第24回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成15年12月17日(水) 14:00~16:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      岡沢 会長代理
      浅地 委員
      大沢 委員
      木村 委員
      佐藤 委員
      高尾 委員
      橘木 委員
      永瀬 委員
      林  委員
  2. 議事
    • (1) 在宅ワーカー・SOHO事業者について
         (報告者) 財団法人社会経済生産性本部 社会労働部長 北浦 正行氏
    • (2)パートタイム労働について
        (報告者) 東京大学教授、影響調査専門調査会委員 佐藤 博樹氏
    • (3) その他
  3. 議事内容
    大澤会長
    それでは時間がまいりましたので、ただいまから男女共同参画会議影響調査専門調査会の第24回会合を開催いたします。委員の皆様お忙しい中、御参加いただきましてどうもありがとうございます。
     では、お手元に議事次第がございます。これに従って本日の審議を進めてまいります。なお、前回御説明いただいた高橋さんから、質問が出た点についての追加資料を資料3という形でいただいております。ごらんいただければと思います。
     本日は前回に引き続き有識者からの説明を伺います。まず、「在宅ワーカー・soho事業者について」という題目で、財団法人社会経済生産性本部社会労働部長、北浦正行さんからお話を伺い、それから、「パートタイム労働について」という題目で、佐藤博樹委員からそれぞれの説明をいただき、質疑応答、意見交換をしてまいります。
     では、北浦さんから御説明をお願いいたします。
    北浦部長
    御紹介いただきました生産性本部の北浦でございます。私の方から、タイトルにございますような在宅ワーカーとsohoの問題について話をさせていただきたいと思っております。座らせていただいてお話をさせていただきます。
     限られた時間でございますので、レジュメを用意させていただいておりますが、多少飛ばしていくところもございますことをお許しいただきたいと思っております。
     ちょっと一言だけ、このsohoあるいは在宅ワーカーとの私自身の関係を申し上げておきますと、私自身、テレワークの普及につきまして10年来民間でいろんな運動を進めてまいりまして、これは個人的な問題ではございますが、そういう流れの中で、soho、在宅ワーカーの方との接点がございます。今、ちょうどそのsohoの関係の団体づくりということで、日本soho協会などの立ち上げなどにも関与してきたことと、在宅ワーカー自身のいろんな支援の仕組み、これを私の属します生産性本部において実施をすると、いうようなこともございまして、この問題について多少かかわりを持たせていただいております。不十分な点もあろうかと思いますが、よろしくお願い申し上げたいと思います。
     1ページに、まず「はじめに」とございまして、在宅ワーカー・sohoの定義でございます。「・」でつないでますように、在宅ワーカーとsohoとを別物と見るのかどうか。この辺のところがなかなか難しい問題でございますが、一般的にはそういったものをすべて含めてsohoと呼ぶということではなかろうかと思っております。もう御案内の先生方も多かろうと思いますが、sohoの定義としては、「インターネットを活用しつつ、各種の情報通信機器を使って事業活動を展開するもので、自宅もしくは自宅程度の小規模事業所を仕事場とする小規模事業者」ということで、小規模事業者であるということと、通信機器の利用があるということ、それから自宅ないしは自宅程度の小さい事業所であるということでして、労働契約的に申し上げれば、概ね自営であるか、せいぜい少人数の雇用労働を持つ零細企業者である、こういうのが特徴でございます。
     そこで、その事業者もしくはそこに使われる人が在宅ワーカーなり、あるいはsohoのワーカーであるということになろうかと思っております。このうち、今日の焦点の在宅ワーカーですが、これはお手元の厚生労働省のガイドラインにありますように、とりわけ、この中で事業性が弱く、従属性の強いものに限定した形になっておるわけです。定義は「情報通信機器を活用して、請負契約に基づき、サービスの提供を行う在宅形態での就労のうち、主として他の者が代わって行うことが容易なもの」とございまして、請負契約であるということと、それから在宅での就労であるということ、つまり、これは先ほどのsohoで言いますと、hoの部分、ho(ホームワーク)の方ですね。そのホームオフィスによるワークであるということ、それから、最後にございますように、他の者が代わって行うことが容易なものということで比較的技能レベルの低いものと、こういうことが想定されて、その辺を在宅ワーカーと捉えているようです。
     実態といたしまして、きっちりした統計は今のところないわけですが、日本労働研究機構の方の推計では、現状では約18.6万、これは直接受注されている方で、どこか仲介機関を利用した方も入れると約30万弱であるという推計が出ております。ただ、いろんな推計が出ておりまして、これはかなり少ないのではないかというような見方もございまして、実態はもう少し多いというようなのが現状であろうと思いますが、なかなか統計的把握がないこと自体も1つの大きな問題点ではなかろうかと思っております。
     さて、その実態を少しタイプ分けしてみたのがその下の図表1でございます。私どもで調査をしたところに基づきまして、3つの類型に分けております。
     必ずしもきれいな整理ではございませんが、専業型、兼業型、いわゆる周辺型という、周辺型というのはパート・アルバイト的な比較的入りやすい働き方になろうかと思いますが、そのプロフィールは右側にございますように、専業型の方は比較的技能程度が高く、収入も比較的高い。それから兼業型の場合においては、特定の職種に大体偏っている場合が多い。それに対して周辺型は、先ほど申し上げたように、比較的データ入力であるとかテープ起こしであるとか技能レベルとしては割と容易なもの。したがって年間収入もやや低いと、こういうことでございまして、こういったsohoのタイプ分けでいくと、在宅ワークというのは、どちらかというと周辺型のところに依拠する形ではないかと思います。
     ただ、これは現在の状況を断面的に見ればということであって、実態はかなり動いています。すなわち、周辺型のものが専業型に動いていくとか、あるいは兼業型であるけれども、周辺型に入っていくとかいろんなケースがございまして、この辺はかなり流動的であるということ、その辺は一応動態的に捉える必要があるということは申し上げておきたいと思っております。
     具体的な就労実態は、「1」以下に書いてございます。「在宅ワーカーのプロフィール」もごくごく簡単に申し上げますと、こういうように定義をしました在宅ワーカー、多くは7割が女性、それから末子の年齢が6歳以下の育児期にある者が多い。これらのプロフィールは、家内労働等実態調査という厚生労働省の調査に基づいて書いたものでございます。それから比較的高学歴層、大卒以上が多いということ。それから重要なことは、会社員等の勤務経験の多い方が多いと、こういうことでございます。
     それから、選職の理由については、これも一般的に言われることですが、自分のペースで柔軟・弾力的に働けること、あるいは家族や家事のためといったような時間の都合ということですね、ワークライフバランス、そういった問題が動機づけになってございます。
     2ページ目をお開きいただきたいと思いますが、特にこれは時期的に考えますと、育児期の段階では、先ほど申し上げたように「内職アルバイト」型のような比較的軽易な形の働き方が多いわけでございますが、事業が軌道に乗ったり、あるいは育児が一段落すると、やや専業型を目指すと、こういったような動きというのも見られるわけでございます。この辺がまだ始まったような段階でございまして、余り統計的にはっきりとは出てきておりませんが、そういった動きが出ているということ。
     それから、メリットとして特に出ておりますのは、先ほどと同じことですが、自分のペース、自己責任、自己能力、あるいは育児の必要性など家庭状況との適合性、こういったことが言われております。メリットと書いていますが、裏返して言えば、これがすべてデメリット、あるいは問題点につながるということもございます。
     「就業の実態と問題点」ということでございますが、(2) 以下です。ここで一番重要になりますのは黒ポツの最初ですが、仕事が継続的にあるとする在宅ワーカーが非常に少ない。継続的に確保できないものとあるものとに分化する、つまり2つのグループに分かれてしまう。これもできるできないの差というのは能力差であるとか、あるいは経験の差であるとか、この面がございまして、この差が結構激しく出てきます。
     それから、仕事のとり方としましては、専業自営型の場合ですと、仕事の仲間の情報や紹介という形で比較的仕事がとりやすい。それに対して内職アルバイト型ではなかなか口が見つからないので仲介機関に依存していく、あるいは求人広告に依存していく。この仲介機関や求人広告に依存することが、仕事の確保をする道具立てではあるんですが、逆にそこにトラブルの原因もあると、こんなような状況でございます。
     契約につきましては、やはり口頭契約というのが半数以上です。ガイドラインでもいろいろな指導はございますが、なかなか書面契約というものが難しい。また、書面においても、伝票形式、メモ程度といった比較的簡単なものが多くございます。この辺は日本は、契約を結ぶということを教えられることが学校教育の段階から余りないままに、いきなり契約の世界に入っていくことへの戸惑いというのもあるようでして、なかなかこの書面契約の普及というのは難しい面がございます。
     それから、契約内容につきましても、納期が非常に短く設定されがちであって、休日前に受注し、明けに納めると、このような形などは、発注者側の言い分によって大体決まってしまう。そういったように契約内容がやや発注者側に有利といいますか、発注者側の方がやや強い関係に立つ、そういうことが多いようです。その端的な例としましては、いわゆる発注の突然打ち切りという問題、これも大きなトラブルの原因でして、事前予告が全くないケースもございます。この辺もガイドラインの指導では、一番の要点にはなっているわけですけれども、なかなか実態としてはおさまらない面もあるようでございます。
     それから、報酬の決め方ですが、当然にこれは請負的ですので、出来高払いという形でございますが、この単価設定のイニシアティブが発注者側にあるというのが現状でして、その意味ではなかなか難しゅうございます。特にありますのは、出来栄えによってプラスマイナスをするというような契約がございます。出来が悪い場合には、少しそれを減額するとか、あるいは逆にいい場合には増額するということで低めに抑える。こういう契約設定の仕方がありまして、それによって単価が不安定になること。それから、総じて平均的に見ても低くなるという、この辺にいろいろ問題がございます。とりわけ作業内容が単純・定型であれば、こういった傾向は多うございます。
     以下の箱書きにございますのが、先ほど申し上げた家内労働等実態調査の実態の数字でして、これはご覧をいただければと思います。
     それから労働時間、就業時間ですが、大変就業日数が短いことと時間帯が変則であることが特徴でございます。在宅ワーカーとされる方の一番多いのが、やはり7日から14日未満、特に14日未満というところで、全体の約4割近くに達しているということでございます。それから、1日の時間数も5時間から8時間ということでこれは低い。ですから、ある意味では、パートタイム労働という形で雇用される代わりに就業しているような形を選んだようにも見えますが、就労日数だけで見ますと、それよりもう少し短めであると。
     それから、時間管理は逆に自由であるという反面、不安定さということがございまして、それが非常に健康面にも影響を与え、ストレスなどを感じている例も多うございます。俗に在宅ワーカーの3つの病ということで言われておりますが、「肩こり」、「腰痛」、「眼精疲労」という、この3つは大体在宅ワーカーの典型的な持病になっていると、こんなようなことがございまして、大変深刻にお悩みになっている方も多いようでございます。その辺、今困っているということが図表の2のところで整理をされてございます。
