第16回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成14年10月1日(火) 13:30~16:00
  • 場所: 内閣府5階特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      大沢 委員
      木村 委員
      高尾 委員
      橘木 委員
      永瀬 委員
      林  委員
      福原 委員
  2. 議事
    • (1) 開会
    • (2) 医療保険について厚生労働省ヒアリング
        (報告者) 厚生労働省保険局総務課
    • (3) 取りまとめに向けた議論
    • (4) その他
    • (5) 閉会
  3. 議事内容
    大澤会長
    それでは、時間もまいりましたので、ただいまから男女共同参画会議の影響調査専門調査会第16回会合を開催いたします。
     では、お手元の議事次第に従いまして、本日の審議を進めさせていただきます。
     本日はまず、中間報告書の取りまとめの際に今後議論すべきとして御意見がありましたもののうち、医療保険制度について厚生労働省からのヒアリングを行い、次に取りまとめに 向けた議論を行うに当たって、事務局から主に公的年金を中心に考え方の整理などを説明していただき、議論を行いたいと思います。
     初めに、厚生労働省からのヒアリングを始めたいと思います。なお、厚生労働省へは特に医療保険の個人単位化の現状や、次に、特に中間報告への意見にもあった国民健康保 険や健康保険等の1人1保険証の現状についての説明をお願いしております。
     では、厚生労働省保険局の総務課長補佐、森真弘さんから御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
    厚生労働省
    厚生労働省の保険局の森と申します。よろしくお願いいたします。
     今お話にありましたように、医療保険の個人単位化の現状と1人1保険証の状況について御説明せよと。併せて最近の医療制度改革の動きも含めてお話しくださいという御指示 をいただいておりますので、御説明させていただきたいと思います。
     まず最初に、お手元にございます資料資料1をごらんいただきたいんですけれども、医療保険制度については度重なる改正が行われてきております。我が国の医療保険制度 は、昭和37年に国民皆保険制度が達成されて以来、現状としては、いつでも、誰でも、どこでも安心して医療が受けられるという体制を整備してきております。しかしながら、そういう こともあって、世界最高の平均寿命を達成できるような、最高の医療水準を我が国はキープしてきたわけですけれども、ただ一方で近年の少子高齢化の進展、低迷しております経 済状況、もう一つは医療技術が予想以上に進歩しております。それから、国民ニーズの多様化という状況の中で医療費が急激に増加してきている状況にある。このため、我が国 の医療保険の保険財政というのは極めて厳しい状況にあります。極めて厳しい医療保険財政の中で、当然、必要な医療は確保しつつ、必要な御負担を国民なりにお願いしていか なければならないわけですけれども、医療保険制度というのは昭和37年の前から、古くから被用者保険というのがございまして、そういう制度がある。一方で、国民健康保険という 形で誰も入れるような制度がある。しかも、これが歴史的にかなり定着してきて、様々な経緯を踏まえて現状に至っているという状況にあります。したがって、言葉で言うのはあれで すけれども、一朝一夕には、簡単に思ったような制度改正をすることができないという状況があって、ごらんいただきました資料のように何回も度重なる医療保険制度の改正が行 われてきております。
     簡単に概要を説明いたしますと、これよりも前にいろいろやっているんですけれども、平成9年に健康保険法というのを改正いたしまして、それまでいわゆる若人の健康保険を加 入しているサラリーマンなんですけれども、患者一部負担というのが1割の負担であったものを2割に引き上げております。またそれから高齢者と若人、両方とも外来で薬剤をも らった場合には、これまでは1割の負担なり2割の負担という中に薬剤の分も含まれていたんですけれども、それに併せて薬剤2種類または3種類で30円、4種類または5種類も らったら60円とか、そういう形に薬剤について別途の負担をお願いしていくという制度改正が行われております。これは特に薬について医療保険制度の中で簡単に言ってしまうと、 大量に薬をもらって無駄な部分があるのではないかという御指摘を踏まえて改正が行われたものでございます。
     それから、平成10年でございますけれども、この6月に国民健康保険法の改正というのがございますが、ここでは今退職者医療制度というのがございまして、これはサラリーマン を退職された方が老人保険制度という高齢者のための医療制度があるんですけれども、それに加入するまでの間、国民健康保険制度の中で退職者の医療について負担していこ うという制度がありまして、それについて、近年高齢化とか退職者の増加の中で見直していかなければならないという形で負担の見直しを行っております。
     それから平成13年でございますけれども、1月に改正健保法の施行というのがございまして、ここで高齢者については、これまで一月530 円で医療機関にかかることができたの を、基本的には定率1割の負担をしていただきますと。ただ、月額で上限3,000 円までしか自己負担はしなくていいという形ではございますけれども、原則として1割の負担を導入し ております。それから、薬剤の負担については別途廃止して、薬剤の別な観点から合理化を進めていこうという形がとられました。
     そうした改革を踏まえて改革を行ってきたんですけれども、まだまだ宿題が残されている。それはどういうことかというと、1つは、今後増加する高齢者の医療制度のあり方につい てどういうふうにしていくべきか。高齢者の医療については大量に現在国民健康保険の若年者の保険料の負担によって拠出が行われておりますし、また一方で、公費という形での 負担が行われている。そういう中でどういう高齢者医療制度というのを構築していくべきかという宿題があったのが1つ。それから現在、国民健康保険と健康保険の患者負担の割 合というのが異なっておりますけれども、給付率を統一化していって、より一層の国民に公平感というのを与えていくべきではないかという観点の宿題などいろいろございまして、そ ういう中で、さきの国会において健康保険法というのを改正いたしまして、本日ちょうど10月1日から施行されることになっております。
     今回の改正の概要というのは、1枚おめくりいただきましたところにございますけれども、この改正の論議をやっているときに、よく三方一両損というふうに言われたりいたしました けれども、患者と、それから保険料を負担する国民、それから医療関係者といったすべての関係。これだけではなくて、国なり地方自治体なり事業主なりのすべての関係者が等しく 負担を分かち合っていただくと。これから必要な医療を確保するための負担を分かち合っていただく。そうすることによって、将来、国民皆保険制度存続の危機が見込まれている 中で、保険料率をできるだけ抑制して、医療保険制度を確固たるものにしていきましょうというのが今回の改革の理念でございます。
     ここの下のところに細かい保険制度の改正内容が書いてございますけれども、このほかにもいろいろやっておりまして、1つは健康づくりの推進でございます。医療保険制度とい うのは、病気になったときに必要な給付を行うものでございますので、当然、病気にならないようにすることが本来的には一番大切なことでございまして、健康増進法という法律を 今回つくりまして、国民的な健康づくり運動というのを進めていきましょうと。
     それからもう一つが診療報酬体系というのを見直しております。これは必要な医療を患者が受けたときに、医療機関に保険者から支払われるお金を診療報酬というふうに呼んで おりますけれども、これを今回初めて-2.7 %というマイナスの改定を行って医療費を抑制していきましょうという改革をやっております。
     そのほか、ここの2ページ目のところの下に書いてある改正をやっているんですけれども、それはどういう内容かと申しますと、1つは、先ほど申しましたように、現行、国民健康保 険はすべて3割負担をお願いしていると。
     一方、サラリーマンの保険というのは、サラリーマン本人は外来は2割の負担でよかったんですね。それから家族とサラリーマン本人の入院についても2割でよかった。家族が外 来で病院にかかった場合には3割の負担をお願いしていたというふうに非常にちぐはぐなというか、非常にわかりにくい体系だったのを、15年4月1日から若人については全員3割 の負担をお願いしましょうという形にしております。
     それから、先ほど申しましたように、若人について薬剤の別途負担というのがあったんですけれども、それを廃止いたしましょうと。3割負担していただくので、一定の負担をお願い しているので、これは廃止いたしましょうと。それから、少子化の中で現在、小児医療の質の確保の問題というのが問題になっているんですけれども、3歳未満の乳幼児に対してだ けは2割の負担でいいようにしましょう。子どもが夜とか病気になったときに、安心して医療機関にかかれるような形をとっております。
     それから患者負担には上限がございまして、一月当たり一定額を超えた場合には、それ以上については保険から給付されるという制度があるんですけれども、それについて若干 引き上げを行いつつ、低所得者に対してはよりきめ細かな配慮をしていくという制度改正を行っております。
     それから5つ目のところ、政府管掌健康保険という、これはいわゆる健康保険組合を設立していない事業主が全国一本の制度で加入する、いわゆる中小企業の事業者が加入す る制度ですけれども、これについて今までは普通の月給がございますね。月給に85/1000という料率を掛けていたんです。それプラス、ボーナス分について10/1000と。ボーナスと 月給に違う料率を掛けていたんですけれども、企業によっては非常にボーナスが多いところがあって、月給が少ないところがある。そういう中でどうしても公平感をこれから図ってい くためには、ボーナスも月給も同じように一つの報酬としてとらえて、料率を掛けていきましょうという形で、ボーナスも月給もあわせて82/1000の保険料を掛けていますという見直し を行っております。
     それから、最もこれからの医療保険制度の安定化のために重要な老人医療制度については、今、老人保険制度というのは70歳以上の高齢者が対象なんですけれども、これを5 年間かけて5歳引き上げて75歳以上の制度にしましょうと。
     それから、高齢者医療については、国と地方自治体で必要な医療費の3割を負担しているんですけれども、これを5割負担することにいたしまして、より保険としての安定性を確 保していきますと。
     それからもう一つは最後、先ほどから何度も申していましたように、老人医療費の伸びというのが、これから将来の医療保険制度を考えた場合に、これからの一番インパクトの強 い部分でございまして、そこをまさに質が高いんだけれども、その効率化を図っていくことが非常に重要でございます。そういう観点から老人医療費の伸びを適正化するための指 針というのを国が作成して、その都道府県なり自治体がそれを踏まえて必要な対策をとっていただきたいというような規定を設けております。ここまでが医療保険制度全体のお話で ございます。
     もう一枚おめくりいただきまして、現在のいわゆる被扶養者の問題についての資料でございますけれども、現在医療保険制度にはどの枠組みで適用されるかというのは、この表 でざっとごらんいただけるかと思います。まず一番目は、例えば女性が働いている場合に、常勤として働いているどうか。フルタイムの概ね4分の3以上の就業をしているかどうか というので、まず1つ目の切り分けが行われます。4分の3以上働いている場合には、ここは基本的には健康保険の本人という取扱いになる。ここの下の図の右側の部分、4分の 3以上、週なり日数で働いている場合には健康保険の本人になっていただく。それから4分の3以下の場合については、その方の年収を見ることになっておりまして、年収が130 万 以上の場合については、国民健康保険に加入していただいて国民健康保険の本人になっていただく。一方、130 万円以下の場合については、健康保険のいわゆる配偶者が加入 されている方の健康保険の被扶養者になっていただくという形になっております。この取扱いは基本的に現行の年金制度と同じ考え方になっておりまして、現行の年金制度では、4 分の3以上働いているときには厚生年金の被保険者になっていただいて、それからそれ以下の場合については、130 万以上の場合には、国民年金の1号被保険者、それから130 万以下の場合には3号被保険者になっていただくという枠組みと同じ枠組みというふうに考えていただければよろしいかと思います。
     それからもう一つ、御指摘のございました一人一枚の保険証の話でございますけれども、こちらにつきましては、私ども平成13年の4月から省令を改正いたしまして、被保険者に 基本的には一人一枚のカード様式というふうにしていただいて結構ですよというふうに通知を出しております。ただ、これは必ずしも強制的なものではなくて、保険者の判断でやっ ていただくものになっております。現状においては、まだまだ実際に一人一枚というのを実現しているところは多くないのではないかというふうに言われておりまして、私どももあんま り具体的な数字はよくわかっていないんですけれども、当然、被保険者は保険証を交換するためには、それなりの事務費がかかるわけですね。ですから、一定の事務負担をお願 いしなければならないということで、一朝一夕にしてかえていただくわけにはいかないというのが1つ目。2つ目は、やはり皆さん各保険者とも様子見のところがございまして、ほかの ところがうまくいったら自分たちもやろうと思っているというのがあるのではないかと。それから3つ目が、皆さんお持ちの場合は御存じかと思いますけれども、健康保険証は更新が まいりますので、保険者さんたちは更新時にかえようと思っていらっしゃる方が多いというふうになっております。ただ、できる限り一人一枚持って医療機関にかかれるというのが理 想ではありますので、私どもとしても、できるだけそういうのを広く周知していきたいと考えております。
