- 日時: 平成14年4月24日(水) 12:30~15:00
- 場所: 内閣府3階特別会議室
- 出席者
- 大澤 会長
岡澤 会長代理
木村 委員
神野 委員
高尾 委員
橘木 委員
林 委員
- 大澤 会長
- 議事
- (1) 開会
- (2) 中間報告について
- (3) 閉会
-
(配布資料)
- 資料1
- 男女共同参画会議・影響調査専門調査会「ライフスタイルの選択と税制・社会保障制度・雇用システム」に関する中間報告(案)
- 資料2
- 第9回影響調査専門調査会議事録
- 議事内容
- 大澤会長
-
ただいまから男女共同参画会議の影響調査専門調査会第12回会合を開催します。
今日、中間報告を取りまとめたいと考えております。お配りしている報告書案は、前回
お示しした素案に対する調査会での御意見や関係省の意見を踏まえて修正したものです。
それでは、報告書案について事務局からの説明をお願いします。 - 事務局
-
では、一番上にあります「中間報告(案)」という資料をお出しいただければと思います。
前回御議論いただきました素案からの主な変更点を申し上げます。
まず、前文という題でしたけれども、この前の御議論のとおり「序説-本調査の趣旨と背景」という形に直しております。
それから、次のページ「家庭と地域社会の変化」のところで、「家庭運営への負荷」というのを「家庭運営の負担感」と前回の御指摘を踏まえて直しております。それから、「中立性 確保の意義」のところで、「中立性をできる限り確保すること」というふうになっておりまして、完全に中立性を確保することはもちろんできませんので、男女共同参画社会基本法で もできる限り中立性を確保するというふうになっておりますので、これからあちこちに何回か出てきますけれども、「できる限り」と入っているところもございます。それから、次の前 回の御意見のとおり「家庭の所得全体」を「所得合計」に直しております。
それから、次のページに移りまして、「社会的支援の整備と男女の柔軟な育児分担により育児負担を減少させる形で女性の就業の機会が増大すれば、少子・高齢化による生産 年齢人口の減少の影響を少なくできる可能性がある」。こういった文章も前回の御指摘を踏まえて入れております。
それから、次の「中立性確保は家族の結びつきを一層薄弱にし、少子化傾向を促進するか」の一番下でございますけれども、児童支援、特に育児サービス供給の内容を見ます と、いろいろな統計の取り方によっていろいろな見方ができますので、後ろの方につけました図表に基づきまして書いております。前回では支援策が低水準だから少子化が進むと いうふうに書いてありましたけれども、ここでは、むしろこう直すことによりまして、少子化対策として育児支援策が必要というふうなとらえ方もできるかと思います。
それから、(中間報告の趣旨と内容)でございますけれども、この前の御意見を踏まえまして、「第1に」、「第2に」という形に整理しております。
それから、次のページでございますけれども、前回の御意見を踏まえたローマ数字のi現状、ii政策等の方向というな書き分けになっております。それから、「1)就業」の「<2>雇 用・処遇の現状」のところで、新規大学卒業者の就職率を書いております。これは図表4にもございますけれども、昔はともかく、今は男女とも就職は非常に苦しくて就職率は落ち ているというようなことでございます。男女の内容は異なるかもしれませんけれども、いずれも就職率はバブル崩壊以降落ちてきているというような状況でございましたので、その 事実を書き込んでおります。
次の5ページでございますけれども、「これは女性パートタイム労働者において賃金率の引き上げに消極的な傾向が一部にあることも関係していると考えられる」。これは前回の 御意見を踏まえて加えております。
それから、税制のところで「新規学卒で入職した20代後半程度まで」、これは前回の御意見を踏まえて直したものでございます。
それから、一番最後のところで、「しかし近年は、男女を問わず新規学卒でもパートタイム云々」とございますけれども、この部分も前回の御意見を踏まえて直しております。けれ ども、被扶養者がどれぐらいの割合を占めるかというデータはありませんので、単にケースもあると考えられるとしております。それから、男女差については差はないのではないか とは思います。
次でございますが、「結婚を契機に退職する女性が増加したのか減少したのか不明である」。その場合のデータを探しましたけれども、適切なデータがございませんで、中間報告 の段階では、これを落としております。
それから、次の「3)出産・子育て」の「<1>退職するケース」でございますけれども、「妊娠・出産した女性労働者のうち、妊娠・出産で仕事を辞める女性は約2割」となっておるので ございますけれども、これは常用雇用者30人以上の規模の事業者に限っていえば、そうなるということでございますので、そのことを明示しております。
それから、前回の会議で、「出産・子育てで離職する女性は多い」。このことを記述すべきだという御指摘でありましたので、そういった形に文書を変えております。
それから、次でございますが、一番下の方の段落でございますけれども、育児休業の取得者の割合が56.4%と言われますけれども、これは制度の対象になっている労働者に 対する割合であるということを、この前回の御意見で出ましたので入れているとともに、期間を定めて雇用されたものは育児休業の対象から除外されていること。それから、反復更 新型の有期雇用者については、昨年の子育て支援対策を受けまして、育児・介護休業の適用の判断に当たり留意すべき事項が指針により明示されているようでございます。
それから、次のページに行っていただきまして、前回の会議で、育児休業取得者は年金の保険料の免除者でみて5%というようなご指摘があったかと思うのですけれども、ここで はより正確に、雇用保険から育児休業給付が支給されていますので、それが何万人ぐらいかを計算しております。これによりますと、出生者数の117 万のうち約8万5,000 人でご ざいますので、6.8 %程度ということになります。
それから、次の「厚生年金、健康保険に関しては」という段落でございますけれども、これは単なる事実関係の修正でございまして、下の方に「休業中の標準報酬も含めて年金額 が算定される」。こういった部分を付加しております。
それから、あとは文章で書いてあったものを数字で書いたというような事務的な修正でございます。
それから、次の数か月単位で有期雇用が繰り返される場合の厚生年金や健康保険の問題に対しては引き続き継続して使用されることが決まった時点で厚生年金や健康保険に 加入する扱いになっているということを加えておりますけれども、今後どうするかということは、後の対応策のところで出てまいります。
次に細かい事務的な修正がずっと続いておりますが「オ・全体的評価」のところが、前回かなり御議論いただいたことも踏まえた形にしております。「130 万円近辺には山はない」 というところは落しておりますし、それから、税制が影響していることを示唆させる。そういうことで、その後ろでパートタイム労働者の時間給のことについて触れております。「社会保 障制度は影響していない」というところは削除。それから、「しかし」は削除。それから、前回の「130 万円直前に単に山ができているわけではない」という文章を、「大きな山でできて いるというわけではない」というふうに直しております。
