第23回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成15年11月19日(水) 14:00~16:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      岡沢 会長代理
      浅地 委員
      君和田委員
      高尾 委員
      橘木 委員
      林  委員
      八代 委員
  2. 議事
    • (1) 女性起業家・自営業者について
        (報告者) 武蔵大学経済学部教授 高橋 徳行氏
    • (2) NPO等における女性の働き方について
        (報告者) 中央大学法学部教授、NPO推進ネット理事長 広岡 守穂氏
    • (3) その他
  3. 議事内容
    大澤会長
    それでは、時間が来ておりますので、ただいまから「男女共同参画会議影響調査専門調査会」の第23回会合を開催いたします。委員の皆様、お忙しい中御参加いただきましてありがとうございます。お手元の議事次第に従って本日の審議を進めてまいります。
     本日は前回に引き続き、有識者からの説明を伺います。まず「女性起業家・自営業者について」という題目で、武蔵大学教授、高橋徳行さんからお話をいただき、次いで「npo等における女性の働き方について」という題目で、中央大学教授、広岡守穂さんからそれぞれ御説明いただきます。それで質疑応答、意見交換をしていただくことになります。
     それでは、高橋さんから御説明、お願いできますでしょうか。たくさん資料は用意していただいていて恐縮なんですけれども。
    高橋教授
    皆さん、こんにちは。今、紹介いただきました高橋と申します。
     私の方から、この資料に基づいて今日はお話しさせていただきますけれども、女性の働き方、働き方といっていいのかどうかわからないんですけれども、自営業、経営者としての働き方という側面に着目して、女性経営者・女性起業家の現状が日本でどうなっているのかと、それからアメリカと若干比較した話をした後に、私は大学の方には今年の4月からで、昨年度まで国民生活金融公庫の研究所にいましたので、そこで行った日本の女性経営者の調査概要についてお話ししていきたいと思います。全部で3つのパートに分かれております。
     それで女性の経営者、女性の起業家の現状を見た場合に、最近マスコミなどではかなり女性の経営者についての注目度が高まっていると思うんです。新聞などではいろいろな形で紹介されているんですけれども、実際、数字の方は現状どうなっているのかということを、まず1ページ目を開いていただきたいと思いますけれども、女性の起業家、女性の経営者については、きちんとした官庁統計がないのが現状ですので、いろいろな統計を見ながら説明させていただきますけれども、ここで申し上げたいのはいろいろな形でマスコミ、や雑誌などで女性経営者の注目度が高まっている中で、日本の女性の経営者は減っていると。減り続けていると言った方がいいと思います。2002年の就業構造基本調査が今年の7月に明らかになったわけですけれども、それを見ても、この5年間で更に減っているというのが現状です。
     2ページ目に示したものが、自営業主で農林、漁業、内職含みで見たもので、これも右肩下がりで減っています。次のページをごらんください。
     3ページ目は、農林業を入れると産業の構造の変化が反映されてしまうので、農林業を除いたものですけれども、これでもグラフを見れば一目瞭然で減っています。
     その次に4ページ、内職というのは非常に特殊な働き方ですので、それを含めると減っていて当然ということになるかもしれませんけれども、内職を除いても、それから更に言うと、自営業の中で企業的な経営をやっていると思われる、いわゆる人を雇っている自営業を見ても、全部減っていると。どんな切り口で見ても女性の自営業者に関しては減っているということです。
     それで次に、これは自営業者を見たものですけれども、法人の経営者、いわゆる女性社長といわれている人の数を見たものが5ページ目になりますけれども、法人の数については若干、増えているというのが現状です。しかし、女性の経営者といった場合に、いわゆる企業経営者、社長プラス個人企業、自営業主の合計になりますので、合わせてみるとどうなるんだというと、最終的にまとめたものが6ページになります。
     見ていただくといろんな切り口で、1997年と2002年の最近5年で比較しているわけですけれども、いわゆるトータルで見ても、内職を除いて見ても、法人社長、自営業で人を雇っている、企業的な経営をやっている人たちの数字で見ても、どっちにしても減っているということです。
     これが世界的な傾向であれば、そうなのかなということなんでしょうけれども、次に7ページを見ていただきたいんですけれども、これはoecdで発表した『employment outlook』から取った統計ですが、これを見ていただくとわかりますように、いわゆる先進国といわれる、oecdに加盟している国の中で、女性に限った話をさせていただきますと、1990年代、女性の自営業主が減ったのは日本とイギリスだけです。
     ただ、イギリスの場合は特殊要因がありまして、御案内のとおり1980年代のサッチャー政権の時代にかなり人為的にというか、人工的に自営業を増やした反動がありますので、極端なことを言うと1980年代、1990年代、この20年間続けて女性の自営業主が減っているのは先進国で日本だけという現状になっております。
     日本の現状はそういうことなのですが、起業先進国、経営活動が非常に活発といわれているアメリカの統計を次に8ページで見ていただきますでしょうか。
     アメリカの統計もいろいろな統計があるわけですけれども、いわゆるセンサスで見た場合です。1982年、ちょうど今から20年前の統計を見るとほぼ日本とアメリカの、女性の自営業主の数というのはほとんど同じだったわけです。280 万ぐらいですね。
     ところが日本は、先ほどお話ししましたように減り続けているわけですけれども、アメリカは、1982年から1997年にかけて相当な勢いで増えております。増えればいいというものではないんですけれども、数の推移だけを見た場合に、非常に日本と対照的な動きをしているのがおわかりいただけるかと思います。
     次に15ページまで飛んでいただけますでしょうか。
     日本が減っていて、アメリカが増えているということですから、それでは次に気になることは、アメリカがどうして増えているのだろうということになるかと思いますけれども、これは経営者の数が増えるというのは一つの要因でくくれるものではなく、また、ここに書いてあることは計量経済学的に私が確認したものでもないですので、大ざっぱな話ということで聞いていただければと思いますけれども、まず一つは経済社会的な背景として、一つはガラスの天井というのが多分あるんだと思います。いわゆる、勤務している女性がその会社の中である一定の地位まで行くと、そこでぶつかってしまうということを理由に辞める方も少なからずいるということです。
     それから、離婚率の上昇というのも考えられると思います。いわゆる、経済的な自立の要請の高まりというのがあったわけです。
     3番目に考えられるのは、やはり勤めているよりは自営業主になった方が経済的な点に関して恵まれているというか、統計で見る限り、かなり自営業主の世帯の方が収入が多いという経済的な要因が3番目に当然あります。
     4番目には、日本と比較した話だけかもしれないんですが、やはり経営の世界とか起業の世界というのはロールモデルの存在というのが非常に大きいわけですけれども、アメリカの歴史を振り返ってみると、例えば植民地時代、いわゆる都市部で小売業を営んでいた人の約半数が女性であったという調査結果もあったり、それから非常に有名なエステ・ローダという化粧品会社がありますけれども、最近できた会社とはいえ、この経営者が起業の基盤を確立したのは第二次世界大戦前の話ですし、それから鉄鋼業に属するですが、重工業の世界でも19世紀末にはアメリカを代表するような会社の経営者が女性で、レベッカ・リューケンスという余りなじみのない名前ですけれども、そういう人が既に存在していたというのも、アメリカで女性が経営の世界に飛び込んでいけたという一つの大きな要因と思います。
     次の16ページですけれども、もう一つの側面として考えられるのは、やはり法制度とか支援制度の充実という問題があると思います。いろいろなアメリカの女性経営者の研究家に何が一番大きかったんですかと聞くと、制度のことですね。それと大体、異口同音に1974年の融資機会均等法がやはり大きいのではないかと言っています。それまでは、結婚している女性であれば御主人のサインがないと銀行からお金を借りられなかった。そういうものが、この法律によって改められたということです。
     2番目は中小企業庁、sbaの中に、女性の経営問題を専門に考える部署が1979年に、office of women′s business ownership、owboというもので設置され、行政の中で経営の問題を専門に考える部署ができています。
     あとは、政府に女性の経営の問題について、きちんと提言できる全米女性ビジネス評議会ができ、それから、これは一番の問題だと思うんですけれども、調査活動が充実しているということです。日本の場合は、女性を経営者としてとらえた官庁の統計というのはほとんどないに等しいと思うんです。就業構造基本調査は、あくまでも雇用の一つの形態としての自営業主としてのデータを集めているわけですから、売り上げとか所得とか、そういうデータが非常に弱い。アメリカの場合は、1970年代からセンサスの中に本格的な統計を入れている。 あとネットワークの問題ですね。これは、行政が云々というわけではなく、1980年代からかなり活発化してきたことが、女性が経営の世界に飛び込んでいきやすい、一つのインフラストラクチャーを形成していたと言えると思います。
     確かにアメリカの場合は、今、見たように数の面では相当女性の経営者が増えているんですが、経済全体の存在感、プレゼンスという点から見たときにどうなのだろうかというのが、18ページ目のデータです。
     ここで見ますと、確かに企業数、経営者数は35%と、それなりの割合を占めているんですが、いわゆる売上高とか雇用者数とか支払い給与額という点から見ると、まだまだそれほど大きな地位を占めているわけではないというのが、グラフで見てとれると思います。
     こういうデータをベースに、今、女性起業家をめぐってアメリカではどういう話題がホットになっているかというと、数は多いけれども、売り上げとか雇用者数におけるウェートが小さいということは、成長可能性の高い女性経営者に対して十分なリスクマネーが行き渡っていないのではないかというのが、今、アメリカで非常に大きな話題で、本格的に力を入れて取り組まれている一つの動きです。それについて、ちょっと説明させていただきますと、28ページまで飛んでいただきますでしょうか。