     それから、今、私ども厚生労働省の社会保険庁において、政府管掌健康保険の一人一枚化というのを、個人カード化といいますけれども、カード化の検討を進めておりまして、で きるだけ早く導入したいと考えておりますので、そういう全体の流れの中で、例えば、政管健保に加入していらっしゃる方が一人一枚でカードを持っていれば、周りの加入者の皆さ んも自分たちも一枚ほしいのではないかというのは、当然そういうニーズとして高まってまいりますので、そういう全体の流れの中で一人一枚のカード化というのを進めていきたいと 考えております。
     私からの説明は以上でございます。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。
     ただいまの御説明について質疑応答をいたします。15分程度で行いたいと思いますが、この専門調査会の観点というのは、あくまでライフスタイルの選択に対する中立性というこ とですので、健康保険制度全体を巡っては様々な論点もあろうかと思いますが、中立性の観点ということに絞って御意見や御質問をいいただきたいと思います。いかがでしょうか。
    永瀬委員
    伺いたいんですけれども、例えば、夫が厚生年金で妻が国民年金とか、そういう場合ですと保険料率等がかなり違ってくるのではないか。国民健康保険でしたら上限 などもありますけれども、夫婦で違うところに加入した場合とか、あと、個人単位で言えば、厚生年金の場合はもちろん世帯では高いですけれども、個人単位では定率かもしれませ んけれども、それにしても、違う制度に加入したものについてどのようにお考えですか。
    厚生労働省
    御指摘のとおり、全然負担が違う仕組みとなっているんですね。例えば、年金ですと、私、担当ではございませんけれども、国民年金に加入した場合は1万3,000 円程度毎月負担をしていただくと。一方、サラリーマンというのは、厚生年金に加入した場合には、標準報酬というか、月収に応じて一定割合を、どんどん負担が増えていかなけれ ばならないと。人によってはかなり負担していただくような場合もある。医療保険についても同じような状況でございまして、医療保険は当然サラリーに応じて負担していただくのが 健康保険でございまして、一方、国民健康保険は、ちょっと国民年金とは違っておりまして、財政的に非常に苦しいものですから、人によってものすごく高額な負担をしていただかな ければならない場合もあるということで、その加入する制度によって、それぞれ負担していただく内容が異なっております。
     医療保険制度についていえば、1つは国民健康保険制度というのは、所得捕捉が違うのではないかと。普通のサラリーマンと比べて、いわゆる税金でいうクロヨン、トウゴウサン という話がございますけれども、所得捕捉の問題がサラリーマンと違うので、どうしても国民健康保険についてはサラリーマンとは違った負担の仕方をお願いしなければならないと いう考え方がございます。
     それから、そういうことを前提にしても、できる限り公平化を図っていくという観点から、将来的にはできるだけ給付も同じで負担もできるだけ同じと。保険者による努力の分は別と して、そういう形が望ましいのではないかというふうに私どもとしては考えておりまして、将来に向けてはできるだけ公平化を図っていくような努力をしていきたいというふうに考えてお ります。
    大澤会長
    よろしいでしょうか。
    厚生労働省
    もし何かもう少しございましたら言っていただければ。
    坂橘木委員
    それに関しては、将来的には厚生労働省も制度の一本化ということを当然考えておられる。それがやはり理想ですよね。いろんな制度が乱立するのではなくて、どん な人も共通の、一つの医療保険制度に加入するというのがこの問題を解決できる理想だと思うんですが、厚生労働省として、いつごろそれを達成できるというような見通しをお持ち なんですか。
    厚生労働省
    委員が御指摘のとおり、制度の一元化というふうに私ども呼んでいるんですけれども、将来的には一元化というのを目指していくべきだというふうに考えておりまし て、先月といいますか、9月25日に坂口大臣が御自身の私案という形で、今回の改正が全面的に終了する平成19年度以降、いろんな給付と負担の公平化を図る仕組みを導入し ていこうというふうに提言されております。ただ、皆さんが一元化と言ったときにどういうのをイメージするかというのは人によって違うんですけれども、いわゆる年金制度みたいに、 国として1個の制度が存在している。全国民が一つの保険に加入するというのを一元化というふうに呼ぶ場合と、例えば、いろんな制度というか、被用者保険と国民健康保険という のが分立しているのだけれども、負担と給付が公平な状態になっているというのを一元化というふうに呼ぶ場合と二通りありまして、どういうふうな制度にしていくかというのはもう少 し私どもとしては議論を進めていかなければならないというふうに考えております。
     年金については、財政的な規模のメリットというのが一番大きいわけでございます。一定の保険料を集めて、それを現金として給付していくわけですから、その規模が重要なんで すけれども、医療保険というのは個別個別の地域のニーズによっても違いますし、一人一人のニーズにも応えていくような制度であるからには、保険者の規模というのが大きいと、 保険者としてちゃんと機能を果たせるのかどうかという問題がございます。例えば、今、政府管掌健康保険については全国一律の保険でやっておりますけれども、これについては いろんな御指摘があって、1つは、事業主の状態というのをきちんとそれぞれ把握できていないのではないかとか、地域に応じたきめ細かな保険者としての機能というのを果たして いないのではないかというような指摘もある中で、将来的にはどういう姿を目指していくかというのは別として、できる限り、負担と給付が同じような姿であるべきという考え方に立っ て私どもは検討を進めていきたいというふうに考えております。
    福原委員
    今、おっしゃった一元化のイメージというのは、どちらの方向が主な方向なんですか。
    厚生労働省
    どちらがメインストリームかと言われますと非常に難しい問題で……。
    福原委員
    もう一つそれに関して伺いたいのは、過去にいろいろな積み重ねがあって今の構造になっているので、改革が難しい。その難しい中で何が一番難しいんですか。
    厚生労働省
    1つは、先ほど申しましたように国民健康保険、いわゆる自営業者の保険と、サラリーマンの保険という大きく分けて2つに分立している状態になっている。これを公 平という観点から見た場合にどういうふうに考えるべきかというのがあるかと思います。それからもう一つは、例えば老人医療制度については、たしか昭和48年だったかと思います けれども、患者一部負担が無料化されて、そこから老人医療費の急増というのが始まっているんですけれども、既得権といってはよくないんですけれども、今までの手厚い給付か らなかなか脱却できないというか、これからは負担できる人にはきちんと負担していただくと。必要な人には手厚くというのが理想像ではありますけれども、なかなかそれを一発でや るわけにはいかない状況にあると。そういう歴史的な経緯があるのではないかというふうに考えております。
    大澤会長
    国保の保険料というのは、たしか応能分と応益分というのがあって、所得の捕捉は難しいとは言いつつ、しかし、応能分については一定の所得捕捉をした上で賦課して いるわけですね。市町村ごとに、あるいは国保組合ごとにその辺は違うのかもしれませんけれども、大体こんなふうなスタンダードなかけ方というのはあると思うんですが。
    厚生労働省
    イメージで言うと、いわゆる応益負担と応能負担というのは、応益というのは受益に応じて負担いただきましょうという形で、世帯の人数に応じて保険料を負担してい ただく部分というのと、それからもう一つ応能負担というのは、当然、持っている資産なり所得に応じて負担していただくというのがございます。先ほどから私が申している所得の捕 捉が難しいというのは、いわゆる税金の世界でいう所得税の世界でございまして、自営業者というのは経費の分もございますので、そういう観点から所得の部分は難しいんですけ れども、現在の国民健康保険制度の賦課の方法としては、いわゆる所得に応じた部分と、例えば資産とか、ほかの収入とかに応じた部分というのを細かく設定いたしまして、そうい うのを総合して保険料として賦課していくという方式をとられておりまして、そういう観点から国民健康保険制度全体の中では一定の平等化というか、公平化というのは図られている というふうに考えております。
    坂橘木委員
    個人の所得の把握が難しいというのはよくわかるんですが、最近の医療保険制度改正で、高齢者の負担の割合を所得に応じて変えましたよね。所得の把握は何で やろうとしておられるんですか。
    厚生労働省
    これはいわゆる税制上の所得に応じて負担の割合を変えていただくというふうになっております。
    坂橘木委員
    となると、ステップとしては、個人あるいは高齢者、自営業者でも所得の把握が可能な方向にあるという見方をしてもいいわけですよね。そうは言い切れない?
    厚生労働省
    今回の高齢者の負担というのは、それしかメルクマールがなかったということでやっているんですけれども、本来的な平等というのを考えれば、もう少しほかの手法 というのもあり得るかなというふうに考えておりまして、例えば、国民健康保険制度が所得だけではなくて、ほかの面も見て賦課をしていくわけですね。その資産とか、そういう状況も 見て賦課をしていくわけでありまして、ほかの制度というか、税制の今後のあり方等も踏まえて、私どもはより公平な負担のあり方というのを考えていきたいというふうに思っておりま す。
    大澤会長
    中立性の観点からしばしば問題になりますのは、典型的には夫が健保で、妻はパートタイム就労なんだけれども、結局、夫の健保の扶養家族でいたいがために、年 収をあえて130 万を超えないように調整するとか、労働時間も超えないように調整するといったことが起こっていて、それが女性の就業という観点から制度が中立でない影響を与 えているのではないか。実際には103 万円の所得税の非課税限度額のところで調整しているケースが多いので、130 万円のところにはそれほど大きな壁というか、山はできてはい ないんですけれども、しかし実利的にいうと、年金というのは何十年か後のことなんですが、健康保険というのは、明日病気になったら医者にかかるかもしれない、そのときに、少し 働く時間を延ばしたり、あるいは少し収入が増えたときに保険証まで変わってしまうというのはえらく勝手が悪いということから、踏みとどまっている人もいるのではないか。我々はそ ういう観点から、労働時間や収入にかかわりなく一元化していれば、どのような状態であっても同じ制度に同じ資格で入るということになっていれば、その限りで制度は働き方やライ フスタイルの選択に中立なのではないかというような議論もしてきた経緯があるものですから、それで今日1人1保険証のことについて伺ったわけです。それにしても基礎年金と 違って、一律定額というのと違って、国保では少なくとも所得や資産から負担能力を把握しようと努めた上で賦課をしているわけですから、一元化のハードルというのは低いのかな というような感じもしたんですけれども。すみません、これは質問というよりはコメントのようになってしまいましたが……。
    坂東局長
    資産の把握をやっているんですか。
    厚生労働省
    当然、資産税の世界でやっていますので、そういうデータを活用して、いわゆる国民健康保険の保険料というふうに言い方を申し上げておりますけれども、一般的 には国保税という形で、ほかの税金と同じような形で徴収しているのが一般的でございまして、当然、税金のデータなりを使って賦課をしているという状況でございます。
     私どもも当然、被用者の問題についてはどうあるべきかというのは検討していく考えでおりますけれども、基本的には年金と一緒に徴収している現状にございますので、年金の話 については、御存じのとおり、現在、次期制度改正に向けて検討を行っておりまして、そういう中でどういう方向性で改正が行われていくかというのを踏まえて、私どもの方は制度の あり方というのを考えていきたいというふうに考えております。ただ、当然、年金とは若干異なっている部分がございます。年金制度というのは、夫と妻だけの世界ですけれども、医 療保険というのは、子どもとか、自分がほかに高齢者で扶養している方という、そういう人たちの扶養の問題というのはどう考えるのかというのは当然独自の問題として考慮してい かなければならない話としてございます。
     それから、年金制度というのは、先ほどおっしゃられましたように、何らかの形で保険料を掛けていれば、将来自分のリターンと言ってはいけないんですけれども、自分の給付とし て返ってくるわけです。一方、健康保険というのは、自分で掛け金を納めていなくても、夫の被扶養者となっていれば保険を受けることができるわけですね。ですから、そういう制度 の違いについてどう考えるのかというのは、よくよく検討していかなければならないというふうに私どもとしては考えております。
    大澤会長
    年金の方では、130 万円を65万円程度に下げたらどうかという議論が出ておりまして、そうなると、健保の方との整合性の御議論というのは既に始められています か。
    厚生労働省
    65万だか、いくらだかわかりませんが、一定の130 万を下げて、また、ちょっと適用の仕方を変えて、そこの年収に応じて国民年金に加入するのではなくて、例えば 厚生年金に加入できるような仕組みとか、そういうのはいろいろ議論があるかと思います。私どももそういう議論を当然踏まえて検討は進めているところであります。
    大澤会長
    逆に応益的な観点というのを被用者健保の方にも組み込んではどうかというような議論もあり得ると思うんですね。つまり、家族療養費の支給というのは、たしか保険 料収入の25%から30%ぐらいになっていると思うので、老人保健制度の拠出も大変ですけれども、共働きや単身の人からしてみれば、他人の家族のために保険料の3割ぐらいが 使われているとなると、それはそれで問題になり得るとは思うんですけれども、そういった御議論は今のところはほとんどなさっておられない?