それから、雇用保険に関する議論でございますけれども、実はこれは全体の制度の趣旨ですとか、詳細とか、それから実態、これの全貌をまだ余りここで詰めて議論しておりま せんで、欠けている論点もかなりたくさんあるのではないかということでございます。例えば、失業保険の趣旨としては、単に生活を安定させるというだけではありませんで、生活安 定を図りながら早いうちに再就職を支援する。これが趣旨であるというようなこともございまして、いずれにしても、中間報告の段階ではひとまず落しまして、5月以降に再度詳細に 議論していただいた上で、その上でまとめる必要があればまとめていただければと思います。可能であれば、担当省庁から来ていただきまして、その制度の趣旨とか、詳細とか、運 用の実態などについて包括的に説明していただく機会を設けられればというふうに思っております。
それから、次の「6)引退」でございますけれども、退職年金制度についてアンケートでは聞いておりますが、このアンケートでは厚生年金基金、適格年金、企業独自の年金しか聞 いておりません。実は、ほかにも退職年金がございますし、それから一時金として支給される場合もあって、誤解される可能性があるということで、そこのところを正確に、このアン ケートではどういうふうなことを聞きましたという形に直しております。
それから、働いて自ら厚生年金に加入することの魅力を減じている、その内容をきちんと書いてございます。
それから下の方で単なる事実関係の修正や、正確を期して、いろいろ細かな修正がたございます。
それから、前回までに、退職後パート世帯では就業調整が行われているが、これにより減少した税額は生涯を通じて112 万円程度であるということで、パート世帯ですべて就業 調整をしているような書き方をしていたんでございますけれども、必ずしもそうではないということで、就業調整が行われた場合は、生涯を通じて112 万円程度税額が減少するとい うふうにしております。
それから、次の「ii・政策等の方向」の1)でございますけれども、これは従来の世帯単位での制度・慣習が実態に沿わなくなってきているということを、もう少しはっきりと書く必要 があるということで、より適切といいますか、より正確な表現に直しております。
それから、「世帯を念頭に置いたものになり過ぎていることにより問題が生じてきている」という内容を具体的にもっとはっきりと書いた方がいいということで、「個人のライフスタイル の選択に中立的に機能しなくなっている面もある」というふうに直しております。
それから、以前「世帯配慮の縮小を含め個人単位化を進めることを基本とする」ということで、世帯配慮の縮小というのは税制を指しますというようなことで、わかりにくいというよう な御指摘が前回あったかと思いますけれども、それを改めまして、「より個人を単位とする考え方を基本としたものにすべきである」というふうに整理しております。
それから、3)の雇用システムの総論のところでございますけれども、この調査会の視点であります就業の選択に中立ということを、まずきちんと書いた方がいいだろうということ で表題や文章でも就業に中立性を確保ということを入れております。その下の「正社員と非正社員といった区分を見直す」ということは、前回の大沢委員の意見を踏まえて直してお ります。それから、「また実情に沿わない賃金・福利制度を、世帯単位から個人単位に改めるべきである」。これは単に位置を変えてわかりやすくしたというだけでございます。
次に、企業の家族手当の方についてでございますけれども、以前は尚書きで「家族手当等の見直しのためにも、税制見直しが必要」というふうに特記して書いてあったのですけれ ども、むしろ、税制の見直しが必要だということを前段で述べておりますので、一緒に書いた方がいいのではないかということで、単に位置を移したということでございます。
それから、最後の結論部分で「中立性を確保するための制度の見直しによって生ずる負担増は、他の部分で相殺されることが~」の記述がございましたけれども、まず税制にお いては、中立性という言葉にはいろいろな意味がありまして、紛らわしいというのが第1点、それから、完全に相殺するというのはむしろ困難で、影響を調整するというようなところで はないかということで、4月2日の男女共同参画会議への当調査会からの報告書の文書に合わせて直しております。
次に、公的年金のところで「個人単位化を進めることが基本である」の次の文章は、前回の御意見を踏まえまして全部落としております。
下の方で「厚生年金の選択肢としての改善」という「選択肢」という言葉は、前回、これはわかりにくいということで、「選択肢」という表現は落とす形で修文しております。
それから、現行制度においても、2以上の事業所に適用されて、それぞれの適用基準を満たす者について、その報酬を合算して保険料を賦課する仕組みがあるということを書き まして、それを的確に運用していくことが課題であるというふうな形にしております。
次に第3号被保険者制度の見直しの項でございます。最初は厚生労働省の検討会の報告書を引用したのでございますけれども、いいところだけつまみ食いするといいますか、 いったん書き出すともっと書き込まなければいけなくなり、非常に分量が長くなりますので、あえて触れることはせずにまとめております。
次の段落の「ひとつの考え方」で始まる以下の段落でございますけれども前回の会議での永瀬委員の意見を踏まえて、「ただし、その際に幼い子供や要介護者の無償ケアにフ ルタイムに従事している者についての社会保障の在り方に関して配慮が必要との指摘もある」と直しております。
次の段落で「第3号被保険者本人に直接・間接に何らかの形では負担を求める」という段落の一番最後のところでございますけれども、前回も御指摘がありましたので、「この場 合、雇用関係のない妻に係る事業主負担が求められない場合、これに代わる財源をどこにもとめるかなどの課題がある」というようなことを書いております。
それから、次の段落の公的年金にミニマム部分を設定し、税方式をとるということにつきまして、前回もいろいろ議論があったと思うんですけれども、その議論も踏まえて、こういう 形でまとめております。
次に2番目の「このため」で始まる段落でございますけれども、「婚姻期間などの条件を厳しくした上で」というのは、前回の指摘を受けて削っております。
次の若年の遺族配偶者に対する遺族厚生年金、前回はいろいろ中身を書いておったのでございますけれども、余り、この会議で中身について詰めて議論をしていないということ もありまして、中間報告の段階では、とりあえず必要な見直しについて検討すべきであるというふうにまとめております。
それから、削除しておりますのは、雇用保険の前の方の並びでございまして、5月以降にその詳細を調べていただいた上で考えていくということでいかがかということでございま す。
次でございますけれども、「日本的雇用慣行」の今後の動向について述べた部分でございますけれども、これは前回の御指摘を踏まえた修正になっております。それから、「ワー クシェアリング」でございますけれども、たたき台をお示しして以降、政労使間で3月末に合意ができましたので、その合意について紹介した上で、それで欧州の例を見ていくというよ うな書き方をしております。
また会議でのご指摘をふまえ、段落の位置を移動してわかりやすくしております。
