第15回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成14年9月10日(火) 16:00~18:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      神野 委員
      高尾 委員
      橘木 委員
      永瀬 委員
      林  委員
      福原 委員
  2. 議事
    • (1) 中間報告への意見等と対応例
    • (2) 税制改革、社会保障制度等を巡る動き
    • (3) その他
  3. 議事内容
    大澤会長
    ただいまから男女共同参画会議影響調査専門調査会の第15回会合を開催します。
     では、お手元の議事次第に従いまして、本日の審議を進めてまいります。
     今日は年末の報告のとりまとめて向けて、まず第一に、中間報告に対する国民や委員の意見を踏まえた対応例、第二 に、最近の税制改革や社会保障制度改革等をめぐる動きについて事務局から説明していただき、議論を行いたいと思い ます。
     では、まず事務局から説明をお願いいたします。
    事務局
    中間報告への意見等と対応例について中間報告の項目に沿って説明いたします。
     まず、全体にかかるものといたしまして、改革のセットとしての子育ての支援策が必要ですとか、あるいは結婚すること を前提としている、共働きを理想的なモデルとしているといった誤解を招かないようにし、一人の人間としての女性の人権 確立という観点から考えるべきだというようなことですとか、あるいは、どのような世帯の生活様式にも対応できるようにと いったものがありまして、これらは留意すべき点としてとらえて各箇所で対応するかということかと思います。
     次に、「鑑・序説」や全般への意見でございますけれども、意見としては、中立性確保の意義、自分で保険料を支払うメ リット等を、更に一般の人向けにわかりやすく説明することが必要ということでありまして、これに対しまして、中間報告で 中立性確保の意義は既に記述しておりますが,自分で保険料を支払うメリット、これも付加すればいいのではないかと思 います。
     それから次に、納税者の負担増のため、あるいは制度の破綻を避けるために改革が行われるものではないことを強調 すべきという意見に対しては、そうした観点から検討したものではないということを説明すればと思います。
     次に、「少子化の加速」でございますけれども、意見としては、改革により少子化、それから結婚率の低下が促進される 恐れがあるということなんですが、対応例として、少子化については、一応そういう懸念があるけれども、こういう考え方で あるというようなことを中間報告で述べておりますが、結婚率の低下は余り一般的な見方ではないと思います。
     次に、「育児支援」についての全般的な意見ですが、学校が地域・家庭に教育を振り分けている中で、子供の育成が心 配ですとかということがまずありまして、これに対して、育児支援の重要性について序説等で言及を付加するということで すけれども、この子育て支援については、後でまとめ最後に説明させていただきたいと思います。
     それから次の意見として、無償で子を育てているとか、地域に根ざした活動など専業主婦の果たしている役割をもっと評 価すべきということでありまして、余り中間報告では書いてありませんでしたので、専業主婦のこれまで果たしてきた役割 の記述を付加できればと思います。更に可能であれば、我が国の育児支援のレベルの分析を付加できたらと思っており ます。
     次に、「専業主婦の優遇は不可能か」という点ですけれども、前回の高山委員からの視点でございましたけれども、専 業主婦を優遇しようとしても事実上できない。マーケットメカニズムが働くからということだったんですけれども、労働市場 がそれほど完全かということについて、必ずしも一般的なコンセンサスがあると思えませんので、こうした考え方もあるこ とを簡単に紹介するというのが対応の例かと思います。
     それから次に、「女性の労働力率と合計特殊出生率の相関」です。これも前回、高山委員から御指摘いただきまして、 サンプル数が絶対的に少なく、一本の単純な回帰線を当てはめるということには無理があるんじゃないかという御指摘で したけれども、これに対しては、サンプル数を増やすとか、合計特殊出生率と男女の賃金格差の相関をとってみる、ある いは、各国について時系列で分析するというようなことも考えられますけれども、とりあえず、時系列分析から手をつけて みようかとは思っております。
     それから次に、本文の方でございますけれども、まず「生涯の段階毎に見た税制、社会保険制度、雇用システムの現 状」についてですけれども、全体としての最新統計によるデータのリバイズが必要かと思いますし、それからワーキング チームによる作業結果の盛り込みができればと思うんですけれども、データの入手が9月に間に合いませんで、10月に 入ってからになりそうですので、間に合わないというようなこともあるのかもしれません。
     それで、全般についてですけれども、「就職、結婚、子育て、再就業」、こういう見出しの立て方をしておりまして、そういう 点で世帯単位の概念があるんじゃないかという意見があります。これに対して典型的なケースを想定しているということを 更に強調するですとか、それから、生涯独身のケースですとか、そういったものについても可能な限り触れるということか と思います。
     それから次の意見で、働き易い制度が整いつつあるけれども、男性の意識改革や事業主の意識改革が遅れているとい うようなこともありまして、これは意識改革の重要性についても言及性すればいいのではないかと思います。
     次に、就業についてですけれども、潜在有業率の図表を追加すべきということで今入っておりませんので、これも付け加 えたらどうかと思います。
     次に移りまして、ディスカレッジド・ワーカーの関連の指摘が必要ということで、今触れておりませんので、これは存在が 指摘できるかと思います。
     それから、パートタイム労働者と正社員の間の賃金格差は、男性にも見られるということでして、その趣旨を付加すれば いいかと思います。
     結婚についてですけれども、意見として、何割程度結婚後職場に残るか分析ができないかということでいろいろな意見 を、中間とりまとめまでいただいたんですが、調査しておりますけれども、なかなかいいデータがないというのが実態では ございます。
     次の出産・子育てですけれども、これもいろいろ意見がありまして、保育所の利用について、ほとんど中間報告では触れ ておりませんでしたけれども、意見として、自営業の妻は保育所の利用が容易だけれども専業主婦は困難だとか、求職 活動中は難しいですとか、あるいは専業主婦は幼稚園を利用せざるを得ないんだけれども保育所と異なって補助金がな い。こういったものがありまして、それぞれ適切なデータで記述したり、あるいは支援策の状況について簡単に紹介できれ ばと思います。
     出産・子育てについても、何割程度職場に残るかということなんですけれども、同じような問題があります。
     あと再就業に関して、就業調整の要因の一層の分析が必要かと思われます。
     就業調整問題全般については、基本的な考え方として、配偶者特別控除ですとかがあるので、依然として誤解や認識 不足がある。制度があること事態が誤解や認識を生んでいるからで制度に問題があるということではないのではないかと いう高山委員からの意見が前回ありましたけれども、この点について定量的な分析ができればいいんですけれども、コン センサスのあるものがなかなかできにくいかもしれませんので、最終的には、その対応例にありますけれども、制度の存 在が誤解や認識不足のもとで、雇用システムの様々な問題等とも相まって、就業調整の問題を生んでいるというような考 え方になってしまうかもしれません。
     次の評価の方法についても、前回、高山委員から御指摘がありまして、質的な議論が多くて、量的な議論が余りないと いうようなことが2行目から3行目にありますし、それから103 万と130 万の山について、130 万の方は山と谷の間が小さ いが、質的には壁があると言われているけれども、量的な検証も要るというようなことも、これも量的な分析が可能か検 討するということかと思います。
     それから、就業調整の要因として、大沢委員から前回、労働需要側にも着目する必要があるということで、中間報告で 労働需要側のことをほとんど触れていませんでしたので、そういった分析に労働供給側の要因を取り入れるかどうか。こ れもどこまでできるかわかりませんけれども、検討するということだと思います。
     それから次に移りまして、企業は非正社員の仕組みを悪用しているんじゃないかですとか、賃金格差とかという指摘が あるんですけれども、そういったことについても定性的に言及できればと思います。
     それから、「再就業時の雇用の処遇の現状」ですけれども、パートの増加は自発的選択によるものではなくて、やむなく 選択しているですとか、それから、女性差別と年齢差別の複合差別というような指摘もありまして、こうした見方を紹介で きればと思います。
     それから税制について、配偶者控除ですとか、適用者の詳細な実態の分析が必要ということで一応中間報告でも書い ているんですけれども、実は男女別に分けたデータがございませんで、分析には一定の限界があることは指摘しなけれ ばいけないと思います。
     それから社会保障制度の現状については、その後、健康保険制度改正とかありまして、また、できれば次回、厚生労働 省からヒアリングをしたいと思いますけれども、そういった現状を踏まえて改訂するということ。それから失業についても、 かなり改正の動きがありますので、その後の変化を記述できればと思います。
     次に移りまして、引退の企業年金ですが、前回、高山委員からありましたけれども、企業年金だけを取り上げるのはお かしくて、退職一時金も含めて退職金全体の中に企業年金も位置付けるべきで、それら全体が中立的かどうか議論すべ きということでありまして、これに対して全体の状況をできるだけデータを交えて記述する必要があると思います。
     それから年金依存度ですけれども、これは平均値で見ているんですけれども、例えば中所得者グループを抜き出した り、最頻値をとってみると年金依存度は非常に高いということで、これもそういった分析を追加する必要があると思いま す。
     次に配偶者の死亡で、遺族年金に対して、これも高山委員から指摘がありまして、掛け捨て問題だけではなくて、母子 年金はあるが父子年金はないですとか、あるいは、結婚や再婚に際しての受給資格が中立的でない。あるいは、新規裁 定時に調査が一回しかないので、後で所得が低下しても対応できないというような問題がいろいろあるようでございまし て、指摘を欠いている問題を現状のところで追加するとともに、政策対応の方向については、後の項で述べればいいので はないかと思います。
     それから次に移っていただきまして、高齢女性の実態のデータを把握する必要があるということで、今、高齢女性が一 人で暮らす割合が高いということは書いてありますが、家計の状況がどうなっているというようなことも記述が必要かと思 います。
     最後に、離婚について、母子家庭の実態の把握が必要という意見があり、これもデータはほとんど書いておりませんの で、加える必要があるかと思います。
     それから次に、「生涯可処分所得の推計」でございますけれども、まず賃金の仮定として、片働き、共働きの世帯とも同 じ賃金と仮定、要するに一つの平均値を用いてやっているのでございますけれども、これは専業主婦を配偶者とする夫 の方が賃金が高いというようなこともありまして、生涯所得の差が実際より拡大されているという指摘がありまして、個票 データを用いて分析することもありますけれども、少なくとも、現在の仮定とその限界については明確化すべきかと思いま す。
     それから、更に細かくせよという意見もありますけれども、典型的なケースで見ざるを得ないというようなところもありまし て、どこまでやるかという問題かと思います。
