第29回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成16年7月1日(木) 13:00~15:00
  • 場所: 内閣府5階特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      岡沢 会長代理
      浅地 委員
      木村 委員
      佐藤 委員
      高尾 委員
      橘木 委員
      永瀬 委員
      林  委員
      福原 委員
  2. 議事
    • (1) モデルケース・ワーキング研究について
    • (2) 「ライフスタイルの選択と雇用・就業に関する制度・慣行」についての報告取りまとめについて
    • (3) その他
  3. 議事内容
    大澤会長
    時間も参りましたので、ただいまから男女共同参画会議影響調査専門調査会の第29回会合を開催いたします。
     皆様におかれましては、お忙しい中御参加いただきまして大変ありがとうございます。
     議事に先立ちまして、事務局で人事異動がございましたので御紹介ください。
    推進課長
    皆様に御挨拶が遅れましたが、参事官をしておりました定塚です。今度、推進課長ということで、引き続き男女共同参画の仕事を進めてまいります。
    参事官
    後任で参りました塩満と申します。どうぞ今後とも御指導をよろしくお願い申し上げます。
    大澤会長
    それでは、お手元の議事次第に従いまして本日の審議を進めてまいります。本日は、調査会報告の取りまとめに向けた議論をいただきたいと考えております。
     事務局から、本日の議論のため、「論点整理に関する意見募集の結果」、「調査会報告(案)」、さらに「最近の税制・社会保障制度を巡る主な動き」について資料を用意していただいております。
     また、私から1点、御報告ですけれども、去る6月10日に、論点整理について、自民党内閣部会及び女性に関する特別委員会及び男女共同参画推進協議会の合同会議において説明申し上げる機会があり、佐藤委員、高尾委員とともに説明してまいりました。
     高尾委員、佐藤委員、どうも御苦労さまでございました。
     参加した議員の方からは、専業主婦の子育ての重要性や家族の役割の重要性について御指摘ないし御質問を受けております。報告に向けた議論の前に、モデルケース・ワーキングチームの報告について、今年1月の専門調査会で永瀬委員、橘木委員から中間報告がなされましたが、最終的な報告について概要を説明していただきます。
     それでは、10分ぐらいでお願いいたします。
    永瀬委員
    資料5の「ワーキングチーム 報告(案)」を御覧くださいませ。
     総務省「全国消費実態調査」という、全国の家計簿の調査を平成11年と6年の2年度間を用いまして、税制・社会保障あるいは保育政策等が暮らしにどのような影響を与えているか、そのシミュレーションをすることが、私がおりますワーキングチームの目標でございました。
     この「全国消費実態調査」は、夫と妻それぞれの収入実額がわかるものですから、また、子ども属性、同居、高齢者等様々なことがわかりますので、住民税、所得税につきまして、あるいは社会保障関連につきましては、比較的正確にその世帯についての計算式をつくることができます。その上で、男女あるいは夫婦の収入のあり方、雇用等、そしてまた、こうした性格がどのような影響を与えるか等をテーマとしまして、この分析をいたしました。
     それでは、まず3ページ目からですけれども、「夫婦それぞれの年収の分布」で、夫婦の収入分布を見たものが4ページになります。4ページを御覧いただきますと、ちょっと見にくいので、かえって表2-1の方が見やすいかもしれません。一番左側の6%、8%、12%というこの辺が、男性の世帯主の勤労年収分布です。それによりますと、年収 301万円から 1,000万円未満ぐらいまでの分布が男性は大変多うございますが、女性については、ゼロが大変多くて、次いで 103万円までが多い。この図2-1で棒グラフが、左側が多く立っているのは、無業の妻が多いからです。次に高いのが 103万円というところになっております。
     5ページ目は、「勤労者世帯以外も含めた夫婦の収入分布」でございます。時間がないのでグラフを理解しているひまもないうちに進んでいくかもしれませんけれども、よろしくお願いします。
     こちらは、引退世帯や自営業等も含めました。かえって、引退しますと女性も年金をもらえることから、ゼロという人が若干減ります。そういったことがありますので、男女の格差は、勤労者世帯以外の方が縮小します。勤労者世帯では、夫と妻の収入の格差は非常に大きなものがあることを図2-1が示しております。
     次に6ページ、7ページです。時間もありませんので概要だけを申し上げますと、男性と女性で、普通雇用の場合、パートの場合、公務部門で働いている場合、賃金がどのように決定されているかを諸変数の関係を見たものです。既に様々な研究で指摘されているところですが、男性の場合は、年齢が上がると賃金が上がる傾向が顕著である。それに対して女性は、その傾向が大変薄い。この家計簿からの推計で見ますと、女性の公務部門では最も年齢評価が高いのですけれども、それでも男性の全般よりはずっと低いですし、さらに男性公務部門に比べると年齢の評価が低いものになっている。つまり、男女で収入の評価が違うことがここには示されております。その結果であるのか、そういう働き方であるのか、家計内での男女の収入の格差は、労働統計での男女格差は既によく知られているところですが、家計内の収入部分の格差は、実はこれまで余り指摘されてこなかった問題であり、統計上も少ないのですけれども、労働統計以上に大きいものがあることが示されております。
     8ページが、では何%くらいなのかと。勤労者世帯では、女性の収入は平均で男性の収入の19%です。家庭が円満であれば夫婦の収入合計が重要で、夫婦の収入割合は重要ではないという考え方も一方にあるかもしれませんが、収入関数を見ますと、様々な選択の中で夫婦の収入貢献が様々であるカップルがいるというよりは、妻は低収入という選択以外には選択肢が少ないのではないかと考えられるほど一律に夫婦の格差が大です。また、就業継続を望む女性が増えておりますし、離婚等も増える中で、さらに失業リスクが高まっている中で、やや格差が大きすぎると思われます。
    大澤会長
    表の2-5ですが、右側は妻の年収ですよね。左側は勤労収入の対比なので、右側は勤労収入以外も含めた年収総額ですか。
    永瀬委員
    左側は勤労者世帯のみです。右側は、引退世帯、自営業、勤労者、すべてを含み、しかも、農業収入から事業者収入から全部を含めたもので見たものです。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。
    永瀬委員
    10、11ページは、社会保険や税金の算出方法ですので後で御覧ください。
     その結果として夫婦の年収階級ごとに税金や社会保険料の平均値を算出したものが12、13ページです。この年収階級の中でも、もちろん子ども数あるいは扶養者の数によって金額は違うわけですが、全般に言えることは、先ほど、分布は、男性は 301万円から 1,000万円ぐらいまでが多いということを申し上げて、女性の収入はゼロや103万円未満が多いということを申し上げましたけれども、夫の年収が 500万円ぐらいまでは税金はきわめて低い。それに対して、表3-2で御覧いただけますように、社会保険料は低収入層でも高いものになっています。税金はかなり累進制ですが、社会保険に関しては低収入層でも一定割合で取られていることがここに示されております。
     次に15ページですけれども、これは「妻の就業形態別にみた勤労者世帯の世帯総収入と推計税金額」です。総収入を右軸にとって、妻の働き方によって世帯の総収入の合計が同じでも税金や社会保険料が違うかどうかをチェックしたものが表3以降になっております。詳しくは御覧いただきたいのですが、概要を申し上げますと、税金に関して言えば、パートの無税等もありますので、パートとそうではないところと若干違います。それから、収入階層がかなり上がってきますと、給与所得控除が効いてきますので、夫だけが働いている世帯よりも2人の給与所得控除がある世帯の方が税金が安くなります。
     それから、次の図3-4ですけれども、社会保険料は上限があります。例えば、年金に関しては62万円が標準報酬月額の上限になっておりますけれども、男性1人の場合は、上限がそこでストップしますけれども、夫婦とも高収入であれば上限が2倍になりますので、社会保険の場合は高収入共働きの負担が大と逆の効果が出ている。
     しかし、17ページの合計の効果を見ますと、人がたくさんいる 700万円、 800万円あたりのところでは、妻の働き方による負担の差はそれほど大きくなくて、若干あるとすれば、パート等で妻が非課税で収入がある世帯の負担が若干安くなっているということであろうかと思います。そして、収入が高くなった層では、夫だけが働いている世帯の税額あるいは社会保険料をプラスしたものが一番高くなっております。
     19ページからは、高齢者の年金受給の状況を男女別、年齢階級別に分けてみたものになっています。
     20ページは、どこに高齢者がいるかを見たもので、図4-1ですけれども、65~69歳層を見ますと、子どもと非同居の高齢者、つまり高齢夫婦世帯が大変多うございますが、75~84歳層になると、御主人が亡くなられること等あるのでしょうが、子ども夫婦に引き取られる母親、つまり子と配偶者と高齢母の世帯が増えています。そして、75~84歳層を見ていただきますと、今後の高齢化社会では大変重要なことだと思いますけれども、子どもに引き取られる世帯が増えると同時に、高齢女性単身が非常に多いことが見ていただけると思います。