スウェーデンの状況については、これは前回いただきました岡沢委員の御意見を踏まえて修文したものでございます。
それから、前回の大沢委員の意見を入れたものでございますけれども、ひとつ御注意いただきたいのは、『そのためには、現在の正社員・非正社員という区分をなくし、同じ仕事に は同じ賃金が支払える「同一労働同一賃金」の原則そのものではないが、我が国の実態を加味して働きに見合った環境を整備していくことが必要である』というふうにしておりまし て、同一労働同一賃金に何らかの形で触れられないかということで、これくらいが今の段階では書けるぎりぎりではないかということでございまして、もしこんな不十分な形で触れる のであれば、むしろない方がよいということであれば、現在の正社員・非正社員という区別をなくし、働きに見合った環境を整備していくことが必要だと。こうする案もございます。
次の「その上で」ということで、「勤続年数が長いことから高賃金を得ている」以降の正社員とパートタイマーに関する記述につきましては、前回の御指摘を踏まえて直したもので ございますけれども、その段落の最後に、「特に、パートタイム労働者についての日本型均衡処遇ルールを確立するための法制の在り方について検討することが重要である」。と いう文書を新しく入れております。
以上、主な変更点について御説明させていただきました。 - 大澤会長
- いかがでしょうか。
- 木村委員
-
今日初めて見ましたので、今思いつくのが2点ですので2点を。
まずオの「全体的な評価」のところです。そこの2番目の段落で、「既にみたアンケートによれば」というところと「一方」というところがあります。そこのところで両方とも「家族手当が 支給される制限を税制に合わせている企業が多い」という表現と、それから、「家族手当が支給される制限を130 万に設定している企業も多い」、これは数の上から見たらどうなる んですか。圧倒的に103 万の方が多かったんじゃなかったですか。 - 事務局
- 数字はこの報告書でも触れております。図表もあるのでございますけれども、13ページの「2.家族手当」の1)の採用率のところに、「103 万円」を基準とする企業が78. 4%、「130 万円」を支給制限としている企業は13.9%と紹介をしております。
- 木村委員
- ここだけ読んでしまうと、これは同列に多いのかしらと思うので、やはり103 万円を基準とする企業の方が圧倒的に多いし、私が個人的に聞いた範囲でも、企業の方 で103 万円になったら家族手当がつかなくなるから、就労しないでくださいと妻の方に言ってくるとかというのが実際ありますので、家族手当が支給される制限を税制に合わせてい る企業が8割と圧倒的に多いぐらいの表現でここを書かれる方が正直なのではないでしょうか。「家族手当が支給される制限を130 万に設定する企業も多い」、これも全体的評価 のところなのに、あいまいな表現で残すのは私は危ないと思います。2割だったら2割。
- 大澤会長
- 今のは言葉遣いの問題なので、まず2段落目の「制限を税制に合わせている企業は多い」と、ここは「8割であり」というふうにしますか。
- 木村委員
- 家族手当が支給される制限を130 万円にしている企業も多いのだったら、5割以上かなと思ってしまうので、それはそう書く方がいいと思います。
- 大澤会長
- この「多い」というのはどう変えるんですか。13.9%というのはちょっと何か。
- 木村委員
- 多いと思わないですね。
- 大澤会長
- 多くはないです。
- 木村委員
- ないですよね。むしろ少ないですよね。圧倒的なのは103 万円だから、103 万円のところだけで書いて、130 万円のところには特に入れなくてもいいかなと思ったり。
- 大澤会長
- この「家族手当が」から「関わらずそうなっている」という、このセンテンスを削除する。
- 坂東局長
- どこですか。あることはあるんですから「企業もある」ぐらいにしておきますか。
- 木村委員
- 14%なら14%と書きますか。
- 大澤会長
- 一定割合、それとも14%程度あると書きますか。
- 木村委員
- 約14%であると。ここの箇所に私が何でこだわるかというと、今までこの問題をやってきて論点の一つなんです。どういう論点であったかというと、社会保険が全然就 労調整に影響していないという主張をする派は、130 万円のところで山がないじゃないか、103 万円のところではないか、だから社会保険は関係ないというのですけれども、我々に すれば、これかあれかの選択肢ではなくて、130 万円のところへ到達するには103 万円があるので、先に103 万円のところで既に就労調整を行っているのであれば、130 万円の ところには影響は出てこないということなんですね。私とすれば、3段落目のところで130 万円に限定する企業も十数%あると。
- 大澤会長
- 14%ある。にもかかわらず……。
- 木村委員
-
にもかかわらず、そうなっている。その理由として考えられるのは、103 万円のところで既に就労調整をしている人が多いためだとか、そういうところを一つ加えてほし いと思いました。103 万か130 万かという二者択一の条件ではなくて、一方をとることによって、一方をとらないという条件つきの選択になっているという。
あと一つですけれども、遺族年金のことです。ここで議論したことをどう入れるかということなんですけれども、所得の低い人に配慮しつつ時間をかけて遺族年金を徐々に徐々に 縮小して廃止していくということを議論したと思うんですけれども、それをどこに入れてあるかですよね。 - 大澤会長
- ここはむしろ離別の方なので、遺族年金については……。
- 木村委員
- なくなっているなと思ったのだけれども。
- 坂東局長
- 22ページです。
- 木村委員
- 22ページのどこですか。
- 大澤会長
- 上から9行目。
- 木村委員
- これは受給要件の差でしょう。
- 坂東局長
- この上のところでも魅力と感じていない理由に、これは逆の意味ですけれども、遺族厚生年金を選択するという、その影響は書いています。
- 木村委員
- 負担した保険料ができる限り給付に反映されるというのは、これはとりようによっては、両方もらえるようにするということもあるし、それから遺族年金を廃止して、個人 だけのものをもらうようにするという両方とり得るとは思うんですけれども、私は入れておく方がいいんじゃないかと。書き方の強弱はあると思いますけれども。
- 大澤会長
- 23ページのところに若年の遺族配偶者について記しています。だから、遺族年金は全体としてまとめて出てくるというよりも、3か所にばらけて出てきているというふう になっていますね。
- 木村委員
- 個人単位というからには、私はやはり遺族年金をどうするかというのも一つのトピックだと思うので、十分に時間をかけて生活設計に支障のないように移行していくと いうことも配慮しながら書いておけば、それでいいんじゃないかと思います。なぜ遺族年金にこだわるかというと、寿命が延びてきて、男女の平均寿命の格差が開いて、年金支給開 始年齢も延びますね。そうしたら女性が長生きするとして、自分が年金をもらう期間の中で、遺族年金のシェアというのがだんだん高まってくるんです。それがどうするかによって、 就業構造に影響を与えるというよりは、むしろ全体で一人一人で支える社会の方がいいんじゃないか。遺族年金がどうなるかによって、就業調整、中立でなくなるような仕組みは 変えようじゃないかということなんですけれども、だから十分時間をかけて。
