第9回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成14年3月18日(金) 14:00~16:00
  • 場所: 内閣府第3特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      大沢 委員
      木村 委員
      神野 委員
      高尾 委員
      橘木 委員
      林 委員
      福原 委員
  2. 議事
    • (1) 開会
    • (2) 中間報告に向けた議論
    • (3) 閉会
  3. 議事概要
    大澤会長
    それでは、会議が成立することになりましたので、時間も参っておりますから、ただいまから男女共同参画 会議影響調査専門調査会の第9回会合を開催いたします。
     本日は、前回に引き続いて中間報告についての議論を行います。
     その議論に入る前に今後の進め方について、お諮りしたいと思います。当初のスケジュールですと、今日で実質的な審 議が終わって、3月28日に報告書をいわば承認するだけの会議、そして4月2日の男女共同参画会議に報告と考えてお りました。しかし、この間皆様のご意見などを伺っておりますと、今月中に図表も全部つけた厚めの報告書をまとめるとい うのはなかなか厳しいのではないかという判断に至りまして、4月2日の男女共同参画会議には、私が出席して本日まで の専門調査会での議論を短くまとめた文書を使って報告し、きちんとした中間報告書の取りまとめは、4月に入ってから時 間をかけて行いたいと考えるに至りました。というわけですから、次回の3月28日には、男女共同参画会議にこれまでの 議論を報告する文書についてご審議をいただきたいと思います。
     一方、今日までの議論を踏まえて、図表や参考資料もつけた完全な報告書の素案を事務局でまとめていただきまして、 その素案は4月に入ってから改めて御議論いただき、4月中くらいをめどに取りまとめられればと考えております。当初の 予定を変更することになって大変申しわけないですけれども、そういった段取りで、ここは拙速を避けて進めたいと思いま すけれども、御意見いただけるでしょうか。よろしいでしょうか。
     この間、大分事務局に皆様のもとを回っていただきまして、いろいろと御意見もいただいておりますけれども、まだ十分咀 嚼して盛り込むには至っておりません。
     では、承認いただいたということで、今申し上げたような段取りで進めていきたいと思います。
     それでは、本日の審議に移りたいと思います。資料としましては、基本的に前回お配りした「中間報告のアウトライン(た たき台)」を用意しておりますけれども、多少つけ加えて変更した部分がございますので、それらの部分を事務局の方から 説明をお願いいたします。
    市川参事官
    それでは、「中間報告のアウトライン(たたき台)」という目次がついた資料をお出しいただければと思いま す。
     前回のものと基本的には大きくは変えておりません。変更点でございますが、まず御指摘のありましたように目次をつけ たということでございます。報告書をまとめた際には、一般向けのわかりやすいまとめを作成したいと思いますけれども、と りあえず、現段階では目次ということでございます。それから、たたき台に前文をということで、前文をつけ加えております。 これは後で読み上げさせていただきます。
     それから、前回の会議で表現が不正確なために御指摘を受けた部分を修正しておりまして、そこの部分を御紹介いたし ます。それから税制につきまして、その後、委員の方から正確にするためにはこうした方がいいという御示唆がありまし て、その修正した部分がございます。
     具体的に御説明いたしますが、3枚目をお開きいただければと思います。これは前文でございますけれども、今日初め てお目にかけますので、読み上げることにいたします。
     前文
     ・1950年代半ばから70年代初年にかけて、我が国は、当時稀にみる高度成長を達成し、国民の生活水準は飛躍的に向 上した。この過程で、工業化に伴い都市部に人口が集中しサラリーマン化が進むとともに、核家族化が進展した。
     ・女性は専業主婦として家事・育児を担い、男性は家庭外で雇用労働に集中するという役割分担を行う世帯の比率が増 えた。職場においても、こうした家庭の実情を反映し、女性は補助的役割を担うケースが大半であった。そして、このような 役割分担を念頭において、様々な制度・慣習が形成された。
     ・しかし、経済成長率が鈍化した1970年代半ば以降、各世帯における子供数の減少や耐久消費財・家庭向け諸サービス の拡大・普及に伴い、有配偶人口に占めるサラリーマン世帯の専業主婦の比率は低下している。特に近年は経済成長 が大幅に鈍化し、マイナス成長の年が相次いでいる。企業は経済環境の悪化が続く中で、業務や雇用の形態の見直しな どを迫られている。家庭においても、企業収益の悪化などに伴い所得が伸び悩む一方、かつて専業主婦だったものが就 業を選択するケースは増大している。サラリーマン及び自営業の共働き世帯数がサラリーマンの専業主婦世帯数を上回 るようになった1990年代初年以来、かつての役割分担を前提とした様々な制度・慣行は、女性と男性の各人のライフスタ イル、及び世帯の実態に適合しない度合を広げている。とりわけ従来の制度・慣行が女性の就業を妨げる要因であること が指摘されており、少子・高齢化により労働力人口の減少が予測される現在、その見直しが不可欠になっている。
     ・女性の就業への中立性確保により、多様化する各世帯のニーズへの対応が可能となる。
     停滞する産業に代わり新しい成長産業が不断に登場するようになれば、労働移動の機会は増加し、家庭において一人だ けが雇用者である場合に世帯所得が大きく変動するリスク(危険)は高まる。そうしたリスクを分散させるため二人が働く ことを選択したいという家庭も増加しよう。妻に相応の所得がある場合には、夫は自らの所得の変動を過度にいとわず労 働移動の機会を活かすことできよう。また、二人が働くという選択肢は、結果として、家庭の所得全体の増大に繋がること も多い。一方、企業にとっても、有能な女性労働力の活用は、その死命を決しかねないものとなっている。翻って、労働力 は、資本や技術と並び、一国の経済成長を支える基本的な動力である。女性の労働市場参入の機会が増大すれば、経 済全体のパイの拡大に繋がる。育児負担を減少させる形で女性の就業の機会が増大すれば、労働力人口の減少の影 響を少なくできる可能性がある。これは、社会保障の持続可能性にも光明をもたらそう。女性就業への中立性の確保は、 家庭、企業、国、各レベルでの豊かさにつながる鍵である。
     ・このように女性の就業への中立性を確保することにより、男女共同参画社会の形成が一層進展することになる。
     ・当専門調査会においては、こうした観点から、制度・慣行、とりわけ女性のライフスタイルの選択への影響が大きい税 制・社会保障・雇用システムについて検討してきた。この度、その結果をここに中間的に報告する。
     ・この報告ではまず、ライフライクルの段階毎に税制・社会保障・雇用システムの現状を整理し、どのような問題点が生じ ているかを明らかにしている。
     更に、税制・社会保障制度・雇用システムが男女共同参画社会の形成に与える影響についてモデルケースによる作業 結果の報告書をまとめている。こうした結果を踏まえて、ライフスタイルの選択等に中立的な税制・社会保障制度・雇用シ ステムについて基本的な考え方をまとめ、その上で、各制度・システム毎の改革の具体的方向について述べている。
     ・本報告書を手がかりとして、各方面で、女性のライフスタイルの選択等に中立的な税制・社会保障制度・雇用システム についての議論が進展することを期待する。
     以上でございます。
     あと修正部分でございますけれども、いずれにせよ、1の「ライフサイクルの段階毎に見た税制・社会保障制度・雇用シ ステムの現状」の後に、最初の半分を占めております分析的な部分のまとめ、例えば何が問題なのかということを伝える べきかとは思っておりますけれども、まだ修正しておりません。
     次の3ページをお開きいただきまして、真ん中から下のところに下線部分がありますけれども、「入職の段階では8割が フルタイム」というようなことをつけ加えておりまして、前回不適切ということで御指摘いただいた部分を修正しております。
     それから次の「結婚」という部分の下線部でございますけれども、その後データを探ってみましたけれども、入職したコ ホートが時間の経過にしたがって、どれくらいやめていくのかというデータはなかなかいいものがありません。ということ で、関連データとして拾ってきたものを挙げております。これは女性離職者が前職をやめた理由のうち、「結婚のため」と いうものの経年変化を昭和43、平成4年、平成9年で見たものでございます。これが20~24歳において45.7%から 26.4%、20.1%、25~29歳において31.5%、32.4%、25.3%、30~34歳において10.0%、13.7%、15.5%と、こういうふうに 変わっておりまして、結婚年齢の遅れが反映されております。
     次の4ページでございますけれども、これも同様に、「育児のため」ということで女性離職者が前職をやめた理由を探っ てみたんですが、この経年変化でございますけれども、これが20~24歳で16.9%から12.7%、9.7 %、25~29歳において 42.5から28.6%、24.8%、30歳から40歳において40.0%から31.7%、27.2%というふうに減少してきていることが見てとれ ます。
     それから、4ページの一番下の(就業を継続するケース)についてですけれども、これも企業規模ごとに勤続年数が10 年を超える者の比率を見ております。大企業と小企業ではかなり違っておりまして、女性の常用雇用者のうち、大企業を 見ますと、30~34歳で勤続年数が10年を超える者が5割強、35~39歳で勤続年数10年を超える者は7割程度、ある程 度高いのでございますけれども、小企業について見ますと、30~34歳で3割弱、35~39歳で3割ということでございまし て、かなり企業の大きさで違っておるようでございます。新規学卒で最終的に何割程度が企業に「残るか」というデータは いいものがありませんで、精査している状況でございます。
     それから次の5ページでございますけれども、一番下には、「〔自ら希望して〕パートタイムでの就業を選択する傾向が ある」というような文面が続いておるのでございますけれども、これも前回、不適切というような御指摘があったかと思い ますので、修正しております。6ページの上の〔消極的な理由〕とか〔積極的な理由〕、これも修正しております。
     それから9ページに移っていただきまして、表題のところで、「企業の家族手当等」というふうに、「企業の」という言葉を 加えております。これは政府の児童手当などと混同しやすいということで、「企業の」ということをつけ加えております。
     それから11ページでございますが、下の方に「賃金・年金を含めたネットの受給額」というふうに、ネットには何が含まれ るか。今まで明確でなかったということで説明を加えております。
     それから、14ページに移っていただきまして、こちらの税制の具体的な方向でございますけれども、委員の方より、こう しないと正確ではないということで御示唆いただきましたので、それに合わせて、事務局の方で文章を考えてみたものでご ざいまして、必ずしもこれが正確な表現かどうかわかりませんけれども、まず最初の修正部分については、2分2乗法と いうのは世帯単位とは別と。最初の文章では、個人単位とは対極的な世帯単位の制度としては2分2乗法があるというふ うにしていたんですけれども、これをそういった趣旨で修正しております。
