第7回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成14年1月16日(水) 10:00~12:00
  • 場所: 内閣府第3特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      岡沢 委員
      小島 委員
      高尾 委員
      橘木 委員
      永瀬 委員
  2. 議事
  3. 議事内容
    大澤会長
    では、定刻になっておりますので、ただいまから「男女共同参画会議影響調査専門調査会」の第7回会合を開催いたします。
     議事に先立ちまして、この度大臣政務官が交代されましたので、ごあいさつをいただく予定がございますが、 現在お見えになっていないということで、お見えになったらごあいさつをいただくこととしまして、議事を進行させていただきます。
     その他、事務局においても人事異動により参事官の交代がありましたので、ごあいさつをお願いいたします。
    市川参事官
    市川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
    大澤会長
    では、お手元の議事次第に従いまして、本日の審議を進めさせていただきます。
     今日は、雇用システムに関するアンケート調査結果の報告の後、中間報告に向けた議論を行う予定になっております。 まず、雇用システムに関するアンケート調査結果の概要について、事務局から資料の説明をお願いいたします。
    市川参事官
    それでは、お手元にお配りしております資料の中に、右肩に資料1と打ってございます、8ページばかりの 資料をお出しいただければと思います。表題は、「中間報告書(要約)」となっておりますが、今回また委員の皆様から御意見をいただきまして、 集計し直したいと考えております。その意味で、中間報告でございます。
    坂東局長
    大臣政務官が見えましたので、ごあいさつをいただいてもよろしいでしょうか。
    大澤会長
    坂上政務官の後任として就任されました、奥山政務官からごあいさつをいただきます。よろしくお願いいたします。
    奥山政務官
    おはようございます。御紹介をいただきましたように、この度坂上政務官に引き続いて、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。
     私の方の地元は、やや田舎だというところもありまして、女性の結婚について、嫁にもらった、やったとか、こういう感覚がまだ ずっと残っておる地域でありまして、特に中高年の方は言うんですけれども、女性の方も割にそういうことをおっしゃって、 中高年の方々を中心に、まだ女性を物のような感覚で言われ兼ねないことがよくあります。我々も、この辺を何とかしなければならないなということも思っております。
     この男女共同参画で、我々もまたしっかり頑張ってまいりたいと思いますので、ひとつこれからも御指導よろしくお願いを申し上げます。
     また、各先生方におかれまして、随分頑張っていただいているということも聞かせてもらっておりますので、 今後ともどうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。
     ありがとうございました。
     
    大澤会長
    ありがとうございました。それでは、雇用システムに関するアンケート調査結果の報告を引き続きお願いします。
     市川参事官 では、続けさせていただきます。 これとは別に、委員のみ配付ということで、お手元に中間報告書自体も配付いたしております。こちらの方も適宜ごらんいただければと思います。 これは、今の段階では公表はいたしません。この分厚い方は、今の段階では公表いたしませんで、こちらの資料1の要約の方だけを、 この会議終了後、会議の資料としてオープンにする予定でございます。
    それでは、説明いたします。表題の下の3行にありますように、上場企業等3,466 社に対してアンケートを行っております。 11月末時点で、703 社から回答を得ているということでございまして、回収率はこんなものかと思いますが、20%と若干低うございますので、 今後電話の聞き取りとかによって、この回収率を高めていきたいと思っておりまして、その意味でも中間報告でございます。
    まず、家族手当制度でございますけれども、図表1にありますように、採用率は8割を超えておりまして、大企業ほど家族手当制度を採用している割合が高い。
    表にはございませんけれども、非正規従業員に対しても支給している企業は、5.7 %に過ぎない。また、受給者に占める女性の割合は、平均で2.5 %に過ぎないとなっておりま す。
    次に下の方でございますが、配偶者に対する手当の月額は、図表2からも見て取れますように、平均約14,500円。それから、いずれの手当についても、大企業ほ ど高い傾向にあ るというのが、2ページ目をお開きいただきますと見て取れるわけでございます。2ページ目の真ん中の図表にもありますように、賃金総額に占める家族手当の割合 は、平均で2.2 %でございます。また、その下の図からわかりますように、大企業ほど高いという結果になっております。 家族手当制度のある企業のうち、6割の企業が配偶者の収入を支給条件としているというのが、3ページをお開きいただきますと、図表の4から見て取れるわ けでございます。3 ページの、下の図表5を見ますと、その企業のうち78.4%の企業が、税制上の配偶者控除が適用される収入金額103 万円を基準としております。ちなみに、130 万円 としているの は、13.9%でございます。 4ページをお開きいただければと思います。既存統計との比較をして、そのチェックを行っております。現厚生労働省の「平成9年賃金労働時間等総合調査」と比 較しております。 この平成9年の調査でございますけれども、手当等に関しましては、取れている情報はそう多くはありません。具体的に申しますと、家族手当制度があるかないか、 対象者は配偶 者か子どもかといった情報、支給制限はあるかないか、あるなら幾らか、配偶者の収入上限はどう決められているか、これだけの情報が取れているわけでございまして、 今回こち らの方でやりました調査は、それよりかなり多くの情報が得られております。
     それと、一応チェックはしております。その比較の状況でございますけれども、図表6にございますように、家族手当制度の採用状況は、今回調査でトータルで83.5%。 既存統計で すと、78.1%とほぼ同水準になっております。
     その下の図表7を見ますと、配偶者に対する手当の月額ですが、今回調査が全体で1万4,500 円、既存統計が1万500 円と、今回調査の方が、4,000 円ほど高いわけで ござい ますが、この差は今回調査が上場企業等を対象にしたためかと思われます。
     次に5ページに移りますと、収入制限を設けている企業の割合でございますけれども、今回調査が全体で65.1%、既存統計では49.9%、今回の方がこれも高うございま すが、こ れも今回調査は上場企業等を対象としたためと思われます。
     支給制限の基準も同じような傾向でございまして、図表9にございますように、今回調査が103 万というのが78.4%、既存統計では76.4%。130 万が13.9%、既存統計 が15.4%と なっております。
