第13回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成14年6月26日(水) 13:00~15:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      岡澤 会長代理
      大沢 委員
      木村 委員
      橘木 委員
      高尾 委員
      永瀬 委員
      福原 委員
  2. 議事
  3. 議事内容
    大澤会長
    ただいまから男女共同参画会議影響調査専門調査会第13回会合を開催いたします。
     では、お手元の議事次第に従って本日の審議を進めてまいりたいと思います。今日は、中間報告書の取りまとめの際に今後議論すべきとして御意見がありました論点のうち、雇 用保険と医療保険改革等についてヒアリングを行いたいと思います。まず厚生労働省から雇用保険についてヒアリングをし、次に内閣府経済社会総合研究所の喜多村総括政策研 究官から医療保険改革等についてヒアリングを伺い、最後に専門調査会における今後の検討事項等について御議論をいただくという予定にしております。
     まず厚生労働省の職業安定局雇用保険課長補佐の岸本武史さんから雇用保険について御説明をお願いいたします。
    厚生労働省
    ただいま御紹介いただきました厚生労働省職業安定局雇用保険課の岸本と申します。
     事前に資料をお届けさせていただきました資料ナンバーの1番、「雇用保険関係資料」というものにのっとりまして順次説明を申し上げます。この雇用保険の関係につきましては、 既に一度中間報告の取りまとめの前の段階でさまざまな御議論をこの調査会の中でもいただいたと存じております。その中で、結局最終的には中間報告では雇用保険が特に世 帯に着目した要素を制度的に持っていなくて個人単位の保険制度であること、あるいは女性の社会参画との関係で、そこに固定するのもどうかと思いますが、短時間被保険者の 増大も非常に顕著に見られていること。こういうことから、中間報告では特段具体的な御指摘はいただくには至らず、引き続きの研究となったというふうに承知をしてございます。そ の中間報告の取りまとめの議論の中で、私の方では事務局から3点ほど委員の皆様の中で御疑問点があったというふうに聞いております。1点目は雇用保険の基本手当、いわ ゆる失業給付の制度の在り方として、特に給付の日数を被保険者の加入期間にリンクさせていることが女性に不利益になっているのではないかという問題意識。それから、育児な どによりまして長期間、一たん家庭に入られて、そこから再度労働市場に復帰するときに雇用保険の給付の中できちんとケアがされていないのではないかという問題。それから教 育訓練制度、教育訓練給付制度という労働者個人が主体的に教育訓練を受講して、その費用を一部雇用保険から給付をするという制度において、5年間の加入期間を要件として いることがやはり女性に不利益になっているのではないか。こういった問題意識があったものと承知をしてございます。制度全体の御説明の中で、今の問題意識に言及をさせてい ただきながら御説明を申し上げます。
     まず資料の1ページでございます。これは雇用保険制度の全体の概要でございまして、非常に多岐にわたる給付体系を持った制度でございます。大きく言いますと、左から順に 追って御説明をしますと、失業等給付という失業給付とこれに関連する労働者あるいは失業者本人に対する給付のグループ、それから雇用保険三事業という保険の附帯事業とし て行っている制度、この2つに大きく分かれます。前者の、失業等給付は労使折半の保険料で運営をしてございます。後者の三事業は使用者、事業主のみの負担によって雇用保 険の保険事故である失業の予防ですとか、あるいは被保険者の福祉を増進するといった事業をやっているものでございます。
     特にこの研究会でも御議論いただいております失業等給付の中身でございますが、大きく4つの区分に分かれてございます。求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用 継続給付と分かれておりまして、その中が更に細分化されて真ん中のところに縦に並んでいるのが個別の給付、具体的な給付です。一番上にありますのが、いわゆる失業給付と いうふうに言われる場合に該当するものでございまして基本手当と呼んでおります。これが雇用保険の財政の大半、約8割はこの基本手当が占めているものでございます。いわ ゆる被保険者の方が失業した場合に、前職の賃金のおおむね6割から8割を年齢ですとか被保険者期間あるいは離職理由によりましてさまざまな区分がございますが、90日から 330日まで再就職活動中の生活のつなぎとして支給をするという制度でございます。求職者給付にはこのほかに3種類ございますが、65歳以上の方あるいは季節労働者の方、日 雇い労働者の方に対する失業給付、やや特殊なものが3種類ございます。
     それから、再就職手当という制度がございます。これは先に申し上げた基本手当と関連するものでございますが、基本手当について、特に早期に再就職をされた方に対しては基 本手当の残額の3分の1を支給するというものでございます。この制度の趣旨は後ほど御説明しますが、雇用保険の制度の性格上モラルハザード対策というのが制度上の仕組 みを設けないと安定的な制度運営はできないという宿命がございまして、このため基本手当を漫然ともらい切るのではなくて、できるだけ早期に再就職をしていただく。そういうイン センティブとして設けられているものでございます。
     それから、次が教育訓練給付でございます。この調査会でも御議論をいただいていることと存じますが、いわゆる企業内の社内教育ですとか、あるいは政府が設計をする公共職業訓練、こういった訓練だけではこれからの変化の激しい時代に対応した人的資本の蓄積ができないだろうということで、労働者の方が自ら民間の教育訓練機関の教育訓練を受 講した場合に費用の8割を支給するという制度でございます。比較的新しい、平成10年に創設をされた制度でございます。
     それから雇用継続給付というグループとして高年齢、育児、介護という3つの給付がございます。これはいずれも60歳以降の賃金低下あるいは育児休業や介護休業の取得によ る賃金所得の低下ないし喪失、こういったことを失業に準ずる雇用保険の失業に及んだ事故だというふうにとらえまして一定の給付、具体的には高年齢雇用継続給付の場合には 60歳以上の賃金額の25%、育児、介護両休業給付については休業取得前の賃金額の40%を給付するという制度でございます。以上のような給付体系、雇用保険制度を持って ございますが、具体的に基本手当と教育訓練給付を中心に、より詳しい制度の内容について2ページ以降で御説明いたします。
     2ページには基本手当の概要を簡単にまとめてございます。基本手当は一般被保険者の方が失業した場合において離職の日以前1年間に被保険者期間が6か月以上ある場 合に、4週間に1回基本手当を支給するものでございます。これが失業をし、賃金収入を喪失した場合に再就職までの間の生活のつなぎとして支給をするという雇用保険の一番本 質的な給付であります。
     ここで失業の概念が星印で書いてございますが、雇用保険法、雇用保険制度においては失業の概念をこのようにとらえてございます。被保険者の方が離職をし、労働の意思及 び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態という定義であります。これが強制保険としての雇用保険制度としてコンセンサスを得ている保険事故、こういった場 合に給付をするための制度だということであります。
     ここで制度運営上、雇用保険制度の発足時から既に永遠の課題として問題になりますのは、この保険事故の定義の中に労働の意思という一種の主観的な要素が入っているこ とでございます。これは、例えば老齢厚生年金であれば65歳あるいは暫定的には今もうちょっと低い年齢ですけれども、そういった年齢に到達したことであるとか、医療保険であれ ば疾病にかかっていること、そのことは専門家である医療機関が判定をする。こういったことで保険事故に陥っているかどうかということが客観的に判断がつく。そういうことが保険 制度の前提になっているわけでありますが、雇用保険制度においてはあくまでもその制度の趣旨が再就職をしようとしている人に対するつなぎの保障である。再就職をして、いわ ばこの雇用保険という被用者保険にまた回帰をして制度を支える側に回る、そういった人に対する保障である。こういう大前提があるものですから、再就職をしようとする意思があ るということを保険事故の中に入れないといけないわけであります。
     しかしながら、ほかの離職状態にあるですとか、職業に就けていないということは客観的に外形的に判断ができますが、労働の意思を持っている、再就職の意思を持っているとい うことは外形的には明らかではございません。そこで、この判定をいかに的確にやるかということと、それからできるだけ再就職の意思を受給者の方が失うことがないように、あるい は自発的にといいますか、労働の意思をできるだけ持ち続けていただく。こういったいわゆるモラルハザードの対策、これを仕組んでいかないと雇用保険制度を安定的に運用でき ない。具体的に言えば、1つには真に再就職をしようとしている人との公平感、バランスの問題が生じるということ、それから雇用保険財政においても現在我が国の雇用保険制度 は高度成長期以降も先進諸国の中で非常に失業率が低く推移してきたということもありまして、保険料負担は主要国の中では最低水準を維持しておりますが、こういったできるだ け軽い負担での保険制度の財政的な安定を図る上でも、この雇用保険制度の失業の概念に即した給付を行うということが保険制度の運営上の大きな課題でございます。
     そこで、具体的なやり方としましてはちょっと先走りになりますが、1つには4週間に1回公共職業安定所で失業認定というのを行って、その上で給付をするという給付のやり方に なっております。4週間に1回職業安定所で面接を行って、求職活動をどのように具体的に行ったかといったことを確認して、労働の意思を持っているということが判明した段階で給 付をするというのがこの失業概念をうまく運営する上での1つの雇用保険制度の特徴でございます。
     しかしながら、このような仕組みは労働の意思を持っているか持っていないかという、その現状の把握にはなりますけれども、更に進んで雇用保険制度において労働の意思をで きるだけ失わないようにしていくという、そのモラルハザード対策として2つの仕組みがございます。
     1つが1枚目のところで簡単に触れました再就職手当という制度でございまして、これは雇用保険の給付は決まった日数があるわけですけれども、それをもらい切ってから再就 職をするということではなくて、できるだけその受給期間中に再就職をしていただく。こういうことのために、受給期間中に再就職をした場合に残った日数の3分の1を給付すること で、もらい切らずに就職をしても余り損ではないという割安というか、割高というか、そういう不利だという感覚を薄めるために設けられている制度でございます。
     それからもう一つ設けられておりますのが、次のページにございます所定給付日数を定めるに当たって被保険者期間を考慮するという制度であります。これは、実は雇用保険制 度の前身である失業保険制度が昭和22年にできましたときには、所定給付日数に被保険者期間を考慮するという思想はございませんでした。それで、昭和22年から失業保険制 度を運営して、初めの数年間は戦後の大混乱の中でとにかく最低限の給付を行っていたわけですけれども、徐々に社会が安定化に向かうにつれて昭和22年にできた失業保険制 度について、大きくその問題になったこととして、雇用保険の給付の濫給問題というのがございました。
