第20回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成15年6月26日(木) 10:00 ~12:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      大沢 委員
      岡澤 委員
      君和田委員
      佐藤 委員
      高尾 委員
      永瀬 委員
      福原 委員
  2. 議事
    • (1) 男女共同参画と雇用システムについて
      (報告者)慶応義塾大学 商学部教授 樋口 美雄
    • (2) 男女共同参画に関する国際比較等
    • (3) 税制・社会保障制度を巡る主な動きについて
    • (4) その他
  3. 議事内容
    大澤会長
    時間が来ましたので、ただいまから「男女共同参画会議 影響調査専門調査会」第20回会合を開催いたします。では、お手元に議事次第がございます。これに従いまして、本日の審議を進めてまいります。
     今日はまず「男女共同参画と雇用システムについて」、慶応義塾大学商学部の教授でいらっしゃる、樋口美雄さんから御説明を伺い、その後質疑応答・意見交換をしていただきます。
     その後、事務局から男女共同参画に関する国際比較等、及び税制・社会保障制度を巡る動きについて説明していただき、最後にもう一度御議論をいただきたいと思います。
     それでは、慶応大学商学部教授樋口美雄先生から御説明をお願いします。よろしくお願いいたします。
    樋口教授
    よろしくお願いいたします。今日は20回目ということで、もう既にいろんなお話が出ているとかと思います。重複する部分もあると思いますが、御容赦いただきたいと思います。
     就業形態について、普段感じていること、また昨今何が問題というふうに私が考えているかというようなことを中心に話をさせていただきたいと思っております。
     資料1の、タイトルにありますように雇用形態の多様化の問題は選択肢の拡大か、選択肢の拡大だとすれば、だれにとっての選択肢の拡大であるのか、会社なのか、個人なのか、個人といってそれぞれ立場によって違うわけでありまして、そこが選択肢の拡大というふうにつながっているんだろうか。
     あるいは、見方によっては賃金格差、これは男女共同参画の方でもいろんな分析がなされておりますが、例えば正社員とパートタイマーの賃金格差の拡大問題、こういった点を強調しますと、どちらかというと二重構造の復活ではないかというような見方もされるわけでありまして、現状についても深く分析なさっていますので、私の方はそれについての感想めいたものをお話させていただきたいと思っております。
     まず最初に、最近どういうような労働市場における変化が起こっているか、一応強調したい点を資料という形で用意しました。
     資料1の中に、図表1というのがございまして、「完全失業率の推移」、この完全失業率を男女別に見たときに、従来80年代、特に後半から90年代の中ごろまでは、女性の完全失業率の方が男性の完全失業率を上回るというような推移できていたかと思います。
     ところが、95年以降、あるいは97年といった方がいいかもしれませんが、この関係がどうも逆転してきている。男性の失業率の方が女性よりも高いというようなことで、しかもその差がかなり急速に広がってきているというような動きがあります。
     これは、皆様の努力の結果として、女性の社会参加というようなことで、雇用機会がつくられているというような側面もあると思いますが、いろんな経済要因、特に構造的な変化といったものがこの背景には隠されているんではないかというふうに思っております。 これはもっと昔までさかのぼってみますと、1970年代のオイルショックのとき、74年、75年、76年の辺りというのは、やはり男性の方が女性の失業率よりも高かった。それが80年代に入って逆転して、こういった図に示されたとおりで推移してきているわけであります。ただ当時のオイルショックのときと現状とでは、男性の失業率の方が女性よりも高いといった、その背景においては大きな違いがどうも見られそうだというようなことが言えるかと思います。
     70年代、オイルショックときの男性失業率の上昇というのは、女性に雇用機会が増えたかという、必ずしもそうではなかった。むしろ逆に女性の方が就業機会、雇用機会がないというようなことで、非労働力化してしまった、ディスカレッジド・ワーカー・エフェクト、就業意欲喪失というようなことで、特に有配偶女性を中心として、専業主婦になるというような人たちがかなり多かったと思います。
     ところが、今回の90年代中ごろからの変化を見てみますと、確かに労働市場全体としては、非労働力化する人数というのは増えている。しかし、その中身が大きく変わってきておりまして、女性の非労働力化というのは、そう顕著には起こってない。むしろ大きく労働力率が低下しているのは、1つは高齢層、特に60代前半における、在職老齢年金との関連だろうと思いますが、そこで起こっている。
     もう一つは、若年層において、これは男女問わず、ティーンエイジャー、20年代前半というようなところで、フリーターという言葉で示させるような人たちで、しかも完全失業率が上昇しているということが叫ばれますが、これを地域ブロック別に見てみますと、特に四国がティーンエージャーの失業率が急速に上昇しているというようなことがありまして、3人に1人、失業率33%というような驚異的な数字を記録するというようなことが起こっているかと思います。
     しかも、非労働力ということで失業者としてカウントされない人たち、私はよく3つやってないということを言いますが、通学もしてない、就業もしてない、しかし職探しもしてないというような方たちの比率が、これは四国ではそう多くないんですが、全国レベルで見ますと失業者と同じぐらいのになり、これは両者合わせますと、20%をはるかに超えるというような数字になっているかというふうに思います。
     その分だけ、従来は女性の失業率が上昇しなかったのは、ある意味ではこのディスカレジッド・ワーカー・エフェクト、非労働力化することによって、失業率を抑えるバッファーの役割を果たしてきたというようなことが言われてきたわけでありますが、今回の女性の失業率が上昇したが、男性よりもまだ少なくて済んでいるというようなところは、むしろそういった傾向ではないか。別の要因が働いているだろうというようなことが予想されるわけであります。
     そこで、まず1つ予想されることは、やはり構造的な変化、産業構造の変化によって、ここのところ雇用を大きく減少させている産業を見ますと、やはり製造業とか建設業、特に90年代の後半に入って建設業の落ち込みというのが、公共事業の削減とともに目立つようになってきているわけでありますが、そういったところは従来男性を多く雇用してきたというようなことが言えるかと思います。
     その一方、雇用を増やしているのはどこかという産業を見ますと、医療であるとか、あるいは福祉であるとか、そういうような従来は女性の、従来はといいますか今もそうだと思いますが、女性型の産業というふうに言われているところで、雇用が増えるようになってきた。
     こういった動きは、将来に向かっても恐らく変わらないだろうというようなことがありまして、景気だけの問題でなく、雇用変化というのが起こっているなという気がします。 その結果、就業者において、あるいは雇用者において、男女の間で大きな違いが起こっており、例えば5年前の1997年と昨年の2002年を労働力調査に基づいて比較しますと、男性の雇用はこの5年間で98万人ほど減少しております。それに対して女性の雇用は36万人増加するというような、対照的な動きを示すということがあります。
     しかし、その中身、雇用を常用雇用と臨時雇用、日雇い、こういったもので分けてみますと、女性の雇用につきましても、常用雇用は減少しているというようなことで、男性がこの間常用雇用が148 万人減少しているのに対して、女性の雇用は相対的に少ないんですが44万人減少、それに対して臨時雇用の方は、男性も大分この臨時雇用が増えてきまして50万人の増加で、女性の方が80万人の増加というような形で、女性の雇用全体の数では増えていますが、その主たるものはやはり臨時雇用というような形での増加だというようなことが言えそうだということであります。
     そこを少し、今は5年前との比較で申し上げましたので、どんな推移があるかというのを図表の2のところで、これは男女計でありますが、常用雇用と臨時雇用といったもので、対前年の変化人数を示しています。
     かつて90年代の前半におきましては、明らかに常用雇用が伸びていた。すなわち、期限の定めのない労働者が増えていたというようなことが言えます。それに対して臨時雇用、3か月以内の雇用というふうにここでは統計上なっていますが、それを見ますとほとんど増加してなかったというようなことが言えるかと思います。
     ところが、98年から常用雇用が逆に大きく減少して、そして臨時雇用の方はプラスで推移するというようなことが起こっておりまして、これが今日のテーマの1つ、雇用形態の多様化の一局面である、有期の問題をどう考えていくかというような問題提起につながってくるかというふうに思います。
     この有期と同時に、もう一つはやはり労働時間における雇用形態の多様化というような問題を考えていかなければならないかというふうに思いますが、どんなことが言えるだろうかというようなことで、昨日もあるところでいろいろ議論して、女性のパート労働者は何でこんなに増えているんだろうかということから、雇用形態の多様化、まさに働く側が就業形態の選択肢が増えたというふうに見ていいんだろうかどうかというようなところで、統計上自発的にパート労働を選択しているというような人たちの数もかなり多い。
     一方で、正規の雇用機会がないためにやむを得ずパートに就いているというような、非自発的パートといったような人たちの数も多いわけでありますが、パートを自発的に選んでいるというような人たちの数の中で、なぜパートなんだというようなことを突き詰めて考えていきますと、やはり正社員の拘束性といいますか、労働時間が長過ぎるとかいうような声が聞こえてくるわけでありまして、日本の女性が特にほかの国に比べてパート雇用を望んでいるというふうに考えるべきではないんではないかと。むしろ正社員と相対的に比べて、正社員の労働時間は長いとかということで、結果としてどちらを選びますかというと、パートを選びますというふうに言っている人たちが多いのではないだろうかというふうに思っておりまして、自発的にパートが増えているから、これは雇用形態の多様化、選択肢が増えているんだというふうに言っていいのかどうかということが、私の疑問の点であります。
     そこで、雇用形態について、どのような変化が起こっているんだろうかということでありますが、よく私が申し上げている正社員の働き方について、あるいは企業と労働者との関係についての特徴というのは、やはり将来保障と拘束性の関係というものが、企業と労働者の間に成立してきたのではないか。
     企業の方は、例えば給与において所得保障といいますか、生活費保障といいますか、そういったものを念頭に置いたような保障制度というものを持ってきた。勿論雇用保障というようなところについても、そういった保障をしてきたわけであります。
     その典型的な事例が、例えば業績とは余り関係ないだろうというふうに思うような、諸手当を多々出してきたというようなことがあるわけでありまして、その1つが配偶者手当、これはちょっとまた後で触れることにしますが、そういったものがある。扶養手当もありますし、住宅手当もある。これは業績の高い人が住宅手当をいっぱいもらえるというわけではないわけでありまして、私はよく外形標準課税といいますが、特定の、外形によって、年齢であるとか、あるいは結婚しているとか、そういうようなものによって一律に支給するというようなものをやってきた。