- 大澤会長
- これは専門調査会としては、十分な経過期間や経過措置を設けてというところまでの合意したのですけれども、その後の経過をご紹介下さいますか。
- 事務局
- その後、経過期間がどうなるかとか将来の、例えば専業主婦といいますか、第3号被保険者と想定されるものはどれくらいとか、そういった見通しとか、かなり整合的に 詰めないと、なかなか何年というような形では言いにくいのではないかというようなことで、ここではとりあえず個人単位化を進めるというふうにしておるのでございますけれども。
- 木村委員
- ほかの配偶者控除のこととか、いろんなことについても決めなければならないことでいっぱいあるわけですね。そういうふうに遺族年金だけ詰めなければいけないとい うのはどこがおっしゃるんですか。
- 事務局
- 雇用保険とかほかにもいろいろございますけれども、中間報告でございます。
- 木村委員
- 我々委員の意見はこの間まで合意があったのだから、それは40年かけて徐々に徐々に所得の低い人に配慮しつつやっていくというのは、別に配偶者控除を廃止し て、ほかの給付でどうするかということと一貫して考えればいいので、なぜ遺族年金のところだけそんなに突発してなるんですか。
- 事務局
- その辺が、できるだけ時間をかけてやりますから、徐々に移行していくトーンは極力出すようにはいたしたのでございますけれども。
- 木村委員
- これも委員の意見だから書きましょうよ。この間、委員で時間をかけてということでは合意は得たのだからいいんじゃないの。
- 坂東局長
- 制度官庁の反対が予想されます。
- 木村委員
- でも、反対するのだったら、こんな会議、つくらなければいいのです。将来のことを考えてやれば。
- 坂東局長
- 書きますか。
- 事務局
- 書くとなると、今日、公表は無理だと思います。もう一度時間をかけてやらないと。
- 大澤会長
- 頑張って書いたのが、この若年遺族配偶者のところなんですよ。
- 坂東局長
- 頑張ってここまでなんですよ。
- 大澤会長
- 若年の遺族配偶者のところを必要な見直しについて検討すべきであるというのが、これはかなり頑張ってこうなったということなんですね。
- 木村委員
- 今の制度官庁の考えがどうであれというので、将来のことを考えるのにおかしいと思いませんか。
- 坂東局長
- 22ページの遺族年金の制度上の男女差は明確に書けます。
- 大澤会長
- そうなんです。
- 坂東局長
- 若年の配偶者、遺族年金についても検討はすると。
- 大澤会長
- これも同じことなので、22ページに書いてある制度上の男女差というのは、さっきの若年の遺族配偶者というのと重なることなので、要するに若年で遺族配偶者になり 得るのは女性だけですからね。
- 木村委員
- 若年の遺族配偶者、この意味がそもそもわからなかった。若年の遺族配偶者というのは若い妻という意味ですか。
- 大澤会長
- そうです。これは22ページの遺族厚生年金の支給要件の制度上の男女差、要するに女性には年齢制限が全然ないけど、男性にあるということですね。ここと23ペー ジの記述はセットになっていて、その心は遺族年金はオプションでいいのではないかというところにあるので、その意味で、要するに公的年金で強制適用される制度としては遺族年 金廃止の方向が埋め込まれているんですね。
- 坂東局長
- 明示的ではないんです。ですから、もし本当に必要ではない人は、遺族年金を必要としない人はそちらを選べるオプションもあり得るべきではないかと。一方で、制度 官庁の代弁をいたしますと、遺族年金を非常に必要としている層もいると。
- 木村委員
- それはわかりますよ。だから、それは所得が低い人にはちゃんとした補助を与えればいいのであって。
- 大澤会長
- と同時に、要するに片働きのライフスタイルというのを選んでいる人にとっては、夫は、自分が突然死んだら妻と子どもはどうなるんだろうという思いから、遺族年金は 必要だというふうになるが、それをオプションにしたらどうですかということが今回の中間報告では埋め込まれている。そういう意味では、遺族年金、要するに強制適用される遺族 年金は廃止するということなんですよ。
- 坂東局長
- 強制からは外すのは、これは大変なことだと思うんですけどね。
- 大澤会長
- かなり大変な提案である。
- 木村委員
- 今は大変だと思うけれども、配偶者手当だって前は大変だったんだから。
- 坂東局長
- これだけ言うだけでも今は大変なんですよ。
- 木村委員
- でも、40年かけてどうのこうのと書くでも大変なんです。
- 大澤会長
- まあ、そうですけれど。
- 坂東局長
- 40年かけるかどうかというのはかなり……。
- 大澤会長
- オプションにするのだったらすぐできるんですよね。40年かけなくても。
- 木村委員
- オプションにするのだったらね。
- 坂東局長
- それも大変だと思いますけれども。
- 大澤会長
- 大変だと思います。それからもう一つ、一般の方がどう受け取るかという点で、遺族年金廃止という言葉を聞くと、今遺族年金を受けている人が自分が来月からもらえ なくなるのではないかと誤解してしまうのではないか。
- 木村委員
- それは書き方の問題ですよ。
- 大澤会長
- そういうふうに思う人もいるので、そういう誤解は避けたいというのはあります。
- 木村委員
- それはそのとおりだと思います。要らぬ誤解を受ける必要はないと思うんです。
- 坂東局長
- 問題提起は、私はこれで十分していると思うんです。
- 木村委員
- 若年の遺族配偶者の遺族厚生年金については一応見直しについて検討すべきである。
- 坂橘木委員
- 若年というのは何歳ぐらいを具体的に意味しているんですか。
- 坂東局長
- 年齢制限がないですから。
- 大澤会長
- 制度上の若年というのは、遺族になった時点で35歳以上だと、40歳から中高年加算というのが始まりますから、35歳と40歳というのが一つの目安です。別に25歳で 遺族になっても、遺族年金をもらえることには変わりはないんだから、中高年加算がつかないというだけのことです。
- 坂橘木委員
- むしろ生活保護でやる方がいいような感じがしますけどね、もし必要であれば。
- 大澤会長
- 生活保護か、それがしのびないという人は自分で掛ければいいという考えですか。
- 坂東局長
- 自分で働けばいい。
- 坂橘木委員
- ただ、そういうのをここで書けない事情があるんですか。
- 木村委員
- 何か橋渡しをしておきたいと思いませんか。こういうことで影響調査会が出て、社会保障有識者会議のときでも、非常に官僚の抵抗が強いときは芽出しだけでもやった んです。将来のことで。
- 大澤会長
- 芽は表に出ていなくても、22ページと23ページを読めば、これは遺族年金のオプション化を、少なくとも男性と同じように55歳まで年齢をそろえた上で、オプション化が 含意されているわけですから、決して遠慮はしていないと思うんです。その意味では。
- 坂東局長
- そうだと思いますよ。
- 大澤会長
- よく認められたと思います。
- 木村委員
- 20年後の制度でも、若い人にとれば、遺族年金は実質的なオプションになる選択もあるということで、その人が55歳になったらどうのこうのという話ではないんです ね。オプションの中には入らないということも当然あるわけだから。