    厚生労働省
    それは当然、私どももいわゆる個人単位化という形でいろんな形で言われておりますし、例えば、全く収入のない被用者についても保険料を課すべきではないかと いう御議論もありますので、そういう観点から検討させていただいております。やはり難しいのは、家族保険料なり、そういう形で年収のない方に保険料を賦課した場合に一体誰が 負担するのかというのを考えなければならないわけでございます。これは全く年金の話と同じでございますけれども、一人で働いているサラリーマンに負担していただくのか、もしく はほかの誰かが出すのかどうかという問題が1つ。
     それからもう一つは、今、当然被用者保険については、事業主に半分負担していただいているわけです。この事業主負担というのをどういうふうに考えるかと。特に家族という形で 割り切った場合に、家族の部分について、本当に被用者というのは事業主負担というのを半分にしなければいけないかどうかとか、そういう問題についてよくよく検討していかなけれ ばいけない。私どもで検討をするだけではなくて、当然、国民全体の議論として、どういうのが公平かというのをよくよく考えていただかなければならないわけでございます。例えば、 今、低所得者の保険料については一定の配慮をしているわけですね。一方で全く年収のない被扶養者について保険料を課すというふうにした場合に、こことのバランスというのは 本当に公平感があるのかどうかというのを考えなければいけないでしょう。一方で、働いていながら130 万の収入しかなくて、たくさんの保険料を納めていらっしゃる方と、100 万以 下のちょこっと働いているけれども、収入がある人について保険料を納めなくていい現状が本当に公平かどうかというのも含めて、人によっていろんな公平感というのがあると思う んです。そういう公平感の国民的な合意というのを得ていかなければならないというふうに考えておりまして、検討を進めた上でぜひとも大々的にそういうものについて議論していた だければというふうに考えております。
    大澤会長
    かつてのように、被保険者本人は10割で家族は5割とか7割だった時期には今のような問題は相対的には小さかった。このようにそろってまいりますと、余りにも家族 にとられるのではないかというふうに共働きの人や独身の人の不満というのは高まらざるを得ないかなという気がしたものですから。局長何か。
    坂東局長
    それから2つお聞きしたいんですけれども、医療保険は介護保険とほとんど同じ形で設定されているわけですよね。
    厚生労働省
    介護保険はまたちょっと違う仕組みになっておりまして、介護保険も被保険者が2種類ございまして、65歳以上の方については一人ずつ保険料を納めていただく仕 組み、それから40歳以上の場合は……。
    坂東局長
    40歳以上の人たちは夫の保険料でカバーされている。
    厚生労働省
    これは健康保険と同じような仕組みになっております。
    坂東局長
    それはダブルで、医療保険だけではなしに介護保険も同じような考え方で設計されているということについて、個人単位でいくのか、世帯単位でいくのかというのは議 論があり得るのかというのが1つ。
     あともう一つは具体的な話なんですが、1人1保険証というのは、遠隔地被扶養者みたいな形で紙で保険証を持つというのだとすぐにでもできそうな気がするんですけれども、反 対はあるんですか、それに対してはどういう理由で反対されている方が多いのだろうかと。
     あともう一つの疑問は、もしかしたら1人1保険証というのが、カード化あるいはicカード化と連動して考えられているから、反対があるのかなという、ちょっとそこらのところ、御意 見を聞かせていただければと思います。
    厚生労働省
    おっしゃるとおり、紙だったら簡単ですし、あんまり事務費もかからない。
    坂東局長
    かからないし、やろうと思えばすぐにできるんじゃないかなという気が……。
    厚生労働省
    ただ、今時、様式を変えてやるからにはカードにしましょうというのがありまして、そこは相矛盾するというか、難しいところなんですね。そこは悩ましいところだと思い ます。それで、どっちが強く働いているかというのは、はっきり言って私にはよくわかりません。
     それと、カード化については、今icチップみたいなものを埋めたような形でデータを入れたような形のカードというよりは、いわゆる今の健康保険証がただ単に銀行のカードみたい な形になっただけで、データを入れていないものというふうに考えられるような、ちょっと時代が変わってきておりまして、一昔前だったら、局長がおっしゃられるように、データを入れ たようなものにして便利なものにしていきましょうというふうに言っておりまして、人によっては反対される方というのもいたんですけれども、今は時代が変わってきて、きちんとした データというのは、ちゃんとファイアウォールがされたところにあって、そこにただ自分のカードを持っていってアクセスするだという形というのがこれからの流れですので、そこはあ んまりそういう観点からの反対というのはないのではないかというふうに思っております。
    福原委員
    その場合、保険証カードというのは、被保険者ナンバーだけを表示するような形で。
    厚生労働省
    そうです。ほかにも名前とか書いておかなければいけない記載事項というのはありますけれども……。
    福原委員
    だけど、主目的はナンバー。
    厚生労働省
    そうです。
    坂東局長
    国民からの反対の理由があんまり想像がつかないんですけれど。
    坂橘木委員
    はっきり申し上げて、健康保険組合にとって自分たちの財政状況が極めて苦しい中で、事務費なりであっても、やはり、そう簡単には自ら進んで出すという状況にはな いのではないかと。
    坂東局長
    事務費だけの問題ですかね。
    坂橘木委員
    局長が介護保険のことを言われたので、ちょっとそれに関して御質問したいんですが、介護保険と医療保険を将来的には一元化するという意見がちらほら。私もその 意見なんですが、厚生労働省はそれは全く無視ですか、それとも、検討の対象にはなり得るという見解ですか。
    厚生労働省
    これはどちらがいいかというのは全く今のところニュートラルです。ただ、重要な検討事項として私どもは受けとめていると。ただ、ここは御指摘させていただきたい んですけれども、今、医療保険というのは、先ほど申しましたように、老人の医療というのは、これからの75歳以上というのをとらえて高齢者の医療と位置づけましょうと。一方、介 護保険というのは、先ほど申しましたように、一定の要件を満たせば40歳以上の人も対象になるような制度なんですね。さらに言えば、これから若年の障害者についても介護保険 と一元したらいいのではないかと。20歳なり30歳で寝たきりの状態になった場合に、その人たちについても給付できるような仕組みにしたらいいのではないかという御指摘も一方で はございます。したがって、今、介護保険制度がありますけれども、それを年齢的に下に増やせばいいのではないかという人と、給付内容の似ているところに着目して、医療保険制 度の高齢者医療と一緒にしたらいいのではないかという2つの御意見があるわけです。高齢者医療と介護と若年障害者を合わせた制度はつくれないわけでして、そういう中で介護 保険制度はどちらに軸足を置くのかというのは本当に真剣に議論しなければならない状況にある。しかも、私どもとしては、どちらがいいというような状況にはない
     というところです。
    高尾委員
    中立化そのものじゃなくて、子ども関係なんですけれども、出産に関して出産育児一時金というのと、手当金というのがありまして、手当金の方の給付は非常に伸びて いるんでしょうか。手当金というのは、健保の被験者本人でないともらえないわけですね。
    厚生労働省
    手当金はそうですね。
    高尾委員
    退職後6か月とかいろいろありますけど。
    厚生労働省
    基本的に発想として、出産による収入の補てん的な性格を持っておりますので、数字をお調べして、後日、内閣府にお届けさせていただくようにしたいと思いますけ れども、近年働く女性が増えてきている中で増えていると思います。
    高尾委員
    働きながら、子どもを産んでいるということですね。
    厚生労働省
    そうですね。
    高尾委員
    それと、健康保険対象外の不妊治療に関するこのごろの論議を教えていただきたいんですが。
    厚生労働省
    不妊治療につきましては今どういう現状になっているかというと、医療保険が適用されておりませんで、すべて自費で、全額自己負担で医療機関に不妊治療をお願 いするような状況になっております。これについては、少子化対策なり子どもを産めないという人たちの観点から医療保険で不妊治療を適用すべきではないかという御意見があり ます。
     一方で、不妊治療については、医療技術としてまだまだいろんな人がいろんなやり方をしている状況なんですね。現状としては、産婦人科の方が自分たちの考えに基づいてやって いらっしゃる状況にありますので、そういう中で本当に医療保険として適用すべき技術なのかどうかというのは、そこはよくよく判断していかなければならないと。例えば、不妊治療と いうのは回数もお金もかかりますけれども、どこからどこまでが医療保険の適用範囲なのかというのも含めてよくよく検討しなければならないというふうには考えております。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。いろいろと興味深いやりとりがあって思わず時間を超過してしまったのですけれども、これで厚生労働省からのヒアリングは以上とさせて いただきます。どうもお忙しい中ありがとうございました。
     (厚生労働省退席)
    大澤会長
    では、引き続いて私どもの報告取りまとめに向けた議論を行っていきたいと思います。
     最初に、私から前回、主に公的年金について、中立性に関して諸外国の例、例えば、夫婦間の年金分割などについてケース・スタディを行ってはどうかということを提案させていた だきました。それに関連して事務局で整理していただきましたので、説明をお願いいたします。
    事務局
    まず、制度設計の主な要素をゼロ・べースで考えてみたらどうかということ。そして、女性のライフスタイルの選択の観点から個人の受払いベースを中心に見て、マクロ の財政のことは直接扱わない。マクロの財政の問題としては、例えば、スウェーデン型であれば、経済成長率、人口構成によって給付が変動するとかというのもありますし、それか ら給付建てか拠出建てかですとか、別の言葉では賦課方式か積立て方式とかという議論もあるんですけれども、これは言ってみれば、相対価格が不変の中で物価水準が変動す るというようなことに似たようなイメージがありまして、中立性には余り関係ないかと思いますので、取り除いて考えます。それから、基礎年金の公費投入を3分の1から2分の1とい うようなことも中立性とは直接関係ないのではないかということで、とりあえずは落とすべきかと思います。
     それで、全体的枠組みして、公的年金のほかに企業年金、個人年金もいろいろあるんですけれども、複雑になり過ぎるので公的年金に限定します。
     次に、公的年金の負担面と給付面に分けてみますと、負担面についても同じように複雑になりますので、一般財源への納税というのは除いて、とりあえず整理してみます。
     まず単位ですけれども、負担の名義という狭義の観点からとらえれば、日本の公的年金は個人単位ではないかと思います。夫婦単位といいますと、今、御説明があった健康保険 というのは世帯単位で、名義は世帯主、被扶養家族とかということになります。そういう意味では年金は個人単位ですが、税制で夫婦合算制をとっている国がありますけれども、そ れはそれで似てくるんだと思います。あるいは、夫婦間の所得分割を認めれば、夫婦単位に類似してくると思います。年金目的限定税などは区別なしということになるのではないか と思います。
     負担者の範囲ですけれども、全員というのが国民年金、一定以上の就業時間などがあるものが厚生年金。外国には任意のがありますが、その他ということになるのではないかと 思います
     それから徴収額算定のベースとして消費(一般)とか、消費(支出合計額)の2つを特に区別してみます。
     それからこの徴収額算定のベースとの関係ですけれども、国民年金はなしで固定額、厚生年金の方が比例ということかと思います。
     それから育児期間等への配慮では、日本では国民年金は、減免なし、減免して負担済の扱いというのが厚生年金かと思います。
     それから夫婦間の所得分割、これはいろいろ整理ができるかと思うんですけれども、とりあえず、年金保険料納付記録記載するときで見れば、日本ではそういう制度はなくて、ス ウェーデンなどが選択的分割している。
     例として一応整理してみると、年金は消費課税でという場合には、これは先ほど説明しましたように、支出合計額のトータルとしての消費にかけるということで、消費税はあくまでも 消費一般と、こういう違いがあるのではないかと思います。
     次に給付面として、これも同様に給付される名義が誰かというふうに狭義にとらえてみますと、日本の年金というのは個人単位と言えるのではないかと思います。夫婦単位という ことであれば、例えば夫婦連名で給付して分割は夫婦に委ねるということも個人単位に近くなるのではないかと思いますし、健康保険も給付については世帯単位と言えるのではな いかと思います。
     それから、諸外国には、日本の場合の第3号被保険者制度に類似したものとして配偶者年金をとっている国がありまして、これはあくまでも配偶者、御主人が生きているときの措 置でありまして、スウェーデンではこういった制度はありませんし、日本とアメリカ、イギリスではこういうことがあるわけです。
     それから遺族年金は、高齢配偶者への年金と若年配偶者の年金と2つに分けて考えた方がいいかと思うのですが、これはいずれも、配偶者が亡くなってからでありまして、日本 の場合、いずれも強制ということになっております。
     重ね方のタイプですけれども、いろいろタイプがあるんですが、日本は基礎年金がミニマムで、それプラス所得比例という形になっております。
     それから「ミニマム」部分の設定の仕方をみると、これがいろいろありまして、低所得者限定というのがスウェーデンやフランス、後ほど御紹介しますけれども、全員一律というもの が基礎年金があるところでございまして、日本とか、かつてのスウェーデンなどもそうです。
     それから、負担ベースと給付額の関係をみると、日本の厚生年金はベース比例ですし、それから基礎年金は定額になるかと思います。
     所得再分配について考えますと、日本はなくて、アメリカなどでは階段型に逓減があります。
