影響調査専門調査会(第6回)議事要旨

  • 日時: 平成13年11月29日(木) 16:00~18:00
  • 場所: 官邸大食堂

(開催要領)

  1. 出席委員
    会長
    大澤 眞理 東京大学教授
    会長代理
    岡沢 憲芙 早稲田大学教授
    委員
    大沢 真知子 日本女子大教授
    木村 陽子 地方財政審議会委員
    小島 明 日本経済新聞社常務取締役・論説主幹
    高尾 まゆみ 専業主婦
    橘木 俊詔 京都大学経済研究所教授
    永瀬 伸子 お茶の水女子大学助教授
    福原 義春 (株)資生堂会長
  2. 議題次第
  3. 概要

    ○日本労働組合総連合会から雇用システムに関する考え方について説明があり、次のような議論が行われた。

    高尾委員
    非正規労働者でも良好な雇用形態として、納税や社会保障負担も担えるような仕組みがよいのではないか。
    日本労働組合総連合会
    パート労働者だからといって、有期契約とすると、これは育児休業などを例にみても働く側からは非常に不便である。無期契 約にしたからといって定年まで働く、あるいは働かせるものでもない。パート労働も含めいろいろ多様性を考えて、無期契約の 形態を多くしていく方が社会保障や納税といった面が安定すると思う。
    有期契約というのは、この期間これだけの仕事が特別に生じたという事に限るのが本来の姿である。
    大沢委員
    パートの中にも有期と無期があり、無期契約のパート労働者も増えている。要は非正規・正規と分けることで、大きな労働条 件の格差があるということであろう。また、社会保障の加入問題でいえば、パート労働者と派遣労働者にはそれぞれ加入要件 があり、経営者はその要件以下に抑えて、非正規を使いたがる傾向があり、改めてほしいとのことであろう。
    日本労働組合総連合会
    使用者側が2,3ヶ月の契約を更新し続ける傾向があるのは、税制や社会保障制度の問題があるからではないか。また、育 児などで無期契約労働者が離職すると、労働市場に戻る選択肢はほぼ有期雇用しかない。そこでこうしたことがないように無 期契約の身分のままで、週の労働時間を調整して仕事ができるといった多様化を進めるべきと思う。
    橘木委員
    連合の組織はフルタイマーの男性中心で大企業がメンバーである。そうでない人達の要望についての説得力をもって要求で きるか。
    日本労働組合総連合会
    連合では、2000年の春季生活闘争から、パートタイマーの賃金を1時間10円上げるという目標を立て、パートタイマーの人た ちも含めた均等待遇に近づけることを社会的な問題と認識して取り組んでいるところである。パートタイマーの人たちの声を聞く ために、各地方連合ごとのパート週間などでは、地域のパートタイマーの人たちと一緒に集会や学習会を開いたり、相談ダイヤ ルを設置したりという取りくみを始めたところである。
    橘木委員
    連合内部で、パートタイマーとフルタイマーの問題で利害が対立するときはどうするのか。
    日本労働組合総連合会
    連合としては、問題提起をしながら、単組での取組を期待することになる。パートの賃金や条件を上げるという均等待遇に近づ く取組をすることによって、双方が共存できれば業種の先細りを防ぐことになる。流通関係では実績も上がっている。
    木村委員
    我が国の賃金は年功賃金であり、扶養手当等を含む生活給という色合が強い。また、年金の報酬比例部分はこの生活給に 比例しており、二重の家族配慮になっているのではないか。
    日本労働組合総連合会
    そう思う。男性の世帯賃金に対して女性は低い賃金のため、年金の報酬比例部分に差がつく上、加給年金も加わり、不合理 である。
    大澤会長
    有期・無期というのは、正社員と非正社員、正規・非正規と理解してよいか。
    日本労働組合総連合会
    同じ労働をしていながら労働の尊厳を損ねるような言葉ではないかという気持ちから、正規という言い方はあえて使わなかっ たが、指摘のとおりである。
    大澤会長
    当調査会は当面、社会保障制度や税制と、それと連動する企業福利厚生制度などの影響について審議を集中をしている。し かし、本日の議論のとおり、正規・非正規という区別が社会保険上の扱いや税制の扱いと連動している部分がある問題にも、 当調査会として取り組んでいると御理解いただきたい。

    ○次に、事務局並びに大澤会長からワーキングチームの研究経過に関する説明があり、次のような議論が行われた。

    木村委員
    各国の社会保障制度を調べる際には、稼得期だけでなく、生涯を通じた見方というのはやはり必要ではないか。
    大澤会長
    当然、生涯を通じる受け払いが重要になってくる。この専門調査会の中間報告で、年金改革案にふれた方がよいのではない か。
    坂東局長
    男女共同参画の視点からライフスタイルに中立性があるかどうかという視点ははっきりしていると思う。
    大沢委員
    3号被保険者の問題は、企業が非正規依存に傾いてきているため、日本全体にとってマイナスの影響をあたえているのでは ないか。
    永瀬委員
    女性は結婚や出産の際に仕事をやめる人が多く、そのことによって家族が成り立っていくような雇用のあり方や3号被保険者 の制度を変える必要があると思うが、経営者側の考え方は従来から変化していないように感じる。
    福原委員
    労働形態は変わるし、夫婦の問題も流動的になることを考えて先のことを考えていくか、現状を追認して別に先の部分を構築 するかが議論の分かれ目になるのではないか。
    木村委員
    就労に関して中立的という問題意識が重要であると思う。

(以上)