     21ページは、そういった世帯がどういった年金受給をしているかということですけれども、女性は全般に低く、特に子に引き取られているような女性が低い。低いために子どもが扶養するのかもしれませんけれども、ここの家族機能がしっかりしなくなって年金が低いときにいろいろな問題が起こり得るだろうということが言えるかと思います。
     次に、23ページは、そういった世帯属性別に、世帯に対して年金がどのくらい給付されているかを見たものです。これで見ますと、夫婦2人の高齢者世帯の年金給付は驚くほど高いものが多い。もちろん少ない方もいらっしゃいますけれども、世帯の年金給付が 350万円以上という世帯が大きな山で存在する。これに対して、子どもに引き取られた女性に関して言えば、無年金がかなり高い。ですから、どういう家族で暮らしているかということは、ある程度年金が決定しているのかもしれませんし、あるいは、逆かもしれませんけれども、女性は全般に年金受給水準は低いが、高齢夫婦2人で暮らしている世帯においてはかなり潤沢な移転を現役世代から年金給付という形で受けていると解釈してよいのではないかと思います。
     26、27ページに参りまして、これは前回既に御説明いたしましたけれども、高齢夫婦世帯のものです。その世帯の年金の額の差は、女性年金の差というよりは、男性の年金額の差が主にその効果を生んでいます。2こぶラクダになっているのは、男性でも国民年金中心の方と厚生年金中心の方がいらっしゃるということでございます。
     28ページは、高齢夫婦2人で住んでいる世帯に占める女性の年金の部分です。女性の年金は全般に低いため余り変わりませんので、世帯に給付される年金額が増えるほど女性の年金割合は落ちます。ただし、年金額の給付が 350万円以上の階級では、女性の年金が夫婦の年金額を引き上げる世帯も相当数いると見ることができます。
     次に、子どもに対してどういう給付がされているかということです。「全国消費実態調査」では、子どもが保育園に行っているかどうかがわかりますので、それに対して国が定めた保育単価を掛け合わせます。乳児が預けられていれば保育単価は高いですし、3~4歳児になると下がりますけれども、その地域で一体どのくらいの法的保育が供給されているかという視点で見たものが表5-1でございます。それで見ますと、例えば6歳以下の子どもがいる世帯の平均に占める、そうした世帯が平均として供給を受けている公的保育ですけれども、例えば東京近県では6歳以下の子どものいる世帯平均が年間で9.5 万円です。これは大変低いことを意味しております。例えば北陸の29万円、四国の24万円、この辺がとても高い。これは何かといいますと、児童に占める保育枠数が多いので、保育単価で計算した保育の給付がこういった地域では高い。ところが、保育問題が顕在化している大都会の東京や大阪においては、これで見ますと9.05万円、大阪で13.31 万円。これは何を意味しているかというと、保育枠そのものが、大都会で、既存ストックとして非常に低いことをあらわしております。
     31ページは児童手当の支給額の分布ですが、これは飛ばします。しかし、高齢者に対する給付と比べますと、非常に金額が低い。最近は、所得制限が緩和されてほとんどの世帯がもらえるようになりましたけれども、給付額そのものは、さっき見た 350万円以上とか高齢者夫婦世帯への移転に比べますと、最高でも年間36万円がほんの一握りで、子どもが4人いる世帯で36万円という程度で、大多数が6万円です。
     次に、33ページ、シミュレーション1で「保育園の拡充が女性の労働供給に与える影響」でございます。36ページの結果を御覧ください。0~5歳の子どもがいる世帯につきまして、以前、厚生労働省の社会保障の経済分析研究会に参加したときに、全国の自治体に際して、保育園の供給状況のアンケート調査を1996年に実施したのですが、この自治体調査を「全国消費実態調査」とマッチさせまして、自治体で、例えば5歳児に占める保育枠が潤沢であるかどうかということが、女性の労働供給にどういった影響を与えているかを見ました。実際に有意な影響を労働供給に与えます。では、シミュレーションとして、保育供給を 1.5倍にしたらどういう影響があるか。あるいは、保育の低年齢児を人口の3割に、保育の幼年齢児を人口の5割に整備したらどういった影響があるかを見たものがこれです。
     一番大きな女性の行動変化を引き起こすのは、夫の収入の下落とともに保育の供給量の増加が起こるケースです。下から4つ目の、保育の低年齢児枠を最低3割、幼年齢児枠を最低5割にするというケースのところでは、正社員選択が13%から19%へと増え、パート選択は若干増えるだけという形です。無職選択は71%から66%へとそれほど大きくは減りませんが、働き方としては正社員の働き方が増えていく方向に大きく作用する。特に低年齢児の拡充がそういった方向に作用する。一方、幼年齢児の拡充は、正社員とパートの両方の選択を増やす。それから、夫の収入低下はパート選択を増やすといったようなことが、このシミュレーションの結果わかることです。
     これをどうとらえるか。つまり、これほど保育枠を増やしたのにこれくらいしか増えないではないかととらえるか、それとも、保育園というのは親子の厚生水準の改善のために必要なものであると考えて整備をする、あるいは、次世代育成という視点を入れて整備する必要があると考えてするかどうかということでございますが、ここで特に注意を喚起したいのは、待機児童問題が大変大きくなっており、少子化も著しい東京近県、大阪近県ではストックそのものが大変低く、他の地域に比べても給付が低いという事実です。ですので、ここに書いてあるような、幼年齢児5割、低年齢児3割というのは、例えば埼玉県や横浜市あたりでは夢のような話ですが、是非にそれが必要なのではないかと考えております。
     続きまして、37ページ以降がシミュレーション2で、配偶者手当、配偶者控除、配偶者特別控除などの諸制度による手取りの下落額による女性の就業選択の変化の推計でございます。これはどのように推計したかというと、配偶者手当は、この調査会が行った調査があり、産業別、企業規模別に累計した平均値をこの「全消」のデータに外挿しました。そして、現実には配偶者手当がない企業もありますが、ここでは、配偶者手当があるが、それが妻の年収が 103万円を超えるとなくなるという仮定で計算しています。夫が公務員の場合は130万円としています。それで39ページを御覧いただきますと、週当たりの労働時間を1時間、すでにパートで働いている人が延ばした場合、どういう収入変化があるかを上記の仮定に基づいて推計したものですけれども、世帯収入がむしろ減ってしまう人が5人に1人です。つまり、5人の1人のパートが、週1時間だけ労働時間を増やし、年間で60時間の労働時間を増やすと、配偶者手当が103万円でカットされるという仮定に基づきますと、むしろ世帯収入が減るような予算制約に直面していることを示しております。
     40ページは、週労働時間を3時間延ばしたケースです。これは2こぶラクダのようになっていますけれども、3時間延ばしますので、パートの壁、制約に面していない人たちは、もちろんそれに比例して収入が増えますが、制約下にある方たちは、収入が余り増えないことになります。このケースで世帯収入がむしろ減少する人が14%ほどおります。
     41ページは、1日の労働時間を1時間程度延ばしたケース、つまり年間で 480時間も長く働いたケースです。これでも収入の増加が極めて低い方々がかなりいます。この方たちは、配偶者控除、配偶者特別控除、配偶者手当等の影響によって、働いても実質の手取りが増えない方たちです。
     42ページには、ケースが書いてあります。aさん、bさん、cさんのケースです。この中で、aさんは配偶者手当分しか影響が出てこないのですが、この方は子どもが3人いるという想定で、税金がほぼゼロですのでそういったことになります。
     では、cさんがなぜこれほど大きく落ち込むかといいますと、この方は夫の収入が100万円を超えるので配偶者特別控除を得ていませんので、夫の税金増と配偶者手当の減少分が一気にかかってくるので大きく落ち込んでおります。
     では、bさんはどうかといいますと、この方は配偶者特別控除がありますので、パートの壁付近では配偶者手当の落ち込みしかないのですが、しかし、その後、長い期間をかけて配偶者特別控除分の税金を消化していきますので、限界的に税率はこの3人の中で一番高いものとなっております。
     このような形で、全員に予算制約を課してシミュレーションを行うのですが、年間労働時間を60時間増やして収入が落ち込む人は、合理的に考えれば、労働時間を増やさないという仮定に立って人々が選択をするというモデルに基づいて、労働供給行動のパラメーター推計をしたのが44ページの推計結果でございます。
     そのパラメーターに基づきまして、45ページからは、配偶者手当、配偶者控除、配偶者特別控除、すべてを一度に廃止したような税制で行ったものですけれども、労働時間が非常に延びるというのが、表7-4の結果でございます。とりあえずこういう推計結果が出ております。結果数値はまだ若干、ワーキングチーム内部で検討したいと思いますが、労働時間が延びる方向に作用することは間違いないのではないかと思います。
     最後に、48ページの「おわりに」がまとめになっております。保育政策については、特に低年齢児保育の拡充が正社員選択を増やす。幼年齢児保育の拡充は、正社員とパートの両方を増やす。そして、夫の収入の下落と同時に保育政策の拡充がある場合に、大きな就業行動の変化が出るというのが結論です。
     よく保育園の枠を、定員を何人増加するという目標が掲げられますが、これは、あまりよい目標ターゲットではないと思います。むしろ、目標にすべきなのは、児童数に占める保育枠数であると思います。待機児童がなぜ減らないかというと、定員を増やしても需要が誘発されるのだと言いますが、それは違う。どちらかというと、待機が多い自治体で、保育園の枠そのものの供給が少なく、むしろ需要を過度に抑えている。その結果として、供給が増えると需要が出てくるということです。大都会については、もっと高い目標をぜひ設定しなければいけないことをこの分析は明確に示しております。