     次に移りまして、年収が103 万に張りついた場合の試算を付加すべきということで、今まで平均値で130 万を下回ってい たりする時点も含めて計算していたんですけれども、完全に張りついた場合も今計算しております。それから、無償労働 の評価のあり方についても言及すべきということで、そうした考え方があることは紹介できるかと思います。
     次に、「政策等の方向」で基本的な考え方でございますけれども、セットとしての子育て支援策が必要ということで、これ はまた後で御紹介しますけれども、新たに項目を立てて書かなければいけないのではないかと思います。
     問題は、税制・社会保障ではなくて、雇用システムであるという意見が非常に強くありまして、これに対しては、最も重要な のは雇用システムということでこの調査会も一致していて、ただ、政府の政策が主たる検討対象であることから、そういう ふうな形になっているんだけれども、雇用システムについては今後時間をかけて検討しようということで計画しているとい う会長の案もございます。
     それからこれとはまた別に選択可能性をいろいろな分野の制度に組み込んでいく。こういう視点が重要ではないかという ような指摘もありまして、これも考え方に入れられるのではないかと思います。
     それから次にセーフティネットについての記述があるんですけれども、要するに何かよくわからないということがありまし て、その部分は子育て支援策を一つは念頭に置いているんですけれども、いずれにせよ、子育て支援策については、もう 少し明確な形で基本的な考え方を示さざるを得ないのではないかと思います。
     次に、各制度に移りまして、税制でございますけれども、大原則として、後ほど紹介しますけれども、政府税制調査会等 でかなり議論が進んできておりまして、それを見ながら書き方を検討することになるかと思うんですが、いずれにせよ、そ ういった前提のもとで、現行制度の評価として、経済財政諮問会議で福田官房長官がg5で配偶者控除は日本しかない と説明したということがありまして、その旨は記述したらどうかと思いますし、それから制度変更の影響の評価については、 これも高山委員の方から、控除を廃止するとどの程度就業に影響を与えるかということもやるべきだというようなことがあ りまして、これは可能かどうか考えてみる必要があるかと思います。
     次に移りまして、改革の方向とか、改革に当たってとるべき代替措置ですとか、いろいろ意見はいただいているのでござ いますけれども、その中身をまさに今政府税制調査会とかで検討していますので、それを見ながらどういうふうにまとめる かということになるのではないかと思います。
     次に「公的年金」でございます。これも前回、高山委員から御指摘がありまして、制度の抜本的再編の可能性があるの で、それも考慮して検討しないとどうも的外れになってしまうのではないかという意見がありまして、具体的には、1号、2 号、3号という年金制度の抜本的再編成もあるかもしれないので、それがあると、第3号被保険者問題などは全く違う次 元に放り込まれてしまう。あるいは、ほかに国民からの意見としての抜本的な改革の中で検討すべきという意見はいろい ろありまして、そういったこともありまして、大澤会長の方から、こういうモデルの年金にしたら、中立性はどの程度というよ うなことをいろいろな国のタイプとか、中立性の観点からまとめることは可能だということで、制度全体のやり方と中立性に 関して、諸外国の例とか、改革提案等についてケーススタディを実施してはどうかと思います。
     それから、次に、制度の抜本的改革の内容は何かということでございまして、高山委員が例としてあげられているのは、 基礎年金給付の3分の2は、今、保険料で、残りの3分の1が税金なんですけれども、3分の2の部分を所得比例として2 階に上げて、残りの現在税金で賄われている3分の1部分は定額だけれども、所得の少ない人を厚く、所得がある人は 薄くする。2階部分はドラスティックには掛け金建てだけれども、給付建てにするという方法もあるというようなことで、ほか にもいろいろ国民からの意見がありまして、例えば、ミニマム部分は税金で賄うとか、あるいはスウェーデン型の年金を目 指すべきとか、あるいは、ここにいらっしゃる委員の方もいろいろお考えがあるかと思うんですけれども、それらを含めて ケーススタディを行うというのは考えられると思います。
     次の個人単位化でございますけれども、これは遺族年金の問題と言いかえてもいいかと思うんですけれども、実は委員 の間に必ずしもコンセンサスがございませんで、例えば木村委員は中間報告のとりまとめまでの意見として、遺族年金は 40年というような数字を出されて、徐々に縮小、廃止すべきだというようなことをおっしゃっているんですが、高山委員は、 完全に単位化した国は現時点ではなくて、スウェーデンが一旦実質的に個人単位化したんだけれども、スウェーデンでさ えも賃金格差の問題があって、選択性によって所得分割を認めるということで調整したということで、世界の流れからする と、夫婦間の所得分割が第1ステップということで、必ずしも委員の間にコンセンサスがないような点もありまして、これも ケーススタディの中で検討するのも一案かと思います。
     それから遺族年金についても、先ほど申し上げたような、同じような問題があるんですけれども、これもケーススタディ でやっていくということだと思います。ただ、制度変更と全く関係なく切り離してできる、言ってみれば細かい問題もありまし て、左側の女子年金がないとか、受給資格が中立的でないとか、こういった問題は切り離して検討できるのではないかと 思います。
     第3号被保険者問題による不都合は特に遺族年金にもあらわれているというようなことで、高山委員は所得分割を認め れば、公平な遺族年金になるというような意見をお持ちですけれども、これについてもケーススタディの中で検討できれば と思います。
     次に、厚生年金の適用拡大でございますけれども、適用拡大すると企業負担増になるか、あるいは雇用者の側の負担 になるかという、言ってみれば、保険料の最終的な、税制で言う帰着の問題ですけれども、これも必ずしもコンセンサス がありませんので、いろいろな見方を事務局で整理できればと思います。
     それから、拡大後の具体的基準がどうかについては、いろいろ基準について意見をいただいているんですけれども、対 応例としては、中間報告では、「適用基準となる労働時間や収入の水準は、できるだけ低いことが望ましい」という位置付 けで、中立性の観点から、具体的に水準について見解をこれ以上示すのは難しいという感じがいたします。
     それから、適用もれへの対応ですとか、複数の事業所勤務の場合の問題について、国民から非常に危惧をする意見が あるんですけれども、一応中間報告ではもう既に書いております。
     それから、第3号被保険者問題ですけれども、先ほどの高山委員の指摘もありまして、これもケーススタディの中で検 討するのかなと思います。特に、直接間接に何らかの形で負担という書き方になっているんですが、これも更に具体的に 記述する必要があるのではないかと思います。
     それから、見直しに当たっての措置として、子育てとか、一時給付とかいろいろありまして、これも子育て支援策の中で検 討する問題かと思います。
     それから、離婚と公的年金については、今、一般に離婚を促進するという考え方を前提に、DVなどのときのみ分割が妥 当というふうな、どうしてもそういう読み方ができるような書き方になっていますので、これもそうした誤解を招かないように 表現の仕方を工夫する必要があると思います。それから、年金分割についても、分割制度を導入すべきというようなこと も、これもケーススタディの中でやったらどうかと思います。
     次に、健康保険などですけれども、一人一保険証を実現すべきという意見が非常に多数ございます。それから一方で委 員の間では、子供まで完全に個人単位化するのかとか、同時に社会保険制度を全部個人単位化しようとするといろいろ と問題があるので、分けてやったらどうかというような意見もありまして、対応としては、とりあえずは一人一保険証にして おいて、収入のない子供の保険料は免除として、サービスは個別に提供すればよいと、こういったのが現時点のコンセン サスではないかと思います。
     それから、雇用保険については、一般論として、先ほど申し上げたように現状を書くというようなことがあるのではないか と思います。ほかについても、現状あるいは今後の改正について書けばいいような点があると思います。
     それから、企業の家族手当等でございますけれども、中間報告では、住宅手当ですとか家族手当は基本給に振り替え るというふうにしておりますけれども、従業員本人の選択を拡大するという形に切り替えて、基本給に振り替えるかどうか は本人に任せる。企業はメニューだけを提供すると、そういう方向に入っているんじゃないかということでありまして、ある いは、独身寮とか、その肩代わりとしての住宅手当もあって、独身かどうかも入れると、必ずしも世帯単位とは言えないと いうようなこともありまして、税制・社会保障と企業の家族手当の関係の記述にとどめて、雇用システムのところで全般的 に書くことにして、企業の家族手当等に関する考え方は、従業員本人の選択を拡大するという形に切り替えて、基本給に 振り替えるかどうかは本人に任せる。企業はメニューだけを提供するという考え方でまとめていいのかというような気がい たします。
     それから、「雇用システム」ですけれども、先ほど雇用システムが最も重要という調査会のコンセンサスを紹介しました けれども、国民からも、ほかの部分に比べて雇用システムの具体的記述が少ないというような意見もあります。一方で、 労使の自治で決めることであるというような意見もあります。これに対しては、先ほど紹介しましたけれども、雇用システ ムについては今後時間をかけて検討しようということになって、会長からそういうお話がありまして、とすると、12月までもう 二、三回しかございませんけれども、どこを見直すかということになるわけでございます。
     まず、ワークシェアリングですけれども、中間報告では、内外の状況を振り返っていますけれども、国民からは、これも いろいろ意見がありまして、その後、中間報告が出てから動きがありましたので、少なくともその後の動きを踏まえた改訂 はできるのではないかと思います。
     次に、今後の方向として「日本型均衡処遇ルール」に対しては林委員などから中間報告とりまとめまでに、「日本型」を 取り去るべきであるという意見がございまして、「日本型」を取り去るとすると、どういうような表現、内容で報告書をまとめ ればいいのかというようなことも12月までの課題になるのではないかと思います。
     それから、国民からの意見として、例えば業績評価と賃金などいろいろ意見があります。それから業績評価を余り進め ると女性が二極分化するのではないかという意見があります。それから、同一労働同一賃金に関する意見もありますし、 均等待遇、働き方の問題というようなこともありまして、これも12月までにいずれも結論が得るのが可能かといいますか、 時間的な余裕があるかどうかという問題がございます。
     ですが、「良好な労働形態」というような表現が中間報告にありまして、これは「良質」にすべきだというような意見が林 委員からあったんですけれども、国民からも、良好かどうかというのは主観的判断だというような意見があります。という ことで、「良好な」に代わるものは何か。ただ、「良質な」でも主観的判断になってしまうようなところがあって、これも問題 が残るということで、これも12月までにはできるのではないかと思います。
     それから子育て支援策ですとか、少子化対策について、国民とか委員から多数の意見がございます。中間報告では余 り書いていなかったんですが、いずれにせよ、序説、制度の現状、政策の方向の基本的な考え方など、項目を立てて記 述せざるを得ないのではないかと思います。けれども、例えば、単に子育て支援策が必要という政策では、むしろ中立性 を歪めるというような施策になってしまいまして、この調査会では、中立性確保を旨としておりますので、中立性確保に当 たっての留意事項というような扱いにならざるを得ないような面もあるかと思います。