     それから、3ページ目をお開きいただきたいと思っております。3ページ目に、在宅ワーカーのもう一つ就業上の問題として、先ほど来申し上げていますように、やはり技能レベルの低い労働に就くことがある意味で収入の不安定さを招いていると、そんなふうに考えてみますと、能力開発というのが非常に重要でございます。しかし、企業の中と違いまして、この能力開発が個人個人ということになりますと、その実施の機会が大変少ない。会社の中でございますと、いわゆるojtというような形で技能の向上というのは図られるわけですが、個人個人が独立して働く中においては、なかなかojt的なものは働きにくい。勿論、個人の経験を積むということでの学習効果というのはございますけれども、同僚からの刺激効果、上司からのアドバイス、そういったものは少のうございます。そういったような中においては、なかなか知識、技能を向上させる機会がなく、スキルアップという面でいろいろ障害になっていること。それから、実際に得た能力というものが客観的に評価されるかという客観基準の問題でございます。これがなかなかない。それがために、いかに優秀であるといっても、その優秀であることの評価がございませんので、その評価が報酬になかなかつながりにくいという、こういったような問題もございます。企業の中ですと、人事評価制度があり、それによって評定されたところが報酬に反映すると。こういうような形があるわけでございますが、なかなかそれが独立しておりますと、そういったようなルートがとりにくい。したがって、むしろアピールするというようなことで、アピールの仕方のうまさ下手さで得をしたり損をしたりします。
     発注者といたしましても、常にそのワーカーを抱えているであれば、自らの責任、あるいは自らの戦略として、能力開発という考え方が出てまいりますが、一過性であったり、必ずしも継続的な取引をするものでないということになりますと、そういう能力開発の動機が発注者側の方にも出てくるということは乏しく、この辺が大きな問題でございます。
     それから、生活面での問題でございますが、総じて主婦の方ということになりますと、その辺は割り引いて考える必要もあろうかと思うんですが、個人の条件ということだけで考えてみますと、やはり休暇制度、年次有給休暇制度といったような、これは当然のことないわけです。しかし、病気やけがをしたときなど突発的な事業中断のときに、代わりを誰が務めてくれるのか、あるいは、それによって所得が失われた場合に、それをどう補償されるのか、こんな問題がございます。
     特にこれは病気にならなくても、2,のところにございますように、受注が激しく減少した場合にはこういった問題があるわけで、変動もしくはあるいは受注がなくなると、いわば一種の失業状態に近い状態になるわけですが、御案内のように雇用保険適用がございませんので、こういった場合の生活保障というのは非常に問題になります。
     それから、例えば病気になった場合に、仕事をつなぐ人がないと、病気が回復した後にその仕事は他人に奪われてしまうという、こういう問題も起き得るわけでございます。その意味では同業者間で助け合っていくような仕組みというのがないと、この世界では「仕事の回し」と呼んでおりますが、そういうように回していかないと、長い目で見ての仕事の確保に支障を生ずる、こんな問題がございます。
     それから、とりわけ男性のワーカーの方も多くなっていますし、若いときからもsohoに入る方、女性も含めて多くなってきておりまして、とみに最近言われておりますのは、いわゆる老後、年金の問題でございます。実態的には、御案内のように国民年金の領域でございますが、国民年金にも入っていない、こういう方々が非常に多うございます。401k年金のようなものが適用できるのではなかろうか、こういう御意見もございますが、現実にはなかなか拠出能力がないというのが現状でして、老後保障については、まだ不安を抱えながらというのが現状でございます。
     中高年の層のワーカーさんの場合ですと、どちらかというと勤務経験がございますので、厚生年金にある程度年数を掛けているとか、あるいは蓄えもあるというようなこともございますが、最初からsohoに就かれる方には、この辺は薄々でございますけれども、不安感としてかなり強まってきているという点がございます。
     それから、時間が自由であることは、不規則であるということであるわけですが、公私の区別に非常につきにくいということ、それから時間がルーズになるということがございます。切れ目のない仕事で、どうしてもけりをつけるために深夜労働になってしまう場合、あるいは徹夜になる場合、それから長時間働きづめになる場合、いろんな問題がございますし、家に閉じこもってということで人的交流が減ることであるとか、そんなような問題を訴える方もいらっしゃいます。時間管理を自己管理するということの難しさ、これは企業の中の裁量労働のときも言われますが、もっと、こういう在宅の場合の働き方の場合には、時間管理の難しさというのが典型的にあらわれているようでございます。
     これらに対します現行の施策と、それに対する受け止めを3,で整理をさせていただいております。大きな問題点はやはり契約内容の明確化という問題でございます。これについてはガイドラインで一定の方向が示されているわけでして、お手元に書いたような条件の文書明示の問題、あるいは契約条件の適正化の問題等がございます。こういったようなところにつきまして、できる限りこれを遵守するように、発注者側に対して指導していくというのがガイドラインの考え方ですが、同時にやはりワーカーサイドにもこの自覚を促し、こういうガイドラインで守られているんだ、あるいは、こういうことが適正な契約なんだという契約の心構えとして説いておくという、この部分が非常に重要でございます。ワーカーサイドの自覚がないところに発注者側に一方的に打ち負かされてしまう、いろいろトラブルになる、こんなこともあるようでございます。
     それから、とりわけ、雇用契約の場合などとちょっと違いますのは、個人情報の保護の問題というのがございます。これは特に情報機器を使っての仕事ということになりますので、例えば、いろんな発注を受けた場合に、発注される内容が個人情報を含んでいる場合がございます。個人の方の住所録をつくってくれと、こういう情報を依頼されて、それを家庭で管理しているうちに、それを漏洩してしまった、そんな問題もございます。それからあと、ソフト制作的な問題ですと、いわゆる今一番問題になっていますのは著作権の問題でございます。この辺の知識がないために、知らず知らず著作権法違反を侵している。この辺の危機感がある。いずれにしましても、これは会社ですと、法務部門であるとか、ある程度組織としてのその辺のチェック体制が働くわけですが、それを自己責任に委ねておりまして、かなりその辺の不安感を持っていることは事実でございます。
     それからあと、苦情の処理ですが、受付担当者を発注者側に設けなさいと。こういうガイドラインがございますが、それは当然、発注者との関係で直取引でやるわけですが、なかなかそこがうまくいかないという場合がございます。そのための第三者機関としてどういうところが使われるかということでございますが、はっきり申し上げまして、これは労働関係の機関では、労働者でない限りは直接的な相談窓口はないわけです。一部行政の施策として、私どもも少しお手伝いさせていただいており、若干相談の窓口がございますけれども、まだ全面的にそれを拡大するというような形はなかなかとりにくいわけでございます。したがって、実態としてどちらかに行くのかと、市町村の一般的な相談窓口がございますが、消費者保護センターのようなところに相談に行くケースがございます。いわゆる契約違反というような消費者保護の観点からいくということがございまして、消費者保護の観点と労働者保護の観点はちょっと違いがあるところがございまして、その辺のトラブルの処理の体制というものもまだまだ一本化されていない中で、必ずしも完全ではないというような感じがいたします。
     それから仕事の確保の問題、申し上げたとおりですが、やはり需給調整のシステムが未整備であるということ、仕事をどこから発注するかということですが、御案内のように、知人から紹介を受けるというようなことであれば、これは職業の世界で申し上げれば、全く縁故紹介の世界で前近代的な世界ということになります。そういう職業紹介のための紹介機関であるとか、あるいは情報提供のシステムというのが必ずしもきちんと整備されていないし、ルールがまだまだ十分でないという問題がございます。また、その辺が整備されませんと、繁閑の差が大きいということで、あるときはあるけれども、ないときはない、こんなような状況になってしまいます。
     それから、先ほどから申し上げましたように技能レベル、これも発注される側と発注する側の差というものがミスマッチの原因になるわけでございまして、こういったようなところを調整していくようなシステムの整備、いわば労働市場的な整備というものが必要であるということがございます。
     その1つの方途といたしまして、仲介機関、エージェントと呼んでおりますが、仲介機関を通じて仕事のあっせんをする場合が多うございます。そのために仲介機関の情報を整備しようということで、これを電子ディレクトリという形にしたもの。それは「sohoテレワーキング」システムというものでございますが、こんなものを試行的ですが、運用しております。しかし、これだけで足りるものではございませんので、こういったような情報提供、あるいは仲介の方策の整備については、1つの政策的な課題であろうかと思っております。
     それから、大きな問題として、能力開発でございます。これも私どもで「在宅ワーカースキル診断システム」というのを実施しておりまして、ネット上で自分の基礎的な能力を確認するということ、つまり、ネット上にテスト問題があらわれまして、そこで回答すると自己採点してくれるというシステムをつくってございます。それによって必要な学習を促すということですが、それだけで学習は足りるものではございませんし、実務能力的には十分ではございません。そういったような意味におきまして、とりわけネックになりますのは、費用的な問題がございます。新しいソフトを勉強をするのにお金がないとかそういう声が多うございまして、そういったような能力開発の費用は企業が出してくれるわけではございませんので、個人負担ということで、この辺が1つの大きな課題です。
     それから、申し上げましたように、やはり純粋な職業系の技能だけではなくて、ワーカーとしての心構え的な基本的な契約で働くという、そういう意味でのスキルというものも重要でございます。適正な契約締結の問題、あるいはトラブルのときの法律的な取扱いに対しての知識の問題、こういった面も持つということがかなり重要でございまして、雇用労働者は、労働法の知識を持たないといけなのと同じように、こういったような最低限契約で働く場合の知識というのを受け付けていくと、こういうことも重要ではなかろうかと思っております。この辺も実は在宅ワーカースキル診断システムの1コマには入れてございますが、まだまだこれだけでは十分ではないのではないかと思っております。
     それからもう一つは、時間、健康管理の問題でございます。特に問題になりますのは、作業時間が先ほど申し上げましたように非常に長時間になる場合がございます。これは人によって効率が余りよくないためになっている場合も多うございますが、ガイドラインでは、そこのところにつきまして、作業時間が長時間に及ばないように設定するということを言われておりますが、何を標準で決めていくのか、なかなか難しい問題がございます。通常労働者の1日8時間を作業上限にと、こう言っておりますけれども、これはかなり個人によって違いもございますので、実際には建前になっているのが現状ではなかろうかなと思っております。
     そういたしますと、あとは個人がどこで歯止めをかけていくのか、これはとてもできませんとか、これはとてもじゃないんですけれども、この納期では無理であるとか、そういった抗弁をしていけるような力を持っていく。これも交渉能力によるわけですが、申し上げたように、やはり発注者の方が強い立場にございますので、なかなかそこまでは言い切れないというのが現状だろうと思います。
     それからもう一つ、安全衛生の問題では、多いのはvdt作業でございます。これは雇用労働者の場合でもvdt作業の場合にはガイドラインが出ておりますので、長時間画面を見つめることで眼精疲労になる方が非常に多い。それから腰痛防止という点においても、やはり配慮が必要であるという点がございます。特に健康診断、これは発注者がやるというわけには、なかなか難しゅうございますが、全般的に地域診断でも何でもよろしいわけですが、健康診断をちゃんと受けているか、こういうようなところが必ずしも十分ではないようでございます。
