第14回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成14年7月24日(水) 10:00~12:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      大沢 委員
      小島 委員
      高尾 委員
      高山 委員
      橘木 委員
      永瀬 委員
      林  委員
      福原 委員
  2. 議事
  3. 議事内容
    大澤会長
    ただいまから男女共同参画会議の影響調査専門調査会第14回会合を開催いたします。
     では、お手元に議事次第がございます。これに従いまして、本日の審議を進めさせていただきます。
     本日は、高山委員から中間報告に対する意見等を伺った後、中間報告への国民の皆様からの意見、それから政府における税制等の検討状況について事務局から説明をしてい ただき、議論を行いたいと思います。
     では、まず、高山委員から中間報告の年金部分等を中心に御意見を伺いたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。
    高山委員
    皆様おはようございます。高山でございます。
     雑用に追われておりまして、この部会の審議に欠席がちとなり、貢献できなかったこと誠に申しわけなく思っております。
     皆さんの御尽力によりまして、中間報告が取りまとめられたこと、大変感謝しております。内容を拝読させていただきましたけれども、興味深い論点が多くて、あるいは将来の方向 づけという点では力作ではないかと考えております。取りまとめに当たった委員の方々及び事務局の担当者の労を多としたいと思います。
     おっしゃることすべて結構でございますということでは、今日の議論になりませんので、ディスカッションを呼ぶために、やや刺激的な議論を少しさせていただきたいと思います。私 はこの報告自体に反対ということではなくて、この報告書の説得力をどうやって高めるかという観点から以下いくつか指摘していきたいと思いますので、その点を最初にお断わりし ておきます。
     まず、中間報告の初めの方から順を追ってお話します。大小様々でありますけれども、まず1点目は、中間報告書13ページに退職年金・退職給付のことが書いてありますけれど も、ここでは退職年金のことを取り上げておりまして、勤続年数の長さが年金支給の一つの要件になっている問題を取り上げております。サラリーマンにとっては、月々の賃金と か、あるいはボーナスを含めた年俸がどうかということと、退職時にもらう退職一時金なり退職給付がどうかということ、この2つが関心事項でありまして、退職年金はややサブシ ディアリーなんですね。退職年金というのは、いわば退職給付、ほとんど退職一時金なんですが、退職一時金の中の内枠にすぎないわけです。そのときに、内枠のものだけを取り 上げることに意味があるかどうか。むしろ、退職給付金あるいは退職一時金規定の中に、男女差別的なものがあるのかどうかということの方が重要であって、退職年金だけを取り 上げて議論するというのは論点が狭すぎるというふうに感じます。
     今、新しい仕掛けが出てきました。日本版401kもそうですし、この4月からキャッシュバランスの形のものもできました。あるいは、従来の給付建ての制度である税制適格年金は 10年で廃止と決まっておりますし、厚生年金基金の代行返上も今年の4月から始まっています。企業年金制度自体に選択肢が増えた中で、今、大改革を企業はやっているわけで す。そうした中で古い給付建ての制度の一部だけの問題を取り上げることは、将来に向っての全体的な問題提示になっていません。
     従来の給付建ての制度は長期勤続の男性を優遇していました。基本的に勤続年数の短い女性や若者をバッシングしていたわけです。そういう人たちをバッシングして長期勤続の 男性を優遇するという制度だったのです。その仕掛けを今、企業も壊そうとしているし、中途で入社した人とか、女性とか、あるいは若い人たちを戦力化するためにいろいろ新しいイ ンセンティブを与えようとしているわけです。例えば、退職金の前払いの制度だとか、キャッシュバランス型にするとか、あるいは掛け金建てを導入するとか、みんな女性にとって将 来有利になる方向での選択肢の増やし方です。そういう指摘を少し補っておいた方がいいのではないかというふうに思います。
     それから2点目は、年金依存度の問題です(15ページ)。高齢世帯一般の、あるいは高齢単身者もそうですけれども、年金依存度が62%とありますけれども、これは平均値ベー スなんです。経済変数というのは平均値だけで見ると全体像を見誤ることが少なくない。むしろ、年金は中位所得者グループだけをつかまえてみますと、年金依存度がもっと高い んですね。あるいは、モーダル・バリュー(最頻値)をつかまえてやると、もっと年金依存が高いんです。平均値というのは、所得分布で見れば上から3分の2ぐらいのところなんで す。全体を見るときの評価として不十分ではないかと思います。
     3点目、15ページに遺族年金の話が書いてありまして、これは掛け捨ての問題が焦点になっております。ただ、遺族年金は男女共同参画からという観点からすると、まだ問題が いくつかあるんです。例えば、遺族基礎年金においては、母子年金はありますけれども、父子年金はないんです。これはジェンダー・イクォリティーとは全く反する問題なんです。こ この専門調査会でそのことぐらいは私は指摘しておいた方がいいのではないかと思うんですが、そういうことが書いてない。
     それから、結婚とか再婚のところで受給資格の問題は結構悩ましい問題を抱えております。例えば、遺族年金受給者が再婚したとたんに支給停止になってしまう。
     あるいは老齢年金受給後に新たに結婚した相手、あるいは再婚した相手にとって、本人が亡くなった後、遺族年金は丸取りになっています。年金というのは本人及びその配偶者 の貢献を担保にして初めて給付するというのが基本的な考え方なんですけれども、年金受給後に結婚した人とか再婚した相手は、保険料拠出期間のときに貢献ゼロなんですよ。 それにもかかわらず丸取りするんですね。これはよくあるんですけれども、年金受給者が65歳ぐらいになって奥さんに先立たれた。いろいろ話があって再婚すると、男は甲斐性が ないというか、生活のリズムとかペースが狂うと早く亡くなるケースが多いのです。2年ぐらいしか生きられないんです。あと十数年、あるいは、もっと若い人と結婚すると二十何年遺 族年金をもらいっきりなんです。保険料を拠出していないわけです。こういう人たちにずっと遺族年金を払い続けていいのかという問題があります。
     あるいは遺族年金については、新規裁定時に遺族の所得を調べます。所得制限は結構高いんです。しかし所得を調べるのは1回限りなんです。裁定時は所得が高かったかもし れないけれども、いろいろ不都合があって3年後に所得が下がってしまった場合、裁定が1回ですから、あなたはかつて所得が高かったから遺族年金受給資格ありませんというこ とで通してしまうんですね。3年後に所得が低くなってしまった場合に遺族年金をもらえないかといってももらえない形になっているんです。この問題をどうするかというような話もあ ります。
     4点目は、生涯可処分所得ですけれども、これは中間報告の17ページです。図の後ろの方にいろいろ注があるんですが、結論は明快でして、共働きでしかもフルタイムで働くこと が一番得だよというメッセージです。現行制度をデフォルメして、こういう主張を展開するのは一つのやり方だとは思うんですが、やや慎重にやった方がいいのではないか。 モデ ルで使った基本データは、その世帯における夫婦のペアリングの問題を全然無視しています。個人単位の賃金を、専業、片働きの世帯でも共働きの世帯でもみんな同じ賃金だと いうふうに仮定して計算しているわけです。ところが参考資料でお届けした『貯蓄と資産形成』という私と有田さんの書いた本の中の第4章に、『全国消費実態調査』1984年版の個 票データを再集計したものがありまして、夫婦のペアリングというのは決してランダムではありません。
     例えば、パートやフルタイムで働いている妻あるいは専業主婦で、それぞれの夫の年間収入、賃金を比べると明らかに差があるんです。たとえばフルタイムで働いている女性の 夫よりも、専業主婦の夫の方が賃金は平均して高いんですよ。そこの点が無視されています。このモデルだと、専業主婦世帯と夫婦共働きの世帯の生涯所得差を現実よりかなり 拡大して見せている形になっているわけです。これはそういう意図があれば、それはそれで結構なんですが、統計というのは使い方によりますので、うそを言うのは問題ではない か。ですから、こんなに格差は大きくないんだというのを、もう少し何か言っておいた方がいいのではないかと思います。
     それから、ついでに言いますと、図表編で後ろの方、これを解説した40ページぐらいにあるんですが、私の読み間違いかもしれませんけれども、医療保険のところを書いた図表の 40ページです。これの解説ですけれども、3行目に、「夫と死別するまで(夫76歳・妻63歳)」とあるんですが、この63歳の記述は正しいんでしょうか。もしかしたら誤植かもしれませ ん。
     5点目は、大問題でありますが、個人単位化の問題です。公的年金において個人単位化が基本であると20ページでも指摘しております。18ページで個人単位化の話を非常に強 く主張しているんですが、個人単位化を社会保険の世界で断行した国は私が知っている限りスウェーデンしかないんです。あるいは、ほかの国にもあるかもしれません。私の勉強 不足かもしれません。ほかの国は女性の有り様が多様であることで、いろいろ問題点を抱えながら困っているのが実態だと私は思っています。スウェーデンでも年金の世界では、 一旦完全個人単位化に90年の段階で踏み切って、事実上、遺族年金を廃止したんです。非常にみすぼらしい形だけの遺族年金が残っているんですが、日本流に見ると、遺族年 金はないに等しい。遺族年金廃止が個人単位化と事実上同じ主張なんです。
     問題は、なぜ各国で逡巡しているかというと、この背景にあるのは明らかに男女の賃金格差なんです。個人単位化すると、老後まで賃金格差を引きずるという話になるんです。 女性の方が平均して長生きしますから、その点を今の制度からの移行ということで考えるとどうかということなんです。今の制度は世帯単位における調整部分を含んでおりますの で、現役時の賃金格差が老後には確かに持ち越されるんですが、その割合が小さい、緩和されているんです。だけれども、ストレートにもっていってしまうというのが個人単位化の 発想なんです。スウェーデンでも、より戻しの議論が94年から始まりまして、選択制ですけれども、夫婦間の所得分割もあわせて認めようじゃないかという話になって、そこで調整 をかけているのが実態です。