- 大澤会長
- その部分保険料を安くしてもらいたいというか、遺族年金の部分というのは超過保険料にしてもらいたいわけです。
- 木村委員
- 明示的に遺族の部分と老齢の年金部分とオプションにしなさいと。
- 大澤会長
- 必要な見直しについて検討というのは、そのことを意味しているわけです。22ページに制度上の男女差を改善するよう検討進めていくというふうにありますから、この 2つがあれば、私はかなり大きな含意がここにあると思いますけど。
- 木村委員
- 私は入れるべきだという意見は変えるつもりはないけれども、やっぱりおかしいと思います。将来のことを考えなければいけないときに、今のどこの庁の上の方の人が そういう考えを持っていて、その考えに非常に影響されるというのはおかしいと。私はそういう考えなんですけどね。
- 坂東局長
- 我々としては、かなり将来について、恐らくフルタイム2人の人の場合は、オプションは選ばないでしょうからね。そういう人たちが増えていくことによって……。
- 木村委員
- シングルも選ばないですよ。
- 坂東局長
- 一方で、もしかして、どうしても選びたいという人はいるかもしれないわけですから、それの選択肢をなくするのもまた中立的ではないでしょうし。
- 木村委員
- 自分で備えられるような準備をしましょうと。
- 坂東局長
- ということで。
- 木村委員
- 私はそういう意見です。
- 大澤会長
- ほかにいかがでしょうか。
- 坂橘木委員
- 配偶者控除と特別配偶者控除の問題が出ているんですが、これを男女共同参画でみるのか、課税最低限所得を下げるという意味から評価するのかで私は書き方 が違ってくると思うんです。どちらの視点から出ているんですか。
- 大澤会長
- それは当然男女共同参画の視点です。
- 坂東局長
- これは男女共同参画会議の専門調査会です。
- 坂橘木委員
- 現在の論調は課税最低限の見直しの形で配偶者控除、特別控除と言われているじゃないですか。その点のことはわかりました。もう一つは、課税最低限所得を下げ たときに、配偶者の特別控除もそうなんだけれども、税率の見直しも必要だと思うんです。「税率」という言葉が全然ないので、やはり税率という言葉を……。
- 木村委員
- 税率の引き下げですか。
- 坂橘木委員
- はい。
- 木村委員
- 全体の。
- 坂橘木委員
- 全体じゃなくて、課税最低限所得を下げたときに税率は今10%でしょう。となると相当な増税になるので、やはり税率の見直しじゃなくて、下げるまで入れるかどうか、 それは会長に任せますが。
- 事務局
- それで、20ページの箇所に制度の見直しについては、その変更による「国民の負担に与える影響を調整するよう配慮すること」と書いてございますけれども、というの は、税率を下げることで手当するのか、あるいは、ほかの控除を広げることを実施されるかどうかわかりませんけれども、そういう形で考慮するのか。いずれにせよ、余り議論が詰 まっていないというのがまず第1点と、それとあと税率を幾らかにするというのは、必ずしも男女共同参画の観点からいいにくいところがありまして、とにかく変更によって生ずる影響 は何らかの形で調整しなければいけないというので、書けるところまでは書かせていただいたんです。
- 坂橘木委員
- そういう意味があるという。
- 事務局
- はい。
- 坂橘木委員
- そうですか。
- 大澤会長
-
むしろ税率が男女共同参画の観点から問題になり得るのは、課税最低限や控除を通じてではなくて、累進度がきついことによって片稼ぎ世帯への税率を重くしている 国もないわけではないので、税制における男女共同参画の観点から見た中立性を確保するというときの政策手段は複数あり得ます。日本ではこの所得控除、人的控除というとこ ろがきいているという、ワーキングチームでの検討結果もある程度ここでは踏まえられております。
ほかにいかがでしょうか。 - 林委員
- 29ページのところで、新しく加えられた部分ですけれども、『同じ仕事には同じ賃金が支払われる「同一労働同一賃金」の原則そのものではないが、我が国の実態を加 味して働きに見合った環境を整備していくことが必要である』という部分は、歯切れが悪いというか、ちょっとわかりにくいですよね。
- 大澤会長
- というか、常識の持主には何が言いたいかわからないことで、先ほど事務局が説明されていましたけれども、「同じ仕事には」から「そのものでないが」までのところを 削除して、「区分をなくし、我が国の実態を加味して働きに見合った」とつなげて全然構わないわけですね。ここは。
- 事務局
- そうです。あえて「同一労働同一賃金」をどうしても書こうとすると、こうなってしまいます。
- 大澤会長
- 掲げるとわかりにくい書き方しかできない。
- 林委員
- 掲げるなら、『「同一価値労働同一賃金」の原則そのものではないが』と書くならばまだわかるんですけれども、「同一労働同一賃金」の原則そのものではないと言った ら、これは私としては書いてもらいたくないということになってしまうんですよね。
- 大澤会長
- 削除するというのでいかがですか。
- 坂東局長
- 何とか「同一労働同一賃金」という言葉を残したいとしたら、余計なものがくっついてしまってかえってわかりにくくなるのではないか。
- 林委員
- どうせなら、「原則そのものではなく」ではなくて、そのものなんですよ。「ではなく」というのを削ってもらう方がいいですね。
- 大澤会長
- そこはバーターになっているわけです。
- 林委員
- 原則に我が国の実態を加味してと、こうなればわかるんですよ。
- 大澤会長
- 原則を適用するべくとか、それはちょっと無理らしいので、ここは削除で。
- 坂橘木委員
- 何を削除するのか。
- 大澤会長
- 『同じ仕事には同じ賃金が支払われる「同一労働同一賃金」の原則そのものではないが』というところまでを削除。
- 林委員
- 原則の次の、「そのものではないが」という表現を変えればいいんじゃないですか。これは労働基準法だってあるのに。
- 大澤会長
- これは正社員・非正社員という区分での「同一労働同一賃金」でしょう。労基法にあるのは男女同一労働同一賃金だけですから、雇用の区分とか、雇用形態とか、契 約の種類をまたいだ「同一労働同一賃金」原則というのは、日本の法令には書かれていないということになるので、こうなってしまうんです。
- 林委員
- しかし、ここはそのことについて圧倒的に女性が非典型労働の中にいるという前提で参画会議での議論をしているわけでして、そういう意味では、「そのものではないが」 じゃなくて、原則はあるが、我が国の実態を加味してというのは、それじゃないと余りにもないがしろにして国際条約の水準から離れていく。そのことが影響して、次もまた「特に、 パートタイム労働者についての日本型均衡処遇ルール」という、日本型ということによって175 号条約を外してしまうんですよね。その中身をね。こういうことになるんじゃないかと、 私の読み方はそんな読み方をしてしまったので。
- 坂橘木委員
- 具体的に「日本型」というのは何を意味するんですか。
- 林委員
- 「日本型」というのはつけるべきではないと思うんです。
- 大澤会長
- 私も「日本型」というのはとりたいと思いますね。
- 坂橘木委員
- これをつくられた方は、「日本型」というのは何を意味しているのですか。
- 大澤会長