     それから次の下線部ですが、これはどういう制度が中立的でないのかということを明らかにするということで下線部を加 えております。次の3つ目の下線部でございますけれども、こういう考え方もあるということで、あるいは配偶者が専業で 家事に従事すれば、分業の利益が大きいと考えられるので、担税力があるという考え方もあるというふうにとらえておりま す。
     それから次については、これは用語上の問題とかもありまして、「専業主婦を考慮して配偶者控除が導入されたが」とい うような形に変更しております。それから配偶者控除、配偶者特別控除制度を見直すべき時期に来ているということは、こ れはどういう制度を見直すべきかということをつけ加えて明確にしております。
     それから次の最後の「・」の「縮小又は廃止により世帯配慮をなくすべき」と、最初の文章では、個人単位に近づけるべ きと書いておったのでございますけれども、もう既に税制については個人単位になっておって一定の世帯配慮がある。こ ういうのが正確な税制の記述なので、世帯配慮をなくすべきと直すべきであるということで直しております。
     それから、最後の長い修正部分でございますけれども、これはいろいろ書いてありましたけれども、ここに加えてござい ますように、「中立性を確保するための制度の見直しによって生ずる負担増は、他の部分で相殺されることが大多数の 国民に受け入れられるための条件であろう」というふうにした方がすっきりするということで直しております。
     以上が修正でございまして、特に後の文は修正してございませんで、前回のままでございます。以上でございます。
    大澤会長
    よろしいでしょうか。それでは、たたき台について御意見、御質問をどんどんと出していただきたいと存じます が、あらかじめ木村委員からは文書でいただいておりまして、席上に配付をされております。よろしいでしょうか。
     それで、どこからでも結構だと思うんですが、口火を切るというような意味で、木村委員にお出しいただいたものに基づ いて御意見を、まずは全体についてというのよろしいのか、あるいは各論をつぶしていってから全体をやった方がいいの か、どっちがいいでしょうね。
    木村委員
    どっちでもよろしいですけれども。書いていますけれども、口頭で言えば、そんなに全体を読んでみても時 間はかからないと思いますが。
    大澤会長
    じゃ、どうぞ。
    木村委員
    まず全体についてですけれども、やはり現行にかなりの問題があったとしても、我々が目指す制度改正は 20年から40年後の少子・高齢・人口減少社会に適合する改革の方向を打ち出すことを目的とするということを明確にす るということと、そして前回も申し上げましたけれども、個人単位化というのを明確にするんだと。その根拠も幾つかありま すけれども、政府関係においても、2000年9月に社会保障制度審議会が総理大臣への意見書で、「将来的に社会保障・ 税制ともその基本単位への個人へのシフトを明確にすべきであろう」ということになっていますし、2001年6月26日に個人 単位化を進めることが閣議決定されているということが根拠にあります。個人単位化の方向で、その点で出てくる問題点 を解決するという方向の制度改正がいいのではないかと思います。特に年金制度は、生活設計に関係するだけに調整期 間が長いので、早急に踏み出す必要があると思います。
     中立性を議論するときには、少子・高齢社会にふさわしい社会保障改革と税制の改革と2つとも見なければいけないわ けで、社会保障は社会保障自体でどういう問題を持っているか。税制は税制自体でどういう問題を持っているかという視 点がかなり必要だと思います。諸外国の年金保険料の引き上げを見ましても、いつまでも保険料の引き上げができるわ けではなくて限界がある。大体20%から22%ぐらい、スウェーデンは遺族年金を入れなかったら、16.5%というふうに限界 があるので、例えば厚生労働省が出した女性と年金の報告書からは、労働供給に中立的であるということに主眼を置い て、遺族年金と自分の老齢年金を両方とももらえるような方向を読み取れるのですが、果たしてそういったことが将来の 年金財政の面から見ていいのかどうか、そこら辺も我々は考えなければいけないのではないか。
     あと、回り回って税負担が重くなることによって働く意欲を阻害する可能性があるということとか、基礎年金の財源への 目的税型消費税の導入や厚生年金のみなし確定拠出型年金化なども含む年金財政の抜本的な改革をにらむ必要があ るということ。あと、ここで主に税制で関連するのは所得課税ですけれども、現行の所得課税は、大体所得500 万円以上 の人は納税者全体の3割に過ぎないんですけれども、所得税総額を9割を納めているという、基幹税でありながら納めて いる人が偏った税制になっている。これが果たして高齢社会にふさわしい負担配分のあり方かというと私は必ずしも望ま しくないと思っています。この一つの特徴は、税率のこともありますけれども、人的な控除が非常に高いということもあっ て、この点からも家族に対する取り扱いというのは見直す必要があるということを、やはり、ここに書くかどうかは別にしま しても、私たちの問題意識としては持つ必要があるのではないかと思います。
     それから、少子・高齢・人口減少社会で、ワークシェアリングと言われていますけれども、非正規雇用者で働く人が特に 女性の中で増えるということと、それから労働力人口の減少に対処しなければならないということも、当然ですけれども、 問題意識の中に入れるということです。
     今述べましたものが全体ですけれども、各部についてです。各部のライフスタイルの選択等に中立的な税制・社会保 障・雇用システムの基本な考え方で、「制度・慣行・中立性、個人単位化の関係」というのは、これは今お読みいただいた 中では12ページ3つ目の「・」、「性急で単純な個人単位化以外の手法を検討することが必要となろう」。こういうもって 回ったような言い方ではなくて、個人単位化に向けるんだというのは、これは基本的な方向なんだから、「性急で単純な」 なんて書かないで、生活設計に急激に変化を起こさないために、遺族年金などはある程度の調整期間を設けて、20年か ら40年程度かけて廃止して、所得の低い人には補足給付をする方法もあると、もっと積極的に書くということが第1番目で す。
     それから4番目の「・」です。これはもう要らないのではないかと思います。今までのこういう報告書を見てみると、自分 たちの見解に、自分たちというのはどこか想像してもらってもいいけれども、自分たちがその意見にあんまり積極的でな いところは、「国民的な議論を行い、結論を出す必要があるという考え方もある」というのが何遍も何遍も出てくるんです よ。だから、そういうのに乗せられることはないです。これは削りましょう。国民的な議論が必要というのは全般のことなん だから、ここに出てくるのは目的型の消費税を入れるか、個人単位で入れるかとか、そういうところをばかりなんですね。 だから、これは削るというのが私の意見です。
     それから4番目の税制で2つの「・」です。世帯合計での年収の逆転現象が生ずることは、解消されているというのがあ りますが、これは税理士さんなんかと話をしていると、総体として解消されたのだけれども、やはり階段はあるというので、 「総体として」というような言葉が必要であるということ。あと、これで税制は何の問題もないのかという話に、これで切って しまうとなってしまうので、後々書いてくださったところと重複するかもしれませんけれども、税制のこういったあり方が企業 の扶養手当等に影響している、あるいはパートの加入要件に影響している点が見られるということも、ここのところで書い ておく方が後々との整合性があると思います。
     今度は15ページです。2)の社会保障制度、アの基礎年金のところです。1つ目の「・」で、厚生労働省がこの間「女性の ライフスタイルの変化等に対応した年金のあり方に関する検討会」報告書で考え方の整理が行われて、「こうした整理を 土台に」と書いてありますけれども、あれは全く個人単位化しないという方向ですね。それを土台にしてもしょうがない。幾 つかの案というのが確かにありますけれども、わざわざあそこの報告書をここに取り上げる意味合いはないと思います。
     それで、2つ目の「・」の意味がよくわからなくて、国民的議論が必要とまたありますから、目的税型の消費税がだめだと いう話なんでしょうけれども、議論としては、基礎年金の目的税型を消費税にするという意見もはっきりと出てきているわ けで、そういった意見も入れずに、よくわからないこういった書き方というのは、ここは全面的に切るか、変えていただきた いと思います。
     それから、厚生年金の(適用拡大)。16ページの2つ目の「・」ですけれども、一番最後で「現行よりも中立性が高まる が、年金財政への影響等に考慮する必要がある」。これはもっともなんですけれども、私もそのとおりだと思うんですが、 これから非正規雇用者が増えるということを考えると、ここで終わってはだめだと。やはり適用拡大すべきなんだという姿 勢を明確にして、そのときには財政的に維持するために、例えば厚生年金、今、内部にある所得再分配の程度を緩和さ せるとか、あるいはスウェーデン型のような、厚生年金の上の部分は、みなし確定拠出型年金とすることも考えられる。 だから適用拡大して、また年金財政を維持する方向に向かわなければならないとか、もっと積極的な部分をあと2行ほど つけ加えてほしいと思います。
     それから、(選択肢としての魅力の増加)ですけれども、1つ目の「・」で、「厚生年金適用の魅力が問題となることはな い。長期的に、女性が男性と同様な条件の下で」これも意味がわからないで、今、厚生年金適用の魅力がなくなっている ことの一つは、結局、第3号被保険者問題とか、ああいう制度自体が持っているバリアもあるわけですね。だから「・」の意 味が私はよくわからないです。厚生年金適用の魅力を減じているのは、むしろ、現行制度の仕組みではないかという気が 個人的にはいたします。
     それから3つ目の「・」ですけれども、「現在、多くの女性が厚生年金への加入を魅力と感じていない最大の理由のひと つは、結局、配偶者が死亡すると、多くの場合、遺族厚生年金を選択し、自らの給付に結びつかないこととなる」。私もこ れは全く同感なんですが、あと20年、40年の社会を考えると、シングルも増えてきて、必ずしも遺族年金を残せないのに 保険料を支払う人も増えるわけで、ここの書き方というのは、もう少し、このまますっといったら厚生労働省の女性と年金 の書き方で、両方受け取る方向がいいのかという話になってしまいますので、別の私は遺族年金を40年ぐらいで廃止す る方が望ましいか、あるいは遺族年金が欲しい人には自分でオプションの保険料を払ってもらう方が望ましいと思ってい るんですが、両方もらうということに直結しない書き方をする必要があると思っています。
     それで、ウの方で離別と公的年金の5つ目の「・」ですけれども、これも今までの一連の書き方と同じような堂々めぐりで 男女の賃金格差があって当面がどうのこうのという書き方ですけれども、こういう書き方はあんまり発展性のない書き方 だと思うので、問題があることはそうだけれども、こういう方向をはっきり示すんだというふうな書き方に直して、堂々めぐり 的な書き方はやめる方がいいのではないかと思います。
     私はとりあえず以上でございます。
    大澤会長