     夫婦間の所得分割をやると、夫の賃金が高ければ、その分だけ老後は高い年金が妻にも保証されるシステムですので、現役のときの賃金の低いところが老後は緩和される形に なるんです。ですから、世界の今の流れから見ると、夫婦間の所得分割というのが第1ステップかなと思っております。長期的に完全個人単位化をいうかどうかは男女間の賃金格 差がどの程度の期間で解消するめどが立つかということにかかっていると思います。男女の平等を積極的に推進し、最も平等性の高いスウェーデンにおいても、男女の賃金格差 は歴然として残っているんです。日本の将来をどうするかは個人によって判断が違いますけれども、そこで長期のシナリオとしてこちらの方向を打ち出すかどうかというのは、やは り判断の問題だろうというふうに思います。
     もう一つは、後で健康保険とか介護保険が出てきますが、健康保険も含めて個人単位化することには様々な問題があります。奥さんの問題は年金とほぼ似たり寄ったりだと思い ますけれども、子供まで完全に個人単位化していいのかどうかということも含めて、とりあえず年金は年金だけでいいのかなと。できることからやればいいわけで、全部社会保険同 一の手順でというふうに無理やりやると、いろいろ不都合が起こってきて、できることもできないという話になります。健康保険も同一基準でというメッセージになっていますけれど も、そこは、それぞれの制度の特性を勘案して、慎重に検討するというようなトーンの方が説得力があると思います。
     それから6番目は雇用慣行の見直しです。19ページに良好な選択肢を提供する、あるいは24、25ページに、雇用慣行の見直しの話が入っておりますけれども、長時間拘束を働 き場所でかけること、すなわち働き方の問題が一番大きいと思っております。男女共同参画といっても、今一番議論になっているのは、男女が子育てに共同して参画できないという ことだと思うんです。家事というのは、もうほとんど機械化というか、自動化というか、手抜きができるようになっていまして、問題は実は子育てにあるわけでして、仕事と子育ての両 立の問題だと思います。
     日本の特性としては、長時間拘束で男が異常な働き方をしている。これはそれなりにインセンティブシステムが用意されているわけでして、そこを変えない限りだめだというふうに 思っているわけです。今日は深く立ち入りませんけれども、後で興味がありましたら『esp』に書いた私の論文の、特に第5節を、ごらんになっていただきたいと思います。
     その次、7点目は配偶者控除や配偶者特別控除の話です。これは20ページです。制度自体は中立的になっているというメッセージになっていると思います。ただ、誤解や認識不 足が残っている。そのために、統計表の中にありますけれども、100 万円より少し低いところで、大きなピークができている。現に就業調整が行われているわけです。行われている んですが、それは制度があるから就業調整が行われているというふうに判断するのか、むしろ誤解や認識不足が問題で、そのためにこういう行動が起こっているというふうに記述 するかという問題です。ここでは制度自体があることが誤解や認識不足を生んでいるから、制度自体に問題があるという書き方になっていると私には読めました。
     過去、配偶者特別控除がなかったときに、明らかに配偶者控除は歪みを持っていた。中立的でなかったわけです。就業を調整するモメンタムを持っていたわけです。配偶者特別 控除がのった後も、イナーシャ(慣性)が働いていて、制度は変わったのに、そこが正しく認識されていない、あるいは誤解がずっと残っている。本来だったら認識を変えなければい けなかったのに、従来の配偶者控除の制度のときの発想が残っていて、制度が変わったにもかかわらず理解が変わらなかったということです。制度があるからだめなんだという か、むしろ、制度は中立的なんだけれども、誤解や認識不足だというか、ここは書き方において大きな分かれ道だと思っています。ここはどちらかというと、誤解や認識不足を生む ような制度が問題だから、制度を直せとか廃止しろという主張になっているわけです。こういう書き方でいいのかなというのが私の率直な感想です。制度自体はやっぱり配偶者特 別控除込みにすると中立的なんですよ。ただ、人々の行動において、明らかに就業選択、時間調整あるいは所得調整が行われていると、これは事実として厳然とある。それの結 びつけ方が、制度があるからだというか、いや、それは誤解や認識不足だからだというか、これは判断の問題だと思います。
     もう一つは、仮に配偶者特別控除や配偶者控除を縮小した場合に、どれだけ女性の就業を増やすかということに関する何らかのメッセージをつけ加えた方がいいのではないかと 思います。先ほど紹介した岩波の私と有田さんの書いた本の最後の方で、実証分析をやっております。一般的に夫の年間収入が多い人ほど妻の就業確率は落ちるんです。夫の 年収が低いと妻の就業確率が上がるという形になっている、これはほとんどの実証研究でも確認されている事実だと思うんです。そうしますと、配偶者特別控除とか配偶者控除を 縮小したり廃止すると、夫の手取り所得が落ちるわけですから、それは妻の就労を引き上げる効果があるわけです。それがどの程度かというようなことを実証的にやった方がい い。ただ、私の分析は1984年時点の実証で非常にデータが古い。最近時点のものを改めてやった方がいいと思います。どの程度歪みを与えているかというような話、あるいは仮 に控除を縮小したら、どの程度の就労促進効果があるかというようなことをできたら数量的にやった方がいいんじゃないかというふうに思います。
     それから、8点目は厚生年金の適用拡大の話です。中間報告の21ページに記述があります。基本的な方向は適用拡大のために4分の3条項を改める、あるいは130 万円の壁 を取り払うという話だと思うんですけれども、中ごろに企業負担増につながる可能性があると書いてあるんですが、企業は合理的な行動をとると仮定すれば、負担増にはならない。 企業は、社会保険料を払ってくださいという話になったら、わかりましたといってパートに対して手取りで提示する賃金を下げるんです。今まで社会保険料なしで払っていたパートの 時間給、例えば1時間1,000 円だとしますと、1,000 円で社会保険料負担なしで今まで払ってきたんですが、社会保険料を払ってくださいと言われたら、提示する賃金を900 円にし て100 円分を事業主負担の保険料として払えばいい。事業主の負担は、従来は賃金というラベルで時間給1,000 円を払ってきた。これからは賃金900 円と社会保険料負担100 円 で合わせて1,000 円ですから変わりない。企業としては多分、負担増にならないんです。
     問題は、むしろ本人にかかってきます。本人は今まで1時間働けば1,000 円もらっていた。社会保険適用を受けますと手にする賃金が900 円に下がります。しかもこれからは本 人負担分の保険料を払いなさいという話になる。したがって、さらに100 円引かれるわけです。今まで1時間働くと1,000 円もらっていたが、これからは実質的手取りが800 円に減 るという話です。要するに、本人の手取り所得が現実的に減る。ただ、将来の年金がその分増えるんです。今日の賃金を減らし明日の年金を増やす。そういうことに制度が変わり ます。それがパートや多様な就労の形をとっている女性の多数派の真の利益にかなうのか。今の賃金の方が大事だという女性の数は少なくないのではないか。そうしますと、ここ を仕切るのは政治的には難しい。
     それから、中間報告の21ページに書いてあるのは、いわゆる130 万円の壁、あるいは第3号による就業阻害効果の話です。130 万円の壁と呼ばれていますが、図の28ページの パートの分布を見ますと、ほとんど壁になっていない。事実上ツーピークなんですが、2つ目のピークは山と谷の間隔が少なく、そんなに大きな壁になっていない。質的にはこういう 議論をよくするんですが、量的にどうかという議論からすると、この問題の重みはあまりないように思っております。
     先ほど紹介した岩波で私と有田さんが書いた本の4節の最後の方に実証分析で弾性値等の推計をやっています。女性本人の賃金率が高くなると、就労確率は高まるという結果 が出てきているんですよ。恐らく、これは誰がやっても似たり寄ったりの結果が出てくるのではないかと推察します。そうすると、パートに社会保険を適用すると、手取り賃金を減ら すんです。手取り賃金を減らすと、実は女性の就労確率が下がる可能性の方が高い。実証研究からいくと当然の帰結です。賃金率が上がれば女性の就労確率は上がりますとい う話です。逆に、賃金率が下がると女性の就労確率はむしろ下がる。社会保険適用促進だと言っているんですけれども、それがその女性の就労をかえって阻害しないのか。そうい う問題が新たに発生します。
     さらに東大の井堀氏がよく言っている話なんですけれども、専業主婦をいくら優遇しようとしても、事実上それはできません。パートを優遇し、あるいは専業主婦を優遇した結果、 現にそれが成功したとすると、パートの人が多く、あるいは専業主婦の人が多くなって、結果的にフルタイムで働く女性が少なくなるわけですね。フルタイムで働く女性が少なければ 供給が減るわけですから、需要が変わりないとすれば、その分だけフルタイムで働く人の賃金が上がるんです。専業主婦やパートを優遇すれば優遇するほどフルタイムで働く女性の賃金が上がるんです。結果的にマーケットで調整が図られて、専業主婦を優遇することができなくなる。これが東大の井堀氏の主張です。そこのところをどう考えるのか。
     10点目は第3号被保険者ですけれども、これはなかなか悩ましい問題でありまして、昨年の12月に厚生労働省における検討会で報告書が出ましたが、両論併記というか、各論 併記に終わった問題です。ここは方向としては、第3号にも保険料負担をという形で記述されています。私は、現在の制度、第3号における不都合は特に遺族年金にあらわれてお り、老齢年金は目をつぶることができる程度の問題ではないかと思うんです。
     問題は遺族年金なんです。その問題を負担の方で調整するか、給付の方で調整するのか。これはまさに政策判断の問題です。なぜ、負担の方で調整しなければいけないのか、 なぜ給付の方で調整してはいけないのか。要するに夫婦間の所得分割を認めて、専業主婦が稼いでいる賃金をゼロとみなして所得分割でやれば、事実上共働きであろうが片働 きであろうが、同じ遺族年金に、公平な遺族年金になるはずなんです。給付の方を調整するという選択肢があるんですが、なぜそれをここで捨てたのか。なぜ負担だけの調整を求 めたのかということが理由としてわかりませんでした。
     もう一つ、これは現行制度が今後とも継続することを前提にして議論が組み立てられていると思うんですが、今、大澤会長がメンバーとして参加なさっている年金部会でも精力的 に議論が進んでおりまして、次回、年金改正をどうするかという議論がこれから急速に進むと思います。私の予想ですから、間違っているかもしれませんけれども、制度の抜本的 再編成、大改革、20年に1回の大改革になる可能性が高い。中でも基礎年金制度、今の1号、2号、3号の問題は、恐らく抜本的に変わってしまうのではないかと推測しています。 そうすると、来年度には新しいドラフトが新たに発表されるわけでありまして、そうした中で旧来の制度が維持されることを前提にして提言を書くことの意味を少し考えなければいけ ません。
     抜本的改革の方向はまだ議論が始まったばかりですからよくわからないんですけれども、保険料拠出と給付のリンクを強めるということでは、関係者の利害が一致していると思 います。