     なお、5ページの下の方では、公務員との比較もしております。国家公務員(一般職)の配偶者手当の月額は1万6,000 円。その条件は、130 万円ということであります。 都道府県 レベルでも、おおむね国家公務員に準じているということでございます。
     これで、チェックは終わりまして、6ページをお開きいただければと思います。住宅手当制度でございますが、その採用率は約7割でございまして、非正規従業員に対し ても支給し ている企業というのは、4.5 %に過ぎません。図表11にもありますように、8割は支給条件を設けております。図にはありませんけれども、世帯主であることを支給条件と している企 業は、64%と多くなっております。
     社宅制度が6ページの下の方にございますが、採用率は85.2%。入居条件としては、世帯主であることが27.7%、本人の年齢が20.7%、扶養者がいることが20%、という ことが社 宅の種類に応じて設けられているようでございます。
     退職年金制度は、採用率は86.9%でございます。7ページに移っていただきますと、8割の企業が勤続年数を年金の受給資格要件としておりまして、平均で14年程度の 勤続年数 を必要としております。
     人間ドック費用補助制度でございますが、定義は(注)にありますように、定期健康診断を除き、会社が実施主体になっているものに限ると。したがって、健保組合に よる補助制 度は除くとなっておりますが、その採用率は全体の28.6%、そのうち25.9%の企業が、配偶者に対しても費用補助を行っているということでございます。
     7ページの下の方で、諸手当・福利厚生制度の今後についてでございますが、まず家族手当について、現行制度のままと回答した企業は、これが最も多くて67%。 ただ、充実す るという企業は2%と少のうございますが、廃止して賃金に振り替えるというものを含めまして、縮小・廃止というのが15.4%でございます。
     住宅手当制度の今後についても、現行のままと回答したのが57%と、最も多いんでございますが、充実するという企業が5%であるのに対しまして、8ページに 移っていただきま して、縮小・廃止を考えている企業は12%でございます。
     社宅制度の今後についてでございますが、現行制度のままと回答した企業は65.7%と、最も多うございます。充実するという企業は2%しかございませんが、 約2割の企業で縮 小・廃止を考えています。
     退職年金制度については、現行制度のままと回答した企業が68.1%と、最も多うございます。こちらの方は、1割強の企業が廃止・縮小。一方、充実すると 回答する企業も8.5 % ございます。
     人間ドック費用補助制度については、導入の予定がないというのが51.3%でございます。 転勤時における企業の対応状況についてもまとめておりますが、 転勤に際し家族の事 情を考慮するかどうかを尋ねましたけれども、配偶者、子ども、親、いずれの事情についても運用上配慮している企業は、約6割でございます。考慮するための 制度がある企業は 1割でございます。家族の事情を全く考慮しないという企業は、2割程度でございます。
     以上、簡単でございますが、要約を御説明させていただきました。
     
    大澤会長
    ありがとうございました。ただいまの御報告について、御質問や御意見がございましたらお願いいたします。30分程度時間があると思います。
    坂橘木委員
    この表を拝見しながら、これはもう日本の、いわゆる恵まれた企業の実態であると。上場企業の話であって、福利厚生とか家族手当とか社宅とかいうのは、 もう日本 の場合は大企業と中小企業では全く実態が違うわけで、これ全体で見て日本の福利厚生がこうであるということを言うのは危険だと思うので、もし報告書を出される のであれば、 中小企業まで含んだ実態調査が結構出ておりますので、その辺のものを参照しながら、ここで今日報告された報告の特徴だとかを言わないと、誤解を与える可能性が あるというふ うに思います。それが第1点です。
     第2点は、これは私の個人的な意見なので、全くもってここで受け入れてほしいなんていうことは、毛頭言う気はございませんが、企業は福利厚生から撤退しても いいというのが 私の持論でございまして、賃金化を図るだとか、そのような制度というのが、一つのオプションとして考えられていいんではないかというのを、ここで議論するか どうかは別にして、そ ういう意見もあるというぐらいで考えていただければ結構です。
     以上です。
    大澤会長
    ありがとうございました。これは、調査表を設計いたしましたときにいろいろと御意見を伺って、そこで設けられた設問が、今後どうするかという設問 だったわけです。今 日、最後に方に御報告ありました7ページに要約が書いてございますけれども、私の印象は世の中で賃金が成果主義とか能力主義に非常に大きく変わっていると言われているほ どには、変えると答えている企業が少ない。これも、勿論調査対象の限定がございますから、それが全体の姿とは言えないわけではございますけれども、私が考えていたよりは、 現行のままと答えたところが多い。逆に言うと、縮小・廃止(「廃止して賃金に振り替える」も含む)という回答が以外に少なかったなという印象を持ちました。
     それは、私が各種の報道に惑わされていた結果かもしれないんですけれども、この辺りは小島委員いかがでしょうか。
    小島委員
    私も、基本的には経済の水準が上がってくれば、あとは個人の選択であって、本当に弱者というものには、民間企業は、社会的に対応すべきだという基本的な考え方 を持っているんですが、その辺はそれ以上わかりません。
     同じ設問で、先ほど橘木さんが既存の調査を参考にした方がいいとおっしゃられたけれども、同じ設問を投げ付ける、それでそれを比べるということは、意味があると思うんで、サ ンプル調査を少し中小・零細企業に対してもしてみる価値はあるんではないかという感じはしますね。
    大澤会長
    これ厚生労働省の方で設問が重なっているような調査が、なされる予定だったのではございませんか。もう済んでいますか。
    市川参事官
    発表はされていませんけれども、準備は進めているんではないかと思います。
    大澤会長
    今回こちらで独自にこの対象で調査を行ったのは、厚労省の調査とは集計時期が違っているために、我々が3月に計画している中間報告には、そちらの調査はどう やら利用できそうにないということで、独自に行ったわけでございますけれども、9月の報告に向けては、そういった他の省が行っている調査も十分参考にできるかなと思っておりま す。
    坂東局長
    これで見ますと、ちゃんとした大企業の、しかも正社員ならば手厚い福利厚生は受けられるんだけれども、そうではない人は受けられないわけですから、こういうよう な状況の中では、インサイダーとアウトサイダーと言いますか、そういう大企業の正社員になれた人となれない人の格差は非常に大きくなりつつあるのではないかと。
     それで、残念なことに女性は、大企業の正社員として、こうしたフリンジベネフィットを受けるという割合は非常に少ないだろうと思いますし、更にはそういう人たちと結婚して、パート タイム的な仕事をしておられる女性たちは、むしろ税制だとかよりは、そういう家族福祉を失うことを恐れて従業しているのではないかというようなことは、十分類推できるんではな いかと思います。
    小島委員
    大企業についても、いろんな制度がありますが、その制度の対象になる正規社員、これの比率が今、急激に減っていますから、それもこれからはトレンドとして重視し なければいけないと思います。
    坂東局長