     具体的には、例えば定年辞職の方ですとか、今は数的に相当減少してまいりましたけれども、当時は結婚を機に退職するというような方が多かったわけですけれども、そういった 結婚退職の方というように、実際には引退志向なんだけれども、労働の意思があると言うことによって失業給付を受けるということが1つと、もう一つ大きな問題として短期の離転職 を繰り返すことによって、いわば半年働いて半年失業給付を受けて暮らすというような実態が一部に見られたということであります。こういった2種類の濫給が問題になりまして、前 者に対してはその失業認定を厳格にするという対応を昭和30年代に取り始めて今日に至っているわけでありますが、後者の対応として設けられたのがこの被保険者期間を考慮す るという仕組みでございます。
     具体的には3ページに表を付けてございますが、雇用保険の給付日数を決めるに当たりまして幾つかの要素でその給付日数を分ける体系になってございます。4つ表が並んで ございますけれども、上の2つが一般、いわゆるフルタイムの被保険離職者の方の給付日数で、下の2つが短時間の方の給付日数です。ここで短時間と言いますのは、雇用保険 ではいわゆる世に言うパートタイムとはちょっと違う基準で、週の労働時間が30時間以上である方をフルタイム、30時間未満である方をパートというか、短時間というふうに呼び分 けてございます。ですから、世の中で言われるパートタイムの方も一定の数は上の方のフルタイムの方に入ってまいります。
     例えばフルタイムの方で申しますと、更にその給付日数のテーブルが2つに分かれてございまして、1つが自発的理由による離職の方、もう一つが倒産や解雇などによる離職の 方でございます。こういった給付体系は平成12年の制度改正で導入されたものでございますが、ちょっとわき道になりますけれども、倒産や解雇によって離職をされる方はあらか じめ再就職のための準備をすることができない。いわば寝耳に水で解雇されたり倒産をするので、再就職のために必要な活動日数としては多めに保障する必要があるということで 自発的な離職と倒産解雇の離職とで給付日数を分けて、後者の方を長くしているわけでございます。
     そうなっておりますが、それぞれの中で被保険者期間を考慮して、加入期間が長ければ長いほど給付日数が多くなるというふうになっております。具体的には、自発的な離職で ある一番上の表でいきますと、一般被保険者の場合、5年未満の方は90日、5年以上10年未満が120日、10年以上20年未満が150日、20年以上が180日というふうに日数が増え てまいります。また、倒産解雇の方については年齢区分がございますが、それぞれ加入期間が長くなるにつれて所定給付日数が長くなってきております。日数などは違いますけれ ども、昭和30年の制度改正でこういった被保険者期間を考慮して、加入期間が長ければ長いほど有利というか、多額の給付が受けられるという形にすることで、その短期の就業と 離転職を繰り返すという形の行動を防止しようとした。そういうモラルハザード対策を講じたというのが現行の制度体系でございます。
     実は、昭和50年の制度改正で一たんこの被保険者期間の考慮をなくしたことがございますが、その後、昭和20年代ほどではありませんでしたけれども、やはり濫給が問題になり まして、昭和59年にまた戻したという経緯もございます。そういったことで今のような給付体系になっております。
     この考え方としましては幾つかの解釈というか、評価が可能だろうと思っておりますけれども、1つには保険制度でございますので、やはり一定の負担と給付のバランス、そのこと による加入者間の公平感が必要であろうと思います。そういったことからすると、昭和20年代あるいは50年代に問題になった濫給の問題というのは、加入者の中で短期に離転職 を繰り返す者が過度に優遇されているのではないかというバランスの議論があったように思います。こうしたことでその一定の格差を付けるわけでありますが、一方で失業状態に 直面したときに、その状態から脱するのに要する期間がいわば雇用保険で保障すべき給付日数だというように考えますと、もう一つの要素としまして企業の中で長期間雇用され て、その企業に特殊な熟練を身に付けている方であればあるほど、再就職のために自分の技能をまた一から身に付け直すといった必要性も高いわけでございます。そうしたことか ら、職種などによって細かな差はあるかと存じますが、加入期間、被保険者期間が長ければ長いほど、一たん離職した場合に再就職にたどり着くまでにやらなければいけない訓練 ですとかといったことは、その負担がむしろ多くなるのではないかといった面もございます。こういったことから、つまり濫給の問題と、それから再就職の難易度の問題から加入期間 に応じて所定給付日数に差を付けるという体系になっているところでございます。
     これについては雇用保険が偶発的な事故に対応する保険としては、どちらかと言うと積立てよりは掛捨ての保険であるということからすると、もう少し給付の内容というのはその 事故の度合いに全く応じればいいのではないか、定額的でいいのではないかという考え方も一部にはございますけれども、今、申し上げたような50年間雇用保険制度を運営してき て、時期としては2回、被保険者期間を考慮しない給付体系を設けた時期があったわけでございますが、そのときに濫給の問題が生じてしまったといった経験から、雇用保険制度と してはこういう給付体系をとっております。
     なお、完全にその加入期間に比例して伸びているというわけでもございませんで、長ければ長いほど有利になる。そのことで損だという感覚を薄めるということが意図でございま すので、例えば1年以上5年未満という方を仮に真ん中の3年だというふうに取ってみる。あるいは5年以上10年未満を7.5年、10年以上20年未満を15年だというふうに仮に採って みますと、例えばその一番上の給付テーブル、フルタイムの方の自己都合の離職の場合、1年以上5年未満を平均3年と取れば、1年当たりの給付日数は30日ということになりま す。一方、10年以上20年未満のところの真ん中を15年と取れば、150日が給付日数ですので、1年当たりは10日だというふうになりまして、要はカーブとしては完全に加入期間に 比例させているのではなくて、少し逓減させてフラットにしていくカーブになっております。ここら辺が雇用保険制度として失業者に最低の給付をするということと、先ほど言った濫給 の問題などに対応するための、いわばその折衷的な給付のカーブのさせ方というふうに私どもとしては考えているところでございます。
     ですから、こういった言い方は語弊がありますけれども、端的に言いますと、もらえる給付額という点では10年勤めるよりも5年5年で辞めた方が多くなるという給付体系にはなっ ております。以上、特に第1の問題点に関連しまして、基本手当の制度の性格を申し上げました。
     次に、2点目の育児等によりまして長期間労働市場から一たん退出をされた方の再就職の問題でございます。これにつきましては、雇用保険が保険事故として失業して賃金を喪 失して、そういった中で再就職活動をするための保障だということからしますと、一たん完全に労働市場から引退をされて、また再度参入をされるという場合には、育児なりをされて いる中で一つの生計が成り立っていたわけでありますので、再参入されるときに何年か前の離職の前の賃金の喪失ということを保険事故として給付の対象とするということは、保 険事故としての因果関係といいますか、そこはちょっと薄いというような問題意識がございます。そうしたことから、基本的には中断があればその時点で一たん被保険者資格という のは切れてしまう。したがって、切れた後、労働市場に再参入するときには雇用保険の失業給付、仮に仕事を探していてすぐには仕事に就けなかったとしても雇用保険の給付の対 象にはならないわけでございます。
     しかしながら、雇用保険という一つの保険制度に限定せずに、雇用対策全体の問題として考えますと、たとえ話で適当かどうかわかりませんが、地震によってその営業に被害が 出るというリスクに対して地震保険という制度があり、また地震デリバティブのような金融商品がある。それはそれぞれの中では補いにくいような、カバーしにくいようなリスクを補う 形で複線的な手当でもってそのリスクをカバーするという仕組みになっているかと思います。それで、恐らく長期に退出してから再就職するときの仕事を探す間のリスクというのも 同じような考え方ができるのではないかと思っております。雇用保険の本体の給付としては、賃金の喪失を補填するということからすると、賃金の喪失が余りに以前であって、その 後、一定の生計が成り立っておりますので、保険で給付すべき賃金の喪失とはなかなかとらえ難い面がありますが、別途その被保険者の福祉を増進するための事業である雇用 保険三事業を財源としまして、長期に労働市場から退出された方が再就職を希望されるという場合に、さまざまなサポートをする事業を行っております。
     具体的には5ページに資料を付けてございますが、再就職希望登録者支援事業という事業がございます。これは趣旨目的のところにございますとおり、育児、介護等を理由に退 職した方に対する再就職の支援として設けられているものでございまして、具体的な施策としては再就職希望の方を登録をし、登録した方に余り世の中から離れてしまわないよう にという意味で情報提供をし、再就職準備のための個別相談やセミナーを開催する。更には教育訓練に対する援助、一定のバウチャーみたいなものを交付するといった制度でご ざいますが、こういった形で保険給付本体の理屈でなかなか救済しにくいところを、雇用保険三事業の方でカバーするというような形で政策的には対応しているところでございま す。
     続きまして、6ページの教育訓練給付の制度について申し上げます。これについては既に御案内のことでございますが、労働者が主体的に能力開発に取り組む場合に、教育訓 練費用の8割を給付する。その場合に、支給要件として加入期間が5年間あることというのを設けているわけでございます。これは雇用保険の給付の体系の中では失業等給付、 つまり失業者に対する基本手当などと同じグループ、同じ財源で運営をしている制度でございます。したがいまして、この給付を設計するに当たりましても、片や失業者に対する給 付を行うという雇用保険の本来の任務があり、一方でそれを補完するような給付としてこういった給付も必要性があり、しかもそれを同じ財源でやらなければいけないということか ら、やはりその失業者に対する給付とのバランス、失業者から見ての公平感、こういったものに一応配慮しながらつくったのが今の姿になってございます。
     具体的にこの5年の加入要件を設けたときの考え方でありますが、これは現在、平成12年に制度改正がありまして、給付の上限額が30万円となっておりますけれども、制度創設 時には20万円が上限額でございました。これに対して仮にこういった給付、特に自主的に能力開発に取り組むということから、多少年齢層では若目の方を想定して、年収が300万 円ぐらいと仮に考えますと、年収300万円の方が雇用保険の保険料を納めるのは年間3万6,000円になります。これは半分は本人負担で半分は会社負担ですけれども、トータル で3万6,000円で、これを5年間納めると18万円ということになります。
     保険制度ですから、本来広く負担を求めて、一部の保険事故に遭ってしまった人に厚く給付をする制度ですから、その人その人での損得というのは本来は考慮しないわけなので すけれども、とは言いますものの、失業給付と同じ財源でやっていることから、こういった給付について、その人の納めた保険料を余り超えて給付をするということが失業者の公平 感からして問題なのではないかということから、5年間加入期間があれば大体こういった給付を受ければ、会社負担を入れればとんとんぐらいになるだろうということで設けておりま す。
     その後、実は平成12年に制度改正でこういった自主的な能力開発の重要性が指摘をされて上限額を30万に引き上げましたが、加入期間については途中で余り変えますと、もう 1年で受けられると思っていた人が逃げ水のようにまた何年後まで受けられなくなってしまうということになりますので、その制度の安定性、あるいはその定着を進めていくというこ とからは問題があるのではないかということで、5年という加入要件期間は据え置いたところでございます。