     その背景には、これは生活を保障していこうというようなことで、子どもが大きくなっていけば生活費が必要になってくるでしょうと、教育費もたくさん支出しなければならないでしょうと、だとすれば企業の方がそれを保障しましょうというようなことがあったんではないかと。
     ただ、保障するだけではなく、その代償も企業としては当然取っていくというようなことでありまして、その代償は何に求めてきたかというと拘束性であったのではないかと。例えば転勤というような問題を考えましても、辞令1つで全国どころか世界に転勤していくというようなこともあります。
     あるいは、残業時間につきましても、そういったことがあったわけでありまして、これはもう労使だけの問題ではなく、例えば判例を見ましても、例えば残業を断わって解雇された人について、正当解雇かどうかというようなものも出ておりますし、あるいは転勤についても転勤拒否した人が解雇されたと、これは企業による正当な解雇であるのかどうかというようなことについては、これまでの判例について法律の専門家の方がいたら教えてほしいんですが、私の見る限りにおいては正当性を持っているというような判断が、これまで下されてきたというようなことが言えると思います。
     ということは、労使もそうですし、社会的にもこの保障する代わりに拘束性が発生するのは当然だというような認識を持ってきたわけでありまして、そのことがある意味ではこの拘束性に耐えられないような人たちは、活用の対象から外されていくというようなことがあったんではないかというふうに思っております。
     ところが、最近になりまして、この保障のところが大分手薄くなってきまして、例えば給与体系についても業績給、効果主義といったような形で考えていく。あるいは、雇用保障については、まだかなり日本ではしっかりしたものが、少なくとも正社員についてはあると思いますが、しかし従来の場合に比べてやはり企業が倒産してしまうとか、そういうようなことを考えると、保障といったものも弱まってきているということがあります。
     能力開発につきましても、自己啓発だというような企業が多くなってきているわけでありまして、90年代の能力開発費を、企業で調べてみますと、リストラの流れの中で平均的に見ますと、かなり減ってきているというようなことがあります。あるいは、off-jtを実施しているかどうかというような調査を見ましても、明らかに従来は70%以上の企業がoff-jtとか、あるいはフォーマルなオンザジョブ・トレーニング、こういったのをやっているということであったわけでありますが、今それは8年間で10ポイントほど減ってきているというような数字もあるわけでありまして、それに代わって自己啓発に頼っているというような流れが起こってきていると。
     将来の見通しを企業について聞けば、能力開発費というのは、やはり企業は人によって支えられるんだというようなことから、今後も減らすというような企業はほとんど見られないわけでありまして、今の水準か将来的には増やすと言っているわけでありますが、ただ中身を変えますという企業が圧倒的に多い。それは今まではボトムアップという形で、広く薄くというような形の能力開発をやってきたわけでありますが、それを集中投資に変えていくというふうに企業は言っているわけでありまして、その段階でスクリーニングがかなり働いてくるだろうというふうに思います。
     そうしますと、それから漏れてくる人たちに対する対応というのは、これは自己啓発だということでありますが、これは果たして社会システムとしてこの自己啓発に対するサポートというものができているんだろうかどうかというようなこと。これについては今、本を書いておりまして、自己啓発に対するリカレント教育に対する奨学金制度の導入を進めるべきだとか、あるいは税制におきましても、特別控除があるわけでありますが、特別控除の利用者がほとんど利用できないような厳しい条件が付いておりまして、それを緩和するというようなことを考えたらどうかというような提言をしています。
     その点についても最後でまた考えてみたい。個人所得税について、勿論こちらでもいろいろ議論されてきたと思いますが、もう少し枠を広げて、現在のような例えば源泉徴収方法といったものが果たして今後の社会において適切であるのかどうかとか、そういうことまで含めて男女共同参画の視点からも議論していくべき事態を迎えているのではないかというふうに思います。
     そういう中で、私どもパネル調査というような調査をしておりまして、特定の個人を既に10年間追跡をしました。これは、家計経済研究所というところで実施しているものでありまして、1993年のときに24歳~34歳であった女性1,500 人をその後10年間調査してまいりました。これによって、従来どうもなかなか得られなかった移動の様子について、例えば所得が年々どう変化してきているのかとか、敗者復活戦なんていうことがよく言われますが、一度給与が下がった人が、その後はちゃんと敗者復活して元の水準に戻っていくのかというようなことを調べてまいったわけでありますが、どうも言葉で言うほど敗者復活というのは簡単ではないということでありまして、一度落ち出すとますます落ちていくというような動きがあります。
     特に転職の問題で、キャリアアップする人というのも、90年代の後半から一部女性でも見られるようになってきているんですが、やはり主たる転職者というのは、所得階層でいいますと第1階層、低所得のところで圧倒的に多い。その人たちが、では転職することによって給与が上がっていったかということを見ますと、ほとんどが下がっているというようなことがあります。
     下がった理由の一つは再就職したときが正社員からパートになっているというような動きであるわけですが、ではパートで一生懸命働くことによって正社員に転換するというような、そういうやり直しがきいているのかというようなことを見ますと、どうも残念ながらそうはなってないと。実態としてはパートに就業したならば、ずっとパートというような形態を進めるというようなことで、どうも何となく固定化ということが起こっているんではないか。これについては、大澤さんと福原さんに参加していただいている財務省の研究会での報告の中でもやはりかなり階層化の問題というのも、それが起こってきそうだと、明らかにということではないんですが、少しずつそういう兆しが見られるというような表現が適当かと思いますが、そういう動きになってきている。そういう中において、雇用形態の選択肢の拡大というようなことが、どうもイメージで持っているほどは現実にはなっていないというようなことから、この雇用条件の格差拡大の問題と多様化の問題、特に労働時間を中心に考えたならばどういうことが言えるのか。
     1つは、先ほども議論になっておりましたサービス残業の話もありまして、バランスをどうも失った働き方と暮らしに90年代後半からなってきているのではないかと。これはやってみますと、きれいに出てくるのが97年を境に変化が起こっているというようなことがありまして、そういったところから片方で、例えば若い人たちを見ますと、長時間労働で多少は経済的にゆとりがあるというような人たちと、もう一つはフリーターのような時間的には余裕があるんだけれども、所得の面、経済的な面において余裕がないというような、こういう二極分化でありまして、その中間的なところというのは余り見られないんじゃないかというようなことになっています。
     これもおなじみの数字なんですが、例えば一番最後に1枚図を付けさせていただきましたが、これは男性の週60時間以上の雇用者比率の推移というようなことで、ここでは企業規模を29人以下と500 人以上といった2つだけ取り出して書いていますが、どうも500 人以上のところというのは、従来は長時間労働の人たちというのは相対的に少なかった。ところが、ここのところでどうも90年代の中ごろからこの500 人以上のところで、週60時間以上就業者、すなわち1日4時間以上残業しているというような人たちが増えているというようなことでありまして、6時に所定内が終われば10時ぐらいまで平均して毎日残業しているというような人たちが、20%近くになってきているというようなことがいえます。しかも、この分母の方には、パートタイマー、フリーターといったものも含まれておりまして、労働時間についても従来は40時間ちょっと超えたところに大きなピークがあったわけであります。こういった正規分布といいますか、分散が非常に小さくて、ピークがそこのところに突っ立っていたということでありますが、今そこが非常になだらかになってきておりまして、片方では短時間就業というようなことで、パートの増加で代表されるようなところ、もう一方では正社員については60時間以上というようなことで、あえて言えば二山分布といいますか、そういうような分布になりつつあるということが言えると思います。正確に言えば、二山にはなってないんですが、表現で言えば二山分布、これは90年代のアメリカの所得格差の議論のときに、ミドル・インカム・ディサピアーズというのが議論になった。中間所得層、中間労働時間が消えてしまうというような状況がどうも起こっているんではないかというような気がしておりまして、この問題をどうすればいいんだろうと。逆に何でこんなに企業では過剰雇用だというふうに言われながら、長時間労働の人たちが増えているのか。仕事の集中化みたいなものが起こっている可能性があるのか、ないのかといったところも、是非議論していかなければならないテーマかなというふうに思っております。
     もう一つは、先ほど申し上げました雇用形態について、一度ある雇用形態を選んでしまいますと、正社員の方を選んだ分にはパートの方になることは割と容易なんですが、逆にパートを選んだ人が正社員に転換するといったものが難しいような、固定化ということが起こっているんではないか。
     もう一つ、職務につきましても、かなり職務の違いというものによって、労働時間というものも差異が出てきているのかなというような気がします。
     更に、給与決定方式、こういったところが雇用形態によって差異がある。もう最初から、こういった正社員については、例えば企業業績とか個人業績で決まってくるような給与体系、給与表が用意されていると。片方、パート労働者については、これは市場賃金が時給幾らですというようなことで、したがってその時給によって払いますよというようなことで、最初から分断されているというようなことで、例えばパートで働いた人が一生懸命頑張って正社員になる転換制度を利用できるだろうかというと、なかなかなっていない。
     そこの問題を、これは佐藤委員ともずっとやってきたパート労働の問題というようなことで、給与の決め方についての問題、給与格差、結果としての賃金水準の問題だけではなく、給与の決め方の問題というようなところまで考えていかなければいけないんではないだろうかと。
     今まで多くの議論というのが、賃金の結果としての水準の格差で、比較というものが主になされてきたと思いますが、実はその背景には機会の均等といった問題と関連してくる給与の決め方の問題といったようなところも問題になってくるんではないかと。ある意味では、企業の方も最近短時間正社員を増やすというような動きも起こってきているわけでありますが、こういった流れをどう強めていくかというようなこと、私はワークシェアリングの議論にそれを結び付けてしばしば議論していますが、そこのところの議論というのがかかすことができないんではないかというふうに思います。