     もう一つ、税金で負担すべき給付をどうするか。これも今と変わる可能性が高い。今の基礎年金、現行では給付の3分の2を保険料で賄い、財源の3分の1は税金で賄う。給付 はフラットで所得が高くても低くても同じ給付だという話になっているんですけれども、方向としては、保険料負担と給付のリンクを強めるという話になりますと、国民年金の保険料を どうするかにもよるんですが、多分将来的には完全かどうかは別として事実上の所得比例型に変わる可能性が極めて高い。そうすると、基礎年金の上の3分の2は2階に上がる 可能性がある、所得比例年金に変わる可能性がある。その1階の残りの3分の1は税金で負担しているんですが、税金負担分は上に薄く下に厚い給付に変わるかもしれません。 そうした中で第3号問題をどうするのか。当然、移行期間の話もあるわけですけれども、そういう新たな展開を踏まえて議論しないといけないんじゃないか。
     11点目の健保・介護は、先ほど言いましたので、繰り返しません。
     住宅手当・社宅につきましては中間報告の24ページに記述があるんですが、上から3つ目のパラグラフ、世帯単位の考え方に基づくと書いてあるんですが、住宅手当や社宅は 独身者にも提供されているはずです。世帯単位の考え方に基づくというふうに断定していいのか。
     それから、基本給に振り替えろという主張が書いてあります。これまで全体として企業がお仕着せでいろんな給付を決めていた。賃金にしろ、退職給付にしろ、いろんなフリンジベ ネフィットを、みんな企業がお仕着せで決めていた。それを、どちらかというと、従業員本人の選択を拡大する形に切り替えるということが将来の方向だと思うんです。基本給に振り 替えるかどうかは本人の選択にすべきではないのか。
     自分が1年働いた成果、業績は賃金換算でどのくらいになるかということをまず明示してもらって、その中で、後払いの賃金部分をどれだけ残すかは企業が勝手に決めないで自 分で決めさせてください。また、即時払いでもらう部分で現物いくら、現金いくらにするかというようなこと、その選択も自分でやらせてください。さらに現物の中の選択はこれとこれに しますというように自分で決める。メニューを提供するだけで決めるのは本人とする。そういう方向に向かっているわけであります。その中に住宅や社宅を入れていてはいけないと 言ってしまっていいのか。私は、むしろ個人の選択の制度にすればいいと思っています。
     女性の労働力率とtfrは中間報告の図表編の3ページ、図表2にあります。よく使われる図で有名なものですけれども、日本、イタリア、スウェーデン、ベルギーだとか、ノル ウェーとか、アメリカとか1本の直線で記してあるんですね。これは、この線を見ると確かにこのとおりなんですが、サンプルの数が絶対的に少ない。サンプルの数が絶対的に少な いということは、意図的な結論を出しやすいということです。どこかのサンプルを1個落とすだけで結論が変わるわけですね。この図を見ると、別な見解も成り立ち得るんです。例え ば、イタリア、日本、スペイン、ドイツだけをとってきますと、ほとんどフラットな水平線だと思うんです。これらの国とアメリカ、イギリス、スウェーデン、ベルギー、ノルウェー、フィンラ ンドとは構造的に違うと考えることもできます。2つの構造的に異なった国があるというふうに考えれば、線を1つで結ぶのはおかしいということになります。日本、イタリア、スペイ ン、ドイツはどうもフラットな水平線です。それ以外の国はよくわかりませんが、線を引いてみると多分右下がりになってしまうかもしれない。そうすると、ここに書いてある結論と全 然違う結論が出てくるんです。サンプルが極端に少ないときは、結論を出すときに注意しなければいけない。ここに書いてある主張自体は、こうなればいいなと思っているんですけ れども、このデータだけでそれを説得するのは難しい。データの使い方には注意が必要です。
     パートの就業調整は、先ほど話したツーピークという話です。
     その他全体としての印象ですけれども、この専門調査会に与えられたテーマは、ライフスタイルの選択と税制、社会保障制度、雇用システムという話になっていまして、税制と社 会保障制度や雇用システムが女性の就労選択において中立的かどうかというのが中心のポイントです。その限りではこの程度かなというふうに思っていますけれども、ざっと読ん だ大ざっぱな印象を言いますと、現在の税制や社会保障制度にいろいろ変な点があって誤っているから女性の就業選択をゆがめているという結論を与えようとしている。ただ、そ れで量的にどの程度深刻な事態が発生しているかがよくわからない。質的な議論はいろいろなされているんですが、量的な議論が余りない。そのためにどの程度深刻な問題に なっているかという評価ができない。したがって、それが重要な問題なのかどうかがよくわからない。説得力がその点で一部欠けています。
     税制・社会保障に問題があることを私は承知しています。先ほどから130 万円問題とか、第3号だとかいろいろ言いましたけれども、本当に今の年金制度が女性の就業を阻害し ているかというと、私は個人的にはそんなに阻害していないと実は思っているんです。確かに女性の社会進出や賃金格差の問題や子育て後の復帰の問題、いろいろな意味で女性 が不利益を受けているという事実は厳然として残っていますが、その真の原因が税や社会保障制度にあるという言い方でいいのか。私はそれは違うと思っているんです。それは 『esp』に書きましたけれども、日本的な雇用慣行の方がはるかに問題です。有体に言うと男性の働き方の問題だと思っています。長時間拘束を奨励するようないろんな慣行が あって、そこのところが女性を働きにくくしている、子育てと仕事の両立を困難にしている、あるいは復帰後のいろいろな格差を拡大する要因になっている。税制や社会保障がメイン で女性が今いろいろゆがめられたことになっているという判断は少し私と違う。むしろ雇用慣行をどう直すかという方がポイントではないか。
     それからもう一つ、中間報告書の19ページ、第2節の直前の文章に、「社会保障制度の各制度内のみで検討していると、制度間の整合性が必ずしも図られず」と書いてあるんで すね。「結果的に男女共同参画社会の形成を阻害する要因となる恐れもある」というメッセージがありますけれども、具体的に何を念頭に置いて書いているのかがよくわからない。 具体的に何を念頭に置いているのか。ここのメッセージは非常に重要だと私は思っているんです。メッセージ自体は重要だと思っているんですが、それでは具体的にこれは何を念 頭に置いて書いた記述なのかが全体を読んでよくわからない。そこのところも教えていただければと思います。
     ちょうど時間になりましたので、私のコメントを終わりにします。
    大澤会長
    どうも大変ありがとうございました。
     ただいまの御意見について、御質問や御意見を伺いたいと思いますけれども、単純な点なんですが、図表の40ページに出てくる「夫76歳・妻63歳」、夫婦の年齢差は約2歳という ふうに仮定をしておりますので、これは63歳ではなくて、74歳の間違いです。大変丁寧に読んでいただいて本当にありがとうございました。
     それから、質的には妥当するかもしれないけれども、量的にはどうなのかということを再三にわたって御指摘をいただきました。この点は全消のデータをいただいてシミュレーショ ンをするということになっておりまして、このデータを申請してから1年近く経つんですけれども、まだ来ていない。10月になるとやっとくるということで、そこからやっと数量的な実証 の作業に入れるという段階でございます。
     それから最後に、その他に関連して言っていただいた、本当の問題は税制や社会保障ではなくて、むしろ雇用システム、とりわけ男性の働き方ではないかという点については、こ の専門調査会の中では、その問題意識として実は一致をしておりますが、この専門調査会のマンデートからすると、政府の施策が個人のライフスタイルの選択に及ぼす影響の調 査というのがまずトップのマンデートとしてございまして、雇用システムに関しては政府の施策だから、法律やなにかで決まっている制度がそこに関与している限りでどうなのかと。 ですから、むしろ雇用システムのあり方については労使がお決めになるというのが筋なので、ここから何か言うというよりは、それはあくまで、例えば税制がそこに絡んでいる、それ から社会保険制度がそこに絡んでいるという範囲でものが言えるというようなマンデートになっておりまして、本体のところにはなかなか迂回的にしか切れ込めないという、その問 題がございます。ただ、雇用システムについては、そここそが本丸ではないかということで一致はしておりますので、今後時間をかけて検討しようということで、計画はしております。
     そのあたりが、とりあえず私がコメントに対してお答えするとすれば、そんなことなん
     ですけれども、皆様いろいろと御意見がおありだと思いますので、どうぞどこからでも。
    林委員
    高山委員のお話に入る前に、今、大澤会長の方からコメントがありました雇用システムの問題ですが、これは直接政府がやっている政策というより、労使の中でという、 そういう位置づけとなっていたんですが、私はかなり政府の政策と関係しているというふうに思っています。ここの委員になる直前にヒアリングがありましたが、雇用システムについ てというときの私のイメージと、その中で与えられたのは、尋ねる問題について、家族手当だとかという絞り込んだテーマで与えられたんですね。むしろ、そうでないところに問題が あるという認識をずっと持っておりますので、その辺はお話する機会がなかったという認識もありますので、機会がありましたら意見も述べたいというふうに思っておりますし、政府 の政策と深い関与があるということは、すべてが政府ということではないという認識は十分わかりますが、あると思っております。
    大沢委員
    その点に関連してですけれども、そこの点がないと、どうしても供給側の議論だけで、女性がどういう行動をとるのかということがここの中心になっているわけで、高山 委員のコメントの中でもありましたけれども、供給がどうなるか、夫の所得が下がった場合とか、賃金が上がった場合に女性がどう行動するかというというだけの議論に終わってし まって、実は需要側に非常に大きな変化があるわけです。需要の変化が、例えばパートの雇用形態の多様化の話をするときには、需要側の議論抜きにして、こういう話ができない と思うんです。そういう意味で、そこが抜けていたところは大きな問題だったかなというふうにコメントを聞いて思いました。
     それからもう一点は、完全な競争モデルというのが高山委員のコメントの中でありましたけれども、もう少し雇用慣行の中では、労使関係というのは非常に大きな影響を及ぼして いるかなという、そこの点もパート問題、適用拡大の問題を考えるときには重要ではないかなと思いました。つまり、女性にどう影響するかではなくて、それが使用者側が労働者を 使うときにどう影響を与えるかというところの議論をしていかないといけないんじゃないかなと思ったんですが。
    高山委員
