第21回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成15年7月4日(金) 13:00 ~15:00
  • 場所: 内閣府5階特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      浅地 委員
      大沢 委員
      岡澤 委員
      君和田委員
      木村 委員
      高尾 委員
      永瀬 委員
      八代 委員
  2. 議事
    • (1) 「正社員ルネッサンス 多様な雇用から多様な正社員へ」
        (報告者) 京都大学大学院経済学研究科教授 久本 憲夫
    • (2) オランダ、ノルウェーにおけるワークシェアリングの動向
        (報告者) 朝日新聞企画報道部記者 竹信 三恵子
    • (3) その他
  3. 議事内容
    大澤会長
    時間もまいりましたので、ただいまから「男女共同参画会議 影響調査専門調査会」第21回会合を開催いたします。
     では、お手元の議事次第に従って、本日の審議を進めてまいります。
     今日は、前回に引き続き、雇用システムについて有識者から説明を伺います。まず「正社員ルネッサンス 多様な雇用から多様な正社員へ」という題目で、京都大学大学院経済学研究科教授でいらっしゃる、久本憲夫さんから御説明をいただき、質疑応答・意見交換をしていただきます。
     その後、朝日新聞企画報道部記者の竹信三恵子さんから、「オランダ、ノルウェーにおけるワークシェアリングの動向」について御説明をいただいたのち、質疑応答・意見交換をしていただき、最後にもう一度御議論をいただきます。
     では、京都大学大学院経済学研究科教授の久本憲夫さんから御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
    久本京都大学大学院経済学研究科教授
    今日はお呼びいただきまして、本当にありがとうございます。時間は30分ということでお話させていただきたいと思います。
     正社員ルネッサンスということで、多様な雇用から多様な正社員へという副題を付けたわけですけれども、本当は「多様な雇用ではなくて、多様な正社員へ」と言いたかったというところもあるんですが、何となく語調が良くないのでこういう副題にしました。
     雇用形態の多様化というのは、私が言うまでもなく、皆さんよく御存じのことであって、いろいろな変化は勿論百も承知しているわけですけれども、むしろそれを前提とした上で、私たちがこれからどういう方向に雇用関係をつくっていくべきのかということを考えました。私は、やはり正社員というのはものすごく重要なんだということを強調したいのです。正社員に関しては、短時間正社員については議論が始まっているわけですけれども、どうしてもパートとの均等待遇というところに話が行きがちで、本体の正社員というところに行ってないという気がものすごくしております。
     私が言いたいことは、画一的な正社員像というのはもうだめだということです。それを変えることによって、つまり多様な正社員ということを認めることによって、今後の雇用というのは維持していくべきなんだということなんです。
     「おみおつけ」のようで「正社員」という言葉は好きではないのですが仕方がありません。もともと社員ということ自体がメンバーということでありますし、もとをたどれば職工という人たちがいて、職工の地位をもう少し上げようということで工員という言葉ができて、工員というのも差別的だというので、従業員であるとか、社員であるとかいう言葉になって、更に社員というのもだめで正社員というような形で、こういう言葉遊びのようなところがこの世界にはあって、それだけある意味では「身分」というものがいつも重要なファクターだったと思います。とりあえず正社員という言葉を使っていきます。
     企業の立場から言うと、正社員というのは高コストだと、解雇が難しいということがよくいわれます。とくに、現在企業の将来展望というものが縮小して、縮小均衡によって企業は生き残ろうとしておりますので、正社員を減らして非正社員、派遣労働、業務請負というのを増やすということだろうと思います。しかし、やはり企業価値の源泉というのは人材だと私は思っております。ものではなくてやはり人間が源泉である。
     したがって、人材を枯渇させるということが非常にリスキーだということを認識してもらいたいというふうに思います。勿論適切な人材配置というのはどうなのかというのは、当然議論があるところですけれども、それについてはまた後でお話したいと思います。
     それから、個人の観点から言うならば、やはり非正社員とかフリーランサーという形では、家族形成は困難だということです。1人元気であれば、そういった形で一生を送ることは可能でありますし、そういう人が別にいてはいけないという気はさらさらないんですが、しかしやはり次世代ということを考えますと、結婚して子どもを産み育てるということが非常に重要になってくる。その場合に、2人とも非正社員だ、2人ともフリーランサーだという生活は非常に不安定であるというふうに思うんです。現実そういう人もおられますけれども、非常に不安定だと、将来の展望というのが見通せないということで、子育てというのは非常に苦しいというのが実際ではないかと思います。
     時間は自由だという言い方があるかもしれませんけれども、2人とも非正社員というのは、かなりきついんじゃないかということです。まさしく雇用が不安定でありますし、賃金も現状では低いですし、それから私は強調したいんですが、能力開発という点でも、やはり正社員に比べると非正社員の能力開発というのは、企業も余り熱心ではありませんし、個人もどういうような職業生活を送れるかというところの不安があって、どうしても不十分になるだろうというふうに思うわけです。
     企業の立場、個人の立場ということでしたが、国の立場というのも恐らくあって、そこでも私は人材主義者ですので、日本の経済の主要な資源というのはやはり人材だと思っています。日本にはほかに資源はないと思いますので、こういった人材形成の仕組みをどんどん枯渇化させてしまうと、国際競争力に中長期的に響いてくるんじゃないかと。国民が貧困化するということだって、あり得ないことではないわけです。ほかに強みないわけですから、基本的に。
     こういう観点からも、正社員というものを1度正面からとらえ直すべきだというふうに思うわけです。
     2番目に移りますけれども「夫婦とも正社員の共稼ぎは不可能か」ということです。2つの議論が恐らくあるんだろうというふうに思っています。
     1つは、正社員は少数精鋭でなければいけなくて、家族などを振り向いてすぐに会社を休むような正社員というのは正社員の資格がないということで、そういったことは非正規やパートでもできるというような議論であります。
     他方では、夫婦とも働くためには、正社員の夫も残業もせずに、育児休業も自由に取るようなことが必要だと、ここの会議もそういう議論が多いんじゃないかと思うんですけれども、「現状を考えるとこれは空理空論のように思える」とややきつく書きましたけれども、恐らくこの2つの議論というのが、それぞれなされているという形で、言わばそれが交差していないという認識を持っています。
     これらの主張を一致させようと思うと、どうしても夫婦とも非正社員やフリーターとか、派遣社員というような働き方になってしまうんだろうということです。これで本当に子育てできるんだろうかということです。それとも、いろいろ言っているけれども本音のところでは、正社員プラスパートを理想と思っているんではないかという気がしないでもない。そういうふうなことを真剣に正面から考えるべきじゃないかと思っています。
     正社員が画一的に理解されてないかということなんです。正社員が画一的に理解されていることは、ある意味では日本の場合には歴史的に労働運動の偉大な成果です。ホワイトカラーとブルーカラーの格差撤廃というすごいことがありました。昔はブルーカラーというのは、全然ホワイトカラーとは違う存在だと、身分が全く違うんだということで、階層格差というものが強烈に企業内にあったわけですけれども、労働運動がこれを撤廃させた。これは世界的にも稀有なことだと私は思いますが、そういうことをやったのです。
     これは、私は言わば労働者の能力開発であるとか、処遇であるとか、そういうことに関して非常に偉大な成果をもたらしたと思います。
     ただ、その場合に当然ですけれども、ホワイトカラー並みの処遇ということ、例えばホワイトカラー並みの異動であるとか、ホワイトカラー並みの仕事の受け取りというようなことに関して、例えばかつては事業所採用の社員というのは転勤なんか考えられないわけですが、工場採用と本社採用というのがあったわけですし、今でもあるわけですけれども、今では事業所採用であっても転勤ということが十分あり得るというような形になってきたんじゃないかと思っています。
     個人の立場からすると、正社員願望というのはやはり強い、いろいろ言いますけれどもやはり正社員になりたいという願望が非常に強くて、それは当然なことだろうと思います。腕に自信のある人ならば、そんなものには頼らなくても、自分の腕に頼ればいいわけですが、多くの人はそこまでの自信は持ってないと思います。できるだけの安定志向ということがあって、それはそれなりのものとしてくみ取っていかないといけないんじゃないかと思います。
     また、労働判例に関しては、皆さんよく御存じのように解雇権濫用の法理があり、解雇に対して、非常に厳しい規制をつくる一方で、その他に関しては非常に広範な経営権を認めてきたと思います。この間、解雇法制の改正案が可決されましたので、少し変わるかもしれませんけれども、いずれにしてもそのような問題ということがあるんだろうと。
     現状では転勤を拒否するとされても仕方がない。それから、残業を拒否したら解雇されても仕方がないというようなことが、日本の中ででき上がってきたということです。残業を拒否したら解雇されるというようなことになると、絶対残業は拒否できないわけで、2人ともそういう生活でどうして家族が成り立つんだというのが正直な感想であります。
     このようなことを考えた上で、2ページ目に移っていただきたいんですけれども、以上のことを前提として、画一的な正社員像というのを廃棄して、多様な正社員というのを考えなければいけないんじゃないかということです。正社員であれば、残業しなければいけない。正社員であれば転勤を受け入れなければいけないというようなことはもうやめていいんじゃないか。ただし、そういったものを全部受け入れる正社員がいても、私はいいと思います。日本企業の国際競争ということを考えると、やはり時間コストの非常に高い人たちがいて、これはワークシェアリングがなぜうまくいかないかというところにつながるんですけれども、1人の人がやると何倍にもなる仕事が、2人、3人に割ったら、全然何にもならないと、研究開発なんかでもそうですけれども、時間コスト、一刻も早く開発するということが決定的である仕事がある。その場合に、それをワークシェアリングで割りましょうといっても、それは企業は絶対に受け入れません。本人たちもそれを受け入れないと思います。そういう意味では、そのような人たちがいても私はいいと思っていて、むしろそういった人たちも非常に重要だと私は思います。
     しかし、あらゆる人がそういう働き方をしなければいけないというふうに言われる。つまり正社員であればみんなそういう働き方をしなければいけないというふうに言われると、私はそこには疑問符を付したいと思います。
     「既存の労働法判例を前提とすれば」と書きましたけれども、今の状況を前提とすれば、例えば企業内で考えられるとしたら、これはほかのところでも既に実施されていますし、議論も多くされているわけですけれども、例えば勤務地を限定するという話ですね。これは有名な話ですけれども、転勤がないということですね。
     それから、職種を限定する、特定な仕事だけ、自分のキャリアはこれでやる、この職種でやるんだと、だからほかの仕事にはしませんよというのをあらかじめ決めておくというようなこと、もしくは入った後でどこかの時点でそういう雇用契約を結び直してもいいわけですけれども、そのようなコースをつくって・・・、つまりキャリアというのは必ずしも1つの会社だけで完結するということが、かつてほど安定的ではなくて、かなり不安定になっている。不透明になっているということを考えれば、自分のキャリアを、この職種で私はやるんだと、ほかの仕事はしないんだというような形での社員というのはあってもいいだろうと。
     それから、労働時間限定社員です。ここでとりあえずは残業を拒否する社員、残業をしないことを前提とした社員というのは、従来であればちょっと古い、今もあると思いますけれども、例えば製造業の工場なんかで結構ありますけれども、準社員というふうに呼ばれる人たちは、フルタイム、1日8時間、週5日働くんですけれども、残業しなくていいということで、準社員という扱いで、これは正社員か正社員じゃないかというと、かなり微妙なところですけれども、そういうような人たちというのは現実にもずっといるわけです。けれども、現在の流れはそういった準社員というのを消してむしろパートというふうにしてしまうという動きになっているような気がしますし、現実企業の中では、正社員と準社員とパート社員というふうになっているようなケースもあります。
     いずれにしても、残業を前提としない、つまり残業は拒否できる正社員というものが当然あってもいいんじゃないかと思います。これはある意味で労働基準法の原則に戻ることであろうと思います。そういうことを考えればいいんじゃないか。