    ありがとうございました。問題をはっきり出していただきましたので、議論の取っかかりになるかと思います。
     とりあえず今の限りで事務局の方から、そこはちょっと誤解じゃないかというようなところはございますか。
    市川参事官
    誤解というところはないと思います。
    坂東局長
    要するに国民的な議論をと言っているのは、ここではその方向性が出せるかどうかということで、先生方が 本当に意見がまとまって、ぜひ木村委員のようにやりましょうとおっしゃるなら検討する余地はあると思いますけれども。
    大澤会長
    あと中間報告ですから、必ずしも結論まで至る必要はないので、こういう議論をしていますということでいい わけですから。
    坂東局長
    ただ、「国民的議論」という言い方はちょっとごまかしっぽいですね。
    木村委員
    いつも書いていますよ。
    大澤会長
    決められないことは、そうやって投げ出している。
    坂橘木委員
    厚生労働省の検討会が、個人単位に反対というふうに理解できるんですか。
    木村委員
    読み取れば、書いてあるのは、遺族年金と自分の老齢年金の併給、それから厚生年金適用のパートの適 用を低めるということなんですね。遺族年金をなくすかどうかとか、第3号被保険者が自分の保険料を払うかというのは、 一つの個人単位化のメルクマールなんですけれども、それについては否定的なんです。現状ではどう、国民的議論を期 待したいという。
    大澤会長
    木村さんの今日のペーパーで、1枚目の上の方ですが、閣議決定されたというのは、これは何の閣議決定 ですか。
    木村委員
    税制・社会保障とも個人単位化を進める。その前のところが・・・。
    大澤会長
    それはペーパーの方に正確に載せてありますか。
    木村委員
    経済財政諮問会議が2001年6月に出した、いわゆる「骨太の方針」の中で、配っていただいた24ページの 下の段の2つ目です。社会保障関係以外では、経済財政諮問会議が2001年6月に出した今後の経済財政運営及び経 済社会の構造改革に関する基本方針において、働く女性にやさしい社会を構築するため、税や社会保障制度の見直しに 当たっては個人単位化を進めると。これが出ていて、税や社会保障制度の見直しに当たっては個人単位化を進めるとい うのが2001年6月26日に閣議決定されました。
    福原委員
    橘木先生、教えていただきたいところですが、木村さんのペーパーの中で、「諸外国をみても、年金保険料 の引き上げには限界があり」というところがありますね。これは年金保険料ばかりではなくて、医療保険も含め、社会保険 料すべてだと思うんです。ところが一方で、今、税制は簡素でしかもフラットな税制にしようということを考えているんです ね。税制での収入にも今の考え方では限界があるわけなんですね。それから一方、所得のある人たちの4分の1ぐらい は全く税金を払っていないということが言われていますが、そのうちのかなりの人たちは1日5,000 円以下の源泉所得税 もとられない。もちろん申告の必要もないような方々なんです。というようなことを考えると、両方とも限界があるということ になると、一体これはどういうバランスが一番望ましいのでしょうね。もちろん、どうにもならない点があるので、これは ヨーロッパ並みに付加価値税、あるいは間接税を上げるほかないと思うんです。また間接税を上げることが税の公正性と いいますか、必ずしも公平性ではなくて、節税、脱税等をできるだけ押さえるということから考えると、間接税の方がはる かに有効なことは間違いないと思うんです。それからまた直接税の場合には、徴税費用、あるいは徴税のための人員も かなりかかる。今、非課税所得を下げると言っていますけれども、下げた部分というのは膨大な人数に上がって、しかも、 この辺のところというのは非常に所得のとらえにくいところではないかと思うんですけれども、こういうところは橘木委員も 神野委員もおられるので、根本的に教えていただきたいんですけれども。
    坂橘木委員
    教えることはないですけれども、私も基本的には今言われた意見は、結局、間接税しかないんじゃないかと いうのが私の意見でして、所得税のシェアは減らしていく。それを消費税、私は付加価値税、あるいは支出税までいった 方がいいと思うんですけれども、日本は今5%で、諸外国を見るとほとんど、特にヨーロッパは10%を超えているという現 状であれば、日本も税率10%、これだけのサービスをやるから負担をこれだけやってくださいというような形で出していく 方が一番いいと思うんです。この委員会で、消費税で年金の財源を負担せよというまでは無理なのではないですか。
    福原委員
    その前に社会保険料の引き上げには限界があるということも言ってしまうのは、ちょっと言い過ぎではない かという気もしないでもないんですね。
    大澤会長
    神野委員の御意見を伺った方がいいと思いますが、相対的にどこが重くて、どこが軽いかということで言う と、日本は個人所得税が一番軽いですね。主要国の中で最も個人所得税の軽い国が日本である。それから、社会保険 料というのは西ヨーロッパ並みですから、それは非常に重くもなければ、軽いわけでもない。これに対して消費税はやや 安いけれどもというようなところだと思います。相対的に軽いところを引き上げるというので言えば、私は所得税をもっとと るべきだというふうに思いますけれども、このあたりは神野委員はどんなお考えですか。
    坂橘木委員
    私と神野委員は特に意見が違うから、神野委員は所得税だから、私は消費税だから、この調査会でコンセ ンサスをとるのは無理なんですよ。
    神野委員
    1つは、事実として今、大澤会長がおっしゃったように、所得税のgdp比に対するウエイトは、間接税の中 心国であるというフランス以下なんですね。
    坂橘木委員
    それは私も知っているんです。
    神野委員
    フランス以下なものですから、負担率を水平にしていく上でも、ある程度所得税を上げておかないと消費税 も上げられない。つまり、今の日本のように所得税が非常に小さい、ウエイトの小さい段階でもって消費税だけを上げてい くというのは、税の負担構造から言うと無理ではないかというのが僕の考え方なんです。だから、フランスでもスウェーデ ンでも消費税というか、付加価値税を上げていますけれども、それは一方でちゃんと所得税を上げている。つまり、もう少 し言えば、所得税がちゃんとあって、高齢化していくから、これからの公共サービスはどんどん消費税を上げていかなけ ればいけないというのは、それは事実だとしても、上げていく場合に、もともとの所得税が全然小さいと
     ころへもっていって上げていくわけですね。それはかなりの混乱を来す。
     それから、福原委員がおっしゃったのでいくと、税制の上限とか公的負担の上限というのはわからなくて、最初に出てき た説は、10分の1税というのがございまして、これは所得の10分の1が限度だと言われていたんです。それが今度はコー リン・クラークが、あれは25%が多分限度だと。だんだん上がっていっちゃうんですね。
    福原委員
    50%。
    神野委員
    あれは日本が言っているだけで、ほかの国は50%以上超えている。中身だと歳出を組み合わせて考えてい かないと。貧しい人々にも多くの負担を求めるような税構造をつくるのであれば、スウェーデンなんかでいえば、貧しい 人々に半分ぐらい戻していますから、戻すこととセットでないとだめだと。おっしゃるとおり、これから社会保障を充実してい くということであれば、消費税というか、付加価値税を上げていかなければならないのですが、付加価値税を上げていくの であれば、大澤会長がおっしゃったように、まず日本の場合には所得税をちゃんとしておく。抜け穴だらけにしないでちゃ んとしておい
     て、その上で消費税を上げていくというのが順序なのではないかというふうに思います。
     それからもう一つは、消費税というのは、所得税に比べて脱税がしにくく、ちゃんと納税されるというふうに考えられてい るんですが、あれはとられるところだけなんです。益税だけではなくて、今、不況でもって深刻化すると、源泉徴収の所得 税もそうなんですが、不況になってしまうと、例えば源泉徴収はしておいたんだけれども、それを納税せずに会社が倒産し てしまえば、労働者はちゃんとそのときに1か月分払っているのだけれども、後で会社に納めていないという現象が起きて いる。付加価値税で申しますと、1年に一遍の納税時期だったものですので、確かに集めているんですが、その集めた商 店がちゃんと納めたかというと、これは脱税率が24%かなんかになってしまったので、今年2回にしているはずなんです。 つまり1年分を横にとっておかなければいけないんですが、納税時期にちゃんととっておいてくれないものだから付加価値 税は納まらないわけです。ですから、そういう意味でいうと、本来の徴税率というのは、国庫に収まった額と国民が納めた 額との差額ですから、それをとってみると現在の日本の方式、つまりインボイスがちゃんと入っていない方式のもとでは、 必ずしも国民が納めた額と国庫に入った額との差額が所得税よりは効率がいいかというと、そこはなかなか議論のあると ころであるということだと思います。
    坂東局長
    本人の感覚としては、トウゴウサンピンとか、クロヨンとかという形で、所得税というのは、雇用者の所得だけ をがっちり押さえているのではないかというイメージがありますけれども。
    神野委員
    ありますね。ところが、トウゴウサンピンと言っているときのトウゴウのゴウが自営業者でサンが農民という ふうに言われていて、これは自家消費その他含めますからそういうふうによく言われるのですが、実際に農民の数はもの すごく減っていますから、それがある意味で過大に、つまり農民でも兼業農家ですから、所得の分は大体納められている んですね。それから農協を通した分は大体つかまってしまうわけです。そうじゃない集団出荷しない部分ですので、どこま でかというのは、これは統計がとりにくいというか、とれるのだったら徴税すればいいはずなので。
    木村委員
    福原委員のおっしゃったことについて、所得税の場合は、いろんな先生から意見が出ましたけれども、私も 余りにも負担が偏りすぎている。その主な原因としては、人的控除というのが非常に大きい。それをどうするかというのを 考えるときには、やはり家族に対する見直しというのと絡めてする方がいいのではないかと思っておりまして、消費税も 重々わかるのですけれども、基幹税の一つである所得税の負担配分の見直しというのはぜひ必要であると思っておりま す。
     それから、社会保険料のことですけれども、これは神野先生もおっしゃったように、どこがどの程度かというのは、確か にはっきりしたものはありません。だけれども、経験的にその水準までくれば、近年のドイツとかスウェーデンの動きを見 てみますと、ある程度引き上げられない水準というのはあるのではないかというふうに私は感じております。税も社会保険 料も結局、財布は一つのところから出るわけですが、長期的には付加価値税というのが我が国においても大きなウエイト を持つということも私も同感いたします。それで、報告書でそこは別に書くことを合意しなくてもいいとは思うんですけれど も、大体問題意識としては私は共有したいと思っていて申し上げました。