    おっしゃるとおりです。賃金が名目額で下がるということは、これまでの日本では想定がなかなか難しかったけれども、今こういう御時世で月給も下がり、ボーナスも カットされている。パートの賃金も名目額で下方調整が現に行われています。そういう時代ですから、事業主はパート賃金を腹をくくって下げることができる状況だと私は思っていま す。確かにすぐ瞬時に調整が行われるかどうか、これはまた別の問題なんですけれども、中長期的には、労働生産性が上がらない限り、制度が変われば手取り賃金は減るという 話ではないかと思います。
    永瀬委員
    この報告書をゼミの学生とかに読んでもらいましたが、税制と社会保障が中心となっていて雇用の問題はあまり言及されていない。雇用問題が解決されないで、こち らだけ変えると、かえって問題があるんじゃないかというようなコメントがありました。私も雇用の問題をもう少し扱わなくてはいけないんじゃなかったかなと思いました。ただ、どこま でそれに踏み込めるかというのは非常に難しい。それでこういう形になったのかなと思いつつも、やはり本丸は雇用システムだというのは実際にそうだと認識しております。高山委 員の御議論で競争的な社会だとパートの手取りが下がる結果になるのではないかということですが、確かにそれもあり得るとは思うんですけれども、それはパートの働き方そのも のをどういうふうに雇用システムの中で、あるいは法や保護の面で位置づけるのかということともかかわっているでしょう。いつまでもパートというのは、社会保険もないような働き 方として置いておいて良いのだろうか。雇用システム全体での働き方とも絡む話なのかというふうに思いました。
     それからもう一つは、今の現行制度をもとにすると、パートが年金保険料の払いがいがない可能性もあると思います。昔、任意加入のときに、女性の7割が、所得がなかったはず なのに保険料をなぜ納めたかというと、得だと思ったから納めたということがあるわけです。相対的に納めがいがないような形で納めることを強要するということは悪い結果を生む のではないかというふうには思います。
    高山委員
    保険料を拠出したら、それがそのまま給付にはね返ってかえってくるというような制度の仕掛けをつくらなければいけない。問題は、そのときに専業主婦に保険料を負 担させるという解決法しかないのかというのが私の問題提起です。むしろ給付で調整してしまえば、今だって同じではないかと思いますし、これから給付の抜本的再編成をしようとし ているわけです。国民年金の保険料は事実上、定額から所得比例に変える。そしてドラスチックに言えば、掛金建てに切りかえる。あるいはそこまでいかないにしても、給付建ての 中でできるだけ拠出とリンクを強めるという方法だってある。そちらに行けば、払ったものは返ってくるという説明が可能になる。そうした中でパートで働いている人たちが今は手取 りが減っても、将来年金が厚くなるから、あるいは払ったものが返ってくるから入りますという話になるのか。
    林委員
    給付の方で調整して、負担を増やすというか、つくり出すという形での解決でない方がいいのではないかという、簡単に言えば、そういう発想があったと思うんですが。
    高山委員
    そういう考え方もあるということです。
    林委員
    現時点でというのでしょうか、そのことだけ取り上げると、そうかなというふうにも思うんですが、男女共同参画社会というときに、もう少し持続可能な社会をつくりたい、そ のシステムとして社会的な負担をする側に人口の半分の女性もきちんと参画できるということを前提にした仕組みを考えたいという思いから負担のところに目を向けていったのでは ないかと、私の問題意識はそういうところにあったものですから、恐らくこのまとめもそういうふうになっているのではないかと思います。
    高山委員
    おっしゃるとおりで、その趣旨に私も反対ではないんですが、要は負担をするという場合、保険料負担しかないのかということなんです。年金財源として確かに保険料 があります。それ以外に税金の負担も様々考えることができるわけです。税の投入をやめろというふうに言っている人は多分この中に誰もいないはずでして、税の負担ということで あれば、片働きの世帯でもいろんな形でしているわけですよ。専業主婦世帯は何も負担していないというふうに言い切ってしまっていいのか。負担増は今後の社会を展望すると私 もやむを得ないと思います。ただ、負担増として、どういう形の提案をしたら国民の多数派が受けいれるのか。それはなかなか難題なんですよ。保険料でやるのか、税金でやるの か、税金だったら何にするのかとか、あるいは負担増といっても、プライベートなレベルでの負担増にして、公的な世界では負担増をしないという選択だってあるわけです。それぞれ 人によって意見が違う。負担増はやむを得ないけれども、公的なところでは余り負担増をしなくて、私的な領域で負担増をしていくという選択だってある。いずれにせよ負担増につい ては、合意形成云々はなかなか難しい。負担増は今後避けられないという点においては全く同じなんですね。ただ、それを賃金税という形の保険料引き上げでやっていくことの是非 が問われています。私は総合的に考えて、今のご時世では賃金税を増税するような方向、社会保険料を引き上げることは、将来にとって望ましくないと考えております。そういう観 点からすると、ここの議論は慎重にという話になります。
    坂橘木委員
    高山委員と大澤会長にお聞きしたいんですが、先ほどの国民年金の高山委員の基礎年金部分の3分の1は税金だけれども、2分の1にするというのは法律で決まっ ているわけでしょう。何年か後かにやるというのも宣言しているわけでしょう。国は。
    高山委員
    2004年までに安定財源を得て実現を図ると書かれているだけで、やるとは書いていないんです。それは当時の連立与党の政策担当者の合意でありまして、政府とい うか、厚生労働省も財務省もコミットしていないとはっきり言っています。今のご時世で国庫負担2分1が2004年までに実現すると私は思っておりません。
    坂橘木委員
    あれは宣言したけれども、実効はないと理解した方がいいわけですか。
    高山委員
    それはまだわからない。
    大澤会長
    年金部会の資料では2分の1の国庫負担にした場合に、将来、保険料はこうなって、3分の1までいけば、こうだというふうに2通りの資料が出されております。しか し、「安定財源を確保した上で」というのが条件ですから、そこの議論はまた、すごく有体に言えば一からしているという状態です。
    坂橘木委員
    そうですか。宣言しただけと理解していいんですね。わかりました。
     それからもう一つ、今日は年金が中心なので、大澤会長にお聞きしたいんですが、今の年金部会は、スウェーデン方式が理想であるというコンセンサスは近いんですか。
    大澤会長
    先週の年金部会ではほとんどすべての委員が二、三枚のペーパーを出しまして、毎回宿題方式でペーパーを出すということになっていて、前回はほとんど全員が出 したんですけれども、全員一致とは言えませんが、大多数の人がスウェーデン方式に強い関心を示したと。部会長的に言えばですね。
    坂橘木委員
    関心と支持とは違うからね。わかりました。
    大澤会長
    強い関心を示したというまとめになっております。はっきりそれがいいのではないかというペーパーを出した人もいますし、大変魅力的な選択肢であるという書き方の 人もいれば、考慮に値するという書き方の人もいれば、まとめると大多数の人が強い関心を示したと、こういうふうになるかと思います。おっしゃるように、ここの専門調査会は、こう いうシステムがいいというふうに言うことがマンデートなのではなくて、現行システムには、どのような歪みがあるかということを、できれば、それを数量的に実証せよということがマ ンデートですので、したがって、第3号被保険者制度というのを前提にした書きぶりにはなるわけですけれども、取れと言っているわけではなくて、直接間接に何らかの形での負担 というような書き方になっているのは、間接というのは給付でやるやり方もあるし、そしてとりわけ問題なのは遺族年金であるというようなことも、ちょっとわかりにくい形ではあるんで すが、報告書の中に埋め込まれているというのは事実です。
     私は個人的には3号からも取れというふうに言ったことはない人間ですので、所得のない人からは取れないという非常に簡単な理由で、3号からも取れというふうには言ったこと がないので、ここでは直接間接に何らかの形での負担という書き方になっているのは、そのあたりの意見分布も踏まえております。
     まだ少し時間がありますので、御遠慮なくいろいろと御意見を出していただきたいと思います。小島委員いかがでしょうか。
    小島委員
    私、いつも雑談になってしまうんですが、座長がマンデートの話をされましたので、今、日本の社会、いろんなシステムを見て、縦割りで処理できる問題というのは極 めて少なくなっているんです。典型的な年金問題そのものだと思うんです。雇用の問題もおっしゃられたけれども、まさその問題に手をつけないと年金問題というのは解がない。60 歳が平均寿命のときを前提に組み立てられているわけですね。しかし雇用の問題は、年金局の担当じゃないからマンデートはないといって、今のことを前提にして変わらないと。あ るいは税制の問題、これは財務省主税局の問題、マンデートから切り離す。諸規制の改革問題、男女参画問題、移民の問題もあるかもしれませんし、あらゆる問題は自分の担当 以外は全部関係ないと。関知はしない。したがって変わらないことを前提に年金問題をやったら、給付を減らすか、給付開始を遅らせるか、拠出を増やすか、その組み合わせのど れかで、それしかないわけです。日本の年金問題とか、あらゆる制度、税制を含めて、男女参画問題も含めて、雇用も含めて、一番のパラドクスは、世界で最も平均寿命が高い国 が、最も低い定年制を未だに、定年制というか、実態としての定年があるということですね。現役可能人生というのは、恐らく大学を出て教育を終わって職場に入る。それから考える といろんな職場を変えるやり方があるかもしれませんが、大体50年プラスアルファになっていますね。それがせいぜい二十何年から30年ぐらいを前提にして全部のシステムができ ている。その辺の問題が極めて日本の矛盾であって、いろんなテーマを議論するとき、縦割りで一応マンデートを考えるけれども、つないでいく仕組みを同時に並行してやらない と、日本の社会は絶えず他の条件を一定にしてという話で、どこにもソリューションも出てこない、そういう状況に決定的になっていると思うんです。
     もう一点感じたのは、高山委員の話を聞いて、このシステムがこのシステムへ移るというよりも、選択可能性というものをいろんな制度の分野において仕込んでいった方がいいと いう感じがします。例えば、これもまた余談ですけれども、昔、日本の農耕時代、女性の参加率というのは100 %です。主婦も100 %やり、外での仕事も100 %やった。大変な状況 です。それは世界でも同じだったんですね。その当時のリベラルな考え方、進歩的考え方というのは、補完労働を女性にさせないで、育児と家事に専念できるようにさせたい。それ をすることがリベラリズムだったんですね。それは時代環境で選択の余地なくそうなっていたんです。それをなるべく変えていくというのがリベラルであった。恐らく、現時点では、職業の忠誠だとか、寿命の問題からいろんな変化が出ていますから、選択肢を増やすということが新しい社会の一つのポイントではないかと思うんです。その選択を増やすときに、こ の選択では全く効果が違うというのは問題でしょうから、そこのチェックをする。