     それから、正社員が高コストであるという考えもやめるべきだというふうに思います。これはある意味で労働者側に厳しい指摘ということになるわけですけれども、大胆な処遇格差ということを容認すると。いろんな制限があると。制限というのは、その制限に応じた、それは企業が例えば8がけだとか6がけだとか半分だというようなことは、それは企業内の労使で話し合ってもらえればいいと思いますけれども、そのような格差というのを容認する。社員としての働き方に制限を付けているのだから、それはこれだけのコストに対応すると企業が明確にすればいいわけです。企業は、正社員を増やすと労務コストが高くなるといいます。なるほど実際、短期的にはそうだろうと私は思いますが、しかしこれに対しては基本的には成果主義で対応すればいいことであって、成果の上がっている人にはちゃんとした賃金を払ってやって、成果が上がってない人にはそれなりの賃金だということがちゃんとやれればすむことです。もし、企業がそれはできないというのであれば、それは成果主義にはできないと言っているにほかならなりません。できるのであれば私はいいんだろうと思います。もし、できないのであれば、なぜできないのかということを、やはり論ずべきだろうと思っているわけです。
     限定社員というところに関しては、例えばここでは時間限定に関しては、残業しないということしか言っていませんし、私の本の中でもそこしか言っていませんけれども、その後いろいろ考えてみると、例えば所定内労働時間は一律40時間である必要はなくて、所定内労働時間30時間の正社員であるとか、20時間の正社員をつくったって何の問題もないだろうと思っております。
     では、その場合の正社員というのは何かというふうに聞かれるので、なかなか私もよくわかってなくて、正社員というのは割と定義が揺れるんですけれども、やはり1つは期限の定めのなき雇用だろうということですね。有期ではない。それから、やはり給与は月給ないし年給だろうというふうに思います。やはり時間給当たりということになると非常に不安定性ですので、やはり月給制ということ、もしくは年俸、年給制ということが考えられるんじゃないかと思っています。
     そういう正社員があってはいけない。そういうのは正社員ではだめで、非正規でないとだめだというような発想を捨てるべきだというふうに思います。
     それから、まだお見えになってないですが、八代先生の私への書評の中で、解雇が問題だという話があるわけですけれども、解雇というのは企業業績が非常に悪くなって、どうしても人を切らなければいけないけれども、なかなか切れないということだろうと思います。なるほどかつての日本の労使関係ならば、解雇というのは非常に難しかったと思いますけれども、非常な不景気が続く中で、今、希望退職というのがかなり一般化している。つまり割増退職金を付けて、希望退職を募るということが、ほんの10年前だったら新聞トップを飾るような、ある会社が希望退職を募ったというと、新聞の一面に出るような記事でしたが、今は希望退職を募っても、どこか3面か4面の小さいところにぽこっと出るぐらいで、ほとんど注目もされないというふうになりました。この間、雇用を巡る企業内労使の関係というのは、大幅に変わってきたと思います。解雇というのは、もはやタブーではなくなっているということです。
     したがって、正社員だったら絶対解雇できないかということはなくて、特に中小企業だったら、今まででも例えば1か月分の給料を払ってさようならという議論はたくさんあったわけであって、現実にあるわけですけれども、正社員だから企業は解雇できないというようなことは恐らく議論としては成り立たないだろう。
     どうしても、企業が非常に厳しい状況になって、人を削減しなければいけないというようなことになったのであれば、今までの調査を見るとどうも平均すると年収の1年分ぐらいの割増しを出して辞めてもらうというような形になっているような気がします。ただ、これは本来の希望退職ですから、基本的には指名解雇に近いような場合にどう考えるかというようなことは考えられてもいいかもしれません。 ただ、この辺は非常にセンシティブな問題です。私が言いたいのは正社員を雇用すると解雇ができないというような時代ではもうなくなっているという、もしくは今後そういうことを前提とした上で議論をするということができるんじゃないかということです。
     勿論問題もあって、多様な正社員というのは、正社員類型を複雑にして、管理を難しくするということがあります。実際に、日本の企業は正社員にすると、かなり高い処遇を一律に、まさしく画一的な社員像に基づいて処遇をしていたがために、社員を雇うよりはいわゆる子会社分社だとか、関連会社とか、やたらとそういうものを使ったり、人件費削減だけの目的でアウトソーシングしたり、業務請負を使うというようなことをやってきたわけであって、そういう意味では、企業にも考え方を変えてもらいたいという主張になるわけです。
     しかし、こういった格差についていえば、戦後直後とは違って、現在の日本人は労働者の立場から容認するのではないか、そういう時期に来ているんじゃないかというふうに私は思っております。
     5番目の方にいきますけれども、そうするとどういうことが考えられるのかというと、なかなかいいアイデアがなくて、寂しい話で申し訳ないんですけれども、というのはやはり本はどちらかというと問題提起の本で、こういうふうな形で考えたらどうでしょう皆さんというようなことで、これで私が全部やりましたというような本では全然ありませんので、そういう意味では弱点はたくさんあるというのは自覚しているわけです。
     とはいえ、幾つかは考えられる。まず、ある意味では陳腐かもしれませんけれども、いわゆる残業の問題、これは皆さんよく言われていますけれども、私は残業割増率は上げる必要はないと思っていて、そうではなくて算定規準です。企業にとって一番重要なのは総額人件費であって、総額人件費をいかに減らすかです。もしくは1人当たり人件費をどうするかという話です。
     やはり残業もそのベースで考えるべきで、1人当たりの人件費をベースにして、その25%割増しということを考えるのが、企業にとっても一番真っ当なことだろうと思います。実際は、算定基準の1.7 倍ぐらい人件費かかっていますから、それを言うと残業手当が1.7 倍ぐらいになりますので、今の企業は恐らく総反対すると思いますし、やはり雇用というものを一番重要視している企業別組合というのもやはり反対すると。企業を守るためには、賃金カットも一種ですけれども、残業割増率を切り下げるというようなことをやっているのが現実で、だから個別の企業内でやるということ、これは非常に難しいと思いますけれども、まさしくこういう場にこそ国というものが登場して、言わば一律的にこうやるというようなことに意味があるんじゃないかと思っております。算定基準を抜本的に見直すべきだろうというのが、私の議論ということになります。
     それから、サービス残業の問題は非常に難しくて、私もどうしたらいいかわからないんですけれども、1つは労働基準行政にしっかりしてもらって、労働基準監督署をもう少し強化しないといけないんじゃないかと思います。人数が少な過ぎるというのが正直な感じです。ますます労働市場というものが、マーケットメカニズムというのが非常に強く前面に出てくる。私もそれは決して必ずしも悪いと思ってなくて、したがってマーケットメカニズム、労働市場というものをつくるには、そのルールに基づいて市場競争してもらわなければ困るわけです。ルールに違反するような、例えば残業でもそうですけれども、ルールに違反する人たちが、丸得するようなシステムをやっていてはいけないだろうと。やはり労働市場をうまく働かせるためには、つくったルールはきっちり守らせるという仕組みが必要であって、それは何もサービス残業に限らないわけですけれどもやはり事後的なチェック体制、今までは事前的に行政指導で抑えるというようなことで、事後的なチェックが非常に手薄というか少なかったと思います。しかし、今後は事後的なチェックをしっかりやるんだと、だからルールは必ず守らせるんだと、その上で競争するということはちゃんとするべきだと思います。 また同時に、やはり社内・社外の苦情処理制度の整備というのも必要になってくるだろうと思います。
     それから、これは恐らく八代先生が一番問題にされているところだと思うんですけれども、社会保険料の問題です。これも私もアイデアの段階で、お前どこまで詰めているんだと言われると全然知識がなくて、おしかりを受けて、むしろ勉強させていただきたいと思うんですけれども、社会保険料をやはり非正社員からもしっかり取るということだろうと思います。これはやはり完全に取るというのはなかなか難しくて、どうしても中小零細になると払わないというようなことになって、非常に難しい。正社員だとたくさんのコストがかかるのに対して、非正社員だとこういうのを払わなくていいからということで、そういった人たちばかり増やすというのは絶対いけなくて、そういうことはなくすべきだと思います。
     私は、単に中立的にするべきだということにとどまっていず、それより更に進んだ方がいいんじゃないかということを言っています。ここまで言う人は恐らくいないと思いますけれども、今まで言ってきたように私は正社員というのを非常に強調しているわけです。それはやはり人材育成ということもありますし、能力開発ということもあるし、やはり生活の安定というのもあります。それは夫婦で働き、2人とも共稼ぎでやる場合に、2人とも正社員で、かつ子どもを育てるということを考えても、やはりこういったシステムが必要だろうというふうに思っています。
     そうすると、正社員をちゃんと促進するような政策をとった方がいいということです。ここで恐らく非常にたたかれるだろうと思いながら、たたかれるために書こうと思ったので書いたんですが、例えば非正社員は割増しにすると。例えば、失業なんかでも非正社員の方が失業しやすいわけです、絶対に。そうすると、非正社員を雇うようなところからは割増保険料というのを考えてもいいわけです。だから、雇用が安定していない人たちに関しては高い保険料を取るとか。当然個人としては、それはたまったもんじゃないと、それを例えば使用者全額負担ということにする。また、時間当たり賃金がある一定以下のものに対しては、使用者全額負担だと、勿論中間をどうするかというのはありますけれども、そういうようなことを考えてしまうとか、どんないい考えがあるのか私にはよくわからないのですが、少なくとも非正社員を企業にとっては割高にして、正社員を雇った方がいいというようなシステムを考えることが必要なんじゃないかと。こういうことを言う人は、私が初めてなんじゃないかと何となく思っているんですけれども、そういうことを考えてもいいんじゃないかということです。
     ただ、この場合最大の問題というのは、偽装自営者対策であって、そうするとやはり従来から言われますけれども、こんなわずらわしい雇用関係ということはやめて、もう全部フリーランサーでやってしまおうということになってしまうということがものすごくあって、そのリスクが非常に大きいんです。この問題をどう解決していいのかというのが、私も全然わからなくて、そこはどうしたらいいかというのはいつも考えながら、ちっとも答えがでないというところです。ここで今日何かいい御示唆を得られたらというふうに思っております。
     時間がほとんどなくなりましたが、最後に「子育てできる生活環境をいかにして作るか」ということで、何よりも正社員の推進が必要、共稼ぎを推進しようと、でも全員共稼ぎでなければいけないとは全然思ってなくて、専業主婦の地位というのもちゃんとあるべきだと、つまり先ほど言いましたけれども、1人で2人分以上稼ぐ人がいていいわけであって、その場合にやはり100 %そこに注入する。子育てをもう一方の配偶者がやるということ自体、私は別に悪くないと思っていて、その辺また批判をいっぱい浴びそうだと思うんですが、やはり専業主婦のそれなりの役割、私はなぜ共働きという言葉を使わないかということもそういうことなんですけれども、専業主婦というのはいっぱい働いているわけです。家事労働をいっぱいしていますが、家事労働は最近小さいですが、やはり育児労働といいますが、子育て労働といいますか、非常にやりがいのある仕事ですけれども、やはりそういったことをたくさんやっているのであって、したがってそういった人たちをちゃんと認めてやっていいだろうと、問題はやはりそれが100 %女性になっているというのが問題で、やはり男がそういうことをやってもいいという、むしろそういう夫の方の専業主夫をもっと地位向上することが非常に重要で、これをどうやったらいいか、なかなかこれは難しい。ある意味では女性に家計責任を持たせる。つまり、今、言われているのは、男性に家庭責任を持てという話ばかりなんですけれども、今のような画一的な正社員にそれを言われてもそれは無理だと思っています。やはり女性も家計責任を持てというような話が当然対になってあってしかるべきであって、男は家計責任も家庭責任もというふうに言われると、やはりそれだったら女性もそうしてもらわないと困りますねという話に恐らくなるんだろうというふうに思います。
     それから、子育てする場合に、やはり実際を見ると三世代同居とか、今は近居の方が多いかもしれませんけれども、近くに住んでいるというようなことを推進するというのは、私は時代錯誤ではないと思います。嫁・姑の問題があるとか、家父長的だというような話がありますけれども、よほどお金持ちのところではそういったものがあるかもしれませんけれども、普通の庶民のところでは勿論いろんな意見の食い違いとかありますけれども、そういった助け合いというのは重要で、こういったことを推進するのはちっとも悪くないと思います。
     最後に、子育て世帯優遇措置ということだろうと思います。結婚したから配偶者手当を出すということは、もう全然関係ないというふうに思います。結婚優遇は必要ないと思いますが、子育て優遇が必要だということです。やはり子どもを育てる人に対して、すごく時間が取られますので、金銭的にもそうですけれども、時間的にもそうですけれども、やはり子育て優遇ということに走るべきだろうというのが私の考えです。
     現在よく言われているのは、保育所の充実ですけれども、施設保育というのもありますけれども、在宅保育というのも当然あって、(家庭で自分の子供を育てている。それは、)パートの主婦であるとか、専業主婦が担っているわけです。施設保育にお金を使うのであれば、(自分の子を育てる)在宅保育にもお金を出せというようなことになるんじゃないか。