     もう一つは、なぜ正社員の労働時間がそれほど長くなっているのか。あるいは今までアメリカも相当長くなっており、ヨーロッパに比べての話ですが、なぜこれほど日本の労働時間は、残業、特にサービス残業まで含めて考えますと、やはり相当に長いのかというようなことがあるわけでありまして、サービス残業に対しては明らかに違法なものであるわけです。少なくとも現在の法体系の中においては、法律を変えようという話もありますが、ここのところは今のところは違法だというようなことでありますから、ここのところをどう遵守するか、これはもうこの労働時間の問題を話す大前提だというふうに思っております。
     その上で、なぜ企業として労働時間を長くし、逆に人数を絞ろうというふうに考えるんだろうかというようなことでありますが、よく言われますのは、1つは固定費、教育訓練費に代表されるような、時間には比例しないような費用というものが存在するんだと。あるいは、福利厚生に代表されるような、これはもう労働時間には関連しないような企業の持ち出し分があるんだと。先ほどの言葉で言えば保障という形でそれが出ているんだろうとは思いますが、そういったようなところがある。だとすれば、時間は長くして、逆に人数を絞った方が総人件費は抑制できるというようなことから、そういったことをやっている面もあるんではないかと思います。
     もう一つは、サービス残業はしないと。ちゃんと残業すれば給与は払うんだとなったときに、ではそのベースになる残業割増率の問題、あるいは残業割増率、法定25~50%で、祝日は35%になったわけですが、従来は労働基準法で決められていたのは、今は政令に切り換えられるというようなことで、政令でこれをやっているわけです。いつ法律改正をしたかということでありますが、平成4年、92年のときだったと思いますが、法律改正をして、そのときに今までは全部25%の法定最低割増率というものであったのを、休日についての出勤は35%にすると。ついては、ここは柔軟に対応できるようにということで、労働基準法から政令への変更というようなことをやったというふうに思いますが、この25%、あるいは35%というのが、適当な水準であるのかどうか、やはりほかの国に比べれば、これは低い。
     当時いろんな議論があって、もっと残業割増率を高める必要があるのではないかというようなことが言われましたが、当時言われたのは残業割増率を引き上げたって、みんなサービス残業につながったら、これは何の効果もないじゃないかというようなことが言われまして、サービス残業があるというのが前提になった議論が当時はあったんじゃないかと思います。そこをどうするのかという問題。
     もう一つ、これは私も調べるまで気が付かなかったのですが、25%の残業割増率といったときの基準賃金は、どうなっているのかというようなことであります。これはもう企業の方は当然御存じのことだと思いますが、そのことがある意味では企業が諸手当を増やして基本給を上げたがらないというような理由の1つになっているんじゃないかというふうに思っています。
     それは何かといいますと、法律、労働基準法と労働基準法の施行規則によりまして、基準賃金とは何かということを明確に法律によって定めています。労働基準法が、昭和22年につくられて以来この箇所については変更がなされていないわけでありますが、その37条の4項におきまして、割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、その他厚生労働省令で定める賃金は参入しないというふうになっています。したがって、配偶者手当とか、扶養手当、世帯主手当、こういったものを増やしていく分には、これは残業してもらってもこの部分というのは除かれた基準になっておりますので、本来所定内というところの方が、こういったものまで含めて時間給で換算しますと、高い場合が出てくるというようなことが言えるかと思います。
     更に、先ほどの労働基準法施行規則、これも昭和22年の8月30日に出ておりますが、その第21条の中で、今、申し上げました、厚生労働省令で定めるといった賃金とは何かということで、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われる賃金、こういったものは今の算定基準には含めないというふうになっていまして、諸手当を含めた分は残業の賃金には反映されないというようなことがある。
     この結果として考えると、相対的に25%と言いながら、実態としてはずっと低い比率になっているというようなことから、ここのところも労働時間を延ばした方が企業としては総人件費が抑制できるというような可能性があるのではないかと思います。
     更に、これは法律で定められているわけではなくて、各企業における労使の交渉によって定められているわけですが、ボーナスの算定基準につきましても基本給のみというふうにしている企業が5割程度でありまして、いろんな家族手当というものは含まないというようなことになっております。家族手当を含んで、例えばボーナス何か月分といった算定基準に入れているのは、4割以下の企業しかないというようなことになります。 ただ、これはちょっと調査が古くて、厚労省の方にも聞いたんですが最近やってないということで、92年の段階の調査結果でした。
     もう一つは、退職金です。退職金にも家族手当とかそういう諸手当は含めないわけでありまして、基本給が算定基準です。そうなってきますと、企業としては同じ増やすのであれば当然家族手当とか諸手当の方を、増やした方が、後々ボーナスにも退職金にも反映しない。残業にも反映しないというようなものになっているわけでありまして、柔軟に対応できるというような面があると。
     その結果、あるいは意味では残業をさせるということが、企業にとっては負担が少ないというようなことになっていますし、労働者のスタンスから見ても、これは手当が付いた方が、付かないよりはいいというような選択がこれまでなされてきたのではないかと思います。
     実態として多くの企業がこういう家族手当を付けるというようなことで、これが先ほど申しました保障と拘束の、国も認めている保障というようなことになってきたんじゃないかと。実は、ここのところが今、問われているというようなことになってくるんではないかと思います。
     それで、労働市場における規制改革でありますが、この流れというのは私も必要ではないかと。先ほど派遣法の話が出ておりましたがこの問題を考えるときに、やはり規制改革というのが、つまり単に規制の軽減といいますか、規制緩和ではないというような認識がどうしても必要なわけでありまして、ここにおけるメリットをいかに拡大していくか。そして、デメリットをどう抑えていくかというような、両方の視点からこの問題は考える必要があるんではないかと思います。
     確かに、規制が緩和されることによる雇用機会の拡大といったようなことは無視することができないわけであります。それを阻止する、こういったものがあるために、例えば常用代替の問題というような形で出されてくる。そのために、規制は強化するべきだというような、例えば職種についても、特定の職種はだめだというようなことをいうことは、やはり雇用機会の拡大といったような側面についてはマイナスになってしまうのかなというふうに思います。
     しかし、その一方において、均等の視点から規制というものは強化されるべきものがあるんじゃないかと。これは、日本だけの問題だけではなく、世界的な流れとしてそういったものが起こってきていますし、日本に照し合わせて考えても、この視点は非常に重要な視点になってきているんじゃないかと思います。
     この派遣とかパートの関連で幾つか国を回ってまいりましたが、そこにおいては、先ほど局長がおっしゃっていましたが、euで例えばパート法についても、時間差サービス禁止というような形で、これを強化するというようなeu指令が出ているというようなこともあります。
     派遣についても、これは私が聞いたところによりますと、派遣労働者についての均衡というものも、eu指令で出ておりました。ただ、各国が必ずしもそれに賛同しないというようなことで、個別の幾つかの国においてはそれに従ってないというような、逆に反対の意見も出されているというようなことで、指令というよりも議論の段階になっているといった方が適当かもしれませんが、そんな動きがあるかと思います。
     もう一方、アメリカにおいてこの派遣の問題を調査に行ったときには、派遣労働というのがテンポラリー・ワーカーなんですね。日本でいう派遣、ディスパッチド・ワーカーでは必ずしもない。といいますのも、このテンポラリー・ワーカーで派遣されていて就業している人の1年後の雇用形態を見ますと、ほとんど、80%ぐらいだったと思いますが、フルタイマーになっている、直雇用に移っているというようなことでありまして、これは向こうのコングレスの人たちと話をしたり、あるいは派遣協会の会長とも話をしましたが、日本の事情とはどうも違うということを彼らは言っている。派遣というのは、あくまでも紹介、トライアル雇用の側面が非常に強いというようなことでありまして、日本の紹介予定派遣の側面を持っているというようなことを言っておりました。
     でありますから、ずっと派遣だというようなことは余り考えられませんし、派遣労働者に関して、日本では1年だったものを3年にするわけですが、そのときに例えばアメリカで言えば期限の定めというのはないわけです。ないから長い期間派遣労働しているのかというようなことを見ますと、ほとんど1年以内。逆に、そういう法律がある日本において長いと。逆に長くなってしまうから、期限の定めを付けなければいけないという面があるのかもしれませんが、それが実態です。
     何でそれほど、直雇用と派遣といったようなものについて、直雇用を減らして逆に派遣を増やしていこうというふうに考えるのか、そうするとやはりある意味では企業にとっては合理性がそこにあるわけでありまして、人件費の固定費化の問題がどうしてもある。
     もう一つは、割安感というのが派遣労働者にはあるというようなことで、これはほかの国で説明すると、派遣労働者というのは割高な労働者だというのが彼らの認識なんです。したがって、直接雇った方が安くなるというようなことで、それはそうだということなんです。どうしてかと言えば、派遣先における直雇用の労働者と派遣労働者の処遇を均等にしろというようなことになれば、派遣会社に払う料金だけ割高になるというのは当然の話でありまして、日本ではどうしてそうなってないんだと逆に聞かれるというようなことがあります。
     今回の派遣法の改正については、これは私もかなり強く認識して主張してまいりましたが、均等の問題を少しでもいいから入れたいというようなことで、今までは派遣労働者の議論をするときには常用代替の話が法律を読んでもありまして、派遣労働者の保護というのが逆に認識が薄かったんじゃないかというような気がします。
     そのために、今回は派遣先労働者と派遣労働者の間での、処遇までは踏み込めなかったんですが、能力開発と物品の貸与とか、ユニフォームとかについては均衡の扱いをするというような努力義務を課したというようなことが言えるかと思います。ただ、そこはまだ弱いということが言えると思います。
     アメリカで、もう一つ大きな問題になっている就業形態との関連でいいますと、それはデペンデントコントラクター、従属的労働者といいますか、従属的契約労働者、雇用関係にはない委託業務をその個人が請け負っているというような個人請け負いの話、しかも1社から発注を受けているというようなことで、いろんなところから受けているんではない、そういった労働者がアメリカでも相当に増えてきている。