     おわりにということで、今後検討を続けるか、検討を続けるなら、どういう分野かというような問題がありまして、先ほど申 し上げましたように、雇用システムは本丸だけれども、今後時間をかけて検討しようというような案がございます。
     以上が中間報告の意見とその対応例の概要でございます。
     それで、議論いただくために、税制・社会保障制度改革を巡る動きも簡単に御紹介した方がいいかと思いますので、私 の方から説明いたします。今度は「資料1 税制改革、社会保障制度改革等を巡る動き」という資料をお出しいただければ と思います。
     1ページ目が大澤会長から税制調査会の石会長への意見です。前回7月24日に御説明したものと変わっておりませ ん。それで、8月30日にもう既に手渡されております。
     内容を簡単に確認いたしますと、1では、配偶者特別控除だけではなく、配偶者控除も廃止されるべき。2では、廃止に よる国民の負担への影響を調整するよう配慮することが必要。3で「家族控除」については、適切ではないというような意 見でありました。
     次ページをお開きいただきますと、その後、政府税制調査会の方で中間整理を9月3日にまとめておられまして、内容と しては、<1>配偶者特別控除については、基本的に制度を廃止する方向で見直しを行うこととし、税引後手取りの逆転現象 については所要の配慮措置を検討するということを15年度の税制改正において検討を進めるということであります。
     では、それ以降の予定、9月3日以降の予定がどうかというようなことは、3ページ目に石会長が記者会見で8月27日 の基礎問題小委員会の後に言っておられます。11月中旬くらいには、来年度の税制改革にも使うような形のものをまと めて、それから、来年6月を目途に中期答申を出すというようなことのようでございます。
     具体的な内容は4ページ、今度は8月30日の小委員会後の会見なんですが、まず最初の方で、延々と大澤会長からの 意見の申し入れを紹介された後で、配偶者特別控除はとりあえず最初に見直し、それから配偶者控除そのものについて も、今後どうしようかということを議論しようということで一応整理はついたということでございます。
     やはり時間をかけて激変緩和的なものを措置して基礎控除を上げるとか、あるいは歳出面での手当の方で面倒見ると か、そういったことを踏まえて一遍に急にはできないというお考えですけれども、制度の見直しのスタートは来年度で、来 年度に関する検討については、配偶者控除そのものには入っていないけれども、次の段階からと。大澤会長の方から両 方やれと言われていますけれども、トータルな議論をしたいというような発言をされています。
     6ページには、9月3日の中間報告が出た後の会見でおっしゃっているんですが、「一挙に76万」、76万というのは配偶 者控除の額と、配偶者特別控除の額を合計した控除額ですけれども、一挙に76万を対象に課税ベースを広げるというの は難しいだろうと。そういう意味では配偶者特別控除からまず手をつけようということで、2番目の下線部にあります。けれ ども、一挙に配偶者特別控除の38万円を根こそぎというのも、これも難しかろうということです。3番目の下線部にありま すけれども、配偶者特別控除をまず1年目にやめて、2年目に配偶者控除をなくすというのはちょっと難しいだろうというよ うな検討状況のようでございます。
     次に、社会保障制度改革も密接な関係がありますので、簡単に御紹介いたしますと、8ページにその資料がございま す。これは8月29日に坂口厚生労働大臣が経済財政諮問会議に提出された資料でございまして、今後の検討の方向が 示されております。
     次の9ページの右側の方にございますけれども、一番最初に「強化すべき分野」として少子化対策のための制度・慣 習・意識の改革ですとか、<2>の「維持すべき分野」として、2番目の「・」に世代間の均衡と持続可能な制度の継続というよ うなことが挙げられまして、具体的には次の10ページの一番上、「少子化対策のための制度・慣習・意識の改革」というこ とで、最初の「・」で経営者や職場の意識改革、あるいは家庭の子育て努力への支援、あるいは子どもが社会性を持ち、 健やかに育ち、自立すること、ということが挙げられております。
     それから、次の11ページ、今度は「世代間の均衡と持続可能な継続」については、年金制度の改革として、基礎年金国 庫負担割合の2分の1への引き上げとか、年金保険料引き上げの凍結解除、給付の負担と水準とそのバランスのあり 方、年金と税制、そして働く高齢者や女性など支え手を増やすための方策、女性と年金などというようなことを課題として 挙げております。医療制度改革についても述べておりますし、介護保険制度の着実な実施というようなことが挙げられて おります。
     12ページに移っていただきますと今度は雇用保険制度の見直しということで、早期再就職を促すという給付体系ですと か、一般とパート待遇の給付内容の見直し、そういったものが挙げられております。あと、雇用政策、労働市場の改革とい うようなことで、最後の方では、ワークシェアリングの推進というようなことも挙げられております。
     更に詳細に、15ページにございますが、ここからまた詳細な資料になるんですが、実は15ページの一番右下に※印の 後に、所要の経費については、15年度予算概算要求について少子化対策についてはそうするというふうに書かれていま して、15年度の概算要求の対応というのがその次の16ページにありまして、これにわかりやすく書いてあります。新規項 目ということで、まず「1.育児休業を取得しやすい職場づくり」では、事業主等に対して中央・地方を通じた働きかけを行う とともに育児休業の取得促進に積極的な企業に対する育児休業取得促進奨励金を創設するとか、それから「2.特定保 育事業の創設」については、週に二、三日程度、あるいは午前か午後のみ必要に応じて柔軟に利用できる保育サービス を創設する。
     あるいは「3.子育てバリアフリー化などの促進」ということで、公共施設等への託児室や授乳コーナーの設置ですと か、乳幼児と一緒に安心して利用できるトイレの改修、あるいは少子化の流れを変える推進協議会の開催などということ が15年度の概算要求では考えられているようでございます。
     22ページ、今後のスケジュールがそれぞれについて出ております。22ページは年金のスケジュールなんですけれども、 本年の10月を目途に年金改革を骨格的な事項について、その方向性と論点の整理を公表予定。それから、国民的議論 を展開して審議会で検討すると。
     それから23ページに、医療制度改革の検討予定がありまして、年度内に具体的内容、手順、年次計画を明らかにした基 本方針を策定して改革を実施とあります。
     それから、28ページ雇用保険制度についてのスケジュールがありまして、次期通常国会へ関連法案提出ということで、 年内に労働政策審議会で結論を得るというようなことになっておったのでございます。
     けれども、その後、前倒しになるかもしれない部分がありまして、それが一番最後のページにあります竹中経済財政政策 担当大臣の経済財政諮問会議の記者会見の模様でして、年金改革の原案、これは繰り上げて提示をする方向で検討す るということで坂口大臣から御返事があったようで、その後、昨日、経済財政諮問会議が開かれまして、資料はちょっと間 に合わなかったのですが、10月から11月に年金部会と歩調を合わせてその方向性を審議して、その結果を年末の予算 編成の基本方針に反映させると。それから、それ以降も16年度の改革を目指して、その審議を継続するというようなこと になったようでございます。
     それから、8月29日の段階では、医療保険一元化については、坂口大臣の方から10、11月をめどに手順を示すというよ うなことになっておったんですが、昨日の経済財政諮問会議で、その考え方とか手順を厚生労働大臣が年金と同じように 10月、11月に示して、その審議の結果を予算の編成方針に反映させる。15年度関係は予算に反映させるというようなこと になったようでございます。
     それから、29日の時点だと、少子化対策でゼロ歳ないし1歳の育児をどうするか、これは抜本的に見直す必要があると いうような御指摘もあったようでございます。
     長くなりましたが、以上でございます。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。夏の間にもいろいろなことが起こって展開をしていて、秋はまた様々なデッド ラインが設けられているというようなことがわかったかと思います。
     それでは、事務局の説明をもとに、まず中間報告の項目ごとに区切って議論をしていきたいと思います。その前に、報告 の全体的な枠組みについてです。雇用システムが本来の問題とかという言葉もございましたけれども、来年以降、時間を かけて検討することにして、12月の取りまとめまでに見直すべき点は絞らざるを得ないということ、2番目に、子育て支援 策に関しては、私たちの中間報告では余り触れていなかった。それについては別の専門調査会が包括的な報告書、提言 を出されて、閣議決定をされたという経緯もございます。我々の専門調査会は制度の中立性確保ということなので、積極 的に子育てを支援するというようなことについては余り触れていなかったわけですけれども、今後適宜、新たに項目を立 てて記述していく、ないしは既に実施され、あるいは計画されているものについて、そういうものがあることについて、明文 で言及していくというようなことについて、この場で御意見をいただければと思います。報告の全体的な枠組みについて、 雇用システムをどうするか、子育て支援策の書きぶり、取り上げぶりをどうするかということについて、まず御意見をいた だければと思います。
     よろしいでしょうか。それにしても、雇用システムではどこに見直すべき点を絞るのかということは、これから順次御議論 をいただくことになろうかと思います。
     また最後に、全体についての意見をいただく時間をとりますので、以下項目ごとの議論に移ってまいります。
     まず「鑑・序説」、ここに関連して御意見がありましたらちょうだいしたいと思います。
    林委員
    子育て支援にかかわるところで、無償で子育てをしているとか、地域に根ざした活動をしているんだから、専業 主婦の果たしている役割をもっと評価すべきという国民からの意見について、専業主婦のこれまで果たしてきた役割の記 述は追加するとあるんですけれども、これまで果たしてきた役割については記述を追加するけれども、そこは否定はしな いけれども、ここから先、それが唯一になるような記述は避けなければいけないかなという気がします。
    大澤会長
    関連して、様々な立場の人が様々な意味で家庭における子育てであれ、あるいは高齢者の介護であれ、あ るいは地域の活動であれ無償で担ってきているわけですけれども、その中から特に雇用者の専業主婦の果たしてきた役 割というものをくくり出して特記することが可能かどうかという問題はございます。その辺も注意したいところなので、様々 な人がそういった無償労働はこれまで果たしてきたけれども、いろいろな意味でこれ以上無償労働に期待することは難し くなっているというようにつなげて、したがって、制度の見直しが必要であるおいうようにつなげていくという方法はあるかも しれません。林委員、そんなことでいかがでしょうか。高尾委員どうですか。
    高尾委員