     以上、申し上げたようなことを政策の体系としてちょっとまとめてみましたのが図表の4でございます。発注者と在宅ワーカー、直接発注の場合と中間機関を通じての場合があるわけです。そのときに1つ大きな政策課題にございますのは、契約ルールの明確化と徹底ということで、ガイドラインというのがその役割を果たしています。これがいかに徹底できるかどうか。それから、契約内容の明確化と同時に発注機関、仲介機関の情報を提供していく、それによって仕事を確保していくということが大事でございます。これについては、「仲介機関ディレクトリ」というのが政策として出来上がっております。箱書きで書いてあるのが現状の政策ということでございます。
     それから、相談援助・情報提供といたしまして、これも私のところで実施しておりますが、「在宅就業ポータルサイト」という、最後にサイトのホームページが出ておりますが、そこのところで情報提供なり相談援助の仕組みというのを設けてございます。
     それから、飛ばしまして、能力面ではスキル診断・能力開発機会の提供、これには「スキル診断システム」というのがございます。あと、安全衛生、あるいは先ほど申し上げた年金など社会保険の問題もございます。
     在宅ワーカーサイドにつきましては、右側の方で見ていただきたいと思います。どちらかというと、この線の左側の世界というのは、社会的に整備をしていく部分です。当事者間においてもっと考えなきゃいけない部分というのがございまして、これが線の右側のところの世界です。事業者にとってみれば、やはり事業を確保し、安定して受注をしていくという側面がございます。ここで申し上げる事業者というのは、在宅ワーカーというのは、もともと事業者的な側面、自営業者的な側面と、それから労働者的な側面、つまり二面性を持っているという意味で、ここで事業者と労働者と分けてございます。どちらかというと事業者的側面で考えると、仕事が確保できること、安定して受注できることが問題であると。それから、リスク・トラブルを回避していくこと、それから、自分の家の中でも、施設や設備を増強していくという、事業者としてやらなきゃいけない部分というのがあるわけで、この辺が一般的なワーカーとは違う部分であるわけであります。
     それに対して労働者の方では、能力開発、あるいは就業時間や健康管理、生活安全、生活設定というのは、労働者としての立場から見て、やはり考えていかなきゃいけない部分で、この両面をいわば維持できるかどうか、この辺のところが政策の課題になるわけでございます。収入の確保・安定というのは、事業者であっても労働者であっても共通ですので、真ん中のところに書いてございます。
     こういったように政策の課題がひとつ全体像として描かれますが、5ページです。今後の課題といたしまして何点か示してございます。
     就業実態の把握というものが家内労働の実態調査で行われておりますが、申し上げたように、「家内労働等」の延長でございますので、果たして在宅就業者・sohoと呼ばれている方の全体像、全部つかまえているのかどうか、この辺が必ずしも明確ではございません。それから、就業実態ということと同時に、本当は生活の実態とダブルで調査をしていく必要もございますが、この辺のところはまだまだ不明確ですので、その実態把握というのが大きな問題があろうかと思っております。
     それから2点目には、やはり仕事の確保、就業機会の安定的確保という問題でございます。この辺はどのぐらいの仕事があればいいのか、これは人によってごくごく短い仕事だけでいい、少しの仕事だけでいいという方もいらっしゃいますが、かなりの仕事がないと生活に困るという方もいて、この辺が混在してございます。問題はその仕事の量もございますが、それが安定的にとれるかどうか。あるときはあり、あるときになるとないという、この非常に変動性の激しい、この辺がやはり大きな問題ではなかろうかと思います。そういった意味での仕事の機会をどのように安定的に確保するかという仕組みの問題、これは市場の整備の問題だと思いますが、そういう問題がございます。
     それから、契約ルールの適正化とその徹底でございます。この意味でガイドラインをもっと法制化したらという議論もございますが、これは労働法制なのか、いわゆる一般的な契約のための法制なのか、この辺の区分がなかなか難しゅうございます。この辺の整理の中で、労働法の体系の中だけでは必ずしも律し切れない。けれども、かといって一般契約の世界だけでもない。この間もあるわけでございまして、法的にはまだまだ検討の余地があろうかと思っております。
     また、労働基準法の適用ということになりますと、労働者でないということで排除されてしまいますが、労働基準法の中においても、いろんな類型の労働者がもう既にあらわれております。そういったように、労働基準法の中でも労働者保護性の強い部分と、そうでない部分があらわれている。そういったような労働法体系全体の見直しの中で考えていきませんと、どうもここだけとらまえてやっても必ずしも実効性が上がらないのではないか、こんなようなことも問題点としてあろうかと思っております。いずれにしましても、法制化が必要がどうかを含めての検討が大きな課題だろうと思います。
     それから苦情・トラブルの処理、申し上げたように、これは非常に大きな問題でございます。現実的には裁判という事例もございますが、なかなか裁判までもっていく勇気も、あるいはお金もないというのが現状です。弁護士さんに相談すればお金をとられるということで、できるだけ簡易な形の相談ということがございますが、この苦情・トラブルを防止するということについて、現状においては、私どももやっておりますが、いろんな窓口があり、またnpoなどもやり、いろんな窓口がそれぞれの領域でやっているというような現状でございまして、まだまだ必ずしも十分ではないのではなかろうかと思っております。
     それから健康管理・セーフティネットの整備の問題、これは今後の課題としていろんな制度面の整備の問題があろうかと思っています。労働法制の適用の問題は先ほどのところで関係して申し上げました。
     そして大きな問題は能力開発の支援でございます。やはり個人が努力して能力開発をするということでございますので、この辺、個人支援ということになりますと、とりわけ金銭的な支援、そういったようなものをどう考えるか、あるいは、その方への適切な能力開発の機会を公的な形で与えることができるのか、そんなようなことなども今後の問題であろうかと思っております。
     あと、関係団体として、ここにございますような幾つかの団体がもう既にでき上がっておりまして、こういったようなところがいろいろ支援をお手伝いをしているのが現状でございます。
     在宅就業ポータルサイト、参考にございますが、ホームページに出ておりますので、何かの折りにごらんをいただければ、私が申し上げなかった部分もそこに出てございますので、ごらんをいただければと思っております。
     あとは参考でございます。図表の4で申し上げた仲介機関と呼んでいるもの、これには6つの類型があるということがここに書いてございます。御参考まででございます。
     それから6ページ目でございますが、この在宅ワーカー、事業者としての特性と労働者としての特性と二面性を持っている。これは見てみますと、どうも事業者性の強い方と弱い方があるようだということは、それは特徴、プロフィールを見てみますと、仕事の種類によって、いわゆる入力系の仕事をなさっている方とそうでない方、付加価値の高い仕事をなさっている方、それから発注者が単独の場合と複数である場合、そんなところで違いがあります。そして何よりも大きいのは問題意識でございまして、資本的機能と呼んでおりますが、やはり契約に対しての意識をかなりきっちり持っていらっしゃる方と、私はワーカーであると、労働者の延長であると、こう考えている方、この辺の意識の違いというのは結構多うございまして、この辺のところが混在しているのが実情ではなかろうかと思っております。
     それから図表の6は、申し上げように動態的にとらまえるべきものであるということで、今申し上げた経営軸、時間軸と大きなベクトルがございます。この大きなベクトルに向かって、ベンチャー企業のような事業者性の強い部分に向かって指向していく部分と、そうではなく、やはり在宅でとどまっていく部分、ここのところに徐々に分かれていく、こういう傾向があるんだということがここに示しております。a、b、c、dというのは、大体こういうところに分布が多いということで位置的に示したものでございまして、これは御参考までということで御理解をいただければと思います。
     最後に一言だけ申し上げたいと思っておりますが、大きくとらまえてみますと、在宅ワーカーが問題になりますのは90年代かと思います。とりわけ、その年代の中ごろから在宅ワーカーがかなり活発化してきたわけですが、これは人によってネーミングが違うのですが、私ども第1期と呼んだりしている場合もあります。このころの特徴というのは、いわゆる電機メーカーの方で働いていらっしゃった方が独立をなさってなるケースが多うございます。したがって、どちらかというと勤務経験のある方が在宅ワーカーになっていく。この場合には割と成功しているケースが多うございます。しかしその後に出てきましたのは、いわゆる勤務経験の少ない、乏しい、あるいは全くit系と無関係の仕事をなさっていて、在宅ワーカーになる方が参入してきておりまして、このような勤務経験がないとか、it経験のないような場合ですと、やはり能力的な面においても遅れをとるし、また勤務経験がないことによって、どうも働くこと自体についての自覚が乏しいということもございまして、その辺で問題が起きやすい、こんな現象もございます。
     今の二分化になっているところを見ますと、どうも勤務経験があるということがやはりいろんな意味で能力開発をしているであるとか、あるいは働くことについての意識をきっちり持たせるとか、契約についての考え方をとるということのいわば格好の教育機会になっている。それがあるないということがかなり現状においての差につながっているような面があるのではないかと思っております。
     最後の点はちょっと印象的なものでございまして統計がございませんが、感想とだけ御理解いただければと思います。早口で大変恐縮でございましたが、以上でございます。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。
     ただいまの説明について、御質問や御意見、いろいろとあろうかと思います。どうぞ。
    佐藤委員
    新しい政策課題を考えるときに、在宅とかsohoというふうに限定することがいいのか。つまり、今、企業側が雇用者責任を回復するために業務請負で個人と契約するのが広がっていますよね。実際上その人たちも、例えば編集のライターなんかでは情報機器も使うし、家でも仕事をやっているわけです。情報機器利用とか在宅という固有の問題と、もう少し業務請負というような人たちと相当重なるのではないか。sohoとか在宅とか情報機器利用というふうに限定すると、逆に言えば、ごく一部しか把握できないのかという気がしていて、そういう意味では業務請負というようなものが非常に広がってきていて、その中に、北浦さんからお話があったように、例えば1社しか仕事を受けていないとか、仕事する時間とか、仕事の仕方について、業務請負でありながら、事実上委託元に指揮されているようなものがありますよね。そういうものの一部は労働者性が強いとして切り出して労働法制を適用するという考え方があります。勿論、その中にsohoとかそういうものが入ってくるというふうな施策を考える方がいいのかどうか。
     それともう一つは、業務請負だけではなくて、いわゆるフランチャイズのオーナーですよね。コンビニのオーナーも一応事業主で、これは業務請負ではないわけですけれども、仕事の仕方、営業時間とかすべてコントロールされていて、ある面では労働者性が高い。これも業務請負と別なんですけれども、そういうものも労働者性で議論する方がいいのか。それで、労働者性のところを切り出して対策を考えるということか、あるいは、そういうことをしないで、自立させるために、特定の会社に依存するのでなくて、複数の会社とやるような方向の施策もありますよね。北浦さんだと両方やるべきだというような議論なんですけれども、3つの質問は、その辺をどう考えられているか。
    北浦部長