    正社員の割合が落ちているのは、これはデータで出ていますか。
    小島委員
    それは、データ全体を集計したらどうですか、橘木さん。
    坂橘木委員
    やはり、かなり。
    永瀬委員
    落ちていると思います。女性は完全に。
    坂橘木委員
    大幅ですか。
    坂東局長
    女性は完全に、正社員というのは落ちているんです。
    永瀬委員
    男性は、若年層ではかなり落ちております。25歳以上になってくると、それほど違いませんけれども、25歳未満の学生でない層で非正規層というのは非常に増えてお ります。
    坂橘木委員
    だから、これからの日本の企業ないし労使関係というのは、今まで日本の労使関係というのは、大企業vs中小企業だったんですが、これからは正社員vs非正規社 員というのが、日本の顔になる可能性はありますね。これは、どう処理したらいいかというのは、今後大きな問題だと思います。
    大澤会長
    そうすると、制度は現行制度のままとしておいて、それが適用される範囲を狭めるということで、処遇が変化しているというようなイメージが描けるんでしょうか。○橘 木委員 今のまま制度を温存しておきながら、正規と非正規の問題は続く可能性があると言われるんですか、それとももう制度を変えないと。
    大澤会長
    と言うよりも、処遇が変化して、家族主義的な処遇でなくて、もっとドライな成果主義というか、能力主義に移行しているというのは、既存の制度をいじったり縮小・廃止 するという方法よりも、むしろそれが適用される比率を下げるというようなことで、全体としての雇用、処遇というのが変化しているというイメージなのかなと。
    坂東局長
    恐らく、これからはそういうコアの正社員の人の割合というのは、とても少なくなって、そういう人たちは今までと同じような制度を適用する。アメリカの企業でも、スター プレイヤーには非常なフリンジベネフィットを提供しているわけですから、そちらの方はむしろ手厚くなるかもしれないんだけれども、そうした制度でカバーされないような派遣だとか 契約だとか、有期契約での有期的な働き方をするような、いわゆる伝統的な正社員ではないような人たちの割合が増えて、結果的には全体として日本の労働者でこういう手厚い 福祉をエンジョイできる層というのは少なくなってくると思います。
    小島委員
    それから、大企業・中小企業って、これは従業員数でやっているでしょう。しかし、業種によって、大企業というのは推定の作業でしかやられていないところもある。新し い中クラスの企業は、人数においてはかなり零細企業に分類されているが、すごい成長産業であって、所得も高いというところがどんどん出てきていますから。例えば新日鉄の ピークの正規従業員8万人が今は2万人ですか、まだ人件費が高過ぎると言って大騒ぎしていますからね。
     アメリカでも、1960年代ぐらいまでが大企業のピークで、それからずっと業種的に内容が変わってきて、従業員が多いところは構造不況産業という図式にだんだんなってきたんで すね。中小企業の時代。大企業はみんな安定していると、したがって雇用も安定、賃金も安定と思っていたところが、大企業全体が構造変化の中で苦しくなってきて、大企業はどん どんリストラして廃止になった。男性も女性も、大企業志向が強かったアメリカ社会で、しかし大企業がない。したがってだんだん違う分野、中小企業に行き始めて、能力がある人 がそういう中小企業にどんどん出てきて、中小企業が新しい分野にどんどん挑戦するような格好に、ダイナミックに展開したという経緯も時代的背景もあるんですね。日本も、今、 非常に大きなそういう過程に入っているんではないかという感じがしますけれどもね。
    高尾委員
    アメリカのその変化は、いつごろの話ですか。
    小島委員
    60年代が、もう大企業は屈折して下降に入ってきた分水嶺の時期だと思います。それ以降、むしろ中堅、中小企業の時代と。大企業は、基本的に構造不況産業という 図式になってきたんですね。
    大澤会長
    今回の調査の回答業種では、製造業が約半分で多いんです。
    坂橘木委員
    何でこんなに製造業が多くなったんですか。
    大澤会長
    それは、つまり回答してくださったということなんです。回収率が2割程度ですから、その中では製造業が比較的よく回答してくださったということなんだと思うんですけ れども、ちょっと製造業が過剰に代表されているのではないかという気がしていまして。ただ余りそれを業種で分けて、更に企業規模別で分けたりすると、セルが小さくなり過ぎて分 析できないので、その辺のところを今、大学院生の方にも手伝っていただいて、少し細かく見ているところです。
    小島委員
    製造業は、今、比率でどれぐらいですか。
    坂橘木委員
    3割ぐらいですかね。
    坂東局長
    そうですね。就業人口のうちでは3割切っていますけれどもね。
    坂橘木委員
    だから、日本の企業の実態において、決してマジョリティーなストーリーではないですね。
    大澤会長
    こちらの委員限りの厚い方のものに、回答企業の業種別構成というのが、4ページにございまして、ここに書いてある構成というのを、例えば就業者の構成というのと 比べてみれば、どういうところがオーバーリプリゼンテーションになっているのかというのは、すぐわかりますから。
    小島委員
    今、上場企業の3割か4割ぐらいは、利益が上がらない赤字企業ですから。npoですよ、ノン・プロフィット・オーガナイゼーションですよ。意図はプロフィットを求めて いるんだけれども、結果として意図せざるノン・プロフィット、npoになっているんです。そこは、完全に構造的ですから、ずっとリストラが続いてしまいますね。だから、これからどう なるかという先を展望するときは、ダイナミックな構造問題に触れざるを得ないですね。
    坂橘木委員
    もう一つ、例えば金融業なんか見ると、銀行中心にして合体していますね。○小島委員 もう人数どんどん少なくなりますよ。
    坂橘木委員
    それは人数は少なくなるんだけれども、規模的には持株会社方式だとでかくなりますね。そういう動きも一方であるわけで。特殊な状態としてはね。だから、縮小の傾 向と、大きくなるのと、何か並存しているような感じがしないでもないですね。
    小島委員
    だから、持株会社の下にぶら下がるのはどんどん小さくなりますからね。
    坂橘木委員
    それはおっしゃるおりです。だから、持株会社全体で見るのか、その持株会社にぶら下がっている下の企業だけで見るかで、これは企業状況が全然違いますね。 自 動車工業で言えば、もうアメリカと日本の一番の違いというのは、アメリカはgmとかフォードは全部抱えて、1社で60万人ぐらい。それで、トヨタは本社で6万人だけれども、下に いっぱい系列企業を抱えて、それをまとめるとそれこそgmぐらいに相当するというわけで、企業の方針も形態も違いますから。アメリカと比較するときには、日本にある系列という もう一つの顔もありますしね。
    永瀬委員