    夫が雇用者の女性配偶者ばかりがやっていたわけではないですし、そういう数が今まで多かったので一つ の大きな勢力だったとは思いますが、今おっしゃったようにそれまで、1980年か1985年かわかりませんけれども、無償労 働に地域でも学校でも期待できなくなっている。学校ではptaの役員のなり手がいないとか、消費生活共同組合みたい なものでも担い手がいなくなってきた。個別配送ばかりがどんどん伸びてくるとか、家にいる女性がいなくなってきていると いうような声は聞きます。もう一つ、私が入っている生協なんかもあるんですが、今までは無償ですべてのことが動いて いたんだけれども、時代の趨勢として、それを有償ボランティアというような形じゃないと、活動が継続できなくなってきてい るというようなことで、ptaとか生協なんかでも一人一つの委員会に出たときにお金を払うとか、役をやったときにお金を 払うとか、そういうような動きもすごく加速して、それはワーカーズコレクティブみたいな動きなんかも生協の方ではありま す。それがある意味での女性の雇用にもつながって、ただ単にお金を払ってワーカーズコレクティブみたいな形にして、組 織的に女性の働く場にしていくみたいなところにもつながって今後行くのだろうかと。林委員のおっしゃったことと関係する かわかりませんが、今後どう続いていくのかということ、考えていかなければならないんじゃないかなと思います。
     あと、「更に、可能なら、我が国の育児支援レベルの分析を付加」というふうに書いてありますが、どのあたりを分析なさ るんですか。
    事務局
    今まで実は大澤会長の研究を引用し、図表を添付していたのですけれども、もう少しできないかとは思うんで すけれども、なかなかいいデータはないんです。
    大澤会長
    私自身の研究というよりは、海外で行われた研究で、こういう研究の例があるということでランキングになっ ておりましたので、oecd主要国の一般的な家族支援というのと、共稼ぎ支援というもののランキングがあって、日本は どちらも低いという表が中間報告の資料の中に掲げてあります。それだけでは、日本の育児支援レベルが外国との比較 で高いのか、低いのか、厚いのか、薄いのかという根拠としては十分ではないということですね。
    高尾委員
    国の制度だけの中からの分析をするということですか。
    大澤会長
    政府の施策が我々の主要な検討対象ですので。
    高尾委員
    前にも言ったように思いますが、日本にいると子どもが育ちにくいというふうに私なんか感じるんですが、単 に育児給付とかそういうことだけではなく、学校にかかるお金とか、交通費にかかるお金とか、もっと地域全体の子育て力 とかそうしたことが、私などはスイスとかドイツぐらいしか知りませんけれども、あそこで子育てしたときと、ここに帰ってくる とえらく違うなというのは非常に感じておりまして、恐らく多くの国民も感じているんじゃないかというのはあります。なかな か民間とか、そういうふうなことは分析しにくいとは思うんですが、そういうデータも入ると、「ああ、やっぱり」とか、いろいろ な声が返ってくるかなと思いますけれども。
    事務局
    各省とかと意見を交換するんですが、一人当たりの保育所の数で見ると、日本はそんなに遜色ないんですけ れども、例えば児童手当とかそういう給付面がどうとか、そうなると低いようでありまして、なかなか総合的な評価は難し いんですけれども、いずれにせよ、そういった子育て水準が果たして国際的に見て日本は低いのかどうか、高いのかどう か、これは非常に議論の中心に、ここの会というよりもいろいろな場で、中心になっているようでして、今後必要とされてい る分析ではございます。
    高尾委員
    例えば、私の経験なんかでは、大人だけ宿泊費が必要だったんですね。子どもは要らないとか、交通費にし ても、25歳までは親と一緒に出掛ける限りはゼロだとか、そういうようなことがありましたので、そういうことも比較できれ ばいいかなと思います。
    大澤会長
    いかがでしょうか。
    永瀬委員
    専業主婦を優遇しようとしてもできないという考え方なんですけれども、これは1つの考え方かもしれません が、低所得の主婦を優遇すると、パート賃金が下がるという議論もあるように思います。それからあと、専業主婦を優遇 すると、専業主婦である
     配偶者のいるフルタイムの男性の賃金が上がって、専業主婦である配偶者のいないフルタイムの男性の賃金が下がる 考え方もあり得ると思いますので、様々な、つまり何が代替生産要素で、何が補完生産要素なのかということで違います ので、この議論をこのまま紹介するのはちょっと一面的かなというふうに思います。
    大澤会長
    それから、我々の中間報告は、専業主婦は優遇されていると書いたわけではないですよね。実際、生涯可 処分所得というのを計算してみたら、単独でとってみれば、退職後パートの方とか、退職後ずっと専業主婦という方は非 常に少ない生涯可処分所得しか受けられないということは出たわけです。それよりは、むしろ妻がフルタイム就業なのか、 パート就業なのか、専業主婦なのかで男性の可処分所得に少なからぬ差が出ているという、働きが全く同じ人と仮定して も、男性の可処分所得には妻の状況によって差が出ているというようなことが我々の計算では出てきたわけです。ですか ら、専業主婦は優遇されていると書いたつもりはないので、そこら辺が誤解されているとすれば、ちょっと問題かなという ふうに思いました。
     それから、労働力率と合計特殊出生率の相関等ですけれども、これ以外に旧総理府男女共同参画室時代から、ジェン ダー開発指数と出生率との相関図というのは使いましたし、それから、私が何度か別のところで紹介しているものとして は、男女賃金格差と出生率というのは、これは直線の相関にはならなくてu字型の曲線になるんですけれども、左側にあ る国、つまり賃金格差が大きくて出生率が高い国というのは、いわゆる開発途上国でありまして、ある程度経済発展が進 んだ国というのは、みんな右側にあるという、つまり、賃金格差が小さくなれば、出生率が高いというふうな相関の側にあ るというのは、これは日本経済研究センターで分析なさった結果として出ております。ですから、そういったものを組み合 わせるという方法があると思います。
     それから、今年の「男女共同参画白書」というのは都道府県別分析を随分ときめ細かくやってくださっていて、私は大変 おもしろく読んだんですけれども、ある特定時点の出生率と女性の就業率なり継続就業率というのを比べてみても、これ は余りはっきりした相関は出ないけれども、例えば10年間という期間をとって、出生率が上がったか下がったか、大体日 本は下がっているんですけれども、どの程度下がったかということの相関というのは、何か出てくるという可能性はありま す。それから、育児支援策の厚さ薄さというのがもし何か指標化できれば、それとの関係で特定時点の出生率、あるいは 何年かとった間での出生率の増減、低下幅というようなものの中で相関は出てくるのではないかと考えているので、これ が検討項目かなというふうに個人的にはこの間考えているところです。
     永瀬委員、ほかに何かアイディアはありませんか。この点に関連して。
     ここに各国について時系列でと書いてあるのは、恐らくそれを念頭に置いて、事務局でまとめて、複数委員が第14回専 門調査会で発言したということでありますので。
     この部分について、よろしければ次に進みたいと思います。次は、本文の中の「現状」というところについて御意見があれ ば、よろしくお願いいたします。
    福原委員
    統計の取扱いなんですけれども、もともと相関のないものを相関図にしてみても結論が出ないんですよね。 ですから、何が相関がありそうなのかという仮定を、相関がある関係にあるということを確認してから相関のグラフをつくら ないと、ただ、縦軸と横軸で線を引いてみても相関にならないかもしれないですよね。これをちょっと選別しなきゃいけない ので、といって大変な作業なんですね。
    大澤会長
    相関というのは因果連関については問わないで、とにかく正の相関があるか、負の相関があるか、何の相 関もないかということで、気をつけるべきは疑似相関になっているのではないかどうか。
    福原委員
    疑似相関を一遍仮定してしまう、据え置いてしまうと、今度は疑似相関でいい数字に出るように間違った政 策をとってくる心配があると思うんです。
    永瀬委員
    出生率と合計特殊出生率の関係について、私が知っている個票レベルの分析というのは幾つかありまして、 私がやったのも2つほどあるんですけれども、ほかの先生がやられたのも1つ、2つありまして、滋野由紀子先生と大日 康史先生のなさったのだと、保育園の充実が就業女性の出生率を何年か経つと引き上げるというようなものがあります。
     あと、私が行いましたものは、自治体レベルデータを見ると、無相関というのが一つの研究結果です。影響はないという。 それからあともう一つやったのが、高山憲之先生との共著ですが、個人レベルのデータと当該人が住んでいる自治体の 保育園の充実の状況とをあわせて見たもので、保育園が充実しているほど出生率が上がるという結果が出ました。ただ、 保育園のみならず、その地域の雇用のあり方や地域社会を含め、全体を含めた暮らしのあり方がそういう出生率の上昇 を引き上げているのか、それとも、同じ自治体であっても、保育園を充実すると出生率が上がっていくのか、それについて は時系列で比較できるほどは十分なデータがなくまだわからないというふうに私自身は思っております。出生率にういて プラスという実証結果がないわけではないということです。。これまでのほとんどの研究で明快にプラスの結果が出ている のが、女性の就業率と保育園の充実との正の関係です。これはほぼすべての分析で出ております。一方、出生率と保育 園の充実、それから出生率と既婚女性の労働力率、これに関してはよく負だと思われているんですけれども、自治体レベ ルで見ると負ということは出ておりません。無相関とか、あるいは私の過去の研究では地域別に見ると女性の労働力率 が高い自治体ほど出生率は高い。日本の地方は女性の就業率が高くて、かつ出生率が高いというのが、これはわかって いる事実です。加えて、ほかのいろんな要因、例えば保育園の要因とか、あるいは男性の働き方とか、所得とか、そういう 要因をいろいろ放り込んだ上で、さらにどういう関係があるかというを見てみると、出生率については、必ずこうだという確 立された結果というのは出ていないんじゃないか。いろんな結果が出ているという段階なのではないかというふうに私自身 としては理解しております。
    福原委員
    もう一つは、逆に就業率が高くなると、有料託児所を使える可能性が多くなってくる。
    永瀬委員
    むしろ、因果関係としては、保育料が高いと女性の就業率が落ちるという方が出ております。だから、保育 料が高くなると就業率は落ちるというのは出ていますけれども、就業率が上がると利用が増えるかどうかはデータが十 分ないのでよくわかりません。
    福原委員
    ということは、個票レベルではあっても、少し丸めてどこかで考えてみる、
     地域を限定するかなんかで考えてみるという必要があるのかもしれませんね。
    永瀬委員
    ただ、一般で思われているような、女性が働くようになると出生率が落ちるということは、これはなさそうだと いうことは言えると思います。
    福原委員
    それは言われておりますね。
    永瀬委員
    ついこの間までは、むしろ、みんなが働くようになったから出生率が落ちたんだと、そういう議論が大変多 かったように思いますけれども、それはないと。ただ、じゃ、就業率が上がると出生率が上がるという結果が明確に出てい るかどうかはよくわからないという段階かなと思います。子どもと家族をめぐるほかの支援全体のあり方に依存するので はないでしょうか。例えばスウェーデンなどではそうだというふうに言われています。働いた方が生活がしっかりするので 子どもが産めると。
    大澤会長
    今、社会保障審議会の人口問題部会の方でも検討していらっしゃるようでありまして、それが我々の本務か どうかという問題もありますが、重要なことは、女性がこれ以上社会進出すると、あるいは男女共同参画をこれ以上やる と少子化がひどくなるという世の中に結構広く持たれているイメージは、それは事実によって裏づけられないということが ポイントなのかと思います。
    坂東局長
    それは声を大にして言いたいですね。
    大澤会長
    それは声を大にして言いたいですね。
    坂橘木委員
    じゃ、何ですか。それもわからない?