     雇用保険制度につきましては今、実は財政的に非常にピンチを迎えておりまして、給付の全面的な見直しを行っているところでございます。この教育訓練給付制度の見直しも例 外ではないと思っておりまして、やはりその教育訓練給付が例えば失業者の方であれば再就職にどれだけ役に立っているか、あるいは在職者であればその方のキャリアアップに どれだけ貢献しているかといった効果に見合った給付にしていくというような考え方から見直しが必要なのではないか。こういった議論を関係の部会においてしていただいているとこ ろでございますけれども、その中で被保険者期間も当然教育訓練給付の構成要素としてひとつ御議論いただくことになると思います。また、そこはどういった議論になるか、これか らの議論でございますが、今の制度の仕組みの考え方としましては今、申し上げたようなことでございます。
     6ページの下の方では、教育訓練給付の支給状況を書いてございます。雇用保険制度は制度上は性ですとか、世帯に対して区別しない制度ですので、余り男女別で普段取って いないのですけれども、取ってみますと、給付額や受給者数では余り格差が生じていないようには思います。この原因が何かというのは、余り区別しない制度であることもあって考 えてはおりませんけれども、こういった実態がございます。
     7ページ以降では、雇用保険の主な現状を示すような資料をお付けしてございます。関係がありそうなところだけざっと申し上げます。8ページでございますが、被保険者数の推 移でございます。ここでは今、非常に雇用失業者状勢が厳しい中で雇用者数がトータルで減っております。したがって、雇用保険の被保険者についても短時間以外の方は若干の 微減傾向にございますが、短時間の方が特に平成13年4月からパートタイムの雇用保険の適用要件を緩和した影響を受けまして、13年度は対前年比で35.8%と大幅に加入の増 が続いておりまして、このことがフルタイムの微減傾向を打ち消してトータルで微増傾向になっているという被保険者の推移でございます。
     それから9ページで男女別に被保険者を取ってみますと、トータルでは雇用保険の被保険者は3,300万人です。男性が2,100万人、女性が1,200万人となっております。
     それから受給者でございますが、トータルで13年度の実績で110万人の方が雇用保険を受給されました。男性が55万5,000人、女性が55万1,000人で、受給者ではほぼ拮抗して おります。こういったことになりますと、制度自体は性だとか世帯を考慮しておりませんので、やはり雇用慣行といいますか、雇用の実態の在り方の違いがこういった給付に表れてく るということだろうと思います。
     以上、簡単でございましたが、雇用保険制度、特に事務局から御示唆をいただいた本調査会の問題意識に即しまして御説明申し上げました。よろしくお願いいたします。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。ただいまの御説明について、御質問や御意見がおありでしたらどうぞお願いいたします。
    坂橘木委員
    教育訓練給付金とか、こういうものが入ったのはやはり財源が非常に豊かであったから、支払えるところには支払いましょうというようなところがあったというのはお認 めになりますか。
    厚生労働省
    豊かだからその使い道を考えたという手順では必ずしもないのですが、財源がもし今のような状態であれば、失業者でない人への給付を新設するということはな かったと思います。
    坂橘木委員
    それに関してですけれども、例えば育児休業に関して雇用保険から給付するとか、介護休業に関して雇用保険から給付するというのは、ちょっと私は趣旨が違うと思 うんです。育児休業というのは全国民的な少子化対策という意味があって、確かに失業という見方も可能なんだけれども、育児休業とか介護というのはほかの財源を見つけるとい うような動きは政府の中ではないのですか。それとも、多少は考えておられるのですか。
    厚生労働省
    育児休業、介護休業を含む雇用継続給付は一応8分の1国庫負担が入るという形になっているのですけれども、財源の性格としましてはおっしゃられたように少子 化対策、高齢化対策は全国民的な課題であるという面がある一方で、育児休業、介護休業という制度のいわば恩恵を受けることができるのがその被用者である。被用者のための 育児・介護休業法であり、その法に基づく休業を取る際の賃金喪失の補填であるということからすると、被保険者集団というか、雇用保険のその負担者集団以外から財源を求める ことには限界があるのではないか。だから、8分の1ではなくて6分の1とか、そういう細かい刻みの議論はあり得るのだと思いますけれども、一応そういった考慮で余り一般財源の 方に寄せるわけにもいかないということで今の負担率になってございます。
    坂橘木委員
    今あなたが言われたように、ものすごく財政は逼迫していますよね。来年くらいにはもう積立金もなくなるんですか。そういうような状況で、やはりいろいろなところにお 金を使い過ぎている。失業した人に所得を保障するという一番大事な目的に離れたことを縮小していく。それと、国民への負担をどうせ望まなければいけないですから、そういう意 味で失業以外のことでたくさん給付しているということはやはりやめないと、国民の支持が得られないように思いますけれども。
    永瀬委員
    そうでしょうか?出産者に占める育児給付を受けている人の割合は、厚生年金保険の育休による免除者とか、育児休業給付を受けている人など、さまざまな統計を 見ても最近でも4%から8%です。これは若干ずつ増えてはおりますが、しかしその程度の数字であって、出産者数の半数が受けているという状況ではまるでありません。また、受 けている金額を見てみても、高齢者雇用継続給付と比べると、人数も金額も大変低いです。どうしてかと言うと、もともと若い女性の平均給与が低いですし、更に復帰するまでの期 間も子が1才になるまで取る人は多くはないので、要するに雇用保険に与えている影響としてはまだ極めて軽微と考えています。むしろ私は育児休業給付の問題点としては、事業 主も全部okと言ってくれないと給付が下りないこと。つまり、自分だけで申請した場合はもらえない。事業主の方から、育児休業を取っていいですよということで一種の合意をとりつ けて、事業主の方からの書類の提出等もないと取れないらしいということを、あるハローワークで聞いた限りですが、そう聞きました。国によっては事業主との間の育児休業の協定 と雇用保険からの給付が分かれている国もあります。カナダでは休業は事業主との協定によって行いますが、給付は所得が落ちた場合に自分だけで雇用保険に申請できるよう です。つまり、子どもがいるときに所得が40%以上落ちたら自分1人で雇用保険事務所に行って、給付が受けられる。そしてカナダの例では出産の50%ぐらいは育児による所得 低下に対する雇用保険からの給付を受けております。
     一方、日本の場合はさまざまな合意がないと取れない。ただし、復帰すると言いながら復帰しないと企業としても困るので、念をおすことになる。企業ばかり責められないところは ありますけれども、とりあえず決して育休は取りやすくはないと私は理解しておりますが、そこはいかがでしょうか。
    厚生労働省
    雇用保険の育児休業給付は、育児・介護休業法の育児休業と完全にリンクをさせておりますので、取れる取れないの問題は恐らく育児・介護休業法が適正に運用 されているかどうかという問題だろうと思います。法律上は育児休業は法定の休業であれば権利でありますので、事業主の合意がなければ取れないというものではないはずで、書 類は失業給付もすべて書類は事業主経由になっておりまして、被用者保険の制度というのは大体個人がばらばらに職安や社会保険事務所と手続をするのではなくて、会社を通じ て一括というのは事務処理の都合でございます。
     ですから、本来権利あるところの育児休業がきちんと運用されていれば書類のところでのトラブルにはならないはずでありまして、もしそういうトラブルが個別にあるとすれば、そ れは育児・介護休業法の趣旨がきちんと徹底されているかどうかの問題なのではないかと思います。
     それからもう一つは、橘木先生もおっしゃられたこういった雇用保険の財政の再建をやっていく中で、失業者に対する給付とそうでない人に対する給付のバランスをどうするかと いう問題は、本格的な議論はまたこちらの方でも秋以降になってきますが、当然踏まえるべき視点であろうと思っております。そういった観点からの御議論を関係の審議会にも期 待をしているところでございます。
     ただ、そういった基本的な考え方と、一方で各給付制度の個別の成り立ちといいますか、個別の給付に対する要請もありますので、そういった考え方で全部を切っていくということ ではないと思いますけれども、当然雇用保険財政が豊かなときの失業者と非失業者に対する給付のバランス論は、雇用保険財政が逼迫して失業者に対する給付さえカットを余儀 なくされるといった状態では、当然より厳しく求められるとは思っております。
     それから、高年齢雇用継続給付と育児休業給付の1人頭の金額の比較がございましたが、これは前者が最大給付期間5年間で、育児休業給付は法定の1年間ですから、これ は単純比較すれば当然高年齢雇用継続給付の方が高くなるというものであります。一方、高年齢雇用継続給付も在職者に対する給付でありますので、やはり失業者、ただ同じ年 齢層の失業者に対する給付とのバランスから言って今の水準が妥当なのかどうかということ自体が今後の検討対象になっているところでございます。
    岡沢会長代理
    6ページの教育訓練給付の件は私も非常に興味があるのですが、少子化が進んで、それに対して逆のトレンドをつくろうとすると、第1子出産と第2子出産の期 間を短縮し、第2子出産と第3子出産の期間を短縮した方が、より子どもが生まれる確率は高いということがよく言われるのですが、しかし、実際問題として3子までいっても最低5 年ぐらいかかりそうだ。実際にはもう少し長くなりそうだと。そうすると、技術革新が非常に早い時代だったら、就職の現場から離れれば離れるほど技術革新が自分の過去の情報と 今の技術とのギャップで悩んでいくわけですよね。これを充実させるということは非常に重要だと思うんです。
     ただ、それが文科省の仕事なのか、厚生労働省のテリトリーなのか、ちょっとわからないとして、ここで具体的なことをお教え願いたいのですが、上限30万円というのはどの程度 のものかということと、対象講座数が2万727講座、これは具体的にどういう講座なのか。そしてどこが運営しているのかということと、あとは受給者数が28万4,680名で、そのうち男性が14万8,128名、女性が13万6,552名なのですが、この実数がどの程度の意味を持つのかということと、男性女性の属性上の違いがどういうふうになっているのか、何か分析は ありますか。
    厚生労働省
    幾つかのことをお尋ねいただきましたが、教育訓練給付の根本思想である、変化の激しい時代に労働者が自ら、要は自衛手段として自分の能力を高めていかなけ ればいけないという、こういうことは大きなトレンドとしては変わっていないのだろうと思います。そういったトレンドが変わっていないという認識を一方で持ちながら、もう一方で保険 制度の中でやるときに、しかも失業者に対する給付と同じ財源でやっていることから、失業者に対する給付とのバランス論からいって、その人が会社負担も含めて払い込んだ保険 料ぐらいを上限にするという考え方からすると、この5年間というのが導かれるわけであります。
     そして、その失業者に対する給付とのバランス論を今この制度創設時以上に厳しく問われているとすると、ここをなかなか緩和していくということが、広く負担者全体の理解を得ら れるかどうかというのは、そこはちょっと難しいと悲観的に思っています。