     かつては、共稼ぎというのは恵まれない家庭であって、だから福祉であるわけですけれども、今、我々は例えば保育所というのは、福祉といいますか、社会福祉という意味での福祉ではなくて、よりジェネラルな標準的なタイプのものだというふうに考えて充実するべきだと思います。他方では在宅保育というのもあって、それに対する配慮というのも当然必要になってくるんだろうと。そうでないと、やはり不公平になるんだというふうに思っています。
     3分オーバーしましたが、これで私の話は終わりにします。
    大澤会長
    始まりも多少オーバーしていましたので、時間内にどうもありがとうございました。
     ただいまの御説明について、いろいろと御質問や御意見がおありだと思いますが、どうぞ御議論をお願いいたします。
    八代委員
    御意見がなければ、私からさせていただきますけれども、基本的におっしゃっていることは賛成でありまして、特に社会保険料を非正社員が負担してないことが常用代替の原因になっている。これはやはりやめるべきで、したがって社会保険料をかけるときの所得要件とか、労働時間要件を下げる方向でやっている。
     だから、問題はそれを超えて割増保険料を非正社員に課すということとか、そこがポイントになるわけで、そういうことを言っている人はほとんどないというふうにおっしゃったんですが、確かに具体的にこの社会保険料の割増ということを言っている人はほとんどないんですが、その思想はむしろ一般的であって、むしろ規制という形で、例えば派遣社員とか、派遣社員のいろんな対象職種であるとか、期間を制限することによってなるべく常用代替を防ごうという考え方はむしろ一般的でありまして、それが本当にいいかどうかということですね。
     最後に、本には書いてなかったと思うんですが、今、言われた中で、例えば非正社員を雇っている会社は、それだけ失業リスクが大きいんだから、ペナルティーを受けるべきだと、これは例えばアメリカの雇用保険料がそういう考え方になっていると思いまして、リストラというかレイオフをよくする会社の保険料が上がってくる。これは労災保険と同じような感じですが、それはいいと思うんですが、それをみなしみなしで、非正社員は一般的に失業リスクが高い、したがってそれを雇っている人は、結果的にその会社は別に非正社員が満足して働いて、別に大して失業リスクがなくても、横並びにペナルティーを受けてしまうと。しかも、それは雇用保険ではなくて、年金とか医療という余り関係ない社会保険料でそういうペナルティーを受けるということが、果たして雇用に対していいことかと。
     それから、人材育成でも雇用安定でも能力開発でも、それはまたいろんなやり方があるわけで、それを促進させようというなら、逆に直接優遇措置を取るなり、別なやり方があるわけで、正社員だからそういうさまざまなメリットがある、したがってそれを保護するというのは、余りにもポリシーアサイメントの上でやや直接結び付かないんじゃないかというのが第1点。
     それから、先ほどおっしゃった専業主婦は悪くないというのは、実は私でさえそう思っているわけで、私は専業主婦はステータスシンボルとして大いに結構であると。ただ、優遇措置を受ける必要は全然ないのではないかということで、これも先ほどの非正社員、正社員と同じて、中立でありさえすればいいんで、それから三世代同居も別にこれは促進する必要はないで、中立であればいいんじゃないかという、何ごとも中立主義ということではありませんけれども、そういう考え方に対してあえて中立じゃなくて、更にこの方向に誘導しなければいけないということですね。
     とりあえずそういうことで、大沢委員も何か言われると思うんですが。
    大沢委員
    今の八代委員のコメントを伺いながら考えていたのは、確かに市場に余り介入するのはよくないと思うんですが、ただ正社員の処遇そのものというのは、かなり市場の変動から守られて、解雇権もそうですし、賃金においてもやはり労使関係の中で市場のメカニズムから外れた形で長い間固定されてきたように思うんです。特に90年代の日本企業の変化を見ますと、そこでやはりもう少し市場のメカニズムが働いているべきであったと私は思うんですが、いろいろな実証研究を見ますとほとんど変動に対してショックを受けたのは非正社員であって、正社員はほとんどショックを受けてないという状態だったと思います。
     ですから、そのままで改革が難しいというのは、むしろ正社員の方がどう変わるかというのに私は注目しておりまして、そこにもう少し市場のメカニズムが働くようにならないと、先生がおっしゃるような大枠では非常に賛成をしているんですが、そこにむしろ議論して、本当に真剣に正社員って一体何だろうというところを考えないで、中途半端に議論をしてしまいますと、結局は社会保険料の負担を非正社員にもという話になって、そうすると企業側はそれを非正社員に転嫁するような、そういうメカニズムが働くと思うんです。最終的には、主張が受けられるよりは、むしろ非正社員がより柔軟化して、そして負担が二重構造をより極端にするという可能性がなきにしもあらずだと思いました。
     ポイントは、正社員の賃金制度とか、そういう中に市場のメカニズムがもう少し入らなければいけないと思うんですが、その点について先生の御見解をお聞きしたいと思いました。
    久本教授
    お答えできる範囲で幾つかお答えしたいと思います。八代先生の方からのお話は、いわゆる派遣の問題でも法的な規制という形だったと私は思うんです。私は、そういう法的にやってはいけないというようなことばかりやっては、全然だめだろうとむしろ思っていて、そういう意味でそれほど意見は違わないのかなという気はするんですけれども、例えばその場合に問題なのはやはり賃金水準という問題で、私が派遣の場合に思いましたのは、どの職種がいいとか、悪いとかいうのではなくて、例えば時間給3,000 円以上ならどんなものでも派遣はいいと、それは一定の水準、社会的な市場価値から見て高い、それだけのお金を払う仕事ですから、そういう仕事に関しては、派遣はいいじゃないかと。
     でも例えば、1,500 円未満のような派遣というのは、どうも違うと。だからそれは禁止するとか、それをどこにするのかわかりません。2,000 円にするのか、2,500 円にするのか知りませんけれども、つまりある賃金水準で、時間当たり幾らというところで縛って、これ以上高いのであれば自由にやれというようなことをやって、そんな低い低賃金でこき使うような、何か変な派遣というのは認めないというふうにすれば、ある意味ではそれは市場メカニズムで、高いお金をそんな単純作業に使えませんから、そうすると派遣というのは本当の派遣として生きると思うんですけれども、それをこの職種はいいとか、この職種はいかぬとか、どうしなければいけないとかいうから変なことになるのであって、私はそういうところで切れば、こういうのは非常にスムーズに解決すると思っているんです。 だから、それは規制論ではないかと言われると、私はそうではないというふうに考えているということを理解していただければというふうに思っています。
     それから、割増しという話で、これはフリーランサーの問題で私非常に苦しいところなんですけれども、これは大沢先生の話とも絡むんですけれども、ただそれを全部パートに押し付けられるんじゃないかというふうな形でやってしまうから、そうするとまたパートはかわいそうだと、またそこを控除して、やはりパートは控除して正社員から取りましょうという話になってしまうわけです。恐らく。
     だから、そうではなくて、しっかり取って、しっかりしたパートというのは、それなりに処遇してもらおうというのが基本的なスタンスです。ただ、今の経済状況からしますと、とにかく失業が増えて、非常に質の悪い雇用でも、とにかく臨時雇用でも何でもいいから雇用を拡大しないと、失業率がひどくなってどうしようもないと、ある意味緊急避難的なところがあって、本当は望ましくないけれども、そういう質の悪い雇用でも増大しようというのが今の政策だと思いますけれども、私はそれよりもここで言いたいのは、今の直近の話でなくて、中長期的に見てということを考えていますので、そうするとそういった安い仕事、質の悪い仕事というのはどんどんなくしていく、そういうようなやり方にするべきじゃないか。例えば超過負担というようなものに耐えられないような仕事はなくしてしまって、機械でやってもらった方がいいというような、基本的にはそういう発想です。そういうふうに考えております。
     もう一点、市場の変動に関してなんですが、私は正社員がそんなに市場の変動から守られているとは思いません。一部の大企業、優良企業はそうだと思いますけれども、多くの中小企業のところで、やはりかなり賃金カットであるとか、人員削減というのが行われていて、ボーナスもないですし、例えば中小の正社員がそんなに市場から独立していると、普通企業はそんな体力もありませんし、そうすると私はそれほど市場の変動に強く守られているというふうには思っていません。その辺に見解の違いがあると思うんですけれども、そういうふうに考えているということです。
     では市場に任せたらいいのかということは、ある意味では正社員を廃止して総パートタイマー化、日本の労働者は全部パートタイマーで、有期雇用で、明日首になってもいいというシステムが、極端に話しますけれども、一番いいのかということを考えると、我々は人間ですから生活をしていかなければいけないし、中長期的な展望を持っていかなければいけない。その展望は、現実の市場社会の中で恐らく揺ぎますし、裏切られますけれども、しかし少なくともそういった展望を持って生活しないと、子育てなんて絶対できないわけです。
     だから、そういう一定の保護システムといいますか、市場の非常に動くところから、ある意味ではなだらかにならすような、ならして、5年ぐらい経ったら結局はそこになってしまうんだけれども、ならすようなシステムみたいなものをむしろ考えた方がよくて、市場にすぐに反応するような人たちをつくるというのに対しては、私は反対したいというふうに思っています。
    大沢委員
    私は、同じように、ですからむしろ先生がおっしゃるように、2つの間に差を設けることがよくないと思うわけです。保護があるんだったら、それは雇用保護というのは、非正社員にも同じように適用されるべきだと思うし、結局は最終的に社員というのは常用的に、いつもある仕事に就いている人は社員、そうじゃない臨時的な者は臨時社員という以外は、別に身分を分ける必要はないというふうに思うんですが、でもそういう仕組みをつくるときに、何が問題になっていくんだろうかと考えたときに、やはり現実問題として、一方で労使関係の仕組みがあって、組合があって、賃金というのが賃金テーブルとか、そういうものによって守られているセクターと、それからそういうものが全くない市場のメカニズムだけで動いているセクターがあるんじゃないかということですね。それをどうしていったらいいのかということを考えなければいけないというふうに思います。 ちょっと論点が整理できなくて、ごめんなさい。
    大澤会長
    ほかにいかがでしょうか。
    君和田委員
    正社員を増やすことが本当にいいことかどうか、正社員のキャパシティーというのはあるんだろうと思うんです。どれが適正かというのは、なかなか議論のあるところで、ただこれだけ非正社員に仕事のシェアが増えたということは、逆に言うと企業が正社員の能力開発に失敗した、あるいは能力開発を試みたけれども、それがうまくいかなかったと、相手が反応しなかったと、そうしたらうちの社員で高い給料をやる必要がないんじゃないかということであって、企業の能力開発の限界というか、この辺が1つ、また能力開発がさほど求められない職種でも一律採用する採用のしくみがあったのですはないか。ただ正社員を増やしていけばいいということなると、非正社員を採りにくい仕組みをつくって増やしても、結局今とまた同じようなことが繰り返されて、別の抜け道というか、別の対処法が出てくるんだと思うんです。
     ですから、正社員をどういうふうに、ここに少数精鋭とありますね。最終的にそっちへ向かわらざるを得ないけれども、これが一番能力開発ができる限度がこの辺だという部分があるんだと思うんです。これが1つと。
     それから、先ほど大沢先生の方からおっしゃられましたけれども、やはり組合の問題をどういうふうにクリアーするか、先ほど正社員の多様な正社員で勤務地限定、職種限定、労働時間限定という3つの例を挙げてらっしゃいますけれども、勤務地限定と職種限定はもう既に相当行われているんだと思うんです。ですから、あと時間の方で、時間の方もこれは残業しないということになっていますけれども、例えば一時期の自動車メーカーなんかは逆に残業できないという逆の事態もあるわけです。
    久本教授
    できないと申しますと、どういう。
    君和田委員
    もう生産台数を絞るから、ラインを閉鎖するとか、それでみんなでワークシェアリングするというようなこともあるので、最後問題があるとすれば、この労働時間のところだけというと変ですけれども、ほかのところは採用のところからもう職種を分けてやっていますし、これが正社員の多様化にどこまで結び付いていくのか、それに労働組合がどのような位置づけになるのか。
    久本教授
    これは企業によっていろいろ違うんだと思いますけれども、非常に組合の強いところではそういう問題が恐らくかなり発生するというふうには思いますけれども、私は普通言われている成果主義というものをちゃんと企業がやれるかどうかということだろうと思います。 成果主義ということがちゃんとやれれば、恐らく問題はないんじゃないかと思っています。
     結局、企業は成果主義はやれませんということであれば、これはまたこれで考える話ですけれども、それは企業の方にむしろボールを投げたいと思っているんですが、我々は成果主義は無理だと、だから絶対無理なんだというのであれば、そういう話を中心にある意味では議論をするということは重要だと思いますけれども、どうも少なくとも表の議論では成果主義だ、成果主義だという話しか聞こえてなくて、企業の方は成果主義をやりますよと。だから、私はやってくださいと言っているので、ちゃんとやってくださいよと。それだったら、正社員だから給料が高いなんていうことはあり得ないでしょうというのが、あるいは意味ではロジックということに、私のロジックとしてはなっています。