     次に、配偶者特別控除についてですけれども、これは、パートで働いている約6,000人だけに対して推計したものですので、無職者の推計、常勤の人の推計は除かれたものです。しかし、パートの賃金水準の低さに比べて、配偶者控除、配偶者特別控除、配偶者手当が与えるゆがみの規模が、諸外国でも例を見ない大きさですので、多くのパート女性がこの壁を意識し、そこに調整していることがこのデータからも明らかに見ることができます。そして、このゆがみをすべて取った場合にどういう行動変化が起こるかといいますと、そこで制約されていた人が、かなり労働時間を延ばすことが予想されるのがシミュレーションの結果です。
     しかし、保育政策あるいは低所得配偶者優遇政策を変えれば大きい変化が起こるかといえば、これだけでは不十分です。何よりも男女の賃金稼得の水準が非常に違う。夫と妻の賃金の年齢評価がまるで違うことを考慮しなければいけない。雇用機会均等法によって男性の働き方が女性に開かれていきましたが、それは、家族や、子どものケアをしないで済む人たちに与えられた「名誉男性席」と言っても過言ではないほど家庭のケア責任を取りにくい働き方であったと思われます。
     なので、結果として、このような法律ができましたが、子どもが主に家庭内で主婦によって育てられている状況はその後も変わらない。主婦が低賃金で、世帯主男性が生計維持するというレジームは、雇用機会均等法以後も続いてきたと考えられます。しかし、これは、特に若い世代にとっては感覚に合わないものになりつつあることが、結婚の低下や出産の低下となってあらわれたのではないかと考えられます。
     そして、第3に、このワーキングチームの提言ですけれども、やや議論が飛躍しますが、企業が配偶者手当を廃止した場合、この原資をどこに使うかということです。私といたしましては、当該企業のパート賃金の拡充に使うべきだという議論を展開したいと思います。そうしますと、今まで受け取っていた人は主に夫、今度受け取る人は主にパート女性と受け取り手が変わってしまいますが、パート賃金の上昇が社会的な合意として望まれているとすれば、企業が社会的な負担、従業員の連帯としてこれまで配偶者扶養手当に使ってきたその原資は、パート女性が労働者として自立できる賃金を得るような方向で使われるべきではないかと思います。
     家族をケアする被扶養配偶者に対する配慮を企業がすることで社会がうまく回る時代には、こうした考慮は時代の要請にかなっていたものであったに違いありませんが、妻が生涯扶養されることを前提にできない時代に入り、そうした手当が、あるいは、そうした配慮が女性の労働供給への大きな制約と低賃金化に影響を与えているような中においては、パート賃金と正規雇用賃金の格差を縮小する方向に賃金構造を変えるべきです。また、正規雇用者に対しては、もっと賃金を増やすというよりは、むしろ、より柔軟に家庭時間を確保できる方向が必要。以上から、この配偶者手当の原資はパート賃金の拡充に使われることが社会的に望ましいと考えております。
     最後に、本稿では、高齢期の年金受給と児童期の社会的給付についても検討いたしました。高齢期の給付は、過去からの約束とはいえ、現役からの移転という視点で見ますと、世代バランスとして公平とは言えないほどに高水準である世帯が少なからぬボリュームで存在する。一方で、高齢女性、単身男女の一部などには、低収入世帯、無年金世帯もございます。しかし、全般に高齢者には豊富な移転が行われておりますのに対して、児童に対する給付は極めて貧弱で、特に問題性が指摘されている大都会での拡充は極めて緩やかなものにとどまっております。大都会における保育園の拡充、そして、多様な保育の推進、児童に対する手当など、児童に対する給付を合わせて考え直すべきということを提言したいと思います。
     以上でございます。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。
     大変貴重な、また、興味深い研究結果が出ていると思います。御苦労に大変感謝したいと思います。
     この報告の扱いはどうなりますか。本文に織り込むことは既にできないですね。
    事務局
    本文にはもう入れられませんので、この中身を別冊にするか、あるいは、何らかの形で溶け込ませるかして、何とか反映させたいと思います。
    大澤会長
    そうですね。橘木班の御報告もございまして、それをあわせれば別冊にしてもかなり大部なものになりますよね。
     他方、これがこちらの本報告に全く織り込まれないというのも残念な気がしますので、例えば2ページぐらいの概要みたいなものを、違う色の紙で挟んで最後の方に付けるという扱いは可能でしょうか。
    事務局
    多分大丈夫だと思います。
    大澤会長
    これは他省との折衝は要らないことですよね。
    事務局
    仕切りの話になりますけれども、あくまでもこれはワーキングチームの部門で、参考という形で処理するということであれば、要らないという整理でやろうかと思っております。
    大澤会長
    前回のときも、「中間報告」という言葉を使いましたけれども、最後のところに違う色の紙を挟んで、2ページぐらいの概要を付けていただきましたので、両委員には概要版の作成をお願いすることになるかもしれませんが、よろしいでしょうか。
     急いでいますよね。
    推進課長
    これ自体、7月28日の参画会議以前に発表したいと考えておりますので、来週中ぐらいにいただかないと厳しいと思います。
    大澤会長
    橘木さんの御報告の方は、論文の最後の方に「要点」と書かれていたと思います。また、永瀬さんの本日の御報告も、「おわりに」が事実上の概要になっておりますから、そのあたり、余り御負担をおかけしないで済むのではないかというこちらの目論見もございます。よろしく御協力のほどをお願いいたします。
     委員の皆様、御質問やコメントがおありでしょうけれども、議事を急いでおります。また、報告書の本体ではないので、今日は勘弁していただきまして、また個別にお問い合わせなどをくださればと思います。
     ところで、今日は局長はカンボジアに行かれていると聞きましたけれども、カンボジアでは、jicaの大変重視されている事業として、ナショナルマシーナリー、男女共同参画に関する国内本部機構の能力強化協力というものを、昨年度から行っております。jicaとしても初のジェンダー主流化案件ということで大変重視されております。向こうの国内本部機構は、女性及び退役軍人省というところですが、日本のナショナルマシーナリーのあり方に大変関心を持って、学びたいということで、このたび、局長に訪問の要請があったと思われます。
     私はjicaのジェンダー主流化の委員長もしておりまして、カンボジアのこの案件形成の際には出かけて女性省の長官とも親しくさせていただいております。そういう事柄での御出張ですので、今日は御欠席ということを皆さん御了解いただければ幸いです。
     そうしましたら、次に事務局から意見募集の結果と調査会報告案について、「論点整理」からの変更点を中心に御説明をお願いします。
    事務局
    お手元に、資料2と資料1-1という形でお配りしておりますものを簡単に御説明いたします。
     資料2は、意見募集の結果でございます。これは、4月に意見募集をした結果をすべて網羅したものです。件数については、御覧のとおり36件で、うち個人が24件、団体が12件。ただ、団体の方は、1件につきかなり多くの意見が含まれております。
     意見募集の結果の概要として資料2にほとんどの案件を掲載しております。個別にはここでは御説明しませんが、意見の中には、既に措置済みのもの、具体的な修文提案になっていないもの、本調査会での検討事項として現時点では反映が難しいものもありますけれども、新たな提案について、可能なものに関しては極力報告に入れ込むことを考えております。ただ、本文に入れ込むときには、文章のつながり等から指摘があった場所とは違うところに入れるものもございます。総体的に申し上げれば、派遣、有期雇用、非常勤職員といった、いわゆる正社員以外の働き方に対する待遇の改善であるとか賃金格差の問題、結婚・出産退職者の再就職が困難であること、男性の家事・育児面での参加、あるいは、厚生労働省の研究会でも研究している間接差別、ポジティブ・アクションといった課題、自営業やワーカーズ・コレクティブといった新たな就業形態の支援といった事項で強い指摘があったと考えております。
     次に、資料1-1で報告案について御説明申し上げます。これについては各省協議の結果、1か所、年金の部分を除いて、概ねセットできている状況です。資料赤字の部分が「論点整理」から直した部分です。年金の部分については、昨日、会長から修正案の提示があり、これを織り込んでおりますので、後で御紹介したいと思います。
     総体的には、国民からの意見募集の結果を踏まえた修正を行っております。あるいは、3の「政策等の方向性」が中心になりますが、「論点整理」の段階では「~ではないか」という疑問形を持って示していたものを、最終報告ということもあり、疑問形を断定形にしております。各省折衝の過程で断定の仕方にニュアンスの差が出ましたが、すべてを一つ一つ御説明することは、時間の関係上難しいため、主な修正点を順を追って御説明したいと思います。
     まず4ページですけれども、雇用慣行において、「前提にした」とございます。これは、国民からの意見の中で、長期継続雇用よりはむしろ、年功賃金といった賃金制度が非中立的に働いているという因果関係を明らかにすべきという御指摘を受けて、このように修正しているものでございます。
     次に5ページでございます。下の方に「働きに応じた適正な処遇を通じ」とございます。これは、従業員の有効活用に応じてこのような処遇というものが重要であるという趣旨の国民の意見を受け、その国民の意見に対して、高尾委員から、「働きに応じた」と表現して明確化するように御指摘を受けたので、そのように修正しております。