     あとの1つですけれども、橘木委員は目的税型の消費税について、長期的には消費税の引き上げはやむを得ないと 思っておられるわけですね。私が思うのには、その点で基礎年金の目的税型を消費税にするかどうかをここで意見の一 致を見ることは私は全くないと思っております。基礎年金の財源にしては、委員の中でこういう意見があって、こういう意見 があったというふうに併記をすれば済むことで、まず基本路線の個人単位化で改革の方向というものの大きな太枠をつく るのかというものの合意というのは、これは絶対要ると思うんですが、細かな制度については併記してもいいところという のはかなりあると思っております。
    福原委員
    要するに社会保障か税かということをここまで書き込む必要はないということなんですね。
    坂橘木委員
    いや、この中では意見の一致はないけれども、こういう意見もある、こういう意見もある、税という意見もあ る、消費税という意見もある、所得税という意見もある、いや、保険料でいけという意見もあるという併記でいいんじゃない ですか。
    福原委員
    一定の方向をここでは書く必要はないということですね。
    坂橘木委員
    合意があれば書いてもいいけれども、合意は無理でしょう。
    福原委員
    合意は無理ですね。
    木村委員
    並列で、私がなぜそういうことが必要だと思っているかというと、パートの加入者を増やして、仮にその提言 した、それ自体が制度をどうするんだという問題提起になるわけです。単に今のところ、パートの加入者を厚生年金で増 やすだけにしますと、所得の低い方たちだけがずっと入ってくるわけです。そうすると、今のように厚生年金が所得の低い 人が有利になるように設計されていますと、財政的にこれまた大変なことになってしまいます。それですので、所得再分 配の程度を緩和するとか、あるいはスウェーデンが行ったようなみなし確定拠出型に変えていくとか、そういった方向に問 題提起されたと一緒のことであると。一緒に考えているということは示す方がよろしいのではないかと思っております。
    大澤会長
    個人単位化というのが大きな筋であるということは、それこそ異論がないと思います。男女共同参画ビジョン にも書かれていることですし、昨年も閣議決定文書の中に個人単位化を原則として進めるというようなことで書かれており ますから。ただ、個人単位化するといっても方法が複数あるときに、なるべく実行可能性の高い方法、それからほかの政 策目的と抵触する度合いの低い方法を選ぶべきであろうというようなところで、いろいろと意見、議論が出てくるということ だと思います。ですから、今日、木村委員が書いてくださった個人単位化が太い筋であるということは、これはよろしいかと 思います。
    木村委員
    ただ、たたき台等を拝見しておりますと、現状がこうだから、こう足踏みするという堂々めぐり的な書き方があ るような気がしまして、それでは余り強い個性が出ないのではないかと思います。
    大澤会長
    あらかじめ反論を予想して、あれも考えた、これも考えた、これだってわかっているよというふうに書いている からインパクトが弱いということですよね。
    木村委員
    インパクトが弱いというか、私はそこに足踏みして止まりますという感じ。
    大澤会長
    そういうふうに読まれてしまう。全体についてイメージが出てきたと思いますので、議事を整理しまして、この たたき台のページに即して検討していただいたらと思います。前文は今日初めてでございましたので、まず2ページの1と 書いてある「ライフサイクルの段階毎に見た税制・社会保障制度・雇用システムの現状」というところで、前回からの変更 部分には下線が引いてあるという御説明があったとおりですが、木村委員のペーパーにも、ここには御意見がないよう で、3のところから入るわけですけれども、この1についてはいかがでしょうか。前文は今日初めての議論ということもあり ますので、後でというふうにいたしまして、まずは2ページから11ページまでの間でいかがでしょうか。
    神野委員
    細かなことですが、6ページ目のイの税制のところがありますね。ここは個人単位だが、世帯への配慮も含 まれている。それでいいんですが、世帯の配慮がいずれにしても、繰り返しているんですが、日本は過大なので、つまり 個人単位だが、例えば世帯の配慮が過大に含まれているとか、過大なあるいは過剰な世帯への配慮が含まれていると いうような文章を入れていただいた方がいいのではないか。あるいは極端に言えば、「個人単位にもかかわらず」とか入 れて。
    坂橘木委員
    あるいは「個人単位をうたっているが」でしょう。
    神野委員
    個人単位なのだけれども、本来起こり得ない、普通は個人単位であれば、同じ所得の共稼ぎと、同じ所得の 専業主婦のいる家庭とを比べたら絶対に共稼ぎ夫婦の方が軽いに決まっているわけですよ。個人単位なんだから一人 一人別々に。ところが、配偶特別者控除があるために、それが逆転してしまうという、個人単位ではあり得ない現象が起き てしまうということが問題なので、個人単位だが、「過大な」とか、「過剰な」とかを入れていただけないでしょうかということ です。
    坂橘木委員
    これも細かいことですけれども、3ページの4つ目の「・」、「近年の状況を見ると、フルタイムでは男女格差 は縮小傾向にある。しかし、パートタイムでは・・・」、これはフルタイマーとパートタイマーの間の格差という意味ですか、 それとも、パートタイマーの中で男女間格差なんですか。
    大澤会長
    表では、一般とパートの間の格差が示されていて、パートタイム同士の男女格差というのが指標になってい ませんから、それを示さないと、いずれにしてもはっきりしないと思います。
    坂橘木委員
    フルタイムとパートタイムの間では拡大傾向が見られるとしないといけないです。
    大沢委員
    次のところなんですけれども、労働基準法では女性であることを理由として男女の差別をすることを禁止し ているというのはそうなんだけれども、働き方によって合理的な差ができることをよしとされているというところが、書くべき かどうかわからないけれども、パートとフルタイムの賃金格差をどう考えるかというところで、現在解釈されている解釈の 方法というのは、正社員は拘束性があるが働き方をしていて、パートタイマーは拘束性がないというところで賃金に差が あっても合理的だという解釈がされているんですね。
    坂東局長
    たしかその拘束性というのは、職種を選ぶ自由がないとか・・・。
    大沢委員
    転勤がないとか、残業があるとか、そういうことも含めて、それがすごく私にはトリッキーというか、それを認 めてしまえば同じ仕事をしていても、賃金に差があってもいいという考え方になってしまうので、そこがパートを増やしてい る理由で、フルタイムとパートの賃金格差を認めている。拡大にまでつながっているかどうかというのはわかりませんけれ ども、差をそのままにしている理由だと思います。
    大澤会長
    フルタイム、パートタイム格差は広がっています。明らかに。
    大沢委員
    私が言いたいのは、条件を同じにしたときに、これは平均値で見た賃金格差です。ではなくて、同じ属性で あって、ただ就業形態が違うだけで賃金格差があるかないかという、その賃金格差が拡大しているかどうかというのはま だわからないわけですけれども。
    林委員
    多分3ページの先ほど出ていた「パートタイムでは拡大傾向が見られる」というのは、パートとパートの格差と いうよりも、私が考えたのは、フルタイムでの男女の格差は縮まっているけれども、パートタイマーの女性が増えることに よって総体としての男女の賃金格差が拡大しているという趣旨が入っているんだと。そういう実態なんですね。そういう書 き方の方がわかりやすいんです。
    坂橘木委員
    おっしゃるとおりだと思います。
    林委員
    そんな表現にしていただけないかと。
    坂橘木委員
    読みきれないですね。
    林委員
    結果的にパートの方が増えれば、それは低い賃金で、そこが女性がたくさんいるから、平均すれば、男女の賃 金格差は拡大しているんだというのが実態なんですね。
    福原委員
    それはわかりいいですね。
    林委員
    そういう書き方の方が私はありがたい。
    坂東局長
    そもそも就業時間が違うので、所定内給与の格差で見ると全然実態が反映していないんですね。
    大沢委員
    これは一応時間だけはそろえてある。でもわかります。実態が反映されていない。
    坂東局長
    平均給与総額の方がよほどいい。それから、恐らくここで2つ、均等法とか基準法で差別的取り扱い禁止と 書いてあるけれども、実態は違うというふうにお思いになるでしょうから、にもかかわらずというところをコメントをもう一つ つけ加えた方がいいかと思います。
    大澤会長
    法律はこうなっているというところに実態はと書き加えない方が物事を混乱させないので、それは「近年の状 況を見ると」というところの中に入れた方がよろしいのではないかと思います。「雇用形態の多様化等に伴い」とかというふ うにして、男女の実質的な賃金格差は拡大傾向にあると、そういうふうに書けば。
     先ほど税制のところに「過大な」という御意見をいただきましたけれども、11ページまでのところでいかがでしょうか。
    坂東局長
    結婚のためにやめる。この数字は余りうるさくないですか。
    大澤会長
    4ページあたりに下線が入って、3ページ、4ページに結婚のための離職とか、育児のための離職というもの の数字がうるさ過ぎないかということですか。
     離職理由ですけれども、「結婚のため」はどの年齢層においても減る方向にあるとして、直近のところだけ示すと。ちょっ と数字を少なめにするという。
    大沢委員
    ちょっと教えていただきたいんですが、結婚で退職する人は減って、子育てで退職している人も増えて、就 業を継続している人も増えているけれども、m字は以前として残っているということをおっしゃっているのかしら。
    坂東局長
    そういうことですね。谷は浅くはなっているけれども、分散はしているけれども、依然として存在はしている と。
    大澤会長
    下線部を加えていただいたのは、結婚のところも、出産・子育てで退職というところも、前は「ケースは目立 たない」とか、「約2割」とだけあったので、実際数字はどうなんだという御意見があったから、今回数字を補充していただ いたのですけれども、やや数字が多くなり過ぎたかなというところです。
    林委員
    その点について、多分、私が本当に結婚だけでこんなになっているかとか、育児の方も調べてほしいと言った と思うんですけれども、表現の仕方として、こういうふうに文章の中にずらずらとくさり状に書くというのは非常にわかりにく いんですね。ここは表にして入れていただけないかなという気がするんですが。
    坂橘木委員
    わかりやすいですね。
    林委員
    視覚的に訴えるものがないんですね。
    大澤会長
    報告書本編となったときには、資料編に表がつきますが、私は地の文というのは必ずなければいけないと思 います。表を見よというのだけでは報告書にならないので。
    林委員
    もちろん、そうなんですが。
    大沢委員
    もう少し整理して一文で。
    林委員
    ここはただの数字だけなんですよね。
    福原委員
    表にすれば、数字は要らないということでしょう。
    林委員
    そうなんです。そして別に増えているとか、減っているとか、徐々に何とかなっているとかということがあれば、 文章としてはいいんだという趣旨です。
    大澤会長
    各年齢層において低下しておりと。