    私は、これを見て面白いなと思うのは、配偶者手当をほとんどの企業が出していて、そしてそれが税金とリンクしているということなんですね。その思想が何なのかと いうことなんですけれども、福祉という意味では、やはり子どもがいるとお金が掛かるから、児童に出すのかなという気もするんですけれども、そうではなくて配偶者に一番手厚く出 すと。それを税金とリンクさせるということは、税金を払っていないということは、収入が低いんだろうという言い方もできるかもしれませんけれども、103 万まで無税ですから、そうい う意味ではやはり無税内での就業以上をしないことを非常に奨励するような制度になっているわけですけれども、それが果たして意図的なものなのか結果であるのか。意図的なも のであるとすると、やはり奥さんが家にいるということを、企業が高く評価して、そういうことを誘導するような、目的としての実施なのか。あるいは、労働組合の方からの要望として だとすると、どうしてここにこういう形でリンクしていて、例えば児童とか生計費とか、そういうものにリンクしていなくて、ここにリンクしているのであろうか。その発展の歴史と思想と いうのは、一体どこにあるのかなというのを、大変興味深く見るわけなんですけれども、どうなんでしょうか。
    坂東局長
    内助の功への評価という、あるいは無償労働をアプリシエートするということなんではないですか。
    永瀬委員
    つまり、企業側としても労働組合としても、そういうことを推進してきたということなんでしょうか。
    坂東局長
    逆に、一方で、これは小説なんかのレベルの話で、むしろ高尾さんに伺えばいいのかもしれませんが、大企業のエリート社員の奥さんが働いていたりすると、社宅で 少し冷たく見られるとか、ごみ出しをしないとか共同作業をしないとかというのでいずらくなるとかというような、雰囲気はあるのかもしれませんね。
    永瀬委員
    実証分析したことありますけれども、社宅の奥さんというのは、明らかに非就業に対して、非常に強いプラス効果を持っています。それが、非就業であることが入居の 条件なのか、いると働きずらいのか、どちらなのかわかりませんけれども。
    高尾委員
    私のところは、全くそういう業種ではないので、社宅にいらっしゃる方のことはわからないですが、今、永瀬先生がおっしゃったように、なぜ企業は配偶者手当を税制に 対してリンクさせているのか、本当に思想としてわからないなと。
     そして今、世の中で言っているほどには、きちっと女性に対して賃金として振り替えていない。結局こういう大企業で正社員として働いている場合に、女性がなぜ家族手当をもらえ ないのか。いろいろな意味で不利益があるわけで、それをなるべく賃金に振り替えていこうというような流れが非常にあるんだと、日本の企業はできてきているんだと思ったのに、そ うではないということは、やはり一方で正社員の割合がどんどん下がってきているということで、もうそのまま放っておこうという、どっち道もうお金が出なくなっていくんだから、その まま放っておこうと考えているのか。あるいは、企業というものは、きちっと働いている女性に対して、きちっと賃金を払っていくということを、本当に考えていてくれる、考えているの だろうかというようなことが、非常に疑問に思ったところです。そういうふうなものに変えていかないと、女性にとってはいつまでもとても働きにくいというような感じがして、しようがな かったという感覚を受けました。
    坂橘木委員
    これ、企業の中でだれが回答しているんですか。企業の中でも、人事労務担当者と、そうでない人というのは、もう発想が違うんです。人事労務部長に出しているんで すか、それともトップに出しているんですか。
    坂東局長
    恐らく、実際に書いているのは、人事管理の方の係員でしょう。
    坂橘木委員
    そういう人たちは、こういうような家族手当だとか、社宅だとか、そういうのに割合好意的な見方をするんですね。ところが、そうではない部署の人たちは、また違った 見方をしますから、だれが答えているかというのも、こういうアンケートでは結構大事なんですね。
    坂東局長
    経営企画室なんかが出すと、また違ったものかもしれませんね。
    坂橘木委員
    全然違った回答が返ってくるんです。その企業全体の意見では、必ずしもないんですね、書いた人の意見で代弁される可能性がありますね。
    坂東局長
    将来の方向性はですね。
    小島委員
    歴史的に言うと、手当類全般は生活費補助なんですね。
    坂橘木委員
    おっしゃるとおりですね。
    小島委員
    それで、所得水準が上がってくるにつれて、どう使うかは個人の選択の問題であるということで、賃金に振り替えるという発想になってきつつあるんですね。ボーナス ですから生活費補助という意識が多分にあったんですね、成果配分以上に。
     ですから、例えばニクソンショックで大騒ぎした1971年ごろ、日本の1人当たりのgdpというのは、1,600 ドルぐらいでしょう。今は3万ドルでしょう。私の入ったときの、日本の上場 企業の初任給というのは2万円ですから、そのときはすぐ飲んで食べてなくなってしまうわけです。結婚できないという人がいたわけです。それで、ボーナスの先取り、会社から借金 したり、そういう同僚がいっぱいいたんです。ほかの業種でもみんないたし、やはり基本的に生活、住宅。それで、家族がいるとまた広いのが必要だと、それまでは4畳半か6畳一 間でしょう。そういうプロセスで始まったんです。全く生活補助。それが、だんだん所得が上がっていくにつれて、結婚するかしないか、大きい家を持つかどうか、それは全部選択の 問題、選択ができるような所得水準にだんだんなりつつある。あとは、所得が上がらない層というのが、それが本当のマイノリティーであって、そこは別の対応。それは企業が対応 するのか、あるいはもっと社会的に対応しなければいけないところかもしれませんが、流れとしては生活水準とか所得水準が上がるにつれて、手当の発想というのはだんだん弱く なっていますね。
    岡沢会長代理
    あともう一つは、同業他社との賃金格差の横並びのために、フリンジの方で対応するという方法も採用したかもしれません。
    坂橘木委員
    それはそのとおりだと思いますよ。春闘というのはとにかく業界で横並びの賃金ですから。たまたまもうかったところはフリンジベネフィットで払うしかないというのは、今 までの日本の実態ですから。春闘ももうなくなりつつありますからね。だから、その問題もやはり時代とともに変化すると思います。
    岡沢会長代理
    制度の影響力を考えるときに、こうした制度の中で、どれが最後まで残りそうなのか。一つの抵抗勢力として、そしてどれが制度としては、実はソーシャルモビリ ティーが大きくなればなるにしたがって最初になくなるのか。だから複数の制度があっても、その制度が全部同じ影響力を持つとは思わないし、時代と状況によって随分違うと思う んです。その辺になると、制度そのものの従業員もしくは経営、組織に対する心理的なインパクトみたいなものを考察していかないと、横並びで全部これが同じ制度で影響力を持 つとは思わないですね。
     特に、私が海外で教えたりすると、一番わかってもらえないのが、この社宅制度。社宅制度そのものは、企業の論理から言うと囲い込みだったかもしれない。しかも、それが出てき たときには、最初は恐らく住宅供給不足の時代だったと思うんです。とにかく、どんなのでもいいから家に入りたいと、それが非常に大企業に入りたいインセンティブとして機能を果 たしたと思うんです。
     ところが、数量的に言うと、過剰供給に徐々になりつつある現在の住宅事情から考えると、社会的な機能とか、経営者及びそこで生活している労働者に対する心理的な影響力と いうのは、随分変わっていると思うんです。その辺の、時系列的な機能の変化とか心理的な変化というか影響力の変化というものをちょっと考察していかないと、どの制度がとりあ えずなくなりそうなのか、どの制度が恐らくずっと、日本型経営の残滓が残る限り根強く残っていくのかというのが、わからないかなという気はします。