     もう一つ、よく言うんですが、組織の寿命というのは、ある時期30年というけれども、今は恐らく技術進歩が早いし、変化も早いですから、アメリカで最近倒産した巨大企業も十何 年しか生きていないですね。この技術変革の時代に組織、企業の寿命というのは、繁栄するのは恐らく10年か20年だと。人間の寿命というのは、知識労働者に関すれば勤労可能 な年齢というのはどんどん上がって、一時期の30年から55年かそのくらいになっている。同じ人が同じところでずっと勤めるということは現実ではないんですね。したがって、個人と しても人生のライフステージに応じていろんな職業選択、それはngoに入ったり、営利企業に入ったり、あるいは公的な仕事をしたり、そういうことも含めて、単に遊んでいる時期も あるかもしれないけれども、それぞれのライフステージで選択できるというのは個人の人生の軸の中でも必要ですし、その瞬間、瞬間でも水平的に考えて、いろんな選択が可能に できるような仕組みをしないと、日本の社会というか、恐らく先進国はみんなそうだと思うんです。非常に難しい状況になってきている。この制度が時代が変わって、こっちに移ると いうのではなくて、この制度もこの制度も選択可能であるというようなところで発想して、いろんな知恵が出てきたらいいのではないかという感じがしました。
    大澤会長
    どうぞ。
    高尾委員
    お話を伺わせていただいて本当にありがとうございます。高山委員のespの論文なんかも以前に読ませていただいていたんですが、先生が今お話になった中でも、 家事は既に機械でやってくれる、残るのは子育てだというような話があったんですけれども、その点はこのespの論文を読んでもちょっと違うのではないかというのがありまして、 食事ひとつつくるのでも、どこまでが子育て分の食事づくりで、どこまでが自分が生きる分の食事づくりか、その辺のことが簡単には切れないと思うんです。家事というのは非常に 省略化されてきたということは私もわかるんですけれども、その辺が省略化されてきて非常に短い時間で済むようになっているのだけれども、どうしても最後まで残る部分というの は人間が生きていく限りはあるんじゃないかというふうに思っていて、その辺のところがここまでの子育て、家事というようなことがなかなか言えないのではないか。それで、じゃ、何 だというと、ワークということと、ライフということになってくると思うんです。そのバランスが男性社会、女性社会、日本社会の中で非常にバランスが悪くて、もっと男性にもライフの方 にかかわっていただきたいと。女性としてはワークの方にかかわりたいというようなところで話をしていくと、今、家庭、地域で専業というか、主婦をやっていらっしゃる方にも話は通じ るし、有償労働をやっていらっしゃる女性の方にも話は通じるんですね。
     もう一つ、ワーク、ライフのバランスということでこの専門調査会がずっと物を言っていくことができればいいと思うし、今、先生もおっしゃったように短く仕事をしていく期間というの は昔のように短くはないですよね。もっと長いし、一時期結婚して10年ぐらい主婦というか、子育てや家庭のことを中心にやったとしても、その後の30年ぐらいがあるわけで、また今 度その30年の間男性が家事、介護というようなことを中心にやっていくようなことになるかもしれません。その辺は非常にフレキシブルにライフスタイルをとらえていかなければなら ないんじゃないかというのがすごく私自身が思っているところです。
     それで、税制・社会保障制度の問題ではなくて日本型雇用問題がある。それも特にこの専門調査会の後半の方の論議でよく出てきていると思うんですけれども、本当にそのとお りであります。しかし、そうは言っても、税制・社会保障制度、例えば配偶者控除の問題にしても、誤解があろうとなかろうと、一般的な国民の間、あるいは女性の間、男性の間で は、どうも家にいるといいらしいとか、本当に単純なところかもしれないんですけれども、そういうことがありますし、この専門調査会としては、林委員がおっしゃったように男女共同参 画の視点から、日本の社会の半分を占める女性にも十分にいろいろな負担をしていってもらって、あるいは、それをもとに働いていくこともしてもらってやっていくという方向性を出し ていくことがとても重要なことではないか。雇用システムが問題だ、問題だと言っていても、この中ではなかなか言い切れないです。
    大澤会長
    どうぞ。
    永瀬委員
    子育てということを多くの委員会では扱ってこないように思います。男女の共同参画ということはかなり出てくる。そうすると、女性も働くという話はいろいろ出てくるんで すけれども、男性が家庭に入るという話はあまり出てこない。今までなぜ女性は家庭にいたかというと、家族の再生産活動をしていて家にいた場合が多いわけです。別に寝ていたく て家にいたというわけではなくて、家庭内で働いてきていたわけです。十分に活動してきたわけで、この活動を今後どう考えていくかということは、男女共同参画社会の表裏なんで す。しかし、意外と子育てという部分は余り論じられずに、どういうふうに女性が社会に参画するかが論じられる。じゃ、子どもの部分はどこにいっちゃうのかなというと、あまり話し合 われてこなくていたと思うんです。女性が外に出ていた場合、子どもはどうするのか。家庭内で誰かが無償労働にかかわって子どもを育てるような社会を想定するのか、それとも そうじゃなくて、もう少し外に出るということを想定したような社会を想定するのか、それだとしたら、それなりに社会的に子育てを例えばサービスとして見る、あるいは社会的に子ど も負担を考慮するということもあるかもしれない。そういうことを含めて議論をしないと、子どもというのは、いつの間にか生まれて、いつの間にか育っていくものではないわけですよ ね。ということを申し上げたいなというふうに常々思っております。
    大沢委員
    私、前にコメントをしたんですが、もう一度よく考えてみると、高山委員がおっしゃりたかったことは、こういう年金改革をして、女性にとってよかれと思ったことが逆にデ メリットになってしまうというか、本当にメリットを生むのかということをおっしゃりたかったんじゃないかというふうに、私なりの解釈ですが……。
     先ほども個人化するに当たっては、男女の賃金格差が非常にあるじゃないかとか、それから適用拡大することによって、むしろ女性の賃金が減ってしまうというようなことをおっ しゃっていらっしゃるのを聞きながら、一方では選択肢がたくさんあって、その中でどれを選択してもいいよということではなくて、日本の場合、正社員か非正社員かで時間の選択 は、正社員ならばなくて、非正社員ならば時間の選択はあるけれども賃金が低い。そういう構造の中で個人単位化してしまうと、自由な選択、時間の選択を選んだ人はもっと賃金 が低くなって、もっと雇用が不安になって、二極分化が進むということもあり得るというようなことをおっしゃって、そういうことがないように考えて、これが本当に女性にとってメリット があるのかということを最終報告の中でちゃんと議論したらいいんじゃないかというふうおっしゃったんじゃないかなと思ったんですが、その点についていかがでしょうか。
    高山委員
    私の心配を、もっとストレートにおっしゃっていただきました。おっしゃるとおりです。
    大澤会長
    どうもありがとうございます。それから労働力率と合計特殊出生率の関係、図表の2ですね。確かにサンプル数が少ないので、今後改善をしていきたいと思いますけ れども、ただただ増やせばいいというのではなくて、一応人口転換というのを経験して、しかるべく年数が経った国というので比べないと、世界には様々な国がありまして、tfrが4と か5とかというような国もあるけれども、そういう国と比べることがどうかというのがあります。しかし、サンプル数はもう増やしたいということと、これは日本経済研究センターがおや りになった研究で、男女の賃金格差と合計特殊出生率との間の相関というのをとると、これはリニアじゃなくて、こういう線(曲線)になるんですね。一応、経済発展がある程度進ん だ国では、こういう右上がりの相関があって、もうちょっと開発途上の国だと違う側になるという研究もございますが、そういう研究も参照しながら、もう少しサンプルを増やす、ある いは労働力率だけではない相関をとってみるということも今後研究していきたいと思います。
    坂橘木委員
    図表2に関して言えば、これはアメリカとフィンランドはサンプル1ですか。大きな国も小さな国もサンプル1で処理しているんですか。
    大澤会長
    そうですね。
    坂橘木委員
    人口でウエートつけていないんですね。これもガラッと変わりますよ。アメリカは2億人の国で、フィランドは何百万人の国ですよ。全然違う結果が出てくると思う。
    大沢委員
    その問題はありますよね。
    高山委員
    私が申し上げたことは、サンプルを増やせという主張では必ずしもないんです。よくこの図を使っていまして、どこへ行っても使われる図ですよね。有名なものですか ら、本当にこういう解釈でいいのかなということだけを申し上げただけでして、やたらと国の数を増やして、異質な国がいっぱい入ってきたのにもかかわらず一つの線で書いていいの か。むしろ構造的に同じだと思われる国の中でどういうことが言えるかということの方が大事です。そういう観点からしますと、ここでパッと1本引くことに意味があるのかということを 問題提起したかった。サンプルが少ないと、outlierがすべてを決めてしまうんですよ。
    大澤会長
    outlierは落としているんですよ。outlierが入ると、全然違う線になってしまうんです。というようなことがございます。
    高山委員
    ですから、これは非常に難しいんですよ。
    小島委員
    アメリカも社会が非常に多層ですから、waspなんていうのは、女性の労働力率が高いし、出生率は1ですよね。それから、どんどん増えているのは新しい移民で、よ く働くし、出生率は4とか全然違う。モザイクですね。1つは、例えばもっと構成員が安定しているフィランドとか、アイルランドは、過去20年間どういうトレンドで社会が動いてきたか という、そういう時系列もそれぞれの国に入れると参考になるかもしれませんね。
    大沢委員
    時系列が私は重要だと思います。
    大澤会長
    瞬間風速だけではなくて、変化率というのもなかなかおもしろいというのも、これはある程度わかっております。それから子育てに関しては、これもこの専門調査会の マンデートというふうな話になってしまうのですが、縦割りで考えるなという小島委員の御意見もありつつも、ただ、男女共同参画会議の下には、仕事と子育ての両立支援に関する 専門調査会というのが真っ先に設けられて、報告書を真っ先に出して閣議決定を去年されたということもありまして、そちらの専門調査会の様々な議論や提言を踏まえているという ことはございます。