    坂東局長
    そうでなくて、若い年齢層では低下しているけれども、30代前半では、その低下は低いとかというふうな書き 方、評価ですね。
    大澤会長
    若い層では低下したが、30代前半は上がっていますものね。
    大沢委員
    私の印象では、結構育児とか、結婚とかにかかわらず女性は流動化しているというか、やめる傾向というの は結構強いのかというふうに思うが、橘木委員は何か御存じでいらっしゃいますか。
    坂橘木委員
    一般的にはそうでしょう。男性よりも女性の方が離職率が高いですよね。それが結婚とか、育児とかという 以外の理由ですか。
    大沢委員
    はい。
    坂橘木委員
    それはそうでしょうね。
    大沢委員
    就業継続の方向というのが、継続する人と、継続しない流動化するグループとに何か二極分化しているよう な感じがするのですけれども、こういうことを言うことが一体どういう意味があるかということで、詳しく言うことだけがいいと は言えないかもしれませんけれども。
    大澤会長
    ここはライフステージ別に見ているので、結婚でやめているのか、育児でやめているのかというところにこだ わっていますけれども、そもそも継続就業が増えていないということを追求するのだったら、また別のとり方があるとは思 いますが。
    福原委員
    結婚とか出産でもってやめるということは、100 %でなくなってしまったんですよね。確かにそれをきっかけ にしてやめるということはあるのですけれども、全部が理由ではなくなってしまったんですね。
     私が館長をやっている美術館で1年間だけの臨時学芸員を募集したんですよ。1年間ですよ。もちろん、よければ2年 間、3年間続くかもしれないけれども、何の約束もしていない。必ず経験必要、上限40歳。そうしましたら、現職の美術館 の学芸員を含めて50人ぐらい応募があるんですよ。
    坂東局長
    一つのポストに。
    福原委員
    採用は複数ですけれどもね。その理由を聞いてみますと、今いるところでは勤続は保障されるけれども、自 己実現ができないというんですよ。つまり、いい仕事をさせてくれないというんですよ。だから、1年でもいいから、自分がこ れと思う仕事をやるようなところが見つかれば、そこで自分のキャリアがアップする。また次のいいところに行けるのでは ないか。しかし、それは保障ないのですけれども、そういう時代になってきたので。
    坂橘木委員
    そのとき、1年で契約はテニュアブルというのが入っているんですが、それとも・・・。
    福原委員
    入っておりません。
    坂橘木委員
    1年で絶対やめていただくという希望で出しているわけですか。
    福原委員
    こちらはするつもりもありますけれども。
    坂橘木委員
    それでも来ますか。
    福原委員
    来ます。しかも現職を持っていらっしゃる方です。
    坂橘木委員
    よほど現職の条件がよくないんですね。
    福原委員
    それが世の中なんです。
    大沢委員
    私も意識の変化を感じますけれども、若いとき、これだけ正社員で雇用が安定していて、賃金も高くて、社会 保険もあって、どうして派遣を選ぶんだろうというような人が派遣にシフトしていくことがかなりありますよね。全体とは言え ないけれども、意識が大分変化している。
    大澤会長
    それだけ女性人材確保に失敗しているということなんだと思います。
     1のところでよろしいようでしたら、2は、ワーキングチームの中間的作業報告ですので、御議論いただくまでもないとい うところかと思います。ちょっと時間の関係もありますので、多分、御意見がよりたくさん出るであろう3の方に入っていた だければと思います。
     木村さんの御意見ですと、12ページの一番下の「・」などは削除と。それからその上の「・」の「性急で単純な個人単位化 以外の手法を検討することが必要となろう」。ここも要検討というところです。
    坂橘木委員
    ここで話す話題ではないかもしれませんけれども、徴収側を統合するという、社会保険庁が年金保険を徴 収している、医療はまた別個で徴収している、税はどこかで徴収しているというものを統合するという案は非常に買ってい るんですけれども、そういうのはここでは全く触れない方がいい?
    坂東局長
    抽象的に合理化も検討すべきであるとか、徴収の合理化を・・・。
    坂橘木委員
    座長に問題提起で、それはここの関心ではないといったら落としてもらって結構です。どこの国もやっている んですよ。イギリスの歳入庁と社会保険庁を統合して一本化しましたからね。管理費用の節約というのは私は大事なこと だと思うので、問題提起で申し上げただけで、ここでふさわしくないのであれば却下で結構です。
    大澤会長
    多分そこも考え方が複数あるのではないかというふうに思います。神野さんなどは、社会保障負担について は、社会保障基金政府として独立させて税とは分けるということですね。というお考えもありますし、それから社会保障番 号みたいなものをしっかりして、それで受け払いというのが各人わかるようにせよと。これは「骨太方針」に書いてあったこ とですけれども、そうなりますと、今のように一本化するという考え方も出てきますね。
    坂橘木委員
    神野さんは一本化に賛成、反対。
    神野委員
    一本化というのはどういう意味ですか。
    坂橘木委員
    統合。
    神野委員
    統合化というのは、結構いろいろ難しい問題を含むんですね。だから、ここで議論して、まず男女共同参画 の問題の観点からどこまで、統合とするにしても、そういう観点からいうわけですね。そうじゃないと、いろんな意味での統 合というのはやってみるといろいろ逆な問題が出てきて、例えば税の地方の国税の問題なんかでも、統合化すると一見 よさそうに見えますね。しかし当然ですが、国税をとる機関が一本化してしまうと、とりにくいところからとりません。とりにく いところというのは、納税抵抗が非常に激しいところはとりませんね。例えば、ある地方はうるさくてしょうがないから、あそ こからとるのはやめようと。とらなくても別に構わなくなってしまうと困るので、予算で決めたものについては、フランスなん かとるところが保証しなくてはいけないんですね。そうすると、それは持ち出しになってくるとか結構難しい問題がはらみま すので、統一する場合にも、ドイツのように州が全部統一してしまっている場合もあれば、国が統一してしまう場合もあ る。スウェーデンのように独法化してしまっているので、あれは国の機関か地方の機関かと聞いても全然わからないとい う国もありますから、ここでやるとすれば軽く触れる程度で、統合化とかそういった問題も男女共同と関係あるか。わから ないけれども、効率化するような観点から考えるべきであると一言入れるか入れないかぐらいだと思います。
    坂橘木委員
    ちょっと言いすぎたので撤回します。
    大澤会長
    12ページの木村委員からのご意見はどうでしょうか。
    林委員
    12ページの1)の3つの「・」の真ん中から後、「なお」というところがあるんですけれども、「なお」以下に書いて あることは、「非常に性急で単純な個人単位化以外の手法を検討することが必要となろう」という、ここまでの数行につい てはわざわざ書く必要がないと思うんです。今日明日やるわけではないわけで、どっちみち性急なことなんかやるはずも ないわけのことを、わざわざ書くことによって、目指しているものが非常に不明確になるという、我々組織内部の議論の中 で常にこういうことを書こうする傾向というのはあるんですけれども、基本的には、これは個人単位化にしたくないというと きの考え方が根強く残っていて、こういう書き方をするわけなんですね。だから、これは削除していいというふうに私は思 います。
    大澤会長
    木村委員の御意見とあわせると、3つ目の「・」の「なお」以下、4つ目の「・」の全文というのは削除した方が よいということになりましょうか。
    林委員
    4つ目全部削除しないとするならば、例えば「社会保障制度体系の基本の選択にかかわる問題である」で 切ってしまうなら、それはそれでそうなんだということになると思いますけれども。
    木村委員
    基本はいっぱいありますよ。基本だと言っていたら、それこそだめにする議論の一つですよね。
    大澤会長
    ここに書いてあるようなことは当然だから、あえて書かなくもよいという意味で言えば、削除してもいいので はないか。
    木村委員
    林委員が4行、「なお」から5行を削除するとおっしゃったけれども、もし残すのであれば、個人単位化に向け てと書いたのが、私が提出した意見の方なんです。私も「性急で単純な」というのは個人単位化にかかる形容詞かなと。
    大澤会長
    遺族年金などは20年から40年程度かけて廃止する調整期間を設け、所得の低い人には補足給付、これは むしろ各論で書くべきことなので、ここは基本的な考え方ですから、割と単純に削除でもいいのかなという気がいたしま す。
    大沢委員
    同じところのちょっと前ですけれども、「・」の3番目です。「従来の税制・社会保障制度・雇用システムは世 帯単位の要素が強く」と書いてありますが、これからは個人単位に変えていくということですが、雇用システムがどう変 わっていくかというのは非常に大きなところだと思いますが、ここは個人化される流れになっているというふうに解釈してよ ろしいのでしょうか。つまり正社員の賃金体系とかそういうものもこれからどんどん変わっていき、仕事単位になっていき、 家族の配慮というものはされないような賃金体系になっていくのだということを前提に書かれているものかどうかお聞きし たいと思います。
    坂東局長
    13ページの方で、雇用システムのことについてコメントしています。3)とか。
    大澤会長
    ここにも出てきますけれども、雇用システムに関するアンケート調査の結果では、そんなに個人単位化の 方向に動いていないというのも出てきたので、ここでは雇用システムはどんどん個人単位化の方に動いていますという前 提は必ずしも書いていない。意外と根強いというか。
    大沢委員
    そこと、前段の女性の離職率の増大と大きな関連があるから、そこら辺は配慮すべきだと思いますね。そこ はいいんだよというので、個人単位化というのは賛成だけれども、そこら辺の雇用システムをちゃんとフェアなものにして いくというコミットメントを、ここでは論じられないにしても、そこも含めて議論すべきだというところはどこかに触れるべきだ と思います。前文はまだ議論されていませんけれども、それがあって初めて、女性をうまく活用していくことが持続的な成 長につながるという鍵になる部分だと思いますので、よろしくお願いします。
    坂東局長
    その中に個人単位化ということを触れるということですね。
    大沢委員
    つまり、労働市場の整備ということも忘れてはならないということですね。現に共働き世帯が主流になってい るといいながら、女性はパートで、その賃金も下がっているんだという現状です。これは見逃すべき問題じゃないと思いま す。
    林委員
    13ページの3)のところで、それをどうしていくかというのを書いています。
    大澤会長
    最初の「・」の2行目の「雇用システムにおいても待遇等の性別格差」となっていますが、待遇等の性別格 差を解消することはもとより、実情にそぐわない世帯単位を個人単位に改めるというふうに書けばよろしいですか。
    大沢委員
