影響調査専門調査会(第11回)議事要旨

  • 日時: 平成14年4月15日(月) 16:00~18:30
  • 場所: 内閣府第3特別会議室

(開催要領)

  1. 出席委員
    会長
    大澤 眞理 東京大学教授
    委員
    大沢 真知子 日本女子大学教授
    岡澤 憲夫 早稲田大学教授
    木村 陽子 地方財政審議会委員
    小島 明 日本経済新聞社常務取締役・論説主幹
    高尾 まゆみ 専業主婦
    永瀬 伸子 お茶の水女子大学助教授
    林 誠子 日本労働組合総連合会副事務局長
    福原 義春 日本労働組合総連合会副事務局長
  2. 議題次第
  3. 概要

    ○前回に続き、男女共同参画会議影響調査専門調査会中間報告に向けた議論を行った。

    高尾委員
    都市部への人口の集中と小家族化は、男性雇用者の勤務先中心のライフスタイルとあいまって家庭運営の負担感を過重にしているのではないか。
    福原委員
    個人化を推進すると、家庭の所得というよりは合計所得が増えるというように、矛盾がない表現にする必要があるのではないか。
    永瀬委員
    女性の方が就職率が悪く、若年層で非自発的に契約社員や派遣社員になる人が増えているのではないか。また、結婚を理由に退職する人は減少しているが、出産を 契機に退職する人は増加傾向にあり、育児休業を取得する権利者がそもそも少ないのではないか。
    大澤会長
    女性の就職率、男女別の新規学卒者入職比についてもふれてはどうか。
    木村委員
    未婚で親に扶養されている女性の扶養控除等についての問題意識も必要ではないか。
    大澤会長
    いわゆるパラサイトシングルについては少子化問題とも連動する点もある。
    林委員
    パートタイム労働者の年収分布は90万円から100万円のところにあるが、時間単価を見ると1,000円直前に山がある。時給1,000円は結構高いという指摘もあるが、1800 時間働いて180万円であるから決して高くない。パートで生計を立てようとする人は少しでも時給を上げてほしいが、就業調整をする人により、時給が上がらないということもある。
    大澤会長
    就業時間と年収調整だけではなく、賃金率の引き上げに消極的な傾向もあるということをふれてはどうか。
    木村委員
    103万円と130万円の壁について、103万円で就業を辞める人が多いのだから130万円の山がないのは当然であり、社会保障制度に影響しないとはいえないのではな いか。
    永瀬委員
    ここでわざわざ影響がないといういう必要があるのかどうか。データの検定はまだであるが、130万円で山があるという見方もできる。
    大沢委員
    税制をきちんと理解している人が少ないからではないか。
    福原委員
    130万円が障害になっているのは確かだが、山があるといえるデータがあるといえるのか。
    大澤会長
    130万円の山については、検定が済んでいない現段階では言及を避けたい。
    小島委員
    経済の大停滞の中で、現行制度のままでは生産年齢人口の減少過程が将来どういうインパクトを及ぼすかについても押さえておく必要があるのではないか。
    大澤会長
    労働供給の拡大は、生産年齢人口が減少する局面で非常に重要なので、ふれることにしたい。
    木村委員
    公的年金の当面の課題は、就業調整に象徴される中立性の問題を解決することであり、世帯配慮の制度についてはオプションにするということではないか。
    林委員
    影響調査会の重点は、中立性を確保する手段として、個人単位化を進めることが基本であり、それを弱める表現は避けた方がよいのではないか。
    大澤会長
    現時点で世帯単位を強制していることをやめるという点は明確であり、書き方は工夫したい。
    大沢委員
    雇用システムについて、正社員と非正社員といった区分を見直し、どのような雇用形態を選択したとしてもそれによって不利益を被らないよう、労働市場の環境を整備 することも重要ではないか。
    大澤会長
    提案どおりにしたい。
    大沢委員
    また、現状の労働形態の多様化は必ずしも多様な選択肢を働く側に提供してきたわけではないので、働く側にメリットを生むような多様化が望ましい。また、そのために は、正社員、非正社員という区分をなくし、雇用形態の違いではなく雇用契約や仕事の違いによって賃金が異なる制度に変更し、同一労働同一賃金の原則が適用できるような環 境整備が望ましいのではないか。
    林委員
    有期・無期という雇用契約の違いが格差を生んでいるのではないか。
    大澤会長
    正社員、非正社員といった区分を見直し、同一労働同一賃金の原則が適用されるような環境整備が望ましいのではないかという表現にしたい。
    林委員
    年金分割について夫婦の合意した妻分の保険料を、妻の保険料納付の記録に振り返るということは、雇用主が本人のみならず妻分の保険料も支払うということか。使 用者側からすれば、本人でない人の負担をすることに疑問が生じるのではないか。
    大澤会長
    使用者側は本人の分を負担し、本人が私的に妻と年金を分け合うということであるから、使用者側が妻の分を負担することにはならないだろう。年金分割については、 給付での分割、保険料での分割、将来の年金受給も含めて離婚時に財産分与するというような分割と、少なくとも3通りあり、私自身は保険料での分割がよいと考える。また、年金 分割が可能となる選択肢を検討するにあたって、婚姻期間などの条件を厳しくした上でというように限定しなくてもいいのではないか。
    永瀬委員
    夫が世帯賃金として高い賃金を採っている場合には、夫から年金を分割すればいいが、夫の賃金が下がったら夫婦ともに貧しくなってしまう。3号被保険者の妻考慮が もう必要ないとしても、幼い子供や要介護者の無償ケアにフルタイムで従事している者についての社会保障のあり方に関して配慮が必要なのではないか。
    大澤会長
    スウェーデンのケースについては、岡澤委員からの事前のご指摘通り正確に修正したい。また、日本的雇用慣行とは、単に勤続年数が長いことから正社員に高賃金を払うほど甘くはないので、典型的なパターンとはいえないのではないか。
    福原委員
    長期継続就業は、スキルアップの効率的な手段というよりも使用者、雇用者双方にとって安心ということが大きいのではないか。
    大沢委員
    長く勤めて技能形成があれば、賃金が上昇することに合理性もあるのではないか。
    日本では若いときには生産性が低く、その後は生産性よりも高い賃金が年功的な賃金として支払われる場合は、高齢化によって人件費のコストが上がるため、合理的ではないという意味か。また、正社員の定義が諸外国と異なることに問題がでてきているのではないか。
    坂東局長
    年功序列、長期雇用慣行のすべてに合理性がないわけではなく、特に高度経済成長時代に企業側に技能確保の面でメリットがあったが、現在ではかなりの合理性が 失われたにもかかわらず、慣行が残っており、合理性のもとに適用される者は限定されるだろうという意味である。
    林委員
    正社員と同じ仕事をするパートタイマ-は勤続年数が長くても低賃金に甘んじている事実も踏まえてほしい。

(以上)