     成長資金となると、代表的なものがベンチャーキャピタルです。女性の起業活動が増えて、学歴とか、いろんな社会的な勤務経験においては過去と比べ物にならないぐらい分厚く形成されているけれども、その成長資金の代表的なものであるベンチャーキャピタルのお金が女性経営者に十分行き渡っているのかというと、それは相当低い割合でしかその事実が認められない。率直に言うと、1990年代においても、件数でわずか3.6 %しか女性の経営者にベンチャーキャピタルが供給されていないという現状で見てとれると思います。
     経営のベンチャーキャピタルのコミュニティーというのは、私はあの人が知っていると、知っている人に知っている人が紹介して、知っている人に資金を供給するというもので、そのコミュニティーで女性と男性の割合に違いが非常に大きい場合は、女性経営者に関する情報が余り共有されないという現状がある。そこが大きな問題だろうということです。
     それを若干、裏づけたのが29ページの表で、ベンチャーキャピタルの世界も、女性の割合は余り高くない。2000年で8.4 %で、アメリカでは2000年からスプリングボード2000という運動があって、そこでは政府がお金を出すのではなく、あくまでも出会いの場を人工的につくっていこうということで、いわゆるポテンシャルの高い女性と個人投資家とかベンチャーキャピタルが出会う場を積極的につくっていって、そういう成長資金も女性に円滑に流れるような動きをしている。そういう面から考えると、間接金融の問題でまだ、どうのこうのと言われている日本と比べると、相当、向こうは進んでいることが見てとれるかなと思います。
     これまで、日本の女性の経営者に関しては、余り大がかりな調査というのは行われていなかったんですけれども、昨年、国民生活金融公庫で行った調査は、結構大規模なサンプルで、女性だけではなくて男性経営者にも同じ調査票を配って比較ができるという特徴をもっており、ある程度、意味のある調査だったのではと思います。ここで得られた結果について、最後に説明させていただきます。39ページを見ていただきたいと思います。
     この調査では、女性経営者を4つのパターンに分けたわけですけれども、1つは男性経営者のようなキャリアの典型である勤務経験、管理職経験があって、起業するまでキャリアの中断がない、そんな人たちをキャリア型と名づけて、典型的な女性のキャリア形成であるキャリアの中断、勤務経験の中断、それから管理職経験がないとか、そういう人たちをその他にまとめて、その他を更に3つの分類で分けました。配偶者がないタイプ、いわゆる独身タイプです。それから、1回結婚して離婚されたり死別されたりと、配偶者があるタイプで4つに分けたわけですけれども、この4つに分けて女性経営者のパフォーマンスを見た場合に、次の40ページになりますけれども、これは濃いものが女性で、薄いグラフが男性です。
     それで、全部ひっくるめて女性と男性を比べると、これは経営者本人の収入で見ていますけれども、約300万円の差があるわけですけれども、ただ、キャリア型と呼ばれている女性の経営者に限って言うと、その差はぐんと縮まって、その下のグラフになりますけれども、100 万円未満の差になっているということですね。ですから、はしょって申し上げると、この調査からどういうことが言えるのかということですけれども、女性の経営者と男性の経営者のパフォーマンスの違いはいろんなことで言われるわけですけれども、男性並みのキャリアをちゃんと築けるような社会になっていけば、経営の世界に入っても遜色のないパフォーマンスを示せるのではないかと。検証されたものでも何でもないんですけれども、そういうようなことが言えるのではないということを、この調査の中で一つ見出したということです。
     ですから、経営の世界における女性の活躍ということを考えるのであれば、また必要だと思いますけれども、いわゆる経営者になる前の段階の条件整理、環境整備も非常に重要なんだということを申し上げて、私の方からの報告にさせていただきます。
    大澤会長
    いかがでしょうか。ただいまの御説明について、御質問や御意見をお出しいただきたいと思います。
    坂橘木委員
    非常に面白い報告だったと思います。10年前、20年前であれば、女性の社長の多くはだんなの社長が死んで、奥さんが継いだというのが非常に多かったと思うんですが、ここはそういうような情報というのはどこから理解したらいいんですか。
    高橋教授
    就業構造基本調査では、多分、先生も御専門だと思うんですけれども、一応、死別、離別したかどうかのデータは出ているんですけれども、特に増えているかどうかというのは統計からは余り見れなかったような感じがしたんです。
    坂橘木委員
    ここで、国民生活金融公庫の調査は、これは女性が社長である会社と、男性が社長である会社を何千社か選んで、それでdivorcedと死別というのがありますよね。そこを読み切るというのは不可能なんですか。例えば、死別というのはなかったですか。
    高橋教授
    死別はあります。死別、離別は一つにくくっています。
    坂橘木委員
    だから、いわゆるだんなが社長で、だんなが死んでしまったので奥さんが継いだというケースは、この全体のストーリーではどういうふうに組み込むというか、理解したらいいんですか。全く何もないところで、自分で企業を起こして社長になった人と、だんなが社長で後を継いだのとは、全く人生経路が違うと思うんですよ。
    高橋教授
    4分類で分けたときに、その場合は離婚、死別のサンプルがあるわけですけれども、この中でいわゆる旦那の後を継いだものと、それから、離婚した後自分で始めた、死別した後自分で始めた場合の区別は、ここには入っていないです。
    坂橘木委員
    ということは、過去と今との間で、どれだけの役割が変遷したか、この報告ではわからないわけですね。
    高橋教授
    これではわからないですね。ただ、圧倒的に多いのは、自分で始めた人がほとんどです。
    坂橘木委員
    今の世の中は、そうですか。
    高橋教授
    今の世の中ではないですけれども。
    坂橘木委員
    昔からですか。
    高橋教授
    いや、この調査では、こういうことですから。
    坂橘木委員
    わかりました。
    高尾委員
    今と、同じ図なんですけれども、先生、今日はアメリカと対照していろいろ教えてくださったんですけれども、アメリカではこのような結果というのはどんなふうになっているんでしょうか。
    高橋教授
    離婚した女性ですか。
    高尾委員
    はい。離婚とか、キャリア型とか4つにタイプを分けられましたね。
    高橋教授
    こういう形では分かれないんですけれども、いわゆる離婚しているか、離別しているかというのは、たしか向こうの労働省のやっている調査でそういうような分類があったかなと思うんですけれども、今、ちょっと手元にデータはないので、ここでは申し上げられないんですけれども。
    高尾委員
    非常に、私にとっては興味深くて、結論としてやはりキャリア型でやっていけば起業しても男性も女性も基本的には変わらないというようなことをおっしゃって、それではその裏を返すと、一度結婚して子どもがいたりすると、やはり何をやってもだめだという。
    高橋教授
    そんなことはないんです。というのは、離婚して死別云々は。
    高尾委員
    その辺が、日本とアメリカの社会との違いみたいなのが興味があるわけです。
    高橋教授
    それは、離婚しているとか死別というところに原因を求めるとあれなんですけれども、そうではなくて、私はいわゆる起業する準備の期間とか、そういうマインドというか準備期間の問題だと思うんですね。
     キャリア型の人たちというのは、やはりある一定の時期から、もしかしたら自分は起業するかもしれないということで、キャリアも人脈もそれなりに準備してやっていくわけですけれども、死別、離別をした後に引き継がれる方というのは、やはり準備不足なんですね。
    坂橘木委員
    でも、名前だけは社長にしておいて、実態は番頭さんが経営をやっているというケースが、別れていなくても大いにあると思うんですよ。でも統計上は、その人は女性の社長で表れてくるんですよ。
    林委員
    そのとき、女性は社長というんだけれども、この起業家の人自身の時代にというのか、そういう意味の人だけではない人が入っているということですか。ちょっとわからなくなった。夫が死んでそれを引き継いだというのが、起業家というふうに私のイメージの中に入っていなかったんですね。
    坂橘木委員
    入っていないですね。
    高橋教授
    これはほとんど、自分で始めた人だけのデータです。
    林委員
    それでいいんですね。
    高橋教授
    そういうふうに理解していただいた方がいいと思います。
     31ページに業歴が出ていますが、女性の場合で、平均で10年弱の業歴の起業ですので、自分で始めた起業のデータというふうに読んでいただいた方がいいと思うんですけれども。
    坂橘木委員
    そうですかね。どうぞ、企業の社長さんが言われた方が。
    浅地委員
    一つ、先生のお話の中の1974年の融資機会均等法で、御主人の承認が要らなくなったとか、そこら辺のところでちょっと、もう一つぐらい何かお話をしていただきたいのと、それと今、我々、負債を抱える立場で個人保証というのはとても問題になっているんですが、女性の経営者の方に旦那さんが、個人保証しているとか、国民生活金融公庫の方では何かありましたでしょうか。夫婦間で信用を付けているというか。
    高橋教授
    まず最初の質問ですけれども、基本的なこの法律の精神というのは、女性であるということにおいて何か差別してはいけないということですので、例えば融資の申込書を書くときに女性か男性か書くような欄をなくしたとか、そんなようなことがありますね。それは一方でまた問題があって、今度は女性の統計が取れなくなったということで、またさっき御紹介した全米女性ビジネス評議会では、また復活させてくれという要望もあります。
     それから、保証の問題ですけれども、これも統計で取っているわけではないんですけれども、女性が融資を申し込んだときに御主人の保証なり担保を求められるケースは実務上は多いと思う。それも女性と男性で分けていいのか、先ほど配偶者であっても自分で商売を始めた女性が多いという話をしましたけれども、結局、男性ばかりでは女性の会社の、あるコーポレーションとか、そういうように同じ会社で勤めている人たちもいるわけですけれども、別の会社に勤めていたり、別の事業をしている人がいるものですから、やはりどうしても身近な人の方が、身近な人であって、しかも生計が別であれば、これは保証として最適なものなので、そういう理由で保証を求めるケースは、実務上は少なからずあります。
    君和田委員
    この34ページに、組織形態で男が株式会社と有限会社と個人経営と、大体3分の1ずつぐらいですね。それで、女性の場合は3分の2くらいが個人経営だと。この組織形態というのは、やはり雇用に相当影響するんですか。その前のページの女性経営者の場合の女性社員は2.4 人、男性社員は2.4 人で同じなんですね。それが、男性経営者に行くと1.7 対6.3 という、男の経営者は男を採用するというのは是非は別にして、今の現状を考えたらよく分かるが、すると女性経営者は女性を優遇しているのではなくて、要するに個人経営だと男の社員を採れないということか。