    そこら辺、ぜひ入れていただきたいと思います。
    林委員
    「待遇等の性別格差を解消し」という、性別格差を解消するだけではなくて、今ある年功賃金制度が崩れてい るとはいえども、それというのはなかなか変えがたいものがあるわけですね。そういう問題と、それから終身雇用型という のは大体だめだという感じになってきていますけれども、賃金が世帯賃金であるという考え方に基づいているということ、 このことは単に「待遇の性別格差の解消」という表現では、言い尽くせないかなという気もしますけれども、どこかに書いて もらったような気もするので、自分で見つけられないのですけれども。
    大沢委員
    そこがパートと一般労働者の賃金格差の大きな理由になっているわけですね。そこは触れておいた方がい いと思いました。
    林委員
    雇用システムの将来的方向のところに大分書き込んでもらったんですね。
    大澤会長
    前回から変わっている部分には下線が引いてありますので。
     そうしましたら、4の改革の具体的方向というところではどうでしょうか。ここでは木村委員が14ページの真ん中ぐらい に、「世帯合計での年収の逆転現象が生ずることは完全に解消されてはいない」。総じて解消されてはいない。これは文 章を入れ替えたらどうですか。「世帯合計での年収の逆転現象が生ずることは、総じて解消されているものの、制度を意 識した労働時間・年収調整が行われているという点で、就業に中立的ではない」と書けば強くなりますね。
    大沢委員
    議論が前に戻って恐縮なんですが、13ページの3)の一番最後の3番目の「・」なんですが、「多様な労働 形態の存在が、労働者だけでなく企業にとってもメリットになることが望ましい」というのは、私は今は多様な労働形態が 企業にとって都合がいいから導入されて増えているので、むしろ企業にとってだけでなく、労働者にとってもメリットになる ことが望ましいというふうにかえていただきたいと思います。だから、どんな就業形態を選んでも損にならないような労働 市場をつくっておくことが望ましいというのは別にいいですけど。
    坂東局長
    双方にとって。
    大沢委員
    今は就業者がそういうニーズがあって自発的に選んでいるのだけれども、企業にとってもメリットなるように すべきだみたいに書いてあるけれども、そうじゃなくて、今は企業にとってメリットがあるからそれが増えていて、非自発的 にパートを選ぶ人が増えているという現状がありますから、それを踏まえた上で、そうじゃなくて、働く側にとってメリットをも たらすような仕組みをつくるべきだというふうな感じで、ぜひここの作文は、できればかえていただきたい。
    大澤会長
    そうすると、ここは「良好で多様な労働形態の存在が労働者と企業の双方にとってメリットとなることが望ま しい」。「企業にとって」以下は削除ということですね。
    大沢委員
    削除してほしいと思います。
    坂東局長
    「双方にとって合理的でないシステムは長続きしない」と。
    大沢委員
    そういうふうにお願いいたします。
    神野委員
    基本的な質問なので、僕は税金のことしかわからないので、社会保障関係の方でこういう使い方であれば 別に構わないのですが、税金の場合には、世帯単位と個人単位というふうに言いますね。そうすると税金というのは支出 と結びつけないというのが原則ですので、世帯単位であろうと個人単位であろうと、例えば個人単位と言ってしまえば、子 どもは所得がなければ個人単位で課税されても、子どもに対してはかわいそうな面というのは起きないわけですね。とこ ろが、社会保障負担というのは税と違って、社会保障負担を払っていない人は、サービスから排除されるというのが我々 財政学の方からの定義なんです。税と負担とどういうふうに違うかというと排除されると。世帯単位化と言ってしまい、個 人単位と言ってしまった場合に、さっきから見ているんですが、子どもの扱い方はどうするか。つまり夫婦の場合にはこれ でいいと思うんですけれども、年金はともかくとして、健康保険というのは子どもはどっちかにくっつけるんだと多分言わざ るを得ませんね。
     そのときにはこれでよければ、我々の議論からいうと、社会保障負担と税と保険という考え方が3つあって、保険というの はリスクに比例して負担するもの、社会保障負担と税というのは、別にそれに1対1で対応しないけれども、しかし、それを 払っていないと排除されてしまう。社会保障を税にするといったらば、それは税を払っていなくても大丈夫と。この場合、支 出の方を議論していないから別にいいのかもしれないんだけれども、ちょっと普通に質問が出てくると、個人単位というの は子どもをどうするのでしょうかと。税金の場合には全然問題にならないんです。子どもは所得ゼロですから、支出の方 とはリンクしませんので、税金を払っていなくても子どもは公共サービスを受けられますから心配ありませんよと言えるの だけれども、社会保障の場合には、個人単位だといってしまうと、個人単位で払っていなければ、あなただめですよと言わ れてしまうことにも、この文面だとなりかねないわけですね。何かちょっとメンションを。夫婦単位という概念はないですよ ね。税金の方では夫婦合算とか、そういう概念があるのだけれども、社会保障の方には、夫婦単位とか個人単位という概 念はないですよね。
    大澤会長
    年金は事実上夫婦単位ですね。世帯単位といいつつ、子どもは付随的で、遺族年金に子どもというのは登 場しますけれども。
    坂橘木委員
    医療保険が一番子どもの問題が出てくる。
    坂東局長
    問題は医療保険ですね。
    木村委員
    医療保険を個人単位だった場合どうするかという、今まさに神野先生がおっしゃったような議論がこれまで にもあって、幾つかの方法が考えられていて、絶対それでいこうという議論に固まっているわけではない。それは地方分 権の議論と一緒で、いろんなタイプの議論があるのと一緒なのですけれども、まず1つは、子どもは今までどおりにどっち かにつけていいじゃないかという人もいるんですね。個人単位であっても、子どもは別にしてもいいんじゃないかと。また別 に子どもは、例えば国民健康保険の均等割りのような形で徴収してもいいんじゃないか、そういういろんな考え方がありま す。
    神野委員
    そうすると、さっきの税金みたいな話になって、個人単位にするけれども、家族配慮するというか、そういう 話になるということですよね。
    木村委員
    子どもはいいじゃないかという人はですね。
    神野委員
    子どもをもってやらせろというわけにもいかないでしょう。
    木村委員
    個人単位に徹底しようとする人は、自営業者でもやっているのだから、均等割りで・・・。
    神野委員
    子どもに払わせると。
    木村委員
    親が払うんですね。
    大澤会長
    第3号みたいな考え方を押し広げれば、社会保障においては収入のない人からはとれないので、これは保 険料免除なんだというふうにすれば、子どもだろうが、成人の低所得者だろうが同じですよね。
    神野委員
    個人単位でも免除しているんだということね。
    大澤会長
    1人1保険証にしておいて、しかし収入がないから保険料は免除だというのはあり得るので。
    神野委員
    それもありますね。それとあとは、サービスに触れていませんが、サービスで出してしまえばいいわけですよ ね。
    福原委員
    本文とはどうかかわるんですか。そういう問題があるということなんですけれども、さっきのページに戻るわ けですか。
    神野委員
    戻るのではないんですが、個人単位とかなんとかというときに総論で触れているわけですね。そこら辺を誤 解がないように、こういう問題もあるんだけれども、この点については別途検討するとか何かメンションしておくかどうかと いうことです。こういう概念でいけば全然必要がないんだということであれば、別にそれは触れておく必要はないということ です。
    福原委員
    あえてこの中間答申の中でメンションする必要はないと思うんですが。
    神野委員
    それであれば。
    福原委員
    確かに学問的に検討していくと、そういうことになるわけですね。ところが、社会通念として、子どもは親に扶 養されているというとおかしいけれども、今はそういうものは肩代わりしてもらっていますね。ですから、ドラスティックな個 人化する以外、もしそういうことがあったら、それは言わなきゃいけないけれども、今の状況では言う必要はないんじゃな いかと思いますが。
    木村委員
    後で考えましょうか。
    神野委員
    さっきの気になっていたのが、性急なとか、非常に極端なとかという削られたところはどういう意味なのでしょ うかと。もしもそういうことが含まれているということであるとすれば。
    大澤会長
    念頭に置いていたのは、年金の夫婦間の分割というのは、要するに個人単位じゃなくて夫婦単位なんです よね。だけれども、経過的には必要だろうというふうに思ったときに、それは一遍に個人化にいくのではないと。年金の夫 婦間分割という方法をとることが必要な期間もあり得るというような感じが、実はさっきの性急で単純な個人化という書き ぶりの背後にあったんでけれども。
    坂東局長
    それから、ここでの問題ではないんですけれども、健康保険、医療保険に関して言えば、DVで、例えば夫 から逃げてシェルターに入るような人たちが、健康保険が個人単位化でないということは非常に困るというような話があっ て、数としては非常に少ない人たちですけれども、医療保険においても個人単位化を希望する人たちもいることはいるん です。
    神野委員
    僕は個人単位化も医療保険にしても構わないと思うんです。構わないんだけれども、そのときに大澤先生が おっしゃったような意味で、この人は子どもは所得がないのだからやるかとか、いろいろな単位にしながら、例えば、さっき の案だと、僕の意見ですと、個人単位にしながら、少し家族配慮してあげようねというような案とかいろいろあると思うんで す。そのバージョンがあるということをにおわせておく必要があるのであれば、におわせておくし、これで別に必要がないと いうことであれば、それで構わないということです。
    林委員
    もしあえて気になるなら、子どもの問題は、18ページの<2>のところにだけ関係するかなという気がしました。健 康保険のところです。年金とかは余り関係ない。
    木村委員
    今、大澤さんがおっしゃった年金分割が世帯単位かというのは、私は個人的にはそうではないというふうに 思っているんですね。結局、夫婦の間で分けても、記録とういのは個人個人に帰属するのだから、個人というふうに見る 方がいいんじゃないかと。ただ、世帯単位というのはどういうときにそういうふうに理解するかというと、分割したがために、 制度からそうでない場合よりもかなり優遇されるというような面がある場合には、世帯だから優遇されたという意味で世帯 単位という意味合いが持てるかもしれないけれども、私は分割して、その上での個人個人の記録になるのだから、むしろ 個人単位という位置づけをする方が論は進みやすいのではないかという理解をしています。
    大澤会長
    結構、納得してくれない人が多く、それほどまで夫婦を一体にみなすのは気持ち悪いという批評もあるわけ です。そうじゃないんだと言っているんですけれども、ちょっとこれが個人単位だというにはやや強弁かなという気もしてい るところです。この4のところはどうでしょうか。