    大澤会長
    まず、日本の場合の少子化というのは未婚率の上昇によって起こったと。それが前回の人口推計までです けれども、最新の人口推計だと、結婚している夫婦の30代の出生力も落ちているというのが出てきて、その原因の検討と いうのは、まだ人口問題部会でやっているところだと思います。私の知る限り、結論はそう簡単には出ないのかなと思い ます。ただ、郡部に住んでいて、就業中断をしているのか、それとも、都市部に住んでいて、継続就業しているのかという 幾つかのパターンで出生児数というのを比べたようなグラフはつくっていらっしゃるようですけれども、それで見ると、都市 部で継続就業というのは、やはりほかのケースよりは出生児数が少ないというのがこれまでの数字からは出ております けれど。他に「現状」のところの御意見はいかがでしょうか。
    福原委員
    国民からの意見というのは、随分皆さんプロフェッショナルな意見が多いですね。それが不思議というか、 偏っているというか、ちょっと心配な点もあるんですよね。
    坂東局長
    普通の素朴な人たちの意見ではないと。
    福原委員
    そうなんですね。一般的な意見であるかどうかというのはちょっと疑問な点があるんですね。意見をいただ いたことは非常にいいことだし、論点もなかなかするどいんですね。ところが、非常にするどいのが多すぎるという怖さが ……。
    林委員
    問題意識を持った人が答えているからでしょうね。問題意識を持たない人は答えようとも思わないかもしれま せんね。
    福原委員
    問題意識を持たないような人に、全然持たない人は答えないだろうだけど、ここまで知識が深くない方々に 直観で答えていただくということも必要ではないかと私は思いますけどね。
    事務局
    紹介させていただいてよろしいですか。中間報告をまとめた4月24日の日に、テレビでこの会議の模様とか報 道されて、どうも配偶者控除とか、配偶者特別控除をなくして増税になるというような報道をされまして、その後事務局の 方に強いおしかりの電話が非常にたくさんまいりまして、対応に四苦八苦したことがございまして、一つの反応パターンとし てそういうものはあるのは間違いございません。配偶者控除をなくして増税になるとけしからんというパターンが……。
    福原委員
    ちょっとそういうことを言うと、若干メディアのミスリードみたいなところもあるような気がするんですけどね。
    大澤会長
    我々は増税しろとは言っていませんから、必ず負担の調整というふうに言っていますので。
    福原委員
    ただ、結果としてそうなるかもしれないんですよね。それを増税のためにやっているというふうにとられちゃう と、これはおかしいんですよね。
    坂東局長
    今回特に税制調査会の方で配偶者特別控除の一部廃止というのが出てきているだけに、ちょっとそれは声 を大にして言わなければいけないんじゃないかなと思っています。
    福原委員
    そのほかにも政府税調の方で今やっているのは、結局のところ、増税につながるようなものも結構あるわけ ですからね。例えば、課税賃金の最低額を引き下げるとかそういうこともあるとすると、全体としては増税の傾向にあるわ けだから、このことを取り上げて、それに結び付けられるとちょっとおかしいと思うんですけれども、どう説明したらいいで しょうかね。そのためにやっているんじゃないんですよね。
    神野委員
    私、税制調査会の、いわゆる公聴会の司会その他をやらせていただいて、一般の人々のアンケート調査が あるんですね。これは当初心配していたのは、割と組織的に一部の関心のある人々が来るのではないかというようなこと が心配されていたのですが、私の実感している限りでは、さほどそういうことではなくて一般的に参加していただいたと。た だし、税に関心のある人に参加していただいていることは間違いないので、全体の風潮を表しているかどうかということは わかりませんが、その中ではっきり言えることは、ここの特別配偶者控除を配偶者控除のポイントが他のアンケート項目 に比べて悪いんですね。つまり余り理解はされていないというのが私の印象なんですね。一方、増税などについては、割 と国民は理解を示しているんです、逆に。それから、消費税などもやむを得ないのではないかという意見もかなり強いん ですね。
    福原委員
    それは税率アップも含めてですか。
    神野委員
    将来の税率アップも含めてです。ただし、歳出をカットして、無駄なものを排除した暁にとかというようなこと が入っておりますが、そこのところは割とちゃんと使ってくれれば増税もやむなしと、このままというようなことが多いんで すね。その中で配偶者特別控除などの廃止については、割とポイントがよくないんです。
     まず配偶者特別控除については縮減してもいいというのが52%ですね。現状どおり基礎控除・配偶者控除・扶養家族を 残すが44%なので、ここは配偶者控除を廃止し、扶養家族についても児童手当やなんかにするというのが33%というよう なことから言うと、現状どおりというのがポイントとして割と高い。ほかの項目については、思いのほか増税について賛成な のが多い。ちょっと言いたいことは、むしろ、先ほどの働き方を中立的にするとか、配偶者控除や特別配偶者控除を廃止 する意味みたいなものの理解が十分に行き届いていないじゃないのかというのがちょっと心配な点ですね。パッと言われ たときに、必ずしも、これは専業主婦をいじめているとかというような反応できているとも思えないんですよ。税金のアン ケートをとる場合に、一般的に負担をどうこうというようなときには割と反対が少なかったりする場合が多くて、あなただけ と言われたらそれは反対しますから。例えば中に専業主婦の方が非常に多かった場合には、私だけ増税になるのかと いったら当然反対を押しますよね。その点を考慮しても、廃止する意味みたいなものがちょっと理解が欠けていたかなと。 増税ということにとられたということもあるのかもしれませんが、むしろ廃止するメリットみたいなものが十分理解されてい ないんじゃないかというのを感じました。つまり、廃止するデメリットに反応したというよりも……。
    坂東局長
    意味がわかるように。
    神野委員
    ええ。というような感じがします。もう少し宣伝というのか、意味がわかるような活動をした方がいいような感 じです。すみません、ちょっとまとめが……。
    高尾委員
    私なんか新聞記事ぐらいしか知らないんですけど、税についての対話集会の後の記事なんですけれども、 配偶者特別控除、配偶者控除の廃止・縮小問題に関しては一番意見が拮抗していて、賛成意見というのは働く女性の意 欲をそいでいるので、ぜひ廃止をという。反対意見というのは、女性の自立を増税の逃げ道にするなというふうに新聞は まとめているんですね。私なんかこれを見たときに、それって全く別の話なのに、反対意見をおっしゃる方は女性の自立を 増税の逃げ道にしないでほしいというふうにしかとらえないんだなというふうに思って、今、ちょうど神野先生がおっしゃっ たみたいに、男女共同参画という立場から言っているんだというところがなかなか理解が入っていないんだなという感じが しました。
    坂橘木委員
    もう一つは、最初に税調あたりでは課税最低限を下げるという議論が前面に出てきて、その手段として配偶 者控除と配偶者特別控除が出てきたので、どうも増税のための手段としてこの2つが使われるんじゃないかという誤解を 生んだんじゃないですか。男女共同参画を促進するための配偶者控除とか、特配控除という問題が前面に出てこなかっ たんじゃないですか。
    神野委員
    今おっしゃったように、男女共同参画をするという目的を増税の目的にするなということが反対の大きな理 由であることは多分間違いないと推測されるわけですね。ただ、それはどういうふうにクロスさせたらいいのかわからない んですが、割と増税そのものに対する反感度は少ないんですよね。一般的な話ですよ。これは聞き方が非常に複雑なの で、そこはどういうふうにクロスして……。
    高尾委員
    男性が答えているんですか、女性が答えているんですか。
    大澤会長
    参加者です。
    高尾委員
    参加者は女性が多いんですか。
    坂橘木委員
    一番多いのは中小企業の経営者と聞いたけど、そうでもない?