     これは、あるソフトウェア会社が裁判になった事例であります。アメリカでも一番大きなところでありますが、そこがデペンデントコントラクターと社員との間で、社員に対してはストックオプションを出すと。ところが、デペンデントコントラクターについてはストックオプションの権利を与えなかったと。契約労働者が3年ほど働いてきて、そこで自分たちにもストックオプションをもらう権利があるだろうというような、そこで均衡問題というようなことで訴えたわけです。
     結果的に見ますと、裁判所の判断では、1年半を超えた労働者については、均等の処遇をしなければいけないというようなことの判断が出て、以来1年半というものをやけにアメリカの企業は気にするようになってきた。これは、派遣労働者についても同じようなことでありまして、例えばものの製造についてはどうしても派遣労働者も長期化してくるというような動きがあります。ほかの職種に比べて、2年を超える派遣労働者というものもかなりいるんですが、この判例が出てから、企業の方が1年半、特に1年というのを線引きに使うようになってきまして、ここで抑えようというような動きが起こっている。 この動きを見ても、やはり均等の問題というのが、片方で雇用機会を拡大しながら均等を確保していくというようなことが非常に重要な問題であって、男女の均等問題もあり得るでしょうし、この雇用形態の多様化といった流れの中で、今までの例えば男女同一労働、同一賃金についても、企業の中において同じ雇用形態の人についての、狭い意味での平等といいますか、公平性というものを求めてきたわけですが、派遣ということになればこれは雇用主が違うわけであります。ましてや請け負いなんていうことになったら、雇用主がいないというようなことで、この枠をどういうふうに広げていくのかというような議論が、今、必要な時代になってきているのかなというふうに思います。
     最後に、先ほど言いました所得税の問題でありますが、私は今までのような外形標準課税ではありませんが、例えば子ども1人いれば扶養控除は幾ら認めますよとか、あるいは妻が働いているかどうかというような、103 万円を超えたかどうかというようなことによる配偶者控除の問題、こういう一種の外形で控除問題を考えていくということに対して、自己責任を追及されるような時代においては、ちょっと時代遅れになってきているのではないかと。自己責任である以上、やはり自分で費用を負担するということが出てくるわけでありまして、そのときには実際にかかった費用を実額控除というような形で考えていく必要があるんじゃないかと、ただこれは主税局は嫌う側面はあると思いますが、やはりある程度の実額控除方式というものを取り入れる必要があるのではないかと。
     保育についてもまさに、私はカリフォルニアに住んでいたことがありますが、そのときの保育費というのは、100 %の実額控除というのは、やはりそれなりの意味を持って、妻がともに働きながら子どもをそういったところで扱ってもらうということについて、あるわけでありまして、こういった実額控除というものを増やしていく必要があるのではないか。
     能力開発についても同じてありまして、教育訓練給付金で一応直接働く者に手当、給付をしようというような仕組みはできたわけでありますが、やはり額が少ないというようなことと、今回それが減額されたというようなことを合わせて考えていくと、例えばロースクールであるとか、アカウンティングスクールであるとか、かなり高い授業料を必要とするというような学校も増えてきているわけでありまして、そういったところでこれは個人の責任でやれというようなことは言えないのではないか。
     少なくとも、能力開発が個人の私的な投資であるということであれば、この負担はあくまでも個人でありますが、社会的なベネフィットが発生するというような、その側面を考えるとすれば、そこに控除の余地というのは出てきますし、それがもし税額控除というとで難しいのであれば、やはりリカレント教育奨学金制度とか、そういうような奨学金制度というもの。今までの奨学金制度というのはほとんどが学校教育を前提につくられてきた一方、今、職業教育したものが広がりを見せているわけですが、やっている内容というのは従来の学校教育の思想をそのまま職業教育に当てはめようというような、これはちょっと違っているのではないかと思うような面があるわけでありまして、アメリカでいえばこれは文部省と労働省が統合しようというような、ライシュ以来の、その前からあったわけですが、そういう形で生涯教育というような視点から、この問題を考えていくというような流れがあるわけです。日本でも省庁が統合するまでもなく、こういったところでの連携というものが必要になっていったんだろうと。
     この実額控除方式というものを導入するとすれば、どうしても今までのような企業が源泉徴収をして税金を払ってくれるというようなことは、回避せざるを得ない。企業の方も負担が重くなっていると思いますが、同時に個人のかかった費用というのが全部会社の方に伝わっていくとか、あるいは妻が働いているかどうかという情報が全部会社の方に押えられているというようなことがあるわけでありまして、それは年末調整をする人たちというのは一部の人たちでありまして、これが何となく納税感といいますか、税金が何に使われているのかということに対して、余り関心がない1つの、あるところにとっては便利なものかもしれないというような気がします。
     勝手なことを申し上げたかもしれませんが。
    大澤会長
    大変どうもありがとうございました。興味深いお話で、また論点も多岐にわたりましたので、これから30分ぐらい意見交換の時間があると思いますけれども、もし議論が大変盛り上がりましたら、その辺りはフレキシブルに考えておりますので、どうぞ皆さんどこからでも。
    岡澤会長代理
    将来のことを考えて懸念していることは、やはり若年労働者の失業率の問題だと思うんですが、学校を卒業して社会への入口が失業で始まるということは、労働観が随分違ってくるということで、そのときによく北欧なんかで言われたことは、若年労働者の失業というのはもう福祉体制を根底から覆してしまうんだということで、そこに非常に大きなエネルギーを投入したんです。実は、80年代、90年代は。
     そのときに、片方で日本の場合にはフリーターが増大するであるとか、サービス残業が相変わらず強いとか、それからある意味ではかなりプラグマティックな労働運動があった方が、実はそういうところの社会全体としてのワークシェアリングは可能だったんだなということはよくわかるんですね。日本の場合は、プラグマティックな労働組合がそれほど強くなかった、組織力が非常に低かったということで、成長と雇用ということのバランスを取りながら、労働と経営が歩調を取るというメカニズムを持ってなかったという、そういう流れがあるんですが、私自身がお聞きしたいのは、サービス残業メンタリティについて一体どういうふうに分析したらいいのか。
    樋口教授
    それは私よりも、御持論があると思うので。
    岡澤会長代理
    サービス残業がこれだけ増えてしまうと、仲間の雇用機会を奪っているんだというような認識になぜつながっていかないのか、これがわからないんです。なぜ人はこんなに進んでサービス残業をするんだろうか。ただの恐怖心だけなんだろうか、これがわからない。
    福原委員
    ちょっと感想を申し上げてもよろしいですか。どなたかがかなり徹底的に研究をしなければならない問題だと思うんです。例えば、10人の会社がいるとします。その会社は、社長さんとしては、経営者としては、あるアウトプット、成果が必要なわけですね。10人に平均に仕事を割り当てたら、成果には達しないんです。そうすると、やはり能力の高い人のところに仕事がたくさんいく。そして、その結果、その人のところに仕事が集中して、サービス残業も増えると。しかし、評価も上がる。評価が上がるということは、本当はサービス残業ではおかしいんですけれども、そういうことが現実に行われていて、人の能力ということと賃金ということをどう考えるかということを一度根本的に考えなければいけないんじゃないかと。
     かつて、亡くなった方ですけれども、東京医科歯科大学の学長をされていた、加納六郎先生という方がいらしたんですが、加納先生は、机の上が何も置いてないような人に仕事をどんどん与えると。そうすると、その人は仕事がたまるのが嫌で非常にスピーディーに仕事をして、片方で仕事がこんなに積んであるような人に仕事をやると、書類を上から下へひっくり返しているだけで、全く仕事が進まないと。したがって、ろくなアウトプットが出ない。
     それでは、私は加納先生に、これは不公平じゃないんですかと。そうしたら、忙しい人をよけい人をよけい忙しくするだけでしょうと。いや、忙しい人は仕事のできる人なんだから、早くていい仕事をするんだから、そこに仕事をやるのは当たり前だと先生はおっしゃったんですけれども、これはもう私もずっと疑問になっているところなんです。
    君和田委員
    私は民間企業ですけれども、私の会社も実はサービス残業改善の指摘を受けております。恐怖感でやらざるを得ないというケースと、そうでないケースとあると思うんです。私どものは恐らくそうでない方で、記者活動の部分が一番改善命令を受けているんですけれども、これは記者を増やすとワークシェアリングで残業時間が減るかという性質の話では全くないんです。これは出版社だとか、テレビ局だとか、みんな大体似たような問題を抱えていまして、その場合は何という表現をした方がいいのか、やめろと言うわけにもいかないんです。何でそんな遅くまで仕事をしているんだというわけにもいかない。そうすると、お金でそれを保障するしかないという形で、今、組合とやっているんですけれども、サービス残業というものが、単にサラリーマンの忠誠心のようなもの、あるいは恐怖感のようなものだけで成り立っているのかというと、必ずしもそうではないんじゃないかという気がしているんです。
    福原委員
    確かに忠誠心では成り立ってないですね。忠誠心も要素ではあるかもしれませんけれども。
    坂東局長
    プロフェッショナル的なサラリーマンというか、その仕事を非常に愛しているサラリーマンだったら、仕事をすることによって残業代だけではなしに、自己実現とか、そういったほかのノンマネタリーのものを獲得している部分もあるわけですね。
    福原委員
    もっとはじめに戻って考えると、仕事をたくさんこなすことによって、自分の能力が上がってくるということを考える人もいるでしょう。
     それから、社会的な互助機能みたいなものを重要視する。今朝呉善花先生の韓国と日本のメンタリティーの違いのお話を読ませていただいたんですが、日本の場合ははるかに互助的精神が強いんです。社会はお違いでもっている。したがって、私が社会に捧げるんだという。
    坂東局長
    能力に応じて働き、必要に応じて働きと。
    樋口教授
    恐らく本人はそれほど苦痛じゃないところがあるわけですね。問題は、それが外部効果を持ってしまうということで、それに従えない人たちを排除してしまうという問題をどう考えるかで、本人はまあいいだろうということなんですが、この外部効果はどう考えるか。
    福原委員
    それでは、働かない人を増やして、そして給料をそれなりに上げるかというと、それも不公平と言えば不公平なんですね。
    大沢委員
    今の話で、メンタリティーな話が出ましたが、一方で樋口先生のお話の中には、常用雇用が減って、臨時雇用が増えているという話があって、そういう中で1つの議論はやはり数が減ってしまうと、下が入ってこないので、30代の結構若い層で子育て中の男性の労働時間が長くなっているという話などをよく聞くんです。そちらの方の影響ですと、逆にまた妻に負担がいって、そこでまた問題が出てくるというようなこともあると思うんですが、そこら辺はいかがですか。