- 拘束性の強さ・弱さという観点があります。ただ正社員は拘束性が強いことを勘案してとかと書くと、拘束の強い働き方を是認し、そのままにして、サービス残業もさせ 放題のようなことをそのままにして、パートにはそれがないから低賃金で当然だという類の話になってしまう。それはまずいので、拘束性というのを入れるか入れないかという対立 があって、それでこういう表現なんです。しかし「日本型均衡処遇ルール」という言葉はひとり歩きしますよね。
- 坂橘木委員
- 人によって日本型の定義が違うかもしれない。
- 大澤会長
- せめてここはスペルアウトをしたいか、それから上の文章を生かして、我が国の実態に即したとか、実態に迎合する必要はないのだけれども、我が国の実態に即した 均衡処遇ルールをとかというふうに。日本型といって、一つの単語になるとひとり歩きをして。
- 林委員
- そうなんです。ワークシェアリングのときも日本型といってやりかけたんですね。
- 大澤会長
- それで社員は拘束性が強いから、パートは均等処遇でなくていいんだという話になっちゃうのは嫌ですから。ここはスペルアウトして、「我が国の実態に即した」という ふうにするというのはどうでしょうか。
- 事務局
- このあとすぐ確認します。
- 大澤会長
- そうしてください。
- 林委員
- 「原則そのものではないが」のその一言。
- 大澤会長
- ここはこのフレーズ全体を削除するという選択肢になると思います。
- 林委員
- 同じ仕事には同じ賃金が支払われるよう我が国の実態を加味して、「支払われる」というのもとるんですか。
- 大澤会長
- 働きに見合った処遇というところでは一致できるんです。ここに我々としては「同一価値労働同一賃金」の原則というのを読み込むということだと、どうやらそういうこと らしいです。
- 林委員
- そうすると、「働きに見合った処遇(同一価値労働同一賃金)」というのはだめですね。入れてはどうでしょうか。それもだめですか。
- 事務局
- はい。
- 大澤会長
- ですから、「同一労働同一賃金」原則という言葉を残したいとすると、そのものではないがという言葉がくっついてきてしまう。そこをやはり削除して、後ろの「働きに見 合った処遇となるような」というのを我々としては大事にした方がいいんじゃないか。
- 林委員
- そうすると、「我が国の実態を加味して」というのは要りませんね。それになっちゃうと。
- 大澤会長
- これも落としていいですね。我が国の実態は後ろに即してといくからいいと、いう感じでしょうか。では確認します。「同じ仕事には」から「原則そのものではないが、我が 国の実態を加味して」までを削除して、「区分をなくし、働きに見合った処遇となるような環境を整備していくことが必要である」と、こういうふうにいたしましょう。後ろの「日本型」とい うのをスペルアウトしていいかどうかというのは、今問い合わせ中ですね。
- 坂東局長
- そうです。「日本型」だけをとって、均衡処遇ルールは。
- 大澤会長
- これは均等というふうにさせてもらえないと思いますね。今法律に書いてあることですから。この部分で大事なのは、「確立するための法制の在り方について検討す る」というふうに持ってきてくれたことで、ここは生かしたいと思うんです。だから、均等という言葉を入れるかどうかで争うのはある意味で不毛なので。
- 林委員
- もう一つ、先ほどの日本型の2つほど上のところ、右端に「良好で多様な労働形態の実現に向けて」というのがありますね。この「良好」というのを「良質」というふうに変 えたら具合が悪いんですか。よければそうしていただきたい。
- 大澤会長
- 「良好」という言葉は雇用機会という言葉にかぶさることが多くて、要するに報酬もいいし、やりがいもある仕事というようなものを良好な雇用機会というふうに言うこと が多いんですね。後ろが雇用労働形態なので、良好な労働形態というのは実はあんまり意味がないです。
- 坂東局長
- 良好で多様な一つの形容詞とみるということなんですね。
- 大澤会長
- そうなんです。
- 坂東局長
- だから、良質で多様な。
- 大澤会長
- とするかどうかですね。
- 坂東局長
- 「良質」と「良好」と意味が大分違いますか。
- 林委員
- 私が今まで「良質」ということをよく使ってきたから、私の気持ちになじむというぐらいの理由なんですけど。
- 大澤会長
- これは前のところはどうなっていましたか。
- 事務局
- 18ページの表題も「良好」にはなっているんですが。
- 大澤会長
- これは労使関係学者とか、労働経済学者がわりと使うんですね。この場合、「良好な」と。ここでも形態とはなっていますけれども、一番よく使われるのが真ん中辺に ある「その結果、処遇面で良好な処遇等の機会が増加し」、良好な機会というふうに大体セットで使われるんですが。
- 林委員
- 「良好」というのは相対的な感じがするんですね。
- 大澤会長
- まあ、そうですね。
- 林委員
- 「良質」というのが普遍的な感じがするんですね。
- 大澤会長
- 「良好」というのは機会とか選択肢にくっつく形容詞なものですから、「良質」というよりは、あれよりはこれがいいという話、おっしゃるとおりそうなんです。
- 林委員
- ここはそういう意味では、中の方はそれでいいかもしれないけれども、タイトルのところで、上は労働形態とすれば「良質」の方がいいかもしれないという、先ほどの28 ページと同じ気持ちが込められた方がいいというのが私の意見です。
- 大澤会長
-
あんまり使われないものですから、何だそれと言われそうな気もするんですね。ここは「良好」でいかせていただいてよろしいでしょうか。
18ページと28ページと併せて読んでもらうと、ここにも正社員と非正社員といった区分を見直し、働きに見合った処遇というのが出てきますので、言わんとすることは明らかである というふうに思います。
高尾委員、いろいろ御意見をいただいて、ファックスやメールで一定のやりとりがなされてはおりますけれども、帰属所得について何かございましたら。 - 高尾委員
- プロに話をするにはあれを書かないとだめだとおっしゃったので、私はそれ以上は言えないかというふうに思っております。本当は削除してほしいですが。
- 坂橘木委員
- 何ページですか。
- 高尾委員
- 19ページの税制の具体的方向のところで、2番目のパラグラフの後半の方です。
- 大澤会長
- 『「帰属所得」があるにもかかわらず』~というところです。
- 高尾委員
- 私は今後、帰属所得に課税するというような話はしていくべきではないというふうに思っているものですから、今までの税制の議論の中でこういうことがずっと出てきて いるので。
- 事務局
- 帰属所得に現実に課税するということを全く前提せずに、できないことを前提にこういう理論的な議論をしていらっしゃいますので、それを紹介したということなんですけれ ども。
- 高尾委員
- 影響調査専門調査会の中では一度もそういうふうなことは出てこなかったし、諸外国にもそういうことはないんだというふうに、ただ、ここの部分を一般の人たちが見 たときに、何かまかり間違って、逆にここの部分が今後税制を改革していくときに取り上げられて、かえって帰属所得に課税するようなことが出てきたら女性にとって非常に不利だ なというふうに思ったんじゃないかなと思うんですけれども、とりあえず納得したので、そのままになってしまったんですけれども。
- 林委員