     よろしければ、木村さんが出していただいた基礎年金のところ、厚労省の検討会報告を土台にするかしないかという大き な問題がありますが、土台にするとここで書いてあるのは整理を土台になんですね。一応問題点は整理されたと。
    木村委員
    土台と書くとおかしい。あくまでも参考とか。全く方向が違うものを土台にする必要はない。
    大澤会長
    まあ、そうなんですね。何が間違っているかというと、3号に払わせるべきか、払わせるべきでないか、誰が 払うか、こういう問題の立て方をしたから結論が出なかったんですね。
    木村委員
    あれは第3号被保険者がどれだけすばらしいかというディフェンスがすごくあったでしょう。ここでわざわざ取 り上げる必要がどこにあるかと。
    大澤会長
    このような整理も参考になるぐらいでいいということですかね。
    大沢委員
    参考にしない。
    木村委員
    本文で取り上げる自体がおかしいなと。
    大澤会長
    私がどこかに書いたみたいに、方向はいいけれども中途半端というふうにこちらで書いてしまうと、それも ちょっとやり過ぎかなという気がするのだけれども。
    坂東局長
    「ここでも国民の間で広く議論を深める」が出てくる。
    木村委員
    腰が引けるのは全部そうなるんです。
    林委員
    検討会の議論のときには、基本的には、今のいわゆる保険という考え方をしていないという、税による解決を 図るというふうなことは念頭に入れない考え方で議論されたんだと思うんです。そこが結論を出せなかった一つの大きな 原因かなと。
    坂橘木委員
    それは厚生労働省の研究会ならいいですよ。税なんていうのは受け付けないもの。だって財務省に権限が 行ってしまうというのが見え見えですから、省で絶対反対でしょう。だから案は出てこないと思う。
    林委員
    じゃ、ここで出すといいですね。
    坂橘木委員
    それにはまたコンセンサスが要るでしょう。
    木村委員
    誰のコンセンサスですか、先生。
    坂橘木委員
    この委員の。
    木村委員
    それだったらいいけど。コンセンサスが得られない場合は列記をすればいいんです。「考え方の整理が行わ れ」なんて、これは私は要らないと思う。保険料負担については幾つかの案が考えられてどうのこうの、基礎年金につい てはいろんな問題が指摘されていて、その保険料負担のあり方については、こういった議論がある。そこを整理すればい い。報告書どうのとあずけるよりは。
    大澤会長
    全然この報告書が出たということに触れないのもいかがなものかと思いますから。
    木村委員
    でも、どこで触れますか。参考文献で。
    大澤会長
    しかも、検討会報告書というのは基礎年金だけではないんですね。厚生年金のパート適用拡大とか、遺族 年金のこともやっていますし、だから、基礎年金のところで触れるよりは、どうせ触れるのでしたら、公的年金という上のと ころで触れた方がいいんですね。
    木村委員
    触れるときはコメントで、目指す方向はずれているという意味合いのことは。
    大澤会長
    入れるんですか。
    木村委員
    ええ、ニュアンスとして。やはりやるべきだと思う。
    大澤会長
    基礎年金だけではないから、やはり公的年金という、やや総論的なところで触れた方がいいと思うんですけ れども、位置づけ方としては、従来、指摘されてきたいろいろな点を取り上げて、問題点が整理されたということは事実だと 思うので、考え方が整理されたというよりは、問題点が整理されたという評価は構わないんですよね、木村委員。
    木村委員
    その整理の仕方がやはりある姿勢での整理の仕方よね。それもきっちり書くべきね。
    大澤会長
    どういうふうに書くかというと、年金制度の枠内での検討であったので、広く税制・社会保障制度全般を男女 共同参画の視点から検討する当専門調査会の姿勢とは異なる面もあるというような書き方は。
    木村委員
    一応書いていただいて。
    大澤会長
    そういうような感じで。
    大沢委員
    違いは書いた方がいいと思う。消すよりは。
    林委員
    男女共同参画の視点からはされていないということは書くことは非常に大きな意味があると思うんですね。
    大澤会長
    男女共同参画の視点から、包括的に税制や社会保障制度の他の諸制度との関連も視野に入れた検討で はないため、というふうに書けばいいんじゃないかと思うんですけれども。
    林委員
    今年の審議会の年金部会で、この報告書をベースに検討するというような、年金問題について検討するという ことが昨日の厚生労働省主催のシンポジウムではっきり年金局の方から言われたんですね。
    大澤会長
    ベースにはしません。
    林委員
    それで、ベースにするという意味が私は2つあると思ったんですけれども、つまり年金問題について審議をす るときの中心課題が女性と年金であるというとらえ方。
    大澤会長
    中心課題の一つがですね。
    林委員
    というふうに見る場合と、あの整理をベースにするというとらえ方と2種類ある。どちらだろうと思いながら聞い ていたんですけどね。
    大澤会長
    非常に大きな中心課題の一つであるというような意味では、前回や前々回の年金改革にくらべてずっと位 置づけが大きくなっていて、それは評価すべきだと思うんです。肝心のところは6案併記で方向性を出していないから、検 討会報告はベースにはならない。
    林委員
    その意味では、先ほど言われた男女共同参画の視点というのは、必ずしもそこでやられたわけではないという ことを示すことによって、そこの審議会に影響を与えることはできるんですよね。
    大澤会長
    まあ、そうですね。というか、そういう意味でベースになるようなものではないと思います。
     そうすると、1番目の「・」というのは、今言ったような書き方で、<1>の公的年金のやや総論的な部分に入れて、基礎年金 のところはむしろ、ただ2番目が「なお」で始まっているので、どういうふうに入れるかというのはありますね。
    木村委員
    第3号はどこかで触れていましたっけ。基礎年金は第3号のものがあって、税制では配偶者控除、配偶者 特別控除も書いてありますね。基礎年金のところは、第3号にかかる保険料負担について、第3号自体の問題というのは 書いていない。
    大澤会長
    書いていないんですね。それを書けばいい。第3号被保険者制度というのが基礎年金になる。
    木村委員
    それから今のままでいくと、税はかなり引き上げなければならないし、空洞化もあるということも書けばいい んじゃないですか。
    大澤会長
    はい。
    木村委員
    厚生年金のところでは、そうすると並列的に言うと、パート加入の問題、非正規雇用者が増えてくると、これ に入ってくるんだけれども、財政的な問題があるけれども、さっきと重複するからちょっと考えるけれども、財政的に耐え 得るような制度に変える必要がある。厚生年金のところです。
    大澤会長
    適用拡大した場合の問題点ですね。
    木村委員
    問題点と書いてしまったら、それだったら・・・。
    大澤会長
    年金財政への影響等を考慮する必要があるというのは、ここはちょっと書き方を工夫した方がよいという御 意見でしたよね。
    木村委員
    非正規雇用者はとにかく入る方がいいのだから、それが入れるような方向で制度を改善する。耐えられる 制度にする。
    大沢委員
    要件は2分の1に引き下げると65万で皆さん合意されているんですか。
    大澤会長
    まだこれからです。例えばというので出てきているだけなので。
    大沢委員
    それが大きいと思うんです。
    林委員
    連合も基本的に2分の1と、この考え方を出しているんですけれども、心配するのは65万と設定すれば、64万 までで雇えば事業主負担をしなくてもいいというようなことになっていって、非常に細切れで2つも3つも仕事をしなければ 成り立たない人たち、総労働時間からいうならば結構な年間総労働時間を働いていながら、あらゆるものから適用されな いという、この危険性も私なんか心配はしているんですね。心配はあるけれども、しかし負担するのが当たり前だよという ことを広げていくためには、まずはここからやっていって、あと雇用システムの中で解決するものを解決しなければいけな いのかなと。
     例えば、事業主負担を今は、aという人に対して雇ったから事業主負担をするというふうにしていますよね。そうしない で、何人雇ったところで賃金全部で年間通じてこれだけうち(会社)は払ったと。だから、それに対してこれだけの保険料を 負担するというふうにすれば、どこへいったってその人はちゃんと入れるわけですね。そんなふうなところの仕組みと連動 させていけば問題が細切れになっていくという危険性はないかなと。恐らく外国の例で、そういうことを聞いたことがあるの で、詳しいことはわからないですけれども、そういうこともあわせて考える方がいいという気はします。
    大澤会長
    適用拡大という方向で議論すると、今の4分の3を2分の1に。この方向からやると、今ある境目をどこまで 下げるかという話になるのだけれども、最近は偽装脱退というか、事業所ごと加入しない。どこか引っ越ししたことにして、 そこから後は加入しないというのが増えてきているというようなことを考えると、事業所単位の加入というようなこと自体に 無理がありはしないか、みたいなことにちょっと触れる。そうすると適用拡大の前に、空洞化を防ぐというようなことを1行 か、2行入れた方がいいのかどうかですね。
    林委員
    それから16ページの今の(適用拡大)の一番最後の「・」のところで、数ヶ月単位の有期雇用契約を繰り返さ れ、手続きの手間等のため、保険に加入できないケースがあるというくだりがあるんですけれども、これは手続きの問題 でなくて、これもあるかもしれないけれども、より細切れにした理由というのは、こういう理由ではないような実感なんです ね。
    大沢委員
    加入を避けるための。
     
    林委員
    要するに加入を回避するということとか、制度についてはそういうことだと思いますね。解雇の点から言うなら ば、雇う方がしやすいというのもあるんですが、それは直接ここには関係ないから書かないとしても。
    大澤会長
    (選択肢としての魅力の増加)、現行制度自体が魅力がないという御意見があるので、どうやって魅力を増 すかというか、ここで魅力といっているのは、主として遺族厚生年金の方をとってしまって、結局掛け捨てになるからという ようなことなんですけれどもね。そうすると、就業条件が男女で同等になってくれば、自ずと魅力が出るということなのか、 それとも、遺族年金制度があって併給が原則できないとなっている限りは、どちらかが掛け捨てになるという問題は、たと え就業条件が同等になってきても残る面もあるわけですよね。そういう意味で整理し切れていない部分ですね。
    木村委員
    ここの意味がわからなかった。
    大沢委員
    勤続の要件があるから、年金の魅力が低下しているというのは、勤続20年とかそういう・・・。
    大澤会長
    厚生年金ですから1か月単位で出ますね。
    大沢委員
    魅力が低下しているという理由は。
    木村委員
    よくわからなかった。
    大澤会長