     だから、成果主義は企業は無理なんですと、口先だけでは言うけれども無理なんですと、成果主義なんかあり得ないんですということであれば、企業は存続しようと思ったら成果主義は不可能だということから議論を立てるというのはあり得ると思いますけれども、少なくともここの立論では成果主義は企業はやるだろうということで立論している。将来の話ですので、多様な正社員というのは、今たくさんあるというふうに言われましたけれども、やはりちゃんとやっているかと言われると、もっと差を付けていいんじゃないかという気がいろいろなところでありますので、むしろ皆さんで議論してほしいということなんですけれども。
    大澤会長
    経営者の方はいかがでしょうか。
    久本教授
    正社員だからお金がかかるというのは、おかしいというふうに書いたんですが、そういう意味です。
    浅地委員
    結果として右肩上がりで、終身雇用のようなことがあったかというと、結果としてそういう成果が出てきて、これがこの10年で崩れてきていて、だけど気持ちの上ではそうしたいというふうに、経営者というのは何となくそうなっていたと思うんですが、今のこういう状況が数年続いた後では、やはり正規社員であれ何であれ、定年までその人を抱え切れるかという問題が一番だろうというふうに思って、その経営者の不安というものは、社員の不安にもつながっていくんだろうと、要するに変化のスピードが前よりずっと早くなったと。
     だから、例えばいろんなものの場面では、今までコストに利益を上げて売値にしていましたが、今は売値が先に、a社が100 だから、b社が売り出すときは90だというふうにすると、それを割っていくと払える人件費はこうなるというような格好も成果だというふうに言われますと、これは下がる一方ということに。
     ですから、そこでいろんな問題、例えば残業の問題というのも、前は生産性の問題だったと思うんです。なかなか上がらないからとか、ところが今は会社側がやはり雇用の人数を減らそうという形で、しかし残業代の方が安いという格好がもう歴然としていると思うんです。
     ですから、結局詰めていきますと、契約が期間の定めのない契約が契約なんだろうかとある意味では思うんですが、長いこと労働の面に立ち会っています。ですから、有期雇用契約というのはなかなか含意があるように聞いていますか、新規に採用する会社というのはみんな募集するわけです。ですから、そこ辺のところから有期雇用のように雇っていきたいと思う人、あるいはうまくいってほしいと思ったけれども、結局だめになってしまってというようなことがいろいろございますから、こちらの会議ではやはり移りやすく、いやすいとでもいいますか、そこら辺のところを、それにどういう体系がいいかということができればいいなと思っています。
     長くなりますが、私、ビル管理でお掃除のパートタイマーというときに、年齢も関係なく、すべて正社員ということで私どもの会社は始まりました。しかし、保険も入る、何々もということで、保健所の方から連絡があって、半人前の時間で一人前に病気になるだとか、歴史的にもですね。だから入れないとか。
     それから、長くいますと、定期昇級のようなものはないのですかとか、ボーナスはないのかという、結局普通の会社に数年を経ずしてなったという記憶がございます。参考になるかどうかわかりませんが。結局マーケットに従っているんだろうと思います。
    大澤会長
    そろそろ時間でございますが、これだけはというようなことはございますか。 私、久本さんとは学会も同じで、比較的どういうことを考えたり書いたりしているかというのは、知り会っている仲なんですが、にもかかわらず男女共同参画というと専業主婦の存在を否定してかかるというふうに思われていたというのは、ちょっと不思議な発見でございましたけれども、すべては八代委員がおっしゃったことに集約されていまして、中立であるということが大事というのが、この専門調査会、それから私個人としても立場でございますけれども。
     今日のお話の中で、処遇格差を容認するという言葉が、レジュメにも2度ほど出てまいりまして、この専門調査会では働きに見合った処遇ということを1つポイントにしておりますので、ですから働いた人はそれに見合って報酬を得るし、働きが悪い人というのは低くなるという意味では、働きに見合った格差というのは当然であるというふうに考えております。
     ただ、ライフコースアプローチとでも言うのでしょうか、そういうことを取ることも必要だというふうに、その後考えるようになっていまして、つまりある人がある時期非正規である、あるいは派遣であるということは何ら問題はないんですけれども、それがライフコースを通しで固定をしてしまう。
     それから、懸念されるのは、ライフコースだけではなくて世代的に再生産されていく、現在フリーターのことがさまざま議論になっておりますけれども、若いフリーターの方を見ますと、親の世代も非正規や不安定な雇用に就いている場合が多い。それがまた学歴ということともリンクしていると。
     このような非正規が固定され、世代的に再生産されていくということは、人材の固定的なディバイドになりますし、格差がはなはだしくなれば、それは社会の人並みのというか、中間的な暮らしぶりというのから排除される層がたくさん出てきて固定されてしまうとうことが、社会的なコストにもつながるので、それは避けなければいけないというふうに思っています。ですから、ライフコースの一時期非正規、あるいは派遣、それから試し雇用期間のようなことというのはあり得るんだけれども、それが一時期であって安定したもの、あるいはもう少し報酬の高い仕事に移っていけるようになる。それから、幾つかトラックが分かれて、多様な正社員になったときに、本人が望めば、そして会社側と一致すれば、コース転換ができるようになっている。このことが必要に大事なんではないかというふうに思っています。
     多様な正社員なんですけれども、結局はそれは正規、非正規という今までの二分法を超えることになるのかなというふうに思っておりまして、ですから処遇格差を容認するということの前に、やはり働きに見合ってパートの均等待遇というのも、ですから身分が違う、職種が違う、採用区分が違うから、同じ働きでも、処遇がというか、時間当たりの賃金が非常に格差があって当然なのかどうかというのは、もう少し考えるべきことだというふうに議論してきています。
     割増保険料の問題でございますが、今、年金の適用を従来の130 万から65 万に下げるという議論がされているんですけれども、これは単純に下げますと、標準報酬最低限というのが月額にして9万8,000 円ですから、それを下回ることになるので、それをみなし9万8,000 円にして、17.35 という保険料率をかければ、当然な割増しになってしまうわけです。ですから、標準報酬最低限を下げない限りは割増しになるという、あえて割増保険料を設けるまでもなく、標準報酬最低限との関係で割増しになってくる部分はあると思います。
     最大の難問は、偽装自営者対策なんですけれども、年金については、例えばスウェーデン型のようにすれば、自営業も同じように、その場合に事業主からの負担をどうするかですけれども、ペイロールタックスで総人件費なのか、あるいはもう総売上高のような外形でもってコントリビュートしていただくようにするのか、あるいはもう事業主負担は全くなしという提案をなさっている方もいらっしゃいます。それはそれで私はすっきりするんじゃないかというふうにも思っていますので、難問だがこれは成す手がないというふうな印象を持っています。
     どうもありがとうございました。
    久本教授
    どうもありがとうございました。
    大澤会長
    引き続いて、オランダ、ノルウェーにおけるワークシェアリングの動向について、朝日新聞社の企画報道部記者でいらっしゃる、竹信三恵子さんから御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。30分ほどでお願いいたします。
    竹信朝日新聞社企画報道部記者
    30分でこの話をするのは、ちょっときついものがありますけれども、私はオランダの専門家でもノルウェーの専門家でも全くございませんで、今は雇用チームの記者をしております。日本の雇用に非常に感心を持っているということです。
     でも、オランダには2回ぐらい取材に行って、ワークシェアリングの実情という本を書きましたので、多分そのことでお呼びいただいたのかなというふうに思っております。
     ノルウェーは、つい最近内閣府のシンポジウムがございまして、その準備のために2週間近く行っていたというだけなんです。ただし、新聞記者というのは一回やったら専門家面をすると言われておりまして、それで御容赦いただきたいということです。
     今のいろんなお話を伺っていて、やはり実際細かいものをどう学ぶかとなると、なかなかまねはできない部分がありますが、発想としてはかなり役に立つものがあるなというふうに私は思っています。といいますのは、オランダはパートの国と言われているんですけれども、ここははっきり言って常用雇用なんですね。正社員パートの国なんです。正社員と言っていることの意味は、日本のように拘束度が高く、会社の要求にかなり柔軟に応じられるという意味ではなく、仕事がある限りは常用雇用でいきますというのが基本的な路線なんで、短時間でも常用雇用があり得るということが日本の状況とかなり違っているところです。
     もう一つ、賃金の話がさっきございましたけれども、成果主義か年功序列賃金かと、こういうふうになるかもしれませんが、そういうふうな二項対立でもないんですね。勿論成果を見たりはしていますけれども、むしろここの実践で非常に重要なのは、仕事の量をどれだけ図れるか、つかめるか、つまり仕事の実態をどれだけ見ているかというとに関わってくるところが非常に参考になると思っています。
     では、本題に入りたいんですが、まず現状からいきます。なぜオランダがパートの国と言われてしまったかという現状から、資料で見たいと思います。私の用意しました資料の5ページ、オランダ-3と書いてあるグラフとかがいっぱい乗っているものがあります。ここでeu諸国におけるパートタイム比率というのがあります。ここで一番下がオランダなんですけれども、ごらんのようにほかの国々と比べても、ものすごくパート比率が多いというのがわかると思います。
     この場合のパートというのは、週36時間、少なく働いた人たちです。ですから、有期雇用とかいう意味では全くありません。オランダの場合、女性が7割近く、それから男性の場合で15%、私が行ったときには17%で、徐々に男性が増えているという状況でした。ですから、男女格差は非常にありますけれども、女性はほとんどパート、36時間よりも少なく働いているということなんです。これで見ると、オランダはパートのチャンピオンであると、御本人たちがおっしゃっている。男女合わせますと、4人に1人ぐらいがパートタイマーということになっております。
     なぜこれができたかということなんですけれども、その年表をちょっと見ていただけますでしょうか。3ページ「ワッセナー合意以降の法改正と法律の経過」というのがあるんですが、まずそのワッセナー合意以前の話をします。オランダは、注目させる以前は、オランダの奇跡と今は言われているんですが、そうなる以前はヨーロッパの病人というふうに言われておりました。非常に悪いパフォーマンスで、高失業率、それから財政赤字も凄まじく、国際競争力も非常に低いという状況が一時70年代ぐらいから80年代にかけてあったわけですね。これはどうしてなのか、60年代に北海に天然ガスが出ました。それでかなり潤って、賃金がそこの領海に引きずられて高騰するわけです。しかもオランダは世帯主義の国で、ほとんど専業主婦だったんです。そうしますと、お父さんの賃金が集めないといけないということで、1人でもって日本で言えば4人ぐらいの家族を養える賃金を与えていると。
     しかも、賃金はその天然ガスの景気に引きずられて上がっていきますから、ものすごい高賃金になってしまうんです。超高賃金でいくわけですけれども、やはり企業は雇い切れなくなって、首を切り始めたわけです。結構リストラが70年代から80年代にかけてありまして、首をどんどん切るんです。ところが、首が切れてしまう理由というのがあるんです。首切りに抵抗が非常に少なかったということです。なぜかというと、首を切られても食べられるシステムがあったんです。これが傷病保険の一種なんですけれども、病気になったらほぼ100 %、次の仕事がみつかるまでは保険が出るというものすごい仕組みがありまして、しかも簡単に認定が下りてしまうんです。5分ぐらい面接して、あなたは調子悪いですねとか、離婚してうつ病になりましたとかいって、ああうつですねと言って出てしまうわむですね。そうしますと、リストラのときに、経営者が何をやるかというと、こう見てそういう手当をもらえる資格がある人から肩たたきをするわけです。辞めても大丈夫だよね。向こうも辞めたくないんだけれども、でも食べられるからみんなに悪いし辞めようかといって辞めてしまうわけです。そうすると、どんどん失業者が増えると、みんなその商業保険で食べていくわけですから、財政赤字になるのは当たり前という状況です。
     そういうふうなところで、何とかしなければというのが、ここにあるワッセナー合意というものなんです。それはもうこれ以上、日本で言う春闘のような賃上げをしますね、賃上げをして賃金が上がっても、結局さっき言った保険料が保険でもらうお金というものと、賃金とが連動しておりますので、結局どんどんそっちが上がってしまうわけです。働いてない人がもらうものが上がっていくわけですから、そうすると保険料と税金がそのために上がっていくわけです。ですから、手取りが増えないわけです。幾ら賃上げしたって、逆に減ってしまうぐらい。しかも、賃金が上がれば上がるほど、経営者は首を切りたがりますので、そうすると失業率が増えて、失業手当の方も増えていきますし、全然いいことがないということが労働者側もわかって、それでは日本でいうベアー、賃金のスライド制のように上がっていくのはやめましょうということを合意するわけです。ただ、そのときに単純に私たちだけが痛みを被りましょうと言ったわけでは全くありませんで、その代わり経営者は自分たちがそういった賃金抑制にオーケーしたら、経営者は雇用を増やしてくれというふうに要求します。経営者はわかりましたと、ではそれでもって賃金が抑制されているんだったら、自分たちはなるべくいろんな方法を雇用を増やすから余り首は切れないように努力をしますと、これはワークシェアリングですね。それで更に国に対しては、それでもしさっき言った保険料とか、失業手当の分の財源が改善されたら、それは働く側に返すということです。そうしますと、実は手取りがうまくいけば増えますね。ということを国もわかりましたやりますということで、三者痛み分けの形で合意をしたわけです。それがワッセナー合意なんです。