- ここ3行を書く必要があるんですか。「更に」というところから「といった考えもある」という20ページの3行。今議論されているのはここですよね。帰属所得云々という。
- 高尾委員
- そうです。
- 林委員
- ここの3行を書かなければいけないのかどうか。
- 大澤会長
- 「帰属所得」という言葉がセンテンス全体で必要なのかどうなのかという。
- 林委員
- いなかったのか、既に議論されたことなのか。
- 高尾委員
- カットした方がいいんじゃないですかとお願いしたんですが。
- 事務局
- 政府の税調ですとか、そういった場ではこういう議論もかなり出てきてはおりますし、あと神野委員の方から、分業の利益が大きいというので、担税力があるのにかえっ て減税されて、この考え方も書いたらどうかというような御意見をいただきましたので書いております。
- 大澤会長
- これは配偶者控除や配偶者特別控除を圧縮するとか見直すという議論をしますと、最低生活費を保障している部分に手をつけるとか、担税力がないではないかとい う議論があって、それでこの控除は当然の制度だという擁護論が必ず出てくるので、それに対しては、むしろ帰属所得があるのにかえって減税されている、分業の利益があるのに かえって減税されているというふうな議論はあり得る。担税力がないのに控除を圧縮するのかという批判に対する反論ということなんです。必ず擁護論が出てくるので、そこはあら かじめ書いておこうということです。
- 高尾委員
-
結果としては、見直しをしようと言っているので、私としてはいいんですが
、本当だったらかえってない方がもっとすっきりするのではないかというのがあります。本来それは自由な選択の中で男女が話し合ってお互いに受け持っていくところに意味があ る。どんな家事が省力化されても、あるいは外注化されたりしても必ず残るのであって、必ず残るものは男女が協力し合って、話し合って負担していく。人間として生きていくときに 価値も出てくるというふうに思うんです。だから、そこには絶対課税したりとかそういうものではなかろうと。今後はそういうものには絶対なっていってほしくないんですよね。だから、 ここにはぜひ書かないでほしいという、逆に浅くとって、そうだったらもっと片働き世帯に課税していけばいいじゃないかと、納得できるじゃないかというようなことになってしまうと本当 に困るなという気がします。この辺があいまいであると、私たちは取り上げませんけれども、実際誰に課税するのかというところがすごくあいまいになってきてしまっていると思うん です。やはり女性に対してきちんと課税していくということにならない。事務局から、プロの方々にはこれを書かないと話を聞きましたが。 - 大澤会長
- 神野委員が、ここはとにかく入れておいた方がいいという御意見です。
- 岡沢会長代理
- こういうのは自分の書く本じゃないから、グループワークで書くものというのはものすごく難しいですよね。どこまで言っていいのかというのがありますし、自分の 名前だけだったらこう書くのだろうけれども、グループワークで書けば、こうなるから仕方がないかなという部分があるから、なかなか全体としてのコンセンサスで議論を進めていか ないと。私が今感じているのは、25ページの、日本的雇用慣行の変化の兆しというのは、ここで一言も言っていないが、労働観が変容しているということがベースになっていて、労 働観が大幅に変容していて、仕事が人生ではないんだという価値観がかなり定着しているということが背景になって、それが労働時間の短縮や年休の消化率が向上しているとい う、そして社会全体としてのワークシェアリングの客観的前提ができつつあるんだというようなことを書いていた方がよかったなと。
- 大澤会長
- 年休の消化率というのは目に見えてアップしていますか。
- 岡沢会長代理
- していないんです。
- 大澤会長
- まだ半分残している状態ですよね。
- 岡沢会長代理
- 平均すると、まだ五十三、四%です。
- 大澤会長
- おまけにサービス残業は増えているし。
- 岡沢会長代理
- 結局、北欧型でやるとか、オランダなんかも北欧と言っていいと思うんですが、北欧型の場合はほとんどは労働時間の短縮と年休消化率のほぼ100 %というの がベースになっている。サービス残業が他人の労働権を奪うんだという認識になっているから、その辺が、年休消化率が今のところ、五十三、四%のところというのは非常に難しい と思うんです。前進するためには。
- 大澤会長
- なかなか変われないというのが「家庭と地域と社会の変化」という箇所に書いてあります。その2段落目です。経済社会の成熟化・国際化が変化を迫っているんだけ れども、景気が低迷して競争が激化する中で、今までの勤務先中心のライススタイルを変更することは容易ではないと、それが職場でのストレスになっているみたいに書いたんで すけれども。先進国に共通したものとしては、おっしゃるような労働というか、職業一辺倒の生活ではなくて、もっと多様なゆとりのある生活というふうにいっているのでしょうが、日本 はそう言われて十年近く経って、この不景気の中ではそんなことも言っていられないという感じですので。
- 林委員
- バブルの頃に言っていたのは、本当にその気で言っていたと思うんです。ところが、それが崩壊してからは、まさに不払い残業でも率先してやるぐらいやらなきゃ僕の権 利はなくなっちゃう、私の権利はなくなっちゃうという感じで、人にとられては困るという意識で不払い残業をどんどんやっている。
- 大澤会長
- 不払いの朝早出というのもあるようですし、7時ぐらいから行って仕事をするというのもあるようですから。
- 事務局
- 先ほどの「日本型均衡処遇ルール」を「我が国の実態に即した」と直せるかどうかについて、即答できないといいますか、直すとなると、やはり組織で協議してということ になってしまいます。もし直すのであれば、これも今日の発表の機会がまた延びてしまうということになってしまうのですが。
- 林委員
- 理由はどうしてですか。日本型均衡処遇ルールという、「日本型」というのを、ほかに変えては困る理由というのはどういうことにあるんですか。
- 事務局
- 発表できないといいますか、日本型均衡処遇ルールを確立、こういう文章を一旦省内で固めていますので、それを変更すると、確認をとらなければいけない。それが短 時間ではちょっと無理だと、手続的に申し上げればそうなんですが、中身については変わりはないような気もするんですけれども。
- 大澤会長
- 「日本型均衡処遇ルール」というのは、連合が了承している理念なんですか。
- 林委員
- 今、連合がと言われたら、了承したかどうか知らないと言った方が正確なんですけどね。
- 大澤会長
- 厚生労働省がそれで確立しているというのだったら、それは労使が一致しているということを普通は意味しますよね。
- 事務局
- パートタイムの研究会でこういう用語が使われています。
- 林委員
-
パートタイム研究会報告の方向なんですね。
ここは影響調査会でしょう。そんなに各省庁の使ったものを変更してはいけないというほどの縛りがある中での議論ではなさそうに思うんですけれども、とんでもないことを書くなら 別ですけれども。 - 大澤会長
- 「パートタイム労働者についての」から「法制の在り方」までというのはワンセットの言葉なのですね。だから、ここを修文するとすぐに公表できなくなってしまうのです。
- 事務局