     6ページですけれども、2の「現状と課題」について1.「総論」に新たに(2)「家族の役割」を分けております。これは、論点整理の段階で、永瀬委員から、個人単位化と家族の役割について議論が必要であるという御指摘もありましたし、あと、先ほど会長から御紹介がありました自民党での議論の結果もあり、なおかつ高尾委員からも同じような御指摘があったので、「家族の役割」という項を新たに起こしまして、基本法の基本理念である家族としての役割とその他の活動の両立を明確化した上で、7ページで、「中立性を確保することは 『専業主婦』を否定するものではなく」として、影響専門調査会のミッションとしては、選択に偏りが生じない中立性確保にあることを明示しております。
     次に8ページでございます。これは会長から御指摘がありまして、「これらのライフステージをすべての人がたどる」ものではないことを明示してほしいという御指摘がありましたので、そのようにしております。
     次に10ページでございます。下の方に、「ライフコース」ア「総論」のところに5行ほど追加しております。これは、性別役割分担を解消すべきだという国民の意見を踏まえ、統計として、そのような分担意識を肯定する傾向がまだ、強いけれども、割合がだんだん減少しているということを書いております。
     18ページまで飛んでいただきまして、下の方に「家族の介護・看護を理由に離職」と書いてあります。これは、高齢期の就業という問題で、介護を理由にした女性の退職が多いという御指摘を受けまして、介護といった課題について付け加えております。
     次が21ページでございますけれども、修文が多いように見えますけれども、これは厚生労働省の方から指摘された表現上の微修正です。
     22ページに参りまして、「賃金その他処遇、雇用管理」ということがありますけれども、数字の修正と同時に、国民の意見として、賃金格差を見るときには、正社員とパートタイムの数字で比較すべきではないかという指摘があり、高尾委員からも同様の御指摘をいただきまして、このような形で修正をしております。
     次に24ページです。下から3行目に社宅制度について書いてございます。これまでは、世帯主要件について、手当に中心を置いて分析していましたが、社宅制度が抜け落ちているという国民からの意見を受けまして、そのように修文しております。したがいまして、23ページの見出しも「家族手当、住宅手当等」という形で、「等」で社宅を読ませるような形にしております。
     続きまして26ページでございます。「雇用の現状分析」のところで、これまで厚生労働省の方で、男女雇用機会均等政策研究会を開いておりまして、論点整理に対して指摘が多かった間接差別の問題であるとか、ポジティブアクションについて研究してきた成果がございますので、その研究結果について、このように形でまとめております。
     続きましては、29ページでございます。29ページに派遣労働者のことが書いてございます。派遣労働者の正社員等への登用制度がありますが、これについては、国民から、派遣労働者や有期雇用を含めて待遇の改善を求める意見があり、また官房長官に論点を説明した際に、派遣労働者についても書くべきという御指摘がありましたので、派遣労働者について、特にこのような形で書いております。
     続きまして、32ページでございます。4.「企業・自営業その他の働き方」について、「なお、ここで取り上げた課題や政策等の方向性は、その他の自営業者にも当てはまる」修正しました。これは主に業者婦人であるとか、従来の自営業者といった、論点整理で区分したベンチャーとか在宅、npoといった分類に当てはまらない人についての分析を求めた国民からの意見に対応したものです。これらの形態についても、業態に応じて、論点整理における分類の提言がそのまま当てはまるのではないかという考えのもとで、このような注釈を付けております。
     次に34ページでございます。「起業時に財務・法務・労務管理等に詳しい者をアドバイザーとして雇いたいというニーズもある」と書いてございます。これは、国民からの意見として、財務・法務・労務管理といった知識を、起業時に経営者が全部抱えておく必要はなくて、そういうことに詳しい人を一時的にアドバイザーとして雇えばいいという御指摘があったので、そのまま入れております。
     続きまして、41ページにワーカーズ・コレクティブについて追加で明示しております。これは、国民からの意見の中で、ワーカーズ・コレクティブについて明示的に取り上げてほしいという御指摘がありました。高尾委員からも同様の御指摘があったので、ワーカーズ・コレクティブについて項を新たに起こして書き込んでおります。
     したがいまして、課題として、43ページに「ワーカーズ・コレクティブについては、今後の新たな働き方の一つとして注目されているが、その組織形態に適する法人格が法制度上用意されていないとの指摘もある」と加えました。現在、ワーカーズ・コレクティブについては、npo等に移行しない限りは任意団体という扱いですけれども、その組織形態に法人格が用意されていないということを付け加えております。
     次に、46ページに、公務員の非常勤職員について加筆しております。これは、国民からの意見で、公務員における非常勤職員の実態などをもっと書いてほしいという意見があったので、そういう説明を詳しく書いたということでございます。
     続きまして48ページでございます。公務員における女性の登用・採用ということですが、「論点整理」が出た後に、男女共同参画推進本部において、平成22年頃までの1種事務系区分の女性採用者割合の目安として30%という数値が出ましたので、このことを示しております。
     50ページに参ります。部分休業について書かれております。部分休業の拡大といったものが、両立支援の形の中で非常に重要であるという国民からの意見がありました。したがいまして、現状としては部分休業が「1日のうち2時間を限度とする休業しか認められていない」ことを明示的に書かせていただいております。
     次に52ページでございます。3「政策等の方向性」ということで、下の方に、「男性にとっても女性にとっても」という修文をしてございますけれども、これは、先ほど説明しました永瀬委員、高尾委員、自民党の指摘を反映したものでございます。男性にとっても女性にとっても育児と仕事の両立が難しいこと。あるいは、男性の育児に対する意欲を妨げるべきでないということを書いた上で、次の53ページで、「男性も含めた働きかたの見直し」に取り組むべきだということを政策提言として書かせてもらっております。
     次に56ページでございます。政策提言として、「多様な就業形態において働きに応じた賃金等の処遇の実現」の部分を加筆しております。これは林委員から、有期労働者あるいはパートタイム労働者の待遇について政策課題を明示すべきだという御指摘がありまして、57ページにかけて、「可能な限り希望の形態で就業できるような方策を講じる必要がある」という政策面での提言を行わせていただいております。
     次に58ページですけれども、4として「再就業への支援」とございます。これは、結婚・出産した後、就業をいったん中断した女性の再就職が難しいという現状から、支援が必要であることを書くべきとの国民の意見がありましたので、これはそのまま入れております。
     次に59ページのイに社宅制度ということが書いてございます。これにつきましては、世帯主要件について、住宅手当だけにとどまらないという先ほどの御説明と同じことを、この政策提言でも書いております。また、割増賃金の基礎について、家族手当が除外されている制度についても、問題点を下で詳しく書くという形で断定させていただいております。
     次に60ページでございます。ウで、先ほど、「現状」で述べた均等政策研究会のことを書いております。論点整理の段階では「イ ポジティブ・アクション」の部分に書いていたのですけれども、均等政策研究会の報告はポジティブ・アクションに留まるものではございませんで、ほかにも幅広うございますので、全体を受ける形で1行空けて総論的に入れるという措置をとらせていただいております。
     61ページですけれども、ウ「長時間労働の是正」がございます。これは、長時間労働について、男女ともに是正すべきだという国民からの意見がありまして、具体的な政策目標である年間総実労働時間 1,800時間の達成・定着という課題を明示的に示して書かせていただいているところでございます。
     次の63ページは、自営業者に対する提言ですけれども、ここで、先ほど「現状と課題」でも御説明しました、財務や経理知識について、企業時にアドバイザーとして派遣を行うという政策提言を付け加えさせていただいているところでございます。
     次のページですけれども、女性企業家が融資を受ける際に厳しい対応を受けていることが多いという指摘を受けましたので、確認までですけれども、融資を受けるときには、「男女を個人として平等に扱うべきことはいうまでもない」ということを指摘させていただいております。
     次に68ページでございます。ア「短時間勤務」がございます。これは、短時間勤務を導入することについては、「一般の公務員に導入することが望ましい」という断定形にした上で、佐藤委員からのご指摘を受けて、短時間勤務に関しては、民間における制度を参考にしつつ、「正規の職員として」ということをまず明示的に書いて、「柔軟な短時間勤務が可能となる制度を導入する」ということを提言し、なおかつ、その場合においては、定員管理の方法が問題になってくるのですけれども、短時間勤務でも定員は1人で変わらないだと導入がなかなか難しいという実態もありますので、時間数の管理に変えてはどうかということを、佐藤委員のご指摘に基づいて書き込んでいるところでございます。
     次に、69ページの中で、エに、「採用試験受験年齢制限の撤廃」ということがありますけれども、それだけにとどまらず、中途採用もやるべきだという御指摘があったので、そのとおりに書いております。
     「女性の採用・登用の促進」に関しては、先ほど御説明した推進本部決定をもう一度書いて修正しております。