    難しい質問ばかりでございますが、おっしゃったように、sohoの実態把握をもう少し広くとらえるのであれば、おっしゃったようにアウトソーシング、そういった領域から迫っていくのが必要だろうと思いますし、それによってかなり広くとらえることは事実だと思います。現実にこのsohoの仕事はほとんどアウトソーシングになっているものが多いわけでございますから、その意味ではおっしゃるとおりだと思います。そのときに出てくるのは、やはり1社専属かどうか、この問題だろうと思います。1社専属性が強ければ、確かに労働者性というのはかなり強まってくるだろうと思いますが、そこのところにおいて、1社専属性の強い、いわゆる抱え込みがきいていく部分と、それから、そういうものを嫌ってなるべく多くの複数のところと契約をしていくという自立性を高める部分と、そこに分かれてくるのだろうという感じがいたします。現状、在宅ワーカー・sohoと呼ばれているところは、それが混在しているのが実情じゃないかと思っております。
     ただ、そういうように種々雑多ではございますが、グルーピングとしては、典型的な在宅ワーカーとかsohoと呼ばれている方々は、どちらかというと雇用労働ということを避ける傾向がある。雇用契約を避けたいということがある、あるいは会社勤めをしていてもう懲り懲りだという経験がある、あるいは、それによっての拘束性を忌み嫌うとか、いろんな意味において雇用契約に戻ること、拘束性が強まることをあえて避ける傾向がございまして、その意味では自立性を保っていきたい、これが1点ございます。
     では、そういうふうになると、全員が事業者として皆大きくなるのかというと、実はそうではなくて、soho・在宅ワーカーのもう一つの特徴は必ずしも大きくならない。大きくなることを必ずしも求めない。つまり、収入を高くすることは必要だとは思うけれども、そこそこでいいという考え方、つまり、ここのところがございまして、ここでまた2つに分かれる。限りなく事業性を追求する方は規模メリットを追求し企業として育ち、ベンチャーに育つsohoもいますが、そうではなくて、ある段階までくると、そこでとめてしまう。つまり、雇用労働者であと人を雇わなきゃいけないという局面にくると、そこで事業規模をとめてしまう、あるいは、それをその人に切り分けて別に仕事をさせる、こういったようなところもあって、規模メリットとか規模の拡大を追求しないという。それはある意味では個人が自立というか、なるべく気楽にというのは語弊がありますが、そういう人間関係のわずらわしさではなくて、個人として自由に働くという形をとりたいと、こういう指向を持っている方とに分かれる。その辺が混在してございますので、佐藤先生がおっしゃったように、類型の中では労働者性に限りなく整理される部分もございますが、必ずしもそうでない部分も出てくるだろうという感じがいたします。
     それから、フランチャイズ制のような問題も含めて考えるべきだというのは、おっしゃることはそのとおりだと思います。ですから、私も申し上げたように、本当に法的な問題を考えていくのであれば、もう少し在宅とかsohoとかだけではなくて、先ほど申し上げたもう少し大きな、いわゆる契約でのコントラクトワークそのものも含めて、いろんな種類の類型も含めて全体的に整理をしていく方が望ましいのかなと。ですから、労働法についても保護というのが、例えば全員が保護される人と、そうでない人がオール・オワ・ナッシング的な発想でいくのか、もっと保護されるべき人とそうでない人という、はっきりした区分けではなく、もっと段階的に必要に応じ保護が行われるべきであるという発想をとっていくのか、その辺もあろうかと思いますので、そこはむしろ全体像の中でくくって整理する方がいいのかなという感じがしております。その意味ではここだけで考えるのではなく、そういう広がりの中でこういうものを、同種のものとしてとらえる必要があろうかと思っています。
     最後の点は、今の中に入ってしまうわけでございますが、私としては両方ともあると。実態的にこの辺がよくわかりませんので、やはり働きはじめてみて、3年、5年経ってみてこれでいいという方と、やはり欲が出るという方が出てくるんですね。それがかなり動いているということがございまして、一概には言い切れないところもあろうかと思いますが、ただ、先ほど申し上げたような形で幾つかの類型に分かれているというように、それでもやはり大きくなろうというところと、現状でいいという部分、限りなく事業者になろうというところと、限りなく1社に近づいていってしまう部分、いろんなふうに整理がされるのかという感じはいたしております。そんなようなことでございます。
    大澤会長
    ほかにいかがでしょうか。
    岡沢会長代理
    具体的にどの仕事の領域で膨張しそうですかね。
    北浦部長
    狭義は、ここに書いてございますデータ入力とか、テープ起こしとか、文書作成というごくごく軽易の労働でございますので、これはあらゆる産業、どこにでもある仕事だと、こういうことが言えようかと思っております。しかし、それがやや高級になってきますと、ホームページ制作とか、あるいはいろんなソフトの制作、システムの設計の一部を担うというふうに、そういうソフト産業のところに入っている部分もございますが、最近、出てきておるのは、いわゆるコンテンツビジネス、コンテンツ制作の部分において、結構能力を高める方がいらっしゃいます。つまり、中身ですからいろいろなことがあり得るわけで、会社のプレゼンテーションの資料作成を請け負ってみたり、あるいはポスター制作とか、あるいは何かの雑誌の編集とか、ですから、そういうのはコンテンツというような領域でとらえていますので、通常の産業分類、職業分類とはちょっと違うような形で、つまり、才能さえあれば何でも手がけられる、こんな形になっております。ただ、そこの領域に行くには相当、経験を積まないとなりませんので、そういう方々と、本当にデータ入力をしている世界とに分かれているのが現状でございます。特に在宅ワーカーというのは前者より後者の方です。
    岡沢会長代理
    これだけ技術革新が早いと、その人たちのスキルの向上よりも、ソフトの進歩の方がはるかに早いだろうと思うんです。だから、これだけの技術を持っているからといって在宅ワークを始めたら、実はソフトの方がもっと簡素化して誰でもやれるという、そのときの能力を維持するというシステムをどうつくっていくか。
    北浦部長
    おっしゃるとおりです。切実な問題として一番あるのは、アプリケーションソフトがどんどん更新されていくものについて、常に最新のアプリケーションソフトがほしいと、こういう問題がございます。最高の操作機能を持つものを持ってみたいと。実はそれが発注者からも要請されることになりまして、この制作については、アプリケーションソフト、これ以上のバージョンで使えという指示がされることがあって、古いバージョンだと仕事ができない。その両方の面から、そこが一番切実な問題になっています。
    佐藤委員
    業務請負契約で、従来自営業と言いながら、労働者性が高いところを切り出してやるというのは、これまで政策がないので新たにやる必要はあるかなと思うんですけれども、事業者性が高い方については、いわゆるsohoと限定しないで、中小企業庁がやっていたような施策がたくさんある、あるいは日本商工会議所がやっていたものがありますね、所得保障の仕組みは日商なんかありますよね。あと協同組合で事業をあっせんしたり、融資とかの仕組みもあります。新たに何かやらなきゃいけないものがあるのかどうか。それはどうですか。
    北浦部長
    現実に中小企業施策の範疇の中に、このsohoも視野に取り込んできているような感じもございます。特に国民生活金融公庫さんなんかはsoho向けのセクションというのを設けて、soho向け金融というのをやっておられたと思います。ただ、実態からいくと、じゃ、それが本当にsohoの方々が借りているかというと、ごくごく表層であって、かなり零細の部分はそこに届かないという問題がございます。かなり緩和はしていますが。
    佐藤委員
    事業主対象の施策でなぜsohoだけ落ちるのか、soho固有の問題があるのかどうかということなんですね。そこはよくわからなくて、従来の自営業なり小規模企業の施策からなぜsohoだけ落ちちゃうのか。それがあるとすれば、やらなきゃいけないと思うんですけれども。
    北浦部長
    それは1つは、法人であるものとそうでないもの、形態がございますね。
    佐藤委員
    既存のでもありますね。
    北浦部長
    ですから、あとは信用力の問題ということにもなりますが、ですから、それは信用保証協会といった制度も利用してということもございますけれども、そういう要件的に満たないという部分もあるだろうと思います。ちょっと今細かくは申し上げられませんが。それともう1つは、そういうものについて利用しないといいますか、知らないというのもありますし、利用しないという、何か手続が面倒ではないかと避けている傾向もございます。それから、やっぱり窓口で何となくガードされてしまうということもあるようで、実態的には、例えば金融では初期の段階においてはほとんどサラ金、運転資金はサラ金を使っていたところが多かったといわれます。今、ネットバンクができまして、かなり利用が増えてきた。特に多いのは、24時間の決済で1日で自転車操業しているケースがあって、夜中の12時に落とさなきゃいけないといったときに銀行がやっていないと、今ですと、コンビニとかあるんですけれども、当初の場合はですね。ですから、それでサラ金を使うと、こういうことがあって、かなり個人債務で破綻するケースというのもあったわけです。それが初期の段階ですから、それよりは今は状況はよくなっておりますが、まだまだそれで救われる方と、そうでない方の差があるようで、まだ十分ではないという感じがいたします。
    大澤会長
    ほかにいかがでしょうか。
     ちょっと私の方から2点ほど。レジュメの2ページのちょうど真ん中あたりに「単純・定型的作業では報酬額が低下気味という指摘」とございますけれども、これはかなり信頼性の高いデータがあるんでしょうか。この厚生労働省の家内労働等実態調査で指摘されていることでしょうか、それとも、アトランダムな……。
    北浦部長
    家内労働等実態調査での2点間での比較ということでございますので、その意味では信頼性はございますが、ただ、家内労働等実態調査自体のサンプルがある一定のところに限られているということと、必ずしも報酬のとらえ方のところにおいても、まだまだもうちょっと検討しないといけない面もありますので、単純にこれだけをもってというわけには言いにくいと思います。
    大澤会長
    2点間というのは2001年の前はいつですか。
    北浦部長
    ちょっと手元にないんですが、たしか四、五年前だったと思います。
    大澤会長
    わかりました。それは先ほど最後にデータに基づいてというよりも印象ということでおっしゃった中に、2つぐらいの軸に区分されるのではないかと。90年代の後半ぐらいは勤務経験のある、電機メーカーの雇用者からの独立というのが見られて、最近の参入は勤務経験のない人というようなことをおっしゃいましたけれども……。
    北浦部長
    そういう方々が最近になって増えてきているということで申し上げたので、勤務経験のある方が入っていないとは申し上げてございません。それからもう1点、今日は女性のということを申し上げたんですが、最近の特徴としては、中高年のsohoが結構増えてきているんです。これは定年退職者もございますし、定年退職前に早期退職優遇制度でやめられた大企業の方がsohoをやりたいということで、それだけでsohoの団体をつくっている地域も幾つかございます。そういう中高年のsohoも結構増えてきております。
    大澤会長
    勤務経験があって、そこからの独立というタイプは、依然として変わらないぐらいの数というか……。
    北浦部長
    そこは申し訳ないのでございますが、なかなか実態の数が、まず母数がきっちりつかめてございません。傾向として、印象論としてはあるかと思います。
    大澤会長
    それから、これは岡沢さんにお伺いした方がいいのかもしれないんですけれども、スキルのアップグレーディングとか、それから、独自のセーフティネットとかというようなこと、経済の情報知識化が進んでいると言われるスウェーデン等北欧諸国ではどんなふうになっているんでしょうか。
    岡沢会長代理
    ブロードバンドを導入するときにスウェーデンがやったやり方というのは非常に強引なやり方だったんです。世帯をベースに、地域社会及び学校をベースにして、全ファミリーにブロードバンドをほぼ強制的にセットして、そしてそこで研修をさせて、そして最新の情報に対しては研修センターから、自宅もしくは会社に対してプログラムが発送されて、それに対する回答を何分以内に寄こして、そして全問正解だとその場にサーティフィケートがそのままぼんと送られてきて、そしてそのサーティフィケートをプリントアウトして人事部長のところへ持っていくと、それで給料を上げていくというふうな形をして、教える方も教えられる方も常に技術アップをしていかないとということが非常に盛んであることは事実ですね。それにあとハードの産業がドッキングして、それが結局雇用の拡大につながったんです。在宅で格安で使ったコンピュータをそのまま使うとほぼただでキープできます。最新に買い換えると何割引きで購入できますという形で、多くの人たちは最新版を買いたい、そこでハードの需要を増やしていったという形があります。だから、ハードとソフトの方の技術革新が非常に早くなった。