    神野委員
    それはそういう方が出てきます。
    坂橘木委員
    だから、益税なんかの問題にはものすごくみんな発言するんでしょう。
    神野委員
    発言するけれども、最終的にはそれほど、益税なんかはやめるべきだという意見も強いんですよ。だから、 先ほど言いましたように、組織的に中小企業などの関心のある人が出てきているのかなというと、そうでもないというのが 印象です。細かいことですが、益税やなにかのアンケートについて、消費税に対する不信感をなくすために見直しが必要 というのは81%なんですね。中小企業の事務負担への配慮は必要なので、見直す必要がないというのは16%ですから、 益税とか何とかについては廃止すべきだと、こういうふうに言っているわけです。益税についても、81%であれば、ちょっと 配偶者特別控除については、もうちょっと高いポイントをいただいてもいいんじゃないかというのが僕の感想なんですね。 もちろん、そういう意味では、おっしゃるとおり賛否両論が拮抗しているんだけれども、しかし、益税とかなんとかはいいと、 廃止するのは構わないと言っていることを考えれば、もうちょっと賛否が拮抗しなくてもいいんじゃないかと思うんですよ ね。それは割と一般的に言われてきたこと、増税をしないと財政が大変なことになるとか、それから、増税をするのであれ ば消費税しかないんだというようなことが割と常識として定着し始めている。益税なんかについても、こういう問題点があ ると定着し始めていると思うんですよ。ところが、これについては余り定着していないんじゃないかと。このアンケートを見 る限りね。少なくとも議論してもらうことが必要なのではないかというふうに思います。ちょっと余計なことで。
    永瀬委員
    今の日本ですと、妻の賃金は一般的に低いですが、そのかわりにというか、妻が低所得であることを前提と した社会的な保護の仕組みがありますね。たとえば配偶者控除もそうですし、それからあと、年金も健康保険も全部夫を 通じた保険料負担なしの保護があって、カバーされるような形になっていますよね。それを配偶者控除の廃止だけを取り 上げると、まさに増税という印象を受ける。しかし、夫は、給与は600 万だけど、自分は100 万が当然という社会じゃなく なっていくんだろうと思われますし、またこれに賛成する人はいるのではないか。しかし現実には、大きい差があり、その 中で妻は夫を通じてカバーされるように既に社会が現在ではなっている。そういう保護があれば、夫婦で大きな賃金格差 があっても仕方がないかなと思える部分もあるのかもしれない。それが長期的によくないのではないかというのがこの会 議のスタンスだと思います。税制のみではなく、社会保障制度全体が暗黙の前提とするモデルを男女共同参画型に変え ることが賃金格差改善の1つの前提なのではないでしょうか。そういう前提があるので、1つだけ取り上げるのは難しいか なと。
    大澤会長
    1つだけ取り上げて、それを廃止したら、こういうメリットがあるというのは我々のスタンスではないですね。
    永瀬委員
    私の身近な友人の話で恐縮なんですけれども、ついこの間相談されまして、その彼女が専門職に就いてい るわけですが、年収が200 万に近いでしょうか、あるいは150 万ぐらい、とにかく扶養から外れることになった。そうしてみ たらば、夫の配偶者手当がなくなるだけでなく、夫のボーナスも減り、将来もらうだろう夫婦の年金も落ちることがわかっ た。ところが、自分の方は国民健康保険料を払う、厚生年金保険料を払う、税金を払う、しかも超えていることに気がつか なかったので2年分払わせられることになった。正社員であれば、悔しいから労働時間を減らすという選択はないのです が、、非正規の仕事なので、悔しいから労働時間を減らすという調整が可能で考えているという。「続けるといいことは何も ないの?」と私は問われて、確かに経済的な面ではどう見てもマイナスとしかない。401kに入れるとか、国民年金基金 があったとか、少しはあるが、あまりに大きいデメリットに比べ経済的なメリットはまずほとんどない。能力もある方だけれ ども、正社員の仕事はどうしても見つからず、制度上、非正規の既婚女性が第1号として自身の社会保険を払ってもまっ たくプラスはないのです。本人の税金だけならどうにかなるが、夫の所得減が大きく、夫からも非課税限度まで所得を下 げるよう、促されているらしい。制度が非中立的であることを再び深く感じたエピソードがあります。
    大澤会長
    元に戻りますと、これまた高山委員の御意見で、配特が導入されて制度は中立的になったが、依然として誤 解や認識不足が残っているととらえるべき。この場合の中立的というのは、ライフスタイル選択への中立性というよりも、 高山委員は逆転現象の解消という意味でおっしゃっているんだろうと思います。やはり社会保険制度等相まって130 万円 ぐらい、あるいは100 万円前後のところと130 万円前後のところにかなり大きな壁があって、その前後の移行というのがス ムーズではないということと、150 万を超えたときに、300 万とかというふうにいかない。だから、全体として自分自身にとっ ても家計にとっても余りメリットがないというふうに感じられることというのは、実は壁があることによって非正規のという か、再就職の女性の労働条件全体が低いところで均衡しちゃっているという問題があって、問題はそういう意味では多面 的ですよね。
    坂東局長
    一つだけは切り離せないんですよね。
    大澤会長
    そうですね。
     さて、大分時間が押しておりますので、次に、ii.政策等の方向についての御意見をいただければと思います。ついでに 言いますと、これも高山委員の御意見になって恐縮なんですけれども、遺族年金の明文上、男女別の取扱いがあるとい うのは、実はそういう形で中間報告に書かれています。これほど具体的には書いていないということなんですけれども、遺 族年金のことだけ取り上げて、ここまで具体的に書くのが、中間報告として粗密のアンバランスということとの関係で、そこ はそういう書き方しかしていなかった部分ですが、本報告の方になってくれば、これは注のような形で制度がこうなってい るというのを書き加えた方がいいかなというふうには思います。
    坂東局長
    明示的に共同参画に反するということですよね。
    大澤会長
    明文上反するので、そういう意味では細かいことではあっても書くに値することではないかなと思います。
    坂橘木委員
    神野委員にお聞きしたいですけれども、福田官房長官がg5の中では配偶者控除は日本にしかないとおっ しゃいましたが、ほかの国はどうなんですか。oecd諸国は。
    神野委員
    配偶者控除は少ないことは事実です。g5はないですよね。
    坂橘木委員
    ほかはわからない。
    神野委員
    ええ。
    坂東局長
    全体を調べたらどうかわかりませんけれども。
    坂橘木委員
    oecd諸国が……。
    神野委員
    配偶者控除のある国は、もちろんoecd諸国の中ではかなりありますよ。
    坂橘木委員
    日本のスタンスというのは、g5がどうも対象になっているみたいなんだけど、これは危険で、g5だけが先 進国じゃないので、ほかの、例えばヨーロッパの諸国なんかも結構あるわけで、それも参考になると思うんですよね。そ れでお聞きしたんですが、わからないですか、結構ありますか。
    神野委員
    配偶者控除は、ヨーロッパ諸国でもあることはあります。
    坂橘木委員
    世界の流れは排除の方向ですか。
    神野委員
    僕の記憶では、一般的にいって日本はギリシャ並みなんですよね。ギリシャもあるはずです。だから、そう いう意味ではあることはあります。
    大澤会長
    ほかの面でも、日本はギリシャ・スペインに近いですから、男女平等に関しては。
    福原委員
    北欧諸国は全部ないんですか。
    神野委員
    北欧諸国はないです。
    永瀬委員
    聞くことの選択肢として、配偶者控除がいいと思うか、それとも、例えば公的保育のようなものをした方がい いと思うかとか、国よってかなり奥さんを保護して、奥さんがそういうことをやるようなことを前提に社会保険や税金を組ん でいる国と、そうじゃなくて、女性も働くだろうということで前提にして、かなり保育なんかに公的資金を入れているような国 と、さらにもっと進んで、スウェーデンみたいに育休のような形で男女ともとれると。カップルが働き続けるのを前提して税 金や社会保険を組んでいる国と、このどれがいいですかという聞き方じゃないと、単純に配偶者控除をなくしていいですか と聞き方だとどうなのかという気がします。
    神野委員
    先ほどから議論が出ているとおり、単純に周りの制度の総合性だけではなくて、もっと全体的な話の総合性 を考えないと、ここで言われていることでも、社会保障と税だけではなくて、もう一つサービスも、特に地方自治体から出て いるサービスの問題があるわけですよね。これを三者三つどもえで考えないと、少なくともなんとも言えないですよね。
    永瀬委員
    そういう子育てをどう可能にするかを全然考慮しない国というはないんで
     すよね。スウェーデンは女性が働くことを前提に制度をくんではいますが、子育ては、非常に充実した育児休業や児童手 当や保育を作るという形でちゃんと考慮している。
     日本は配偶者控除という形で、片働き世帯を支援する形で子育てを社会として考慮してきた。ただ今後も日本はこの形で よろしいですかという問いかけじゃないかと思うんです。
    林委員
    先ほど何がメリットかという話を、わかっていないからではないかとかおっしゃっていましたね。配偶者控除、配 偶者特別控除をやめることのメリットみたいなものが明確になっていないために判断が違ってきているのではないかとい うような、私は配偶者控除のメリット……。
    神野委員
    メリットというか、やめることの意義といった方がいいのかな。全体的な先ほどお話のあるようなことを含め て、単純にこれはやめるということを言っているわけではないと。
    林委員
    私が今お話ししようと思ったのは、メリットというとらえ方をすると個人にとってとなるんですよね。でも、廃止の 意義だとかというふうに考えるときには、個人にとってというよりも、今後どのような社会のつくり方をしていくかという、もっ と全体にとっての仕組みの問題になってくるから、必ずしも、そこは個人の今求めるものとは違うというところですね。そこ のところをきちんと分けて考えないといけないかなというふうに思います。
    神野委員
    私のメリットという表現は、メリット財という意味ですね。全体にとって価値があるというふうに、メリットありと いうふうに判断されるということですね。個人個人のメリットではなくて。
    大澤会長
    まだまだ後ろに大物が控えておりますので、先に進みたいと思います。いかがでしょうか。ここには年金の問 題が出てまいります。
    林委員
    質問ですけれども、中間とりまとめの議論の際の木村委員「遺族年金は所得の低い人に配慮しつつ、時間を かけて徐々に縮小・廃止」すべきであるという意見について対応として、必ずしもコンセンサスがないという説明になってい るんですけど。これは今直ちに廃止するということについてのコンセンサスはないと思うんですけれども、徐々にとか、縮 小とか、廃止というようなことについてまで、わざわざコンセンサスがないと書くべきかどうかというのがちょっと気になった んですが、私も記憶が薄れて、余りはっきりはしていませんけれども。