     また、70ページの下の方で、アで「育児休業・介護休暇等の取得促進等」と書いておりますけれども、ここにおきましては、国民からの意見として、「定員外化」という言葉を使うと、定員外職員というのはいわゆる非常勤職員を指すという解釈もあり得るので誤解を生ずるのではないかという御指摘がありましたので、これは、「育児休業取得者と同様に定員とは別に取り扱う」という表現で誤解を避けております。
     72ページ以降が「おわりに」ということで、今回で、税制、社会保障、雇用、就業について、調査会としての検討が一巡することもありまして、まとめとして書いております。税制につきましては、平成14年12月の提言におきまして、配偶者控除・配偶者特別控除の縮小・廃止といったことについて提言しているということをまず確認した上で、前回の報告でこの制度改正の動きをフォローしているということでございます。これは資料3の中で、セット版の公表資料はまとめておりますけれども、配偶者特別控除の撤廃であるとか、イにおいて、住民税の均等割について非課税措置が廃止されるという流れを受け、本調査会においても均等割の廃止について男女の共同参画会議に報告したことを書いております。
     残された課題としては、就業調整問題、あるいは、そもそも税の標準的な課税ベースとして、片働きの父親と専業主婦の母親がいて子どもがいるといった家庭をベースにして考えるという考え方が、ライフスタイルの選択に本当に中立的なのかどうかという観点もございますので、このような就業調整問題等が生じない個人のライフスタイルの選択で中立的な制度にすべきであるという指摘をしております。
     特に前回の報告書のうち配偶者控除がどうなるのかということが課題としてあるということがあります。あともう一つは、個人単位化とともに性の差別の撤廃ということについて、残された課題としてあるということを書いております。
     社会保障制度につきましては、前回の平成14年12月の報告においては、パートに対する厚生年金の適用拡大であるとか、3号被保険者制度の見直し、所得分割制度の導入というものを提言しておりますけれども、その後、どのような制度改正があったのかということを、年金部会報告、74ページの下の厚生労働省原案、76ページの法律に至るまでの流れをフォローしているということが書いてございます。
     ここの中で、会長から、先ほど申し上げた修文案として示されているのが、2つ目のポツの「被扶養配偶者を有する被保険者が負担した保険料について、当該被扶養配偶者が共同して負担するものであるという基本的認識の下」を付けるということがございます。これは、前回の報告において、所得分割か課題であると明示的に書いていること、また国民年金法の中にも同様の記述がありますので、それは明示的に書いた方がいいのではないかという判断のもとに書かれたものであるという形で書き込ませていただいております。
     また、残された課題として、パートタイム労働者への厚生年金の適用拡大を行うということと、2つ目のポツで、年金分割に関連するところ、ここを、まだ厚生労働省とセットされてはいないのですけれども、会長からの提案としては、年金分割に関連して、婚姻中の年金分割についても検討を行うことが期待されることを書くかどうかということがここで示されている案でございます。
     その他として、一人一保険証の提言を行っておりますが、今後の課題として残っているということを書いております。
     資料としては、それに関連する資料を付けておりますけれども、番号だけ申し上げます。資料編の5ページ、資料4-2として「高等教育卒業者に占める女性の割合」というものを付けております。これは、参画会議での神田委員の発言をもとにして、oecdの中で日本は女性の割合が低い、最下位であるという指摘もあったので、これはそのまま入れております。
     あとは、16-1ということで、性別役割分担についての国民からの意見があったので、その世論調査の結果を付けました。
     資料49-3、57ページですけれども、家族の介護のことについて追加したので、根拠を書きました。介護との両立になかなか満足していないという結果を付けたということでございます。
     73ページの資料62では、社宅制度についてのアンケート調査を付け加えております。
     127ページに資料 100-1がございます。先ほど御説明した女性公務員の登用拡大について、参画推進本部決定を付けております。資料 100-2もそうです。
     あと、資料 100-6について、均等割について参画会議で報告した内容を再掲しております。
     主な修文点は以上でございます。長くなりまして申し訳ございませんでした。
    大澤会長
    ありがとうございました。
     資料2にまとめられている意見募集の結果が極力盛り込まれておりまして、また、各省との間でも了解がとれているという御報告でございました。その例外が75ページに当たります。したがいまして、例外がある「おわりに」の部分は後で御議論いただくことにしまして、最初から71ページまでのところについて、御質問や御意見をお願いいたします。
     委員の側から出た意見ということでは、高尾さんと永瀬さんの御意見が多かったと思いますが、それぞれよろしいでしょうか。
    林委員
    52ページ以降の「政策の方向性」のところで特にですが、末語の表現がいろいろあります。「期待される。」、「すべきである。」、「求められる。」、「期待したい。」、いろいろありますが、その度合いというか、これはそちらの方でお書きになる場合、このレベルのものはこのように書くとかいう約束事のようなもの、何か一定のルールをお持ちになって書いておられるのか、それをお聞きしたいのですが。
    事務局
    基本的に、「必要である。」が一番強いと考えております。「必要である。」は、文字通り行う必要があると。次に、そこまでということでなければ、「重要である。」とか「望ましい。」といった形で、これは重要だけれども、必ずやるかどうかはわからないということがあります。さらにそれでもとなると、原因を書くなら「そういう一因もある」とか断定するにしても「側面もある」というようなものになってくると。このようにして、断定形よりも少し弱くなっていくという段階は確かにあります。
     我々としては、すべて断定形にした上で各省に御相談し、なおかつ調整していく中で、表現振りを修正をしているのが実際のところでございます。
    林委員
    そうすると、例えば「検討に値する」などというのは、相当レベルが低いところにあると理解していいですか。
    大澤会長
    どこかにありますか。
    林委員
    68ページの、佐藤先生が提起しておられる、要員数という管理の仕方から時間数管理にするということの問題を書いています。
    事務局
    これについては相当難しい問題です。まず短時間勤務は、定数法の法律事項でもあり、なおかつ、総務省が所管する法律でもあるということがあって、すぐにやるとはなかなか書けないので、「検討に値する」という書き方に今はしております。ただ、これは検討するだけでもかなり大きな課題です。
    推進課長
    この問題については、「定員管理の方式を要員数の管理から時間数の管理に変更する」ということが、恐らく解決法だろうと思うのですけれども、もしかしたらほかにも選択肢があるかもしれないという意味合いがあります。つまり、究極的な目標は、短時間勤務を公務に定着させることであり、そのための手法のことを書いているので、もしかしたら、ほかの方法で、同じように短時間勤務ということが導入できればそれでいいと考えております。
    林委員
    というのは、このことを本当にやれば、効果はすごく大きくなります。企業における社会保険料の負担の方法までこの考え方が波及していきますのでね。だから、この影響調査会として、書くのであればかなり強く書いてもいいのではないかというか、むしろそのことが根本を変えることに影響力が大きいという気がしたものですから、いろいろな表現の末尾のレベルの問題と合わせてお尋ねしました。
    推進課長
    定員管理はすごく難しいものですから、単純に考えれば、今の定員管理は1日当たりの定員という考え方しかないので、それを、例えば4時間の定員とか、そういう発想にできれば、4時間の短時間職員が正規の職員としてもできるだろうということがここに書いてあります。ただ、場合によっては、定員管理自体をもう少し柔軟にして、その1日の部分を現在の定員という考え方の外に出してしまった上で分割するとか、そういうこともあり得るかもしれませんので、ここのところは断定的には書きにくいのかなと。
     ただ、やはりぜひ検討してもらいたいと思っていますので、「検討に値する」と書いております。
    林委員
    重要度から言うならば4番目ぐらいになりそうなので、2番目ぐらいの表現になるといいなというのが私の意見です。
    福原委員
    全体からしてみると、提言ではなくて報告ですね。現状がこうなっているという、極めて評論家的な、客観的な書き方をせざるを得ないところもあるのではないかと思いますけどね。
     ただ、今のような優先度は、もし本当に高いという認識が皆さんにあるとすれば、場所を変えるとか、もう少し強めの言葉を入れるとかいうことはあり得ますね。
    林委員
    その前のところよりも、ここは政策の方向性という、まさにこれからのことですよね。そういう部分での書きっぷりですから、かなり強いものが欲しいというのが私の思いです。
    佐藤委員
    そこの前に、正規の職員として短時間勤務を導入することが望ましい、してくださいと言っているわけですよね。それはある面では強く提言しておく。そのためには、かなり制度の枠組みを変えないと難しいので、それも、望ましいということをやってもらうためにはこういうことも検討し、だからこれが「検討に値する」ですけれども、確かにこちらは「検討してください」ですが、前の方ではかなり強く言っているので、それをやっていただくためには、先ほど定塚さんが、もしかしたらほかのやり方もあり得るので、ただし、今の法律のままでは難しいので、それは枠組みのことも見直してくださいと、こういう書き方かなという気もします。定員法のところはかなり難しいので。