     ただ、ここもいろいろな施策の組合せの問題でありまして、保険制度として保険制度の原理の中で救済し難いとすれば、例えばこれは一つの思い付きですけれども、そういった主 体的な能力開発に要する費用を所得税の中で税額控除を認めていくとかという形でほかの財源、ほかの原理で救済していくということは考えられるでしょうし、保険で救えなければ そういうやり方を考えるべきだというふうな議論もあり得るのではないかと思います。 それから、このボリュームの意味だとか属性、属性については大ざっぱに年齢としては調べて おりまして、20代が一番多い。20代と30代前半が多いというふうになっております。実際に教育訓練をやっておりますのはいわゆる専修学校、各種学校、その他、民間の何とかス クールというのを運営しているところであります。そこを厚生労働大臣が指定をする。指定をする基準としては、趣味的なものではなくて、あくまで就職、雇用に結び付くようなものだ ということで指定をしております。
     対象講座の分野で見ますと情報関連、それから事務、事務処理というのはワープロのちょっと高度なものとか、パソコン操作みたいなものですね。そういうホワイトカラー系の職 種が多くなっております。これは、いわば伝統的にやっておりました公共職業訓練が訓練施設を運営するのに多額の設備投資を要するようなブルーカラー系の職種を中心にやっ てきたこととの見合いで、民間はどちらかというとホワイトカラー系の教育訓練が多いですので、この教育訓練給付の対象講座もホワイトカラー系が中心になっております。
     それから、動向としましては、特に最近伸びているのは情報関連と福祉関連が伸びてきています。トータルで2万講座なのですが、この教育訓練給付制度については、一方でそ の反対翼からの批判もありまして、景気対策の度に講座を拡大してきたこともあって、ややその講座が玉石混交になっているのではないか。余り就職と関係ないものが指定され過 ぎているのではないかという議論もあります。そこで、その講座については必要なものは指定していく一方で、その絞込みも行ってきております。ですので、今トータルの数が多いか 少ないかという議論や分析は余りありませんけれども、方向としてはその玉石の石を取り除くことをこの4月に1回やりまして、年度中にもう一回やるかもしれませんが、そういう段 階でございます。
    永瀬委員
    そういう講座というのは、就職状況の報告の義務付けとか、そういうのは何かしていらっしゃるのでしょうか。
    厚生労働省
    就職状況といいますか、講座の修了をどういうふうに認定しているかとかということはやっておりますけれども、就職状況は今は取っていなかったと思います。それ で、それは講座が終わってすぐ就職するような場合には、その教育訓練機関で多分フォローが容易だと思うのですけれども、その後、例えば3か月とか6か月就職活動をして就職 をしたという場合に、卒業生に報告をしなさいという義務を課して、それを出させるということになって、そこは卒業生の報告が漏れた場合にどちらの責任になるのかを考えますとき に、ちょっと教育訓練機関には問い得ないんだと思うんです。
     そういったことからフォローはしていませんが、別途行政側として一定のサンプルですけれども、教育訓練講座を受けた人がその後1年間に就職をしたかどうかという調査をした ことがございます。それで見ますと、教育訓練を受けていない人より、就職率が10ポイントほど高い。けれども、公共職業訓練よりは20ポイントほど低いというようなデータが出まし て、一応その10ポイント高いところがこの教育訓練給付の一つの政策効果なのだろうと思いますけれども、更にその講座をどちらかと言うと厳選する方向なものですから、絞って いったりすることで、その受けたことによる就職率の高まりだとか、そういったものをもっと高めていく必要があるのではないか。そうでないと、やはり失業者に対する給付とのバラン ス論から言って余り効果がないものに財源を当てていくということになってしまうのではないか。そういう観点からの見直しをやっています。
    福原委員
    講座を認定される基準というのは、だれが見ても明確になっているのですか。
    厚生労働省
    はい、公表してございます。
    大沢委員
    違う質問なのですけれども、今、年金の制度でも問題になっていて同じことなのですが、雇用が多様化している中で、これも30時間未満の労働者とそれ以上で、加入 要件が分かれておりますが、例えば有期契約の人、1年未満の人たちとか、派遣労働者とか今おりまして、この加入要件がどういうふうになっているのか。やはり支え手を増やす ためにここら辺の要件をそろえていく必要があるのかどうか、教えていただきたいと思うのですが。
    厚生労働省
    加入要件につきましては、前回直近の改正が平成12年なのですけれども、そのときに一つのテーマとして議論になりまして、昨年の4月から一応新加入要件を適 用しているところでございます。具体的には、パートタイマーの加入要件を緩和をいたしました。それで、今ある加入要件としましては、まず大きく被保険者区分を30時間以上の人と 30時間未満の人に分けています。そして、30時間未満の人については20時間以上というのを仕切りのラインにしています。これは他の諸外国の雇用保険制度などを調べてみまし ても、やはり保険の負担をし、給付を受ける集団が労働による賃金を生活の主たる生計手段とする人たちの保険制度だということになっておりまして、そこで標準的な週所定労働 時間の半分以上ということを設けております。したがって、30から40と、それから20から30という2つの区分に分かれています。
     この30未満という、いわばパートの被保険者資格という制度を設けたのは平成元年なのですが、平成元年からそこは変わっていない基準であります。このほかに基準としまして は、パートタイム20時間から30時間の人については加入期間が1年以上見込まれるということが要件になっています。これは雇用保険に実は受給資格という制度がございまして、 その入った翌日に失業しても出るという制度ではないわけで、最低加入期間というのを設けているというふうになっております。この最低加入期間がフルタイムの人については6か 月になっています。それで、パートの人については法律では6か月なのですが、その書き方として、パートの方で、しかも週30時間を切るようなパートの方になりますと勤務日が隔 日勤務になったりする人が多くなってきます。それで、フルタイムの人は月14日以上就労した月を1か月と数えて最低6か月なのですが、パートの方は月11日以上就労した月を0.5 か月と数えて6か月、したがって具体的に実際には1年というふうになっています。1年の雇用見込みがありませんと、結局加入をした場合にパートの方にとっては完全な掛捨てに なる。受給する資格は付かないけれども、保険料は納めるということになってしまう。
     こういったことから、パートの最低加入期間1年という要件は今、残した形になっています。それで、一応加入要件については、それによって事業主の方がそれを見て、aさんは雇 用保険に入る、bさんは入らないというふうに振り分けていく基準でありますので、常に時代に即しておく必要がある一方で、余りその頻繁な制度変更をやりますと、被用者保険とい うのは企業の側の理解があって初めて運営できる制度なものですから、会社の側がついてこれないということにもなってしまいます。
     したがいまして、加入要件については、一応12年の改正でかなり議論して今の姿になっているということで、しかも他の社会保険よりは先駆けたパートの加入要件を拡大している ものですから、今しばらくその制度改正によるパートの被保険者の増加の動向も見て十分な水準に達するかどうかというのを見ていきたいと思います。
    大澤会長
    時間が残念ながら尽きておりまして、これまでとせざるを得ないのですけれども、私からひとつお願いです。7ページにございます雇用保険主要指標なのですけれど も、こういうのもできれば性別でいただければと思います。今日いただいた性別のデータというのは平成13年の単年度にほぼ限られておりますので、できれば7ページのようなもの も性別でいただければありがたいと思います。
     議論は尽きないのですが時間が尽きてしまいましたので、厚生労働省からのヒアリングは以上とさせていただきます。
    坂東局長
    もう一つだけ聞かせてください。失業等給付とこの三事業との資金の割合はどの程度なのでしょうか。
    厚生労働省
    これは割合で言いますと保険料負担と比例をしてございまして、総賃金の1,000分の12が失業等給付、1,000分の3.5が三事業でございますので、おおむね12対3.5 ということなのですが。
    永瀬委員
    再就職希望登録者支援事業というのは比較的かなりやられているというふうに思ってよろしいのですか。
    厚生労働省
    そう聞いております。
    大澤会長
    最後の最後まで質問でたたみかけられまして大変申し訳ありません。どうもありがとうございました。
     では、続きまして、内閣府の経済社会総合研究所の総括政策研究官でいらっしゃいます喜多村悦史さんから、医療保険改革等について御説明をお願いしております。なお、これ から御説明いただく内容は内閣府やあるいは経済社会総合研究所の見解ではなく、総括政策研究官としての御研究に基づく個人的御意見であるということを御承知いただきたい と思います。では、お願いいたします。
    喜多村総括政策研究官
    経済社会総合研究所の喜多村です。私は今、研究所におりまして、高齢化が非常に進む中で社会保障制度、これが恒久的なものとして維持できるよ うにするためにはどう再編していくかということで研究をしております。そういうことから、私の現在の考え等を御説明させていただきたいと思います。特に医療保険に焦点を当てた いと思います。
     お手元に閉じた紙がありますけれども、1ページを開いていただきます。これはもう皆様方、御案内のように社会構造が非常に変化をしているということであります。そういう中で 世帯構造や家族の機能、雇用慣行も大きく変化をしておりまして、個人が家族や職場など、1つの場に全面的に帰属していくことはできない。そこで自ら人生設計を行い、それに適 合した自己実現の場を望む志向が高まってきている。これは平成13年版厚生労働白書の一番冒頭に書いているわけでありますが、その後にそういうことであるからセーフティネッ トである社会保障は重要であると、そういうふうに続くわけであります。
     2ページ目でありますけれども、これは昨年の6月の閣議決定、いわゆる骨太の方針のうちの社会保障に関するものでありますが、そこの中で幾つか書いてあるものをピック アップするとこういうことであろうと思います。1つは、社会保障制度は国民の生涯設計におけるセーフティネットである。そこで制度への信頼確保にはわかりやすい制度であること が不可欠だ。3つ目は、世代間の給付と負担の均衡を図り、持続可能な制度への再構築をする必要がある。4つ目に、個人のライフスタイル、就労形態、家族形態の変化を踏ま え、男女共同参画社会、生涯現役社会への適合が必要であるというようなことが書いてあります。
     私はこういったことを踏まえて考えた場合、ここにも書いてありますように、セーフティネットである社会保障、社会保険がとにかくわかりやすく簡素であること。それからまた保険で あるということでありますから、これは大きく統合ということであろうと思うわけでありますが、以下そういうことでお話を展開をしたいと思います。
     3ページ目であります。これは医療保険の現在の保険集団で、これもよく御案内のとおりでありますけれども、大きく分けましてこういった6つぐらいになるだろうと思います。政府 管掌健康保険というのは、加入者がこれは被扶養者を含めておりますけれども、3,700万人と大変大きな制度でありますが、保険者は一本。保険料率は定率保険料率であります。 プラス1と書きましたのは、ボーナス保険料であります。中小企業の人が対象だということで財政力が弱い。国庫負担が入っております。次に健康保険組合でありますが、1,700ぐ らいあります。保険料率は組合員によって差があります。船員は小さいので飛ばしまして、あと幾つか共済組合というものがありますが、その次に国民健康保険組合というものがあ ります。これはお医者さんであるとか弁護士、理髪業、そういった自営業の方、同業の方ごとにつくることができるということで160ほどあるわけでありますが、ここでの保険料は多く は定額保険料になっております。皆さん均一で幾らといったようなことであります。