     特に私なんかがこれを見ていて、社宅制度と人間ドック補助制度というのがインセンティブとしてどれだけの機能を持つのかというのは、我々の世代はあったんです。社宅が完備 しているあの企業に行こうとかというのが。けれども、今の若い学生などは、それは企業を選ぶときの選択肢としては、そんなに強くはないですね。
    坂橘木委員
    そういえば、独身寮は非常に宣伝の対象でしたね。立派な独身寮を持っていることが、企業の採用のパンフレットでもトップページに出ていましたからね。
    永瀬委員
    そうなんですか。
    坂橘木委員
    知らないですか。それで、住宅が不足していたから、企業が住宅をつくって、こういういい住宅を持っていますから、うちの社に来てくださいというのが、宣伝材料だった んです。だから、住宅が余ってきたら、こういう制度というのは自然と消える可能性が高いですね。
    坂東局長
    現物供与という意味は、まだ大きいですね。
    大澤会長
    以前、児童支援パッケージというお話しをさせていただいて、比較研究があるのですけれども、日本の場合には企業の家族手当等を入れても、oecd諸国の中で、最 も薄い児童支援パッケージしかなく、しかも住宅費用を含めるとマイナスになってしまうと。ということは、住宅費のところを補助してやれば、公共的な児童支援パッケージは薄くても プラスになれる。そうでない限りは、子どもを持っていると、処罰されているのと同じというシステムになっていますから、そういう意味では大きいのかなという気はします。
     あと退職年金のところも面白いと思いました。要約ですと6ページから7ページに掛けてですけれども、一定以上の勤続年数が受給資格になっていて、平均で14年程度なんです が、こちらの厚い方の報告書の7ページを見ていただきますと、男女別の平均勤続年数というのが出ていて、女性については無回答も多いんですけれども、回答しているほとんど は15年以内のところに女性の勤続年数が収まっています。それでそろえたわけではないんでしょうが、女性はほとんどこの退職年金はもらえないというのが、非常にはっきり出て います。これは公的年金ではありませんから、調整年金とか税制適格年金とかのことです。
    坂東局長
    これは、正社員で長く勤続する人を対象に、いろいろな福利厚生は設計されていて、それは女性を対象としたものではない。それからは、女性は排除されている。
    大澤会長
    ここは余りにもきれいに収まっているので、びっくりしたところです。
     今後についてというのを見ると、家族手当と退職年金制度というのが、一番残っていきそうな感じですね。
    永瀬委員
    退職年金ですね、従業員が出していない場合が多いですね。企業側のみという場合が多いですね。また、会計がどうなっているかということで、最初からいる年数に 応じて、企業内で積み上がっていくような形になっているとすれば、こういうことはなりにくいんではないかと思いますけれども、その辺の制度がどうなっているのかということが、大 きいかもしれないなという気がしますけれども。
    大澤会長
    それが、税制上の優遇措置と連動していますし、社宅の方もバブルのときに、かえって社宅投資というんでしょうか、土地を取得することを企業がやったのは、いろい ろと税制も絡まって、経理上、それが有利であったからという分析もございます。だからだんだん社宅がなくなったんではなくて、むしろバブルのときには投資が増えたわけですね。
    永瀬委員
    社宅に関しては、「人口学研究」に出した論文なんですけれども、社宅に住んでいる人は金融資産蓄積が非常に増えると。貯金が増えるという。
    坂東局長
    消費は増えないんですか。
    永瀬委員
    消費は、そのときは子どもコストを推計するというのがテーマだったんですけれども、プラス子どもという資産と金融資産の蓄積の代替関係を見るようなことをやった んですけれども、社宅に住んでいるというのは、安いコストで高い実物を給付されているというふうに、そういう形で調整しましたので、だから相対的には貯蓄シェアが豊かになるよ うな、そういう効果はあります。
    大澤会長
    アンケートの回収率が、必ずしも期待したほどではなかったということで、電話での追っ駆け回答というのを今しておりますけれども、現時点で把握している電話での回 答状況というのは、今日御報告のあった全体の状況を変えるようなものではないようですね。
    市川参事官
    はい。
    大澤会長
    でも、引き続きその辺はできる限りデータを集めて、しっかりしたものにしていければと思います。
     ほかにいかがでしょうか。
     それでは、御議論それから御意見ありがとうございました。
     では、続きまして、中間報告に向けた議論を行うために、事務局からの説明をお願いいたします。
     
    市川参事官
    それでは、「影響調査専門調査会中間報告について(たたき台)」という3ページばかりの資料をお出しいただければと思います。ナンバリングは特にございません。 作成主体も書いてございません。
     これは委員限りということでお配りいたしたものでございまして、議論を開始していただくための材料ということで用意したものでございます。中間報告をこのとおりつくるという案の ようなものでは全くございません。欠けている点も多いかと思います。そういったことですが、説明させていただきます。
     最初の3行にありますように、今御議論いただきました「雇用システムに関するアンケート調査」の結果等に基づき、女性のライフスタイルの選択に関する中立性の観点から、税 制、社会保障制度、雇用システムについての論点をまとめる、というふうにしております。
     まず、中間報告では社会制度・慣行の現状についてまとめてはいかがかと思います。具体的には、まず第1に配偶者控除ですとか、配偶者特別控除など、税制の現状。
     第2に、これは年金が中心になっておりますけれども、短時間労働者に対する厚生年金の適用、第3号被保険者制度、離婚時の厚生年金、遺族厚生年金、そういった社会保障 制度の現状。
     それから第3に雇用システムの現状を盛り込んでいるわけであります。具体的には年功処遇ですとか勤続年数、配偶者手当、それから収入制限、それから非正規従業員と正規 従業員との賃金・手当格差、などを挙げております。
     それから次に、税制、年金制度、雇用システムに関するモデルケース別の受払を盛り込んではいかがかと思われます。これもできるところまでまとめられればと思っております。 次のページに移りまして、ライフスタイルの選択に対する中立性からの論点、これが中心になるかと思われます。
     第1に、税制に関する論点としては、配偶者の税制上の控除等と就業調整の関係、これをどう評価するかということでありますが、現況では、その配偶者控除、配偶者特別控除 が、配偶者の所得とともに徐々に逓減するようにはなっております。
     次でございますが、社会保障制度に関する論点といたしましては、まず第一に、短時間労働者に対する厚生年金の適用と計算に関しては、その例としては第2号被保険者の短 時間労働者への適用と拡大を挙げております。勿論、ほかの考え方もあるかと思いますけれども、とりあえず、例としてこれを挙げております。以下同様でございます。
     第3号被保険者制度に関しましては、収入制限と就業調整の関係、これをどう見るかということを掲げております。