    推進課長
    この方式以外の方式で、さっきも申し上げたのですけれども、短時間勤務を実現する可能性があるので、そういう意味で言えば、短時間勤務導入の方はかなり言っておきたいのですが、方式についてはそれほどではないという思いもあります。
    大澤会長
    この書きぶりは控えめですけれども、この報告書の一つの目玉ですよね。政府として、その気になればできることを「望ましい」と書いて、その方法として検討に値すると。定員に関する法令の壁はかなり厚いわけですから、手段はこれだけではないかもしれないということで「検討に値する」となってはおりますが、この報告書の目玉の一つであるということで。
     でも、余り突出した書きぶりにして、削れと言われたら元も子もなくなるので、こういうことで御了解いただければと思いますけれども、いかがでしょうか。
    木村委員
    もし、林先生さえよければ、佐藤先生とか大澤会長、福原委員がおっしゃったことに賛成したいのですが、理由は、定員管理ということ自体が、今後、それ自体が難しくなってくるのではないかと思っているからです。また、その理由は、アウトソーシングとかそういうことが大きくなってくると、短時間雇用を定員管理と結びつけない方がむしろすっきりするのではないかという印象を持っているからです。
     以上です。
    大澤会長
    ほかにいかがでしょうか。
     すぐには出てこないようですので、議論の余地がある「おわりに」を御議論いただきまして、また思い出されたところで、それ以前の箇所に戻ってもよろしいかと思います。
     では、72ページ以降、「おわりに」について御議論をお願いいたします。
    高尾委員
    75ページの、「被扶養配偶者を有する被保険者が‥‥」の部分をもう少し説明していただけますか。
    大澤会長
    これは、成立した年金法の中に入っている言葉で、第3章の3に入っていると思います。資料3の45ページです。年金改革関連法というのは、法律だけでも電話帳みたいに厚い法律で、それをそのままここで参考資料にするのは到底考えられないのでこういう形になっていますけれども、成立した法で言いますと、第3章の2、第3章の3というところに、離婚時の年金分割とか、それが第3号の場合とそれ以外の場合では違う扱いで書かれております。でも、概略は、この45ページの一番下の2行、これが、私たちの報告書で言いますと、75ページの上の半分です。ウの2番目のポツ、これが施行後の第3号被保険者期間について、離婚した場合、配偶者の厚生年金の2分の1を分割するという条文の前半のところにくっついている文句をそのまま取ってきたというか、要するに、これがその文句です。
     我々の提言は、所得分割制度の導入ですから、2号と3号の間の分割だけではなくて、2号同士の分割も考えていますし、離婚の場合は、これも並行して進めるべきと提言しましたけれども、婚姻が継続していても、所得分割することによって年金を分割するという方式を提言しているわけです。成立した法においては、離婚のときにおいてのみ分割。それから、3号と2号では扱いが違うとなっていますが、3号に関しては、基本的認識が、被扶養配偶者を有する被保険者、要するに、専業主婦がいる夫が負担した保険料は、妻も共同して負担したものであるという基本認識をまず立てて、この基本認識のもとに第3号被保険者期間についての離婚の場合の年金分割、こういう組み立てになっています。
     我々の提言に照らせば、婚姻継続でも分割すべきだし、3号に限定せずに2号もと。ただ、2号についても、離婚分割は、このたびの法律は認めています。合意した割合でということですが。
    高尾委員
    それは義務の分割ではないですね。
    大澤会長
    そうですね。
     ですから、残された課題は、婚姻継続でも分割ということを引き続き追求してもらいたいとなりますし、その婚姻継続の場合も、3号に限ることなく、2号同士の分割も考えてほしいとなるのですが、75ページの一番下の3行は、結局、基本的認識は第3号についてだけなので、とにかく婚姻継続でも2号、3号の間の分割は引き続き検討してほしいという意味になっています。
     2号・2号のところまで言い出すと収拾がつかなくなりそうなので、2号・3号について婚姻継続中も分割を検討してほしいということになっています。
     それは遠慮しすぎではないかと思われるかもしれませんが、離婚分割の場合は、2号の間でも、合意をすれば合意した割合で分割となっていますから、婚姻継続のところを、とにかくまず第3号で突破口を開ければ、2号・2号に必然的にとまでは言わないけれども、合理的に2号・2号でも婚姻中分割に進む下地になるのではないかと思っています。そんな意味での修文案です。
    高尾委員
    45ページの最後の2行というのは新しい認識ですね。今までは、こういう認識は公的にはなかったですね。
    大澤会長
    なかったです。保険料は夫だけが負担する。だから厚生年金も全額が夫のものとなっていたものを、こういう新しい基本的認識を入れてきたわけですね。
    高尾委員
    それは一身専属ではないですよね。
    大澤会長
    一身専属は他方で崩されてはいないのですが、事実上、そこに穴があいているということですね。
    高尾委員
    そういうふうに見るんですね。わかりました。
    大澤会長
    一身専属と同時に、年金というものは憲法が保障する財産権だという話になっていまして、それが夫婦間分割に対して高いハードルになっています。このたびの基本的認識は、その高いハードルを超えるためのステップと私は理解していますし、年金部会でそのような議論があったことも事実です。
    高尾委員
    個人的にはまだわからないところがあるのですが、それは個人的にまたお伺いします。
     とりあえず、この調査会としては、2号・3号ができたところで2号・2号にも自然に行ってくれればなという感じですよね。
    大澤会長
    そうですね。そのとおりです。
    高尾委員
    わかりました。
    木村委員
    私も、この報告書に書くのはいいのですが、個人的には反対です。被扶養配偶者が有する被保険者が負担した保険料について、当該被扶養配偶者が共同して負担したものであるとの基本認識に立って検討を行うことが期待されるというのは、これが果たして基本認識かどうかというところにまず疑問があります。
    大澤会長
    この基本的認識については、法案要綱の概要が出てきたときに、随分と各方面で議論があったことは事実です。今ではこれが法律になってしまっているということなので、国の法律にそれが書いてあるということですから、我々の要請としては、そういう基本的認識を婚姻中にも適用するよう検討してくださいということになってきて、そのことによって夫婦間の所得分割といいますか、納付記録分割ということですけれども、その突破口になるのではないかということです。
    永瀬委員
    この報告書に入れるかどうかは別として、私も、やはり3号だけの分割は変な効果を労働供給に与えると思っております。というのは、3号にとどまれば夫の年金が分割される、働きに出て2号に移ると保険料が増えかつ分割されないということであれば、本人自身が2号に移ることを抑制しますので、私は制度として問題があると考えております。
     ただ、先ほどのワーキングチーム報告でも御覧になりましたように、現実の夫妻間の収入格差が余りにも大きいので、そういうもとでは、年金権の分割が一つの方向かとは思います。ただし3号に限る分割というのは、第3号被保険者問題が起こしているゆがみを拡大する点で問題が大きいという認識をしております。女性の一部が対象とはいえ結果としての男女の平等には資するでしょうものの。
    大澤会長
    もっと言うと、我々の提言は、所得分割をすることによって、遺族年金が必要なくなる人が増えていく。遺族年金のところで、共稼ぎと片稼ぎの年金給付の格差が出ているので、そこを狙っているわけですが、実は今回の法律は、分割は老齢年金だけです。遺族年金のところはそのままです。ただ、遺族年金は遺族年金として、考え方を変えて、やはり自分が払った保険料に基づく老齢年金が基本で、それと遺族年金の方が高くなって差額が出る場合に差額を支給するというように考え方は変える。給付の額は変わらないのですが、考え方が変わっているところは評価すべきではないかというところです。本当ならば、分割した効果が遺族年金にも及んでいかないと、共稼ぎと片稼ぎの間の格差が埋まっていかないわけです。
     ただ、同時に、御承知のように、一元化についての議論もあり、これから超党派での議論が始まっていくと思いますから、あくまでも現行制度を前提にした上での手直しということをどれほど強く言う必要があるかという配慮も必要かと思われます。
    林委員
    今のことで、若干、反対という意見のようなことも表明されたので、もともとこの影響調査会では、前回のときに所得分割というものを出していますので、そのことを1行ここに付け加えることによって、そういう見通しのもとで、今の制度のところでは、どこからどうしようかというのは今回の提言だというのがわかりやすくなるのではないかということで、1行だけ入れてはどうでしょうか。
    大澤会長
    一応、74ページの上に入っています。
     「以下の提言を行った」というのは、「前回報告書の概要」が前のページに1行だけあって、そして「以下の提言を行った」という中に、「所得分割制度の導入」が最後のポツにございます。この提言に対して、その後の改正の動きということで、一応、年金部会の意見があり、厚生労働省案があり、そして法律ができたのはここまでだったと書いて、「残された課題」というのは、要するに、我々の前回の提言に照らしての残された課題という書きぶりになっております。
    林委員
    はい、理解しました。
    大澤会長