     最後に、そのどれにも入らないという人が市町村の国保ということでありまして3,200の市町村に分立をしているわけでありますけれども、保険料率は応納負担、いわゆる所得割 りとか資産割りといったものと均等割り等の応益割りというものを組み合わせるということでできております。国庫負担は市町村国保に対しては上のどれにも入らないということで、 無職の方あるいは高齢者が多いということもあろうかと思いますが、国庫負担が給付の半分ということで、これで財政調整という体系になっているわけであります。
     そこで次の4ページ目でありますけれども、これは幾つかの市町村国保の保険料を、それぞれ仕組みが違うものですから、その仕組みに応じて計算をしてみたものであります。 下に年収を取っておりまして、左に保険料額ということでありますが、あるところまではかなり収入が伸びると比例をして保険料も増えるということになっておりますけれども、それが それぞれの市町村によってかなり違います。一番下は東京都の多摩市でありますけれども、これはかなり保険料率に換算をすると結果的に低いということで、年収が1,200万円ぐ らいいきますと年間保険料が45万円、これが上限と、多摩市ではそういうことになっております。一番左の方に札幌市がありますが、これは300万円ぐらいで上限になるということで あります。太い線が政管健保でありまして、これはあるところまでは定率でありますから斜めに上がっていきまして年収1,500万、これは標準報酬を年収に直したわけでありますけ れども、一定のところで上限になりますが、大体ボーナスにもよりますけれども、100万円ぐらいであろうということであります。
     そこでいろいろなことが読み取れると思うわけでありますが、例えば収入が多い人の場合、やはりこれは自営業者であってもサラリーマンと同じだけは払ってもらう必要があるの ではないかというようなことも言えますし、また札幌市のようにかなり年収が低い段階で保険料の上限になってしまうというのもどうかなということであります。
     そこで5ページでありますが、医療保険給付の在り方についてでありますけれども、私が考えるのはこういう国民皆保険、そしてまた制度がそれぞれ難しくなっているという中で考 えるべき方向ではなかろうかということであります。1番目は個人ごとに保険証交付と書きましたけれども、現在保険証は世帯に1枚となっておりますが、被扶養者も含めましてそ れぞれが保険証を持つ。すなわち保険給付の対象、受け手になるということが必要なのではないかと思います。
     2つ目でありますが、給付内容の統一。一部負担の割合等でありますが、これはそちらの方向に向かっていると思いますけれども、そういう統一が必要ではないか。
     3番目でありますが、保険ということでありますので保険料未納者への給付のペナルティというのはやはりもっと必要なのではないか。これは制度ごとにそれぞれ次第に強化はさ れてきておりまして、国民健康保険でも受給者証の交付というようなことになっておりますし、介護保険はもう少し厳しい給付割合の減額というようなことも書いてありますけれども、 保険という形式を使う以上は保険料未納者に対しては給付面でのペナルティというものを明確にしていく必要があるのではないかと思います。年金では事実上そうなっているわけ でありますけれども、そのほかの特に医療保険などでも必要ではないか。その場合に、滞納期間比率で減額をするというのが簡素な制度ということから言えば非常にわかりやすい ことであろうと思います。
     4つ目でありますが、皆保険ということで医療保険を運営をしていくということでありますと、同じような保険料を払いながら給付を受けるチャンスに違いがあるというのはやはり問 題であろう。医療機関の偏在というようなことがないように、医療供給体制を戦略的に整備をしているというようなことが必要であろうと思いますし、また昨今、問題になっております ような研修医の給与支払いをどうするかというようなことも、やはり医療保険全体の中でこれからは考えていくということが必要ではないかと思います。
     5番目でありますが、生活習慣病、特に高齢化になりますとそういったものが多くなってくるということでありますけれども、それはまた一面、若いときから健康づくりの努力をすれ ば給付の削減につながるということでありますので、こういった健康づくりを医療保険と関連させてどのように体系的に進めていくかということを考える時期にきているのではないか と思います。
     そこで6ページでありますけれども、これが結論ということでありますが、現在の医療保険の姿は図で言いますと上のようになっているわけでありまして、5,000ほどの保険者が分 立をしております。この図は年齢でありますけれども、70歳以上になりますとサラリーマンはだんだんいなくなりますのでサラリーマンでない人、そしてまた息子さんの被扶養者に なっていないお年寄りは国保ということでありますので、右側の国保の方の加入者が増えてくるということになっております。そこで、70歳以上について一種の財政調整といいます か、拠出金を求めまして給付を行うというのが老人保健制度であります。
     現状はそうなっているわけでありますけれども、それならば改革案としては、下のように考えてはどうかということでありまして、全国民がこの保険に加入をするわけであります が、その場合には幼少者から高齢者までいます。それぞれ被保険者ということで給付の主体にはなるわけでありますけれども、一般的な生活を考えていきますと、現役のときに稼 いで、高齢になったときにはそれで暮らすというのが一般的な形でありますので、医療保険にもそれをそのまま適用して、現役のときに保険料を納めるという形態にしてはどうかと いうことであります。
     そういたしますと幼少期、これは国民健康保険では被保険者ということになっておりますけれども、現実には保険料を負担する能力はありませんから世帯で親が払っているわけ でありますが、健康保険では被扶養者ということになっておりまして保険の主体になっておりません。しかし、幼少者、現役、高齢者を問わず、被保険者ということで保険の給付主体 にはなるけれども、保険料は現役のときに納めるということでどうかということであります。
     7ページでありますが、保険者の自主性を尊重しようという議論があります。保険者がレセプト審査等でいろいろな努力をするのは当然であると思います。保険者の本来業務であ ると思いますが、ただ、この図の右の方で書きましたように、保険の適用は法律で決まっておりまして、我が国では保険者が自分で被保険者を勧誘をするというような仕組みに なっておりません。そのために財政調整等が必要になっているわけであります。
     そこで医療保険の競争条件というのはどこで必要なのかということでありますけれども、それは医療機関同士でより良質な医療を給付をするという競争をしてもらうことではない か。その医療機関との契約は保険者が行うということになるわけでありますから、その指定のやり方によって適正な医療機関に競争してもらうということが可能であると思います。 8ページでありますけれども、先ほど健康づくりが重要だということを申し上げましたが、こういう仕組みは考えられないのかなということであります。保険者に対して皆、強制で入っ ている被保険者が右にいますが、それとは別途それぞれ健康づくり事業者に意識がある人が会費を払って参加をする。健康づくり事業者はお医者さんと契約をしまして健康指導 を行う。その場合の在宅での検診とか、そういったツールは現在多くの企業で開発されつつありますので、技術的には可能であろうと思います。
     そこでそういった指導を受けてフィットネスを行うとか、いろいろなことを行うわけでありますが、健康づくり事業者が自分のところで抱えている参加会員の属性を保険者に届ける。 保険者はその集団の医療費の動向を見まして、有意に下がってきた健康づくり事業者に対しては下がった部分の一定割合を交付金として事後的に支給をするという仕組みにすれ ば、保険者自らの負担増ということにはならないのではないかと思うわけであります。 9ページでありますが、これも一つの提案でありますけれども、現在医療費控除という仕組み がありますが、その中で医療費控除というのは真ん中の部分のいわゆる保険給付を除いた部分が対象になっております。これですと、一部負担を増やしましても高額所得者は半 分ぐらい返ってくるということになりますが、それよりも予防が重要であるということであるならば左の予防に関する部分、こちらの方に医療費控除の対象をシフトしてはどうかと思う わけであります。
     10ページであります。申し訳ありません。資料をつくり過ぎましたのではしょりながら進めます。医療制度は先ほど申し上げましたが、介護、年金を合わせて考えますと、保険料納 付者はそこの真ん中に書いてありますけれども、給付というのは結局は高齢者が受け取る。まとめとして書いてありますように、今のような高齢社会になりますと、現役時代に保険 料を納付し、その多くを老後に受け取るということになっておりまして、こういう面で共通して考えることができるのではないかということであります。
     11ページでありますが、先ほど医療保険の統合ということを申し上げました。医療保険が統合されますと、年金も統合の方向にあります。介護保険はすべて同じような仕組みで 動いております。雇用保険は労働者が現在対象でありますが、今のような時代になりますと、いわゆる自営業者であっても事業に失敗して再起を図るというような場合、これも一 種の失業と言えるのではないかということで、有業活動をしている人については給付の必要があるのではないか。そういうふうに考えますと、こういった社会保険をすべて一緒にし てしまってはどうだろうか。その際、児童手当というのもできれば入れてしまうのかなということであります。
     12ページでありますが、医療保険のところで申し上げましたけれども、今の統合した国民保険といいますか、その保険の仕組みであります。年少者、現役世代、高齢世代とありま すが、これを生涯を通じ被保険者として保険給付の受け手にするわけでありますけれども、負担については現役時代に例外なく同一算定式で保険料を負担をしていただくという簡 素な仕組みにするということであります。後ほどもう一度申し上げます。
     13ページは在宅勤務者が増えていますよという新聞のデータでありますけれども、右の注釈の2個目にありますが、在宅勤務者すべて雇用労働者とはなかなか定義づけられな いわけでありまして、いろいろな形態があります。請負であるとか、どういう形態なのだろうかということでありまして、すべてを健康保険や厚生年金に入れていくというよりも、有業で ある人、稼得活動をしている人についてはそういうふうにとらえる。そうでない人については、収入がほとんどない被保険者ということでとらえるというふうな方が、雇用というものの 領域が非常に難しくなっている現時点では適合しているのではないかと思うわけであります。
     そこで保険料の徴収方法でありますが、14ページは所得税でありまして、御案内のように所得税は大変複雑な仕組みでありまして、収入から経費を落として所得を出す。それを 合計した合計所得に対して、今度は諸控除等を行って累進課税をするということになっております。一番上の非課税もあります。
     それに対しまして15ページ、社会保険でありますけれども、これは極めてシンプル、割り切りでできているのであろうと思います。被用者につきましては、例えば会社からの給与に しかかけません。そのほかの収入についてはかかりません。それから生収入に賦課ということで、原則複雑な特殊控除といったようなものはございません。累進制ではなくて、定率 でありまして、下限と上限があります。健康保険、厚生年金では月額10万円が下限でありまして、仮にそれ以下の人がいても10万円とみなして保険料を払う。それから、上限もあり まして、それ以上は保険料は打ち止めになります。そういうことでありますと、自営業者につきましてもこれと同じように本業収入に対して同様に賦課をしていけばいいのではないか というのが私の整理であります。