    高橋教授
    事業組織形態と社員の関係はちょっと別かもしれないんですけれども、まず個人経営であるということは、それはやはり法人経営に比べて規模が小さいものが多いということは言えると思うので、個人経営であればあるほど人を雇っている割合は低くなるとは思います。
     あと、雇っている人の女性は女性、男性は男性というようなことは、戦略的に女性の経営者が女性を雇っているというのは、私のフィールドでやっている限りは余りないのではないかなと。例えば、資料に業種構成なんかも若干書いてあり、ブレイクダウンしたものはないんですけれども、そこで言うと、例えば飲食店、それから美容院、それからいわゆる婦人服の小売とか、そういうものの場合、やはり男性社員よりも女性社員の方が適しているというようなこともあって、女性の社員がそういう業種で多いということで、業種特性にも相当影響されているのではないかなと思います。
    君和田委員
    一種の業種特性の方ですか。
    高橋教授
    私は、業種特性の方が強いのではないかと思います。
     勿論、例えばテンプスタッフという会社でも100 人までは全員女性だったわけですし、意識的に女性でずっとやっていたという、会社もないわけではないですし。
    坂橘木委員
    個人経営の社員は何人ぐらいまでを限度に、社員を何人という線ではくくってはいるんですか。
    高橋教授
    個人経営は、いわゆる組織だけですから、いわゆる法人にしていないというだけの意味での個人事業者です。
    坂橘木委員
    そういうことなら、法人化していないという意味で、社員は何人いてもいいわけですか。
    浅地委員
    極端なことを言うとそうです。
    坂橘木委員
    そういうものもあるわけですか。
    大澤会長
    いかがでしょうか。
    浅地委員
    先ほどおっしゃったことって、とても実態的なことだと思うんです。私の仲間でも、みんな御主人が死んでしまって旅館の跡継ぎに、社長がいなくなったけれども、女将は続けていくとか、いろいろ相続に伴っていくというのが今までは多くて、今度、リクルート出身の方なんかみんな独立してやっていくというスタイルが出てきて、そっちがどんどん出てくるのが独立論でしょうかね。そこら辺のところがわかると、企業を改めて起こすというより、自分の持っているプロフェッショナルを生かして仲間でやっていくというのは、もう少し応援できるかなというような気がするんですが。商工会議所の女性会なんか見ても、半々ぐらい主人、父の後が半分ぐらいではないかと思うんですが。
    高橋教授
    いや、多分、本当に日の当たる企業らしい企業というのは確かにそうなのかもしれないんですけれども、特に女性の自営業主とか起業家の話をするときは、やはり非常に裾野が広い部分があって、結局、いわゆるトップとニッチのようなところは、なかなか同一に議論できないところがあるわけです。
     アメリカは起業社会で、開業数が多いといったところで、それはほとんどが1人か2人でやっているようなビジネスばかりで、本当に我々が知っているような企業って本当に数限られたもので、日本の場合も、例えば帝国データバンクがやっている調査では比較的大きな女性経営者が載っていて、確かにそういうところはいわゆる二代目、三代目、旦那さんの後を継ぐ人が多いんですけれども、この調査に含まれているものは非常に裾野が広い、裾野の下の方がかなり含まれているという意味で、自分で始めて1人か2人、3人、4人ぐらいでやっているところが相当含まれていると。
     だから、例えばアメリカでも全体的な統計を取ると同じようなことが言えるわけですけれども、例えば2年前にマサチューセッツで女性経営者の売上高の非常に高い企業100 社を調べた場合は、やはり全体の統計と全然違う姿が出てきて、業種も違う、それから経営者のキャリアも全然違うというケースが出ていますね。
     ですから、勿論、経営の世界は男性でも多様なんですけれども、女性の場合は男性よりも更に多様だという。それで、裾野がずっと広がっているというのが非常に特徴的です。
    大澤会長
    このアンケート調査の母集団というのは、国民生活金融公庫の全国の支店が融資をした企業ということなんですけれども、これ以外の全企業に対して母集団、この国民生活金融公庫の融資先企業は、こういう特徴があるという特性みたいなのはあるんでしょうか。
    高橋教授
    それは一言で言うと、6ページで企業的経営と自立的経営と一つ分けていますけれども、恐らく、このa、b、それからcの上の方だと思います。
     一応、曲がりなりにも、政府系金融機関からお金を借りているわけです。他にお金を借りないで事業をやっている人はたくさんありますから、そういう意味では当然、サンプル特性、バイアスがかかってくる。
    大澤会長
    裾野が広いとはいいつつも、しかし、底辺のところというよりは一定、ちゃんと事業として成り立っているというか。
    高橋教授
    公正な調査結果に限っていえば、そうです。
    大澤会長
    そういうことと理解してよろしいわけですね。したがって、離別・死別が一緒になっているというのは、ちょっと奇異な感じも与えるんだけれども、死別言えども夫の残した会社を継いだというよりは、死別してから自分で起業したというケースが、かなりあると理解してよろしいわけですね。
    高橋教授
    そのところにかなり関心が集まっているので、後で事務局の方に、いわゆる創業者か二代目かのデータを送っておきますので、次回にでも見ていただければと思います。
    大澤会長
    どうもありがとうございます。追加の資料までいただくことなりまして。
     私の関心というのは、やはり主要先進国ではこの20年間、特に女性に関しては自営業主が増えているのに、日本は全く逆のトレンドをたどっていると。その双方の原因についてどう考えればよろしいかということなんです。
     今日の御説明では、資料の15ページにもあるように、米国に関しては幾つかの原因、背景ということで挙げていただきました。ただ、この中で離婚率の上昇は数字が80年で止まっています。
    高橋教授
    また、下がっていますね。
    大澤会長
    今は、下がっていると。そうすると、80年代の前半ぐらいに日本と同じぐらいのレベルにあったアメリカは、その後ぐっと増えてきている。それは必ずしも離婚率の上昇が背景とは言えないのではないかということを、ちょっとここで思ったということです。
     それから、ほかの国について、同様な状況を考えられるのかどうかというのがございますけれども、離婚率はだんだんせり上がっている国は多いとは思うんですけれども、しかしこの20年間にすごく増えたというふうにも、ほかの主要国について思われないわけなんです。その辺のことを、どういうふうに考えたらいいかということと。
     それから、これはむしろコメントをいただければと思いますけれども、こういう主要先進国における自営業者の近年における増加については、やはりポスト・インダストリアルゼーションということが、つまり脱工業化ということがかなり指摘をされていて、後期工業化段階の経済から、サービス産業中心、更に知識経済というふうに移行していった結果、従来のように家産があったり資産があったりというのが元手で起業するということではなくて、知識や情報やネットワークを元手に起業するという人が増えてきて、新しい自営業が増えているんだということが、ドイツや北欧諸国、あるいはカナダなどについても指摘をされていると思うんです。
     この指摘がもし正しいとすれば、日本ではむしろ女性の事業主というのが減ってしまっているというのは、この後期工業化段階から地域経済段階への移行というのがすごくうまくいっていないことを示しているというふうに言えるのかどうか。そんなことに関心があるものですから、その増加の背景に絡めてそのような見方についてどう思われるか、コメントいただければと思います。
    高橋教授
    難しいですね。離婚率の話は、ちょっと省いたので、説明もなかったので、そのとおりです。ただ、きっかけになったのかなというぐらいの感じですね。
     産業構造のことは余り詳しくはわからないんですけれども、いわゆる社会的分業のようなものの在り方の違いというのは、随分自営業主の数に影響するのかと思います。私の友達が、3年前か4年前に、ニューヨークで3、4人で雑誌をつくっていたんです。今年行ってみたら、そこはもうなくなって、でも同じものをつくっている。どうやってつくっているかというと、もう各人が家に戻ってそれぞれインディペンデンツになって、だれか1人中心的な人がいて、もうネット上でできてしまうわけですから、そこで極端な話一つの会社がなくなったわけですけれども、5人の自営業者がそこで生まれているわけです。だから、そういうことは至るところにあると思います。
     あと、例えば我々がアメリカに住んでいたときに、理数系に強い人間だけをヘッドハンティングする仕事を一人でやっている女性の人がいて、そういう専門特化した形のヘッドハンティングは日本では余りないのかなというような印象は受けました。
     あと、専門じゃないんですけれども、雇用形態の違いも随分あるんじゃないかと。日本だと社員という形でするのを、アメリカでは独立自営業者のような形にして、典型的なのは、ダラスに本社のあるメアリー・ケイという会社、化粧品で日本で言うとポーラのようなところで、あの会社1つだけでも、いわゆるビューティーコンサルタントと呼ばれる女性の訪問販売員が10万から20万ぐらいの人がいる。そんな雇用形態の違いも大きな影響を持っていると思います。
    大澤会長
    まだ発言なさってない方、いかがでしょうか。どうぞ。
    林委員
    16ページのところで、法制度と支援制度の充実があって、女性起業家が増えたのではないかという一番下のところに、女性支援団体のネットワーク化の進展というのがあるんですけれども、ここの支援の内容が日本とかなり違うというふうに想像するんですけれども、その辺教えていただけますか。
     例えば、アメリカの場合は女性が起業しようと思ったら、手続やお金を借りることから、そして計画から、すべてに段階で完成するまで、融資が確実に入って事業が展開されるまでをきっちり実務的に支援をするというグループがあるんです。
     日本の場合、女性センターで起業家セミナーみたいなものがあったり、そこで一定の、その時点での指導みたいなものは、見たり聞いたりしているんですけれども、継続的に融資の実務は、書類の書き方からチェックから、そこまでアメリカの場合やっていたんですけれども、日本ではあるのかどうか。そういう違いのようなものが影響するのかどうか。どんなふうにお考えですか。
    高橋教授