     あと一つは、もう一つ問題で、どの分野でということに私はものすごく関心があったんですが、旅行代理店を在宅で開いたり、本の出版を請け負ったりというのが比較的在宅の産業としてはできるようになった。今、ほとんどパソコンでこれぐらいのことなら全部やれますから、そういう部分は領域としては早くなった。旅行代理店なんかでも、本来なら切符の発給権を持っていない人でも旅行代理店の資格をとって、そこで様々なアイディアで旅行のメニューをつくって、ある程度客が来たところで発給権を持つ旅行代理店と切符の交渉をしていく。そういうのが増えたなという気がいたします。とにかく雇用をどう創出していくかというときに、かなり強引に、ブロードバンドで最新の情報環境をどう全世帯に提供していくかということは非常に重要なキーだったと思うんです。それはitスペリアという政策でやったんですが、一応それが全部終わったので、今、itへのリテラシーは非常に高い国になっているのは事実だと思うんです。それにハードとドッキングしたから比較的うまくいった。
    坂橘木委員
    今日のお話を聞いていて、やや大胆なことを言うかもしれませんが、これも昔の家内工業、いわゆる家で袋張り、封筒書きをやっていた仕事がsohoといういい名前で、やや高級な仕事をやっているように見えるんですよ。昔の家庭でやっていた封筒張り、袋張りの仕事のときに、5ページの<1>から<8>というようなことは制度としてあったんですか、なかったんですか。sohoというのが入ったから①から⑧のような政策というのが出てきたんですか。それをちょっと、素人的な質問で申し訳ないですが。
    北浦部長
    <1>から<8>で最後に書いているのは、私自身の勝手な整理でございますので、別段、今、行政の方がこういう整理をしているというわけではございません。
    坂橘木委員
    昔は家庭で封筒書きをやっていた仕事に対しては、こういうのはほとんど体制はなかったと理解した方がいいですか。
    北浦部長
    というより、説明はしてございませんが、お手元にガイドラインがございますが、在宅ワークのガイドラインでございます。これはもともと、今、橘木先生がおっしゃいました家内労働者に対しての1つの指導指針、それにならってつくり上げているものでございますので、この在宅ワーカーのガイドラインというのは、おっしゃった意味では家内労働の対策が横滑りになっているという感じでございます。家内労働の方ですと、やはりそれはその歴史の中でいろいろ問題を積み重ねてきておりますので、かなりこれに対しての対応は家内労働法という法体系の中で守られてきておりますが、ここで言われている在宅ワーカーとかsohoと呼ばれている人たちの仕事というのが、家内労働法でいうところの家内労働に当たるかどうかということでいうと、ほとんど当たらないということになっておりまして、その意味では課題が残っているんだと、こういう意味でございます。一部入るところもあるやに聞いておりますけれども、そのほとんどは家内労働の部分と分かれると。一般に製造業系が大体家内労働の方の中心でございますが、サービス業系の方になかなか家内労働が適用できない。ところが、ヨーロッパあたりですとか、そういうものを適用している例もあるので、必ずしも無理ではないのではないかという議論があって、この辺は今日の主題ではございませんが、家内労働法の適用の問題として、もう一つ別の角度から議論すべき問題だろうと思っております。それを前提にしてこちらの方は整理しております。
    木村委員
    家内労働と在宅ワーカー・sohoと決定的に分離するというのはどの線なんですか。
    北浦部長
    実態的には仕事の問題が大きいと思っています。製造業の部分。それはやはり発注者との関係において、かなり従属性の高い部分であるということが1つあると思います。
    木村委員
    それが家内労働のね。
    北浦部長
    家内労働の場合です。こちらの場合には契約者としてそれぞれ自立的にまず契約をしてやっていく。例えば、原材料の供給を誰がやるのか、そういう場合に家内労働の場合は原材料供給をやって、加工して納めるという形をとりますね。ですから、家内労働でもフロッピー入力というのがあるんですが、その場合には、フロッピーは業者から渡されて、その上に書き込んだものをそのまま渡すという形になります。ところが、こちらの場合でいったらば、多分、恐らくフロッピーは自分たちで用意をして、それで提供するとか、あるいは、どういう形でやるかは契約条項に応じて自分なりに判断して、その条件に沿ってものを納めて、相手がそれでいいというかどうか、そういうようなところの自立性がかなりあります。ですから、仕事の契約の立て方、一応向こうは、法律上はたしか委任契約の形をとっていたと思いますが、その辺の論議はともかくとして、かなり従属性の高い部分と、一方的なある特定の事業者との関係、専属性、こういうものが非常に強いものがございます。
    佐藤委員
    僕の理解では、家内労働法は北浦さんが言われたようにモノづくりを対象とするもので、供給して、加工して、戻す。それを想定して法律ができているので、データ入力とかソフト開発が出てきて、従来の家内労働法でカバーできないわけですね。でも実態はほぼ同じなので、家内労働法をどう適用するかということで、対策を考えてきたわけです。ですから、基本的に家内労働法のモノづくりの法律体系をどうモノづくりじゃないところに適用するか厚生労働省はやってきたというふうに考えていいと思います。基本的には同じだと思う。
    北浦部長
    先生がおっしゃったように、実態としてはモノですね。
    佐藤委員
    矛盾する改正もやった時期もあったわけ。
    木村委員
    大ぐくりで言えばそんなに、どこが違うんだろうかなと。
    坂橘木委員
    私もあんまり違わないと。
    大澤会長
    永瀬さん手を挙げていらっしゃいましたけれども。
    永瀬委員
    女性の場合は比較的低収入が多くて、男性の方は比較的自立的なのが多いというのは前から伺っていたんですけれども、御研究の中でどういう人がかなり自立的な方に動いていけるのかというのを、その辺の鍵となるのは一体どの辺なのかというのは何か出ておりましたでしょうか。
    北浦部長
    統計的にはなかなかその辺はまだつかめていないところだと思うんですが、やはり1つきっかけになるのは能力の高さ、能力の高さはそれによっていい仕事が得られ、高い収入が得られる、その辺が分岐点だろうと思います。ですから、その辺がどの辺であればというのは必ずしもないんですけれども、1つは、経験年数が上がってきて、明らかに能力が上がっていく人はそういう方向に走る可能性は高いと、こういうことだと思うんです。ただ、単にそういうことだけではなくて、もともとそういうものを望むか望まないかというのはこれは大きいところがありますので、最初からそうではなくて、これ以上やるとワークライフバランスが崩れちゃうから、ここまでしたいと頑張る方もいらっしゃいます。これは考え方の問題だと思います。
    大澤会長
    論議は尽きないんですが、時間が来てしまいましたので、それでは、北浦さんにおかれましては、大変お忙しい中御説明をいただき、どうもありがとうございました。
     (北浦部長退室)
    大澤会長
    続きまして、佐藤委員からの御説明をお願いいたします。
    佐藤委員
    一応、お手元の2-3にありますようにパートタイム労働について指針が改正されたわけですが、それに至るまでの議論を少し御紹介するというふうに、それで個人として残された課題がどういうところにあるのかということをお話しさせていただければというふうに思います。
     今回の指針改正は審議会で議論した上でそれを受けて厚生労働省が定めたものですけれども、その前提として、お手元の2-4にあるパートタイム労働研究会で研究者を中心に、大沢さんとか永瀬さんにも入っていただいて議論して、その結果を踏まえて審議会で議論し、最終的には指針改正という形に至ったわけです。
     研究会設置の背景ですけれども、1つは、パート労働法ができてから一番大きな変化は、パート労働に従事する人がすごく増えているということですね。特に女性が多いわけですけれども、女性の働き方を考えれば、パート労働の質というのが非常に大きな、従来以上に非常にウエートを増してきた。パート労働はどういう質の労働機会であるかということが非常に重要になってきたということです。もう一つは、質的な変化で、研究者はパートの基幹労働力化と言い方をしますけれども、パートタイマーとして働く人の中にも正社員と同じ仕事に就いたり、あるいは仕事は違うけれども、その人の持っている職業能力という点からすれば、正社員と同じ、あるいは場合によっては、キャリアの短い正社員よりも、能力があるようなパートタイマーが出てきたということがあります。
     ところが、パート労働法ができて、パート労働法は通常の労働者というふうに書かれていますが、想定していますのは、正規型の労働者ですから正社員になりますが、パートタイマーとの処遇差の推移を見ますと、法律ができ、かつ基幹労働化が進むということがありながら、全体として見ると、処遇差が縮小するというよりかは拡大傾向にあるということです。
     そういうことで、まずはパート労働の実態が変わりましたし、パート労働法ができたにもかかわらず、その処遇差が拡大するということがあるとすると、パート労働法のあり方について見直す必要があるのかどうかということが問題になります。
     1つは改正が必要なのかどうか、あるいは改正は必要ないが、例えば、パート労働法の第3条に事業主の努力義務でありますけれども、パートタイマーと通常の労働者ですね、ですから、パートタイマーの就業実態に即して、通常労働者との労働条件などについて「均衡を図る」と書いてあるわけですけれども、均衡を図ると書いてあるだけでは何をやっていいかわからないので実効性が上がらない。ですから、均衡を図る内容について、もう少し具体的に事業主がわかるようにするというようなことが必要になるのではないか。いろんな議論があると思いますけれども、そういう意味でパート労働法のあり方について検討しよう、これが議論の出発点でありました。
     研究会では、パートタイマーと正社員の公正な処遇のあり方、公正処遇というのはどういうふうに考えたらいいのか。パート労働法では「均衡確保」と書いてあるわけですけれども、これをどういうふうにすれば、公正な処遇は確保できるのかというのを議論したわけです。公正な処遇として、働きに応じた処遇が実現できるということが1つは公正処遇だろうということで議論したわけです。
     そういう中で公正処遇の実現方向として、大きくは4つ考えました。
     1つは、同一職務と書いてありますのは、正社員とパートが同じ仕事に就いている。かつ同一のキャリア管理のもとにある。異同の範囲とかですね、そういうのが同じ場合、両者に労働時間の長短に関係なく、同じ処遇決定方式を適用する。賃金であれば、同じ賃金決定の仕組みを適用する。賃金の決め方の要素を同じにする。例えば、正社員が週40時間、パートが30時間であるとすれば、処遇水準については4分の3にすると、こういう考え方になります。
     もう一つ、同一職務であるけれども、異なるキャリア管理にいる場合、処遇制度を異にする合理性はある。ただし、仕事が同じなわけですから、処遇水準については均衡を配慮することが大事だ、これが2つ目の考え方であります。
     それで今度は、パートタイマーと正社員が違う仕事に就いている場合、これは比較の対照がありませんので、ただし、その場合も公正な処遇ということですから、パートタイマーの仕事や、その人の持っている能力など働きに応じた処遇にしてくださいというのが3つ目の原則です。
     もう一つ4番目は手続ですけれども、パートタイマーの人たちが処遇決定のあり方に発言できるような機会をつくっていくということが大事ではないか、この4つを研究会の中では公正な処遇を実現するためのポイントとして提案したわけです。