     それから夫婦間の年金分割ということでは、今度は離婚時になりますけれども、これが日本ではなくて、いろいろと分割ができるような国もございます。以上が1番目の整理です。
     次に、ライフスタイルの主な選択肢というのは何を考えたらいいかということを整理してみますと、まず最初が就業で、雇用者になるのか、自営業かということも含めてあると思いま す。
     婚姻については婚姻状態、非婚姻状態があるんですが、日本ではまだ婚姻は男女間に限定して整理せざるを得ないと思うんですが、就業や婚姻との組み合わせでどれを選択 するかということへの中立性が問題になるのではないかと思います。
     それから、子どもについても持つか持たないかがあって、少子化対策というのは持つのを優遇するということで、むしろ中立性には反するようなことになってしまう可能性もござい ます。それから念のためですが、男性か女性かというようなことや、長生きするか、しないかということは当然選択できません。単に、例えば女性に不利というだけでは中立性という 観点から必ずしも問題ならない場合がございます。
     それから長生きするか、しないかに関して、男性と女性では年金支給開始年齢や平均寿命が異なりますので、当然、女性の方が受給期間が長いんですけれども、そういったこと から、年金保険料に差を設けるべきだという意見があるとしますと、これは選択ができませんので、公平性の観点から問題になるのではないかと思います。
     それからさらに、女性のライフスタイル選択の観点から制度設計に当たっての主な前提条件も整理してみますと、結婚して有償労働と無償労働をどういうふうに分担する選択を するかということが中間報告における主な「就業への中立性」のとらえ方だったと思います。
     それから、もちろん前提条件として賃金格差等がございますし、それから、自営業の所得について、徴収側・被徴収側の双方のコンセンサスのある算定が難しいとか、婚姻してい る場合と、そうでない場合があるというようなことです。
     こうした分類や前提条件を配慮して各国の制度ができ上がっております。
     各国(日本・アメリカ・イギリス・スウェーデン・ドイツ・フランス)の公的年金制度をまとめてみると、制度の創設・経緯では、企業の年金の流れでくるものと、一般の全国民を対象 の流れがございまして、日本は労働者年金保険から来ていますけれども、イギリスとか、スウェーデンとか、ドイツとかは一般の国民年金の流れからきております。
     企業年金・個人年金との関係では、アメリカなどでは、例えば企業年金は公的年金を考慮していろいろ制度を決めるとか、かなり重きをおいていますし、あるいはフランスなどでは 強制の企業年金というようなことまでございまして、いろいろパターンはあるわけでございます。
     とりあえず公的年金に限って言えば、まず負担面では、単位は何かといいますと、これはどこも個人単位でして、あえて言えば、日本の第2号被用者の方は個人単位なんだけれど も、第3号被保険者制度による世帯の配慮がある。中間報告では、税制に関してはこういう整理をしていますけれども、これに合わせた整理が一応できます。
     それから、負担者の範囲ですけれども、自営か、そうではないかでいろいろ負担の仕方は分かれます。
     それから、徴収額査定のベースはどこの国も所得になっているようです。
     それから、徴収額とベースの関係では、イギリスと日本の自営というのは固定額ですけれども、そのほかは所得比例と。
     それから、育児期間等への配慮は、日本の自営の場合はないわけですが、被用者の場合は減免して負担済みの扱い。アメリカがこういった措置はないんですけれども、ほかの 国については何らかの形である。
     それから夫婦間の所得分割、これは保険料納付記録記載時ですけれども、日本、アメリカ、イギリスはないんですが、スウェーデンとドイツにはそういった制度がもう既にある。
     それから、給付面をみると、これも単位としては個人単位なんですけれども、いろいろな配慮がある。配慮の仕方が2つありまして、日本の場合で言ってみれば第3号被保険者、 それから高齢配偶者への遺族年金、アメリカの場合も配偶者年金と高齢配偶者の遺族年金、イギリスも同様な配慮があって、スウェーデンの場合にはこの2つともない。ドイツとフ ランスについてみれば遺族年金はありますということであります。
     それから第3号被保険者制度、あるいはこれに類似したものを再度みてみると、日本は第3号被保険者、特にイギリスでは配偶者年金があります。スウェーデンとドイツがなくて、 フランスも一応なしとは整理してみましたが、配偶者がいると賦課される場合もございます。それから、高齢配偶者の遺族年金ですけれども、スウェーデンを除けば、どこの国もあ る。
     それから若年配偶者、子供への遺族年金について、何らかの形でどの国でも強制ではあるようでございます。
     それから、重ね方のタイプとミニマム部分の設定については、日本の場合は、2段重ねなんですが、アメリカはとにかく所得比例1段だけで、所得比例の程度も2段階くらいで変わ るんですけれども、いずれにせよ、ミニマムというのはあくまでも生活保護でやる。それからイギリスの場合は日本と同じで2段重ね。スウェーデンの場合は所得比例だけだが、ミニ マムとしては低所得者に保証年金という形で保障する。それからドイツはアメリカと似ておりまして、所得比例だけでミニマムは生活保護。フランスはスウェーデンに似ていまして、 所得比例が中心なんだけれども、老人最低保障という形で所得が低い人には配慮する形でミニマムを設定している。
     また、負担ベースと給付額の関係ですけれども、基礎年金がある日本とイギリスは基礎年金部分は定額なんですが、ほかについてはみな所得比例と。
     それから所得再分配。基礎年金があるところでは所得再分配をやっていますし、アメリカでは2か所くらいで乗率が上がっている。ベンドポイント制というのがございます。
     それから離婚時の夫婦間の年金分割を見ますと、日本は年金制度上はございませんが、アメリカ、イギリス、ドイツなどではそれぞれあるようでございます。
     それから、参考として、世帯による所得替率の差として試算の一例ということで、厚生労働省の方で試算を引用しながら整理してみると、日本については片稼ぎの方を共稼ぎより も優遇している。同様に、配偶者年金とかがありますアメリカ、イギリスについても片稼ぎを優遇する。一方、スウェーデンとドイツについては全く同じ所得分配代替率になります。そ れから、支給開始年齢とか、一般財源からの繰入れも各国ごとに異なります。
     では、日本について、今後の公的年金制度は、中立性の観点からいかにあるべきかということを整理してみますと、中立性ということをどういう観点からチェックしたらいいかという ことでチェック項目を2つほど挙げてみますと、結婚している場合も共働きか片働きか、このどちらを選択しても不利にならないというのが第1点。2番目は、言ってみれば、独身か 結婚しているかでどちらも不利にならない。こういう観点があるかと思います。
     それから、雇用者と自営業の選択の中立性というのもあるんですけれども、所得捕捉可能性というようなことにも左右されますので、とりあえずは検討の対象としないということ で、片働き、共働き、独身か結婚しているか、この2つについて主にチェックしてみるわけでございます。
     次に、個人単位化の意味なんですが、実は様々な意味があり得ると思います。既に見たように、名義だけを見るなら、狭義には日本は個人単位になっていまして、そのほかどう いう意味が考えられるかということをいろいろ挙げております。
     まず、厚生年金の適用拡大ですが、これも個人単位化ととらえて、中間報告ではかなり重点を置いて記述しています。
     それから、次が高齢配偶者への遺族年金の廃止を個人単位化ととらえるならば、スウェーデンでもその意味では個人単位化しております。それから、若年配偶者や子どもへの 遺族年金については、受給する確率が非常に低いため、「将来を予測した行動」としては選択に影響が余りないのではないかということで、とりあえず検討の対象から外しておりま す。
     高齢配偶者への遺族年金の廃止について、中立性の関係がどうかということで、先ほど述べた片働き、共働き間の中立性の関係でみますと、これは若いときに無償労働を分担し てしまうと、配偶者が死亡した後にはもらえる年金額が相当減りますので、共働きを若いときに選択することは有利になります。ただ、これに対しては専業主婦が担う無償労働を軽 視するものだという考え方もありますけれども、一方、共働き世帯も無償労働を行っている点では同じであるということで、これは議論が分かれるのではないかと思います。
     それから次に結婚と独身の間の中立性でみると、これも似たような理由で若年時に単身を選択することは有利になるんですが、一般的な意見を見ると、離婚を促進するとか、少 子化を促進するとか、こういう批判を受ける可能性が非常に高いと思います。
     最後に、ほかにもいろいろポイントがあるのかもしれませんけれども、所得代替率の均等化として、要するにこれは片働き、共働き、単身世帯、所得代替率が同じになることを個 人単位化ととらえるとすれば、これは完全に所得比例というふうにして、要するに無償労働を全く支給に反映させないということになります。スウェーデンなどはもう既に実現してい るということです。我が国の場合は、第3号被保険者が何らかの形で廃止されれば実現されるわけでございます。
     所得代替率均等化について、中立性との関係で、片働き、共働き間でみてみますと、今度は配偶者の老齢年金の受給開始時期から配偶者死亡までの間についてみれば、上の 遺族年金の廃止と同じように、共働きを選択するのは当然有利になります。
     次に結婚か独身かということについてみても、また同じように若年時に単身を選択することが有利になると思います。
     あと、念のために一度整理しておくと、男女間賃金格差と年金の関係はどうかということなんですけれども、個人単位化をどうやっても、格差が残っていれば年金の給付額に差が出 てきまして、どうやっても影響が出てくるということだと思います。ということで、公的年金の改革と同時に、雇用システムの改革も必須だと思います。
     では、公的年金に対して中間報告ではどうしたかということなんですけれども、その内容ですが、適用拡大ということももちろんやっていますし、それから実はわかりにくいんです けれども、保険料納付記録記載時点で所得分割を認めたらどうかというようなことも示唆しております。これは負担と給付とも狭義に見れば個人単位なんだけれども、実際、夫婦 間で女性が無償労働を担うことが多くて、家計は夫婦単位で営まれていることが多いことなどから、夫婦への配慮は行ってきましたので、夫婦への配慮というのを所得の分割を夫 婦に委ねて、明示的に導入するというような考え方もできるのではないかと思います。
     なお、選択制というのは、1つは、社会的に定着するまでは移行措置というような意味合いもあるかと思います。ほかの意味合いももちろんあると思います。
     それから中立性との関係では、片働きか共働きかの観点からみると、これは夫婦間の選択に考え方としてはひとまず委ねてしまって、年金制度自体が左右しないというふうな整 理をしてもいいのかなと思います。
     それから、男女間賃金格差などの環境にある程度左右されなくなるという意味は、個別に見れば、例えば、女性の方が賃金獲得能力が高い場合もありますし、男性の方が無償 労働分担への志向度が高い場合、いろいろな状況に適応できますし、一般的に言ってみれば、格差の解消が余り進展しなければ、平均的に男性が有償労働を担う比率が高いで あろうし、格差の解消が進展すれば、男女平等になっていく可能性は高いと思います。
     それから、結婚するか、独身かという観点では現在とは余り変化がないかと思います。
     それから、これを導入しますと、高齢配偶者への遺族年金は必ずしも必要がなくなる。それから、離婚を促進するという見方があるんですけれども、離婚時の年金分割に比べれ ば、要するに夫婦で頑張ってやりましょうということで社会的にも受け入れやすい面があるんじゃないかと思います。
     それから、中立性以外の観点として事業主負担との関係で、なぜ事業主が専業主婦の分まで負担しなければいけないかという議論があるんですが、これは現状からの直接的変 化はないんじゃないかということが一応挙げられます。
     それから、高山委員が7月に示唆された一例は、要するに中間内容に加えて、まず1つめとして基礎年金を税金で賄う部分だけにすると。さらにその上で所得再分配を強く考慮す ると。2つめで保険料を賄う部分は所得比例として、掛け金建てか給付建てかどちらかにして、負担と給付のリンクを強める。3つめとしてさらに保険料の納付記録記載時の所得分 割を認める。こういうことではないかと思います。仮に、基礎年金部分で納付した保険料額とは給付額を完全に無関係にすれば、第3号被保険者問題というのはある程度解消され ることは可能になると思います。
     この例を中立性との関係でみますと、所得分割が認められますので、中間報告の内容と同様の中立性はまず確保されるだろうし、それから、負担と給付のリンクは強まりますの で、所得代替率は均等化の方向に向かう中立性の影響も既に述べた所得代替率平均化の中立性への影響と同じだと思います。それから、基礎年金部分を高山委員の示唆され る「下に厚く上に薄い給付」の設計の仕方次第では低所得の片働き世帯の所得代替率というのはかなり補えると思います。なお、片働き世帯というのはすべてが低所得ではなく て、相対的に高所得の世帯がかなり多うございます。ということで、高所得者の世帯ほど所得比例の要素が強い、逆に言えば、無償労働の年金支給への反映が小さくなる家庭も あるんじゃないかと思います。
     それから、中立性以外の観点についてみれば、ミニマム部分の意味は明確になりますし、基礎年金額は基本的には減少してしまうんですけれども、これをどの程度解消できるか はマクロの財源問題ということで、これが実は年金制度改革の全般の中で一番問題ではないかと思います。
     それからスウェーデン型というのを考えてみますと、高山委員の案では現行の基礎年金が長方形で横たわっているのを、左側が長くて、右側が非常に小さい三角形になってしま えば、スウェーデンの体系に似てくるわけで、という意味で高山委員の案とスウェーデン型は非常に類似したところがあるわけでございます。
     最後に、以上の議論を踏まえた仮のまとめを考えてみます。これで決まりということは全くございませんけれども、厚生年金の適用拡大は早急に行うと。選択制で所得分割を求め るのが次のステップかというようなことを例として挙げてます。それから、基礎年金と所得比例部分のあり方、これを仮に見直しをするのであれば、その改革後の基礎年金の「下に 厚くて上に薄い給付」が中立性を検討する上での鍵になるような気がします。