     その結果、ここに失業率とありますけれども、ずっと上がって、83年が11.3%だったのが、98年に4.2 %と下がっています。それが、その過程でまず女性がお父さんは賃金抑制をされるんだったら、自分たちも働きたいといい始めるわけです。
     これはさっき言いましたように専業主婦の社会でしたから、女性が働きたいと言い始めたときに、保育園がほとんどないんですね。非常に条件悪いです。ここに行くと皆さん自信付けると思いますが、日本の方がはるかにいいと言っていい状況だと思います。というのは、学校なんかも専業主婦が当たり前だから給食がないんです。だから、午前中に帰ってきてしまうんです。お母さんはうちにいて御飯を食べさせなければいけないから働きに行けないんです。そういう状況があって、でも財政が悪いですから、そんなに簡単にどんどん保育園を増やせません。でも増やさなければいけないからゆっくり増やしますと。だけど、その期間パートで短時間働く、子どもを見ながら働けるように、パートは不利な目に遭わないような均等待遇をやりましょうという、こういうふうなことを政府が約束するわけです。
     そういう形で、例えば週3日、それは業態によっても違うんですけれども、1週間にフルタイマーの半分ぐらいしか働かないというケースでも、同じお仕事だったら同じ時間給、その代わり半分の時間ですから半分になるわけです。
     それから、社会保険とかいろんな安全ネット系のものがありますが、これも時間比例でちゃんと出しますと、だから働いてくださいということで女性が働きに行き始めるわけです。そうしますと、日本の場合だとパートの時給って非常に低いですね。同じ仕事かどうかという問題はあると思いますが、同じ女性同士でも6割で、今の正社員の女性で男性の6割ぐらいですから、女性のパートになると6かける6だから3~4割になってしまいますね。でも、これは一応均等待遇ですから、割とちゃんと働くとちゃんとお金が来るわけです。短い時間でも。それで、男性は賃金抑制で仮に1.0 働くとすると、女性は子どもを抱えたり、そういう中で半分働くとします、そうすると1.5 お金が入ってくるわけです。その結果、夫は賃金抑制しているのに、可処分所得は増えた。結構使うようになってくるわけです。消費が活性化したために、消費が増えて経済が活性化すると。その結果、雇用のパイが増えるという高循環に入りまして、それで復活したというのがオランダの奇跡なんです。
     これは、97年か、クリントン大統領が絶賛したことから大変注目されて、oecdも絶賛しました。それでみんな注目して見に行くようになったので、日本からもどんどん見に行くようになったというのが、今に至っているわけです。
     ここのポイントは、お金を使うようになったということ自体は、有期雇用じゃないので、だから安心して結構使えるわけです。
     それと、ではずっと終身雇用のように働かせられるのかと、そんなの硬直的じゃないかと思われるかもしれませんが、ここは有期雇用って割に少ないんですね。仕事がある限りは、そこまでは仕事はありますと。つまりなくなったらしようかないけれども、つぶれるとかですね、仕事があるんだったらずっと働いてもらえばいいじゃないですかというような発想法なんですね。だから、いわゆる日本型終身雇用とも違いますし、いわゆる有期雇用とも全く違うものだと思った方がいいと思います。それなのに労働権があると。だから、有期雇用は非常に短期限定なものしか認められていない社会なんです。
     それで、私が取材に行ったときには、日産の現地法人がありまして、そこで話を聞かせてもらったときに、うちにほとんど有期雇用はないですと。ただあるのは、今、ゴーンさんが会長になったので、パリに移転する企画があって、パリに移転してしまうと仕事がなくなりますね。そういう仕事に就いたときは有期雇用で雇っていますというふうな、そういうものが有期雇用なんです。それ以外のものは短時間労働でも無期雇用と言っていいようなものです。
     ですから、安心してお金が使えるのが経済活性化に大変有効であったということです。それから、やりがいが出てくる。
     例えば、どういうイメージかというと、経理のお仕事で、週3日とかあればいいですよというものもあるわけです。それに対しては、御本人が働くのは週3日でいいですというふうに言えば、ずっとその仕事があれば週3日働き続けるわけです。ですから、一種の正社員で、よく言われている短時間正社員なんですね。だから安定して働けると。しかも、保育園が足りなくて、ウェイティングの人がすごいんですけれども、その期間は保育園に預けたりしながら、自分でも見られると。
     今、一番増えているのが、週30時間台、これは先ほどの5ページのところですから、表2「週労働時間別にみた労働者(15-64歳)比率の変化」というのがあります。これで見ますと、男性はそんなに変わってないんです。でも女性は、90年代に12時間未満という非常に少ない労働時間だったものが、今は20~34時間ぐらいに増えています。ここが一番増えているんですね。男性も変化は緩いですけれども、長時間働く人たちからだんだん34時間前後ぐらいの人が増えてきています。これはどういうイメージかというと、週休3日なんです。週休3日で、どうやっているか。私が取材したあるカップルは、月、火、水、木、仮に妻が働くとします。それから、火、水、木、金、夫が働くとします。土日は週休2日で共通休みです。そうすると、子どもを見られる期間というのが、共通の休みの2日、土日と、それから金曜日と月曜日です。だから、4日間自宅で子どもを見られる、どっちかが。そうすると、保育園の整備の度合いも多少ゆっくりでも、もう40時間分整備しなくても、何とかなるじゃないかと。しかも、それぞれ週4日ぐらいだと、そんなに生活も困らない、均等待遇ですからということなんです。
     そういうふうな状況でやってきた。しかもそれは大変支持を受けていて、男性自身も自分はもうちょっと減らしたいとか、もう一つは子育てが終わってもまだ週4日働きにして、1日違うところの仕事をしたいとか、これは博物館の学芸員の人です。4日間あるところの、ライデン博物館の仕事をして、それ以外の1日が大英博物館とか、パリの美術館とか、そういうところの仕事で請負ってやると、そうするとライデン博物館では受けてもらえなかったような企画が、ほかの国では受けてもらえたりするので、すごく楽しいというわけです。だから、非常に自由な働き方になっていると。これが現状です。
     ただ、それで見た場合、多分経営者はそんなんでいいというのだろうかというな疑問が当然出てくると思います。まず、いろんな働き方の人を組み合わせなければいけませんから、かなり大変なのは事実ですね。あと短時間労働の数を増やしてしまうと、それこそ退職金とか、社会保険とか、どうするんだろうと、増えたら嫌じゃないですかとお思いになりますね。これについては、日本のことを知っいてる人の方がいいと思って、その日産の人にも聞いたんです。どうですかと。
     そうしましたら、余りこたえないですねとおっしゃるんですね。なぜかというと、退職金ってないんですとよ、まずこう言うんです。退職後は老齢年金が国から出ますので、みんなほぼ同じようなベースで、勿論2階建てとかいろいろありますけれども、そんなに会社に負担が強くないようで、退職金なんかはなくても大丈夫。
     それから、よく日本でも問題になっていると、交通費どうするんだろうとか、それは結構近いから要らないです。自転車通勤をしている人が結構多いから、余り関係ないですとか、そういう部分がかなり公的なところに移譲されているんです。だから、日本のような企業福祉が非常に厚くて、いい会社に入れたらいい思いができるが、ひどい会社に入ってしまうと何もないみたいなこととはかなり違っていて、そんなに高いベースではなくても、まあ生活していけるぐらいの、公的なベースでいろんなものが整備されているので、企業がそこまで手を突っ込んでやってあげる必要がない。だから、多少人数を増やしても、固定的な部分というのはそれほど増えないというふうな、そういう説明でした。
     ということなので、そうやって大きい枠組みを変えていけば、日本でも全く不可能ではないだろうと私は思っています。
     もう一つ、これは経営者の方に伺って、こんなにたくさん勝手に週休3日とかやられたら困るんじゃないですかという話をしましたらば、彼らが言うには、これは法律で決まっていまして、よほど大きい理由がなければ断わってはいけないという法律があるわけなんです。しかもつい最近は2002年に、パートタイマーは20%労働時間を増やせる権利があると。それから、フルタイムは20%減らせる権利があると。つまり全員でちょっとずつ調整していって、全員が均等に生活に役立つ働き方ができるという法律なんです。そのとき、経営者側はそれを受けたらば会社がつぶれたり、経営が維持できなくなるという立証をすれば、立証責任は経営者側にありますが、それをすれば断われるんです。だけど、何か面倒くさいなとか、そういうのは勿論だめなわけです。そういふうな形になっているということで、経営者側もそんなに困難を感じてないと。
     大体話し合いすれば適当に落としどころがあるんだというわけです。そんならお互いふっかけ合って対立し合うということは、順当な路線で話し合いをしていけば、何とかなるのが労使関係であるというのが、オランダの考え方でありまして、それで何ともありませんとおっしゃっていました。
     それから、多様な働き方って大変じゃないんですかと言いましたら、労務管理というのはそういうことのためにあるんでしょうというふうにおっしゃるわけです。みんな一律に朝8時から5時まで働いていた方がそれは楽ですよと。でも、いろんな働き方を上手に組み合わせることが、経営者または管理職の腕の見せどころであるというのが最近の発想になってきている。
     そうすると、必要なときに、しかも働く側が自分はこれだけでいいですという人と組み合わせるわけです。自分はもっと働きたいけど、たったのこれだけしか働けませんという人だと紛争になりますね。そうじゃなくて、私はだれだけでいいですという人をいかにうまく配置するか、その腕の見せどころが管理職の腕である。だから、これからはそういうことができる管理の専門家がどれだけ育つかによって、会社の業績が変わってくるでろうというふうに言っていました。
     これについては、モルフレンさんという、日本に長くいた新聞記者の人が国に帰って、一遍日本に来たんですね。そのときに聞いたら、いやひどいもんですよと彼は言うんです。なぜかというと、病院とか学校では、先生が帰ってしまったりいろいろするので困っていますとか、病院では手術をしようと思ったらもう時間だから帰ってしまったというひどい例があってと言うんです。
     でも、新聞記者って、私もそうなんですけれども、いつも一番悪い例だけを言うんです。それは確かに社会問題になりますから。
     彼はそう言うんです。それは多分まだそういうところの管理ノウハウがうまく確立されていない、そういう段階なんだろうと私は思ったんです。モルフレンさんというのは、まだオランダがああいう大転換をする前に極東の方の来ておられたので、お父さんが40時間働いていたころの人なんです。だから、戻ってびっくりしてしまったみたいで、何かこれはすごいなと思ってしまったみたいなんです。
     これは1つ言えば、1968年にオランダは大学生運動とか、そういうことがあって、国民的に意識が大転換した時期があるとおっしゃっています。それはフラワーチルドレンとか、人間は働くばっかりが能じゃないよみたいな、そういう意識革命が最も激変した社会だというふうに言われているんです。だから、割と、それこそペイドワークじゃないものについての価値が高いんです。機運として。だから、何もそんなにがつがつ全部お金にしなくたって、時間でくれたらいいじゃないですかという発想とか。うちに帰って家事やったりとか、塀を直したりとか、そういうことをするって結構いいじゃないかとか。そういう発想が割とその68年以降強まったということがある。だから、そういう豊かさみたいなものが多少わかってくれば、日本でもそういうニーズあると思うんです。
     それと多分、取引税とヨーロッパ割と高いですね。だから、家を直すときに職人を雇ったらものすごく高い、それプラス高いところに税金がどんと付いてくるんです。だったら自分でやった方が得だとか、無償労働のインセンティブが高い社会なんです。
     それから、隣の人にこっそりやってもらって、自分は代わりに違うことをやってあげると、労働交換するとか、そのためには時間があった方がいいんです。だから、そういう新しい経済効果のようなものもあって、これがオランダのこれを支えているということだと思います。
     あとはノルウェーにいきたいと思いますが、これは何しろ2週間しか行っていないので、こんなので話していいんだろうかとちょっと心配なんですが、オランダをベースにして考えさせていただきます。
     ここは、働く女性の4割が短時間労働。男性の1割ちょっとが短時間労働という社会ですから、オランダよりはそれほど短時間労働の普及率が高いわけではないです。これでいきますと、その場合女性が何で4割なのかといいますと、これはやはり女の人と男の人の仕事のセグリゲーションというか、ある意味では隔離がすごい社会なんです。大体女の人は教育福祉職が多くて、あと子どもの面倒をみるのが好きな人が結構多いんですね。だから、そんなにがつがつ働かなくてもいいというのがあるのと。