     さて、時間がまいりましたので、ひとまず中断して、国民の皆さんからいただいた意見とか、それから政府の検討状況を一旦ここで見た上でまた議論をしたいと思います。高山委 員、どうもありがとうございました。
     事務局から中間報告への様々な意見についての御説明をお願いします。
    事務局
    それでは、資料2をお出しいただければと思います。
     連休明けから6月末までの意見募集期間中に届いたものを対象にまとめてあります。中間報告が出た直後に、報道だけで見て、増税反対というおしかりはかなりいただいたんで すけれども、それは対象とはしておりません。
     それで意見提出件数率が71件ということで、性別では男性の方が少ない。それから就業形態、年代については非常に幅広い層にわたっております。皆様、中間報告に目を通され た上で出されたようで、きちんと意見が述べられているというような印象がございました。
     さて、意見の内容でございますけれども、中間報告全体に関する意見としては、簡単にまとめますと、少子化を助長するので改革に反対というのが第1点、それから子育て支援 が不十分、あるいは、それをやることが前提となるというのが第2点、それから専業主婦が果たしている役割、貢献を重視すべきというふうにまとまるのではないかと思います。
     そのほか目立った意見としましては、3番目の「・」にありますけれども、専業主婦は、税金を支払っていないけれども、働く主婦に比べて、幼稚園の補助金がなくて、無償労働をし ながら将来の納税者を育てている。自営業の妻は、偽の就業証明書により保育園を利用でき、納税で経費が認められるのは不公平だというような意見がありました。次のページ に移っていただきまして、最初の「・」でございます。これも子育て支援に関して、一連の政策セットの改革ビジョンと具体策が必要だというような意見がありました。下から3番目の 「・」、で言っていますけれども、雇用システムにもっと踏み込みが必要ですとか、あるいは雇用システムの記述に具体性が欠けるというようなことが下から2番目の「・」にありまし た。それから最後の「・」でございますけれども、少子高齢化で納税者の負担が増し、制度の破綻を避けるために制度の変更が行われるものではないことを強調すべきという意見 がありました。
     それから、次の「・」に移っていただきまして、序説の趣旨と背景に関しては、就職、結婚、子育て、再就業と分類していて、世帯単位の概念にとらわれているのではないか。要する に一人の人間としての女性の人権確立という観点からすべての面について考えていくべきであるというご指摘がありました。
     それからi現状について中間報告ではいろいろな分析を行っておりますけれども、もっと詳細に分析すべき点というようなことで、いろいろ指摘いただいておりまして、具体的に申 し上げますと、最初の「・」で、女性の潜在有業率、あるいはdiscouraged workerとの関係。それから2番目で控除の適用者の詳細な実態の把握。3番目で女性差別と年齢差別の 複合差別のこと。それから4番目で専業主婦の再就業には自らの判断以外の要因があること。それから5番目として、高齢女性の実態のデータの把握の必要性。それから6番目 として母子家庭の実態の把握。それから7番目で賃金格差は男性にも見られ、女性に限ることはない。それから8番目で、パート労働は仕事と家庭の両立が困難でやむなく選択し ているというのが実態であるということ。それから9番目で非正規・正規労働者間の賃金格差が指摘されるべきというようなことを指摘されております。それから、次のページに移っ ていただきまして、男性の意識改革や事業主の意識改革が遅れているというような、以上のような分析がもっと必要ではないかというような指摘がありました。
     次に、政策等の方向ですが、基本的な考え方は、先ほどの全体に対する意見と同様ですので省略いたします。
     次に、改革の具体的方向で、税制でございますけれども、最初の「・」にありますけれども、段階的な廃止も含め、合理的な税制のあり方を、検討すべきであるということ。それか ら2番目の「・」にありますけれども、下限である103 万を上げるか、上限である140 万を下げるかとして差を縮めるべきではないかとか、次のページに移っていただきまして、配偶 者特別控除をなくすだけではなくて、配偶者控除を廃止すべきだというようなこと。それから3番目の「・」で、基礎控除額を生活保護基準の水準まで大幅に引き上げるなどを前提と して廃止すべき。あるいは4番目の「・」で、配偶者控除未成年の子どもに対する控除に変えるべきだと。それから5番目の「・」で、配偶者控除国が配偶者や子どもに手当をすべき だというようなこと。後ろの方に「2」とありますけれども、これは同様な意見が2つあったという意味でございます。
     それから6番目の「・」で、配偶者特別控除を廃止し、同時に低所得者層の税率引下げ、児童手当の充実などにより比較的低所得の子育て世帯の支援をすべき。それから7番 目、同様に廃止した分、基礎控除額を引き上げるというのが2つございました。それから8番目、これはちょっと変わっているんですが、専業主婦は夫と契約を結んで家族労働者同 様に自分の収入を得て、夫は必要経費として控除を設けて、妻は自分の所得から税金、年金の掛け金を払う。それから9番目、夫婦合算申告制度を創設すべき。一番最後、収入 金額により控除率が逓減するような仕組みをとるべきではないか。
     それから次に移っていただきまして、公的年金の就業への中立性ですけれども、個人単位化は諸外国で主流でないので、慎重に議論すべきだと。それから3号被保険者制度は 間接税方式への制度の抜本的な改革の中で検討すべき。年金分割は税か、保険か、賦課方式か、積立て方式かなどの中で議論すべき。それから2番目の「・」で、段階的に年金 の個人の単位化を進めるというような意見。
     それから厚生年金の改善について、(適用拡大)では、最初の「・」で、65万では使用者の脱法行為が増えかねないので、水準をかなり下げ、すべての雇用を対象にすべき。2番 目で、現行の3/4基準を変えて、雇用保険と同じ週20時間にして適用すべき。それから3番目で適用漏れを防ぐ措置を求める。それから4番目で適用逃れの防止、不服申立て 制度を創設する。5番目の、複数の事業所において短時間就労を行う場合は、合算すれば厚生年金も加入できる場合の救済措置の明確化。それから6番目は、130 万以上という 基準だけにして、適用拡大して雇用者の義務不履行にはペナルティを果す。7番目は、1号、2号については、育児・介護により働けない期間を、保険料納付済み期間とする特例を つけると。その際、子どもは6歳までを対象とするというようなこと。
     それから次のページ、3号被保険者の見直しですが、最初の「・」では、子育て期間中の減免措置などの経過措置をとるべき。2番目の「・」では、「何らかの形で厚生年金におい ても、本人が給付を受けることができるようにする」意味の説明が必要。それから3番目では、厚生年金の適用を大幅に広げて専業主婦の数を減らした上で第3号被保険者制度 を廃止する。それから適用拡大の際に、限度額の見直しだけでは、1日の労働時間を限度内に制限するおそれがあるから1週の所定労働時間、1か月の所定労働日数を見直す ことが望ましい。それから4番目は保険料免除規定は撤廃すべきというのと、5番目が学生と比較して不公平という意見もあります。それから6番目、基礎年金の給付引き上げと老 齢厚生年金の引き下げを行って第3号被保険者を廃止すると。その際、保険料免除制度を活用するというようなこと。下から3番目の「・」では1号に育児給付を設ける。8番目が 夫婦の年金分割を進めることにより段階的に見直す。9番目としては、結婚期間、納付額に準ずる給付を受けるようにする。
     それから次のページ、最初の「・」で、年金分割は夫の暴力以外の理由による離別にも必要。それから1つ飛ばして、3つ目で、離婚・婚姻継続を問わず、婚姻期間の保険料納付 記録を合算し、夫婦間で年金分割し、遺族年金は選択性にする。4番目、2行目、婚姻期間中の夫による保険料納付済み期間に応じた老齢厚生年金の2分の1相当額を離婚時 に財産分与の対象にする。5番目では、離婚後の経過年数を限定されることなく、分割が実現することを望む。それから1つ飛ばして7番目、遺族年金を将来的に廃止。下から4つ 目で、これはちょっと変わっていて、遺族年金と雇用保険をすり合わせるべきだというような意見。それから9番目では、離婚婚姻を繰り返しても、年金権における再分配が必要。そ の次の意見も同様です。それから最後、DVなどのときのみに離婚が妥当と読めてしまうので、離婚によって明らかな経済的社会的不利益を一方が被る制度は好ましくないという 考え方に立たなければいけないということ。
     次のページ、健康保険・介護保険では、育児と介護の専従期間への配慮が必要ということ。それから2番目の「・」で「一人一保険証を」と、いう方は5人もいらっしゃいます。3番 目の「・」で、国民健康保険は世帯主制で非中立的で、世帯主の職業によって適用制度が異なる仕組みは不公平。介護保険の給付は、個人単位で保険料が部分的に世帯が入る ため見直しが必要。
     それから、雇用保険につきましては、まず適用対象外となっている事業所(私学・教育職)の適切化。2番目、民間の講座受講の政府補助は失業の期間制限が短い。それから3 番目、ハローワークによる教育訓練給付金の受給資格の撤廃などを挙げております。
     それから企業手当について。企業の家族手当としては、縮小廃止の際に、育児・介護休業取得者に対する所得保障に振り向け、男性の育児・介護休業の取得を促す。それから 2番目、見直す時期だが、基本給に振り替えるかどうかは、企業の実績、将来見通しなどを勘案して決めることという意見。それから3番目では、世帯主条項のみを外して子どもに 対しては、支給すべきであるというような意見もあります。それから次のページに、男女間、企業間の格差を縮小するために、国の施策として児童手当、低家賃住宅の供給が必要 ということ。
     最後に、社会保障・その他として、これも変わっていて、単身女性の賃金格差があるので、賃金計数をかけるなどして年金の男女差に配慮すべきというような意見。
     以下6つほど並んでおりますけれども、年金を一元化すべだという意見と、ミニマム部分は税方式でやるべきだという意見。育児・介護休業後の者を採用・再雇用した企業に助成 を行うというような意見もあります。
     次に、雇用システムの将来的方向、3つ目の「・」にありますけれども、年功賃金より、世帯賃金こそが問題であるというような意見、それから次のページに移っていただきまして、 労使の自主性を尊重すべきで法制化すべきではないとか、それから1つ飛ばしまして3つ目、賃金などの労働条件は、労使の自治で決定されるべきであるというようなこと。それか ら良好な労働形態というような表現を使っておりますけれども、良好であるか否かという主観的判断であるのではというような御意見もあります。
     それから、ワークシェアリングについてですが、最初の「・」に、労働と生活の質の向上の面からワークシェアを検討すべき。次に、中国やアジアも見るべきだという意見。それから 3番目で、諸外国の特徴を挙げる際に個人単位に触れていない。それから最後の「・」で、オランダモデルでは、アンペイドワーク・ペイドワークを男女が平等に担うという長期的目 標のもと、保育所の増設に力を入れているというようなことも考慮すべき。それから次のページ、前提となる基盤整備が欧米に立ち遅れている。