    その点については、私も強く感じておりまして、女性センターが日本にあります。それは非常に重要な機関ですけれども、やはり経営だけのことをケアするわけではなくて、やはりDVとかもっと深刻な問題があれば、そっちの方に時間と費用が当然割かれると思います。
     ただ、アメリカの場合は、勿論そういう機関もあるんでしょうけれども、先ほどと同じページにありますけれども、79年に中小企業庁の中にowbo(office of women′s business ownership)ができて、そこが全国各地のnpoを募って、いわゆるウーマン・ビジネス・センターという、女性の経営だけを専門にサポートするnpoをどんどん組織化していったわけです。ですから、そこは経営だけのサポートですから、それこそ最初から最後までケアできるんですけれども、日本の女性センターの形態ですと、あれもやらなければいけない、これもやらなければいけないということですから、セミナーを開いてちょこちょことやるのが限界なのではないかと思います。
    坂橘木委員
    そういうところに男性が支援を求めているのは、もう排除されているんですか。
    高橋教授
    いや、排除はされてないです。
    坂橘木委員
    なぜそういう女性だけに支援しなければいけないのか、フィロソィーを教えていただきたいんですけれども。
    高橋教授
    私がアメリカでやっているわけではないのであれですけれども。
    坂橘木委員
    いや、日本でも女性センターがあると言われましたね。
    高橋教授
    はい。それは、あれじゃないでしょうか。これは私の個人的な意見ですけれども。
    坂橘木委員
    女性が全然経営者がいないから。
    高橋教授
    経営者になるためには、それなりのキャリア形成も必要でしょうし、それから人的なネットワークも必要でしょうし、それからお金もためなければいけないと。
    坂橘木委員
    それは男性にとっても大事なことなんじゃないですか。
    高橋教授
    ただ、そういうような機会が本当に男性と同じように女性が今まで保証されてきたのかどうかということはあると思います。
    林委員
    というのと同時に、雇われて働くというところで、十分に女性自身が能力発揮ができにくいと感じている人とか、勉強はして大学も卒業して、いろんな知恵も知識も持っているけれども、そういう場に行かないままに、チャンスを持てなかった人たちが起業しようと思うので、男性とはかなり違った状況に置かれているというのがあるんじゃないですか。
    坂橘木委員
    男性は、若いときからそういう機会に接するのが多いから放っておいてもいいと。
    林委員
    放っておいてもいいというより、それを求めるという割合としたらかなり低いと思います。
     やはり会社の中で頑張れば、それなりに何とかできるというふうな道はあったと思うし、女性に比べてそれが多いわけです。だから、ここでガラスの天井というのが起業の、何かどこかにありましたね。起業した理由というのが、ガラスの天井というのが、女性の29%を挙げているというのがあった。そういうことも1つの理由として。
    坂橘木委員
    なるほど、女性は課長か部長でもう止まるから、その後もっとやりたい人は自分で。
    林委員
    全然課長か部長になってないですよ。
    坂橘木委員
    恥かしい、済みません。
    林委員
    課長でも部長でもなれるぐらいだったらなって、だって社長になる男なんてほとんど少ないわけで、ほとんどは課長とかで、部長になる人も少ないわけでしょう。
     女性はそこまでもいかないぐらい展望が見えないで、やはり起業というふうに考える人も結構多いわけです。
    高尾委員
    関連ですけれども、日本の場合は女性が多少就業して、その後辞めてしまって、その後どうしようもないというのが今の日本の状況だと思うんです。正規雇用ではなかなか難しいし、パートでは本当にちょっとしかもらえないという形です。
     ですから、日本こそますます女性が自営業者として立っていっていいんじゃないかと、そういうニーズはすごく強いと思うし、実際この39ページを見ても、配偶者がいて、パートナーシップを維持したまま自己実現なのか、経済的に必要なのかわかりませんけれども、起業しようという人の割合が半分以上なわけですね。
     それなのに、さっきおっしゃった問題意識で、何で日本ではこんなに増えていかないのか、つまりニーズはすごくあるけれど、数的に日本だけ減っている。その辺はどうなんでしょうか。
     先生の「起業学入門」を読ませていただいたんですけれども、実際、これはさっきおっしゃったように、雇用されていた人間が起業していくことのメリットがかなり書いてありますが、実際雇用契機が乏しいとか、あるいはない中で、ほかに道はない起業という形のことが多いです。
     だから、その辺に対して先生の御意見というか、御指導というか、反映しそうなことがお伺いできれば。
    高橋教授
    その辺は切実さというか、そういうキャリアの人が一番切実で、私も田町にある未来館で、女性の起業相談を月1回やっていたことがあるんですが、やはり一番切実なのはだんなと離婚して、とにかく子どももいるので勤めるわけにもいかない、もう企業しかない、それからある玩具メーカーに30代まで勤めていて、40代のキャリアが全然見えない、会社にいずらいと、これはもう起業するしかないということで、かなり起業・経営者という道が、もう狭められた中で選択しようとしている人が結構多いというのは、数の面でどれだけあるかはわからないんですけれども、切実な問題だと非常に感じます。
     そういう人たちに対しては、勿論リスクがあるわけですからやたらと起業を進めることはあれですけれども、ただ必要なサポート体制みたいなものは、ある程度最低限取っていく必要があるんじゃないかと、そういう現実を踏まえた上でですね。
    名取局長
    済みません。7ページの表なんですけれども、この自営業主の増減率とありますが、これは起業した人の自営業主ということですか、それとも自営業主全体ということですか。
    高橋教授
    全体です。
    名取局長
    地方に行って聞きますと、何か小売業とか、そういうところがどんどん空洞化していますね。それで、結構セブンイレブンとかコンビニでフランチャイズものが出てくると、なかなか立ち行かなくて、お店をどんどん閉めてしまっているというのをよく聞きます。昔は一家の主人、旦那さんはちゃんと企業に勤めに行って、奥さんが小さな小売店をやってもっていたのが、だんだんグローバルスタンダードの店が進出すると、どんどん店をたたんでしまっているような状況があるというふうに聞いて、現に地方に行くと、もう店がどんどんなくなっていますね。ああなっているのは恐らく女性の自営業主が主としてやってらっしゃるのが多いんじゃないかと思うので、そういうことがこのマイナスに反映している部分はないのでしょうか。
     また、これはいささか97年の統計ですけれども、その後6年ぐらい経っていますね。最近はどうなのか、その辺と何か感じとすると結構若い人たちで起業している女性が増えているような気がするんですけれども、そういうふうに女性の起業が増えているという統計はないのでしょうか。
    高橋教授
    増えているのと減っているのを差し引いた絶対数の推移しかわからないんですけれども、最後の質問からお答えしますと、いわゆる97年の統計で減っている、言い続けていて、2002年の統計は期待して発表を待っていたんです。でも、2002年でも最初の2ページ目から4ページ目に示しているように、絶対数では減少傾向が止まらないということが言えるということですね。
     最初の御質問なんですけれども、これは産業構造でどちらかというと、競争力がなくなってきた部分に、女性の人たちの割合が男性と比べて高かったかどうかというのは、申し訳ないんですけれども、そこまでは調べてないんですけれども、局長がおっしゃっていたようなケースはいたるところに見られるのは事実です。
     昔ながらの美容院ではやはり立ち行かないということでしょうし、飲食店も近所にたくさんありますけれども、お客さんと一緒に経営者がどんどん年を取って廃業していくというパターンで、スナックとかそういうものでもケースとしては頻繁に見られると思います。
    大澤会長
    先ほどの女性に特化した起業・創業支援という話ですけれども、特化してない起業・創業支援というのは、政府でも、自治体、県レベルなどでも当然そういう施策はあるんですけれども、それとは別建てに女性センターでの女性に特化した起業・創業支援というような事業があったりします。私は幾つかの県とか政令市の男女共同参画基本計画づくりに携わりましたけれども、これはやはり特化したものも必要だけれども、もっと相互乗り入れが必要なんじゃないかということを言った覚えがありますから、女性に特化してないが、しかし男性のキャリアのようなものを標準として想定しているような起業・創業支援というのはあると思うんです。そこに女の人をいきなり組み込もうとしても、やはりその経歴とかキャリアが違うので、そこで女性センターが女性に特化したものをやっているということではないかと思いますけれども。
    高橋教授
    私も4月まで、政府系が付きますけれども、一応金融機関にいて、いろんな相談を受けましたけれども、相談してくるときのレベルというのは失礼だと思うんですけれども、女性と男性は全然違いますね。はっきり言って何をするか決めないで、とにかく必要に迫られて何かやらなければいけないということで、来られる方も少なからずいるんです。アメリカの例がいい悪いは別ですけれども、アメリカの場合はそういう人たちに対しても丁寧に、自分の能力がどういうことで、自分の能力があってやりたいことと社会が求めていることで、何か一致する部分がないかということをきめ細かくやっているのが実態だと思いますので、そこまで日本でやるのがいいかどうかわからないんですけれども、確かに入ってくるときの入口の入り方が違うので、ちょっと最初は入口を分けるか、何か配慮してあげる必要はあるのかと思います。
    大澤会長
    と言っている辺りで時間が来てしまいまして、高橋さんには、大変お忙しい中御説明いただき、それから追加資料の提供もお約束いただきまして、本当にありがとうございました。
    高橋教授
    やはり二代目、三代目というか、創業者なのか後を継いだのかということですね。多分ある程度のことはわかると思います。国民生活金融公庫の調査に限った話でいいですね。それでは、事務局に送っておきます。
    大澤会長
    それでは、次に広岡さんから御説明をお願いいたします。
     広岡さんは、中央大学教授と御紹介申し上げましたけれども、男女共同参画会議の苦情処理監視専門調査会の委員でいらっしゃいますし、またチャレンジ支援ネットワーク検討会の委員もしてくださっています。更に、特定非営利活動法人npo推進ネットの理事長でいらっしゃるそうで、npo活動の支援もされているというふうに伺っております。
    広岡教授
    よろしくお願いいたします。広岡守穂です。
     私の方は、npo推進ネットという、これは港区六本木のnpoハウスというところに入居しているんですが、npo事業サポートセンターの弟分のような団体です。