     16ページ、最後でありますけれども、年度でそういう収入であります。これは年度で標準報酬、線になっておりますが、現在と同じように幾つかの区分にくくるということで割り切り を行いまして、これを3つぐらいに分けるのかなと。一番低い人がa区分、これは無職の方を含むと思いますが、例外なく保険料を払っていただくということで、仮に年額100万円とい たしますと、これに保険料率をかけたものを保険料として払っていただく。もちろんこれで医療等の受給資格は得ますけれども、年金の報酬比例部分あるいは傷病手当といったも のは収入がないわけでありますので、失業給付も含めてこの人には適用にならない。b区分につきましては報酬に応じて保険料を払いまして、給付で報酬が関係あるものは現在と 同じように計算をしていく。c区分でありますが、これは保険料は実線のようにいただきますけれども、給付はb区分の最高、したがって年収1,000万ぐらいで打ち止めということであ ります。この1,000万、1,500万と言いますのは、年金での月額62万円、それから健康保険での月額98万円を年収ベースにしてボーナスを含めたものであります。
     このようにしまして、例外なく保険料をいただく。そこで、失業者でありますとか生活保護受給者といった方がいらっしゃるわけでありますけれども、そういった方についてはその給 付に保険料相当額、加算するのか、今の中で内訳するのかということで設定をしまして、それを源泉天引きでこちらの保険料、みなし保険料として納付をしていただくということにい たしますと、結論でありますけれども、年金、医療、介護を含めて現役のときに収入に応じた保険料を納めて、老後においては必要な給付を受け取るという仕組みが可能になるだろ うと思っているわけであります。
    大澤会長
    ありがとうございました。ただいまの御説明についてたくさん御質問や御意見がおありだとは思いますが、時間は20分程度しかございませんので御質問等、手短にお 願いしたいと思います。では、どうぞ。
    坂橘木委員
    これは研究者1人で書いた報告としか読めないですよね。喜多村さんが元々厚生労働省の役人でおられるというのはよく存じていますので、これは厚生労働省はど の程度エンドースしているのか、全く無視なのか、どの程度なのですか。
    喜多村総括政策研究官
    私はこれから高齢化が非常に大変だということで、その一つのピークである2025年ぐらいにはこうなっている必要があるだろうと思っているわけであり ます。
     それからもう一つの、これが厚生労働省の見解かと言われればそうではありません。これは私の提案であります。
    大澤会長
    今度の提案は、実は私が個人的に提案しているものと共通点が多々ございまして、そういう意味では心強い思いでお聞きしていたのですけれども、このような提案を いたしますと必ず出てくる反論というのは、自営業者の所得は捕捉できないではないか。だから被用者と一緒の社会保険にするわけにはいかないのだと。これは今、年金部会で議 論が出ておりますけれども、自営業者の所得は捕捉できないというのはあたかも大前提のように議論をされているきらいはございます。その辺りはいかがでしょうか。
    喜多村総括政策研究官
    これは非常にはしょらなければいけないわけでありますが、例えば国民年金を昭和30年代に立案をしましたけれども、そのときの担当者は自営業者に つきましても所得比例保険料というのをずっと念頭において議論をしております。当時の状況ではなかなか難しいということだったと思うわけでありますが、ただ、その後、いわゆる 自営業という方はむしろ少数になっておりますし、いろいろなコンピュータを使った技術も発達しておりますので、私は今、申し上げたようなことで技術的には可能であろうと思ってお ります。したがって、長年被用者と自営業者は違うんだという理解に立っていた意識をいつ切り替えるのかということにかかっているのではないかと思います。
     また、先ほどちょっと申し上げましたように、雇用者かそうでないのかという区分自体が非常に難しくなっているわけでありまして、そこで議論をしておりますと、昨今いろいろ出ます ように、厚生年金での空洞化というか、そういう議論にもまたなっていくということで、ここは私は将来を見据えれば、原点に返って日本は皆保険皆年金というのであれば同じ仕組み で考えるべきではないかと思います。
    坂橘木委員
    今の件に関して、喜多村さんは所得税ではなくて保険料で取れと言っているのですが、所得税にいろいろ問題があるというのもわかるんだけれども、あなたのこの大 統合を収入の面からうまくやろうと思ったら消費税でいいじゃないかという案が出てくると思うんです。消費税だと、どういう職業であるかということも無関係に徴収できますから、そ ういう案が出てきたときにあなたはどう回答されますか。
    喜多村総括政策研究官
    消費税をその場合、社会保険料と読み替えるのかもしれませんが、消費対応型と言うのかもしれませんけれども、そういうものがいいのか、やはり収 入所得に比例した方がいいのかという判断であろうと思います。私はその場合には、社会保険は保険という衣は使っておりますけれども、その中では所得が多い人がよりたくさん 出すんだということでこれまで動いてきておりますので、その思想を今後も踏襲をする方がわかりやすいと思います。
    坂橘木委員
    そうなると、消費税に累進度を持たせたら同じことができますよ。所得税に累進度があるのと一緒に、消費税も累進性を持たせることは可能ですから、それは私は回 答にならないと思います。
    喜多村総括政策研究官
    今おっしゃっているのが、所得に応じて消費税に累進を……。
    坂橘木委員
    消費額に応じて累進度をかけるわけです。ものすごい消費する人には高い税率で、そうでない人には低い税率というのは、支出税的な考え方をすれば将来的には可 能です。
    喜多村総括政策研究官
    技術的にはそういう考えもあろうかと思いますけれども、直接所得に着目をずっとしてきておるわけでありまして、それを消費の方に変えた方がいいとい う積極的な理由は私は思い浮かびません。それで、おっしゃっているように技術的に所得ではどこかに限界があるのではないかという議論だと思うんです。それに対して私がずっ と考えますのは、所得税と違いまして社会保険料というのはかなり割り切りで動いていますよと、そういう割り切りの下で考えていけば、いわゆる自営業者についてもこれはできる のではないかということを申し上げているわけであります。
    永瀬委員
    3つほど質問があるんですけれども、16ページのこの図で、先ほど失業者や、生活保護の方は社会保障給付から保険料を出せばよいとおっしゃいましたけれども、 女性は大体まだ半数弱が無業です。無業で失業保険に入っていないため仕事が見つからなくても給付がない人等についてはどういうふうに考えておられるのかというのが1つで す。
     それから、現役が全部負担するという図がどこかにありましたけれども、ストック面では高齢者が今、一番資産持っているわけです。それを65歳という一定の年齢で切って現役の みが負担することにする、その理由がちょっとよくわからない。ストック面を見ると、取り崩しが十分できる場合、どうお考えになるのかということ。
     3つ目は、健康保険の滞納問題はどのぐらい大きいのか。滞納していたから病気になった人に保険から給付を出さないという思想ですが、人道的立場からどこまでそれが厳しくで きるか。特に低所得者にかなり厳しい16図という負担の図がある中で、低所得者に対してかなり厳しいのではないか。一方で高齢者に対しては無差別に優遇するのではないか。 特に今後非常に高齢者が増えていくとき、その辺をどういうお考えでしょうか。
     最後に、橘木委員の消費税だと累進できるというのは、ぜいたく品に税率を上げるのではなくて支出をコンピュータか何かで……。
    坂橘木委員
    2つあります。ぜいたく品のベンツに50%、カローラに20%という案だってあるし、それでももっと進めば永瀬委員の家は1,000円支出しました。私のところは500万円 と、それを把握して税率に差を付けることは将来的にはできます。
    大澤会長
    今、3点の質問が出ましたけれども、当調査会の観点から言いますと第1点の専業主婦を一体どうするんだというのが一番大きいかなと思います。
    喜多村総括政策研究官
    第3号被保険者の保険料につきましては、別の検討で6つぐらいの案が出ていたと思いますけれども、私は冒頭に申し上げましたように、去年の骨太 方針でもありませんけれども、とにかく簡素、それから個人単位ということを基本で考えるのがいいだろうと思います。そうしますと、ここは単純明快に無業の妻、個人の方の収入が なければa区分ということで割り切る。その場合、世帯としてはこれは実際には収入があるわけでありますから、今の国民年金や国民健康保険でもそれぞれ納付者になっておりま すけれども、最後の納付義務は世帯の連帯、世帯主がその場合はちゃんとそちらにいくことになっております。そういう考えでいいのではないかと思います。基本はそれぞれであり ます。 それから後の方の高齢者の問題でありますが、これはこれから制度をつくるとこういうふうに考えていった場合に、保障はずっと受けなければいけない。医療などであります が、では保険料を一定期間に払う。このときに払おうというのは、これは私は保険としては十分成り立つと思うんです。それが現役のこの期間である。
     そうしますと、永瀬委員は高齢者の中でも非常に余裕がある人がいるではないかということになりますが、これは2つ問題があるだろうと思います。もしその年金が多いがために 高齢者が非常に裕福であるとするならば、それは私は年金水準の問題ではないかと思います。それからもう一つは、これから高齢化が進む中で、高齢者にも労働市場に参加をし てもらおうということを考えるのであれば、高齢者の雇用所得のコストを下げるべきではないか。そうすると、社会保険料があるのとないのによって高齢者を雇うときの人件費は全く 違ってくるわけでありますから、政策的に一定以上の人はその保険料は要らないということは十分政策的に成り立つと思いますし、昭和60年改定のときに実は65歳以上は被保険 者から外すというのはそういう判断だったわけであります。
     それから、滞納者について厳しいのではないかということでありますが、確かに今日施行して明日からといったら皆びっくりすると思います。しかし、これからやりますよと言って、そ れで保険料を納めやすいように、低い人も納められやすいようにしたということであれば、もうそこで納めない人が納めないことを正当化するというのは理屈にならないわけであっ て、もしそれでもそういう制度がおかしいと言われれば、これはもう社会保険そのものをどうするかという基本論であろうと思います。
     しかし、一般的な人々の考え方はいろいろな意見等を読んでいますと、やはりちゃんと決められたとおり払う。そのときに所得によってちゃんと差は付いているではないか。それを 払うことによってその給付の資格を得ていくのだということであると思います。
    永瀬委員
    子どもがいる世帯などは、例えば出産直後とか、世帯でと言ってもやはりそこは1人については働ける余地は随分下がるわけですよね。一方、65歳でも元気ならば 働ける余地は大きいわけです。もしもそれだけ厳しく全員に平等にかけるということであれば、その所得というのはただ金銭的な所得だけではなくて真の所得というものを考えないと 難しい面があります。例えば子どももいなくて2人でいて300万の世帯と、子どもが生まれたばかりで小さい子が3人ぐらいいて300万の世帯と全く負担が同じというのですとかなり 厳しく不公平である気がします。
    喜多村総括政策研究官
    高齢者が老後にお金を持っているということは、多分その人は現役のときに稼ぎが多いのだと思うのです。だから、そのときにもっと私は取ればいいと 思うんです。この1,500万は健保の上限で持ってきたのでこうなっているわけで、皆さんが応援されるのであればこれは私はもっと上げてもいいと思っています。