    坂東局長
    高山委員は遺族年金をなくした国はないんだということでしたよね、非常にネガティブな御意見だったと思い ます。
    永瀬委員
    今のままで遺族年金をなくすと、女性の全体的な貧困が上がるのは確実ですよね。
    林委員
    でも、ここの木村委員の考え方は徐々にであり、縮小であり、今直ちにではないですよね。今直ちにだったら おっしゃるとおりなんですけどね。
    坂橘木委員
    いずれにしても、何十年とか言っていましたね。
    福原委員
    文章にはなっていないんだけれども、どの件についてもセーフティネットをつくるということについては、これ はコンセンサスがあるだろうと思うんです。それは一個一個にそれを書いていないだけであって、それを最後の結論か、 鑑かにそのことをつけておけば、それは理解可能じゃないかと思うんですけどね。
    事務局
    申し上げますと、中間報告のたたき台で賃金格差に問題があるというようなことを書きましたら、木村委員か ら、それではまずいというような指摘を受けて、それから書き直すのに調整に手間がかかったような感じがいたしましたの で、それで必ずしもコンセンサスがないとはしたんです。けれども、ただ、よく意見を見てみますと、木村委員の方は徐々 に縮小・廃止で、高山委員の方も第一ステップとして所得分割というようなことでして、必ずしも対立しているわけではない というような言い方もできると思います。
    大澤会長
    木村委員は夫婦間の年金分割というのに、そんなに積極的じゃいらっしゃらないんですよね。私は当面は、 適用除外を認めつつ、年金分割すべきというふうに思っていて、そうなると、老齢年金についてはそれぞれが自分名義で 持っているから要らないと。老齢年金についての遺族年金は要らなくなってしまう。それから、比較的若いときで子育て 中、専業主婦で夫が突然亡くなってしまったというときに、遺族年金がなくていいのかという問題なんですけれども、ここに は明文上の男女別取扱いというのがあって、そのことはひとつ考えなければいけない。男性が55歳以上じゃないと遺族厚 生年金はもらえない。遺族基礎年金はもちろんのこと、女性については年齢制限がないということ、このことをどう考える のかということと、やはり、そういうライフスタイルは自己選択の結果と考えれば、若年で遺族年金を受ける可能性につい て、そのリスクについては自己責任で備えるべきといった、その部分の選択性、オプション化というのはあり得るというよう な議論はしてきたと思いますけれども、それについて必ずしも全員が一致しているわけではない。これもまた事実だと思い ます。
    神野委員
    さっきと関連してですが、さっきの説明が悪かったかもしれません。もう少し説明すると、デメリットだというふ うに思われている人にとってメリットを示すような書き方がどこかにあってもいいような気がするんです。つまり配偶者控 除をやめたり保険の制度を変えると、あたかも専業主婦が直接的に不利益をこうむるということにとられてしまうわけです ね。そうではなく、普遍的に意味があるとすれば、専業主婦から見て、それはいいことなんだということをわかるような書き 方。つまり男女共同参画というのは、男性がなぜ支持するかというと、男性にもメリットがあるからだというふうに論理を使 わないとだめなんじゃないかという気がするんですね。だから、書き方として何か必ず普遍的に意義のあるものというの は、専業主婦にとってのメリットがあるはずなので、そこを表現できないかなと。
    大澤会長
    それは今の制度には歪みがあるといいますか、中立ではないということでは全員一致しているんですけど、 じゃ、どういう制度にしたら、一番中立性が確保できるのかということについてはまだ今後の検討課題ですので、一遍にコ ンセンサスにいけないとすれば、ケーススタディでa案、b案、c案とかとやって、中立性の度合い、中立性はできる限りと いうことに基本法でもなっていますから、そういうことである程度結論に至れるのではないかと思っております。私、個人 的には第3号に払わせるべきか、そうでないか、どうやって払わせるかという議論は不毛だというふうに思っていまして、 私は第3号にも払わせるというふうには一度として言ったことはない。夫婦間で分割すれば、世帯としての保険料負担は 同じで、そして専業主婦である方も自分名義の報酬比例年金を持てるという意味ではすごいメリットになるわけですよね。 そういうこともケースの中では、a案、b案、c案の中ではこういうメリットというふうには書けるんじゃないかと思います。確 かに現行制度を大前提としてのこの部分をどういじるかということに終始していたのでは弱いかなと。これは国民の方から の御意見にもあるとおりだと思います。高山委員の御意見にもそれがありました。
    永瀬委員
    私が思う問題点としては、ただ分割するんじゃなくて、基礎部分がありますよね。分割すれば、それまで倍 だったのが半分になるから、一番この世帯は貧しい世帯の方に位置づけられますね。そのときに、1階部分と2階部分を どう相対的に見るかというので、すごく違う結果になっている、つまり現状の3号を残したまま、1階部分と2階部分の現行 の比率のまま、2階部分の年金分割を取り入れただけでは、既婚女性の就業努力と保険料納付があまり年金に反映され ない構造は残るんですね。だから、今のままで分割するとどうかというのは、またまたいろんな検討すべき問題があるの かもしれないなと思っているんですけど。
    大澤会長
    現状のままでも、年金給付の所得代替率というのが一番高いのは片稼ぎ世帯なんです。その次が女性単 身者というふうに出まして、それはこの所得代替率の差というのはすごいですよ。アメリカと日本が一番そうなんですけれ ども、スウェーデンはどのような世帯類型でも所得代替率は同じですから、そういう意味で完全に中立的なんですけれど も。
    坂橘木委員
    年金に関してですけれども、ここで基礎年金の財源に関してあんまり横書きのところには書いていないんで すが、資料1のうち、坂口大臣の報告によると基礎年金国庫負担の2分の1の引き上げに特に取り組むと書いてあるん ですよね。前回の話だと、もうこんな話は消えたというような雰囲気が非常に強かったんですが、厚生労働省は本気でこ れをやろうと考えているんですか。
    大澤会長
    事務局に聞かれても困ると思うんですが、「所要の財源を確保した上で」というふうにあくまでついていまし て、その上でのことなので、その財源をどう確保するかというのがまだ解決されていない。
    坂橘木委員
    高山委員も、前回は消えたとか言っていたでしょう。そんなのは誰も考えて
     いないとか。ところが、大臣がこういうことを言っているというのは、まだ残っている。
    大澤会長
    でも、法律には書いてありますから、2分の1への引き上げと付則かなんかで書いてあるわけです。ただ、そ の中に「所要の財源を確保した上で」と書いてあるから、確保されなければ実現できないだろう。
    坂橘木委員
    では、大臣も言っていることだったら、そのことを横書きのところにでも書いてもいいんじゃないですか。
    事務局
    ケーススタディの中で税金2分の1という案も入れるということも考えられます。
    坂橘木委員
    そうですか、それなら結構です。
    大澤会長
    よろしいでしょうか。
     次に、健康保険、介護保険、企業の家族手当等の部分でございますが、御意見いかがでしょうか。
    坂橘木委員
    国民健保は市町村単位でやっているけど、それを県に統一するという案が検討されているんでしょう、違い ましたか。
    神野委員
    大澤会長の方が詳しいと思うんですが、まだそこまではいっていない。
    坂橘木委員
    議論になっているという程度なわけですか。
    神野委員
    それには賛否両論あります。それだけの案ではありませんから。
    坂橘木委員
    ほかの制度との兼ね合いがありますね。政府管掌とかね。私は基本的に賛成なんですけど、もう都道府県 から国に移管すべきではないかというぐらいの意見を私は持っていますから。国民健康保険というのは、何であんな小さ な単位でやっているのか。
    神野委員
    一元化に幾つか案が……。
    坂橘木委員
    ステップがあるんですね。
    神野委員
    その中のワン・オブ・ゼムであることは間違いないけれども、方向が決まっているというか、そういう流れが 強いということも言えないと思います。
    坂橘木委員
    反対される根拠はどこにあるんですか、その反対意見の方は。
    神野委員
    ほかの一元化案もあるからです。今のは都道府県にやらせることによって、いわゆる国民健康保険の問題 を解決しようということですよね。それは割と京都大学の西村先生とかなんかがおっしゃっている考え方ですが、それに収 斂しているとは言えないと思いますが、どうですか。
    大澤会長
    そうですね。一元化というのは割と多くの方がおっしゃいますけれど、どの地域単位で一元化するのかとい うのは……。
    坂橘木委員
    北海道か、東北か、関東かという一元化だってあるわけですか。
    大澤会長
    もっと小さいレベルで、今の市町村よりは大きいかもしれないけど、もう少し小さいレベルで一元化というふう に、その方が保険者としての、例えば医療機関の選択だとか、診療報酬の統制がきくというような御意見もあるわけです。
    坂橘木委員
    そのことはここにはあんまり書いていないですか。
    大澤会長
    我々まだ健康保険、介護保険について議論もしておりませんし、ヒアリングもまだ十分していない。喜多村氏 のヒアリングはいたしましたけれども……。
    坂橘木委員
    あれは大上段でしたけれども。
    大澤会長
    次回10月1日には、厚生労働省から健康保険に関して個人単位化や一人一保険証の現状などのヒアリン グを行う予定になっていますので、そこでまた御議論いただけるかなと思います。
    坂橘木委員
    わかりました。すみません。
    大澤会長
    ここでは、特に企業の家族手当等について、中間報告では基本給に振り替えるなどというふうに書いたわけ ですけれども、そうではなくて、従業員本人の選択を拡大して、企業はメニューだけを提供する方向へという考え方にする ことについて御意見いかがでしょうか。
    福原委員
    今の書き方でよろしいと思います。
    大澤会長
    後者の書き方で。
    福原委員
    企業はメニューを提供。
    大澤会長
    企業はメニューだけを提供する。そういう中では、フリンジは要らないからみんな基本給にしてくれという人 もあれば、それでいいということですよね。
    福原委員
    いいんじゃないですか。
    永瀬委員
    私も選択肢を広げるという方向でいいと思いますけれども、その際に、社会保険が違ったりしますよね。現 状、何に振り替えるかによって、税金や年金給付など実はいろいろと違ってくる制度になっているという、この問題はある かなと思います。
    福原委員
    振り替えたものによって、例えば全額給料にしちゃった場合には、全額に対して税金がかかる。
    永瀬委員
    税金がかかるし、また年金保険料も増えると思いますね。
    福原委員
    それだとまずい。それは中立的にしないと具合悪いです。そういう条件ですね。
    大澤会長