     もう一つ、私が思うのに、ここもやはりパートは有期雇用じゃないんですね、ただの短時間労働なんです。資料の8ページで、ノルウェー-2と書いてあるページがございますが、ここで見ますと右側のラインの一番上に「workig hours for men and women 2001」とありますね。これは男女の2001年の労働時間なんですけれども、パートタイムというのは、30~36時間というふうに書いてあって、一方でフルタイム32~36時間とちょっと被っています。これは業種によってフルタイムの労働時間が違うからです。だから、長く働くのが必要な業種では、例えば40時間だとすると、パートは40時間以降少なくなりますね。 それから、36時間でいいよと言っている業種だとする、32時間ぐらいと結構あるということです。これで見ていただきますと、男性は37~44時間が70%、女性は同じ時間が46%ですから、やはりこの辺が一番最頻値なんですね。ということで、日本のフルタイムとは勿論違う、労働時間は短いです。男女ともに。それで、有期雇用ではないですから、割と満足してというか、働き続けられるんですね、短時間雇用でも。だから、正社員に、フルタイム戻らないとまともな仕事が何もないよという状況ではないので、福祉とか教育をやって短時間労働でやっていてもハッピーという感じが割とあって、そうすると向上心とか、そんなに必死になってフルタイマーにならなくてもいいよという感じだと思います。だから、4割ぐらいで今までやっていると。
     ただ、ここは国の方が、それではよくないだろうと考えておりまして、非常に女性の政治家も多い、3割、4割当たり前という国ですから、立法府か政策の方から見ると、もっと女性にフルタイムとして働いてほしい、自分の能力を活用してほしいと思っているところです。
     そのために、いろんなことをやっていまして、ここにあるのは今、一番有名なのは、パパクォーター制ですね。女性が働き続けられる、しかもいい仕事で働き続けられるためには、父親に育児参加をしてもらわなければいけないということで、今、育児休業はノルウェーでは42週間で100%賃金保障で出まして、52週間休むと80%出るわけなんです。これについてうち1か月分は父が取らないと効果がなくなると、つまり取れなくなってしまうという仕組みを93年に入れているわけです。
     これが今、もともとノルウェーだってそんなに男性の参加は多くなくて、導入率は1%しかなかったと。今は8割に増えていまして、それから一部ですが夫がもっと取りたいと言い始めていると。私が取材した県では、会社の副社長の女の人で、これは自分が6か月、夫が6か月という、半分ずつ取るということです。
     あともう一つのケースでは、夫が3か月、妻が9か月というふうに、分割して取るというのがだんだん増えてきております。もっとたくさん取りたいということですね。
     これはある意味では、オランダもワークシェアとしてやっているわけではないんですが、家庭の中での男女のワークのシェアのような形になっておりまして、そこで女性が早く職場に戻れるということで、非常にいい制度だというふうに言われているわけです。
     これ以外に、94年からタイマーカウント制、時間講座制といっているんですが、こういうものを入れておりまして、これは休暇をためておくとかなり労働時間短縮なんかに柔軟に使えると、100種ぐらいスキームがあって、自分が一番いいものを使えるという非常に便利なシステムです。ですから、いわゆるワークシェアではありませんが、ものすごい柔軟労働なんです。フレックスタイムはほとんどの会社でやっておりますし、子どもがいる
     から1時間遅く出たいというのもオーケーというふうな仕組みです。
     でもそういうのをやると、例えば育児休業で、こんなに長く休まれたら困るだろうとお思いになる方もいらっしゃると思うんです。例えば、取締役で半年休まれたらどうするんだとか、そういうのありますね。それから、みんながこんなにばんばん取っていると、職場はどうなるんだろうとお思いになるのは当然あるので、私も聞いたんです。そうしましたら、かなり大変で業務がきつきつの場合は、違う部署から応援で、比較的暇なところから連れてきてやってもらう、それから多くの場合はみんなカバーしあうというんです。かなり大変で、2人も休まれると大変だというのはあるんだけれども、でも頑張ってカバーしますと。何でカバーするのと聞きましたら、みんな自分のところにそのうち来るからだと言うわけです。明日は我が身なので、我慢しがいがあると。それは日本とすごく大きい違いで、日本の場合取れる人ってやはり限られているというのが一般的な印象なんです。法律ではそうじゃないですけれども。そうすると、取れなかった人はずるいと思うわけです。そうすると、取った人にやっかみといいますか、何でこんな人のために私たちは我慢しなければいけないという投書がしょっちゅう来るわけです。それはやはり皆がいつかは自分のところに来るかも、やりたければできるんだというふうな確信が余りない、だから我慢して支えようという気持ちになれないということで、社会的連帯がない理由は、要するにみんなのところにこないからですね。一部のとても恵まれた人とか、たまたま上司がよかったとか、そういうところではできるけれども、上司が悪いともうだめとか、そういうふうな状況が日本の会社ではまだいっぱいあるわけです。
     それがなくて、みんな権利だから取れると、自営業でも少ないですけれども、育児休業のときの保障は65%出てしまうんです。だから、自営の人でも雇われている人への嫉妬が余りないんです。これをもっと上げたいといっているのが政府の今の方針で、同じにしたいという状況です。
     もう余り時間がありませんが、こういうふうな状況の2つの試みというものがちょっと考えますと、ある意味では精神的な安定度と効率的な運用という面から見ると、正社員パートは決してマイナスではないんではないかということが言えるのではないかということです。ただ、その場合には、いろんなシステムを総合的に変えていかないと、あちこちで歪みが出てしまうのは間違いないだろうと。だから、さっき言いましたように企業福祉を少し移換していくとか、いろんなもので固定的な部分を減らすとか、それから評価で言えば成果主義というよりは恐らく、だれがどういうお仕事をしているか、どの程度の量のものなのかという職務分掌が非常にしっかりしているということだと思います。
     ですから、成果を上げたかどうかで見ているというよりは、その分のお仕事が休まれてしまったら、ではどれだけ人の手当をすればいいんだということが、管理職の頭の中にかなりそこそこ入っていると。だから、割にやりくりがききやすいという労務管理があるかどうか、そのノウハウがあるかどうか。
     日本の場合は、これまですごく長い時間正社員だったら引っ張っておけるという頭がありましたから、その辺の労務管理が余り上手じゃないんですね。だから、日本のある会社で、フレックスタイムを導入したんです。そうしましたら、残業代が大幅にかさんでしまってやめてしまったという例があるんです。どうしてかというと、フレックスタイムってコアタイムがあって、いつからいつまでの時間管理をちゃんとしますね。だから、来たらタイムカードを押すわけです。帰るときも押すわけです。だから、時間がはっきりしたんです。それまでは全部サービス残業だったので、すごい長時間労働だったので、でも何とかなっていたわけです。ところが、それをやり始めたら全部カウントされて、非常に長い時間になってとてもできないからやめたというような、何か笑えないような、笑えるような話なんですが、それがやはり日本の労務管理の問題点だと思っているんです。
     それは逆に言えば、正社員というものを拘束度ではかり過ぎている。勿論ある程度の拘束は必要だと思いますけれども、何でも拘束できてしまう便利な、うちでの小槌みたいなものだと思われていますね。多分そこの発想を少し変えないとできないだろうということだと思います。それは変えた方がむしろ将来的に得になると思っています。
     もう一つが、女性が抱えている無償労働、勿論男性も抱えていますけれども、特に女性に偏っている無償の労働、育児とか、こういったものの再配分を社会的にしようという意識がないと、正社員パートをやる意味がないと思います。ニーズがないんです。
     男性ばっかり働いている社会で、専業主婦がいるという社会では、正社員パートのニーズはないと思います。うちに帰ればだれかやってくれているわけですから、お金を稼ぐためにめいいっぱいずっといればいいというような選び方をする人の方が多いわけです。だけど、全員がそういうことをしなければならない、しようかと思うと、ではお互いのメリットが出てきて、早く帰りたいよという人が出てきます。それはアメリカでもそうで、女性が働くようになってから、男性が早く帰るための労務管理ということを始めるようになっているんです。なぜ男性がというと、自分の妻が早く帰ってこないと、あなたなんか離婚よと言うからなんです。
     だけど、一方今の日本社会の主流の人って、まだ専業主婦の方まだ多いですから、そうすると早く帰ってこなければ離婚よという人も勿論いますが、お金を持ってこないと離婚よという人の方が多い可能性があるわけです。そうすると、ニーズとしては正社員パートなんてやられるぐらいだったら、たくさんお金をくれた方がいいやというところにいく人が多いわけじゃないですか。だから、やはりこの無償労働の社会的再配分が非常に重要ということですね。
     それから、労務管理はさっき言ったようなことですね。
     それから、パートを選べる仕組みと言っているんですが、一遍パートになってしまったら、もうずっとパートだよというようなことだと、やはり怖いからみんなパートになりたがらないわけです。だけど、正社員パートにして、しかも時間をあるときに延ばせるというような仕組みがちゃんとあれば、それは均等待遇があればできるんです。パートがすごく安い社会では、負担がまた大きくなってしまいますから戻せない、だから戻さないわけです。
     均等待遇を徐々にやっていけば、戻れる可能性が出てきますから、そうすると必要だったら自分はしばらく短期にしたいですと言えるわけです。今はそれができないということです。
     あとは、基本的に人間には安定雇用が必要だという認識がもうちょっと要ると思っているわけなんです。というのは、これはアルニオーレさんという、ノルウェーの男女平等局長が言っていたんですけれども、子どもを産んでもらおうと言いながら、不安定な1年で終わってしまう雇用を、どんどん増やしていったら、それは産まないよねと彼女が言うわけなんです。もし短期にするなら違う安全ネットを考えることが必要だと思います。それはいいと思うんです。だけど、それがないんだったらやはり安定雇用をすると、その代わり解雇のところで工夫が必要で、本当に仕事がないことを認定できるとか、この人に本当に瑕疵があったと、とても雇っていけない人なんだということをちゃんと認定できるとか、そういうことは非常に重要ですね。
     だから、日本はこれまで終身雇用をすごく長くやっていましたから、仕事があれば働けるという状態に慣れている社会だと思うんです。逆に言うと。だから、短期がいっぱい出てしまった場合、どうなるんだという不安感が割になくて、いいじゃないかといって今、増やしている段階かなと思うんです。
     オランダに戻りますと、安定化のための試みをいっぱいやっているんです。パートの国だと言われながら。3ページを見ていただきたいんですが、3ページのさっきの年表です。ここの99年のところで、労働市場の柔軟化と雇用安定法、これは抱き合わせでやっているわけです。これ割に面白いと思うんですが、有期雇用は4回更新、または3年継続の場合、無期契約に自動変更するということで、有期雇用はあることはあるけれども、実際本当に何回も更新している仕事なんだよねというのがわかったら、これはもう常用雇用にしてもいいんじゃないのということですね。
     オンコール、呼出し労働ですけれども、これは3か月同じ雇用者が働くともう従業員になってしまうと、しかもこれは非常に短いオンコールについては、1日3時間働いた者とするということで、最低限の歯止めを付けているんです。だから、もう使い勝手いいように使われて、全然稼げないものにはなってないんです。逆に言えば、そうやって少し延ばそうとしていると。
     それから、派遣労働ですが、これは契約26週以内の介護規制はまず廃止であると、それからそれ以上になると訓練もできるし、年金管理もしてもらえる。ここは75%が、派遣労働をやった後に正社員化しています。だから、ある意味では派遣と言っても訓練機関みたいなところなんです。そこの派遣会社に入りまして、一定の訓練を受けて、そこそこの会社に行って派遣労働をやっています。うまくできそうだなと思ったら、もう常用に変えてしまう。それは多分社会全体が常用の方が特なんだよねという意識がある社会なんだと思うんです。そういうスキームが多分あるんだと思うんです。
     だから、そういう形で全く日本と違う発想法でやっているので、そういうのもあるよねということの1つの参考としては、非常に面白いと私は思っています。
     5分過ぎましたけれども、済みません。ここで終わります。
    大澤会長
    ありがとうございました。ただいまの御説明について、御質問や御意見をお願いいたします。
     特に岡澤さん、スウェーデンが御専門ですので。
    岡澤会長代理
    大体北ヨーロッパというのは、オランダ含めてほぼ同じようなもので、大体スウェーデンの社民党が先鞭を切って、そしてそれぞれの国がそれぞれの国に合わせてやっていくという形が多いんですけれども、今、問題になっているのは、オランダでもノルウェーでもそうなんですけれども、在住外国人の労働と、そしてオランダ人、ノルウェー人との労働の格差の問題、これで特にオランダの場合とノルウェーの場合で決定的に違うのは、ノルウェーの場合はeuに入っておりませんので、またそれは独特の条件があるんです。
     オランダの場合には、euに入っているために、今度は逆に言うとデンマーク、フィンランド、スウェーデンと同じ悩みを今度は抱えるという、結局内部的な構造矛盾というものを内部で抱えてしまうのか、それともeuの圏外にいることによって、独自のシステムを採用していこうとしているのか、この辺が21世紀の北欧型のモデルの一番の悩みはここなんです。なぜかというと、賃金コストの安い、いわゆる南ヨーロッパからの労働力を受け入れれば労働コストは下げられる。それで企業の国際競争力は維持できるということは、もうみんながわかっている。もしくは、生産拠点を南ヨーロッパに移転すればいいこともわかっているけれども、それだと産業が空洞化して、福祉の財源が枯渇するという。そのバランスの中でオランダも北欧諸国すべてが今、悩んでいるわけです。
