
    時間外割増賃金の計算基準賃金に諸手当を含めることによる、最終的な目標は、企業が諸手当を整理統合 して基本給に振り返ることと考えていいのか。短期的には、残業代が高くなった分残業を増やす人がいるかもしれないが、 長期的には、家族的責任がある人の残業が割高になるため、企業がそれを避けるために諸手当を整理統合して、基本給 に振り返ると考えられる。
    樋口氏
    家族手当を出す要因を行政が作っているのはおかしいのではないかということである。
    なお、通勤手当は非課税であるため通勤手当は企業の負担になっていない。また、東京の通勤圏の拡大にも関連してい る。
    佐藤委員
    通勤手当をなくすと、郊外に住めなくなり東京がスラム化するデメリットもあるかもしれない。
    樋口氏
    郊外にある企業に勤める人が多くなるのではないか。
    福原委員
    通勤手当がなくなり、東京が巨大化していくことについてどう考えればいいのか。
    樋口氏
    通勤時間が長くて通えないため、東京の企業ほど有配偶女性の少ないところはない。通勤問題は深刻である。
    大澤会長
    EUでは、男女平等、家族的責任の分野での再規制化が進んでいるが、アメリカも判例によって事実上規制 がかかっているということか。
    樋口氏
    そうだと思う。
    君和田委員
    日本の企業、産業界の大きな関心の一つは能力開発であるが、開発した人間が転職することは企業に とってつらいことだ。
    樋口氏
    企業が個人の能力開発の成果を活用することも必要ではないか。また、今までは、国が教育訓練を実施する企 業や機関を選定して助成金を出した結果、利用者側のニーズをあまり汲んでなかったのではないか。機関助成ではなく、 個人に直接助成し、個人が選択できる制度に変えていくことが必要なのではないか。
    永瀬委員
    労働市場の規制改革について、派遣期間3年の契約社員が増えると、契約更新がされにくくなる女性が増え るのではないか。最近の規制改革は女性の雇用にどういう影響を与えると考えるか。
    樋口氏
    臨時雇用の男性の割合は少ないが、30、40代の男性の伸びが大きい。従って、男女共同参画は、企業の枠、 雇用形態の枠を越えた均等をどう確立するかという問題に踏み込んで議論した方がいいのではないか。
    大澤会長
    男女共同参画というと、いわゆるキャリア女性の利害を優先しているのではないかという誤解がある。正社員 の所定内給与の男女格差は、諸外国に比べ大きいが、着実に縮まってきており、職種間、雇用形態間の均等、あるいは 派遣のような雇い主の違いによらない均等を追及することが、男女共同参画の裾野の強化に繋がるのではないかという ことか。
    樋口氏
    それを言いたかった。正社員間の男女格差の問題、パート間の男女格差の問題だけでは問題は解決せず、職 種、働き方を超えた均等の問題に取り組む必要があると考える。

    ○ 最後に事務局から、男女共同参画に関する国際比較について平成15年版男女共同参画白書を基に、また、税制・社 会保障制度を巡る主な動きについて資料に基づき説明があった。

(以上)