     それから、離婚と厚生年金に関しましては、専業主婦が離婚すると夫の厚生年金を享受できないといった問題があるわけでございますけれども、その対応として年金分割というこ とを例として挙げております。
     遺族厚生年金に関しましては、老齢厚生年金との併給調整があるわけでございますけれども、この対応として自ら働いて保険料を納付したことを、できる限り納付額に反映するこ とということを例として挙げております。
     最後に雇用システムに関する論点としては、賃金と処遇の格差ということがありまして、最初分析的なことが書いてございますけれども、所定内給与額に男女格差がある。それか ら、賃金体系が年功処遇的であるということ、そういったことから、転職や正規従業員では再就職が困難なこと。
     次に企業における成果主義、能力主義の推進と家族責任との関係。
     それから非正規従業員と正規従業員との賃金格差、ボーナス、退職金等の諸報酬、家族手当、福利厚生等の格差が存在すること。
     こういった状況を踏まえまして、多様な就業形態に対応した労働条件の整備ということを挙げております。
     次のページに移らせていただきまして、配偶者手当等についてでございますけれども、配偶者手当等の手当・福利厚生における配偶者の収入制限と就業調整との関係をどう評 価するかということ。これを踏まえまして、企業における配偶者手当等の今後の方向は、縮少・廃止、賃金の振替、ということを例として挙げております。
     なお参考データといたしましては、先ほど御議論いただきました雇用システムに関するアンケート調査結果の要約を盛り込むことを挙げております。
     それから、次にモデルケース別の受払推計の要約もできるだけ盛り込むということで、まず、パート就業のケース別に、配偶者控除、配偶者特別控除に係る税額の相違ですと か、年金保険料と給付の相違、配偶者手当の相違を推計したものですとか、それから、2番目にありますように、専業主婦のケース別に、厚生年金需給額の相違を推計したもので すとか、3番目にありますように就業中断に係る生涯賃金の相違を推計したものなどを挙げております。
     以上、これが中間報告の内容といったことでは全くございませんで、不十分な点ですとか、不適当な点も多々あるかと思います。あくまでも中間報告をどうするかということについ て御議論いただくためのたたき台として御説明させていただきました。
     以上でございます。
     
    大澤会長
    ありがとうございました。この中間報告に盛り込むべき視点について、御質問や御意見をお願いいたします。冒頭御説明ありましたように、全くのたたき台ということで、 資料ナンバーも振らずに出されておりますので、ご自由に是非意見をお出しいただきたいと思います。
    坂東局長
    昨年の12月14日に女性と年金の研究会の方から論点整理が出されておりまして、社会保障制度に関する論点も2ページの(2)の部分については、例えば短時間労 働者に対する厚生年金の適用のところでは、今まで4分の3就業時間がある人を適用していたのが2分の1でも適用をするとか、そういったこと。
     あるいは年金の分割等については、出されておりますけれども、それにかかわらずいろいろな視点から社会保障制度と女性のライフスタイルの選択という点について、もっと問題 提起ができればいいなと思って、実はこの部分だけ先行ということもあり得るかなと考えていたんですけれども、社会保障制度の現在の状況というのは、例えば3号被保険者として 自分の年金を拠出しなくても、基礎年金がもらえている人たちをどう処遇するかというのはいろいろな考え方があるわけなんですが、現実に自分が働きたくても、正規従業員として 採用してもらって、もう一度働くということが非常に不可能に近いような現状の雇用システムを考えると、社会保障制度についてだけ議論をしていても、余り生産的ではないんじゃな いか。今までどうしても社会保障制度について論じられるときは、その制度についてだけ議論することが多かったわけですけれども、その根っこになっている雇用システムこそ、女性のライフスタイルの選択に一番大きい影響を与えているんじゃないか。この社会保障制度に対する論点の部分と雇用システムに関する論点を有機的に結び付けてこちらで議論 していただければありがたいなと思っております。
     女性と年金のところでも、育児期、その期間を何年にするかは別として、その間に3号被保険者的に自分で保険料を拠出しなくても、将来その部分をカウントされるということにつ いて異論はないだろうと思うんですけれども、例えば子どもが既に大きくなっていて、専業主婦というライフスタイルを選択をしている自由を認めるのか認めないのかとか、自分であ えてそういうライフスタイルを選択しているのか。やむを得ず、能力も意欲もあるんだけれども、今の日本ではそういう人たちを受け入れてくれないから、やむを得ず専業主婦という ライフスタイルを選択しているのか。そこらのところについては非常に議論が分かれるところでして、恐らくは雇用システム自体が一番ライフスタイルの選択に対しては中立的では ない。自分が意欲と能力さえあれば、働けるというわけではない。それはかなりはっきりしているんじゃないかなと思うんです。そこのところを今、先ほどの雇用システムの手当等々 を見ても、企業福祉というのは勤続年数の長い正社員の人たち、すなわち男性を手厚くするように設計されているんじゃないかとか、絡んできているんじゃないかと思うんです。
    坂橘木委員
    永瀬さんが一番こういう問題に詳しいですね。今、中高年の女性たちが、本当は正社員で働きたいんだけれども、そんな職場がないからパートに甘じているのか、あ るいは専業主婦を選んでいるのか、どちらなんですか。
    永瀬委員
    そういう質問ですか。それに真正面にお答えするとすると。
    坂橘木委員
    今、局長の言われたのは、まさにそういうことでしょう。
    坂東局長
    両々相まってということだと思うんです。どうせそういういい就業機会が十分にはないと。
    坂橘木委員
    逆に言えば、子育ての間、家にいたら、それだけその人の人的資源、能力は減りますから、高い賃金が欲しいと言ったって、その人が能力がない可能性だってある。
    永瀬委員
    私が思ってきたのは、日本の正規社員と非正規社員の賃金体系の格差というのは、極めて日本では大きいものがある。例えば家計調査を見ても、共働き世帯であっ ても、妻の貢献分というのは、今すぐ数字が出てきませんけれども、特段に低いのが日本の特徴なんです。共働きであってもです。
    坂橘木委員
    条件は同じにして、その人の能力だとか学歴だとか年齢を。
    永瀬委員
    平均的に見て共働き世帯というのは、家計調査などでは比較的低いんですけれども、その共働き世帯であっても、妻の貢献分というのはやはり非課税限度内とか、 第3号内の人が大変多いものですから。勿論、一部には男性並みに取っている人も極めて少数、例えば公務員とか、いないわけではないですが、大変大きな格差があって、それ がまた結果としての性別の格差になっているのが日本の特徴だと思っております。正社員と非正規社員との間との格段に大きい格差が日本の雇用システムの中にはある。