     特に日本の場合もそうだと思うんですけれども、結局は労働における二重構造の問題がどうしてもかなり顕在化しているんですが、それよりももう少し先にそれを経験したオランダとかノルウェーで、外国人労働力の二重構造の問題をどうクリアーしようとしているのか。
    竹信氏
    岡澤さんがいらっしゃるので余り今日は話したくないなと、それがすごく大きかったんですが、オランダの件については、ノルウェーは私は見てないんですが、最近随分増えてきたねという話は確かにノルウェーでも聞きました。オランダのケースは、行ったときにどうなのかと私も思ったんです。移民だけ雇用している会社というのを取材させてもらったことがあります。それは社長さんが移民のモロッコ人の女性なんです。彼女はすごくオランダでは今、脚光を浴びていて、いろんな賞をもらったりとか、女王様の晩餐会に呼ばれて褒められたりしている、時の人なんです。
     彼女は、なぜそういうことをつくったかというと、やはり二重構造があってひどいと、自分もそれこそお掃除会社に移民で来てお勤めしたわけなんですが、頑張って管理職になろうと思ったら、白人の男性に持っていかれてしまったと。それで腹が立ってこんな会社辞めてやるとか言っていたら、お得意様が確かにひどいと、君が会社をつくればみんなそっちに注文を出してあげるからつくりなさいと言われて、それで会社をつくってしまったんです。そこに来るのは本当に移民の人ばっかり雇うんです。
     だから、それは一種の流動化している移民層を結集しなおすという、労働組合とは違うパターンで安定化しようということだと思うんです。
     彼女がやっていることは、みんな言葉ができないし、やはり社会に合わないものだからすぐ休んでしまうんですって、だから休むのが心配だから、ほかの会社の人たちはどうせ移民は、日本の女性と一緒ですね、どうせ移民はすぐ辞めると、だから何もしなくていいと言って、適当に使ってしまう。
     だけど、彼女はそれはよくないと言って、まず来たら必ず訓練をがっちりやる。それから辞めるときには、どこかの学校に行って、グレードアップ、スキルアップするために辞めますというのか、もっといい転職先がありましたということ以外認めないというふうなポリシーをつくりまして、面談をしてあなたはもっと働きなさいと、もう少しここにいなさいと。そういうふうに説得をするというふうにやっています。
     そういうふうにしてやっていくと、いいことがやはりあって、仕事がすごく丁寧であるというふうに言われるようになった。それから、休みの時期にはみんなバカンス取ってしまいますね。だから、人手が足りなくてお掃除ができなくなるんだそうなんです。だから、みんな高いお金を出して派遣会社から人を雇うんですが、彼女のところはみんな感謝をしていて、昔の日本的経営のような一体感があるので、休みにも帰らないで、自分は少しずらしてあげるからいいですと言ってくれて、結構安いコストで、普通のコストでもって掃除に派遣できると。だから、非常にいい定評ができていて、そうやったかいがありましたと言っていました。
     だから、そういう形で、それは本当に1つの例なんですけれども、いろんな問題点をもう一回再結集して、クリアーして、ちゃんとした労働者にしていくという仕組みは出てきているということです。
    岡澤会長代理
    もう一つ、少子高齢化の進む過程の中で男女共同参画社会の問題を取り組むときには、必ず出てくる問題は、労働市場を解放して、外国人労働力を受け入れてどうするのかという問題と非常にパラレルに進むんです。そのときに、今、北欧諸国で、恐らく竹信さんのことだから取材されたと思うんですけれども、1つ問題になっているのは、移民労働力のカルチャーが、受け入れ国のカルチャーと違い過ぎて、男女共同参画の問題で非常に微妙な問題になっているのは、移民された国のもともとのカルチャーだったら、親が娘の結婚相手を決めるのが当然、そして子どもが若年結婚するのは当然というカルチャーから北欧にこられたと。
     ところが、今度こちらは、自分の結婚相手は本人が決めるのが当たり前で、そして結婚年齢は母国よりも少し高めだと。ところが、伝統的なカルチャーを重視したい親としてみれば、もう十幾つで娘の相手を決めたいという、そこで今、スウェーデンでいうとモナサリーンが非常に苦労して、男女共同参画社会をグローバリゼーションの中で考えていこうとするときに、この問題はどうしても避けて通れない問題として出てくるということで、スウェーデンではそれが一番の悩みなんです。
     いずれは、日本もこの問題で悩んでくると思うんですが、恐らく今、ノルウェーなんかも同じだと思うんですけれども。
    竹信氏
    それはオランダでもきっとたくさんあって、私はそこの現場は取材していなかったので、わからないところがあるんですけれども、移民の方に聞いたときにはすごくギャップがあると。彼女はイマームなんかの娘さんなので、非常に先進的な人だったんです。モロッコが嫌で出てきてしまったような人ですから、夫と一緒に出てきているんです。夫を説得するのがすごく大変だったと。夫は妻が働くのを嫌がるんです。家にいればいいじゃないかというふうに言うんです。君が働きに行くぐらいだったら、福祉社会だから俺が失業保険をもらった方がましだとか、そういうふうに言うのを一生懸命説得して、私が会社をつくるから、あなたを従業員にしてあげると、それで夫を働かせたんです。だから、彼女はその意味でもスターなんですね。1つのモデルなんですね。だから、多分そういう悩みがたくさんあるのはよくわかります。
    八代委員
    竹信さんに1つだけお聞きしたいのは、正社員の意味が、日本の正社員とオランダの正社員というのは、かなり違うんじゃないかと。つまり非正社員が違うようにですね。つまり雇用保障といっても、日本の大企業のようにとにかく過剰雇用を不況の間でも抱え込むんではなくて、1つのイメージでいうとアメリカのようにきっとレイオフして、レイオフのやり方を公平にすると。
     そうであれば、もともと正社員、非正社員の雇用保障の違いが、そんなにないからこそ全部正社員にできるんじゃないだろうかという基本的な質問なんですけれども。
    竹信氏
    それはある意味でおっしゃるとおりだと思います。というのは、さっき言いましたように、身分で社員を見るんではなくて、労働実態で評価するわけですね。そのノウハウの問題なんだと思うんです。ですから、正社員だからという線引きではないわけじゃないわけじゃないですか。そうすると、仕事があればということができる。だから、そういう意味では、次元が違う話といったらいいんでしょうか。平面上の話ではなくて立体上の話といったらいいんでしょうか。そういうことなんです。
     ただやはりそういうノウハウを確立していかないと、二重構造にしておくというのは、長い目で見たらやはり正当な働きを見れないわけですから、決してよくないですね。
    八代委員
    ですから、それは先ほどの久本さんの方の戻っていくんですけれども、日本の正社員はそのままにしておいて、非正社員を正社員にするのは解決にならないので、両方変えなければいけないと。ある意味で、さっき大沢さんが言われたように、日本の大企業の正社員は余りにも雇用保障がいき過ぎていて、それだけ逆に言えば非正社員の需要を必要以上に高めているという、その問題を両面から考えて、第3のというか、第3の道みたいなものでないと、ちょっと無理なのかなという感じがするんですけれども、感想だけですけれども。
    高尾委員
    今の続きのような話ですけれども、竹信さんも久本先生も触れておられたと思うんですが、今の、何でもいいんですけれども、短時間正社員、パート正社員、そういうものがどんどん増えていくためには、やはり今までの日本型の正社員の雇用が随分変わっていかなければならないんじゃないかと思うんです。
     だけど、いつもいろいろな統計を見て面白いなと思うのは、非常に男女共同参画社会型の考え方をしている女性たちで、短時間正社員を増やしていくことしかもう道はないという方々が、男性の、自分の夫の給料が下がるのは困るというふうに、そういう統計を見ると、何でそんな考え方をするんだろうという、さっき竹信さんのように。
     だから、オランダとか改革が進んできた中で、女性たちはそういうふうには言わなかったのか、その辺。あと日本で、結局今までの日本というのはやはり会社社会だったわけですね。家庭というものは全く顧られていなかった、プライベートな生活というのは、公があってこそプライベートはひっ付いてくるんだというか、全く下のものだったわけですね。そういう社会の中で、かつ女性自身が夫の給料が下がるのを嫌がっている中で、どういうふうな解決方法があるのかということを是非お伺いしたいと思うんですけれども。
    竹信氏
    オランダの件でいうと、そこはすごく面白いところなんです。1つは、賃金を下げたわけではなく、抑制であったということです。だから、横ばいだったということで、そんなに心理的抵抗が多分、下げたらちょっとはあったと思いますけれども、なかったということが1つです。
     あとは、女性の意識を変えるためにいろんなことをしているんです。例えば、それまでは控除、専業主婦控除のようなものですけれども、専業主婦のいる夫から控除をしてくれるわけですが、それを夫に控除が付かないようにしたんです。代わりに控除に相当するものを、経過措置としてだと思いますが、妻に口座をつくらせて、その口座に現金を払い込むとしたわけです。それは何がいいのかというと、まず夫がお前が働きに行くと控除がなくなるというふうなことが言えなくなったんです。
     だから、妻の就労に対する夫の側の抵抗がその意味では改革によって減った。しかも現金は妻の方に来るわけですから、損したとかいって夫は怒れないんです。何だ下がったとかと言えない仕組みになっているわけです。オランダは、そこは非常に巧妙でして、相手の面子をつぶさないようにしながら徐々に変えていくということを割としてしまうんです。そうすると、自分の個人口座が主婦はできるわけです。しかもパートの均等待遇でその気になれば短い仕事でもそんなに嫌な思いをしないであり得るわけですから、そうしたら人によってはちょっと働きに行ってその口座をもっと増やそうかと思う人も出てきますね。そのままでいい人は自分はそのまま使えればいいと。
     それから、さっき言ったように、主婦を大事にするわけではないが、無償の労働は大事にするんだというふうな、非常に微妙な言い方ですけれども、そういう社会なんです。だから、家事をやっているんだったら、その分いいじゃないかという合意が何となくある。だけど、それが夫に行くのはおかしいじゃないかと、妻がやっているんだったら妻の口座に入れなさいという大転換をしたんです。それは、つい最近知ったんですけれども、2000年のときに来年から実施って言っていたから、今どうなっているかわかりませんが、やってみましょうということでやってみているという段階です。
     それは、実はノルウェーもキャッシュベネフィットって入れているんです。何かというと、保育園に行けない、入れない、または入れたくないという親がいた場合には、保育園に行かない分のお金を払い込むという仕組みです。
     例えば、保育園を通常の半分しか利用しなかった人でも、半分来るんです。全く利用しなければフルで来るという仕組みなんです。これは中でも非常にコントラバイセンで、そんなことしたら妻が働きに行かなくなってしまうから、長い目で見たら経済的に自立ができなくなってしまうと、よくないんじゃないのという批判がかなりあって、大論議になったんです。ただ、それは始めた意図としては、まだ100%だれもが自分の気に入った保育園に行けるわけではない、かなり入っています。今、6割といったかな。それを8割にこれから上げるんだと言っていましたけれども、それまで過程がある今の現状では、やはり同じ親なんですから不公平があってはいけないんではないかと、だったその経過としてその分を現金支給するというのは合理的だという発想なんです。だから、それは妻にあげるのではなく、子育てに出しているだけなんです。
     でも、親は働きたがっていますので、そのお金を使ってベビーシッターを雇ったりとか、何かしてしまっているんで、別にそんなに家庭にいるわけではないという意見も随分ありました。だから、そういう意味で、ちょっとずつ変えているということですね。
    久本教授
    ちょっとだけよろしいですか、どうもここの会議のお話を伺っていると、大企業の話ばかりしているような気がしてならないんですが、日本はやはり膨大な中小企業があるということを忘れてはいけないのであって、いわゆるパートタイマーで働いているという場合、大体夫が中小企業だと妻はパートで働いて、それである面では大企業のいわゆる専業主婦と片稼ぎというような部分と同じようなライフスタイルを取るというのが現実だと思うんです。そうすると、解雇規制といっても、中小でそんなに守られているかというと私はやや疑問があって、結構首にするんです。だから、解雇権濫用で訴えるなんてものすごく大変なことですから、普通の人は辞めてしまいますね。
     今、法律が変わって、いわゆる解雇規制の法律になったわけで、私は期待しているんですけれども、ある意味では社会的に不公正なものは禁止するということで、社会的に公正とみなされればそれは当然よいということであって、そこをやはり整理すれば問題は解決するので、大企業だから雇用は守られていて、中小企業だと雇用の保障がないというようないびつなシステムを変えていくということが非常に重要だと私は思っています。
     それで正社員の意味ですが、私は中小を入れた意味での正社員なので、大企業だけの正社員の話をしているのではないということを理解していただきたいというふうに思います。安定雇用と先ほど言われましたけれども、やはりそれは両方、男も女も安定雇用が一番いいというふうに私は思っていまして、安定雇用主義者なものですから、だけどそうでないような仕事もたくさんありますし、本当であればそういう仕事は不安定だから賃金が高ければいいんです。そうすれば非常にフィットするんですけれども、必ずしもそうではなくて、不安定でかつ賃金が低いという話になるから問題になるわけです。