     もう少しわかりやすくレジュメの3ページのところに絵があると思いますが、正社員とパートタイマーの仕事が違う場合ですね、これは一番右側になるわけでありますけれども、このときは、先ほど言いましたようにパートの仕事内容や能力においては処遇する。ルール3を適用する。それに対して一番左側であります。労働時間の長短以外、基本的には同じだということですね。労働時間の長短以外、フルタイマーとパートタイマーで何も違いがない場合は、同じ処遇決定方式を適用し、時間比例で処遇水準を決めてくださいというわけです。真ん中は仕事は同じだけれども、賃金の決め方を異にする合理性がある場合、これは賃金の決め方を変えてもいい、処遇の決め方を変えてもいいですが、しかし仕事が同じなのですから、処遇水準について配慮してくださいということです。あとルール2、ルール1は発言の機会です。例えば、ルール1についていえば、パートタイマーの方から採用時点だけでなく、雇用した後についても、自分の給与の決め方が正社員と違うのかというふうに質問を受けたら説明責任が事業主にある。説明してくださいということです。
     今お話ししたことは企業の中でフルタイマーとパートタイマーの公正な処遇を実現するための具体的な制度のあり方ですが、それを法制のあり方として具体化する場合どうするかということも議論いたしました。
     1つは、aの均等処遇原則タイプというものであって、事業主に対して労働時間の長い人と短かい人がいる。処遇差をつける場合、合理的理由がない場合、処遇差を禁止するという仕組みです。処遇差を説明する合理的理由がない場合は、そういうことをすれば、そういう処遇の決め方は無効になるし、禁止されるということであります。ただし、合理的な理由があれば、処遇差があっても当然これは認められるということです。ですから、例えば仕事が違うようにする。職域分離、パートと正社員の仕事の分野を変えるというようなことをすれば、それは合理的な理由として認められれば、それは処遇差があってもいいということになります。均等処遇原則タイプというのはそういうものであります。
     もう一つはbの均衡配慮義務原則タイプ、これは事業主に対して処遇差に合理性がある場合もない場合も含めて、実質的な均衡に向けた配慮を義務づけるという考え方です。この場合、処遇差を設ける合理性がない場合でも、処遇差があっても、その処遇差を縮める努力をしていれば、事業主としては責務を果たされているという考え方です。そういう意味では法律の効力というのは弱いですが、しかし適用範囲は非常に広くなる。それともう一つ、均衡をとれということですから、どういう状態になれば均衡であるかないかと非常にわかりにくいという問題がある。
     bが大事だというのは、aで合理的な理由がある場合、例えば職域分離、パートと正社員の仕事を変えるというようなことをやっても、bという均衡配慮義務原則タイプがセットになっていれば、それについては事業主の配慮義務が発生するということです。そういうことで、研究会報告では、最終的に法制化するとすれば、aだけでなくて、aとbをセットにするということが大事なのではないかということを提案したわけです。均等処遇原則と均衡配慮義務を両方セットした形で法制化するということをしないと、例えば合理的な理由というのを意識的につくるというようなことで逃げていくということが起きるのではないかということです。その上で、もし法改正するとすれば、現行法のパート労働法第3条は均衡というのは均等と均衡を含めたものだと、均等プラス均衡というふうに解釈できるのではないかというふうにまとめました。
     研究会報告では、法改正を行うのか、あるいは指針でパート労働法第3条の均衡というものの中身を具体的に示す、そういうことによって事業主が均等処遇原則なり、均衡配慮義務原則の方に進んでもらうようにするのかということを議論いたしました。そして、これはなかなか一つにはまとまらなかったんですけれども、指針改正を先行させる場合でも、基本的には法改正を視野に入れる。基本的には法改正というのは最終目標ではあり得る。順序としてどう考えるかということであります。
     それともう一つは、法改正する場合、先行させる場合でも、2種類のやり方があって、③のa)を先行させる。つまり、均等処遇原則タイプだけを立法化する。そういう意味では非常に狭い範囲になりますけれども、基本原則をきちんと立法化してしまうという、それを先行させるという考え方と、もう一つは③のb)先行か。つまり均衡配慮義務原則タイプ、そういう意味では緩やかな方ですね。実質的な格差があっても、格差を縮める努力をしてくださいというものを立法化する。そしてそれが進んでから均衡原則タイプを入れるというやり方、あるいは初めから一遍にやる、この3つの選択がある。これはきちんと議論しなきゃいけないということを提案しています。
     ただ、いずれの場合も、法改正を行う場合、例えば、法律上は均等処遇原則タイプを導入したとき、法律には労働時間長短による合理的理由のない処遇差を禁止すると書くわけですね。「合理的な理由のない」というのは何なのかということについては、指針で書くことになるんだと思いますけれども、これについてはある程度合意がなきゃまずいわけですね。その使用者と労働者なりパートとして働く人について、ある程度合意がないと、問題が起きてしまう。つまり、これはおかしいんじゃないかといったとき、事業主は合理的なんだとかということになってしまうので、そういう意味でこれが今回指針改正を先行したということになるわけでありますけれども、均衡処遇原則であれ、均衡配慮義務原則であれ、立法化するとしたときに、そこでいう合理的理由があるとかないとか、均衡というのは何かということについて、ある程度合意がないと難しいのではないか。つまり、どういう処遇制度にすれば、公正処遇が実現できるのかということについてある程度共通理解が不可欠だろうということを提案したわけです。
     それともう一つ、パートタイマーと正社員の公正処遇を実現するためには、パートタイマーの処遇を変えるだけでいいわけではない正社員の人たちの処遇のあり方についても変えないと、実は両者の公正処遇というのは実現できないわけです。例えば、均等処遇原則を適用した場合、もしかしたら、正社員の処遇を変えてパートタイマーの方に合わせるというやり方もあるわけですね。そういう意味で立法化した場合でも、すぐに正社員の処遇制度を変えられるかといえば相当時間がかかる。そういうようなことも研究会の中では議論いたしました。
     ですから結果としては、指針改正ということに落ち着いたわけです。「いくつかの疑問への回答」ということで、同じ仕事であれば、すべて同一処遇決定にしたわけではなくて、同一のキャリア管理というのが入ったのはなぜかということと、もう一つは、同一処遇決定方式というのは何なのかということをご説明します。
     1つは、まず後者の方から言いますと、なぜ同一労働同一賃金と言わないか。同一処遇決定方式かということでありますけれども、どういう状態になれば同一労働同一賃金が実現されているのかというとこについて理解に相当ばらつきがある。ヨーロッパのようにある程度社会制度としてそういうものがあれば理解しやすいわけですけれども、具体的な賃金制度としてどういうものであれば同一労働同一賃金なのか、同一価値の同一賃金なのかということについて十分理解がないということで、私は同一処遇決定方式ということは同一労働同一賃金と同じだと思っているんですけれども、それでなぜ同一処遇決定方式かと言ったかというと、賃金制度のあり方というのは仕事で決まるわけではなくて、事業主が期待する働き方にも規定される。
     どういうことかと言いますと、例えば、自動車の販売というものを考えたときに、企業が従業員に、とにかく自動車をたくさん売ってくださいと期待したときにどういう賃金制度をつくるかということと、販売台数だけでなくて、やはり長期の顧客との関係が大事なので顧客満足度、つまり、どれだけリピートしてくれるかということを重視するというようなことを従業員に期待するのかですね、あるいはアウトプットだけじゃなくて、何台売ったかでなくて、そこに投入される能力を重視するんだということで、これは企業の考え方ですね、どれが正しいというわけではない。
     基本的には、販売台数であれば何台売ったかで賃金を決めればいいわけでありますけれども、顧客満足度であれば、お客様へのサービスみたいなものも働く人の賃金を決める要素として評価する。それによって賃金制度で評価する項目が当然違ってくるわけです。そういう意味で大事なのは、どういう賃金制度にするかということではなくて、フルタイマーとパートタイマーについて処遇を異にする合理的理由がなければ同じ賃金制度にしてくださいとしたわけです。同じ物差しで評価してくださいと言ったわけであります。ですから、フルタイマーとパートタイマーが処遇を異にする合理的理由がない。そうすると、同じ賃金制度が適用される。そのときに、その賃金制度が評価する項目がいくつかある。例えば、販売台数とお客様の満足度を見るとしますね。その2つの物差しで見たときに、フルタイムで働いている人、パートで働いている人、同じように評価されれば同じ賃金水準になるということですね。
     ただし、同じ賃金制度を適用されても、例えば同じ仕事であっても売上台数が低ければ賃金水準は違う。そういう意味では同一労働同一賃金というものを、同じ仕事であれば同じ賃金水準でというふうに考えると違ってくる。同一労働同一賃金をどうとらえるかによって、これはおかしいんじゃないかという人も出てくるかもしれない。同一処遇決定方式というのは、同じ物差しを当てはめ、その物差しについて同じ評価ポイントであれば同じ賃金になるということです。そういう意味では同一労働同一賃金になるのではないかというふうに考えています。
     先ほどの3ページのところ、ルール5とルール6を分けるところですね。ここが同じ仕事だけではなくて、同じ仕事をしていても賃金制度を変える合理的理由がある要素としてここではキャリア管理をあげたわけですが、これについてはいろいろ議論があると思います。
     私は合理的理由については、いろいろこれから議論していくべきではないかと思っていますけれども、当面、審議会の場で議論したときには、事業主にもある程度理解されるということで、キャリア管理の実態ということで分けたわけです。ですから、これは日本の現行の雇用システムを前提にして、つまり短期的に見て同じ仕事をしていても、長期的に見ればキャリアが実態として違う場合、例えば、百貨店の和服売り場で和服を売ることだけで雇われているパートタイマーがいる。その人については、和服をどれだけ売ったかで給与を決めている。他方、正社員でとった人は偶然そこに回ってきて3年ぐらいいる。この人については、3年後はバイヤーの方に移っていく。実態としてです。というようなことがあったとした場合、正社員については、従来の職能給+仕事部分で決め、パートで和服を専門に売っている人については出来高で決める。これは処遇を分けても合理的である。それは6なんです。ただし、同じ仕事をしているわけですから処遇水準に大きな違いがあるのはおかしいんじゃないかということが処遇水準均衡配慮という仕組みがあります。ですから、5と6を分けているのがそういうものであります。ですから、これについて、おかしいんじゃない?という議論は十分あり得る。
     それで、今回そういう意味で指針改正であったということは、先ほど言いましたように、まだパートとフルについて同じ仕事をしていても、どういう状態にすれば公正なのかということについてやっと指針で示せたということで、それでも組合の中でもかなり意見が違うということで、組合の中でも同じ考えでもない。そういうことで、どうすれば公正になるかという理解がないということです。そういうことで、とりあえず、従来のパート労働法の第3条の均衡配慮義務といったものについて、少なくとも以前より具体化したということで、事業主としても取り組みやすいし、組合についても、事業主にこうしろということは言いやすいし、パートとしても、こういう状態でなければおかしいんじゃないというような共通の土台を指針という形でつくった。そういう意味で指針だから弱いという議論もあるかもわかりませんけれども、ある程度共通理解ができた後で法改正という方を選んだということであります。
     個人的にはまず今回の改正指針についての考え方を浸透させ、公正な処遇というものについてある程度共通理解をつくっていく。その後法改正という方向を目指すべきだろうと思います。処遇を異にする合理的理由ですね。今はキャリア管理の実態というふうにしたわけでありますけれども、これについては、異動の範囲等々というのはおかしいのではないかという議論はあり得ると思うので、合理的な理由というものについて、更に研究、検討する必要があるだろうと思っています。
     それと、報告書をちゃんと読んでいただければ書いてあるわけでありますけれども、キャリア管理の実態といったときに、現状の正社員の雇用の仕組みなり、キャリア管理、残業は入れていませんけれども、転勤等々の仕組みがいいと言っているわけではないのでありまして、正社員の働き方も当然見直していくということを同時にやらなきゃいけないということが報告書に書かれています。