     団体のプロフィールについて、少しお話をしたいと思いますが、本当にnpoの世界は、ある観点から見ますとジェンダーの固りのような面が非常に強くあるわけであります。私どものnpo推進ネットは、そこで専従で働いているメンバーが3人おりまして、1人は専務理事、これは男性であります。事務局長が女性で、もう一人平の事務員がおります。この3人が大体専従のスタッフであります。
     私の団体ではありませんが、女性スタッフには、例えば夫のDVのために離婚をして、それで働いているという方がいらっしゃったりします。年収は私の団体でいうとお一人は大体三百万、もうお一人は四百万弱という感じであります。アルバイトの男性が、今は2人来ています。
     理事長の私は、非常勤で無給なんですけれども、実際は理事長として、専務理事と2人で仕事をいろんな形で取ってくるので、本当に経営するというのは大変だなというのを、日々つくづく、本当に感じております。
     npoに働く女性が大体男性が4割、女性が6割ぐらいかと思うんですけれども、そこを見てまいりましても、給与の水準は、一般の公的セクター、民間セクターに比べますと、大分見劣りがいたしますし、さまざまなメンバーで経営的には四苦八苦しているという感じであります。
     2枚紙の資料に沿ってお話をしたいと思いますが、今、npoに関しては非常に高い人気と関心があると感じております。私どもは厚生労働省の委託で休職者対象の職業能力訓練事業というのをやってきたんですが、中央大学でやっている職業能力訓練事業とnpoでやっているものと両方に関わって、受講した結果の満足度を比較しますと、大学の方は当たり外れがありますが、npoに関しては極めて満足度が高くて受講してよかったという人が多いです。
     また、学生のインターンを今年から中央大学でも始めまして、これもngo、npoという分野をつくりました。学生の絶対数は、国際機関とか、企業、公務員というインターンに比べると少ないんですけれども、しかしモラルは極めて高くて、非常に面白い学生、能動的に動く学生が多いです。
     ここにやってくる人たちは、サンプル数が少ないため一概に言えないんですけれども、学生の場合は1名を除いて女性という状況であります。実際にインドへ行ってngo活動をしてきた経験もあって、インターンを更に引き続きやったという人や、npoに関する関心の高さが、女性と男性で大分違うという印象を個人的に持っております。
     ただ、だからといって最近の女性が積極的だとか、男子学生は覇気がないというような話とも違い、非常にジェンダーという側面が色濃く反映していると思っております。
     資料の2項目目なんですけれども、npoでは女性のスタッフが高いというのは、統計的にも確認されております。ちょっと古いですが平成8年に総務庁が行いました「事業所・企業統計調査報告」、これはnpo法がまだできる前で、営利セクター、政府セクター、非営利セクターというふうに比べてみますと、女性比率が、営利セクターと政府セクターは36~37%ですが、非営利セクターは55%。で女性の働く比率が高い分野は、社会保険・社会福祉、医療、サービス業。
     男性と女性の比率の差が大きいのが、学術研究、製造業、サービス業といった分野であります。
     npoのスタッフを見ましても、この傾向はほぼきれいに継承されており、2001年の内閣府「市民活動等基本調査」によりますと、npoのスタッフが女性だけ、あるいはスタッフは女性がほとんどだという団体が40%。男性だけ、あるいは男性がほとんどという団体は、19.4%で。 女性が多い分野、これが保険・医療・福祉、社会教育、男女共同参画、人権擁護・平和推進、国際協力といった分野で、男性が多い分野は、まちづくり、災害救援活動、地域安全活動、環境保全、npoへのサポート、これは全くそうだなというのが、実感として感じられるところであります。
     この中で、管理職的な立場に立っている女性ということを考えてみますと、第一総合研究所の調査なんですけれども、スタッフの主な職業というのが、家事従業者、すなわち主婦が48.5%、年金生活者・定年退職者が31.4%ということでありまして、フルタイムで働いている働き盛りの男性が関わることは事実上難しいというのが伺い知れるかと思います。
     理事・役員を見ましても過半数が女性で、管理職員的な地域にいる人も半分が女性という具合で、npoは大変女性のプレゼンスの大きい分野であります。
     2枚目をご覧いただきたいんですが、これは東京都の調査で、有給スタッフについてです。これは最近の現状に合っている調査なんですけれども、有給職員や有給スタッフ等がいるnpoは大体6割で、有給の職員がいるnpo、つまり常用の雇用が4割ちょっとという数字であります。
     週30時間以上勤務している者は、有給職員の3分の1ぐらいで、その平均月収で一番多いのが、20万円~22万円、実は私のところで雇っている女性の平社員が、まさにここにどんぴしゃりで21万*15か月という給与で働いてもらっています。
     週30時間以上働いている人のうちの3分の2は女性で、女性の比率が特に高い分野は、子育て支援、子育て関係、保健・医療、福祉。
     職員の前職を見ますと、民間から転職をしているという人が、かなりの数を占めます。
     以上、ざっと数字を見てまいりましたけれども、少し具体的な中身の話をさせていただきたいと思います。実際に事業を行っていて経営的に成り立っていて、それで職員の数が多いというのは、npoの場合には福祉の分野が目立つかと思います。
     例えば、法人化されたときに理事になったんですけれども、富山県富山市に「このゆびとーまれ」というのがありまして、大変有名な施設です。富山方式と言われて、いつでも、だれでもお世話をしますとスローガンに掲げて、この仕組みが有名になりまして、今、長野県で爆発的に増えているんですけれども、子どもさんもお年寄りも、障害を持っている人も一緒に預りますという考え方です。
     従来そういう施設がほとんどありませんでしたから、見ていると「このゆびとーまれ」というのは新しい社会システムをつくっていくといいますか、そのサービスの分野でこれがいいと思って仕事を起こして、本当にそれがいいとなったらわっとその分野が変わっていくという、そんな印象を受けます。
     ここを見ますと、我々は理事ですから、職員の給与を決めたりするんですけれども、理事長のデイケアハウスを始めた女性の元看護師さんは、自分の給料を上げるのも嫌がるんです。「このゆびとーまれ」に限りませんけれども、いろんな分野で、福祉系のnpoでは結構よく見られるんですが、給料余り上げませんから、したがって法人がもうかってしまいまして、去年、一昨年辺り、福祉系のnpo法人で法人としての利益が、2,000万、3,000万、4,000万上がっているところがざらにあると思います。
     4割近く税金を払うことになるのですが、給料の引き上げを嫌がりまして、私自身の給料も高くなくていいとおっしゃるわけです。
     何でそんなことになるかといいますと、法人化される前には無償のボランティアさんに支えられてきて、法人化される前からずっとやってきているわけです。それで、有償のスタッフも、例えば年収にして100万とか200万という世界でした。これに介護保険法が導入されて、入ってくるお金が突然増えたわけです。介護保険の指定業者になって3か月ぐらいのときに御本人とお話をしましたら、何でこんなお金がたくさん入ってくるのか分からないとおっしゃっていて、それを人件費に払うんではなくて法人で残してしまうものですから、それで1年後にたくさん税金を払わなければいけなくなって、どうしましょうかという話を聞いています。
     ここ1、2年福祉系のnpoでは、そんなようにして法人税をちゃんと払ったnpoが相当たくさんあると思います。介護といった分野は、従来女性が家の中で行うものといわれていて、したがって支払われる給料はないというアンペイドワークだったわけです。そのアンペイドワークが、社会全体で支えていきましょうとなり、従来ボランティアさんに支えられていったようなところに、ちゃんとそこで食べていけるだけの報酬が発生するようにという設計の下で報酬の体系ができ上がる。 ところが、今までボランティアさんに支えられているものですから、スタッフも、はい今日から介護保険がスタートしましたので、給料2倍にしますというわけにはいかず、それで、今のような状況が起こっているんだと思います。
     それは、アンペイドワークの有償化という意味で、誠に結構なことだと思うんですが、ここ数年は言わば過渡期の状況で、そういうアンペイドワークで従来ボランティアさんに支えられてきたから、高い給料を払うと引け目があるんですよというところから、何年かかけてこれが正当な報酬なんですと変わっていくと思います。
     現在、過渡期の状況ですので、余り統計的なデータを、だからこうだというふうに、構造的にこうなっているんだというふうな結論が下せないんじゃないかと思っております。
     更にもうちょっと先の1990年代の後半ぐらいには、実はnpo法ができる前にnpo的な働き方をやっていこうじゃないかということで、ワーカーズコレクティブという働き方が、都市部の生協系の団体の提案で始まっておりました。
     私、そこを調べてみたことがあるんですけれども、時給300円を超えるのが四苦八苦なんです。今ですと、例えば介護保険の指定業者になれば、時給300円なんてすぐ超えてしまうと思うんですが、当時は時給300円の壁を越えるのが非常に大変でした。
     だからといって、そこで働いている人たちが、こんな割に合わない仕事はもうやめましょうというんではなくて、お金ではなくて心なんですよと、感謝されるあの笑顔が本当に自分たちを支えているんですよということをおっしゃっておられました。それができる背景にあるのは、そこで仕事をしている方たちの配偶者ですとか御家族が、一家食べていけるだけの収入があるというのがまたバックグランドにあると思いますけれども、今、npoの世界を見てまいりますと、そういう夫がそれなりの収入があって、妻の方は必ずしも十分自分で食べていかなければいけないという収入がなくてもいい、だけども専業主婦のような立場にいると、何か悶々としてどうにもこうにもならないと、何か社会貢献をして自分育てをしていきたいという動機に支えられて活動に入っていかれるというケースが多いんだろうというふうに思っています。
     ですので、モラルは高いんですけれども、しばしば、つけ込まれると言ったらおかしいかもしれませんけれども、ちょっと問題ではないかと思うことが感じられることがあるわけであります。御本人たちの主観はそれでよろしいんでしょうけれども、社会全体でトータルに構造を考えるということですね。