    いかがでしょうか。71ページまでのところでも思い出されたことがありましたらどうぞ。
     意見募集で36件というのは、前回の中間報告はたしか71件の意見があったので、半分になりましたけれども、世の中、パブリックコメントが大変多数になってきまして、国民の皆さんにもパブコメ疲れがあるものと思われます。そして、今回の論点整理が資料も含めて大部なものになったということで、よくぞこれだけ意見をくださったというのが私の率直な感想です。
     大学などで教材に使っているというお話も耳にしております。特に図表編がとても役に立つので既に使われていると聞いております。
    佐藤委員
    つまらないことですが、29ページの一番下、紹介予定派遣ですけれども、これは多分正社員だけではなくて、ここも「正社員等」と「等」を入れた方がいいのではないかと思いました。次のページには入っているんですよね。こっちは、雇用申入れの方も、別に有期でもいいんです。だから、紹介予定派遣もほとんどは正社員だと思いますが、正社員だけではないですよね、仕組みとしては。今度、3年とか5年とかいう有期契約も出てきたので。つまらないことですが、「等」だけ入れればいいのではないかな。
    大澤会長
    それはよろしいですね。
    事務局
    はい。
    木村委員
    75ページの「残された課題」の中で、74ページに幾つかの提言があるわけですが、その中で、第3号被保険者制度の見直しは、この「残された課題」には書かないわけですか。
    高尾委員
    関連してですけれども、この3号と2号の間だけを分割するという話を聞いたときに、私もすごく驚いて、なぜそんなことになったのかと本当に驚きました。ここに、3号・2号の分割だけを認める現行案では、3号を誘導する可能性があるので、この調査会としては反対だという文をはっきり入れていくことはしないのでしょうか。
    大澤会長
    なぜ2号間分割に直ちに行かないのかということですけれども、合理的な理由は、率直に言って、ないと思います。離婚で2号間で納付記録の分割ができるわけですから、婚姻継続でもできないという理由には全くならないわけです。ただ、話し合って合意の率でということですから、自動的に2分割というわけではないのですが。
     ただ、理由として挙げられていたのは、厚生年金と共済年金に分立していまして、厚生年金ですと、いわゆる3階部分が厚生年金基金となっていますが、共済年金の方は3階部分が2階と一体になっています。つまり、職域年金としての上乗せ部分が共済年金は一体になっているんですよ、2階部分と3階部分が。その厚生年金と共済年金の間での分割の計算が大変煩雑であるという理由が、年金局の事務局からは挙げられていたと思います。それは当面の事柄としては理解できなくはないので、離婚のときに、2号の間でも納付記録の時点で分割ということが入ってくれば、いずれそれは婚姻継続の分割にも及ぶのではないかと期待している面があります。
     それから、木村委員が御指摘の第3号被保険者制度の見直しですけれども、これは、前回報告書では、負担を求めるという方法も含めて、第3号被保険者制度を見直す必要があると提言していまして、何をどう見直せということを、「見直し」という項目で具体的に言っているわけではありません。むしろ、その具体論が「所得分割」のところに入っている、こういう構造になっていたと思います。今回、第3号被保険者について見直しが全くなされなかったかというと、そうではなくて、短時間への適用が、5年後に先送りはされていますけれども、第3号から第2号に振り替わる人たちが出てくるというのも条文としては入っている。それから、離婚の際に、第3号被保険者期間について2分割ということが入ってきたということは、第3号被保険者制度の部分的な見直しが既に行われていると見ることができるので、全然ゼロ回答だったとは言えませんから。
     ただ、今後、第3号被保険者制度が残り続けることを前提に見直しを言い続けることがいいことなのか、それとも、より合理的な制度を模索していくことがいいことなのか、これは判断の分かれるところだと思います。余り第3号被保険者制度の見直しということを言って、その土俵に閉じこもるのはよくないのではないかという気もします。
    木村委員
    私は、大澤さんがおっしゃることもよくわかりますけれども、さっきの「基本的な認識」とかいうのは、これはあくまでもインプリケーションで読み込むことにしかすぎなくて、就業調整のことであれば、第3号被保険者制度は残るわけですから、「残された課題」に入るのではないかと個人的に思います。
    大澤会長
    何をどこまで見直せと前回の報告では言っていないものですから、ちょっと書きにくいというところだと思います。
    事務局
    前回の報告の概要では、第3号被保険者制度の見直しということで1項目起こした上で、中立性の観点からは、就業調整等が問題であり、2号と3号の間の関係見直しが課題と提言した上で、1号との間の関係は、公平性の観点から問題になるのだけれども、中立性の観点からは外れるということと、あと、所得分割というものに関しては、第3号被保険者に何らかの形で負担を求める手法と提言した上で所得分割を議論すべき時期に来ていると。3号の見直しでは、この2本を課題として挙げているということです。ですから、それをどうするというところまでかっちりと提言しているわけではありません。
    大澤会長
    とにかく見直せと言っているのだけれども、見直しの中身としては、具体的には所得分割です。
    推進課長
    例えば、73ページの (3)のアのところでは、「就業調整問題等が生じない、個人のライフスタイル選択に中立的な制度とすべきである」と書いていますので、それと同じ文言を入れることは、考慮の余地はあるのかなという気がいたしました。
    大澤会長
    そうすると、ポツを1個起こすことになりますね。
     結局、税金の壁の方が下にあるものですから、就業調整というのは税制の方が大きくて、第3号被保険者制度だけを取り上げて、それが就業調整の原因とはなかなか立証できないというのが私の感触です。永瀬さん、このたびのシミュレーションといいますか、推計でも、税制の方にフォーカスなさっていますよね。それはやはりそういう意味でしょうか。
    永瀬委員
    社会保険はいろいろなモデルがあり得ますので。また、税制は1回限りですけど、社会保険は老後の給付が増える側面もあり、その計算方法も現行以外に様々なバリエーションが可能で選ぶのが難しいので、検討は多少してありますが、まだ、内部的に検討している段階です。
     質問ですが、74ページの下から3つ目、「第3号被保険者期間について、年金分割」と書いてありますよね。今度、75ページの「残された課題」で、「年金分割に関連して、被扶養配偶者を有する」というのは、これは要するに厚生省案の復活のようなことが書いてあると思ってよろしいのでしょうか。
     どうしてかなと。どうせ分割するなら3号に限らず夫婦合計の分割が合理的だと。
    大澤会長
    夫婦合計というのは、要するに2号の間ということですよね。
    永瀬委員
    はい、両方が働き、払う保険料が増えればお互いの年金が増えるという制度が理にかなう。つまり、変な話ですけれど、奥さんが家にいればだんなさんの年金が半分もらえるが、奥さんがパートに出ると奥さんの年金は基礎年金プラスほんの少しに下がりだんなさんの年金は高くなるという制度ですよね、この最後の3号の提言は。だから、変ですよね。よくわけがわからないのですが。家にいてくれてありがとう、そういう制度ですか。
    大澤会長
    夫にとっては、半分になってしまうのでありがたくはなくて、だから働けとなるのか。
    永瀬委員
    ちょっとよく理解できません。なぜこういう変わった案が出ているのか、説明は何ですか? 議論の場にはいないのでよく理解していなくて申し訳ないのですが。
    大澤会長
    さっきも言いましたように、合理的には説明できないと思います。離婚の場合には2号間でも分割するとなっているわけだから、婚姻継続の場合にどうして3号しか分割しないのか、合理的には説明できないと思います。それでも、離婚時分割にだけ限定されないことが、我々の提言に近づく一歩ではないか。半歩ぐらいかもしれませんが。という観点から、この75ページの一番下は書いているということです。
     年金部会の意見では、一つの案に絞り込めなくて、3案併記になったんですね。永瀬さんは委員でしたから御承知のように、その前の女性と年金検討会は6案併記でした。その6つを3つまでにしか年金部会は絞り込めなかったんですけれども、そこで厚生労働省は決断して、年金分割という一つに絞り込んだという経緯です。
    永瀬委員
    3号に限る年金分割というのは、実務的にも一番簡単ですよね。名目的に分割するだけですから。多分、団塊の世代の人にとっては、心情的にも支持できるのかもしれませんが、これから結婚する層にとってはどうなのか。3号だけでの分割というのは。だから、今の50代以上で夫婦分業で暮らしてきた人には納得しやすい案だろうと思いますけれども、若い世代の夫婦の就業選択にこれから変な影響を及ぼす制度になると私は感じています。
    大澤会長
    家にいると私の年金が減っちゃうから働いてね、となるのではないでしょうか。
    浅地委員
    この場面以外でよく「専業主婦」という言葉が出てきますが、これはどこかで言葉の使い方というか、定義みたいなものがあるのでしょうか。
    大澤会長
    この報告書では、基本的に「専業主婦」という言葉は使っておりません。1か所だけ出てくるのが、7ページの「家族の役割」の中に鍵括弧付きで出てきています。これは、中立性確保ということは専業主婦バッシングではないかという御批判がありますので、あえてここで鍵括弧を付けて「『専業主婦』を否定するものではなく」と書いています。この報告書は、全体としては「無業の妻」という言葉を使っています。