     パート労働法は処遇について、今回の場合であれば、同じ仕事をしていて、かつ処遇を異にする合理的な理由がない場合は同じ処遇決定方式を適用してくださいと言っているわけでありますけれども、そういう層について、実は雇用保障の均等というのが大事だろうというふうに思います。
     例えば、1社1事業所のスーパーマーケットがある。パートの売り場主任がいる。正社員の売り場主任もいる。同じように店舗の中で異動している。同じ仕事をし、かつキャリア管理の実態も同じ、しかし、パートタイマーは時間給で、片方は正社員で月給、これはおかしいというわけです。こういう場合、処遇をそろえてくださいと言っているわけでありますけれども、この会社が見直して処遇をそろえた。にもかかわらず、その後、パートの方は未だに6か月契約で繰り返す、これはおかしいのではないかということであります。処遇を均衡、均等させなきゃいけないという対象層であれば、当然、雇用保障についても均等均衡させなければいけないだろうということです。ただ、パート労働も、雇用保障については基準法の世界でありまして、パート労働法はそこまで議論しないということになっていますので、今回の報告書では、合理的な理由の中に、機会的に有期雇用であれば、賃金制度を異にする合理的な理由であるわけではないと整理しています。フルタイムと仕事が同じでも、有期契約だから処遇制度を異にしていいんだということには機械的にはならない。実態で判断する。有期であっても、事実上、常用的に使われていれば均衡均等配慮する対象だというようなことまでは書いたわけでありますけれども、雇用保障の均衡というのがこれから大事だろう。
     ただ、これをしますと、労働組合も一方で反対するわけですね。正社員の雇用保障程度を下げなければいけない可能性もあるということで反対する可能性もあるということであります。
     あともう一つ、現行のパート労働法は、短時間労働者と通常の労働者との均衡を考慮すると書いてあるわけです。パート労働法ができたときの通常の労働者として想定していたのは正社員なんです。ですから、例えば、百貨店で短時間で働いているパートタイマーがいる。販売をやっている。そうすると、この人が比較対照とするのは販売をやっている正社員になるわけであります。フルタイムですね。ところが、フルタイムの正社員がいなくなってしまっている。だけれども、フルタイムはいるんですね。契約社員の販売社員です。例えば、百貨店なんかですと、パートの販売をやっている人と、フルタイムの正社員じゃない販売の人。パートタイマーの人が比較するフルタイマーとしては、例えば、年契約の契約社員の方が近いわけです。正社員はいないわけです。そうしたときに比較対照がないということで、このルールで言えば、ルール5とかルール6はなくて、一番右側のところになっているわけでありますけれども、通常の労働者を正社員として解釈するのではなくて、フルタイマーというふうに解釈すれば、比較対照がいるということはたくさんあると思います。雇用形態に関係なく労働時間の長短ですね、その合理的でない処遇差を禁止するという形にパート労働法を読み直していくということが就業形態がこれだけ多様化して、つまり労働時間が長短、今、正社員とパートの処遇差という議論になってしまっているのを、フルタイマーとパートタイマーの処遇差というふうにしていくということが大事なのではないかということです。
     以上です。ちょうど30分です。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。御質問や御意見、それから研究会のメンバーだった方がほかにもお2人いらっしゃいますので補足の発言でも。
    浅地委員
    今、先生から研究会の中身の今後の方向を説明いただきました。私も前回か前々回、パートタイム労働法をつくったときお手伝いしたと思うんですが、そのときは、たしか疑似パートとか片々労働者とかという言葉をなくそうと。雇入通知書というのをフォームをつくって、就業規則というものの根っこの部分が1枚の紙に載っかっているというようなことをしたんだと思うんですが、今回の御議論で方向をイメージして考えると、要は「パートタイム」という言葉は、英語のパートタイムというのはもうない。それから正社員かどうかということも、短時間の正社員というような概念を持ってくると、結局、フルタイムで正規社員、パートタイマーが非正規社員みたいな格好で育ってきて、その中で雇う方も最近ではオール派遣とか、しかも派遣のお勘定を人件費で処理している会社とか、事務費で処理している会社とか、あるいは外注費で処理している会社とかいて非常にわかりにくくなって、結局、経営者の知恵というか、場合によっては悪知恵もあるかもしれませんが、実態に即してやってきたのだと思うんですね。
     そうしますと、入り口論だけで、私は意見を申し上げたいんですが、会社も雇うとき、その人の将来も一応予測しながら雇っているんですね。ですから、今まで言われている長時間のパートというのは、逆に言うとあり得ないと今まで思っておったわけですが、パート=短時間、それが逆に崩れてきてしまったことがある。そうすると、どこで整理するかというと、入り口を同じにしろと多分おっしゃっているんでしょうが、私は実務的に言うと、入り口が違っていると。つまり会社に入社して就職したということと、このジョブにいくらで、こういうことで仕事に就くということの違いが、いわゆるパートと普通の形態の雇用という間に現実にあるんじゃないかなと。そこのところが先ほどおっしゃったようにあんまり一緒にすると、正社員のパート化というような言葉もあるようですが、例えば、賞与というのは要らないとか、それじゃ時給の方に組み入れましょうとかいろんなケースが、会社によっても違っていますし、私は歩いて来れるから交通費なんか要らないと。それじゃ時給にしてあげようとか、これもまた需給の波によってものすごく違うんですね。定期昇給というよりも、必要に応じて上げたり下げたりしています。
     それから、多分、私たちがイメージしている今までのパートは、例えば、この店を閉めるよといったら、次の就職先なんて余りなくて、そんな就職先を世話してくれたって、バス停の1つも違えば行かないわよという格好で、イコール暗黙の了解みたいでやめるというようなことがあったんじゃないかなと思います。しかし今度だと、仮にいろいろな不都合が会社に生じた場合には、こういう方々も就職先をあっせんしてやっていかなきゃならないというようなスピリットが新しく盛り込まれるとすると、これから実施していくとき、なかなか大変だなということで、入り口で正社員と今まで言っていたパートというのは、短時間正社員だけじゃない膨らんだパートというものも含めて正社員化しなさいと言って一本化するという議論で法が実施されていくのかどうかということについては多少疑問がありますし、もし御見解を伺えれば、質問ということでお願いしたいと思うんですが。
    佐藤委員
    パートタイマーについては、地域の労働市場で初任賃金が決まる。正社員はもうちょっと広い。僕もそれもよくわかるんです。ただ、パートタイマーについても、入り口は地域のマーケット850 円であっても、そのあと3年、5年勤めて能力が高まって、例えば売り場主任をやっていると。そうしたときに、正社員の売り場主任がいますよね。そうしたときに、両者の違いというのは、5年前の初任賃金を引っ張っているんだというのは説明がつかないだろう。もしその場合、同じ仕事に就いていても、異なるキャリア管理という場合は、異なる処遇システムを適用するにしても、水準については、同じ仕事をしているわけで配慮してくださいということです。入り口がちがったら5年後まで引きずるのはおかしいということなんですね。ですから、入り口も全部そろえるなんて言っているわけではなくて、その後勤続を重ねて、今は売り場主任の正社員と同じ仕事をやっていてというようなものがあるとすると、それは働く人にとっては納得できないし、企業としても、そういう人たちを売り場主任として活用するとすれば、人事管理上もマイナスじゃないか。パートが正社員と同じ仕事をしているということは、正社員とキャリア管理が違うにしても、バランスをとるということが大事じゃないかというのが処遇水準均衡配慮方式なんですね。そんな難しいことを言っているわけではないのですけれども。
    浅地委員
    私も難しいことを言っていないんですが、現実が余りにも多様化しちゃっていますので、変化にどう追っかけていくかという、対応の仕方がなかなか難しいなと思っておるわけなんですが。
    佐藤委員
    正社員について職能資格制度がありますね。パートについても資格制度を入れているところがあります。そうしたとき、例えば従来であれば、パートの売り場主任と正社員の売り場主任の資格等級を変えていたものを同じにしてしまえば、同一処遇決定方式が実現できるんですね。ですから、その人の持っている能力を見て、売り場主任につけるわけですから、同じ能力があるということで見ているわけですから、それをパートだということだけで、正社員と物差しを変えることの方がおかしいという議論なんです。ですから、仕事が違えばいいわけです。例えば、仕事が違えば、その仕事なり、その人の能力に応じた処遇にしていただければいいわけです。しかし、実は同じ仕事で雇用形態の違う人が、実際は同じことをやっているわけですね。時間の長短以外差がないとすれば、それが5年前の採用の違いだけで説明するというのはいかがなものかということなんですけれども。
    大澤会長
    林さんどうぞ。
    林委員
    3つほど質問をしたいんですけれども、1つ目はレジュメの2枚目で先生がなぜ指針改正かのところでお話しされたことで、現状では労働組合内の理解の違いも大きいというお話が1点あったんですが、これはどういうことを指しておられるのかということが1つ。
     2つ目は、同じくそのあたりの説明の中で和服売り場の例を出されて、パートの人とフルタイマーのそこで正社員で働いている人は、同じ和服売り場にいたとしても、長期的に見れば違うというお話をされたと思うんですね、聞き違いかもしれませんが。そうであれば、それはパートとフルの違いではなく、有期か無期かというような違いに私は聞こえたんですね。それはどうなのかということです。
     3つ目は、これはパートであるか、正社員であるかということの職域分離がなされているのであれば、その場合は処遇差があっていいのではないかというお話があったと思うんですけれども、私はその際に、現状でも、パートタイマーの中での女性の比率が極めて、7割ないし8割というようなデータがある中で、職域分離のところに性の偏りが生まれてきた場合、性の偏りが生まれてきたことを処遇差があっていいとしてしまうようなことになるのではないかと、それでいいだろうかという、この3つについてお尋ねしたいんですけど。
    佐藤委員
    最後の点について、まず3つ目からですね。基本的には仕事が違えれば比較対照はないわけです。パートと同じ仕事に就いているフルタイマーがいない場合、これは比較対照がないので、低いとか高いとか言えないわけです。ですので、その場合、言えることは、今パートが就いている仕事なり、その人の持っている能力に応じて合理的な処遇が行われているどうか、これは勿論、議論しなきゃいけない。だけれども、比較対照がない以上、正社員との比較はできない。ただし、均等法のポジティブアクションなどで、職域分離をなくすことは、別の形でやっていく。パート労働法の中で言えば、処遇についてはそういう議論しかできない。その職域分離のあり方が変えていくということは勿論やっていかなきゃいけない。
     2番目の無期か長期かは、今のパートタイマーの人についても半分は有期契約でもないんです。ですから、それは除いていいと思うんですけれども、ですから、和服売り場に和服を売るということ業務を限定として、その専門に雇われているパートタイマーがいる。その人については、例えば出来高で給与を決めている。片方について、正社員がそこで和服売り場に配属された。この人については、将来和服のバイヤーにする、あるいは和服だけでなくて、婦人関係の服のバイヤーにするとして、キャリア管理の一環として例えばそこに3年いる。そうした場合、正社員については出来高ではなくて、従来の職能資格制度の中で給与を決めるという賃金制度を異にする合理性がある。つまり、そこの正社員についても出来高にしなきゃいけないですというわけではないというふうに言っているんですね。そういう意味では同一処遇決定方式にしなくてもいいということですね。賃金制度を異にする合理性がある。キャリア管理の実態が異なる合理性がある場合は、同じ仕事をしていても、賃金制度、処遇決定の仕組みを異にする合理性がある。ただし、同じ仕事をしているわけですから、2倍も3倍も給与差があるのはおかしい。処遇水準については均衡を配慮してくださいというのがルール6であります。経営側が管理キャリア管理の実態が違うといいながら、事実上、異動するという実態がないのでは困るんです。ただ言っているだけじゃだめです。実態としてそういうふうに行われているということがなきゃだめだと。