     それから子どもさんがいる家庭、これはもちろん大変でありまして、そういう意味では今の国民健康保険ですと均等割がありますから、子どもが多いと保険料が多くなるんです。 私の案だと、子どもは保険料の対象になりませんから要りません。それで、子どもがいる間、働けないではないか。もちろんそういうことでありますので、先ほどどこかの図にありま したように児童手当をこの中に入れてしまうとか、育児休業を拡充をするというようなことも実はこの本の方には入っているわけでありまして、その点は永瀬委員のおっしゃるように 非常に重視しなければいけない点だと思います。
    大澤会長
    児童手当が御提案の国民保険に入ってくるという意味がちょっと私にはわからないのですが。
    喜多村総括政策研究官
    これは私の思いかもしれませんが、児童手当は所得制限なしに給付できる方がいいなと思うわけであります。そうすると、今の仕組みですとかなり一般 会計も財源がきついのかなと。
     一方、社会保険の中では子どもに対する給付で遺族年金とかありますが、あれは子どもが実質受給者でありますが、そういったことですね。それから育児休業も社会保険、雇用 保険の中に入っておりますし、出産手当などもありますから、子どもを育てていることというのを保険事故として新たにとらえ直すということも考えとしてはあり得るだろうと思ったわ けであります。財源的には、未就学児全員にしても3兆円にならないと思いますから、のみ込める話かなと思っています。
    坂橘木委員
    この喜多村さんの案は壮大な案で、20年後か50年後か、我々が死んだ後に入っているかなという感じなんですけれども、まず現実的なステップとしては乱立する医 療保険の統一からでしょう。それから、医療保険と介護保険の統一はそんなに難しくないと思います。10年後か、そこらにはと思います。
     それから、年金保険も厚生年金と国民年金と何保険と公務員共済とか、そういうのを統一するというのがまず現実的なステップだろうと思うんです。なぜそういうことを言うかとい うと、この11ページの左に4つあるのはそれぞれ発生するリスクが違うんです。医療というのは病気、年金というのは老後、介護というのは寝たきり、雇用保険というのは失業、そ れぞれやはり違ったリスクに対応した制度があって、そういうものが存在してきたわけで、個々の制度の間の統一というのは必要なんだけれども、一気にこの4つを全部統一すると いうのはまず現実的なステップをやってから次に考えることで、あなたは天才か何かわからないけれども、ものすごい案を提案されたという気はしますね。
    喜多村総括政策研究官
    御指摘ありがとうございます。冒頭にもちょっと申し上げましたように、それぞれ大変難しい財政局面にきているわけでありますが、しかし、その方向は すべて少子高齢からきているわけであります。そういうことから考えて、おっしゃったように保険事故も沿革的にはそれぞれ病気だ、所得減損だときているわけでありますけれども、 ライフスタイルで考えた場合に、どういうものがあり得るだろうかということで考えて構築し直すという一つの将来に向かってのビジョンが私は必要だと思っております。
     どこに向かっていくのか。それを踏まえた上で、ではどこからいこうかと、これはもちろん私の案で、これをすぐやりますと経過措置の方でものすごいことになります。したがって、 ビジョンとして私は国民が共有したものを持ってもらいたい。それができれば、あとは橘木先生がおっしゃったように、ではどこからいこうかと。医療保険が統合されれば、技術的に は可能になるわけですね。医療保険はばらばらですと最初が大変なわけですから。 そういうことでありますが、冒頭の方で申し上げましたように、世の中でもそちらの方向に向 かっておりますし、医療保険でもこの前の法案が国会に出る前のいろいろな議論の中で、統合が必要ではないかというコンセンサスはできつつあるのだろうと思いますので、それ を先生方の力でもって、前に何とかいかないかなというわけであります。
    坂橘木委員
    壮大な発想ですね。
    大澤会長
    イギリスのナショナル・インシュランスというのは介護保険こそありませんけれども、こういう保険ですから。児童手当は……。
    坂橘木委員
    それは失業保険は別でしょう。
    大澤会長
    いえ、入っています。もちろんオリジナリーデザインドのものは全部入っていたわけです。雇用者の雇用保険だけでなくて、自営業者の人の廃業になったときの手当て もベバリッジのプランの中には入っていましたので。
    坂橘木委員
    ベバリッジプランには入っていると、現実の制度は必ずしもそうではないということですか。
    大澤会長
    いえ、始めたときはあったと思うんです。その後ちゃんとフォローしていませんが、休業、廃業手当みたいなものも自営業者にとっても入っていたと思うんです。
     問題は、被用者の場合の事業主負担分というのはどうなさるのかということなんです。
    喜多村総括政策研究官
    これは非常に悩ましいところでありますけれども、しかし、皆保険ということで皆だということであれば、私は基本はそれぞれ個人個人で納めていただくこ とに徹した方がいいのではないか。もちろん、事業主がどうしてもやりたいという場合はやってもらってもいいと思います。
     というのは、細かいことを申し上げますけれども、事業主負担があることによって標準報酬が1級変わるかもしれないですね。ただ、基本は個人個人でやっていただく。これが実 は制度がばらばらにできているときは適用も大変だったと思いますが、皆となりますとこれはかえってやさしいのではないかというのが私の考え方であります。そのために例外を設 けない。
     それからもう一点だけですが、非常に壮大ということで御評価をいただいているわけでありますが、実務的には一つひとつ御検討いただくと今の仕組みに乗っておりまして、かなり 移行は私はこれは簡単なものだと思っています。したがって、橘木先生が指摘されたように、こういう方向にいこうという決断ができるかどうかにかかっているんだと思います。
    坂橘木委員
    では、いつごろ導入可能だと思っておられるんですか。
    喜多村総括政策研究官
    私は、国民がそうだということになれば制度化は極力早く、あとはどういうふうに経過措置を設けていくかということになろうと思います。
    大澤会長
    給付立てといいますか、給付上限が決まっているような保険はいいのですけれども、医療保険というのは今の出来高方式でやっている限りは青天井の部分がありま して、そういうときに保険者というのを大きくすることに対しては非常に批判があるわけですね。むしろ保険者はもっと分割して、しかも被保険者が選べるようにする。なるべく安い優 良な医療機関と契約を結んでいるような保険者に、そういうところは保険料率が低いから、そうやって競合させることによって医療費の高騰を防ぐという案はかなり有力にとなえら れているとは思うんですけれども、これの場合にはそういった医療費の高騰を抑える仕組みというのは、健康づくり産業の支援というのは入っていましたが、第三者機関による診 療報酬の、あるいはそのレセプトの審査みたいなことというのはどううふうに組み込んでいかれるおつもりですか。
    喜多村総括政策研究官
    それは7ページの図であったわけでありますけれども、保険者努力というのは、先ほど申し上げましたように当然必要でありますし、経費を落とす。それ から無駄なものを払わないようにレセプトチェックはきっちりやる。これはやっていないところがあるとすればおかしいわけでありましてしっかりやらなければいけない。これは当たり 前のことである。被保険者がそれを監視することによって、それをちゃんとやるかどうかで保険料が変わってくるわけであります。
     ただ、保険者が分立したときに本当にその競争をするということであれば今、先生がおっしゃったような被保険者を保険者が勧誘するとか、自由に選ぶとか、あるいは給付内容を 保険者ごとに設定をするとか、そういうことであればそれは保険者分立の意味があると思いますが、今も取られている方策はそうではなくて、給付は統一していこうという方向だと 思うんです。そうしますと、保険者を分けるのがあれではなくて、保険者にしっかりやれといって監視するのが重要だろう。もちろん、その事務の中では今レセプト点検の話がありま したけれども、外部に委託するとかそういう合理化や、その委託をするときにいろいろな人にやらせれば競争もできるかもしれませんが、そういう努力はしなければいけないと思い ます。
    大澤会長
    ほかにいかがでしょうか。
    坂橘木委員
    厚生労働省の内部でこのアイデアを発表された機会はございましたか。
    喜多村総括政策研究官
    私は常々過去からこういうことを言っておりますので、それなりに。
    坂橘木委員
    リアクションはどうですか。
    喜多村総括政策研究官
    非常に壮大で、できればいいねということです。
    大澤会長
    韓国が2年前に健康保険を一本化しましたよね。3つあったのを1本にしたんですけれども、なぜそれが可能だったのかと私は考えたんですが、自己負担比率が5割 というふうになっているので、サラリーマンの自営業者に対する猜疑心というのがかなり緩和できたのかなと思ったのですが、自己負担比率はどのくらいをお考えになっています か。
    喜多村総括政策研究官
    私は2割がいいのか3割がいいのか、特段定見はないわけでありますが、今3割に統合する方向であれば3割かなということであります。特に重要なの は、大病したときだと思うんです。したがって、そのときには高額療養費という仕組みがありますが、それをどういうふうに仕組んでいくのか。
     それからまた、新しい医療技術が開発されていきますけれども、それをどういうふうに時代遅れにならないように取り込んでいくのかということが重要だと思います。そのために は、やはり医療保険財政がしっかりしていなければいけないわけでありますから、私は当面は生活習慣病の時代だろうと思いますから、これをどうやって減らすかということを考え るのかなと思います。
     それから、自己負担比率は私は年齢を問わず同一であるのが正しいと思っております。この点については、余り同じ考えの方はいらっしゃらないかもしれませんが、年齢が違うか ら自己負担比率が下がるというのはどうも変だなと思います。
    岡沢会長代理
    それよりも、社会システムの中に個人を置くのなら保険証の個人化・カード化を急ぐ必要がある。
    喜多村総括政策研究官
    それは先ほど書かせていただきましたが……。
    岡沢会長代理
    20年も30年も前にもやっていておかしくないような制度がいまだにできていないのに、こんな提案を出されても、何年かかるのかなというのが本音です。
     私たちが小さいときにあったのは米穀通帳でした。それで、今は保険証です。家族がそれぞれ離れた場所に生活していながら、だれかが病気になったら一々それを取りにいくなどと いう制度は時代感覚に合わない。ちょうど我々が学生時代に米穀通帳を持ってふるさとから出てきて、近くの食堂屋さんにそれを見せて米の配給を受けた。昔、米穀通帳、今、保 険証書と思うんですけれども、システムの中心に個人を置くというんだったら、もう少し早目にこれがクリアできないのでしょうか。
    喜多村総括政策研究官
    そういう意味で5ページの冒頭に書かせていただきましたが、これは私が社会保険庁におりましたときに熊本県の八代市というところでこれを全市民に 配りました。そのときに、個人ごとに配ると医療費が増えるのかなという心配をされている方がおられましたが、それはありませんでした。だから、そういう心配、懸念は要らない。そ れで、技術的には開発されておりますし、また発行経費をどうするかという問題もあろうかと思いますが、規則の方も多少変わって、確か紙に代わってic保険証でもいいというよう に変わっていると思いますし、これも先生のおっしゃるように私は個人的にとうの昔にやりたかったと思うわけでありますが、これもとにかく急ぐことでありまして、これによっていろい ろな基本的な健康情報が入りますから、医療機関の窓口で問診とかがかなり省けるのだと思うんです。そういった面での効果もあると思います。これは何が原因かわかりません が。