    樋口教授
    それはあるでしょうね。これも数少ない個人体験の1つですけれども、学生、卒業生と話をしてみて、ここのところすごく仕事熱心だった者でロースクールに入ろうかとかいう者が急に増えてきているんですね。どうしてだということを聞きますと、自分の生き方に疑問を持ってきていると。このままでいいんだろうかということ、少なくとも20代、入って2~3年はそれも考えないで、ただやってきたんだけれども、このままで自分の人生が終わるいうことに対して疑問を持つ。これはある意味では昔であればどうしてもそういった選択肢がなかったと思うんです。会社を辞めて、それでもう一度学校に入り直すという選択肢がなかったんだと思いますが、ある意味では経済的にも豊かになってきて、それなりの余裕が出てきた。
     そういった中で、選択肢が増えているにもかかわらず、片方が働き方については割と窮屈な働き方というようなことで、辞める連中というのは必ずしもフリーター志向で辞めているんではなくて、かなりまじめに考えている者の中でそういうのが出てきているというのは、これは企業にとってはかなり大変な問題ではないか。もう辞めてほしい者が辞める分には問題ないわけですが、従来であれば会社を背負っていったであろうと思う者が辞めていくというような、勿論続けて会社の将来を背負っていく人も多いと思いますが、それで我々は例えばリカレント教育のキャリアブレイク制度というようなことの提言も一部出しているわけです。
    坂東局長
    今、大沢先生がおっしゃったことは、今年の白書の66ページにあり、30代前半・後半の男性の60時間以上就業の割合が高い。青いのが男性就業者の週60時間以上就業の割合です。まだきれいに出ています。
    大沢委員
    私も同じように、自治体の男女共同参画の講演会で、最近は結構若いお父さんが土曜日に参加して、子どもを預けて参加してくれるんですが、やはり関心事は労働時間で、共働きをしているので従来のような働き方はやはりできないので、夫婦で一緒にこの講座を聞きにきたんだけれども、働き方について一番考えたいというような声がありました。そこら辺は、これから重要になっていくし、先生がおっしゃるような残業させた方が合理的な仕組みというのを変えていく必要があるのかなと、お話を聞きながら思ったんですが。
     そこで、やはり先生がお考えになるのは、残業の割増率の話ですが、どういう割増率か、いろんな制度を全部。
    樋口教授
    割増率もありますけれども、やはり今までの基準額、そこに諸手当を入れてこなかったということは、少なくとも税制、社会保障制度が働き方に対して中立である、あるいは、給与に対して中立であるべきだというような議論の延長線から考えても、そこのところというのは、それに法律が介入してきているということはどうかというふうに思いますけれども。
    大沢委員
    政令と労働基準法ということで、政令に変わったということですが、その関係は、政令の方が強い効力性を持つということですか。
    樋口教授
    いや、国会を通さないですから。
    坂東局長
    政令の方がフレキシブルに比較的変えやすいということです。勿論どちらも大変なんですけれども。
    大沢委員
    わかりました。
    坂東局長
    固定費の中で、社会保障費についてはおっしゃいませんでしたけれども、社会保障費が負担になるからできるだけ雇用を増やさないということは、まだ顕著ではないんですか。
    樋口教授
    厚生年金の130 万円の。
    坂東局長
    いや、雇用者が半分負担するでしょう。だから、頭数で正社員を増やさないで、できるだけパートを増やそうとするのは、社会保障の負担回避ということは余りないですか。
    樋口教授
    どうでしょう。スーパーなんかで、ちょうど今の4分の3というのは、30時間ですね。非常に微妙なところで切られているんですね。分布を見たときに、割と年収で考えると130 万円のところっていっぱいいるんです。
    坂東局長
    それは白書の57ページなんですが、103 万円は効いているんですけれども、130 万円はそんなに顕著でもない。一応影響はしていますけれども。
    樋口教授
    130 万円のところというのも、我々ちょっと前のデータを使って、内閣府で西崎君とかと一緒に分析して、経済レポートで出ていると思うんですが、かなり効いているんですね。ただ、それは企業側の調整ではなくて、働く側が年収調整をしているかどうかというようなところでの調査であったので。ただ今回130 万円を半分にし65万円にするかどうかという議論の中で感じていますのは、やはり業種によってこのパート比率というのが全く違っているわけですね。製造業は、大体働いている人の8割か9割は社会保険料を払っているわけです。ところが、スーパーとか流通は払っている人が2割か3割という数字ですね。そうすると、働く側にとっての中立性の問題と同時に、雇い方についての中立性の問題があって、得な業種と損している業種というのが生まれてきてしまって、特に国際競争をしているところが損になっているところに入っているんです。
     ドメスティックな産業というのは、割と今の制度は優遇していることになっていまして、問題は業種のバランスといいますか、労働資源の資源配分といいますか、それを歪めているということはあるんじゃないかというふうに思っています。
    福原委員
    先生のおっしゃったリカレント教育の場合、スウェーデンの例をとってもまさにそうですけれども、日本でこの問題が余り考えられてないんですね。ですから、どこかでこれを正面から取り上げるということが大事ではないかということと、そのときにそこに女性が参加するということを促進するような奨学金制度とか何かを付けないと、今、ロースクールをやっても結局男の方がほとんど入るでしょうし、それからmbaが一橋なんかの例を取ってもそうですし、そこのところを少し考えないといけないんじゃないですかね。
    樋口教授
    これももう皆さん御存じだと思いますが、euがプロジェクト助成という形で、ストラクチャーファンドという仕組みをつくりましたね。あれのプロジェクトの選定の中に、1つの基準で、女性がどれだけ雇用機会が増えるかというようなものを入れているんですね。
     日本でも公共事業で、小渕内閣のときでしたか、一時何かお金を融資する場合の対策として、女性の経営者に対して手厚くしようというような、一種のクォータといいますか、アファーマティブアクション的なものをやって、アメリカで言えば公共事業でそれをやるわけですけれども、そういった発想があったんですが、そういったほかの政策と絡めていくという、今の奨学金制度もそうだろうと思うんですが、それは必要なことじゃないでしょうか。
    大澤会長
    それはチャレンジ支援には、入っておりますね。
    坂東局長
    はい、公共事業の公契約の中にそうした女性を登用する計画をつくっているかとか、ファミリー・フレンドリーで評価されたとか、均等法違反をしてないということをカウントしてやるというのを、千代田区が始めているグッドプラクティスをほかにも紹介するというふうなことで、地方公共団体はあり得るんですが、国の契約の場合は、予算・決算分、それこそ政令で縛られていまして、今のところはそれは配慮できないんですね。
    佐藤委員
    レジュメの上の方の保障と拘束性のところで、意見と質問ということなんですけれども、まず意見の方で、この拘束性について労働時間の長短と拘束性というのが、時間が長いと拘束性が高いみたいな議論があるんですけれども、これからはやはり一度時間の長短と拘束性は別の考えだというふうにした方がいいのではないか。
     つまり、時間が短くても長くても同じ拘束度の仕事がある。つまり拘束といっても時間の長短と別の概念であるというふうにした方がいいかなと思っていまして。
     例えば、正社員はわかりやすいと思うんですけれども、子育てのときの短時間勤務で、8時間から4時間に変わる。これを拘束度が下がったというふうに言うのではなくて、私は4時間は、密度で言えば8時間のときの2分の1の時間ではあるけれども拘束度は一緒だと。4時間の中での拘束度についてはということで。だから時間比例時間比例で賃金が2分の1になるというのは、働き方は変わらないんだというふうに整理していくことがすごく大事かなというふうに思っていて、ですから拘束性というのは労働時間の長短ではなくて別の考え方で、例えばここで言えば樋口さんが言われた雇用保障と拘束性ということで言えば、例えば会社が人事権をどの程度を持っているか、あるいは労働提供の範囲がどの程度か、例えば従来の正社員については勤務地を限定しないとか、仕事も限定しない、場合によっては残業もある、限定的に労働教育するというような形で雇用契約を結んで、ちょっと極端ですけれども、会社がその人事権を持っていると。ですから、その程度が非常に高いという点で拘束度が高いという言い方はあるかもわからないですけれども、それが1つです。
     それと、今度は質問の方は、雇用と拘束性、ですから会社が人事権を持つということによって、その見返りとして会社が雇用保障する。ですから、先ほどの判例なんかで、残業を拒否したらどうかとか、転勤命令を拒否したらどうかとありましたけれども、そうすると逆にそういう拘束度、労働時間の長短以外の拘束度を緩めていくということは、例えば契約を結ぶときに勤務地を限定するという話ですが、あるいは仕事の範囲、この仕事しかしませんという、私はここでこの仕事しかしませんという形で雇用契約を結ぶ。今のパートタイマーは店舗勤務でこの仕事ですね。ということは、逆に言えばそういう拘束度を抑えていくと、ある面で雇用保障の方も、従来の雇用保障というわけにはいかないですね。つまり会社が人事権を持っているときの雇用保障と、人事権を制約されたときの雇用保障の程度と分けなければいけないかなというふうに思っていて、ですから勤務地も限定されないで、仕事も限定されない、いわゆる従来型の正社員と、雇用機会に定めはないけれども、勤務地も決まっているし職種が限定されている人、だけどこれはどこかの事業所を閉鎖するというときに、従来と同じように雇用保障できるかというとそうはいかないだろうと。その辺どういうふうにお考えかなと。
    樋口教授
    おっしゃるとおりで、ここのところ自己選択というのは進んでいるようにも見えるし、進んでないようにも見えるわけですが、進んでいる面では地域限定とか、職種別採用だとか、内部公募制だとか、そういうようなところで確かに進んできている面がありますね。
     問題は、そういうふうに限定されていない労働者について、今、裁量労働の議論が起こっていて、それこそ労働時間に比例しないような形で、仕事によって給与を決めると、やはり結果として見ると、日本の現状で見ると労働時間がかなり長くなってきているんです。これが会社における階層化みたいな、呼称の違いだけではなくて、階層化みたいになってきて、総合職は上で一般職が下とか、その下にまたパートがいてという、こういう呼び名によって企業の中が階層化してくる。そうしたときに、この男女共同参画の問題は、どこをターゲットにしていくのかということになってくる面があるわけですね。そういうふうにすれば、例えば地域限定には女性が多くなるというようなことになってくると思うんですが、裁量の労働のところに女性がどこまで入りやすくなるかというと、かなり逆に厳しくなる面が起こってくるんじゃないかと。そうすると、それがまた階層化だということになると、これにどうメッセージを送るのかはすごい難しい問題になってくるだろうなというのが1点です。