     それから、どのような年金改革が行われるにしても、賃金格差等の存在は影響しますので、雇用システムの改革は同時に進む必要があるということでございます。
     以上、かなり大まかに整理してみましたが、間違っている点もあるかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
    大澤会長
    総ざらいという感じで整理をしていただきまして、議論の材料として大変有益だと思います。
     では、今の説明をもとに、公的年金についてどのようにまとめていったらいいかなどいろいろと御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
    大沢委員
    最後の点で、雇用システム改革を進めることが必要というのは、男女間賃金格差を縮小するような方向の雇用改革を進めるという……。
    事務局
    賃金格差だけでなく処遇だとか昇進とかいろいろとあると思います。
    大沢委員
    賃金も含めた、そういう格差を縮小するような施策を同時に並行して導入しないと、年金制度だけいじっても、むしろ効果が出てこないということを報告書で強調したい ということですか。
    事務局
    はい。あとそれから、賃金格差が解消するまでは、年金改革を待っていたらいいというような議論もあるんですけれども、そうじゃなくて、どうやって改革しても格差の影 響が出てきてしまうということだと思います。
    大澤会長
    細かいことなんですが、先ほどの若年配偶者や子への遺族年金について、選択に影響を与える与えないということなんですが、もう少し直接的な中立性の問題とし て、男女で明文上の取扱いの差があるので、そのような観点から、若年配偶者の遺族年金については、この調査会としては明文上の男女差というのは解消してもらいたいと。もち ろん経過期間を置きながら、しかし解消してもらいたいということになるのではないかと思います。選択以前の意味でこのことはあるんじゃないかと思います。
     また、最後のところでスウェーデン型というのを特に取り上げていて、ほかの制度についての比較衡量は、これからすべきことです。仮のまとめに一気にいってしまったので、何か これで結論が出たみたいな雰囲気はあるんですけれど、一方で中立性という観点からは2つぐらいの選択肢があって、たとえば3号は一律1号とするという解決法もあると思うんで すね。それで定額負担をしていただくと。逆に基礎年金部分は全額税方式にすると。このことで1号、2号、3号の区別がなくなるから、その限りで何を選ぶかという選択の誘導効果 というのはなくなるだろうというのはあり得るあるわけですね。恐らく、この3番目は橘木委員の御推薦の……。
    坂橘木委員
    昨日、実は内閣府で公的年金のシンポジウムがありまして、4人のバネラー、私と小塩さんと、八田達夫さん、もう一人が上智大学の山崎泰彦さん。3人の経済学者、 きしくも基礎年金全額税で一致しまして、山崎さんだけはやっぱり違う。厚生労働省の案に近い案を主張されて、内閣府の方は全額税というのもあり得ると考えるのかな、どうです かね。
    坂東局長
    それは消費税ですか。
    坂橘木委員
    これは人によって違う。消費税というのもあるし、所得税というのもあるし、人によって財源をどこに求めるかは合意はないですけれども。
    大澤会長
    年金目的税というのもある?
    坂橘木委員
    そういうことです。司会者はこの間調査会で説明してもらった喜多村氏でしたけれどもね。
    事務局
    基礎年金を税でやるかどうかというのは、中立性の観点から、間接的には影響してくるんですけれども、中立性から論理を演繹してやっていくと、直接に主張できるとい いますか、なかなか判断しがたいところがあるんですけれども、影響が出るのは間違いないと思いますし、それから議論の仕方として、それほど主張される方が多いわけですから、 いろいろな選択肢を考えた上で、これについてはこう、これについてはこう、こういう示し方も当然できると思います。
    坂橘木委員
    そこでそういうことを決める必要はないわけで、そういう考え方も、3号被保険者の中立性を除去するためには基礎年金全額税というのも1つの選択肢であるぐらいで いいんじゃないでしょうかね。それ以上のことは言えないでしょう。
    大澤会長
    実在の制度でもって中立性がどの程度のものかとやりますと、関連するほかの社会サービスだとか、税率だとか、税の直間比率だとか全部違うので、実在の国でど こが中立性が一番いいというふうにするのはこの専門調査会の仕事ではないのかなと。むしろモデルにして、中立性がどうかというときに、基礎年金を税方式でというのは、ともかく は1号、2号、3号の区別がなくなるわけですから、選択に影響を及ぼすとか以前に、選択肢がなくなってしまうという意味では、ある種の中立性の確保の仕方ではあろうかなと思っ たものですから。
     もう1つのモデルとしてあげた3号は全部1号へというケースでは、これは今度は3号のいる世帯の負担は一挙に月額1万3,300 円増えるわけです。ただ、1号の世帯のとの間の 中立性みたいなものは図れます。3号について所得のない人からはとれませんといっても、玄人にしかわからない理由なんですよね。隣の1号では学生からも無職の人からもとっ ているわけですから。
    事務局
    1号の問題は、所得捕捉可能性の問題ということで、とりあえず横に置いてと言いましたけれども、仮に所得代替の程度が強くなって基礎年金的な要素がなくなります と、要するに納めれば納めるだけ、年金額が増えることになります。そういう意味では納めがいがあるといいますか、いろいろな方がそういうことをおっしゃっています。所得比例を 強めれば、自営の方も、納めるインセンティブが出てくるというのはあると思います。ただ、中立性とは直接関係ないかもしれません。
    坂東局長
    年金制度は、全体に対する信頼感にもかかわるから必ずしも言えないかもしれない。
    大澤会長
    神野委員がよく強調しているのは、イタリアでそれをやったら、みんな申告するようになって税収が予想以上に増えたというようなことです。年金の保険料収入だけで はなくて、税収も増えちゃったというふうに言うんです。
    坂東局長
    今までがひどすぎたからじゃないですか、イタリアは。
     例えば、出産育児期の3号被保険者の保険料なんかは問題がなくなりますよね。税方式でやれば。
    大澤会長
    そうですね。それはあります。
    坂東局長
    子どもが大きくなってしまって、育児だとか、あるいは介護なんかをしなくなった程度の無償労働をする3号被保険者に関してはいろいろな意見はあり得ると思うんで すけれども、福祉的な労働、育児ですとか介護ですとかをやっている人たちを何らかの形でカバーしなければいけないというコンセンサスがあると思うんです。
    大澤会長
    先ほど事務局が、所得代替率を引用して説明されましたが、興味深いことに、皆様気がつかれると思うんですけれども、スウェーデンとドイツというのは世帯の類型に かかわらず、所得代替率は38とか43の一律ですから、そういう意味で制度内再分配というのはない。業績主義的年金制度というんですけれども、日本やアメリカというのは、1つ は、片稼ぎに非常に厚くなっているということ、それから女性の単身者の所得代替率は高くなっている。原理は違っていまして、アメリカの場合にはベンドポイントになっているのと配 偶者年金があるので、こういう所得代替率の差が出る。日本の場合はもっぱら基礎年金制度によって、こういう所得代替率の差が出る。もし、これをスウェーデンのように所得代 替率がフラットな制度にしていくとすると、女性単身者の年金の所得代替率が現状よりも低まってしまう。これは年金制度内の再分配をやめるということに伴う問題なので、男女間 の賃金格差を縮めることによって保障するなりしないと、女性のシングルの人は今までよりは不利になってしまうというのは言えると思うんですけどね。
    坂橘木委員
    スウェーデンは片稼ぎ、共稼ぎ、単身に関係ないというのは男女間の賃金格差が余りないからこういう制度が……。
    大澤会長
    いいえ、そうじゃなくて、完全に所得比例だからなんですね。もちろん、所得比例でいって、非常に低年金になってしまう人は、一般財源から補てんされたミニマムに よって所得代替率は高くなると思うんですけれども。
    坂橘木委員
    このミニマムの保証年金の方は、日本の基礎年金よりもはるかに低い額でしょう。
    大澤会長
    と思います。
    坂橘木委員
    私が興味ひいたのは、この報告の中で女性は長生きするからたくさん保険料をとれと、誰が言っているんですか、私、初めて聞いたんだけど。
    事務局
    というか、理屈だけです。
    坂東局長
    理論上そういうことも言えるというだけです。
    坂橘木委員
    そんな深刻な主張でもないんでしょう。
    事務局
    はい。ただ、女性の方が平均受給期間が長いんだから、給付額を多くしろということを言っている方はいらっしゃったかと思います。一般の方ですけれども。
    大沢委員
    支給開始年齢の差がそれであるわけですか、それとは別ですか。
    事務局
    それと全く別です。
    坂橘木委員
    たくさんもらうんだから、たくさん払えという論理でしょう。
    事務局
    というようなことは言われていませんで、長生きするからいっぱいほしいと聞いたことがあります。
    大澤会長
    みなし確定拠出のようにして、受給開始のときに、自分の納付記録がいくらあるか。それを平均寿命までの年数で割って、年々の給付を決めるというような方式をとる 場合には、平均寿命を何歳ととるかというので全然違ってきますよね。65歳で引退して、85歳まで生きるということになっている人と、75、76で亡くなるということになっている人とで は……。
    坂東局長
    みんな自分は平均寿命と違った生き方をすると思っているんですよ。
    大澤会長
    まあ、しかし男女の差もあれですけれども、個人の差というのも多いですから、男女というだけで一律に平均寿命を当てはめるというのも……。
    坂東局長
    それこそ、お酒を飲むかとか、たばこをのむかとか。
    坂橘木委員
    男女でそういう差をつけて……。
    大澤会長
    論理的にはあり得るんです。
    坂東局長
    65の年金受給のときに、人間ドックで全部チェックして……。
    大澤会長
    dna診断でもすれば、もうわかるのかもしれないですね。あなたはあと10年しか生きられない。2年目の年金額を多くあげるということになるかもしれません。
    坂橘木委員
    そこまでわかる時代になりますかね。
    大澤会長
    社会保険制度というのは、それがわからないという前提でつくっていますので。
    坂橘木委員
    リスクのシェアリング。わからないから、みんなでリスクシェアリングやるというのが社会保険ですかね。
    大澤会長
    わかったらリスクじゃないんですから。
    福原委員
    夢のような中立とか、どこから見ても公平という制度というのはあり得ないんですよね。さっきおっしゃったような積み重ねた歴史的現在から、いかにプラクティカルに 公平に近づける努力をするというのには、何を先にやったらいいかという、さっき大沢委員がおっしゃったように賃金格差の問題、これは絶対ありますよね。だけど、それ以外に何が 近道なんでしょうね。それと3号の問題がありますからね。プライオリティを決めるということが1つの選択じゃないんですか。
    大澤会長
    書きぶりとしては、スウェーデン型みたいなものをかなりシンプルにモデル化した上で、中立性の観点から見たメリット、それから問題点、中立性だけではなくて、さっき 言ったような女性シングルの年金代替率が低くなるというような問題点と、それから基礎年金を税方式化した場合のメリットと、考えられる問題点みたいなもの、3つぐらいのタイプ について並べてみるということなんじゃないのかなと思うんです。我々は、これがベストの制度だ、これを採用すべきだと提案するところまでは任務として要請されているわけではな くて、制度の中立性を検討するというところが任務ですので、それにしても、現行制度だけを前提にして、ここにこんな問題がある、あそこにあんな問題があると言っていただけで は、任務の果たし方として不十分なのかなというところです。
    坂東局長
    今、社会保障制度審議会の年金部会で議論をしているのは、11月の初めぐらいに一応案が出てくるのですが。
    大澤会長
    といいますか、10月中に総論の審議を終わって論点の整理が出て、その後各論に入るんです。この間、女性と年金の問題は9月になってからといわれてきて、先週 やっと第3号被保険者問題が資料として出てきたけれども、説明だけでまだ議論していません。10月に2回総論をいろいろ議論して、そのとき3号問題についても少しは議論が進む かなと思っていますけど。
    林委員
    先ほど事務局が仮のまとめとして整理された中で、先ほどから出ている基礎年金の全額税負担によって少なくとも1号、2号、3号の区別そのものはなくなるという、この 部分について書いていないのはどこかに含まれるという趣旨なんでしょうか。3番目に説明された中に含まれるからなんですかね。
    事務局
    3番目に「基礎年金と所得比例部分の見直しを仮に行うのであれば、その改革後の基礎年金の『下に厚くて上に薄い給付』が中立性を確保する上での鍵になる」と説明 しましたが、あまり詳しく説明していないのでわかりにくいんですけれども、これをもう少し詳しくいえば、当然、税の問題になってくると思います。あり方の見直しというのは、要するに 基礎年金は税だけにして、残りは所得比例にしてしまうと。そうしますと、先ほど申しましたように、どの程度下に厚く上に薄く給付するかということで、下の層の方の影響が出てくる といいますか、所得が高い方は余り問題ないんじゃないかと思うんですけれども、所得のない方、例えば無償労働をどう評価するとかというのは、当然ここに大きく絡んでくると思い ます。
    林委員
    外に見える方がわかりやすいかなと。
    事務局
    はい。
    永瀬委員
    就業年数ということをここであんまり考えていなくて、各一時点での給付と負担を比較していますけれども、年金はやっぱり就業年数が非常にきいてきますので、その 点も少し検討した方がよろしいんじゃないかなというふうに思います。
     あと、中立性という意味では非常に中心になっていますけれども、もう一つ所得再分配という視点もあると思うんですが、その両方への目配りをどういうふうに考えるのかというこ ともあるんじゃないかなと思います。