     何が言いたいかだんだん忘れてしまいましたけれども、それから夫の給与が下がるのは嫌と、私が仮に妻が働いて、妻の給料が下がるのは嫌ですかと言われれば、嫌というふうに答えますね。だから、むしろ設問の問題があるんだろうと思うんですが、もう一つはやはり家計責任というのは、男が持っているという、強固な意識を男は当然持っていますが、女性も持っているということですね。
    高尾委員
    女性の方が持っていると。
    久本教授
    ここが問題で、男だっていつでも家計責任をいつでも負わせられないということを言うべきじゃないかという気がします。そこを家計責任は男が全部持って、家庭責任も男が持てというのはやはりちょっと過酷で、性に関わりなく両方が持つんだということにするべきじゃないかと、私は思っています。だから、その辺を正面から議論した方がいいんじゃないかと思っています。
    竹信氏
    それを補足しますと、オランダのケースがなぜモデルになっているかというと、要するにパートの均等待遇やっているじゃないですか。今みたいに、こう言っては何ですけれども、女性の賃金がものすごく低い状況で、家計責任を持ちなさいよと幾ら言ったって、それは絶対うんとは言わないと思いますので、オランダからもし学ぶとしたら、そこのベースからやっていって大丈夫だよと、もうちょっと時間を延ばせばいいんだからと、今は短くてもいいから、家計責任を持つ人は延ばせばあなただって同じだけ稼げるよと、こういう仕組みですね。
    久本教授
    だから私が言いたいのは、つまり女性も家計責任を持つのだと、だからこんな賃金でやれますかという話ですね。そういう議論を一緒にやらないといけないんじゃないかと思うんです。
    浅地委員
    労働時間ということが言われていますが、労働時間って本当に真剣に言われているのはパートの世界だけみたいな気がするんですね。支払いも時間給とか、あと日給、週40時間とか、週休とか、月給とか、それに俗に言うボーナス、あるいは年俸、この払い方、ここのところの根っ子を時間給というものに整理しなければ、国としての生産性というものも比較できていかないんじゃないかと、コメントだけでございますが。だから、正社員の方がわかりにくい。だから、そこをはっきりさせていくことが均等待遇の場面でも、あらゆる場面で必要なスタンスだと思います。
    木村委員
    私は2点ほど、まず1点目はお二人に、正社員という定義をするときに、ここだけは絶対欠かすことができないんだという項目はどこかというところが1点目です。 それから、2点目は、竹信さんの方に、オランダについてですが、そういう正社員として短時間であろうと、フルタイムであろうと働いているというときに、例えば不況とかになった場合に、雇用調整をどうするのかということを伺います。フルタイムからパートに働き方を変えてもらうようなことをするのか、勿論賃金も動かすんでしょうけれども、そこら辺どうなっているのかということと。
     あとこの正社員以外に有期契約で、例えば給与も待遇も悪いという形態で働いているような人たちがオランダにいるのかどうか、その2点です。
    久本教授
    一番難しいところで、何を正社員と定義するかというのは非常に困難で、私も揺れていて、この本では基本的には定年までの継続雇用というのを前提とすると書きましたけれども、これは基本的に期限の定めのない雇用ということでありますし、退職金に関しては別に世界であるわけでもないし、つまり年金制度がない代わりに退職金があったわけですから、年金制度が整っていけば退職金なんか要らないんです。だから、退職金はそんな本質的な問題じゃないと思っています。
     ただ、1つは期間の定めのない雇用で、希望としては定年までの雇用継続です。
     それから、仕事内容からすると、やはりこれだけ、これだけという仕事ではなくて、やはりもう少し包括性というものを、日本の正社員という場合に、仕事の包括的な関係というのはあると思います。一々全部細かく決まったような仕事ではなくて、やはりある程度本人の裁量というものを求めるし、それに対する成果を求めるようなものが、やはり正社員の具体的内容だろうと私は思っています。
     それから、賃金に関しては、先ほど時間給でないと言われましたけれども、私は月給以上でないとだめだという主義で、やはり時間給というのは非常に不安定です。仕事があるときはよいですけれども、仕事がないとそのまま賃金が減るわけですね。したがって、月給という安定性を、私は担保したいと思っていますので、月給ないし年給という、月給以上というぐらいが今のところ差し当たっての、厳密ではありませんけれども、そういう感じで私は考えています。
    木村委員
    世界に共通なものというと、結局期間のない雇用というようにとらえてよろしいんですか。
     例えば、包括的な仕事というのは、これは日本のことですけれどもとコメントされおられましたね。
    久本教授
    そうですね。だから、世界的にどう言うかというと、これはまたすごくむつかしくて、国際比較をちゃんとしないとお答えできないのですが、時間給といっても今は実際には月給化しているのではないかとおもいます。私はドイツが専門なんですが、ドイツのブルーカラーというのは、なるほど時間給で賃金交渉をするんですが、ほとんど月給化しているのが実態です。だから現時点から言うと時間給での交渉というのは、やはり歴史の遺物だと思っていて、月給というのは入れたい、希望としては入れたいということです。
    竹信氏
    まず、正社員ですが、私も国際基準は全然わかりませんが、基本的には年金支給開始時を基準にして、仕事がある限り常用であるというような働き方というふうに考えればいいんじゃないかと思います。ただし、そのときにはいなくてはいけないとかいうものでは勿論ないんです。だから、安全ネットがしっかりしていれば、辞めたい人はどんどん異動ができるというのが、本当にオランダなどしょっちょう結構変わっているんです。自己保険も結構ありますし、だからそれはなぜそうなのかというと、1つは仕事が平準化していますから、転職をしても大丈夫だということがありますね。平準化というのは、つまり会社ごとに非常に特殊だということはそんなにないということ。
     あとはさっき言った傷病保険みたいなものですから、あれは最近さすがに70%に減額されていますけれども、そういう安全ネットが比較的しっかりしているので何とかなると、そういうふうな形のものを基本に、やはり基本はそこなのではないかと思っています。
     それから、月給の話ですけれども、オランダも時給で払っているわけじゃないんです。要するに、契約するときにフルタイムの人の月給がこれぐらいだとすると、契約時間で割るだけです。ですから、ちょっと休んだりしたから全部引きますみたいな話では全くなくて、ノルウェーは勿論そうですね。全体包括でやって幾らと決めて、多少パパクォーター取っても賃金は出ないけれども、雇用保険から出ます。というふうに、全体が平準化するように、公的な資金と給与が出すものをうまく組み合わせてやっているということですね。だから、時給で時間給幾らという話では全くないということです。
     それから、雇用調整の話ですけれども、これはオランダはかつては100%の疾病保険を当てにして、ばんばん雇用調整していた社会なんですが、それではやはりよくないだろうということでワークシェアというか、短時間ずつでも分け合って働くということをできる限り目指そうと。ただ、つぶれたらそれはもうしようがないということだと思います。そのときに安全ネットがありますよと、そういう。
    木村委員
    私の質問は、今、フルタイムとパートタイマーでバランスしているわけですけれども、新たなバランスの仕組みの中で不況が起こったときに、どういうふうに雇用調整されますかということなんですが、フルタイムの方はパートタイマーにしばらく変わってもらうとか、あるいはもう完全に首を切るとか。
    竹信氏
    それはいろいろだと思います。この間ちょっと見ていましたら、オランダでまた失業が増えているという記事が出ていましたから、多分それで解雇というのがあるんだと思います。それは会社の方針によって違っていて、さっきの企業が雇用保障しますといったのも努力目標なんです。その方が全体で見たらいい結果があるだろうから、私たちが協力しますと言っているのがオランダ方式なんです。
     だから、どうしようもなくなれば、それは当然解雇ですね。ただ、何かそのときに、自己都合でするか会社都合でするかで違っていて、私が聞いたところでは、うちの雇用者はすごくいい人で、本当は自己都合のケースでも、あんたは首だからねと、言ったからねと言って、それが会社都合にしなさいと言ったくれたとか、そういうケースがありましたので、そういうのは当然ありますね。だから、それは本当に何かで決まっているわけではないと思います。
    大澤会長
    ありがとうございました。少しずつ時間が押して、3時になってしまいましたけれども、この後まだちょっとありますので御容赦ください。でも、本日はお忙しい中、お二人の有識者の御説明大変ありがとうございました。
     最後に、私の方からワーキングチームの状況について簡単に御報告した後、社会保障審議会の年金部会の検討状況、これは昨日部会が開かれて夕刊でかなり大きな記事になっておりましたので、皆様御関心があると思いますので、これも簡単に一言だけ御紹介します。 まず、ワーキングチームですけれども、2つのワーキングチームが動いております。1つ、事例研究ワーキングチームの方ですけれども、4月に簡単に状況を御報告しましたが、地方自治体等から影響調査をどういう手法でやったらよいのかという問い合わせも多く、ひとまず早急に中間的にまとめておこうということで現在作業しております。近々皆様のところにお送りできるかと思っております。
     もう一方のワーキングチーム、モデルケースの方ですけれども、夏休み明けには何らかの形で皆様に御報告できるように作業を進めているところでございます。
     次に年金部会の検討状況でございますが、昨日議題になりましたのは、遺族年金の改正、見直しの方向、それから離婚時の年金分割、それ以外に若干のことがございましたけれども、事務局の方からの状況の説明と素案の提示というが主なことで、まだ意見交換というのは今後に予定さております。恐らく今月の下旬に、今、日程調整中ですけれども、次の年金部会が開催されまして、その場で委員は総括的な意見書というものを提出したければ改めて提出するようにということになっています。
     ちょっと説明が前後いたしましたが、昨日の議論で各論というのはほぼ終えたということになっておりますので、7月の下旬にも予定されている次の年金部会で、改めて意見書を出した上で総括の方向に持っていく、8月中も年金部会は開催するというスケジュールになっております。
     私は、部会の委員でありますけれども、個人としてもそうですが、その専門調査会で12月にまとめた報告書の中身に沿い、それをやや延長線上にする形での意見書というのをまとめて提出したいと思っておりますので、またこれについて議論いただく機会もあろうかと思います。
     何か御質問ございますでしょうか。
    八代委員
    離婚時の年金分割をお互いの自由で決めると言っても、今だって別に決めたければ自由に決められるわけで、強制的に決めなければおよそ意味がないわけですね。そういう議論はなかったんでしょうか。
    大澤会長
    今は一身専属性というのがあるために、結局財産分与のときに別の形で振り替えるということでなければ、年金分割はできないというか、判例も確定していない状況であるのでということでした。
     合意が成り立たない場合に、それを何らか強制する措置というのも、年金法の中に書き込むというのが事務局の方向でありますので、合意がないと結局取れないということにはなりません。
     それから、離婚時の分割については、モデルがどちらかというと2号間の分割を考えているわけでして、ところが第3号については、2号、3号間の分割のみで、2号、2号同士の分割というのが今ところ素案に入っておりませんので、昨日私はそこのところだけ確めもしましたけれども。
     というように、専業主婦も報酬比例年金を持てる。専業主婦だった女性が離婚しても、報酬比例年金を夫の方から取れるという意味で、この専門調査会は専業主婦の生活保障や、無償労働の貢献の評価というのを大変重要視しておりますので、くれぐれも誤解のないように。世の中にそういう誤解があるのは承知しております。
    永瀬委員
    遺族年金については、今、8割の人が自分自身の年金権を結局は放棄しているわけですけれども、それを修正するような方向での提案というのは出ているんですか。
    大澤会長
    はい、そうです。
    永瀬委員
    それは具体的には。
    大澤会長
    女性と年金検討会のときに、今、4分の3なのを5分の3にするというのも出ておりましたね。その数字も昨日の資料では例示として出ていましたけれども。
    永瀬委員
    自分の年金権を基本として、その上に夫のものが乗ると、そういう形もあり得るということですか。
    大澤会長
    そうです。
    永瀬委員
    5分の3というのは両方下がるわけで、両方とも変わるわけですね。
    大澤会長
    今、幾つかの案が併記になっていて、現状よりも下がる人と現状よりもよくなる人のあれを、幾つかのケースを置いて検討し始めたところです。
    竹信氏
    雇用調整で御質問があった件で補足しますが、あれは基本的には労働協約でやりますから、オランダって労使交渉がすごく大きいウェートを占めている社会なんです。私の言い方が、個人対会社みたいに思われたかもしれませんが、基本的には労働協約ベースです。
    大澤会長
    少しだけ事務局から連絡事項があります。
    市川参事官
    こちらは8月はお休みになりますので、やるときは御連絡いたします。そのときはよろしくお願いいたします。
    大澤会長
    それでは、これで本日の「影響調査専門調査会」第21回会合を終わります。どうもありがとうございました。

(以上)