     もう一つは、やはり時間短縮で、特に例えば週40時間制とかに移行する過程で、経営側が反対した最大の理由は、給与が時間給ではかられてないということですね。時給はかられていれば、労働時間を短縮すれば給与総額はその分削減できるということで、片方で月給制でやっているというようなところがあって、これもすごく大きな問題だろうと思うんです。やはりその分だけ時間の概念というのがすごく弱いわけです。時給の方が時間の概念というのもはっきり強く認識されるというようなことになってきて、それも必要なことになってきているのかなと。特にワークシェアリングの議論とかをする上では、どうしても時給という考え方を、一般労働者についても取ってくる必要があるという感じはします。 あとは、ちょっとそれとの関連で言うと、パート労働者の有給休暇の日数が、どうしてああいうふうに設定されているのかわからないんですが、一般労働者とは別に設定されていますね。
    佐藤委員
    基本的には時間比例ですね。
    樋口教授
    時間比例なんだけれども、本当の時間比例であれば、日数は同じになるはずなんですよ。4時間しか働いてなくて、そうしたら日数は一般労働者で8時間働く人と同じで、休暇時間で考えると、比例するというスタイルを取るはずなのが、それがそうなってないで、多分そのときの前提としては、週30時間のパート労働者というのは、1日の労働時間は一般労働者と同じで、日数が少ないということを想定してつくっているんですが、実態は必ずしもそうではなくて、週5日働いているんだけれども、1日の労働時間が短いというパート労働者が多いわけですね。にもかかわらず、ああいう形でやるというのは本当に時間比例にした方がいいんじゃないかと。
    佐藤委員
    有給休暇については、基本的には毎日同じ時間働くという前提なんです。日にちで与えるというのがね。あれが難しくて、だから月曜は4時間だけれども、水曜は6時間とか、金曜は8時間というようなパートがいたら、これは4時間の日に取るより、8時間のときに有給取った方が得なわけです。だから、やはり時間で与えるというふうにしないと。
    樋口教授
    有給時間でやる必要が起こっていると。
    佐藤委員
    有給時間というふうにしないと、今みたいにいろんな時間で働く人が出てくると対応できないという。
     あと最後に、パートと正社員の処遇の均衡ということのお話があったんですけれども、これは今、非常に問題だなと思いますのは、パート労働法があって、通常労働者と短時間労働者の処遇の均衡なんですけれども、通常労働者ってだれかというと、行政解釈は正社員なんです。でも、パートと比較可能なというと、正社員じゃない人が増えてきてしまっているわけで、例えば百貨店なんか見ると年契約のフルタイムの販売員と、実は短時間のパートの方が同じ仕事をしていたりするわけです。
     でも、ここは法律が想定してないわけです。今のようにいろんな働き方が出てきたんだけれども、従来の正社員とそれ以外という感じで法律もできてしまっていて、ですからフルタイムの有期契約の人とパートの人を比較するという考えになってないというのが、すごく問題だなと思って、特にいろんな法律の仕組みというのを新しい雇用の方の変化に合わせていろんな面を見直さないとだめかなということで、非常に今日は勉強になりました。
    大澤会長
    私から2ほどあるんですけれども、5番目のところで、基本給は抑えて諸手当を増やす原因の1つに、時間外割増の計算基礎、基準賃金に手当が入ってないという御指摘があって、そのインプリケーションは基準賃金に手当を含めるべきだということになろうかと思うんです。けれども、このことの意味は何なんだろうとお話を聞きながら思っていまして、長時間通勤をしている人、それから子女教育手当とか、家族手当とか、要するに、家族的責任がある人が残業すると、長時間通勤で家族的責任がある人が残業すると、そうでない人よりも1時間の残業手当が高くなるわけですね。それには家族的責任とかというふうに考えれば、一定の根拠はあるなというふうに思いながら聞いていまして、ただし目指すところは、それを企業が嫌がって結局は諸手当を削減、整理統合して、基本給の方に行くだろうというターゲットがあって、一旦そちらに迂回するというんでしょうか。こういう御提案だというふうに考えてよろしいんですね。
    樋口教授
    なぜ家族手当を出すんだろうかというときに、一生懸命働く社員に対してかわいいから出すという面もあると思いますけれども、それほど今やさしくはない、やはりそれなりの原因があるわけで、原因を行政がつくっているというのはおかしいのではないかということですね。
    大澤会長
    短期的には、自分の残業の基準賃金が高くなったぞと思うと、そういう人がよけい残業するかもしれないんだけれども、それに人事は目を光らせるでしょうから、そうなると手当を削って基本給の方に回すかということになるのかなというふうにお聞きしました。
    樋口教授
    今の関連でいうと、これは税金の話なんですが、通勤手当は非課税ですね。あるいは、企業の方でも経費で落せる。どこも税金を払ってない。それがゆえにたくさん通勤手当を出せる。遠くに住んでいる者まで東京に通ってくると。新幹線で通ってきても、費用は税金で落とせる。一定の距離までですね。そのやり方がゆえに、逆に東京が巨大化し過ぎたと、我々それを計算しているんですが、課税したら東京の通勤がどこまでかというのは、地価の波及効果もすごい弱いです。こんなに大きくなっている理由というのは、そういったところにも関連しているんではないかと思います。
    佐藤委員
    ただ、通勤手当は両方あって、下手すると通勤手当をなくしてしまって、アメリカほとんどないわけだけれども、そのように、会社なりオフィスに来たところから給与を払うとすると、所得と取る人は都心に住んでしまう、近いところにしか住めなくなるから、スラム化するという考えもある。郊外に住めないと。所得のある人はいいところに住めるけれども、ない人でスラム化してしまうというマイナスがあるかもしれない。
    樋口教授
    郊外にある企業に勤めようとする人が多くなるんじゃないかということですね。通勤手当を考えれば。
    佐藤委員
    勤務地と居住地の選択がどう変わるかということですね。
    大澤会長
    企業の立地とも関係しますね。
    佐藤委員
    プラス・マイナス両方あるからね。
    大澤会長
    私は6のところでもお聞きしたいことがあるんですけれども、これで財務省の研究会で私が報告しましたら、樋口座長にぴしっと御指摘をされて、私たちの中間報告や報告書というのが、雇用システムのところについては、基調は労使自治というふうに書いておいて、それから中間報告では日本型均衡処遇ルールというようなことも書いて、本報告ではそこは削って働きに見合った賃金でいくんじゃないかみたいなことは書いているんですけれども、それに対して労使自治なんて言ってないでもっと規制でいう方で書けないのかというふうにぴしっと言われたわけなんですけれども、そこのところを今日はお話いただきまして、こういうふうに理解していいのかなということなんです。私の理解ですと、確かに世の中、規制改革と言っていて、デレギュレーションが強調されているんだけれども、euなどではデレギュレーションしていると、リレギュレーション、つまり規制強化というか、再規制化といいますか、それがとりわけ男女平等とか、それから家族的責任といったところでのリレギュレーションがeuは進んでいると。ここは私は認識していたんですけれども、アメリカはそれに対して規制緩和一本やりなのかな思ったら、それは法律とか何かでは出てこないんだけれども、判例によって事実上規制がかかっているというふうにお話を伺ってよろしいわけですね。
    樋口教授
    そうだと思います。
    福原委員
    さっきのお話ですが、東京ではないところ、近郊なら近郊に会社があって、そこに勤めるのがいいじゃないかということなんですが、東京はメガロポリスを既に超えて、東京都はいいのかもしれないけれども、国になってしまっているんですね。企業としてはここにないと、成り立たなくなってしまっているんです。
     今のようなお話になると、佐藤先生のお話のように、スラム化した住宅が東京にいっぱいできるということになって、それで更に東京は巨大化していくということになって、それはどう考えたらよろしいんでしょうか。これだけ通信手段が発達し、顔を見なくても仕事ができると言われている状況なのに、顔を見ないと仕事ができないとうこと。ですからわざわざフランスから来たりということが起こっているわけで、東京に来てもらわないとどうしようもない。それが大阪の地盤沈下の1つの理由にもなっているわけですね。
    樋口教授
    男女共同参画という視点から見ると、東京の企業ほど有配偶女性の少ないところはないんですね。これはもう明らかに通えないんですね。要するに、周りから片道1時間とか1時間半かけて通勤すると。そのために辞めていく。若い、独身のときには東京の企業に勤めて、それで結婚して千葉の地元の企業にパートとして勤めるとか、そういう人の比率がすごく多いんです。企業の立地別の女性活用度というのを見ると、東京の企業というのはすごく歪んでいるんですね。というようなことまで考えていくと、通勤問題というのはちょっと無視できないという感じですね。
    坂東局長
    恐らく都心の再開発で、保育所ですとか、いろいろな生活施設も組み込んだ再開発を進めることによって、例えば山手線の内側でもまだ十分に居住空間が活用されていないわけですから、そんなにスラム化ではなくて、ある程度レベルの生活ができる空間を増やすことは可能だと思いますが、格差の増大がきっとまた別の政治的なイシューとして出てくるんじゃないかと思います。
     スラム化とはいきなり結び付かないと思います。
     さて、パート、あるいは派遣労働の人たちの処遇を、正社員の人たちと均衡に、差別をしないようにというのは、全くそのとおりなんですが、一番今、皆さんわかってらっしゃるのは、パートや契約の人たち、非正規の人たちの働き方を上げるととても企業がやっていけないと。そのためには、正社員の方を下げなければいけない、特に年功序列で働き以上の賃金をもらっている、40~50代の人たちの待遇を下げなかったら、とてもやっていけないというのは、今の世界との競争の中で高過ぎる人件費を抱える日本として求める声もあるんですが、それは可能ですかね。その正社員の方の処遇を下げるという形で均衡を図るということが。
     逆に非正社員の人たちの待遇を上げるという形で均衡を図ることも不可能でしょう。
    樋口教授
    これは佐藤さんと、労働政策審議会のパートの方で議論したときに、その問題を組合、連合にその問題を提起したんです。そうしたら、連合としてはそれはやむを得ないと。正社員が処遇を下げるということはやむを得ないというふうに言うんですが、問題は個別企業の労働組合、個別労働組合について。
    坂東局長
    雇用を守ってくれれば処遇は減ってもいいと、下がってもいいと言ってらっしゃるわけですね。
    樋口教授
    それと均衡を維持するんだったら、その代償は払う用意があるというふうに言っていたかと思います。
    岡澤会長代理
    先ほど私がプラグマティックな労働組合だったら、結構それは社会全体でうまくやれますねと言ったのが今のことなんです。結局60年代と70年代にスウェーデンクローナが非常に強くなったときに今の議論が出て、そこで突破口が男女共同参画だったんです。ワンハウス・ホールだったり、2人の生活者とタックス・ペイヤーを何とかつくっていこうという形で切り換わっていったんです。
    樋口教授
    その下げるといったときに、何を下げるかですね。多分議論になってくるのは生活給だろうと思います。結果としては、今、家族手当をもらっているのは、やはり男性が多いというようなところが関連してくることじゃないかというふうに。