    福原委員
    今、それは継続しておられますか。
    喜多村総括政策研究官
    これは離れたのであれなんですが、多分継続しているのではないかと思いますが、実験ですね。
    福原委員
    情報公開などの関連がありますね。
    喜多村総括政策研究官
    そうですね。
    大澤会長
    それでは、以上で喜多村さんからのヒアリングは終わらせていただきます。お忙しいところ、どうも御出席ありがとうございました。
     では、次に今後の取りまとめに向けた専門調査会での検討等について御議論をいただきたいと思います。そこで、事務局からの説明をよろしくお願いします。
    上杉審議官
    それでは、御説明いたします。
     まず最初に、これまでの4月に中間報告を出して以降の動きについて幾つか御紹介させていただきます。中間報告は、内閣府のホームページに掲載して意見募集をしておりま す。そのほか、いろいろな機会にお配りをして紹介に努めております。その意見募集の締切りは6月末ですので、どのような意見が寄せられているかは次回、7月の会議に御紹介 できると思います。
     それから、経済財政諮問会議と政府税制調査会の関係でありますけれども、政府税調については4月2日に大澤会長の方からこの専門調査会の議論の様子を紹介していただ いております。それから、経済財政諮問会議については5月13日に福田官房長官から中間報告の内容を紹介しております。メンバーである牛尾議員から、男女共同参画会議の提 案は21世紀を示唆する大胆な問題提起だ。これを下にこれからの国づくりの基本計画をつくることは全面的に賛成したいという御意見もいただいて議事録に載って公開されており ます。両方の会議とも6月までに基本方針をまとめるということですので、次回の専門調査会でまた御説明ができると思います。
     さて、今後の進め方ですが、男女共同参画基本計画でこの影響調査という観点でどういうことを課題とするべきか。それで、それを平成17年までにやるということで、どういう課題 が提起されているかということを振り返ってみますと、税制、社会保障制度、賃金制度等、女性の就業を始めとするライフスタイルの選択に大きな関わりを持つ諸制度・慣行につい て、ライフスタイルの選択に対する中立性の観点から総合的に検討をするということで、非常に幅広い課題になっているわけであります。
     一方、4月に中間報告を出し、本報告へ向けて作業をするわけでありますけれども、どれくらいの日程がとれるかということを考えてみますと、従来しばらく前までは3月に中間ま とめで9月に本報告というようなことを言っておりましたけれども、中間報告が少しずれて4月末になりましたので、この本報告のまとめも年末、12月までという見通しになるかと思い ます。そういたしますと、仮に7月に次回をやり、それから8月はお休みをして9、10、11、12と月1回ペースで仮にやるといたしましても、最後の1回か2回は案文の整理というよう なことになりますので、具体的な課題についてきちんと議論をできる回数というのは意外と限られているわけであります。そういたしますと、中間報告を根っこにいたしまして、更にこ の期間にどれだけのものを加えて12月末の本報告とするかということになってこようかと思います。
     そこで、中間報告において取り上げた主な事項ということでどんなことを挙げたんだろうかということをもう一度見てみますと、税制については個人所得税、特に配偶者控除、配偶 者特別控除について集中してまとめております。それから、社会保障につきましては年金についてはかなり全般的に取り扱っていただきましたが、更にもう少し突っ込んで具体的に 検討をしていくということになりますと、理論的な詰めとかといったようなことでもう少し議論が必要な部分もあろうかと思います。
     それから、健康保険、介護保険につきましては中間報告では厚生年金と同様な問題があることから整合的な見直しが行われるべきである。必要に応じ、当調査会でさらなる検討 を行うこととしたいと、あっさりと書いておりますけれども、この部分についてどこまで検討をして提言をしていくのか。今日、手始めとして喜多村総括政策研究官のヒアリングをしたわ けでございますが、今後どういう点を課題として取り上げていくか。
     雇用保険につきましても中間報告では、当面その動向を見守っていくこととしたいと、時間もございませんでしたし、一言で書いてありますけれども、まずは実態がどうなのかという ことを今日、厚生労働省からヒアリングをしたわけでございますが、これを踏まえてどのような議論をしていくのかということがあろうかと思います。
     それから、雇用システムにつきましては企業の家族手当等についてはアンケート調査を行いましてかなり詳細に御検討いただきましたが、基本的な問題、日本型雇用慣行とか労 働形態といったことについては非常に幅の広い大きな課題でございます。個人の生き方、働き方など、社会全体との関わりを考えるということもございますし、中間まとめでは良好 で多様な労働形態の実現に向けて、そういう観点から今後必要に応じてそうした課題と環境整備について検討していきたいというふうな整理にしてございます。
     そういうことを中間まとめの状況を踏まえますと、今年12月までにまとめることとしては、恐らく税制社会保障、特に社会保障の部分で残った論点を整理して一つのまとまりを持っ た報告とするということ。そして、雇用システムについては大変大きな幅広い課題でございますので年明け、平成15年の方で恐らくは1年程度かけて議論を積み上げていくというよ うな進め方がよろしいのではないかと考えております。
     そういたしますと、この12月に出す報告は最終報告と呼んだこともありますけれども、そうではなくて、この影響調査会としての最初の第1回目の本報告というような形になって来 年以降も更に残った課題、つまり雇用システムについては引き続き検討するということではなかろうかと思いますが、この点についてそういうことでよろしいのかどうか。あるいは、 ほかにこういう点があるじゃないかということも御議論いただければありがたいと思います。
     なお、もう一つ別の課題であります自己評価システムにつきまして、以前一度資料をごらんいただいたこともありますけれども、もう少し事例研究などを行ってわかりやすくしてい く、あるいは各省庁でやってもらうための仕組みをどう考えていくかということも考えていくことが必要でございますので、事例研究等を行うためのワーキングチームを設けてはどう かということを会長からも御提案をいただいております。そのワーキングチームについては影響調査に専門的な見識のある方ということで、この専門調査会の委員以外の方も協力 していただいて、基礎的な材料をつくって作業をしていくというふうに考えております。
     そういうようなことで、御提案を申し上げたいと思います。
    大澤会長
    そこで御質問や御意見をいただきたいわけなんですけれども、時間がかなりきておりますが、2、3いただければと思います。いかがでしょうか。
     9月に本当に本報告だったら、まだデータがきていないのにどうやってシミュレーションをするのかという大問題がありますし、それは年末ということになったというのが第1点でご ざいます。
     もう一つは、自己評価マニュアルというのはやはり事例を入れないと各省の担当者の方々になかなか理解していただくというのは難しいので、比較的詳しい事例を盛り込んだもの にするためには、これは受け払いの方にもワーキングチームはあるわけですけれども、このマニュアルの方にもワーキングチーム的なものをつくって、そこで案をつくっていったら どうだろうかということでございます。ここの場にかつてお出ししたのはかなり簡素なものだったんですけれども、例が欲しい、例が欲しいという御意見が各省からあるようで、それは 当然のことなのかなと思います。いかがでしょうか。
     年金などは厚労省の審議会の部会の議論も一回、一回と進んでおりますので、タイミングを失しないようにこちらからは個人単位化ということと、あとは適用拡大や加入の魅力の 増加等は出したわけですけれども、例えばこういうモデルの年金にしたら中立性はどの程度かということを2つか3つ、例えばスウェーデン型とかドイツ型とかアメリカ型とかだった ら中立性の観点からはどれがどんなふうな状況なのかというふうな形で、ある種の意見を出していくというのはできるのかなという気はするんですけれども、それが12月ぐらいまで の時間を考えたときにはできる精一杯のことかなという気はいたします。
    坂東局長
    税、社会保障、雇用システムと非常に大きな風呂敷を出したわけなんですけれども、とても年内までにはその3つの分野すべてはできないのではないか。それで、12 月までには中間報告を元にして今、会長の方からお話がありましたように、年金の部分を中心の提言にしていただく。できれば、健康保険の個人化の部分までいけるかどうかです が、年金だけでも今タイミングとしてはいいんじゃないかという気がします。そして、来年以降もこの専門調査会で雇用システムですとか、あるいは今まで十分検討できなかった健康 保険等々の分野についてももう少し改めて検討をするということが現実的な案ではないかと考えております。
    大沢委員
    1つだけ、そういう年金に焦点を置きながらも雇用システムとの関連は見ていくというところで、やはり関連性は見る必要があるかなと思いました。
    坂東局長
    そうなんです。結局根っこのところは雇用を解決しないと、年金だけ当たっても不平等が拡大再生産されてしまうということになりますので。
    大澤会長
    よろしいでしょうか。そうしましたら、ただいま御意見もいただきましたので、もう少し検討の進め方について考えさせていただきます。そして、委員の皆様には追って日 程等をお知らせしたいと思います。それから、ワーキングチームについてもこれは私の方で人選をして作業を開始し、ある程度結果がまとまったところで調査会に御報告したいと 思っております。
     それから、7月になりますと男女共同参画会議が開催される予定と聞いております。この調査会のこれまでの検討状況とか、今後の進め方について私から会議に報告をすること になろうかと思います。
     なお、中間報告を本会議に報告するというのはまだ正式にはしておりませんので、次回の会議で私から簡単に報告することになろうかと思います。
     最後に、事務局からの御連絡等をお願いします。
    事務局
    次回は、お手元に紙を配らせていただいておりますが、7月24日水曜日の10時から12時までということでよろしくお願いしたいと思います。テーマはまた追って御連絡さ せていただきますが、年金の議論ということで高山委員にお越しいただきまして、中間報告で足りなかった点などを中心に御説明をいただこうということにつきまして御了解をいただ いております。別途また御案内させていただきます。
     それから、お手元に議事録を配らせていただいておりますが、第10回の議事録、資料の3でございますが、これにつきましては御了解いただいておりますので公表という扱いにさ せていただければと思います。
     それから12回の議事録案について修正等がございましたら、事務局まで御連絡いただきたいと思います。以上でございます。
    大澤会長
    中間報告は今、意見聴取期間でして、今月末までなんですけれども、必ずしもたくさんの意見はきておらないようです。このごろパブリックコメントの素材というのが各 省から量産されているので、皆さんコメントするのも大変ということなんだと思うんですが、しかし、ある程度の御意見はいただきませんと今後の検討を進める上でもなかなか難し いので、皆さんお知り合いの方ですとか、いろいろなつてをたどって是非意見を出してほしいというようなご案内をしていただければと思います。
     では、これで影響調査専門調査会の第13回会合を終わります。どうもありがとうございました。

(以上)