    内部収益率が低下しているから。これはしかし男女に同等の問題なので、むしろ選択肢としての魅力という のは、掛け捨て問題とか、いろいろなコストを含めた場合に低賃金でも厚生年金に入ることが有利とは言いつつ、どうも比 較衡量した場合にそうではなくて、3号にとどまるというふうになってしまうことを言いたくてこの部分があると思うんです。
    木村委員
    そうしたら、女性が男性と同等な条件のもとで就業できるようになればというよりも、現行の厚生年金に入り がいがないようになっているところが魅力がないんだという、そこのところ。
    大澤会長
    そうですね。モデルケースで試算すると、自分の老齢年金で得るものが大きいんですね。ただし、遺族年金 をカウントしない場合というふうになるのですけれども。
    坂東局長
    自らの保険料負担が給付に結びつかないということですね。
    大澤会長
    そうすると、最初の「・」はとってしまってもよくて、厚生年金が適用されれば、モデルケースで見たように得 るものは大きいけれども、このことは必ずしも認識されていない。なおかつ遺族年金の問題を入れるというふうに次につな がればいいんじゃないですか。
    坂東局長
    遺族年金の場合はどうしますか。こちらの「なお」のところで、17ページ、上のところの一番下に書いてあり ますけれども、上の方へ出した方がいいのかなと。
    大澤会長
    ここには、木村さんの御意見というのは、夫婦間で年金分割すれば遺族年金は要らなくなるということです ね。あるいは、しなくてもやめろというふうに。
    木村委員
    違う。20年、40年後のことを目指しての改革の方向を示すのであれば、私は遺族年金というのは40年後に はなくてもいいと思っているんです。
    大澤会長
    十分な経過期間を置いて遺族年金を廃止することにより、矛盾や不合理を解消する。
    木村委員
    個人単位でみんなが老後は自分の年金で備えましょうという、タックスベースを広くするような社会をつくり ましょうということなんです。
    大澤会長
    私は40年後に至る経過期間は夫婦で分割した方がいいのではないかというふうに考えたんです。
    木村委員
    私は別にそれは反対していませんけれども、ここに書いたように、基礎年金と厚生年金と分離した上の方だ けしないと問題点は残ると思っています。別にそれは反対じゃないです。そういう形でできるのだったら。
    大澤会長
    はい。だから遺族年金は廃止した方がよいという意見が、今の限りでは多いような気はするのですけれど も、この点について御意見ございますか。
    福原委員
    時間をかけて消滅するということでいいんじゃないですか。
    神野委員
    突然廃止されるといろいろ困るんです。
    大澤会長
    これは年金制度ですから、突然廃止なんて。
    神野委員
    つまり、今まで働いていて国民年金に入り続けていながら、突然要りませんよと言われた人もいるわけで、 個人年金を持っていない方もいらっしゃるから突然廃止されてしまうと・・・。
    木村委員
    やはり年金は生活設計に入り込んでいるから、変えるときは数十年、だから逆に言えば、医療保険よりも早 く変えないといけない。制度改革は。
    大澤会長
    十分な経過期間と経過措置を取りつつ、遺族年金を廃止することが制度の合理性を高めるとか。
    坂東局長
    それは書きましょう。
    林委員
    いずれにしても、別れないという前提でつくられていますからね。
    大澤会長
    それはその次の離別というところにかかわりまして、ここも「・」3つぐらいは削除しろというのが木村さんの御 意見でして。
    木村委員
    書くのであれば、もうちょっとすっきり書く方がよい。さっき言ったみたいに足踏みしている状態で書いている なという印象を持ちました。
    大澤会長
    それは夫婦間の年金分割という奥の手がないから、こういう書き方になってしまうので。
    木村委員
    奥の手は書けない?
    大澤会長
    女性と年金検討会も書いたわけだから、我々は書けるでしょう。給付のところで分割するのか、拠出のところ で分割するのか、それとも離婚のときの財産分与みたいな形で全部含めて分割するのか3通りぐらい考え方があって、 私は拠出のところから分割するという意見なんですけれど。
    木村委員
    それはまとまらない場合は併記してもいいんじゃないですか。
    大澤会長
    そうですね。女性と年金検討会もそれは書きましたし、それから民法改正のときに、原則2分の1と、財産分 与の中にそういう将来の退職金とか、年金とかというのも含めるという議論はされたと思うので。
    木村委員
    個人の選択の意思決定による中立性に絡めるとどういうことになるかというと、離婚への意思決定というの ではなくて、むしろ働くことに対する意思決定ですね。ということは年金分割を・・・。
    大澤会長
    別に結婚し続けても拠出のところでずっと割っていけば、将来は自分名義の年金になるわけです。一緒に住 んでいようが。
    木村委員
    就労に対する意欲が増す。
    大澤会長
    というか、老後の夫婦の力関係にも関係する。
    福原委員
    22ページですが、「ワークシェアリングを巡る労使間の議論」というのですけれども、男女共同参画という観 点から見ると、これは労使間の議論ということではなくて、国の労働政策、あるいは労働社会全体にかかわる問題なの で、単に連合と日経連がやるとか、そういう問題じゃないように思うんです。さらに一つの会社の組合と経営者がやり合う という問題でもないと思いますので、これを男女共同参画ということとどう結びつけるように表現するかということを考えて おいた方がいいのではないかと思うんです。ワークシェアリングそのものがいろんな説があって、ドイツがeuにおけるパ フォーマンスが今年あたり非常に悪くなっています。ドイツのワークシェアリングが2年ぐらいの時限爆弾でいよいよ効い てきたかという考え方もあるし、また東独合併が効いたかというのがあるんです。
     つい2月に、日仏経済クラブというのをパリでやったんですね。そのときにフランスは35時間制が去年から非常にきつく 施行されまして、経営者達は2年後にはフランスの国際競争力が著しく低下するであろうと言っているんですね。すぐに は出ない。組合も幾つかの対応があって、35時間よりもっと短くしようという人たちもあるし、35時間がこれだけきちんと国 から行政指導があるのに、社会とか、会社の中の体制がそれにふさわしくないじゃないかと。3番目には、もっと働いて、 もっと収入を得たいのに、どうしてそれを制限されるかという様々な対応があって、どうもワークシェアリングという問題は そう簡単に取り上げるというか、今、我々が進めている問題と簡単に結びつけられる問題ではないのではないかという気 がしているんですね。ワークシェアリングをここへ上げておくことについてはいいんですが、賛成ですけれども、取り上げ 方というか、表現の仕方については少し考えていただければというふうに思うわけです。
    林委員
    今おっしゃったように労使間の議論だけではなくて、男女共同参画の観点からここで議論するとするならば、 女性の社会参画の問題であり、男性の家族的責任への参画の問題であり、生き方や働き方を変えていくという立場で ワークシェアリングを考えていく、そういう社会的な合意を得る課題であるというふうに見た方がいいですね。
    福原委員
    そうです。そうであるのだったら納得できるんですけどね。ワークシェアリングは必要であると、それは労使 間でやれと、こうはちょっと表現がよくない。
    林委員
    労使間では超えられないですね。
    福原委員
    労使間でやっても解決できないです。それから時代の傾向としては、被雇用者というのは減ってくるんじゃな いですかね。みんなが経営者というわけにいかないけれども、自営業を含めて、使用者の方の比率がだんだん増えてくる という時代になってくるのではないでしょうか。
    坂橘木委員
    統計は従業比率をやっています。傾向的に。
    福原委員
    でも、これから先、少子化になって。
    坂東局長
    古い形の商店というような形の自営業が減っていますので、将来それが増えるといいんですけれども・・・。
    坂橘木委員
    弁護士だって法律事務所に勤めると雇用者になり、個人で法律事務所を持つと自営業になるんですね。医 者も大病院に勤めると雇用者だし、開業医だと自営業、どっちの形態が増えるかという、予想にもよるんですよね。どっち だと思われますか。
    福原委員
    医者の場合は大病院が増えるかもしれませんけれども、弁護士さんはどうなものでしょうね。町の商店街と いう話がありましたね。今gmsがどんどん人を減らしていますね。今経営のパフォーマンスもありますね。町が再び活性 化するという動きが各所にあるんですよ。それが成功するかどうかはわからないのですけれども、これから先のお客さん というのがだんだん高齢化するということになると、gmsでもって大きな包装のものを買うということはそぐわなくなってく るんじゃないかと。
    大澤会長
    申しわけありません。本当に議論は尽きないのですけれども、そろそろ終わりにしないといけません。
     報告書の取りまとめの段取りですけれども、今日御議論いただいことを踏まえて、事務局で図表や参考資料もつけた報 告書の素案をひとまずまとめていただきます。4月に入ったところで、その素案をもとにまた議論を深めてまいりたいと思 います。素案に盛り込むべき点など、後でお気づきでしたら、事務局までご連絡いただければ、いろいろと盛り込んでいた だくように努力をしていただきたいと思います。かなりこれは厚めなものになると思いますので、目を通していただく時間が 十分とれるような準備を事務局には特にお願いしたいと思います。
    福原委員
    非常に瑣末なことですけれども、前文の1ページの「女性労働力の活用は、その死命を決しかねないものと なっている」というのは、随分文章として古くさいんです。
    木村委員
    「活用」というのは失礼だと思いませんか。
    福原委員
    「活用」というのは私は大反対だと言って、厚生労働省の女性の活用に関する協議会というのがあるんです ね。私、第1回出なかったんです。出なかったものだから、「活用」という言葉はやめてくれというのをファックスで送ってお いたら大騒ぎになっていまして、結局「活躍」ということに変わっていました。
    林委員
    いつも女性と高齢者は活用の対象なんですね。
    福原委員
    私、活用というのは、そこに包丁があるけれども、あの包丁を使っていないじゃないかと活用しろと、こういう ことです。
    木村委員
    男の活用研究会だとおかしいでしょう。
    福原委員
    つまり非常に物的なんです。
    大澤会長
    それでは、今日までのこの調査会での議論の内容を4月2日に男女共同参画会議に報告いたします。その ための案を事務局に取りまとめていただきますので、次回3月28日の会議には、それをお諮りしたいと思います。
     最後に連絡事項をお願いします。
    市川参事官
    次回3月28日16時半からということで、この部屋で17時半まで時間をいただいております。なお、議事録 の案を3月25日までにチェックして下さい。
    大澤会長
    それでは、これで影響調査専門調査回の第9回会合を終わります。本日はどうもありがとうございました。

(以上)