影響調査専門調査会(第10回)議事要旨

  • 日時: 平成14年3月28日(木) 16:30~17:30
  • 場所: 内閣府第3特別会議室

(開催要領)

  1. 出席委員
    会長
    大澤 眞理 東京大学教授
    委員
    大沢 真知子 日本女子大学教授
    岡澤 憲夫 早稲田大学教授
    木村 陽子 地方財政審議会委員
    高尾 まゆみ 専業主婦
    林 誠子 日本労働組合総連合会副事務局長
    福原 義春 日本労働組合総連合会副事務局長
  2. 議題次第
  3. 概要

    ○男女共同参画会議に報告するため、今までの影響調査専門調査会の議論をまとめた文書ついて議論が行われた。

    福原委員
    従来の制度・慣行は、男性の就労や労働の選択肢、つまり、ライフスタイルの選択肢を狭めているのではないか。また、 フレキシブルで働きやすいという理由でパートタイマーを選択する人が増えていることも事実である。
    林委員
    基幹的パートだけでなく、パート全体を念頭においた雇用形態・処遇の見直しが必要ではないか。
    高尾委員
    男性のライフプランの選択の幅を狭める要因を解消すれば、家庭・地域社会には非常にプラスになるのではないか。
    大沢委員
    処遇全体の見直しではなく、働き方の見直しをするのではないか。
    大澤会長
    就業時間の長短といった働き方はもちろんだが、どう報いられるかということが重要であるので、処遇への言及は必要 である。
    坂東局長
    転勤を拒否しないなど拘束性が強い形で働けば、将来年功的に処遇されるという点で処遇は全体に関わることではな いか。
    林委員
    非正規雇用者について、無期契約であるか有期契約であるかが一番の問題であり、今後整理をしたほうがいいのでは ないか。
    木村委員
    今の社会保険の加入は時間で区切っているが。
    大沢委員
    派遣社員であっても厚生年金の適用率がかなり低いので、実態と合わせた提言をする必要があるのではないか。
    大澤会長
    男女共同参画会議への報告する文書については、従来の制度・慣行は、男性のライフスタイルの選択肢を狭めている ということ、また、正社員のみの拘束性の解消ではなく、パートタイマー等を念頭におきつつ、雇用形態や処遇全体の見直 しが必要ではないか、という整理にしたい。

    ○次に、雇用システムアンケート調査報告書について、第七回影響調査専門調査会における概要報告からの追加部分 は従業員の性別による諸制度(家族手当、社宅制度、退職年金制度など)の違いである旨の説明があり、報告書は公表 することになった。

    ○最後に、前回に続いて、特に雇用システムの議論を中心に中間報告に向けた議論があった。

    林委員
    ワークシェアリングの分類のうち、早期退職については、日本は会社主導であり、年金支給の時期を早めることもない 点が諸外国と違う。また、オランダモデルの場合は、均等待遇を前提としている。諸外国の例を出す際には、誤解がない ようにしてほしい。
    岡沢委員
    北欧諸国では、失業率が非常に高くなると労働組合費の支払いが少ない若年労働者の失業率が高くなるため、高齢者 に年金を優遇して早期退職をしてもらったという経緯がある。
    大沢委員
    諸外国のパートタイマーの定義は、有期契約か無期契約かに基準がある。諸外国では、無期契約の正社員の短時間 労働に様々な雇用形態があるが、日本では正社員でなく非正規社員になる。さらに、正社員は労働時間や就業形態を自 発的に選択できない点が問題ではないか。
    木村委員
    ワークシェアリングについて、諸外国では年金優遇策を高齢者の早期退職策と同時に行ったが、最近は財政的な問題 から縮小しつつあることも踏まえた方がよい。
    林委員
    同一労働同一賃金については、日本ではまだ確立されていないが、前向きな表現にして欲しい。また、低賃金に甘んじ るのは基幹的パートタイマーに限らない。諸外国では、企業別、産業別の労働協約で職種ごとの賃金が決定しているが、 パート条約、パート指令があったから可能だったのではないか。
    大沢委員
    大企業の正社員のうち、男性の労働者数は減りつつあり、リストラは進行してきている。その流れで横断的な賃金等の 対応が必要になってきたのであり、否定的な面ばかりではないのではないか。
    大澤会長
    オランダモデルについて、横断的な職種別賃金が成立していたが、改めて条約や法律で原則として確立した上で踏み 出したという経緯がある。
    また我が国でも、成果主義・能力主義的な要素が賃金決定に取り込まれつつあるという点で、横断的な賃金が成立す る可能性があるのではないか。
    林委員
    成果主義、能力主義は賃金全体の一部分であり、職務賃金という要素が見えなくなってしまうのではないか。また、大企 業との格差は7割以下であり、横断的な職種別賃金にいきつつあるとはまだ言えないのではないか。
    木村委員
    雇用システムの将来的方向における太い軸はどこにおくのか。
    大澤会長
    家族主義的な処遇から個人単位の処遇、働きに応じた処遇へということではないか。
    木村委員
    働きながら両立しやすいようにするということも大きな柱ではないか。
    大沢委員
    安定的な雇用の仕組みの中で、労働時間の選択ができれば、男女関わりなく両立ができるようになるのではないか。
    岡沢委員
    ワークシェアリングをするときの視点は3つある。1つめは高い失業率を解消するため、2つめは国際競争力を維持する ために賃金水準を抑えるため、3つめは社会の成熟化、ライフスタイルの多様化に伴い、労働時間の短縮、時間への需 要がうまれる点であり、ワークシェアリングを後押しする。従って賃金格差だけでなく、諸外国との労働時間、年休等の違 いも踏まえていく必要があるのではないか。
    木村委員
    生涯時間を、学ぶ、働く、余暇と分けた場合、例えば中高年の女性が大学院を出ていても職につけないような事態もあ るので、年齢差別を禁止する等、生涯時間の配分を弾力的に設計できるようにすることも必要ではないか。
    大沢委員
    日本では正社員の満足度が非常に低い。時間の価値が高まり、需要が高まっているのに提供されていないから、結局 生産性を低めることにつながっているのではないか。
    林委員
    男女共同参画の観点からワークシェアリングを見たときに、自己労働時間を自己選択しているという観点も必要ではな いか。
    大澤会長
    前文については、どうか。
    高尾委員
    家庭や地域地域社会においても性別に偏りがあり、社会問題もある。女性の就労はそのような問題解決の面もあり、女性が働くのは収入を得るためだけではないのではないか。
    福原委員
    ライフスタイル、ライフサイクル等、調査会において用語の定義をしておく必要もあるのではないか。
    大澤会長
    様々な制度・慣行がライフスタイルや世帯の実態に適合しない度合いを広げた結果、家庭や地域社会でも問題が生じ ており、中立化することによりメリットがあるということではないか。

(以上)