     どういうことかと言いますと、行政からの委託なんですが、最近コスト削減とか、そういう動機を強く働いて、特に役務提供型の契約の場合に非常に安い価格で、例えば庁舎を掃除するとか、非常に安い価格で契約を結ぶとか、前年度より少し安くするということがしきりに行われているかと思います。公的施設の管理運営をnpo団体に委ねるといったのも同じなんですけれども、管理運営を委ねられる側のnpoの方は、本当に昔からやりたい仕事だったし、自分たちはこの市の文化活動をこれまでもずっと担ってきたし、同時にそれが仕事として場所の管理運営までできるならうれしいということで、志高く安い価格で引き受けられるんですけれども、これが実際にそこで働く人の時給で計算すると、極めて安くなってしまう。最低賃金法違反じゃないかという感じのこともちらほらありまして、これはnpoをサポートするという面でいいますと、契約の在り方、原理原則をちょっと考えなければいけないと思います。
     例えば、アメリカですとリビング・ウェージ、生活賃金という考え方がありまして、非常に大ざっぱに言うと、子ども一人育てているお母さんが、自分の収入だけで生活を成り立たせていける程度の賃金と、ちょっと大ざっぱ過ぎるかもしれませんけれども、そういう生活賃金も払っていないような企業に対してはお役所は契約を結んではいけませんよという考え方があろうかと思います。あるいは、相場の賃金、プリペーリング・ウェージという考え方もあろうかと思うんですが、こういう視点を日本はnpoなんかの分野で考えていかないと、今は志で我々たち仕事できるからうれしいですというレベルなんでしょうけれども、長期的に天下国家の21世紀の大計ということを考えると、なるべく早い時期にこういった問題を少し原理原則を打ち立てておかないと、npo自体が伸びていかないのではないかという感じがしてなりません。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に基づいて御質問や御意見をお願いいたします。
    君和田委員
    私、ここで失礼いたします。
     (君和田委員退室)
    坂橘木委員
    やはりおっしゃるとおり最賃が大体600円~700円ぐらいですね。500円のところもありますけれども、300円といったらそれの半分ですね。
    広岡教授
    ちょっと数字は古いんですけれども、でも90年代の初めぐらいです。
    坂橘木委員
    もし厚生労働省がこういう事実を知ったときは、どういう指導をやるんですか。
    高尾委員
    でも、雇用者じゃないんです、自営業者なんです。
    坂橘木委員
    そうすると、最低賃金法の対象ではない。
    定塚参事官
    仮に働き方の中身を見て、指揮命令されているような、本当に雇用という形態だとみなされれば別ですけれども、自営である以上は関係ないということになります。
    広岡教授
    経営をしていくために乗り越えなければいけないハードルがあって、例えば在宅給食サービスですとか、実際はなかなか事業として採算ベースに乗せること自体がそもそも難しいんでしょうけれども、それから配達とかパン屋さんとか食品加工とかいろいろあるんでけれども、時給に計算するとなかなか300円を超えるのが難しいです。つまり経営的なベースに乗せるまでの助走で何年間か苦労するわけですね。それが、うまくいく
     とそこを超えていくわけです。
    坂橘木委員
    だから、本人がいいと言っているんだから、それは法律には触れないということになるでしょうけれども、でもあなたがいみじくも言われたように、これは旦那さんの所得があるから、こういうので満足しているし、心の満足があるというけれども、もし独身の人だったら絶対食べていけませんね。だから、こういう人になるのは結婚している女性しかなれないじゃないですが、それはどういうふうに考えておられますか。
    広岡教授
    やはりジェンダーが非常に強く表われてきていると思います。例えば経営を実際に始めていて、金融機関から融資をもらってやっていけば、それはそれなりの収入を取ることも可能なんでしょうが、大体無借金経営でゼロからこつこつやるわけですから、しばらくそういうことがあるのは経済秩序としては宿命的なものではないですかね。
     赤字が続けば倒産するわけですから、wwbjapanなんかで女性の起業家に融資していて、非常に特徴的なことは、女性の場合には焦付きがほとんどないと言われていますね。大きい借入れをして勝負して失敗したら、すってんてんになったという話ではなくて、女性の融資の場合は、自分の収入が爪に火をともすようでも、とにかく返済だけは一生懸命やるという特徴があると。wwbなんかではそんなことを言っていますね。
    大澤会長
    どうぞ。
    岡沢会長代理
    広岡先生にそもそも論というか、ngoとnpoというのは、基本的には英語だと思うんですが、国によってngoと表現していたときには、結構それに対応する組織は考えられるんですが、ngoという表現が、かなり前面に出てきた時代がありますね。
     ngo・npoと中黒入れて併記するようになって、ngoと書いていたときなら比較的わかりやすかったけれども、npoと書くことになった。大体それぞれ国にngoという表現もないんですよ。英語の世界にはあるんだけれども、多くの場合には、基本的にはボランティアに該当する言葉もない国が相当あります。
     そうすると、従来型の非政府組織、そして政府の組織、そして営利団体、その中の間隙を抜く、従来型組織では対応できない政策課題があるんだと、そこに対して問題解決の技法を提示できるんだというところから発生しながら、国によって、急にnpoという表現が前面に出てきている国がある。
     ngoという表現を一般的につくっていた社会から、ngo・npoという中黒でnpoを表現するようになったときの転機というのは一体何なのか。それによって、どういう社会的使命が変わっていったのか。
     北欧なんかでいうと、雇用促進するための方法ということはあるが、それ以外の目的というのは、実はボランティアというコンセプトは北欧語にはなく、あるのはフリービリジット、任意組織というもの。ところがこれはものすごい古い組織を持っているんです。英語でngo、npoが出てきて、実際問題としてフェレーニンゲンの歴史はものすごく古いのに、英語に当てはまるコンセプトがないために、そうすると10か国比較すると、10か国ともngoとnpoの定義が違うんですね。この辺をどう考えていくのか。
     今の場合なんかでも、私なんかに言わせれば、npoの組織でできれば有給化して130 万以上になってくれて、新しい雇用を生めばいいのにというふうに思うんだけれども、そちらの方で所得を抑えようという動きがあると、ちょっと北欧型の発想でもまた違うなと。
    広岡教授
    所得を抑えようという動きではないと思いますね。つまり、従来、アンペイドワークで給料が発生しないような仕事だったのに、私たちは同じ仲間と一緒に仕事をしてきて、そんなに簡単に給料取れますかということで、これは私は過渡期だと思います。
    坂橘木委員
    では、奉仕の精神で今でも続いているということですか。
    広岡教授
    福祉の分野ですけれども、福祉の分野を申し上げているんです。
    坂橘木委員
    ほかのnpoでは300 円というのは、非常に珍しいですか。
    広岡教授
    いや、それも取れないところが多いでしょうね。
     結局、こうなりますね。例えば、我々はnpo推進ネットをやっています。私は、結構いろんなところに行って頭を下げて仕事をもらってきています。だから、営業をやっているわけです。
     だけども、では自分はそれで給料を取るかというと、取りません、無償でやっていますよ。
    坂橘木委員
    それはやはり奉仕の精神でしょう。ボランタリーで。
    広岡教授
    私は経営者ですから、役員ですから、理事ですから、npoの場合、理事の3分の1はそこから報酬を取ってもいいけれども、あとは無償ですね。そういう定めになっています。ですので、私の場合は、恐らく零コンマ何人分かの仕事はしていますけれども、その分は所得がなくて、その分の所得は別の人のところへ、自分たちが取っている人のところへ行っているわけです。
     ちょっと、区別して考えなければいけないんですけれども、今の岡沢先生のところともちょっと絡んでいますが、日本の場合、そもそも非営利団体を自由につくることができるという発想そのものがなかったわけですね。社団法人だの、財団法人だのという国の主務官庁のお墨付きを得て初めてできる。それで、ずっとみんな任意団体でやってきているわけです。
     それが、92年、私が初めてnpoという言葉に接したのは、そんな時だったと思います。勉強会を始めて、それで法律をつくろうよという動きになるわけですけれども、これで自分たちでつくれるんだと。
     このとき思うのは、理事あるいは正社員が株主に当たり、会社の取締役に当たるのが理事になりますね。株主は、言わば自分たちが投資をして、そこから報酬を得、配当を得てくる。もう一方の人を、npo法上は社員と言いますけれども、こっちは金もうけを目的にして社員になってはいけないのです。ここは一番違うところで、あとは何も違わぬわけですね。雇えば、従業員に対しては、やはり最低賃金法だって当然適用されるべきであるし、すべてのことは全部一緒ですね。npoだからといって、出版社をやってはいけませんとか、そんな話はないわけで、どの分野でもnpoをつくろうと思えば、つくれます。
     要は、営利セクター、非営利セクター、民間セクターという、その分け方だけです。業種によって、ここはやってはいけませんよという、そういう仕切りは何もないですからね。
     それで、申し上げるのは、npoはジェンダーの側面を非常に強く受けているんではないかというのは、従来、そもそも金もうけの種にならないと思われているような分野でnpoをつくっていって、つくる人たちは金もうけが目的ではないです。だけど、それをきちんと仕事していくためには、専従のスタッフが必要だし、その専従のスタッフには金を払わなければいけないとなりますね。 その分野がどの分野かというと、それこそ岡沢先生が今おっしゃったような、ngo、国際関係の分野とか、それから福祉の分野と、そういう部分がやはり圧倒的に多くて、ここで、現在、給料が低いのは、私はそれこそ日本の社会の性別役割分野のシステムの中で、システムそのものを反映しているんだというふうに考えていますけれども、過渡期だと思っています。いずれ間違いなく収入は高くなるし、セクターでも高くなってくると思うんですけれども。
    林委員
    質問ですが、先生がnpoの理事長が給料を上げたがらないという表現を一度使われて、今、自分たちがやっていることで、今までは何ももらわないでやっていた仕事なのに、それでお金をもらうわけにはいかないと言っていると、そう言っている人たちというのは、理事長ではなくて、実際に働いている人ですね。そこがちょっとはっきりしないんですね。
    広岡教授
    こんな感じですね、実際に働いているスタッフも自分の給料が突然2倍になったりすることについては、非常に引け目を感じていると思います。今までこつこつと、半分ボランティア、半分奉仕の精神でやってきていますから、そこへ就職したとか、そういう気持ちでやっているわけではないですからね。だから、働いている人たちも、現在、そういう気持ちの人は少なくないと思います。
    坂橘木委員
    だから、やや誇張して言えば、今まで専業主婦で賃金ゼロだった人が、旦那が、おまえ働いているから賃金やるよと言ったときに、奥さんがびっくりするのと一緒の論理ですよ。