    そうすると、フリンジの分の労働費用に対しても、つまり現金給与のところにパーセンテージで社会保険料 をかけるというのではなくて、総労働費用に応じた社会保険料みたいなことも考えないといけないわけですね。そうでない と中立でなくなっちゃう。
    福原委員
    先進国の給与体系との相関関係はあるんですか。つまり社会が進歩するほどフリンジが減ってくるとかとい うことは必ずしもないんですか。
    大澤会長
    それは必ずしもないと思いますね。
    坂橘木委員
    私は今の福原委員の言われたのが現状だと思うけど。歴史的に見れば。
    福原委員
    この間、中国に行ったら、散髪代を払っているんですよね。もちろん、そのほかのものがあるわけだけど、だ から給与総額は減っているんですよ。それは正しい給与の支払い方かどうかということに疑問を持ったんですよね。
    坂東局長
    中国の国営企業なんか、全部丸抱えですね。学校だとか、食堂だとか……。
    福原委員
    今、私営企業になって、国営企業と同じように一つ一つ手当を払っているわけです。その代わり、医療は無 料ですよね。
    大澤会長
    先を急ぎまして、雇用システムのところでございます。特にここでは「日本型均衡処遇ルール」という表現が 適切でないとすれば、どういう表現がいいのか、良好な選択肢というのよりももっといい、それこそもっと良好な、ベターな 表現があるのかどうかと。それから、12月までに最小限検討しておくべきことは何かなどについて御意見をいただければ と思います。
    坂橘木委員
    日本型という意味を私なりに解釈すれば、フルタイマーの人はとにかく会社のために頑張ると、オーバータイ ムは拒否もしないし、転勤で明日札幌へ行けと言ったら「はい、行きます」という感じで、フルタイマーの人もそれなりの犠 牲を強いているんだから、完全にフルタイマーとパートタイマーの賃金、労働条件を全く同一にするという意見に対して は、フルタイマーからの拒否反応もあるだろうという意味で「日本型」という言葉が出てきたんじゃないでしょうかね。だか ら、今言ったようなことを「日本型」という言葉じゃなくて、フルタイマーはそれなりの企業への努力もしているということを配 慮しながらということであれば解決するんじゃないですか。
    大澤会長
    林委員いかがですか。
    林委員
    国際労働基準というようなものがきっちりはまるように「日本型」をとることで均衡処遇とか、均等処遇とかとい うことで足りることだと思うんです。しかも、それに近づけることというのは、やっぱり大事じゃないかと。これほど経済は世 界で動き始めている中で、ルールだって同じようにしていけばいいじゃないかと。競争の論理にはそのあたりは共通な ルールでやってもらいたいという思いはありますよね。
    坂橘木委員
    私は原則賛成なんですけどね。何も反対意見はないんだけど、ここであえて「日本型」という言葉に代えて、 何かいい言葉がないかと会長が言われたのでね。
    大澤会長
    それはいろいろ御意見をいただいているわけで、その言葉をやめてくれという御意見があったわけですか ら。
    坂東局長
    拘束性は高いかもしれないけれども、また逆に雇用の安定性もあるのだから、短期間労働者、短期で有期 契約をする人の方が単価が高くてしかるべきだという意見もあります。
    坂橘木委員
    あり得ます。フルタイマーの人は雇用の保障があるんだから、それでいいじゃないかという反対も……。
    坂東局長
    3年限りの人は少しぐらい高くてもいいんだと。
    坂橘木委員
    おっしゃるとおり。「日本型」という言葉を使うと、何かオブラートに包まれて実体がわからんということになる から、もっと具体的なことを書いてほしいということなんでしょう、ここでは。
    大澤会長
    そうでしょうね。わかったようでわからないんですよね。「日本型」というのはね。
    林委員
    大体今までの例から言うと、「日本型」という名前をつけることによって、進んでいる国のつまみ食い的なとり込 み方をしていくという傾向があるんですよね。それで、私としてはこういう意見を述べたというふうに思っているんですが。
    大澤会長
    働きに見合った処遇というのではどうなんですか。
    林委員
    構わないですね。例えば、オランダ型のワークシェアリングとかというときに、オランダ型に対して日本型ワーク シェアリングができそうだみたいに言って、オランダのワークシェアリングの基本的な考え方、それはパート条約、そういう ものがベースになっているけれども、そこのところは外して、とにかくパートで仕事を分け合えばいいという部分だけを取り 込んでワークシェアリングに入っていこうという向きがないでもないわけですから、そういう今までのあんまりよくないイ メージで使われてきたような気がしまして、私の中にそういうものが定着していたものですから。働きに見合ったということ であれば、私はそれでいいと思います。
    大澤会長
    その他幾つか論点が上がってはおりますけれども、これらは今日全部すぐに結論をということではありませ んので、また順次御意見をいただいていければと思います。全体を通して御意見が何かあれば、振り返って御意見をいた だきたいと思いますけれども。
    福原委員
    具体的にどの項目と言えませんけど、12月までに書き込まなきゃならないプライオリティと、12月には書き込 めないんだけれども、その継続検討してなるべく早く結論というか、答申を出さなきゃならないプライオリティと、もっとゆっく りやるべきものと3段階あるんじゃないでしょうかね。どれがというのはほかの今の子育て支援委員会みたいなとの兼ね 合いもあるので、今何をということはちょっと言えないような気もするんですけどね。
    大澤会長
    雇用システムについてトッププライオリティはどこにあるかということでしょうか
    福原委員
    プラオリティはあるんだけど、次のプライオリティじゃないですかね。
    大澤会長
    そうですね。雇用システムについての時間をかけた検討というのは12月に出す報告書のまた次の課題とい うことに。
    福原委員
    ただ、その次にはしないという。
    大澤会長
    はい、そうです。
    福原委員
    そういうくくりが必要なんじゃないかと思うんですが、これはむしろ事務局の方にそういう整理をまずしていた だいて、次の委員会なんかで、我々が、これは12月のものに盛り込むべきではないかとかという議論をしたらいかがなん でしょうか。
    大澤会長
    それから、税制社会保障制度についても、税制改正のタイミングとか、それから年金の改革の審議というよ うなタイミングを見て12月に私たちの報告というふうには考えておりますけど、その報告を出したらもう税制も社会保障制 度も考えなくていいというふうにはならないので、12月までにまとめられるところでまとめる。その後も続くと思うんですね。
    福原委員
    税制については石先生がやっていらっしゃいますが、あれは政府税調でして、もう一つ党税調という関門が ありますので、そうなると、それが決まるのは11月……。
    大澤会長
    11月から12月にかけてと。
    林委員
    均等処遇とか均衡の、この問題については、9月17日ぐらいから雇用均等分科会がスタートして、パート研究 会報告でまとめられたことをベースにしながら、何が均等処遇なのかということが議論され、それを推進するにはどのよう な方法があるかという3つの課題で始まるわけですよね。それが12月にはまとめていくというような考え方みたいですか ら、そこにあんまり遅れるのもどうなのか、そこら辺はどうしたらいいかなとちょっと気になるところではあるんですね。た だ、ここで同じ議論を、それよりも短い時間で、ほかの課題も一緒にここで議論して結論を出すほど容易な問題ではない という気もしますので。
    坂東局長
    歯切れのよいのは出にくいんじゃないですか。
    林委員
    入口ぐらい出しておくぐらいしかできないかな。
    大澤会長
    あとは、全体としてこの専門調査会のスタンスが、女性の就業を促進しようという方にあることは否定できな いわけでして、制度を中立にすれば、働く意欲や能力や条件のある人がもっと働いて稼ぐようになるのではないかという 観点からやっているわけです。それに対して、そうすると、ただでさえ、雇用不安の強い中高年男性の働き口を奪うことに なるのではないかという御意見が、今回はたまたま出ていないんですけれども、十分予想できますし、世の中にはそうい う御意見があるわけですので、それについてどういうふうに考えていくかということはございます。
     その意味で、私、三菱総研が8月に発表したシミュレーションの結果というのはとても興味深いと思っていまして、パート の待遇格差を正社員に対して現状が0.59ぐらいなのを0.77まで上げると正社員の雇用が5年間で120 万人ぐらい増える と。相対的に安い労働力になるおかげで正社員の雇用が非常に増えるというシミュレーション結果が出ていまして、これ などは大変おもしろいので、当調査会でも参考にできるのではないかと思っております。三菱総研のホームページにかな り詳しく出ていますので、ごらんいただければと思います。
    坂東局長
    お安いから非常にお買い得でパートに需要が集中しているのが、分散する。
    大澤会長
    そういう意味では身分格差と言われるような大きな格差があるがために、雇用ポートフォリオが従来の合理 的なものよりはずれているということと同時に、その待遇格差の改善をしたことによって企業のコスト構造には変化なしと いうシミュレーション結果にもなっていまして、大変興味深いと思っております。
    坂東局長
    それは正社員の賃金を下げるということですか。
    大澤会長
    下げるとは言っていないんですけれども、要は是正するんですよ。
    坂東局長
    そうじゃないと、コスト構造が全体として増えないということに。
    坂橘木委員
    それは無理ですよ。パートタイマーの賃金を上げて、フルタイマーそのままキープしていたら企業はやって いけんでしょう。
    大澤会長
    あくまで相対的、100 対何ということでしか、それはやっていませんから。
    坂橘木委員
    絶対額はキープする、下げるとは言っていないのね。
    大澤会長
    はい。
    林委員
    配分の問題を考えればいいわけで、下げると言えば、全員同じように下がるということではないですから、そこ ら辺はこれから考える余地のいっぱいあるところだと思いますね。
    大澤会長
    と言っている間に時間が参りまして、どうもありがとうございました。今回の議論を踏まえて、次回も引き続き 議論を進めていきたいと思います。
     なお、自己評価マニュアルと言ってまいりました事例研究も含めてワーキングチームを私の方で人選をして発足をいた しました。このことを報告します。そして、ある程度結果がまとまったところで、専門調査会にもフィードバックの報告をした いと思っております。
     最後に事務局からの連絡事項をお願いします。
    事務局
    次回は10月1日火曜日の13時半から16時です。場所は5階の特別会議室の予定でございます。
     あと、おつけしておりますが、議事録でございますけれども、資料2はこれで公表させていただければと思います。以上 でございます。
    大澤会長
    それでは、これで影響調査専門調査会の第15回会合を終わります。どうもありがとうございました。

(以上)