影響調査専門調査会(第14回)議事要旨

  • 日時: 平成14年7月24日(水) 10:00~12:00
  • 場所: 内閣府第3特別会議室

(開催要領)

  1. 出席委員
    会長
    大澤 眞理 東京大学教授
    委員
    大沢 真知子 日本女子大学教授
    小島 明 日本経済新聞社常務取締役・論説主幹
    高尾 まゆみ 専業主婦
    橘木 俊詔 京都大学経済研究所教授
    高山 憲之 一橋大学経済研究所
    永瀬 伸子 お茶の水女子大学助教授
    林 誠子 日本労働組合総連合会副事務局長
    福原 義春 (株)資生堂名誉会長
  2. 議題次第
  3. 概要

    ○高山委員から、中間報告の年金部分等を中心にした論評がなされた後、次のような議論があった。

    大澤会長
    税制や社会保障にも中立的でない面があるとしても、雇用システム、とりわけ男性の働き方を見直すべきだという問題意識は当専門調査会で共有している。雇用シス テムのあり方は労使が決めることがらではあるが、今後当調査会で、時間をかけた検討を計画している。
    林委員
    雇用システムについて、すべてが政府の政策ではないが、雇用形態、雇用管理区分等、政府の政策と深い関与があり、これまで絞り込んだ家族手当等のテーマでない ところに問題があると考えている。
    大沢委員
    労働需要側の変化を考える必要がある。また、パート問題、社会保障の適用拡大を考える際に、雇用慣行において、労使関係は非常に大きな影響を及ぼしていること が重要である。女性への影響ではなく、使用者側が労働者を使うときにどう影響を与えるかという議論が必要ではないか。
    高山委員
    現在は、使用者が名目賃金を下方調整できる状況にある。少なくとも、中長期的には、労働生産性が上がらない限り、適用拡大など制度が変われば手取り賃金が減 るのではないか。
    永瀬委員
    雇用面での問題が重要であると思う。どこまで踏み込めるか、難しい点はあるが、もっと議論に入れるべきだと思う。パートの手取り賃金が減るかどうかは雇用システ ム全体の中でパートの位置づけをどうするかとも絡むのではないか。
    また、任意加入の時期に、女性の7割がすすんで保険料を納めていたのは、納めがいがあったためである。共働きは相対的に納めがいが低い現在の制度を前提として、納めるこ とを強要することは、悪い結果を生むのではないか。つまり納めないよりも納める方がよいと感じられる制度にするようパートの加入を考える必要がある。
    高山委員
    保険料の拠出を給付に反映させるべきであるが、専業主婦に保険料を負担させるという解決法しかないのか。むしろ国民年金の保険料を定額から所得比例に変え、 その給付も所得比例に変えて拠出と給付のリンクを強めるという方法もあるのではないか。
    林委員
    男女共同参画社会としてもう少し持続可能な社会作りに向け、社会的な負担をする側に女性も参画できることを前提にした仕組作りのため、負担面を考えていたのでは ないか。
    高山委員
    今後の負担増は免れないが、社会保険料か、税金か合意形成が難しい。片働き世帯も税負担をしており、専業主婦世帯が負担をしていないとはいいきれないのではな いか。社会保険料の引き上げという形で実質的に賃金税を増税する方向は、将来にとって望ましくないと考える。
    大澤会長
    当専門調査会での課題は、どういう制度が望ましいのかではなく、現行システムにどういう歪みがあるかを数定量的に実証することである。従って、中間報告書は、第 3号被保険者制度を前提にした書き方であるが、「直接間接に何らかの形で負担」するという場合、間接とは給付面での調整を含んでいる。問題が大きいのは遺族年金であること も、分かりにくい形ではあるが埋め込んである。
    小島委員
    日本の年金、税制、男女共同参画問題、雇用も含めて、縦割りでなく、横につないでいく仕組みを同時に考えなければいけないのではないか。
    また、個人の各ライフステージで選択肢を増やし、その選択の効果が異ならない様チェックするということも必要ではないか。
    高尾委員
    家事は機械化できて子育てのみが残るのではなく、家事は短時間で省略化できても、最後まで残る部分が子育てか家事か割り切りにくい。むしろライフとワークのバラ ンスが悪いので、男性はライフ、女性はワークにもっとかかわりたいという話を進めていく方がいいのではないか。また、日本的雇用問題が問題であっても、男女共同参画の視点 から、日本の社会の半分をしめる女性も充分な負担をし、働くという方向性を出していくことも重要ではないか。
    永瀬委員
    多くの場合意外と子育てが余り論じられないまま女性の社会への参画が論じられてきた。家庭内で誰かが無償労働をして子供を育てる社会か、社会的に子供負担を 考慮するのかなどを考えなければいけないのではないか。
    大沢委員
    高山委員の意見は、女性のための年金改革をしても、日本では、非正社員は時間の選択はできるが賃金が低く、もっと雇用不安になり、二極分化が進み、本当に女性 にメリットなるのかどうかを議論したらどうかということか。
    高山委員
    おっしゃるとおりである。
    大澤会長
    労働力率と合計特殊出生率の関係について高山委員から指摘があったが、他の研究も参照しながらサンプルを増やす、他の相関をとるなど、今後も研究をしていきた い。
    高山委員
    サンプル数を増やすべきというわけではなく、構造的に同じと思われる国の中で、どういういうことがいえるのかが大事ということを問題提起したい。
    小島委員
    構成員が安定している国の時系列のトレンドなども参考になるのではないか。
    大澤会長
    時間的変化はおもしろい研究である。子育てに関しては、男女共同参画会議の下に仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会が設けられ、その専門調査会の 議論や提言を踏まえた支援策が昨年閣議決定されている。

    ○次に事務局から、中間報告への国民からの意見や、政府における税制等の検討状況について説明があった。(配布資料2、3)
    会長からは、専門調査会長名で政府税制調査会の会長に宛てに意見を提出してはどうかとの提案があり、今後意見をまとめ、提出することになった。その内容、提出等は未定とさ れた。

    ○最後に中間報告の見直すべき点について次のような議論があった。

    林委員
    均等待遇を進めていくことは連合で一致している。さらに、今後は、連合の考え方を整理し、もう少し明確に意見を述べた方がいいかと思う。
    一方、パート労働者の年金適用を拡大した際に、手取りが低下して就業意欲をそがれ、就業が低下するのではないかという意見があるが、一時的にあっても長期的には改善され るのではないか。むしろ、国の支援策をどうするのかはある。
    大澤会長
    流通業界では、パートの戦略化を図り待遇を改善するなど、経営側の動きが速いという印象があるがどうか。
    福原委員
    その通りで、能力と仕事の要求の可能性で、どのようにも市場価格は変わり、流動化してきている。
    大澤会長
    従って、一律に手取りが減るのでなく、能力や意欲に応じて個人別に開いていくのではないか。
    林委員
    日本型という限り、仕事に対する賃金評価は出来にくいと考えていたが、純粋な年功制というのはなく、日本でも、熟練度に応じてなど仕事評価は取り入れられるのでは ないかと考え始めている。
    大沢委員
    報酬をお金でなく、時間でもらうという考え方もできる。男性の生き方を変えるとは、時給が同じでも、時間の選択や働き方の選択をするということではないか。

(以上)