    林委員
    いや、違うと思います。私は違うと思うし、それは本当にそうかなと、私が知っているnpoの事務局長をやっているとか、事務局をやっているような人たちは、こんなに貰ったらいけないなどと思っていない。何でこんなに重要な役割を果たしているのに、利益も上がっているのに、何で給料はこのままでやらなければいけないかというふうに思っていると思うし。
    広岡教授
    どの分野ですか。
    林委員
    どの分野と言えばいいんでしょうね。環境の分野であったり。
    広岡教授
    環境の分野なんかはそうでしょうね。
    林委員
    福祉のところで働いている人たちも、やはりこれで。
    広岡教授
    福祉は、都市部と地方では相当温度差があると思います。
     実際の仕事ぶりとして、例えば100 人ぐらいのボランティアさんがいて、そういう人たちは入れ代わり、立ち代わり送り迎えをやったり、それからシーツの洗濯をしたりするわけですね。そういう人たちは全くの無償ですよ。そして、その中に専従のスタッフは、例えば月給10万とか、15万とかというレベルで何人かの専従のスタッフがいるわけです。そういう世界です。
     それで、顔もよく知っているし、仲間同士ですと。あくまで過渡期なんですが、突然介護保険法が入って、いっぱいお金が入ってきている、どうなってしまったのかというのが経営者の率直な気持ちで、我々理事は給料を高くしていいんですよ、高くしてもらわなければ困るんですと口をすっぱくして言っても、いや、それはしばらくの間勘弁してくださいと。人情からそういう世界ではそうだと思いますよ。ずっと無償で働いて。
    名取局長
    それとジェンダーの話で関係があるんですけれども、1ページの真ん中辺に女性の多い分野と、男性が多い分野というのがございますね。男性の多い分野の方の給料は高いんですか。
    広岡教授
    これは、こんな感じですね。例えばまちづくりの関係だと、npoサポートセンターなんていうのがこれに該当するんですけれども、そこのスタッフは、半失業者的なといっては悪いけれども、一生懸命なんですけれども、実際はそんな感じです。
     理事は、商工会議所の人とか、最近は青年会議所が多いんですけれども、青年会議所の人たちが理事になっているといったような形ですね。
    坂橘木委員
    そういう人たちは、本業で結構所得がある人だから、別にこっちの方の環境汚染とか、まちづくりで所得は要らぬというボランタリーでしょう。
    広岡教授
    そうですね、それで事務局長の人は、この人たちはやはり収入は低いです。
    坂橘木委員
    専従ですか。
    広岡教授
    専従の人は収入が低いです。
    坂橘木委員
    大体300 万円ぐらいですか。
    広岡教授
    と思いますね、具体的に給料は幾らか聞いたことありませんけれども、そんなもんだと思いますね、3から4、いくかいかないかだと思いますね。私の関係しているところでは、それ以下です。緊急地域雇用で雇ったりなんかして、それを使い回したりしています。
    坂橘木委員
    でも林さんと、ちょっと見方が違って、だからnpoによってばらばらなんじゃないんですか、そういうふうに今、理解しましたけれども。広岡さんのようなnpoもあるし、林さんの言っているようなnpoもあるというわけで、npoによって賃金もばらばらだし、経営の仕方もばらばらだし、何かユニフォームの統一された規格製品はないと理解した方がいいんじゃないですか。
    広岡教授
    だから、事業系という言葉をよく使うんですけれども、福祉の分野は事業系のnpoが唯一確立している分野です。
     ここは、例えばスタッフが6人とか、7人とか、10人とか雇えるわけです。これは介護保険法が一重にあるがゆえですよ。
     それから、ほかのまちづくりなんていう分野は、実際にそのまちづくりに関わっている人たち、商店街のおやじさんとか、そういう人たちが理事をやっていますけれども、そこから彼らは給料を貰わないんですね。事務局のスタッフで専従で雇っている人に対しては、給料を払っていますね。
     この専従で雇っている人は、キャリアがいろいろですけれども、決してそんなに立派な給料をもらっているわけではない。
     まちづくりは、圧倒的に男性が多いんですよ、女性で理事をやっている人は本当に少ないです。
     環境保全とか、こういうのもそうで、去年、農林水産省関係の方で環境保全とか、そういうもののnpoの調査をしていたんですけれども、理事に女性というのは、本当に10人中2人もいればいい方という団体が多かったですね。
     保健医療福祉関係以外は、事実上、スタッフがそれで食べていくというのは非常に難しいんだというふうに考えていいと思います。
    高尾委員
    育児保険ができたりすると、子どもの分野も十分やっていけるようになるということでしょうかね。
    広岡教授
    こうだと思います。つどいの広場という事業を厚生労働省が始めまして、今、全国で28か所ですか、つどいの広場があると思うんですけれども、これは市で直営したりしているところもあるんですが、子育てサークルが私たちにやらせてくださいと名乗り出て、それなら法人格を取ってくださいと。それでnpo法人になって、それでつどいの広場を運営しているという、そういうケースが全国で結構あります。
     こんなのだと、給与もそこそこあるわけですね、公的セクターからお金が出てくるわけですから。だから、民間のnpoを徐々に育てていくというのは、子育てだの福祉の分野では、やはり制度の設計ということが非常に大きな影響があると思います。
     これは、それこそアンペイドワークをペイドワークにしていくための非常に重要な手立てで、私は介護保険法だけではなくて、もう少しきめ細かいに地域の子育てサークルが、そこから仕事をつくっていくというチャンスをつくっていく必要があると思います。
    浅地委員
    よろしいですか。
    大澤会長
    はい、どうぞ。
    浅地委員
    事業全体として、npoの方がノンプロフィットという基本的なスタンスがあるとすると、その下にいろんな場面で、税金関係とか、保険関係とか、その辺のところはどういうふうにつくっていくんでしょうか、最賃法は守らなければいかぬというと、時給300 円なんていう言葉遣いそのものが、ほかの場面だと問われてしまうような、だから、それが給料なのかどうなのか、それに一定のところに来れば、今度、年金とか、ちょうどお勉強するような世界に入っていくんでしょうし、事故があったとき、だれがカバーするんだとか、例えばそこら辺のところ、要するにコンプライアンスというような言葉が企業等に問われているとすれば、npoとコンプライアンスというのは、どういうことになっていくのかなと。
    広岡教授
    npoだからといって優遇する必要は私はないと思っていますが、むしろ企業と正々堂々と自由競争の中で一騎打ちしていけばいいので、私はサービスの在り方とか、そういう面については、npoだからどうのこうのという、そんな世の中ではないと思います。
     ただ、ちょっと差し当たって、しばらくの間は税制の優遇は必要なんではないのかなというのが1つと。余りにもひ弱ですからね。
     もう一つは、なんていうんでしょうか、今、何か言おうとしてど忘れしてしまいました。
    坂橘木委員
    それでは、ちょっと言いにくいことを言いますけれども、npoも結構、例えばやくざと結び付いていて、要するに税制優遇のメリットを得ようとして、福祉の目的ではなくて、税制優遇だけを得ようとしてnpoをつくって、何か背後にいわゆる黒い団体がいるというのが結構あるんですね。こういうのと区別するのはなかなか難しいでしょう。npoというのは、ものすごい数があって、政府も一体どれだけあるかまで把握していないんじゃないんですか。
    広岡教授
    法人格を取ったものは届け出ますので。
    坂橘木委員
    届けて後の検査とか、監査というものはあるんですか。
    広岡教授
    あります。それは明瞭に全部さらしておかなければいけないんです。トランスペアレンスが要求されています。
     今の論点は、1つある論点なんだと思うんですけれども、でも考えてみると、財団法人、社団法人は、今、1万3,000 ぐらいだと思うんですけれども、それに対してnpo法人は、今、1万2,000 です。間もなく、恐らくここ数年で2万とかに増えていくと思いますけれども。では、財団法人、社団法人に、そういう怪しげな団体がないかとなると、これもあるわけでして、企業だも、企業舎弟とかありますね。npoだからといって、だから不正に利用される可能性があると見たりするのは、ちょっとどうかなというふうに思います。
    坂橘木委員
    私は、いかがわしくは見ていないですけれども、サポートはしますけれども、そういう実態は多少あるというのが。
    広岡教授
    どこにでも伴うと思います。
    坂橘木委員
    いろんなところで書かれているんですね。
    広岡教授
    はい、おっしゃるとおりです。
    坂橘木委員
    どうしたらいいと思われます。
    広岡教授
    やはり、不正は許さないという社会的な正義を貫いていくというしかないんではないでしょうかね。 特段、npoに関して、特効薬というのはないと思っています。企業に対しても同じだし、それから社団法人だの、財団法人についても同じことが言えるんだと思います。
    大澤会長
    先ほどの賃金を上げないので利益が出てしまうと、法人税を払っていると。全部の法人の中で法人税を払っているというのは2割ぐらいしかないわけですね、ほとんど赤字法人ですから、そういう中で事業経営のnpo法人というのが、法人税を払っている比率というのは、驚くべく高いのかなと思いながら、そうすると、非営利と営利の違いというのは、とことんどこにあるというのかなと。
    広岡教授
    それは、法人の持ち主であるところの株主が配当を求めるか、それはnpo法上の社員であることによって配当を求めるかと、それはないわけですから、そこが違うわけですが、それ以上のもので私は違いがあると思いません。むしろ、同じ土俵の上で競争してもらわないといけないんだと思います。
     実際に仕事を起こす立場に立ってみると、企画会社を立ち上げるとして、npoで立ち上げようか、株式会社で立ち上げようかと考えると、業種によっては株式会社で立ち上げようと気持ちになるでしょうね。
     でも、福祉みたいな分野でnpoにしようか、株式会社にしようか云々と考えると、社会福祉法人にしようかとか、考えると、実は社会福祉法人にするよりもnpo法人にした方が小回りが利くんですよ、いろんなことができるんですよ。 そうすると、大きなお金を手にするんではなくて、自分たちの志でやろうとなると、これはnpo法人を選ぶでしょうね。使い勝手のいい法人形態を選んでいけばいいわけで、私は株式会社とnpoが全然違うんだというふうには余り考えない方がいい。