- 全部落とすというのであれば、それはそれで、大丈夫だと思います。
- 林委員
- 法制の在り方、ここはどうしても入れてもらいたいという気がします。「日本型均衡処遇ルール」というのが一つの固まりとしてあるならば、それはそっくり違うものにする なら可能なんですね。
- 大澤会長
-
だめでしょう。「法制の在り方」というのもかぶっているんです。それ以外の言葉に変えたら、そんな法制の在り方について検討するという合意はできていないという か、そんな話にはなっていないというふうになってしまいますからね。ここは拘束性をポジティブに評価するような表現は入れなかったということで、法制の在り方について検討する が重要であるからして残すと。ただ「日本型」というものついて、我々はコミットしているわけではないというようなところですかね。拘束性について配慮するという言葉は落としたとい うところで歩みよるということですね。この文章を落とすのはまずいんですよ。せっかく法制の在り方について検討するところまで行ったのだから。これは要するにパートタイム労働 法の改正をするということでしょう。それは93年に立法されてから3年後見直しといってきて、もう9年、その間一回も手がつけられなかったので、今回それをやると言っていることは 重要ですから。
林委員どうですか。 - 林委員
- 例えば、加えたらどうなりますか。先生がさっきおっしゃったパートタイム労働者について我が国の実態に即した日本型均衡処遇ルールと。
- 大澤会長
- いや、それは意味がないでしょう。「日本型」をとるというところに意味があったんですけれど。
- 林委員
- 私は「日本型」をとるというのが一番最初の提案なんです。法制を残す意味を重視することでパックで残すと。問題意識は持っていますというふうにどこか書きたいとい うか、記録には残したいですね。
- 事務局
- 議事録はもちろん残ります。
- 林委員
- それで中間まとめを出した段階で、まだいろんな方々から意見をもらうことになりますよね。
- 大澤会長
- 「日本型」とは何型かという意見が多ければ……。
- 林委員
- そういうところでどんどん出てきたならば、そのことを若干手直しせざるを得ないということだってあり得るという期待を込めて了解します。
- 大澤会長
- 「良質」というところも、「良好、良好」とばかり言っていないで、「良質」を目指すべきだと御意見をいただいたことは、当然、記録に残っていますので。
- 高尾委員
- 22ページの御説明をいただいてもいいですか。第3号保険者制度の見直しのところの3番目のパラグラフの一番後ろのところは新しく入ったんですか。
- 事務局
- 前回の素案の段階ではなかったんですが、林委員や福原委員からの御意見もありましたので、こういった観点も紹介しているということでございます。「高齢時の遺族 年金は不要となりうる」、これは木村委員の御指摘で落としたものでございます。
- 高尾委員
- 「高齢時の遺族年金が不要となりうる」という記述を落とすというのは、このとおりでいいんですが、「夫婦の合意した妻分の保険料を、妻の保険料納付の記録に振り 替えることもできるようにする」ということはどういうことか。
- 事務局
- これは素案でもこのまま書いてございました。
- 高尾委員
- といった方法があると、ということは。
- 林委員
- 労使で折半で保険料を払うから、前の方に書いてあるのは雇われている側の分の負担のことを書いてあるんですよ。後半に付け加わったのは、事業主負担分について どうなるのという、その部分です。
- 高尾委員
- 夫婦で、例えば分割した場合に、既に世帯主に対して払われていたお金の話でしょう。そうじゃないんですか。
- 大澤会長
- それは両方の考え方があるんです。要するに保険料は折半しているといっても、その分基本給を削られているのであれば、それは賃金パケットとして見た場合には事 業主負担分、本人負担分ということではなくて、17.35 というのを雇用者が負担している、雇われている人がね。それを妻と私的に分けるということについて……。
- 高尾委員
- 私的に分けるのだから、全然事業主は関係ないんじゃないかと私は思ってしまうんですが。
- 大澤会長
- 私も実は個人的にはそう思うんですけれども、この議論は結構どこでもなされます。
- 林委員
- 大澤会長の回答は確かにこの間そういうふうに、aさんという人の分について事業主がそれだけやっている。この部分について、この中を二人で分けるのであって、ここ のところから2倍に負担が増えるわけではないからという説明が先生の方からあったと思うんです。
- 大澤会長
- この議論は年金分割のところを言うと必ず出てくるので、配慮していないわけではないということをここで示している。
- 高尾委員
- なるほど。そういう意味で私的に割ったにしてもやはり入れなければならない。
- 大澤会長
- ほかの説明の仕方もあるんですよ。要するに片働きというのは、妻がいて初めて一人前で働いているのだから、会社は内助の功によって利益を得ているので、負担 するのは当然、こういう議論もあり得るわけですけれども、ただ、こういう問題は常に指摘されるので、頭にちゃんと入っていますということではあるんです。
- 高尾委員
- 私的に分割するんだから。
- 大澤会長
- 大きなお世話だと。
- 高尾委員
- またそこで文句がついたら嫌だなという感じなんです。
- 大澤会長
-
今日も大変実質的な御議論をいただきましたが、更に何かございますでしょうか。
よろしいようでしたら、実質的な御議論を最後までいただいたということで大変ありがとうございました。
それではこれをもって、最後の31ページの1行半分の削除というのがございました。また、8割でありと、約14%あるというふうに改めます。
以上の修正を盛り込んだものをもって影響調査専門調査会の中間報告とさせていただきます。
昨年5月から長期間にわたる御審議、特に先月、今月は2回ずつの会議を持たせていただきましてどうもありがとうございます。中間報告については、この会議の終了後、私が記 者会見を行って公表するということになっております。また中間報告は内閣府のホームページに掲載したり、関係各方面に配布したりして、6月末くらいを期限にして一般からの意 見を募集したいと思います。どうぞ関係の各界、各団体などに御案内をいただいて、積極的な御意見をいただけるように、これも御協力いただればと思います。そうした意見を踏ま えて、また最終報告に向けて御審議をいただきます。今後ともよろしくお願いしたいと思います。
事務局からの連絡事項をお願いします。 - 事務局
-
終わったばかりで恐縮でございますが、次回以降については改めて調整させていただきまして御連絡させていただきます。それから、4月14日、前回の議事録の案がで きておりますので、修正等がございましたら、できれば5月1日までに見ていただければと思います。
以上でございます。 - 大澤会長
-
意見募集をしている間の専門調査会の進め方についても御意見があれば、ちょうだいしたいと思います。一応今日の中間報告にも更なる検討を行っていくとか、今後 検討深めていくというふうに書いてある箇所はそれに該当いたしますが、御意見をいただければと思います。
それでは、これで本日の影響調査専門調査会第12回会合を終わります。長期間にわたり、中間報告の取りまとめに御尽力いただきましてどうもありがとうございました。
(以上)