     中年期にやり直しが非常にしにくいような状況があるのは事実だろう。それはここには書いてありませんけれども、法律上の扱いからしても、正社員と非正規社員とでの同一価値 賃金労働を認めるか、認めないか。認めない。それは日本の法理ではない。日本ではそういう形ではないんだと。そういう形で法律からも現在の格差というのは一定の支援を受け る形、つまり雇用区分間の格差はしようがない。同じ正社員で同じ学歴で同じ勤続年数で同じ仕事をしていて格差があるのはおかしいかもしれないけれども、片やパートで、片や正 社員であったら、同じことをしていても、おかしいというのが丸子警報機の訴訟の結果でしたけれども、今までのは大体においては、それはおかしくないというのが今までの判例の結 果でもあった。
     そういうことというのは、やはり中年期に同じ能力、意欲もある人が、さて働こうかなと思ったときに、やめておこうかなと思う。思うというのは、常に比較ですから、今、家にいて得ら れるものと、外に出て仕事をすることによって得られるものとの間の相対的な比較でどちらかを選ぶわけですから、それは外の条件が悪いから家にいるということを選んだ選択と いうか、それとも外の条件が悪いので家にいる人は比較的多いと思うんですけれども、それを自らの選択とするべきか、しないべきかというのは、なかなか難しい。
     前に分析したことがありますけれども、適当な仕事がないから家庭にいるという中高年の比率というのは、意外と少なかった。ちょっと私は驚いたんですけれども、特に大卒などは 意外と少なかったんです。大卒女性などは意外と家事都合というのがいつまでも続くんです。子どもが大きくなっても、高卒くらいの方ですと、子どもが義務教育くらいになると、家 事都合というのは急速に減って落ちていくんですけれども、大卒の場合は、何歳になると家事都合が消えるのかなと思って見てみると、50代になると消えるんですけれども、50代 での再就職というのはなかなか難しいだろうと思うんですが、それがいつまでも残るという特徴があったというのは、以前分析して思ったんです。
     それを比較の問題で日本の男性の働き方が全く家庭を顧みないほど長時間働いている。そうなると、大抵の大卒の女性というのは、比較的そういう働き方をする男性と結婚して いる場合が多い。近くに通っている人じゃない人と結婚する場合が意外と多いかもしれない。そうなると、家事都合というのはいつまでも残っていく可能性もあるのか。そこまでの分 析はまだしていませんけれども、日本の高学歴女性がいつまでも家庭内に入っているというのが日本の特徴ですけれども、それが自分の選択なのか、それともさまざまな社会的 な状況が最も彼女にとっての望ましい選択にさせてしまっているのか。
     そして、それが長期的に日本経済、あるいは日本の将来にとってそういう選択をずっと残しておくことが、維持可能な将来像を描けるのかどうかという点に関して言えば、私は否定 的であるし、直すべきだと強く思っておりますけれども、そういう意味で望んでいるのか、望んでいないのかというのはなかなか難しいかなと。そういう状況があるというふうに理解し ています。
    大澤会長
    年齢別労働力率のカーブというのに、条件が整えば働きに出たいというものを点線で書いて、潜在有業率を示すと、逆u字型になるという、このグラフはよく知られて いるわけですけれども、こういうものを学歴別に分解するということはそんなに難しくないですね。
    永瀬委員
    それは今の就業構造調査では出ていましたか。
    大澤会長
    労働力率ですと、要するに大卒はキリン型で、m字にはならないというのは出てきますね。それが潜在有業率まで学歴別に出せるものかどうか。
    永瀬委員
    データにもあったと思いますけれども、公表データにそこが出ていたかどうかはよくわかりません。
    高尾委員
    今の家事都合が学歴が高いほどすごく残るというのは、そんなことでいいのと本当に思ってしまうんですけれども、ちょっと異様な感じがするんです。今おっしゃったよ うに、日本の場合は正社員の妻と正社員の夫では家庭が成り立たないと。その辺が一つ問題としてあるんだと思うんですけれども、もう少し両方の労働時間とかいろいろな育児休 業とか子どもが病気のときでも休みになれるとか、フレックスタイム、そういうことをさまざま整えて、両方が正社員であってもきちんとやっていけるぞというようなことにしてもらえ ば、いわゆる能力があるかもしれないと思われている大卒の女性たちというのはやっていくんじゃないかなというのが1つあります。
     今、大卒の女性がいつまでも家の中にいるという実態は、本当にすごくあるなと感じておりまして、某国立大学の付属中学校の父母会に行ったことがあるんですが、ほとんど女性 が来ております。時間帯としても、2時とか3時ですので、それで非常に自分のお子さんのことについて物すごく細かく知っておられまして、この間の中間テストではこの問題が出 て、うちの子はここが解けなかったとか。
    坂橘木委員
    昔の教育ママという言葉はもう死語ですかね。
    高尾委員
    私がなぜそこにいたかというのは置いておくことにして、本当に異様な感じ。自分の能力をそういうところに使っているというのがすごく異様な感じがしましたし、そういう ふうに教育を高く受けてきたということは、社会からも多くの資本を投下されているわけで、その人的資源をもっと活用しないと、日本の将来は不安じゃないかということをすごく思っ ています。
     それと、よく言われる高給取りの妻は働かない傾向があるということもすごく言われているんだけれども、その辺は私はちょっと疑問があって、高校受験生や大学受験生とかに外 国語を教えたりとか、何らかの形で周りを見渡すると、収入を得ている。それが被用者という形で企業に雇われていない場合がほとんどですけれども、そういう形で自分の能力を発 揮している女性も結構いるような気がするんです。その辺で一般的に所得の高い男性の妻は働いていない場合もあると思いますが、そうではなくて、見えないところで働いている 人も多いんじゃないかなという感じがするんです。
     全然まとまらない意見なんですが。
    小島委員
    働いている女性と専業主婦との中間にいっぱいまた人口があるんじゃないですか。家事都合と言うけれども、家にいて所得を得る就業はしていないけれども、npoを やったり、趣味をやったり、家庭にいない。しかし、就業はしていない。非就業で何をやっているかというと、特に子どもが成長して独立してしまった後の家庭で、女性が非常に自由に 動いている。それはこれから高齢化社会になるとその比率が極めて大きくなると思うんです。この中間のところをどうやって分類するか。専業と就業主婦という単純な分類じゃ収ま らないんじゃないかと思うんです。
    坂東局長
    そういうノンプロフィットの活動をしておられる人たちを、それこそ税制だとか社会保障で優遇して当然だという意見をおっしゃる方もいます。
    小島委員
    我が家は全然所得を得る就業はしていませんけれども、家に全然いないんで。
    坂東局長
    文化活動ですとか、いろいろ人間関係なども、そちらの方をなさっていた りして、そういう方たちと本当に介護をすべき人がいたり、あるいは子どもを抱えて働けないという人たちと、同じ次元では論ぜられないんじゃないかなという気もします。そこのところ は女性の立場に立つといろいろ多様性があって、議論がどんどん分散していってしまうんですけれども、企業の側が雇用者として24時間働ける方の扶養家族に家事をやってもらう ような労働者を期待しているのか。それを奨励するようなシステムを持っているのか。私は今は持っていると思うんです。そして、9時から5時まで的な、子どもが病気になったら休 むような育児休業をしっかり取るような労働者というのは、歓迎されないという隠れたメッセージがシステムの中にあるのかどうか。私はそういったことも問題にすべきなのかという 気がするんです。