    福原委員
    中立性が目的ではなくて、所得再分配をやるときに中立性を持つようにすべきだということでしょう。
    永瀬委員
    例えば、全くの所得比例にすれば、全く中立にはなるわけですけれども、そうすると、非常に貧しい人は困ってしまうようなことになると。それから、中立性だけを目的 にすると、中立性ですっきりまとめたとしても、それだけではどんなものだろうかという気がする。
    坂東局長
    現に存在しているわけですからね。
    永瀬委員
    それと、さっき大澤会長がおっしゃったような単身者の問題とか、そこも、要するに中立性だけを追求し得ないところがあるということだろうというふうに思います。
    大沢委員
    採用する場合には、所得の再分配はどのような形で配慮されるという、具体的には何か。
    坂橘木委員
    どのぐらいの再分配があるかということですか。
    大沢委員
    むしろ、例えば消費税で賄う場合ですと、どうしても低所得層の負担が重くなるというようなことがあるわけですよね。
    坂橘木委員
    私個人は累進消費税というのを主張しています。その問題があるからね。
    大沢委員
    そういうところもちょっと書き込む必要が……。
    坂橘木委員
    そこまではこの調査会で……。
    大澤会長
    財源のところまでどうするかということは……。そうなりますと、直間比率をどうするかということを、我々は中立性の観点からどう考えるかということを始めなければい けないので、今日の整理というのは、そこのところはカットしていただいているわけなんですけれど。
    大沢委員
    じゃ、配慮すべきと。それも言わない。
    大澤会長
    保険料の負担と給付との関係で見ているということですよね。
    坂橘木委員
    今、永瀬委員が言われたように、中立性の問題ばかりを追求するんじゃなくて、いわゆる再配分的な要素も無視はできないというぐらいのトーンでいいんじゃないです か。
    大澤会長
    無視はできないといいますか、その場合には、所得再分配を通じて女性に有利になっていた部分というのが失われるけれど、それについてどう考えるかというような感 じですね。
    大沢委員
    もう一つ、確かに中立性がここでは議論になっているわけですけれども、年金改正をするときに、支え手を増やすことによって税収が増えるということが最終的に説得 力を持つということになると思うので、そういうメリットを中立性、ここではこれについて議論したわけだけれども、将来的には支え手を増やして税収を増やすことが重要だというような 観点で説得力を持たすことも重要かなというふうに思います。ライフスタイルに対する選択の中立性も重要なんだけれども、就業形態の選択における中立性というのは非常に重要 なことであります。事業主負担との関連にもなりますけれども、現行の制度だと、就業形態に対して中立的な採用にはなっていないために非正規が非常に増えているようなことであ りますから、男女賃金格差の解消ということも、より深めていけば、就業形態に中立的な、それはよく労働者側の中立性が問題になるけれども、むしろ使用者側の中立性の問題も 非常に重要だということを触れて、そうじゃなければ、年金負担や医療費負担を逃れるような行動というのがこれから増える可能性があるというような視点は最終報告書には触れ る必要があるんじゃないかなと思います。
    林委員
    先生がおっしゃったことは、一番最後の恐らく雇用システム改革の中身としておっしゃったことですね。ここはこれからもう少し議論する課題になっているところですね。
    大澤会長
    雇用システム本体というのもそうなんですけれども、今、大沢委員がおっしゃったことというのは、個人個人の労働者の方も、これ以上働くと損か得かとか、将来、年金 はどうなるか、税金どうなるかとかといって選択をしていて、それは必ずしも合理的な選択ではないかもしれない。制度に誘導されているかもしれないというのと同時に、一人一人が 選ぶ選ばないにかかわらず、事業主がそういう仕事しか、つまり事業主の保険料負担を払わなくて済むようなジョブしか提供しないという、そうしたら選ぶも選ばないもないわけだか ら、雇用主にそういうジョブをオファーさせるようにしむける制度は、そういう意味では、中立性を損なっていると言えるかもしれません。
    永瀬委員
    今の件に関して先ほどライフスタイルの主な選択肢として就業、非就業と整理されていましたが、おっしゃっているのは、就業の中身も雇用者という1つだけでなくて、 もう少し就業時間とか、就業形態も入ってくるだろうということと、それからあと、これは選択とは言えないかもしれない側面で、ここに並べるのは変かもしれませんけれども、失業と か、あるいは自ら望まない形での非正規就業とか、そういうこともあり得るかもしれないということも、この辺の整理に中に含めることもできるんじゃないかというふうに思います。
    大澤会長
    雇用者という場合にはフルタイムで社会保険の適用になるというのを念頭に置いた雇用者で、就業その他というのは自営業、パート、非正規、保険諸々という意味で すよね。非就業というのは、失業もあれば非労働力というのもあるということですよね。
    永瀬委員
    選択と言えない側面もあるかもしれないということがありますね。
    事務局
    中間報告では、まさに雇用者の中のパートタイマーかフルタイムかというのは議論してきて、ひとまずそれは置いておいてということでやっております。
    大澤会長
    木村委員いかがでしょうか。ぜひ御意見をいただきたいんですが、この間も読売新聞に御意見を寄せていらっしゃいますが……。
    木村委員
    余りにも分類の仕方が今まで考えていたのと違うので、私が意見を言っていいのかなとか思って。例えば、遺族年金がある制度というだけで、我々は世帯単位といっ て見てしまうんですが、ここでは遺族年金は例外的にあるというような感じで、基本は個人なんだという部類ですよね。だから、考え方自体が違うのかなというように思っていたの で。それから、アメリカの配偶者の年金を年金分割の方に入れちゃっているけど、むしろ、あれは加給年金の分類の方が適しているんじゃないかとか、そういう細かなところが違うの で、意見を差し控えていたんです。
    大澤会長
    今の点についてはどうですか。アメリカは年金分割をしていませんよね。離婚のときには裁判で分割するんですよね。
    事務局
    そうです。
    木村委員
    日本が所得再分配がないとおっしゃったけども、厚生年金が所得再分配をやっていますし、分類そのもので大分考えが違うなというところが1つあります。あとはどう いった制度が望ましいのかというのは、皆さんの御議論したのと私も同じ意見です。
    大澤会長
    先ほどの事務局の整理は、今回テンタティブに整理いただいたわけで、決まったのではありませんから、大きい点、小さい点にかかわらず、ここはおかしいんじゃない かという御意見を追ってでもいただけると大変ありがたいと思います。
     例えば後日、木村委員をお訪ねして、御意見を詳しく伺うなり何なり、そういうことをお願いします。ほかの委員の方々も、大きいこと、小さいことにかかわらず御意見をいただけれ ば幸いです。
     それで、そのほかいろいろと御意見をいただいていまして、必要なデータ、それから労働力率と出生率との関係などについて御意見をいただいています。それについて少しデータ をとっていただきましたので、説明をお願いします。
    事務局
    わかりました。では、まず女性の労働力と合計特殊出生率の関係ですけれども、中間報告で使ったものだけではどうも判断できないんじゃないかという御意見でしたの で、いろいろなものをつくってみたということでございます。
     まず、国別に時系列をとってみると12か国について作成してみました。ほかの国ではデータがなかなか完全にそろわないということでとりあえずつくっておりません。
     それから、労働力率なんですけれども、中間報告では女性の25歳から34歳の労働率をとっておりますが、今回は15歳以上ということでちょっと定義が違います。見ていただきま すと、3つぐらいのパターンに分かれるという見方もできると思います。1つが右下がりのグループでして、日本がそうなっておりますし、次のページでは、イタリア、スペインは異論 ないんじゃないかと思います。これの見方ですが、フランスもひょっとすると下がっているなというようなとらえ方もできるかもしれません。それから平らなグループというのは、ドイツ は平らなのではないかと思いますし、それからイギリスもそうです。あと、オランダ、ノルウェー、スイス、オーストラリア、これも平らなのかという感じはします。右上がりなのは、アメ リカは右上がりといったような気もするんですが、あとスウェーデンも右上がりというような感じはいたします。いろいろ見方によって違いは出てくると思います。
     以上の時系列をあえて一つの図にまとめてみたんですが、ちょっと複雑ではあるんですけれども、何となくu字型じゃないかなという感じはあります。それから、大きくスペイン、イタ リアというグループが左側にあって、オランダがそっちの方から抜け出して、右側の方に近づいてきているのかなという感じはいたします。それであと、右側のグループで日本とドイ ツが最近は外れかかってきているのかなと、こんな感じはいたします。いろいろな見方が可能だと思います。
     それから次にgdiとgemの関係をとってみると、労働力率の代わりにそれを使ったものでして、その最初のgdiはジェンダー開発指数でして、平均寿命だとか、教育水準だとか、 一人当たり国民所得、これは男女別に見て男女に格差があるというものついては出したものでして、これもu字型になっているんじゃないかという感じがして、左側の方はマレーシ ア・メキシコ・チリグループと、インド・中国・ロシアの2つのグループに分かれているような感じもします。
     それから次のgemの方ですけれども、今度はジェンダー・エンパワーメント指数でして、これは具体的には女性の所得だとか、専門職、技術職に占める女性の割合とか、国会議 員に占める女性の割合とか、そういったものを総合していまして、これは右上がりかなという感じで、それも2グループに分かれるのかなというような感じには見えます。
     次は、大澤会長から言及があった八代先生のつくられたものですが、女性就業と男性就業の比率を横軸にとって出生率を見るとu字型で、左側が途上国、右側が先進国というよ うなイメージにはなるのではないかと思います。
     それから最後は、日本の都道府県別に横軸に労働率、縦軸に合計特殊出生率をとると、これはどなたかが見ても右上がりなのではないかと思います。アウトライヤーが東京と沖 縄というのも、これも異論がないと思います。一番左側に飛び離れて奈良県がありまして、一番右は長野というようなことになっております。
    福原委員
    誤解があるといけないので、言い方を気をつけなくちゃいけないんですけれども、アメリカは飛び離れているのは多民族国家だということが非常に大きいでしょうね。
    坂東局長
    ヒスパニックの人口が増えているというのが影響しているんでしょうね。
    福原委員
    と言っていますね。実際どうなのかよくわかりませんけれども。
    大沢委員
    人種別に見ても興味深いですよね。ここに出すかどうかは別にして、白人と有色人種みたいなレースで分けたのを昔見たことがあって……。
    福原委員
    余りそういう見方はアメリカではしないんですよね。
    大沢委員
    教科書にはよく分けて出ているんですが、確かにティーンエイジャーの出産が増えたことが出生率を上げているんですが、白人女性でもそれほど下がっていなかっ たように思いますが、ただ、もう一度調べて……。
    福原委員
    高年齢化したということは言っていますね。
    大沢委員
    高年齢化しています。それは時系列で簡単に見られると思います。そうするとわかると思います。
    福原委員
    働けるところまで働いて、そして子どもを産むことして、それから今度子どもがある程度子離れした時期にコミュニティの活動に入ったり、市長選に立候補したりすると いう、市長選までいかなくもですね。
    大澤会長
    たくさんの国をとりあげていただいたというのはとても参考になるんですけれども、1つ注意した方がいいかなと思うのは、イタリア、スペイン、まあ、オランダも部分的に そうなんですけれども、カトリックの国で中絶はもちろん産児制限も公認されていなかった時期をどうとるか。フランスもある時期までそうだったので、そこのところで見なきゃいけな い。最後の都道府県別というのは、きれいに出たという感じです。
    坂橘木委員
    木村委員に、何で奈良県がこんなところへ、教えてほしいんですが、何か実感ありますか。
    木村委員
    わからないです。全然実感がないですね。専業主婦が多くて、大学進学率が全国一というのはそうなんですけど。
    坂橘木委員
    奈良県ですか。
    木村委員
    そうです。
    坂橘木委員
    専業主婦率が高くて、女性の大学進学率が全国一ですか。
    木村委員
    全部トータルで大学進学率が全国一の県なんです。
    大澤会長
    持家率というのはどうですか。
    木村委員
    持家率は、所得階層がかなり高いから持家率も高いとは思うんですけど、出生率はちょっと気がつかなかった。
    福原委員
    奈良県の人口というのは、大阪のベッドタウン化しているから、その点はどうなんでしょうね。どのくらいが大阪、あるいは神戸に働きに行っているかという問題が、奈 良県というのは人口絶対量が少ないですから、そのうちに、例えば大阪まで30分で行けますから、どのぐらいそういうグループがいるかということによって、かなり大阪に近寄ってく る気がします。
    林委員
    結構多いでしょうね。奈良の産業というのはそんなに多くないですからね。
    福原委員
    大きなものは少ないですものね。観光産業ぐらいでしょう。
    大澤会長
    奈良県についてはケース・スタディもあります。それから男女共同参画に関する意識調査で、性別役割分業を肯定する比率も高かったように思いますね。
    坂橘木委員
    そうですか。
    大澤会長
    そういうところでたくさん産んでいるんじゃなくて……。
    坂東局長
    少ないんですよ。
    坂橘木委員
    おもしろいな。
    大澤会長
    特に最後の図は、今まで求められていたデータなので、このたびつくっていただいて大変ありがたかったと思います。
    大沢委員
    最後の表は、自営率が高いほど出生率が高いということですよね。
    坂橘木委員
    自営業?