     1番目、組合について。これは企業別組合についての意見です。講演とかいろいろ頼まれてするんですけれども、やはり相当違います。経営側とほぼ同じようなやり方を言っている組合もありますし、一部では、本当に同じ仕事なら同じにしなきゃいけないと言っている人もいれば、つまり均等なり均衡をどうすればいいかについては、組合の中でも、僕が講演したりインタビューする中で相当幅がある。これは企業別組合の段階です。実際上、こういう仕組みを入れていくのは企業別組合。勿論それを産別としてまとめていくという努力をされているのもよくわかりますし、連合として言っているのもよくわかりますが、相当距離がある。経営側のばらつきとそんなに変わらないというふうに思っています。
    大澤会長
    よろしいでしょうか。
    浅地委員
    いわゆる外食産業の育つようなときを見ると、店長というのが本社から派遣されて、いろいろな訓練も本社から来て、働く人たちだけがいて、そのうちに慣れてきたから、君、店長をやりなさいよというようなことが出てきて、そういうことがこの何年かで起きてきて、キャリアを積んだきちんとしたパートタイマーとでも言うんでしょうか、そういう人はそれなりに遇する道を開いた方がいいと思うんですが、どうなんでしょう、パートというのは入り口でジョブだと思うんですね。だから、そのジョブがどうなったら、それはちょっと別な考え……。
    佐藤委員
    ですから、キャリア管理の実態といったときに、パートについてジョブを限定して雇用していて、いわゆる正社員についてはジョブを限定していない。事実上そのように正社員とパートはキャリア管理が違うということがあるんですね。ですから、キャリア管理が異なる場合は、a同一処遇決定方式はやらなくてもいいと言っているわけです。ですから、これはまた組合サイドから批判があるわけでありますけれども、aが適用されるのは、せいぜい四、五%だと。これは狭すぎるというふうに批判はあります。ただ、僕は原則を決めたというのが大事だと思う。これをどう広げるかだと思うんですけれども、5%でも、つまりキャリア管理の実態まで含めて同じであれば、同じにしなきゃいけないという原則を打ち立てたことは大事かなと個人的には思っています。これをどう広げられていくかというのが今度の課題です。経営側からすると5%でも大きいというかもわかりませんけれども。
    大澤会長
    ありがとうございました。時間が来てしまいましたので、佐藤さん、今日は本当にありがとうございました。
     来年度の税制改正について資料を2つお配りをしております。ごらんください。これについて、個人住民税の均等割制度の見直しというのが男女共同参画と関係しております。改正の内容と改正がもたらす影響として考えられる論点をまとめておりますので、その内容を簡単に事務局から御説明願います。
    定塚参事官
    資料の方ですけれども、平成15年12月政府税制調査会の答申と、その後に委員限り資料という形で「平成16年度税制改正(個人住民税 均等割)について」という資料をつけてあります。後の方の個人住民税均等割についてという資料で御説明をさせていただきます。
     まず、現行制度の個人住民税均等割の制度の概略のおさらいでございますけれども、税金の額としては、都道府県民税として1,000 円、市町村民税として2,000 円から3,000 円、これは市町村の人口規模によって額が決定されております。この合計で3,000 円から4,000 円の均等割という住民税がかかっております。個人住民税には、均等割のほか所得割というものもございまして、これらを合わせて住民税と言っております。
     この住民税の非課税となる者の範囲でございますけれども、均等割・所得割とも非課税となる者については、生活保護を受けている者、障害者、未成年者、老年者、その他、それから諸控除後の課税標準所得、これは給与所得のことでございますが、給与所得が一定水準以下の者については非課税。それから、均等割のみ非課税となる基準としては、現行では均等割を納める、夫と生計を一にし、同一区市町村に住所を有する妻という規定がございます。この規定につきまして、明らかに男女で規定ぶりを異にするものだということがございまして、昨年末の本調査会の報告の中で、個人住民税の均等割については、規定に明示的な男女差が存在するということを指摘したという経緯がございます。
     実はこの度の税制改正の中で、先ほど会長から御紹介がありましたが、均等割について見直しをしようという方向性が出ております。具体的には、こちらの方に政府税制調査会の答申、12月15日に出ましたものですが、均等割につきまして、3行目ですが、「均等割の納税義務を負う夫と生計を一にする妻は、いくら所得を得ていても均等割は非課税とされる。課税の公平の観点から、この非課税措置を廃止すべきである。さらに、均等割の税率は、これまでの国民所得や地方歳出等の推移と比較すると低い水準にとどまっており、その税率の引上げを図る必要がある。また、市町村の行政サービスは人口規模別に見ても格差がなくなってきており、市町村民税均等割における人口段階に応じた税率区分を廃止すべきである。」ということが書かれております。
     実は本日、与党の税制協議会の議論が進められておりまして、本日、夕刻に与党の税制改正大綱というものが出る予定でございますが、この大綱の中では、この政府税制調査答申とほぼ方向を一にしておりまして、まず、均等割については妻の非課税措置を廃止すると。ただし、来年度は、とりあえず非課税措置を継続して、再来年度から2か年で段階的に廃止するという方針と聞いております。段階的にというのは、再来年度はまず2,000 円、その次は 4,000円という形で均等割をかけるという予定のようでございます。
     それから、先ほど冒頭に説明した人口段階区分別の市町村民税の税額の差、これを3,000 円という形で統一する。これは来年度から施行する。すなわち、来年度からはどの市町村でも1,000 円+3,000 円の4,000 円で一律になるということでございます。
     更に、議論の中では、この額について更に引上げを図ると。特に国と地方の間での税のあり方ということを今後見直していきますので、その中で均等割、所得割を併せて住民税の引上げを図るという議論もなされているという状況でございます。
     今申し上げたのは、まだ結論ではございませんが、今日の夕刻に恐らく出るだろうという見通しでございます。
     次のページをごらんいただきたいんですけれども、こうしたことで改正が行われると、一体男女共同参画への影響はいかがなものかという論点をいくつか掲げております。
     1つ目としては、まずは規定の明示的な男女差が撤廃される。これは昨年12月の専門調査会報告では、差が存在するということを指摘しただけで、あとどうしろということは述べていないわけでございますけれども、基本的にこれは改めるということは評価できるというものでございます。ただ一方で、一定金額以上の収入のある妻へ、今回、均等割課税が開始されるということになりますと、わずかではございますが、課税後の手取り逆転現象というのが起こるおそれがあります。これは具体的に言いますと、本当にわずかでございますけれども、4,000 円という均等割がいきなりかかってまいりますので、100 万円までは課税されない。100 万を超えると課税されるということになっておりますので、100 万円ですとかからない。100 万100 円でも1,000 円でもなったとたんに4,000 円がかかってくるという状況ですので、課税後の手取りが、4,000 円の範囲ですけれども逆転するということが起こるわけでございます。そうしますと、現行の配偶者控除とか特別控除制度についてこの調査会で扱っていただいたわけでございますけれども、実際には手取り逆転現象は、これらの控除制度では解消されてはいるんですけれども、この辺で制度の誤解もあって、パートタイム労働者が就業調整をするという問題が起こっている。一方で4,000 円とはいえ、制度の中で逆転というものが生じてしまうと、就業調整問題に影響を与えるおそれはないかということが若干懸念されるのではないかということでございます。
     次に、現行の4,000 円では大した話ではないからということであったとしても、今後引上げということになると問題を生じさせるおそれがないかというのが次の点でございます。
     更に課税最低限の問題でございます。これは先ほど御説明したように、給与所得が一定水準以下のものについては、この均等割が課税されないという仕組みになってございますが、この課税最低基準を決めるに当たって、控除対象配偶者と扶養親族の数というものを勘案して最低基準を決めるということになっておりますので、したがって、例のところにございますが、夫が会社員で妻が専業主婦、子ども2人の場合には、均等割と260 万円から課税される。一方で、そういうものがいない妻、共働き等の場合には、年収100 万円から課税されるということで、最低基準、課税基準が変わってくるということで、こちらの方も問題がないかという点がございます。
     以上の問題がございますので、御意見がありましたらお願いをしたいと思います。
    大澤会長
    いかがでしょうか。9月まで当専門調査会の委員でいらっしゃった神野さん、税制財政の専門家ですので、事務局がお伺いをして、御意見というか、いろいろと御教示を受けてまいりまして、問題の根本は、住民税均等割には税としての性格があいまいなために、男女共同参画社会に与える影響が複雑になっているという御指摘がありました。もともとの均等割のコンセプトというのは、家や屋敷を所有している人に対して実際に住んでいなくても、地域社会の費用を分担させる会費というような、世帯を数えるときの1戸、2戸の戸、戸税あるいは物税的な性格があったのが、近年において個人の所得額を課税基準とするというふうに個人への課税、人税としての性格が強くなってきたのに、戸税の性格も払拭されていない中で、配偶者とか、扶養親族に控除額を設定する世帯の最低生活費への配慮というのも、所得税本体と同じように複雑に大きな配慮がなされている。こんなふうに税の性格があいまいというか、まだら模様であるために影響が複雑だ という御指摘であったようです。
     今後税額を上げていくということになれば、そういった税の性格をきちんとシンプルなといいますか、ピュアなものにしてからということが望まれるわけでございます。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
     そうしましたら、本日の御欠席の委員の御意見も伺った上で、この件については、この調査会としての意見を報告として取りまとめたいと考えております。案文は事務局で作成し、明日にでも各委員にお送りいたしますので、その上で意見をお持ちでしたらお知らせいただき、その後の進め方については、私に一任していただけると幸いです。いかがでしょうか。
     (「異議なし」と声あり)
    大澤会長
    ありがとうございました。次回は1月26日、ちょっと間があきます。月曜日の16時から第25回会合を開催する予定です。事務局からの連絡事項をお願いいたします。
    定塚参事官
    資料の最後から2つ目でございますが、委員限りで今後の調査会の進め方について、こちらの方に、次回1月26日と、それからその次の会でございますが、2月9日の2時からということで設定をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
     なお、1月26日次回は、恐縮ですが、橘木先生と永瀬先生から御報告をお願いしたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
     それから、最後の資料として、先だって、こちらの調査会でも御意見をいただきました「影響調査事例研究ワークキングチーム中間報告書」、印刷ができ上がりましたので、おつけしてあります。御参考にしていただければと思います。
     それから、御出欠の御案内についてお手元に配付してありますので、そちらの方もよろしくお願いいたします。
    大澤会長
    それでは、これで影響調査専門会の第24回会合を終わります。本日はどうもありがとうございました。

(以上)