     ある意味では、それを今までは家族手当を優遇してきたという制度なんです。それはやめたらというのが主義主張で、それでバランスを取る上でも1つの突破口になるのかなということなんですけれども。
    君和田委員
    今、日本の企業、あるいは産業界の大きな関心の1つは能力開発なんだと思うんです。その場合に、能力開発の定義の仕方でものすごく広くなったり、狭くなったりしますけれども、例えば今いろんな企業が困っているのは、開発をした人間がどこかへ転職するというケースですね。韓国のサムソンのようなかなりきつい縛りをかけられる風土があればいいんでしょうけれども、ここが非常に難しい。しかも、男女共同参画という点で言うと、女性の場合、また原点に戻ってしまうんですけれども、何かいろいろ能力開発したんだけれども、結婚して辞めるとえらい損だねという話になる。
     それから、先ほど御指摘の自己啓発、これも私的利益かどうかという判定を、どのレベルでだれがするんだというのは、結構難しいんですね。お前、今そんなこと言っている暇あるのかというようなことも言いたくなるようなケースも恐らくあって、ところが本当はそれが社業に相当、将来いい結果をもたらすのかもしれないし、ただ彼はワンステップとしてやっているのか、その辺の見極めが非常に難しいところで、企業はどうしてもしなければいけないというのはわかっているんだけれども、どこかで厳密な線を引きたくなるというか、逆に言うと腰が引けるというか、これが今、特に日本のメーカーを中心にして、外国に劣性になっている1つのポイントかなと思うので、この辺をどういうふうにクリアーしていくか、うち当たりも人を外に出してあっという間に辞められてしまったなんていうと、これは官庁も普通の企業もいっぱいそういう痛い目に遭っていると思うんです。ここをどういふうに制度化していくかというのは。
    樋口教授
    そうですね。今のお話を延長して考えると、1つは、だから投資はやめるという企業の選択がありますし、もう一つは辞められては困るから、もう5年間は縛っておこうという法律をつくろうというようなやり方があると思うんですが、どちらも合理性はないと思うんです。なぜ辞めているんだろうかということの実態をひとつ調べなければいけない。特に言われているのはmbaの関連で、エンジニアとかの学校に行ったからといって辞める人たちはそう多くない。mbaはなぜ辞めるのかというようなことを考えると、そこで勉強してきたものというのが、逆に企業に戻ってから活用できるかどうか、あるいはそうった仕事に配属されるかどうかというようなことを見ると、ほとんど、特に役所はそうだと思いますが、無関係なところにみんな配属されるわけです。
    坂東局長
    いい思いをしたんだから、ぞうきんがけをしろと。
    樋口教授
    そうですね。そういう感じなんですね。そうすると、片方で甘いささやきをしてくれる企業があれば、そちらに移るというのは当然なところで、本当に会社が出すのは投資だというふうに強く意識しているなら、勉強してきたものを会社が活用するというのも当然だろうと思うんですが、そこのところがなかなか結び付いてないというのが現状じゃないかと思います。
    君和田委員
    私、法律とか制度のことは知らないんですけれども、行ってすぐ辞める若い人が多いんですね。そうしますと、例えばこれは私の会社の場合なんですけれども、勤続25年経たないと年金だとか退職金だとかが非常に不利になるんですね。ですから、例えばどこかで能力開発して戻ってきて、5年間自分の会社にいたら36歳になりましたというと、普通の企業に転職するときに非常に不利になるので5年間待てないと、したがって早く辞めるという形、そういう制度、仕組みになっているのかなという気がするですけれども、どうなんでしょうか。
     退職金とかは企業が勝手に決められる話ですけれども、どうも25年というのが多くの企業で1つの節目になっているような気がするんですけれども。
    大澤会長
    一応この専門調査会のアンケート調査ですと、企業年金について勤続の規定というのは、15年程度というのが多かったように思います。
    樋口教授
    我々民間企業の者が公務員になるかどうかの選択肢は41歳だといいますね。41までに移るかどうかで、その後は移ったら損だと、移るんだったら41から43と言っていましたかね。計算した人がいて、国立大学に移るのは、それに超えてからは損だというふうに言っていますが、一般ではどうなんですかね。
     それともう一つは、やはり教育との関連で言うと、今まで教育訓練を実施する企業とか、あるいはそういう機関を対象に国が選んでやってきたわけですね。例えば、国立大学というようなことも、ここに助成金を出す。それで授業料を一律安くするというようなことで、その結果としてみんな国の方に、あるいは行政の方に顔を向いたカリキュラムだとかいろんな施策というのをやっていて、利用者がある学生の方に顔が向いてないというようなこことがある。
     あるいは、市場が何を欲しているのかというようなことに向かってないというような問題があるんじゃないかと思うんです。
     それが、例えば今までですと、三事業の雇用保険の財源を使ってやっていきますから、あれは全額雇用主負担ですから、企業にしか助成金は出せないと。そうすると、そこで間接的に労働者の能力開発をしてくださいというような、機関助成をやってきた。大学についても同じことがあって、その点についてはむしろ奨学金のように個人に直接助成して、個人が選んでいくというような制度に変えていくということがやはり必要なのかなと。
     そうすると、我々の間でも競争が、機関の間でも競争が起こって、何とかいい教育をする。いい教育というのは、それは国が喜ぶ教育ではなくて、利用者が望む教育をするといったところが、今までは薄かったんじゃないでしょうか。
    大澤会長
    私学助成についても同じことですね。
    樋口教授
    そういうところだと思います。
    大澤会長
    そろそろ時間が来ておりますで、永瀬委員の御質問で最後ということでよろしいでしょうか。
    永瀬委員
    労働市場における規制改革なんですけれども、今度は派遣の期間が少し長くなったり、あるいは契約社員3年という話もありますね。そういう方向での規制改革が、女性の雇用についてどういうインパクトを与えるというふうにお考えでしょうか。
    樋口教授
    労働基準法の1、3年の問題と、派遣労働者の1、3年の問題と、両方の御質問ですね。
     派遣については、1年、3年というふうにやりましたが、今度は大きく変わったのは、3年経って企業が雇っていたら、直接雇う義務が発生するというふうに法律を改正しているんです。今までは1年経ったところで、もうそれ以上超えても特段のペナルティーは用意されてなかったんですが、今回については3年を超えてまだ働いている場合については、派遣労働者ではなく直接その人を雇い入れなさいというようなものが発生することによって、長期雇用が増えてくるかなということを期待するんですが、ただ3年の派遣というのは、決してテンポラリーワーカーじゃないですね。なぜそれほどまでに3年まで雇いたいと考えるのかというと、やはり扱いやすい労働者という印象がどうしてもあって、そこのところは均衡の問題を、後々責任取らされると困るんですけれども、そう思いますけれども。
    永瀬委員
    契約期間の3年の方はどうですか。
    樋口教授
    どうでしょうかね。今度延びたんですが、3年契約しますという企業が出てきますかね。企業にとっては1年で繰り返し契約できるんだったら、その方がいいわけでしょう。短いのをどんどん繰り返していった方が。あの要求がどうして企業側から出てきてのか、ちょっと理解しかねているんですけれどもね。
    永瀬委員
    繰り返して契約すると、契約期間が長いのと同じようになるという、3年で辞めれば。
    樋口教授
    ただ、それはどうも本当じゃないんですね。3回というふうによく言われているけれども、いろいろ調べてもらったらそんな判例はまだないということで、俗に言われているのが定着しているだけでというようなことで、例えば3年を3回繰り返せば9年ですからね。
    永瀬委員
    私、契約社員で3年というと、次に非常に雇われにくいんじゃないかと。女性が3年ある企業に雇われて、そこで終わりというふうになりますと、企業にとってはちょうどいい期間かもしれないですけれども、雇われる側にとってはなかなかに辛いように思ったのですが、パート的な働き方だけではなくて、もう少し違う選択肢が増えた、中間的なものが増えたと見るべきなのか、それとも結局のところ契約社員や派遣社員等に行くのは女性、今でも女性が大変多いわけで、そういうカテゴリーに入る女性たちが増える可能性を大きくしている。
     今まで雇用契約による差というのは認められてきたわけですけれども、例えば総合職で入った人の中での平等ということは非常に言われてきましたけれども、総合職と一般職との間の平等ということは余り言われてない。ましてや正社員と契約社員との間の平等ということは、今まで法律上でも言われてきてないわけですが、この規制改革というのは、その点についてはどのような立場に立っているのか、また樋口先生のお考えはどのように思われているのかを伺いたいと思います。
    樋口教授
    私はその部会に入っておりませんので、念のために、全く皆さんと同じような立場から考えるということですが、3年に延ばすことによってどういう問題が起こるか。契約期間を定めるんだったら3年じゃないとだめですよというようなことであれば、これは相当に大きな影響が出てくるだろうと。ところが、3年以内だったら自由なわけですね。 あまけに、ここのところ増えている臨時雇用というのは、先ほど見たように女性も増えていますが、男性が増えているんです。若い人も多いですけれども、若い人だけじゃなくて、30代、40代の有期雇用がすごく増えているんです。
    永瀬委員
    でも相対的には、まだ割合としては非常に少ないと思いますが。
    樋口教授
    割合は少ないんですが、伸びている人数でいうと、先ほど見たように年間で20万人ぐらいのペースで伸びてきているということで、複雑に雇用形態と男女の問題というのが絡み合ってきていて、私はこの男女共同参画はそこまで踏み込んで議論してしまった方がいいんではないかと。男女の問題だけということではなくて、でないとそこのところが手つかずになってしまう可能性があるので、と外野ながら思っています。
     均等のところは、だからちゃんとやるべきだと。雇用形態間もあるし、場合によっては雇用主の違いの問題があるわけです。派遣労働者は雇用主が派遣先と違っていますから、その間での均等問題とか、まさにヨーロッパにおける均等の問題ですね。企業の枠を超えた、雇用形態の枠を超えた均等を、社会的にどう確立するかという問題が出てきている。これは企業別の労働組合とか、個別経営者では対応できない問題になってきているということだと思います。
    福原委員
    先ほど40歳という概念を提示されましたね。東京理科大の沼田先生が、老いとは何かという本の中で、今の人たちは戦前の人たちの7がけだと言っているんです。40歳というのはちょうど30なんです。そうすると、明治時代の明治維新をやった連中はみんな26とか28とかなんです。ですから、やはりそこに人生の転機というのが1つあっていいんじゃないかと。
    大澤会長