     ただ、世の中で「専業主婦」と言うときは、第3号被保険者と重ねて考えますので、年収が 100万円前後以下の場合にも「専業主婦」というイメージで捉えると思います。実際、その意識のありようとか、それはかなり専業主婦と近いものがあるのではないかと言われております。
     それでは、そろそろよろしいでしょうか。調整が残っている部分はどこですか。
    事務局
    まさに先ほどの最後のところで、年金の部分が一番大きいところだと思います。
    大澤会長
    ここは、この専門調査会としては、この案で了承したということでよろしいでしょうか。
    木村委員
    一部反対があったことは明らかにしておいてください。
    大澤会長
    はい、一部反対があったと。
     そうしますと、木村委員の案は、75ページの最後のポツは削除すべきだと。
    木村委員
    余りにも今回の年金改革案に引っ張られ過ぎていて、それのやり残したことをやれというイメージしかない。特に75ページあたりは。むしろ、この委員会の目的の就業調整とか個人の意思決定にどうなのかというところで、残された課題をまとめるのが筋だと思います。
    永瀬委員
    私も、どちらかというと木村委員に賛成です。
    大澤会長
    それを書きたいところではありますが、ワーキング・チームでの研究のあり方としても、第3号被保険者制度が固有に就業調整なり就業の決定に与えている影響を分析しきるに至りませんでしたので。
    永瀬委員
    例えば国家公務員では妻の年収が 130万円になると配偶者手当がカットされますので、今回のシミュレーションでも 130万円で行いました。実際にデータを見ると130万円でも小さな山があります。これが年金のためなのか、それとも、そうした配偶者手当がそこでリンクしているためなのかはわかりませんけれども、実際に、 130万円が一つの小さい調整ポイントにはなっております。
    大澤会長
    なお分析が必要な点ではないかと思われます。
     それでは、そうした御意見がございますけれども、中身について、概ね御了解いただけたと考えさせていただきます。
     表現を含めて、残された部分についての扱いは、私の預かりにさせていただきたいと思いますけれども、御一任願えますでしょうか。
     (異議なし)
    大澤会長
    ありがとうございます。
     それでは、私が事務局と確認しながら、各省と最終的に確認作業を行いたいと思います。また、事務局から、各委員に個別に連絡をとらせていただく場合もあるかもしれません。「かもしれません」ではなくて、必ずとらせていただくのが、永瀬委員と橘木委員でございます。先ほどの研究結果の概要の作成でございます。よろしくお願いいたしたいと思います。
     この報告については、7月中旬までに取りまとめて公表し、7月28日の参画会議に私から報告したいと思っております。
     次に、調査会の再編について事務局から説明をしていただきます。
    事務局
    今般、内閣府全体の方針として、専門調査会等の構成を見直すことになりまして、男女共同参画会議関係についても再編を行うことになりました。影響調査専門調査会につきましては、この報告の取りまとめをもちまして、一旦調査会を終了したいと考えております。正式には、7月下旬開催予定の男女共同参画会議で決定いたしますけれども、この影響調査専門調査会としては、本日の会合が最終回になると思います。
     なお、影響調査自体については引き続き実施していく必要があるということから、今現在ある苦情処理監視専門調査会も一旦解散して、両者の機能をあわせた新しい調査会を発足することを局としては考えております。また、これとは別に、局として、来年度までに男女共同参画基本計画を改訂しなければいけないものですから、その計画見直しための調査会、さらに、少子化と男女共同参画に関する調査会を立ち上げる計画でございます。先生方におかれましては、調査会に長い間御尽力くださいまして、ありがとうございました。
     つきましては、事務的な話で大変恐縮ですけれども、書類で届けをいただきたく思いますので、今お配りしているものに署名・捺印の上でお返しいただきたいと思いますが、参画会議の議員の方は、その必要はございません。
    大澤会長
    お聞きのとおり、影響調査専門調査会としては、今回が最後の会議になります。一言申し上げさせていただきますと、この男女共同参画局が発足して間もないころ、2001年の1月か2月の初めだったと思いますが、当時の坂東真理子局長、上杉審議官以下、たしか総務課長や参事官もいらしたと思いますが、おそろいの席で、私、影響調査の考え方について質問を受ける機会がございました。その際、私としては、影響調査というものは監視と一緒であるべきと申し上げたことがございます。その理由は、監視の対象が、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策となっています。ところで、影響調査というのは、男女共同参画社会の形成に影響を及ぼすと認められる施策が中心ですけれども、形成の促進に関する施策についても影響調査が必要ないということではなくて、男女共同参画社会基本法の中には、政府の施策が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響の調査と書かれております。
     私の理解ですと、促進に関する施策は、影響を及ぼすと認められる施策の部分集合であると。したがって、大きな集合について監視と影響調査を同じ専門調査会で行うことが合理的でもあり、また、やりやすいのではないかという観点から申し上げたという場面がございました。ただ、結果としては、この専門調査会が設置をされたということですけれども、それは、国際的にも未踏の分野と言っていいこの影響調査に道をつけていくためには、しばらくは単独の調査会が必要であったと、今にして思います。
     委員の皆さん、ワーキングチームに協力くださった研究者、事務局の驚異的ながんばりのおかげで2つの報告書を作成することができ、また、「おわりに」のところで書きましたように、税制や年金改革の中で、微々たる結果に見えるかもしれませんが、結果も伴っていると。これは、考えてみれば、随分と画期的なことであったのではないかと思います。
     強調したいのは、やはり事務局の驚異的ながんばりということで、今回の報告書はこんなふうに大部で、また充実したものになりましたことに感謝を申し上げたいと思います。
     こうして道筋がつきましたので、本来あるべきだった専門調査会の構造、つまり監視と一緒になることは大変望ましいことだと考えております。
     ほかに御意見がおありの方もいらっしゃるかもしれません。ともあれ皆様にはこれまで精力的な御審議をいただき、大変ありがとうございました。
     最後に審議官から御挨拶があるそうでございます。
    土肥原審議官
    局長は、先ほど大澤会長からございましたように海外出張をしておりまして、代わりに私から御挨拶をさせていただきます。
     大澤会長、岡沢会長代理、委員の皆様方におかれましては、御多忙な中、精力的に御審議をいただきまして、報告書を取りまとめいただき、大変ありがたく、厚く御礼申し上げます。
     今、大澤会長からございましたように、影響調査専門調査会は、平成13年5月に設置されて以来、3年以上にわたりまして、ライフスタイルの選択に大きなかかわりを持つ税制、社会保障制度、雇用、就業といったものの制度・慣行につきまして調査・検討を行っていただきました。男女共同参画影響調査というものは、我が国における初めての取組みでございますし、世界からも注目されていると伺っております。幅広い制度・慣行について御審議の上、御提言をいただきまして、今回を含め2つの報告書を取りまとめいただきました。前回の報告書につきましては、その後、実際の制度改正にも結びついているところでございます。
     影響調査専門調査会としての検討は本日の会合をもって最後とさせていただくことになりますけれども、内閣府としましては、社会システムへ男女共同参画の視点を反映させるためには、先ほど大澤会長からの監視の方との関係ということでいろいろお話があったわけでございますが、影響調査は非常に重要であるということで、男女共同参画会議にお諮りしました上で、新しい体制で調査検討を続けていくことを考えております。
     先生方におかれましても、引き続き男女共同参画局の行政諸事業に、御理解と御協力、御支援をいただければとお願い申し上げます。長い間、御指導を賜りまして、本当にありがとうございました。
    大澤会長
    ありがとうございました。
     事務局から、ほかの連絡事項の説明をお願いします。
    事務局
    事務的な話で大変恐縮ですけれども、議事要旨につきましては、今までは委員の皆様に確認をして、了解いただいたものを公表しておりましたけれども、公表のタイミングが遅いという御指摘がほかのところからありまして、今回は、事務局の文責で、会長にだけ確認いただいた後で議事要旨を作成して公表したいと考えております。
    永瀬委員
    ワーキングチームの報告がありましたから、私にも確認をお願いいたします。
    事務局
    わかりました。
     今後、事務局の分析によりまして行いますので、議事要旨の中に発言者の名前が付されてありましたけれども、発言者の名前を削る形で公表させていただきたいと考えております。
     また、全部の発言が載っている議事録は、従来どおり、全委員に確認いただいた後に公表することにしております。今回のものに関しましては、恐らく郵送ないしはファックスで御確認いただくことになると思われます。
     以上でございます。
    大澤会長
    それでは、これで影響調査専門調査会の第29回会合を終わります。どうもありがとうございました。
    岡沢会長代理
    最後に一言。
     とにかく、大澤会長は、本当によくおやりになられました。かなりの暴風圏の中を、花も嵐も踏み越えて、その度胸のよさに感謝いたしております。
     拍手をお願いします。(拍手) どうもありがとうございました。

(以上)