    大沢委員
    家族従業との関係で雇用就業だけで、雇用就業率と出生率の関係を見ると逆転するんじゃないかなと思うんですが、やってみるとその関係がはっきりわかるんじゃな いかと思います。東京とか……。
    坂橘木委員
    沖縄がなぜこんなに断突に高いかというのを調べたら多少わかるじゃないですか。沖縄は何で高いんですか。
    大沢委員
    全体の流れを見て、沖縄もそうかもしれないけど、全体の分布を見てどういう関係にあるかということで見てみると、多分そんな関係が見えてきて、私も博士論文で実 はこのテーマで家族従業と比率と見て、家族従業と雇用者と非就業の3つのグループに分けて出生率を見たことがありますけれども、家族従業と専業主婦世帯はそれほど子ども の数が変わらなかったんですが、雇用就業世帯は低かったので、それはすごくラフな推計でしたけれども、育児環境が違うことによってかなり出生率に影響が出ているかなという ふうに思いました。
    福原委員
    長野というのはいろんな点で見て研究すべき地域なんですね。高齢化も進んでいるし、女性労働力も進んでいるし、医療費も少ないという。
    坂東局長
    健康なんですね。
    福原委員
    どういうんですかね。働いていると健康なんでしょうか。
    大澤会長
    地域医療の影響なんじゃないかと思いますけれども。
    坂東局長
    それから、元気なお年寄りが多いというのは、若いお母さんたちが働くのを支えているかもしれませんね。
    大沢委員
    3世代同居がかなりきいていますよね。
    坂東局長
    埼玉ですとか、奈良ですとかというのは、いわば大都市郊外型ですから核家族が多いんじゃないかと思います。
    福原委員
    おばあさんというか、ある程度のお年寄りになってから、孫の面倒を見てかえって元気になっておられると。
    坂東局長
    沖縄なんか、元気なお年寄りが多いという要因がきいているかもしれません。
    大沢委員
    沖縄の農業も家族従業は多いんですか。
    坂橘木委員
    知りません。
    大沢委員
    どうなのか、沖縄のことはわかりませんけれども、出生率が高いわけですね。地域コミュニティができているということもあるんじゃないかしら。都市だと子育てサポート のネットワークみたいなものがないけれども、沖縄の人たちの生活を見ていると、しょっちゅう近所の人が来ていてコミュニティがあって、コミュニティで子どもを育てているところって 結構出生率が高いですよね。そんなところもあるのかもしれないし、女性就業だけの要因でこの低出生、日本の場合、特にとらえられないというふうに思いますが……。
    大澤会長
    この種のデータは、女性の労働力率が高まると、少子化がいっそうひどくなるということをおっしゃる人が多いものですから、そうではないことが確認できればよいとい うものでございます。
    高尾委員
    フランスは2000年に出生率が1.89になっていて、eu内で一番高くなっているようなんですが。
    大澤会長
    この後高くなるんです。
    高尾委員
    2000年に1.89でeu内で一番高いというふうになって、アイルランドと並んでですけれども、何でそう高くなったかというのが、いろいろ政府が子育て支援をしたからだと いうようなことが書いてあったようなことがあったので、98年までの後、1.89というと随分上がったんだなと思ったんですけれども……。
    事務局
    国際的に標準化した指標で、oecdでつくったりしたデータというのは、どうしても最近のことは抜けてしまうというような制約がございましてこうなっています。
    高尾委員
    少子化であれば、フランスに続けみたいな記事があったので、片やフランスは労働時間を週35に減らしたのを増やそうというような動きもあるわけですよね。その辺は どんなふうな形で今動いているのかなという、すごく興味があるところなんですけれども、かなり労働時間が減っていて、両性が家にいる時間が長くなっていれば、少子化をとどめ るのに一番いいんじゃないかと思っているんですけれども、非常に興味があるところです。
    坂橘木委員
    じゃ、日本ももっと労働時間をカットして、家に早く帰りましょうという提言ですか。
    高尾委員
    男性はね。女性はもっと出ていいと思いますけど。実際に去年の国民生活白書で、男性が帰宅する時間によって女性の就労率が変わるので、男性が早く帰ってくれ ばくるほど女性の就労率は上がるとまで言っていたかどうか忘れてしまいましたけれども。
    坂橘木委員
    坂口大臣も何かそんなことを言っていましたよね。一時ね。早く帰りましょうと。
    大沢委員
    フランスとイギリスが比較されて、フランスの方が出生率が高いのは、男性の所定内労働時間が短いからだというような説明があったと思うんですが、これを見ると、 そんなことが言えるようでもないですね。何かそういう議論がありました。ヨーロッパの国で男性の所定内労働時間が短かいとか。
    坂橘木委員
    それは出生率が上がるということで。
    大沢委員
    出生率だったかな、何かありました?これを見ると、仮説が成り立つかわかりませんが……。
    大澤会長
    はい。そうしましたら、もう一つ資料がございますので、そちらのパートタイム労働の総合実態調査の概要の説明をしていただけますか。
    事務局
    50ページくらいの資料なんですけれども、非常にこの会議に関係することが多うございますので、この際、簡単に御紹介させていただきます。調査の範囲は、事業所を 対象とする調査と労働者対象の調査があって、事業所の方は1万2,000 、労働者の方は2万8,000 くらい対象として、調査の時期が去年の10月1日から10月31日、有効回答率は 76%くらいだということであります。
     定義が2ページにありまして、パート労働者というのは正社員以外ということで、正社員というのは、この調査では終身雇用的な長期勤続を前提としている常用労働者。そういうこ とで、それ以外がパート等労働者。パートとは1週間の所定労働時間が短い。その他というような切りわけになっています。
     3ページを見ていただきますと、まず、これは事業所調査の方なんですけれども、図1は全労働者に占めるパート労働者の割合で、女性を見ると、一番下にありますけれども、平 成7年に29.8%なのが40.3%に上がっておりますし、それから、パートを雇用している事業者数割合が図2にありまして、真ん中にありますけれども、これも平成7年に比べて47.9 から56.6%で非常に上がっております。
     それから、4ページがパートを雇用する理由なんですけれども、一番上の「人件費が割安だから」、これが平成7年に比べて38.3%から65.3に圧倒的に上がっております。あと圧 倒的に増えたのが、上から4番目に「一時的な繁忙期に対処するため」、これも9.3 から27.3%と圧倒的に増えています。逆に2番目の要因としての「1日の忙しい時間帯に対処す るため」、「簡単な仕事内容だから」、これは余り変わっておりません。逆に減っているのが、上から6つ目の「業務が増加したから」、これはかなり減っております。
     それから、下の図4は正社員と職務・責任が同じパートがいるかどうかで、「いる」ところが40.7%。5ページに移っていただきまして、雇用契約の有無で、雇用計画期間を定めてい るのが図5の(イ)で52.9%で、そのうち、「次回雇用期間の定めがある契約に更新する」というのが90%、(ロ)のうち、さらにそのうちで、また次も雇用期間の定めにある契約に変 える理由は、「雇用調整をしやすいから」というのが55.4%ということであります。
     図6はパートの採用時の賃金決定項目で、同じ地域・職種のパート賃金相場、これにそろえているところが圧倒的に多いようであります。
     次の6ページでパート賃金の昇給を行った事業所割合は、パートについていえば、平成7年に比べて80%から52%とかなり下がっておりまして、その決定事由が図7にありますけ れども、「能力の向上に応じて」というのが、平成7年に比べて36.2%から51.8%に上がっていますし、経験年数の方も少し上がっております。
     次の7ページ、次からは個人調査でして、特に男性の方が20歳から29歳が圧倒的に多いんですが、女性の方は40歳から49歳とか、30歳から39歳が圧倒的に多い。それから、 正社員との賃金差の意識が、図9にありましたように、「比べられる社員がいない」とか、「低いと意識したことがない」とか、「低いと意識したことがあるが納得できる」ということで、 納得できないというのが意外に少なかったように思います。
     それから8ページ目は、これも働いている理由別なんですけれども、女性の方を見ると「家計の足しにするため」と、これは余り前回と変わりませんけれども、「生活を維持するた め」が結構増えているということであります。
     それから、次の9ページがパートとしての働き方を選んだ理由。これも女性の方を見ると、やはり「自分の都合の良い時間に働きたいから」とか、「勤務時間・日数が短いから」と か、こんなところが多いようであります。
     次の10ページが今の会社や仕事に対する不満・不安がある割合ですけれども、これは平成7年の41.2%に比べて54.3%と増えていますし、何が不安かを聞くと「賃金が安い」と いうのが圧倒的に多いということであります。
     次のページで今後の希望する仕事で、図13に出ていますけれども、「今と同じ仕事がしたい」が38%で、「単純・補助的な仕事でなく主要な仕事をしたい」というが8.7 %で意外に 少ない気がします。パートについて今後の就業継続希望をみると、「パート等で仕事を続けたい」という人は62.9%で、「正社員になりたい」という人は15.6%しかいません。
     それから12ページとして、これは年収の調整状況でして、一番上の図は「調整に必要がない」が35%、「関係なく働く」が28.1%で、「調整している」人は22.6%ぐらいでして、あと労 働組合の加入状況についてみると、パートを100 %として、「会社にパートが加入できる組合がある」のが29.3%、組合がないのは69.7%、パートの人が加入できる組合のうち、実 際に加入している人は17.9%しかいないということであります。
     あと、36ページに就業調整のより細かいものを書いたものがございまして、これは非常に参考になるかと思うんですが、36ページの真ん中の図の34-2でございますが、調整をし ている人のうち、その理由を聞いているんですが、自分に税金がかからない、103 万を超えないという人が女性では72.6%、配偶者控除がなくなり、配偶者特別控除が少なくなる。 これが45.1%で結構います。それから、会社の配偶者手当がもらえなくなる。これが25.4%、それから健康保険、厚生年金の130 万の壁が38.2%で結構ありますし、雇用保険は 3.8 %ですから、ほとんど関係なくなっていると思います。
     それから、正確には労働時間の4分の3以上になると、厚生年金があるんですけれども、ここまで意識している人は4.4 %しかいませんし、会社の都合によって加入されないよう にされているという人は3.1 %ぐらいしかいない。
     これがとりあえず概要です。御紹介すればこんなところでございます。
    大澤会長
    ありがとうございました。いろいろ御意見や御質問があろうかと思いますが、いかがでしょうか。
    永瀬委員
    質問なんですけれども、今日、余りゆっくり見ていないものですが、さっきのパートというものの定義ですが、パートというのは短時間で働いている人でよろしいんです か。
    事務局
    2ページ、枚数で言えば最初から3枚目の、(2) で「パートとは、正社員以外の労働者で名称に関わらず、1週間の所定労働時間が正社員より短い労働者をいう。」と。
    永瀬委員
    13ページを見ると構成があるようなんですが、それで見ると「その他」という、「パート」じゃなくて正社員並みの人がかなり増えているのかなと思いましたけれども、そ うでもないと見てよろしいんですよね、これは。
    事務局
    数で言うと、「その他」は女性だけでだと723 が973 、単なるパートの女性は、平成7年が5,166 が7,245 。
    永瀬委員
    最近、未婚のパートも増えていますけれども、配偶関係はどこを見ればよろしいんでしょうか。
    事務局
    もちろん調査票では、配偶者いる、いないは記入するようになっていて、個票をたどればわかると思いますが集計表があったかどうか……。