     最後に、良好で多様な労働形態の実現に向けてですけれども、実現に向けた道筋こそ示してほしい。それから同一価値労働同一賃金の実現に向けた検討、実現が必要という意 見は11もありました。それから1つ飛ばして4番目ですが、不当な解雇を許さない解雇ルール、ilo158条約の批准が必要ですとか、5番目で女性に対する間接差別とならないた めの具体的な措置が必要ですとか、次のページに移り、最初の3番目の「・」、日本型均衡処遇ルールというのは、どうも批判的な御意見が多かったようでございます。それから下 3つ目で、雇用の年齢差別禁止を徹底すべきだというような意見もありました。
     それからその他として、子育て支援両立支援・少子化対策関連でかなり出ておりまして、1番目で、子どもに対する手当や税制面での考慮が必要とか、2番目で、児童手当の所 得制限はなくして、手当の引き上げが要るとか、最後の「・」で幼稚園の整備が要るというような意見。それから次のページに移っていただきまして、最初の「・」は、一定規模の企業 には託児所を設ける基準を設定するとか、3番目で、主要なケア提供者に対して児童給付を支給すべきとか、4番目の「・」で、母子(父子)世帯を中心モデルにするとか、次の「・」 で、労働時間の短縮、フレックスタイムの導入とか、出産費用に、健康保険の適用するとか、最後の「・」で、育児(介護)財形貯蓄制度の創設などが挙げられております。その他に ついては省略します。
     最後の方に、団体からの主な意見をつけております。意見は全体を読んでみると、実に切実なものがございますけれども、項目ごとにこのように整理してしまうと、迫力が伝わっ てこないということがありまして、そこでまとまっていると思われる団体からの意見を5つほどつけておりますが、匿名を前提に意見募集しましたので、名前は伏せておりますので、 御参考までということでございます。以上でございます。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。いかがでしょうか。
    福原委員
    問題が普遍的になり得ないんですよね。今の状態では、先ほどご指摘のように、国の方も整合性がないという制度間の構築になっているし、それは改めようといっ たって改められないわけで、各制度が今の状況にどういう影響をもたらしているかということだけをここでは論じるほかないですよね。そうすると、普遍的な意見を集約するというこ とは困難ですね。
    大澤会長
    それでも71件で、拝見しますと、それぞれは中間報告はきちんと読んでくださった上で意見をいただいたということは大変貴重だと思います。ところで、7月15日に男女 共同参画会議がございまして、中間報告を出してから初めての会議だったので、意見募集期間は終わっていたわけですけれども、一応会議に出席して中間報告についての報告を いたしました。その際、議員の方からの御質問というのは、法務大臣の森山さんが、国民からどういう御意見があったのかという御質問がございましたけれども、それはただいま集 約中ですということでお答えしました。
     では、御意見はまた後でいただくことにしまして、また事務局から政府における税制等の検討状況について説明をお願いします。
    事務局
    「資料3」をお出しいただければと思います。「政府における税制等の検討状況」ということでございます。
     税制の検討状況としては、政府税調の基本方針が出ておりまして、税制に関してはかなり具体的な意見が出されています。それから経済財政諮問会議の議論を経て、「基本方 針2002」というものが閣議決定されております。これはいわゆる「骨太の方針第2弾」と言われているもので、これは税制だけではありませんで、経済活性化戦略とか、社会保障の 歳出などを含む幅広いものでございますけれども、税制については大まかな方針が示されております。
     さらに、3、4とあります総理指示というのが2種類ございまして、1つは経済財政諮問会議に向けたもの、もう一つは税制調査会に対してのものでございます。
     具体的な中身でございますけれども、2ページを見ていただきますと、まず政府税調の基本方針がございまして、これは6月14日に出されておりまして、今国民からの意見を募集 中ということでございます。また9月2日までに全国各地で税に関する対話集会が開かれる予定ということです。
     それで、男女共同参画に関する内容ですが、まず、最初の個別税目の改革、個人所得課税、「諸控除」のところでございますけれども、男女共同参画社会の進展や構造変化に たいして税負担に歪みが生じないように、それから個人の自由な選択に介入しないような中立的な税制とすることも重要。それから税率構造については、これ以上の税率の引き下 げは適当でないということ。それから次の諸控除の見直しの人的控除の簡素化・集約化では、(ロ)のところに、家族に関する控除を基礎控除、配偶者控除、扶養控除に簡素化・ 集約化すべきということでありまして、次のページ、bのところにありますけれども、「配偶者特別控除については」という段落の最後に、基本的に制度を廃止することが考えられる。 その際、税引き後の手取りの逆転現象について制度上何らかの配慮が必要であろうとしております。
     それから、人的控除の基本構造の更なる見直しについては、3案異なる考え方が示されておりまして、国民の議論に付したいとされております。その際に、考え方の2又は3のよ うに、配偶者控除や扶養控除を廃止する場合には基礎控除を拡充することをあわせ考慮に入れるということで、考え方1は、基礎控除、配偶者控除、扶養控除の3つの人的控除 で構成するということで、その際、配偶者と扶養親族の区別をなくすことにより「家族控除(仮称)」と基礎控除の2つに集約する案もあるとしております。それから考え方の2は、配 偶者控除を廃止するとともに、扶養控除については、児童及び老齢の親族のみに対象を限定する。それから次のページに移って、考え方3というのは、配偶者控除と扶養控除を 廃止する一方、児童の扶養について税額控除を設けるというものでございます。
     それから最後に、個人住民税のあり方とありますが、余り知られておりませんけれども、地方税法の第295 条でございますけれども、読み上げますと、「市町村は、当該市町村内 に住所を有することにより均等割の納税義務を負う夫と生計を一にする妻で当該市町村内に住所を有するものに対しては、均等割を課することができない」ということで、夫、妻と いうことを明示的に挙げた上で、均等割の非課税が規定されておりまして、これについて、個人単位課税の観点から、そのあり方を見直す必要があるとしております。
     今度は「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」でございますけれども、幅広いものでございまして、経済活性化戦略では、女性が働くことは不利にならない制度設計 にするとか、厚生労働省は短時間労働者に対する社会保険の適用拡大、第3号被保険者制度のあり方について見直すとか、それから次の税制改革の基本方針や、次ページをお 開きいただきますと、6ページに、税制改革の視点の中で女性の就業をはじめとするライフスタイルの選択に中立的な社会制度の構築を進めること。それから、「5.」で、『広く薄く 簡素に』の観点から所得税などの課税負担構造を検討する。それから次の多様なライフスタイルのところで、就労などの選択に歪みを与えないよう、配偶者に関する控除等に関し て検討して、検討に当たっては、社会保障制度の見直しの関連にも十分配慮する。
     それから、歳出の主要分野における社会保障について、昭和16年に予定される年金制度の改革向けて、年金制度改革の基本的な方向について早急な議論を始め、その改革に 積極的に取り組んでいくというようなこと。それから最後のところにございますけれども、税制改革については、本方針の下に、政府税制調査会等において具体的に検討され、経済 財政諮問会議においては、改革の進捗状況についてフォローアップを行うというようなまとめにしております。
     それから次に、内閣総理大臣指示でございますけれども、経済財政諮問会議で紙で出されておりまして、ポイントとしては、最初の8ページの税制改革については、平成15年度 から着手して平成18年度までに完了することとしたいということ。第3に、「個人や企業の多様な選択に歪みを与えない税制を構築していく」というようなことかと思います。
     それから次のページ、(社会保障制度改革について)の、2番目のパラグラフで16年に予定される年金制度の改革に向けて経済財政諮問会議として年金制度改革の論点を明確 にするとともに、6月以降も引き続き検討を行うということ。
     11ページですが、内閣総理大臣から税制調査会に口頭で指示があったという来年度税制改正における具体化事項というのは5項目挙げられたようでございます。その中で男女 共同参画に関係あるのは、最初の「1.」でございまして、「配偶者特別控除、特定扶養控除等の簡素・集約化」ということで、配偶者特別控除だけを来年度税制改正における具体 化事項ということで明示的に挙げておるような状況でございます。以上でございます。
    大澤会長
    ありがとうございました。ただいまのような状況でございますけれども、私は4月2日に税制調査会にヒアリングに呼ばれまして、こちらの中間報告を取りまとめている 段階でございましたけれども、検討の背景やここで出ている主な意見について税調に御紹介をするという場面がございまして、そういったいきさつもあるので、この専門調査会の会 長として私の名前で、税調の石会長にあてて意見を提出してはどうかというふうに思っております。実はその意見の文案も用意してありますので、事務局の方で読み上げていただ けますか。
    事務局
    読み上げます。「あるべき税制の構築に向けた基本方針」への意見。1.配偶者特別控除だけを廃止し、配偶者控除を存続させるのであれば、特定のライフスタイルを 前提とした制度であるという問題が解消されず、就業への非中立性が残存するなど依然として問題は解決されません。したがって、男女共同参画社会の形成の観点から、配偶者 特別控除だけでなく、配偶者控除も廃止されるべきと考えます。2.ただし、配偶者控除と配偶者特別控除の廃止による国民の負担への影響を、他の控除等の見直しの結果も勘 案しつつ調整するよう配慮することが必要と考えます。3.なお「家族控除(仮称)」については、扶養される配偶者という特定のライフスタイルを前提としたものであることに変わり はなく、その創設は、男女共同参画の形成という観点からは適切ではないと考えます。以上
    福原委員
    それに関して。配偶者特別控除あるいは配偶者控除そのものも廃止するかという今提案なっているわけですね。これは全部一時にやった場合に逆転現象が起きた り、それからまた個別の過程においては、今までと違ったようなおかしな税額が課されるというようなことがあり得ることはどうしますかという質問をしましたら、それはある程度時間 的な緩和措置あるいは経過措置をとらざるを得ないのではないかというような石会長の御発言がございました。しかし決定したものではありません。