     あくまでも今は過渡期で、この過渡期の間は、やはり税制にしても、何にしても幾分かのことがないと、ロールモデルがつくれませんから、きちんとしたモデルができるようになるまでは、しばらくのところは肥しをやり、水をかけ、光を当てて育てていく必要があるんだと思います。
    大澤会長
    なぜ、npoセクターというか、非営利セクターが成長するが望ましいのかというようなことに関してなんですけれども、1つは、公共利益に関わる活動をしていく、そういうセクターがちゃんと、月収10万円ではなくて、食べていける賃金が出せる、それだけの雇用が提供できるということは、公共利益に関わりたいというふうに思っている志の高い人たちにとって、それが職業になるという道を示すというので、大変重要だと私も思うんですね。
     やはり、月収10万円でいいという人がいて、それでやっていると、その世界に本当に身を徹したいみたいに思って、でもそれ以外に食べていく道がないというふうに思っている人の機会を奪っしまうので、そのことからいっても、やはり過渡期の月収10万円というのは、何とかしてもらいたいなというふうに思うんですけれども。
     もう一つは、結局株式会社で上場なんかしていると、毎期毎期の決算というところで、特に連結キャッシュフロー会計になってからというのは、そのキャッシュフローをきちんと維持しないと株価が乱高下することにもなるので、そのために非常にリストラが加速されている面があるということに比べれば、npoはそれをしなくていいということで、安定的な雇用を、しかも質のいい雇用というのを提供できるセクターになり、その金融グローバル化みたいな中で翻弄されないセクターでもあるという意味で、ここが一国の経済の中で占める比重が高くなれば、国民にとって非常に益するところが大きいというふうなことが私の考えではnpoセクターに成長してほしい理由なんですけれども、そういうことに関して、どんなふうにお考えかというのを。
    広岡教授
    誠に心から同感するし、そういうお考えについては、本当にそういう方が日本の意思決定の中心にいていただきたいという気持ちでいっぱいですね。
     ただ、実態でnpoが、例えば公共サービスの言わば受け皿になって、公共サービスを肩代わりしていくということを考えると、アメリカなんかでもそうですけれども、やはりものすごいぶれがあるんですよ。ある時期には、そこへたくさん仕事が来るけれども、政策が変わると途端にそこへお金が何も下りてこなくなってくるといったようなぶれが実はあるんですね。
     恐らくそれは、これから伸びていくときに起こってくることなんではないかなと思います。つまり、政策が変わると、これまでうんと大きくスタッフをたくさん抱えていたところに、委託金なり補助金なりが全然下りなくなって、それでリストラをしなけばいけないというような話になるんではないですかね。
     どうも21世紀は、そういうのが付きまとってくる面があると思いますが、それをどうやって上手にカバーをしていくかというのは、私はむしろnpoよりも企業の方にこそ、余りそんなあざといリストラをせずに、きちんとやってもらいたいという気持ちは強いです。
     npoは、場合によっては、安定した雇用の場所よりも、自分の夢を追いかける場所でもあり、そういうことも少し考えておいてもいいんじゃないかなと思いますので、なかなか難しいところだと思います。
     ちょっと、余り簡単に企業が人を切れるような形にしていくのはいかがなものかと思いますね、むしろそこを考えた方がいいんじゃないかと思います。
    大澤会長
    ほかにいかがでしょうか。だんだん時間が残り少なくなってまいりました。
    広岡教授
    早く時間が経ってほしいと思っていますけれども。
    大澤会長
    いいですか、高尾さん。
    高尾委員
    今の先生のお考えは、npoがある時期はまた小さくなってもいいとか、そういうことではないですね。
    広岡教授
    そうではないんですけれども、例えばこうなんですよ。ドメスティック・バイオレンスに関して、わっとお金が出てくる時期がアメリカなんかであって、それがすっとお金が出なくなったりとか、そういうのが国の政策だけではなくて、助成団体の財団の、日本でいうと、日本財団とか、ああいう助成金を出す団体がありますけれども、やはり世の中の流れを見るものだから、ふくらんだり、縮んだりするんですよ。その都度、今度は申請する側が知恵を絞ると、こんな闘いになるわけです。
    高尾委員
    非事業系で起こりやすいことですね。
    広岡教授
    日本の定義で言うと、非事業系ですね。でも、実際に事業をアメリカではやっているわけですね。100 万の団体があるわけですから、日本はまだ1万2,000 ですけれども、それなりに全部経営的には成り立っているわけですし。
    高尾委員
    いずれにしても、まだまだ本当に小さい分野で、これはやはりある程度大きくなってくることが、営利企業だけで暮らしにくい日本を変えていくという部分が本当にあると思うし、小回りの利くところでやっているところの視点というのは、やはり営利企業を変えていく部分もあるし、今までもそうやってきたと思うんですね。だから、何とか残ってほしいし、やりようによっては残っていくだろうし。私はnpo全体のことをよく知らないんですが、ワーカーズ・コレクティブについては、ちょっと知っているんですが、ここは非常に、一度つくってしまうとつぶれないということで有名ですね。ベンチャーなんかが、大体5年経つと5分の1ぐらいに減っているなんていうのと比べて残っていると。
     そういうふうなところが、やはり成長していくべきだし、さっきおっしゃったように、リビング・ウェージということですか、自分一人と、子共一人を十分養っていけるだけの給料を取れるようにしなければいけないと。
     ここのところ聞いた話では、今度、年金の改正で、65万円以上だと加入しなければいけないという話があって、このワーカーズの方々は非常に困っていらっしゃるんですね。
    大澤会長
    65万円というのは、ちなみに撤回というか。
    高尾委員
    通らないんですか。
    大澤会長
    はい、労働時間だけということになりまして。実は、ここで時間が来てしまいましたので、その話は、ちょっと後で引き取らせていただいて、とにかく広岡さん、本当にお忙しい中、御説明いただきまして、どうもありがとうございました。
     ちょっと、今後の予定も含めてなんですけれども、まず1つは、今回の調査会のとりまとめのタイムリミットですが、当初は今年度中ということを目指していたんですけれども、審議事項が多岐にわたるので、今年度中に一旦論点整理を行った上で、来年6月を目途に最終報告をするというようなことではどうか。
     それから、今の年金制度の改正なんですけれども、厚生労働省の案が昨日、経済財政諮問会議で議論されまして、ニュース等でごらんになった方も多いかと思いまして、それに関しまして、資料をお配りしています。
     論点としては、夫婦間の年金分割と、第3号被保険者制度の見直しで、部会の意見では3案が併記されていたんですけれども、その中の第1、夫婦間の年金分割ということで、厚生労働省の方では案を絞りました。
     それから、厚生年金のパート労働者への適用拡大なんですけれども、年収基準と労働時間基準で議論をしてまいりましたが、年収の方はともかく、週の労働時間、従来、30時間以上と言っていたのを20時間以上というところに適用を拡大してはどうかというのが、厚生労働省案になっております。
     これらの個別の論点は、我々の調査会、去年の12月に出しました、その提言の一部を取り入れたものでありまして、評価できると思っています。
     ただし、夫婦間の年金分割は、3号と2号の間だけということなので、これが離婚のときの年金分割は2号と2号の間でも分割できるというふうになっていますから、厚労省案としての整合性という点でもちょっと疑問な部分もあります。
     それから、全体を通じて注目すべきことなんですけれども、この図になっているポイントを見ますと、改正の基本的考え方として「1 社会経済と調和した持続可能な制度の構築と制度に対する信頼の確保」と「2 多様な生き方、働き方に対応し、より多くの者が能力を発揮できる社会につながる制度」というふうにあります。
     これは、年金部会の意見では、4つの基本的視点というふうになっていましたが、これを2つにまとめまして、「多様な働き方、生き方に対応して、より多くの者が能力を発揮できる社会につながる制度」という視点ですが、年金部会の意見の中では、「個人のライフコースに対して中立的な制度とする」という言葉で表現されていました。
     この「ライフコース」に、括弧書きで「(生涯にわたる生き方、働き方の選択)」と説明が入っていたんですけれども、今回、カタカナ語はどうかということで、「多様な生き方、働き方に対応し、より多くの者が能力を発揮できる」という表現に落ち着いたと思いますが、中身はライフスタイルの選択に対する中立性、ないしライフコースに対する中立性ということで、この原則というのも、この専門調査会でずっと審議してきて提言した大きな視点ですから、改正の基本的考え方の2番目には、それが取り上げられているということで評価できるのではないかというふうに思っているところです。
     次回の専門調査会は、12月17日水曜日の14時から第24回会合として開催する予定です。 では、事務局からの連絡事項等をお願いいたします。
    定塚参事官
    資料の方として、以前の第20回と第21回の議事録をお配りしております。こちらの方は見ていただければと思います。それから、第22回の議事録案、委員の方には配布しておりますので、12月1日までに御意見があれば、お知らせいただきたいと思います。次回は12月17日ですが、その次の次々回を1月26日の、少し遅いんですが、4時から6時ということで設定させていただく予定でございます。
     なお、次回の12月は、在宅労働者について、社会経済生産性本部の北浦さん、それからパートタイム労働について、委員の佐藤博樹先生からヒアリングをいたします。 1月につきましては、人事院から公務員制度についてヒアリングをすると同時に、橘木先生と、永瀬先生から、モデルケースワーキングチームの作業状況について中間報告をいただくという予定といたしております。
     以上です。
    大澤会長
    橘木さん、よろしくモデルケースワーキングチームの方を。
    坂橘木委員
    これは、人事院のヒアリングと同時だから、一人30分もないと、2人が発表しますからね。
    定塚参事官
    そうですね、大体公務員関係で、全体1時間ということですので、あと1時間のうちでと。
    坂橘木委員
    半分ずつですね、そういう理解で。
    大澤会長
    御発表いただく時間は、10分か15分ぐらいしか差し上げられないと思うんですが。
    坂橘木委員
    はい、結構です。
    大澤会長
    よろしくお願いいたします。
     よろしいでしょうか。それでは、これで第23回「影響調査専門調査会」を終わります。
     本日は、どうもありがとうございました。

(以上)