    永瀬委員
    先ほどの御説明で7ページの賃金差を納得できない人が意外に少ないという結果なんですけれども、私がほかで見た調査ではそうでもなかったので、これは短時間 の人が多いからなのかなとかいろんな疑問が、そうじゃなくてそうなのかどうなのか、ちょっと配偶関係とかいろいろ教えていただければと思ったので、出ていないわけですね。
    事務局
    申しわけありません。公表されているのがこれだけで、いずれ厚い本が出るそうなんですが、しばらくしないと出てこないそうです。さらにそれでわからないところは調べて みます。
    大沢委員
    正社員になりたくて非正規を消極的に選んでいる人の割合みたいなものは出ましたか。
    坂東局長
    パートについて、今後の就業継続希望をみると、それは余りないんです。
    大沢委員
    余りないんですよね。余りないんですよねというのは、この読み方ですが、正社員になりたくないから現状に満足しているのかという読み方もできるけれども、正社員 が何をどういう働き方なのかということが、女性のアンケートを書くときにすごく重要になってきて、例えば非常に責任があって、転勤があって、残業が長いとか、そういうことを想定し た働き方を正社員の働き方というふうに女性が考えた場合は、自分は正社員にはなりたくないというふうに答えているわけですね。一方、能力を磨きたいという人も多かったように は思ったんですが、ずっと読んでいくと、自分が結婚していたり、子どもがいたりすると正社員的な働き方はできないけれども、やりがいがあるチャレンジができるような仕事をした いというような意識も、最近ほかの調査をいろいろと見ているんですけれども、多分そういうチャレンジをしたいという意識は、かなり女性の中に増えてきているように思いました。た だ、この就業形態を選んでいるのは、やはり正社員の働き方が日本の場合は非常に労働時間が長かったり、拘束性が強いものなので、そういうことを考えれば、やはり女性には無 理だということがここに反映されているんだなというふうに思うんですが。単なる意見ですけれども。
    坂東局長
    9ページの「パート」としての働きかたを選んだ理由(複数回答)を見ると、「自分の都合の良い時間(日)に働きたいから」というのが多くて、「正社員として働ける会社 がないから」というのが比較的少ないんです。
    大澤会長
    ただ、調査をやるたびに、前者は減って後者は増えているんです。90年調査では、短時間パートの65%が「自分の都合のよい時間(日)に働きたいから」と答えてい て、5年後の95年調査は、ここに出ているように55.8%になって、今回50.9%になったわけですから、調査をやるたびに減ってはいるんですね。むしろ、「正社員として働ける会社が ないから」というのは増える傾向にあるんです。
    大沢委員
    本当だ、そうですね。
    大澤会長
    今回は、しかも大幅に増えていますね。
    大沢委員
    すごく増えていますね。
    大澤会長
    前回は5年間の間に0.5 ポイントしか増えていないけれども、今回は一遍に5ポイント以上増えていますから、非自発的パートの傾向というのは強まっているということ は言えると思いますね。
    大沢委員
    強まっているということは言えますね。
    大澤会長
    それよりも、調整の有無別というのが、これが前回や前々回調査との比較がすぐには出てこないのですけれども、調整している22.6%というのは、私が思っていたより はまだ少なく出ているような気がして……。
    永瀬委員
    私も意外と下がったのかなと、ちょっと……。
    大澤会長
    我々の中間報告にちょっと出しておいたので。
    大沢委員
    3割は調整しているのではと、何となく思っていたような。
    大澤会長
    お手元の中間報告の、図の23ページに就労調整理由というのがあって、これで見ると3割から4割近く「就労調整を考慮する」というふうに答えているんです。これは 「考慮する」なんで、「している」というのとは聞き方が違うのかもしれないんだけれども、もしかして、ここは聞き方を変えたのかもね。
    大沢委員
    見てみるとおもしろいかもしれない。
    永瀬委員
    「調整の必要がない」がすごく増えましたね。
    大澤会長
    そうなんです。
    永瀬委員
    だから、週20時間労働とかを提供する企業が増えたのかもしれないですね。
    大沢委員
    そうかもしれないわね。
    永瀬委員
    雇用保険とか、全部入らないですからね。
    大沢委員
    20時間を超えないから。
    高尾委員
    もともと可能性がないオファーはしないと。
    永瀬委員
    ここ10年ぐらいでパートの平均労働時間はずっと減っているんですよ。企業の方が大体2種類ぐらいの提供をして、1種類は非課税限度にかからないような、非課税 限度内ぐらいのオファーをする企業が増えているのかなと思っていたんですけれども、もちろん、それじゃなくちゃできないというふうな選択肢じゃなくて、長く働きたい人はどうぞとい う選択肢も十分提供しているとは思うけれども、全体の労働時間が短くなる、あるオファーに関してはかなり短い労働時間を提供しているような印象を、例えば、外食産業とかを見 るとありますけれども。
    林委員
    「調整している」というのが22.6%というのは少なく感じるけれども、一番左の「調整の必要はない」というのが35%ありますよね。この必要がないというのは、もともとそ れぐらいしか働かないで……。
    坂東局長
    時間が短いとか……。
    林委員
    これはかなり「調整している」と同じ意味合いを持っているという感じが、私は読んだときしたんですけれどもね。意識していないんですね。調整するという意識はしていな いけれども……。
    福原委員
    調整の必要なし。
    林委員
    既に最初から短く設定しているわけです。短くというのか、少ない働き方というのか。
    永瀬委員
    そうですね。調整の必要がない。最初からそのようになっている。
    福原委員
    あるいは、そのような機会しか与えられない。
    林委員
    ここの部分というのは、かなり一緒に考えていて……。
    大澤会長
    募集のときに非課税枠内といって募集して……。
    永瀬委員
    それは必要がないんです。
    林委員
    そうなんです。この並べ方もかなり問題を感じてみたんですけとね。
    大沢委員
    そうかもしれない。
    永瀬委員
    私が個人的に集計したのだと、97年の調査で短時間に限ると調整が増えていたんですね、別の調査ですけれども。だから、短時間じゃないパートが増えているもので すから、全体で見るとそんなに多くはなくなってきていたんです。97年データで見て。だけれども、短時間の人に限ると、非課税限度内であるという人が増えてきたのかな、どっち だったっけな、よくわからなくなってきました。
    大沢委員
    そういう聞き方の方が正確ですよね。なんか調整しているというと……。
    永瀬委員
    私もここだけはぱっと、最初に発表あるときに見て、下がったなと思って不思議だなと思ったんですけど。
    林委員
    同じようなことが言えるのが、7ページの賃金差の意識別労働者数の割合、これも「低いと意識したことがあり納得できない」というのが15.8%なんですけれども、ほかの 人は納得しているのかというのは、納得しているというのが21%しかないことになっているんですけれども、一番左の「比べられる正社員がいない」というのは、これは必ずしも納得 しているとは見れないわけですから、この読みはかなりの割合であると思うんです。さっきのと同じような感じがしてみたんですけれども。
    大澤会長
    比べられないんでしょう。10ページを見れば、賃金が低いという不満はすごい高いわけですよ。
    大沢委員
    ほかの質問要項で見るとね。
    林委員
    だから、ここの7ページの納得できないのが15%で、あとはかなり納得しているのかといえば、そうじゃないよという見方をしておかないといけないなと。
    永瀬委員
    そうすると、正社員と非正社員というのは分かれてきちゃったというのがますます拡大したということですかね。
    坂東局長
    上手にマネジメントされているということですかね。
    永瀬委員
    しかも、そういう非正社員に女性がどんどん増えているわけですから、余りプロミシングじゃないでしょう。
    林委員
    今のパートの就業を続けたいというのがどこかに出て、11ページですけれども、このパートの人たちは、賃金が安いことであったり、不安定であることであったり、そうい うことを含めて続けたいというふうに言っているかといえば、そうではなくて、労働時間の問題というのか、そこに労働時間そのものが最も生き方みたいなものにつながっているんだ ろうという気がして仕方がないんですよね。この程度でいい、このぐらいの責任のない仕事でいいとか、このぐらい安くていいとか、こんなに何にもなくてもいいとかということを含め て、こんなふうになっているのじゃないだろうなというふうに思います。どんなふうにでも、このデータは使えるんだなという気がして読みましたけれども。
    大澤会長
    本当にだんだん時間が来ました。ワーキングチームの方の経過なんですが、データはどうなっていますか。
    事務局
    もう秒読み段階といいますか、もう来てもおかしくないと思います。
     官報に印刷して、誰々がこういう目的で使いますというのが発表されないとだめで、それを印刷するラグが10日だかそれぐらいあります。本当に目の前まで来ているんですけれど も、つかめないという、申しわけございません。
    大澤会長
    来た折にはどう作業するかということは、打ち合わせはしていますよね。待たされ過ぎて何をしたらいいのか忘れてしまったということのないようにお願いします。
    永瀬委員
    報告が出るのが12月というお話でしたよね。
    大澤会長
    年内にまとめるということを目途にやっています。
    永瀬委員
    そうすると、今のお話ですとデータが来るのが10月末になると思うので、途中で加工を経てくるので。10月末に来たデータを読み込むのにうまくいかないこともあるし、 時間がかかったりもするので、そうすると、12月末の報告書に計量分析はなかなか間に合わないんじゃないかなということは思うんです。それから、単純なクロス表程度をどのぐら い出せるか。ただ、それも注意してやらないと、間違えた結果になってしまうと困るので、そうしますと、果たしてどこまでできるんだろうかというようなことで、困ったなというような話 はいたしましたけれども、ただ、データが来て読み込みをまずしなくちゃいけない。それから、いろんなクロス集計等をしないとなかなか確信が持てないので。
    大澤会長
    とにかく、この就労調整しているというのが、我々が思っていたよりは今回は低く出たわけでして、103 万の壁とか、130 万の壁というのは本当にあるのかという……。
    永瀬委員
    それはありますね。だって非課税にかからないという人がこれだけいるわけですから、収入で見れば、やっぱり立っているはずだろうと思います。
    大澤会長
    この調査会の作業は引き続き、来年は雇用システムの方にもっと軸足を移して、年金についても12月までで全部結論が出るというふうには思っていませんので、引き 続きということにはなると思います。11月の1か月ぐらいで、できる範囲のことで何かきれいな結果が出れば活用させていただくし……。
    永瀬委員
    そういうふうにさせていただいてよろしいでしょうか。
    大澤会長
    そういうことにならざるを得ないと思います。
    永瀬委員
    12月は余り約束しにくいかなという感じです。
    大澤会長
    きれいな結果が出たらということで、あと、連絡事項をお願いします。
    事務局
    13回の議事録はこれで公表させていただきます。それとあと、お手元にあります14回の方の議事録の案がありますので、チェックしていただければと思います。
     それから、次回は、10月23日水曜日になります。
     以上でございます。
    大澤会長
    それでは、どうもお忙しいところありがとうございました。本日はこれで閉会いたします。

(以上)