    大澤会長
    そのあたりは財務大臣もおっしゃっているようでございます。
    林委員
    3番のところの家族控除については、扶養される配偶者という特定のライフスタイルを前提にしたものであるから、これは適切でないということは言えているんですが、基 礎控除を上げるということをもう少し強調する形で提案するのはいかがなんでしょうか。先ほどの中にもそういう考え方が出ていたようには思うんですけれども。
    大澤会長
    これは2番目の中に含まれておりまして、ただ、税率を調整することで、調整するのか、基礎控除を上げることで調整するのかというあたりは、それこそ税調に考えて いただきたいことでありますので、そこはむしろ相手に委ねるという書きぶりになっております。
    林委員
    趣旨説明をするときに、2番のところでもう少し見えやすいようにできないでしょうか。
    大澤会長
    私はこれを持参して手渡しをしたいというふうには思っておりまして、その際、口頭で若干申し上げるというようなことは考えております。ただ、文書としては残りますの で、相手の選択肢を縛るようなものはどうかなと。全体としては、考え方その1、その2、その3の中でこれはどうかというふうに言っているわけですから、その点は問題ないと思うん ですけれども、調整というのをどうするかについては、この程度の書きぶりがいいのかなというふうに思っているところです。
    林委員
    いきなりなくするんじゃないよと言いながら、しかし、なくしないという選択は問題があるということを一番強調しておくということですよね。内部でも、配偶者特別控除のとこ ろは、やらざるを得ないような雰囲気は出てきているんですけどね。
    大澤会長
    ただ、それだけなくすと、むしろ逆転現象があからさまになってしまうという……。
    林委員
    そこのところは103 万円以上のところの配偶者特別控除、段階的になくなっていくところですね。
    大澤会長
    そこだけ残してという……。
    林委員
    そういうことも出てきたりして。
    大澤会長
    実はだんだんそういう意味では後退しているんですけどね。後退しないで踏ん張るようにというふうな感じなんですけど、これは。
    林委員
    そういうふうなことになってしまって、もともとのところが残ってくるという姿がちょっとかなり出ているんですよね。
    大澤会長
    一番懸念されるところです。今日、神野委員が御欠席ですけれども、あらかじめ神野委員の意見は伺っていますし、きのうたまたまお会いしたので、そうしたら、割と強 い調子で意見は出した方がいいというようなアドバイスを受けまして、これでいいのかというふうには思っておりますが。
     では、いただいた御意見については、口頭で補足するなり何なりを考えます。そうしたことを踏まえて最終的な文案をさらに整えて、石税調会長にお渡ししたいと思います。なお、ど のような形でいつお渡しするかということも今後の調整になっておりますけれども、先方に意見をお渡しした時点で文書を公表するというふうに考えております。したがって、今日は これはノンペーパーでございます。文書の取扱いについてはその間、御注意をいただきたいと思います。どうもありがとうございました。
     それでは、残り時間で中間報告の見直すべき点について、さらに御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
    坂東局長
    主として年金のところをもう少し……。
    大澤会長
    そうですね。今日、高山委員から大変貴重な御意見をいただきました。雇用システムについては、さらに今後時間をかけて検討するという計画になっております。林委 員いかがですか。連合としては御意見をいただかなかったわけですが、再度ここは強調しておきたいということがおありなのではないかと。「良好な」ではなくて、「良質」がいいとか、 均等待遇は明記をしたいとかいろいろあると思うんですが。
    林委員
    均等待遇については意見が一致しておりますので、パート労働あるいはワークシェアリングを考えていく上でも均等待遇を前提として進めていこうと。ここまでは一致して いる点ですので、次の段階では、もう少し明確に私の方でもう少し整理をして御意見を述べた方がいいかというふうに思っております。ただ、年金税制については極めて困難な状況 です。ただ、共通して出てくる問題で、先ほど高山委員の方で、企業の方は、このぐらいのパートの人にも年金の適用を拡大しましょうと言えば、今まで払った時間単価の中に含め ていくから、結局、手取りが本人にとって少なくなり、そのことが働く人たちの意欲を削いで、就業が低下しはしないかという、こういう趣旨の御発言があったというふうに思うんです が、私はそういうことは一時的には、あるいは部分的には事実あり得ると思っているんですが、長期的に見ていくと、そういうことはなくなっていく。一時的なものであるというふうに 思うんです。
     例えば、機会均等法が改正されたとき、全面的に全ステージで、女性に対する差別は禁止することによって、では、これに適用されない別の雇用管理区分の人を雇った人がいい なというふうに、一時そこのところは減ったという経過はあると思うんです。ずっとそのままいかないというのはあるわけですね。これからの就業人口の関係からいっても。だから、こ の辺は大丈夫だと。またそういうことで女性の就労の促進を図り、均等待遇化を進めようとする、あるいは社会保障にも加入するということをもっと進めようとするならば、政府の援 助をどこまでしていくのかということも考えられて、全面的に今まで正社員の負担をしていたと同じように、企業の側に全面的な同じような負担を求める形でいくかどうかというのも、 私は知恵の出しどころで、促進するためには、国の支援策を何か年かにわたっては入れるというふうな策もあるというようなことを思っております。
    大澤会長
    ほかにいかがでしょうか。
    坂橘木委員
    均等待遇として、例えば女性の賃金が上げるとか、パートタイマーの賃金を上げるというときに、連合の中心の男性フルタイマーの認識はどうでしょうか。
    林委員
    既得権意識ということで、賃下げに同意するようなことではいけないという強い考え方も一方ではありますが、やはり今のように様々な人たちは、働いていない人たちと 働いている人たちと仕事を分かち合い、時間も分かち合い、賃金も分かち合おうという、公平感を持った働き方をしていこうというふうにすれば、そこは組合としても、触らないと社会 的な合意が得られないというふうに思うんですね。組織率20%ですから、80%の人たちがかなり大手の企業で安定的なところにいるこのシステムというのを堅持するということが 得られるかどうかと言えば、やっぱり外に向かって合意の得られる内容にした方が、むしろ連合の存在というのは認知されていくのではないかというのは私の私見です。
    大澤会長
    連合の方針としてはもちろん均等待遇という、パートの均等待遇というのは方針にはなっているんですけれども、単産、組合レベルでどこまでそれが浸透しているかと いうと、またそれは別問題だというところかと思います。他方で特に流通業界などでは、大手がパートの戦力化ということで待遇面で一挙に年収が3倍になったパートの方というの もいらっしゃるようでして、むしろ組合よりも経営側の方が動きか早いのかなという印象もありますが、福原委員、その辺で御意見とかコメントございますか。
    福原委員
    おっしゃるとおりですよ。ですから、これは需要と供給といいますか、能力と仕事の要求の可能性でいかようにでも市場価格は変わってくるので、それがかなり流動化 してきているんですね。
    大澤会長
    ですから、一律に手取りが減るというよりも、むしろ能力や意欲に応じてパートの人の処遇が個人別に開いていくということになのかなという気もいたしますね。
    林委員
    私も日本型という言い方についてこだわりを持ってきていたんですけれども、それを使う限り、仕事に対する賃金というところができにくいのではないかというふうに思って いたんです。ジョブ評価に基づく賃金算定をやっている国々と、日本とは違うという大きな前提をひいて物を考えていたんですけれども、しかし、日本のやり方の中にも、仕事評価と いうのは入れられるんだなというふうに思うんですね。年功制というのが純粋にあるわけではなくて、その仕事に対して年をとったら、熟練があるからこれだけの上積みができます よというふうなものの見方をしていくならば、どのジョブに対する評価がどうであっても、そこには一定の成果というのか、熟練度に応じてとかというような考え方が入っていくというこ とは当たり前のことで、それも諸外国でもやっぱりその部分はあるわけで、それだけにしていくのかどうなのかという極端な見方をすると、日本ではできないというふうに言われてし まうわけですが、私は可能性はかなりあるというふうに今思い始めているところです。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。時間がきましたので、今日はこのあたりでおしまいにしたいと思いますけれども。
    大沢委員
    1点だけいいですか。
    大澤会長
    はい。
    大沢委員
    今までの考え方というのは、働くことの報酬はお金でもらうという考え方ですけれども、お金だけではなくて時間でもらうということも考えられるわけですね。つまり働き 方を選ぶということですけど、だから、賃金は低くなっても、週2日だけ働くとか、処遇は全く同じとか、先生がおっしゃった男性の働き方を変えるということで言えば、時間給で見れば 同じであれば、時間の選択とか、働き方の選択というのもあり得ると思うんですが、そういうことについて連合などでは議論はないんでしょうか。
    林委員
    やっている最中で、均等待遇というものの基準をどのようにつくるかというのを8月20日のパートプロジェクトの専門委員会のところからスタートさせまして、今は基本的 な考え方について議論をやっている段階です。
    大澤会長
    そのあたりにも期待しまして、我々も夏休み明けには、これまでいただいた意見をもとに論点絞ってまた議論をしていきたいと思います。
     最後に、事務局からの連絡事項をお願いいたします。
    事務局
    次の13回の影響調査専門会の議事録は、修正等がございましたら、御返送いただければと思います。
     それから今後の開催日程として、9月専門調査会については9月10日(火)16時から18時ということにさせていただきました。それ以降は、年内の調査会につきましても、仮押さえ ということで一応仮の日程だけ決めさせていただきたいと思います。
    大澤会長
    そういうことで次回は9月10日ですけれども、その後、早目に皆様のスケジュールを押さえたいということでございますので、よろしくお願いいたします。
     それでは、これで影響調査専門調査会の第14回会合を終わります。

(以上)