    男女共同参画の観点から、雇用システムを始めとして、勿論それを取り巻く法律制度等あるわけですけれども、大変重要な御指摘をいただいたと思っております。とかく男女共同参画ということを言いますと、エリート女性の利害を優先しているんじゃないかということが言われます。勿論指導的立場に立つ女性の比率というのを高めなければいけないというのはあるんですけれども、中間とか裾野が付いていかない、トップのところだけ頭が重くなるということであってもいけないので、今日のお話というのは、ある意味でこの正社員の所定内給与の男女格差というのは、まだ諸外国に比べて大きいとはいえ、着実に縮まってきているので、むしろフォーカスすべきはいろいろな職種や雇用形態の中で階層が二極分化というよりも、もっと多層化して階層が出てきているときに、その中で中間から下ぐらいのところにもっとフォーカスして、均等という概念によって男女共同参画だけではない、職種間の、あるいは雇用形態間、雇い主が違ってもというような均等を追及することが、男女共同参画の底上げといいますが、裾野の強化につながるというようなお話だったと思うんですけれども、そのように伺ってよろしいんでしょうか。
    樋口教授
    実はそれを言いたかったんですが、ここでそれを言うと、リーダーのところにフォーカスを当てているんじゃないですかということをなかなか言えなかったので、まさに言いたいことをおっしゃっていただいたと思います。
    坂東局長
    その場合は、本当にすべてのレベルの働き方が、差別がないというか、女の人たちでも本当にプロフェッショナルで、仕事をするのが楽しくて、先ほど指摘されたような働き方をする人は当然それに見合った処遇をされるべきだし、男の方たちでも、いや自分はプライベートを中心にしこしことやっていきたいという人は、それに見合った待遇を、男性だから、所帯主だからということで優遇されることなく処遇されるということですね。
    樋口教授
    そうですね。それと、男女格差の問題を議論したときに、昨日もそうだったんですが、例えば正社員の間の男女格差の問題、パートで言えばパートの間の男女の問題というのを議論したのでは、この問題は解決しないということです。職種を超えた、言わば働き方を超えた均等の問題に踏み込まないとどうにもならないということだと思います。
    大澤会長
    当専門調査会の全体の方向性にも関わる大変、重要な御指摘をいただきまして、ありがとうございました。我々は決してエリート女性の利害を代弁してきたわけではなくて、当然中堅から下のところに焦点を当ててきたわけなんですけれども、誤解が世の中には多いので、どうもありがとうございました。
    樋口教授
    どうもありがとうございました。
     (樋口美雄教授退室)
    大澤会長
    それでは、時間の方が押しておりますけれども、事務局から若干の御説明をお願いします。
    市川参事官
    何があるかだけ紹介させていただきます。
     まず、前回の4月の専門調査会で中立性の観点から、国内の主な統計を大ざっぱですけれども、整理して御紹介いたしました。そのときに国際比較も必要という御指摘がありました。実は、先日6月13日に公表されました、今年の男女共同参画白書でございますけれども、序説で40ページぐらいかけて全般的な国際比較を行っております。それで主な男女共同参画に関するデータはカバーされておりますので、今日御説明しなくても読んでいただければわかるようなっておりますので、ごらんをいただければと思います。普通よく出てくるデータだけではありませんで、今回特別にこちらの方で実施しました意識調査の国際比較もありまして、お手元の白書の序説の44ページまでで国際比較をやっておりますので、ぱらぱらと見ていただくだけでも、こんな図表があるのかと大ざっぱには御理解いただけるのではないかと思います。それが1つ。
     それから、もう一つでございますけれども、資料2で「税制・社会保障制度を巡る主な動き」というのをお配りしてございます。前回4月の調査会以降の主な動きを紹介いたしますと、具体的には下の3つの、11、12、13がそうでございまして、また政府税制調査会の方から中期答申というものが、6月17日に出ております。それから、例の骨太方針というのが今、非常に動いているところでございます。中期答申につきましては22ページにございますけれども、主なところを抜き書きして、あと重要なところには線を引っ張ってあります。目立つところとしては、23ページの下に配偶者特別控除の上乗せ部分は、(2)の直前ぐらいに「改革の第一歩」というような位置づけをした上で、次に遺族年金給付も高所得者には課税しなければいけないというような記述ですとか24ページ以降で、人的控除の基本構造の見直しということがありまして、<1>の下の方にありますけれども、家族の就労に対して中立的な仕組みとすることが重要で、次の25ページに移っていただいて、それが直接男女共同参画に関するところで<3>に書いてありますけれども、税制で片稼ぎを一方的に優遇する措置を講ずることは適当でないというのが3行目にありまして、扶養に関する配慮については、扶養控除に集中することが考えられるというような指摘もされております。
     そういったところで税制の方は動いておりまして、ちなみに石会長は、「昨年の配偶者特別控除に続いて、今年はどうするか。これは年度末の答申を作る際にもう一度議論をし、今後のスケジュール感を出したい」というふうなことで、配偶者控除自体どれぐらい議論されるかわかりませんけれども、こういった予定で進むようでございます。 というのが、税制調査会関係でございまして、骨太方針の方は28ページでございます。基本方針2003というのは正式な名称ですけれども、この資料は実は6月18日の経済財政諮問会議後に公表されたものでございまして、その後調整して少し変更があったと伝えられています。実は今日の夕方経済財政諮問会議が開かれて、若干修正されたものがまとまるようでございまして、残念ながらそのまとまる前の資料でございますけれども、男女共同参画関係はそれほどここから変わらないとは想像しております。男女共同参画関係では、「指導的地位に女性が占める割合が2020年までに少なくとも30%程度になるように期待し、平成15年度においては、関連情報のワンストップ・サービス化、ネットワーク化など女性のチャレンジ支援策に取り組む」ということが盛り込まれております。
     それから、年金については、29ページの(vii)でございますけれども、第3号被保険者の見直しとか、短時間労働者の年金適用とか、女性の就労を阻害せず、働くことに中立的な制度というようなことが記されてございます。
     今日の諮問会議の結果がまとまりましたら、またリバイズしたいと思いますけれども、とりあえず現段階ではこういう状況でございます。
     以上でございます。
    大澤会長
    何か御質問とか御意見とかございましょうか。私は新聞などに書かれたよりは、配偶者控除の見直しの線というのは強く、税調の在り方というのは出ているような気がいたしました。
     併せて、子育て世帯の支援ということについては、所得控除ではなくて税額控除ということが打ち出されて、更にこれはこの文章には入ってないんですけれども、石会長の会見か何かのお言葉の中に、課税最低限の以下の人はこれでも支援が受けられないんだけれども、そこは児童手当の拡充、というようなことをたしか発言されていたと思います。この会見の詳録は出ていないんですが、そういう御発言もあったと思いまして、この専門調査会の中間報告や報告書の中で、配偶者に関する控除というのは縮小・廃止の方向、しかし子育て支援については直接の支援を強めるということを書きましたけれども、その方向でいっていただいているのかなというふうに思いまして、これは永瀬委員から繰り返し御指摘いただいたので、そのことを入れたのが功を奏しているというふうな感じを受けてございます。
     今年の白書は、大変読みごたえのある力作ですね。
    坂東局長
    例えば、32ページの表なんかでも、この後ろには2年分の調査が反映されております。33ページだとか。2年間にわたって3か国ずつ調査した各国制度調査をやり言わばそのエッセンスが入っております。
    大澤会長
    ここにハイライトされているだけでも大変興味深いので、本報告をいただければ、これはすぐ研究につながるというふうに思って読ませていただきました。
    坂東局長
    パートの制度も29ページに。
    高尾委員
    今、事務局に御報告いただいた26ページで、今、会長がおっしゃられた、配偶者の控除の問題なんですけれども、新聞等にこの報告があった後に大変な反対が出たというふうに書いてあって、もう配偶者特別控除の問題って決着したじゃないかとか、もうそれやったからいいじゃないかとか、こういう少子化の時代に専業主婦を無視するのかというような議論が出たと書いてあって、その辺はどうだったんでしょうか。
    市川参事官
    新聞でどういう報道があったかわかりませんけれども、報告書を見ていただければわかるんですけれども、配偶者控除だけ取り上げてそれをなくすとかそういう議論ではなくて、税体系全体を中期的にどう切り換えていくか、そういう非常に幅広い構造転換のような問題を扱っていますので、そういう受け取り方をされると、そんなに配偶者控除反対という議論にはならないかと思います。そこのところだけとらえて反対とおっしゃったんじゃないかとは思いますけれども、趣旨はもう体系を全体的に切り換えると。
     ただ、恐らく短期間に一度にできる問題ではありませんので、方向を示して徐々にやっていくことになると思うんですけれども、そんなところでしょうか。
    坂東局長
    もう一つ白書のご報告をさせていただきますと、56ページ、57ページですけれども、今までそれこそ男女の賃金格差というのは、いろんな手当を全部外した所定内給与だけで比較して、女性と男性の格差が縮まってきたなんていうようなことを言っているわけなんですが、パートの人たちも今まで女性の一般労働者との比較しか出してなかったんですが、これを男性の一般労働者との比較でパートの人たちを出したということ。
     それから、57ページに国税庁の調査なんですけれども、総額で、年収で、女性たちがどれだけお金を得ているのか、給料はどれぐらいなのかというと、世帯内父親の賃金だけで66%なんていっているのはいかに虚しいかということが、この300万円以下の人が15%で、700万以上が3%なんていう数字からはっきり出てくるかなと思います。
    大澤会長
    私は、この1-2の5図については、もう一本グラフを入れていただきたくて、それは女性一般に対する女性パートというのを入れるとやはり下がっているんですね。だから、これは男性一般が100になって、その上で3本だから、もう一本入れると混乱を呼ぶのではあるんですが、男性のパートが下がった割には女性のパートは横ばいなのねというふうに、確かにそうなんですけれども、でも女性一般に対するのはもう着々と下がってきているので。
    坂東局長
    だから、女性一般は上がっているけれども、女性パートは横ばいですから、それで見えると思います。
    大澤会長
    それでは、またこの辺りについては、後ほど別の機会に御議論いただくことがあるかもしれません。
     最後に、事務局からの連絡事項をお願いいたします。
    市川参事官
    次回でございますけれども、7月4日金曜日、13時~15時でございます。場所は、5階の特別会議室になります。
     京都大学の久本憲夫教授から、正社員ルネッサンス、多様な雇用から多用な正社員ということでお話をいただくのが1つ。
     それから、朝日新聞企画報道部記者の竹信美恵子氏からオランダ、ノルウェーにおけるワークシェアリングの動向についてお話を伺う予定です。
     最後に、お手元に前回4月19日の議事録案がありますので、チェックしていただければと思います。
     以上でございます。
    大澤会長
    それでは、今日の専門調査会を終わります。どうもありがとうございました。

(以上)