     女性たちが選択の多様性を持っているのは当然なんだけれども、雇用のシステムの側、あるいは社会保障制度の側には、はっきりとこちらを好ましいとするメッセージがあるん じゃないでしょうか。
    永瀬委員
    この中で扱われていないんですけれども、児童も社会保障の中に入れたらどうなのか。児童に関するものです。というのは、先ほどおっしゃっていた家族手当とか、配 偶者手当とか、社宅は住宅ですけれども、そういうのを国の政策として児童への手当、あるいは住宅政策としてやっている国も随分ありますね。それが日本の場合には、男性が正 社員として働くことを通じてそういうベネフィットをようやく受けられるということが一つの、何と言うんでしょうか。企業がそこをやっているわけです。年功賃金であると。また、いろんな 手当を出してくれるということで、その企業にいればどうにか家族は養っていけるけれども、そうじゃないと養われないと。子どもがいるいないとか、そういうことよりは、むしろそこに 勤めている男性はそういうものをみんな受けられるけれども、そこにたまたま勤めていない男性と結婚すると、そういうものはないという、そういう企業の正社員に対する手当という 形でやるべき、今は豊かになりましたから、やらなくてもよいようなものが、そこで一定の性に対して行われていて、国全体としては余りされていないことが今のような、非正規化が 進んでいく中では、そういう安全ネットをもっとつくっていく必要があるんじゃないかという気もします。
     また、社会保障の中で年金しか扱っていませんけれども、第3号問題のようなものが介護保険でも医療でも全部同じにあるわけで、その年金だけではなくて、社会保障全体として こういう負担方式を取っているということをどう考えるかということじゃないかと思います。
    坂橘木委員
    おっしゃるとおりで、今、永瀬さんが言われた児童手当プラス育児休業制度、これはここに一言もないんで、女性に関しては非常に決定的な役割を果たしているわけ で、育児休業制度、その間の賃金はだれが保証するのか。企業なのか、国なのか、公共部門なのかという選択もあるし、今は育児休業制度をやったのは、雇用保険から何割か支 給されているんだけれども、雇用保険が大赤字ですから、今後支給されない可能性が非常に高いんで、その育児休業制度というのは女性のキャリアを守る意味においても非常に 重要なので、一回辞めてしまうのではなくて、その企業に何からの保証があっていればいいわけで、そういう意味で育児休業制度を、男女共同参画会議ですから、その問題は一つ やっていただきたい。
     もう一つ、社会保障に関しては、雇用保険のことも全然ここに入っていなくて、雇用保険の受給資格に週に20時間以上働くという要件もありまして、あるいは契約社員も1年以上 雇用契約がないと雇用保険の受給資格がない。そういう意味で、雇用保険もここに1つ入るんじゃないでしょうか。
    大澤会長
    税制の現状というところから始めても、まず配偶者控除、配偶者特別控除というふうに入っておりますが、神野委員の御報告の中にもありましたように、課税単位で所 得分割を認めるか否か。それからさまざまな人的控除、それから全体としての税制の累進度、直間比率というようなものことも関係してきます。ワーキング・チームで、今タックシン グウェージズ(taxing wages)というoecdのデータで日本女子大学の埋橋さんにシミュレーションをしていただいていおり、それを見ますと、日本の税制というのは片働き支援であ る。ただし、そんなに強い片働き支援ではないが、逆に言うと、単身者の税負担は非常に重くなっているという意味で、有配偶支援であり、なおかつ片働き支援の方に傾いていると。 その効果をもたらしているのは、主として配偶者控除なんだけれども、国際比較で言うと、例えばオーストラリアなどは非常に共働き支援の税制になっているのは、控除などよりも 累進度が高いというところでなっている。
     スウェーデンの場合が大変面白くて、世帯としての収入が同じなら、共働きでも片働きでも単身でも全く税率が同じなんです。やや共働きの方に税率が低くなっているという意味 で、共働き支援で、なおかつシングル・バッシングはしていない。これは完全に個人単位の課税になっている。比例税なんです。というようなことが関係しているという試算結果が出 始めておりますので、そういうことから考えても、税制のところを取っても、日本では配偶者控除が大きいんだけれども、国際比較的に言うと、ほかの制度が効いてくることもあると いう意味では、包括的にとらえる必要があるのかな。社会保障のところはおっしゃるとおりですし、前回でしたか、私が御紹介しましたウォルター・コルピ(walter korpi)という人の比 較の指標を見てみますと、育児休業だとか父親休暇だとか、それから公的な保育サービスがゼロ歳から3歳児までの人口をどのくらいカバーしているかとか、そういった一連の指 標が挙がっていて、それで共働き支援的システムなのか、それとも片働き支援的システムなのか、それとも何にも支援していないシステムなのか、日本は何にも支援していないと いうグループに入れられていたと思いますけれども、そういうことが出てきますので、その辺も包括的に見ていく必要があろうかと思います。
     こちらのワーキング・チームの作業も急いでおりますので、2月には十分御報告ができると思うんですけれども、ただ、この受け払いというのは、データがまだ来ていないので、一 体どうやって中間報告に盛り込めるか不安なんです。
    坂東局長
    データがなかったら、この部分は後回しにして、中間には。
    大澤会長
    事務局にはお考えがあって、このたたき台に入れてくださっていると思うんですけれども。
    坂橘木委員
    全国消費実態調査を頼んでいるんですか。
    大澤会長
    そうです。
    坂橘木委員
    まだ出る予定が全然ないんですか。
    市川参事官
    手間が掛かるというのが通常のようでございますけれども。
    大澤会長
    5か月くらい掛かるのは不思議なことではないんです。
    小島委員
    先ほど御説明していただいた厚い方の報告書の7ページで、勤続年数に関して、男性と女性と歴然たる格差に説明がありましたね。男性側も今非常に重要な問題を 抱えているんです。例えば15年くらいいると、こんな職場はいやだと毎日思っていても辞められないんです。それは年金もポータブルでないし、キャリアもポータブルではなくて、日 本の労働市場というのは、企業内労働市場はあるけれども、一旦企業を出たら全く閉ざされるのが実態なんです。15年くらい経ったら、労働市場というのは企業内労働市場なんで す。そこを何とかしないと、日本の雇用制度というのはダイナミックスに動かないし、産業構造の変革も進まないし、能力ある人がちゃんと動けない。それがどういうふうに変わるか 次第で、女性の雇用機会というのもかなり大きく変わってくるんです。だから、それをオーバーラップして議論しないといけないんじゃないかという感じもあります。今、労働流動性と いう議論をしていますけれども、今はほとんどゼロです。とりわけ勤続20年、25年くらい経った場合。
     企業サイドのいろんな計算を見てしますと、賃金が年功制でだんだん上がってくるでしょう。最初は低いわけです。一生懸命に働きます。熟練度は低いけれども、賃金は安いから 会社にとってもプラス。そのうち熟練度が上がって、生産性が上がるわけです。賃金以上に働く。勤続15年くらいになると逆転されて、賃金だけ上がって、生産性は落ちてくる。ここ で全部首を切ると一番企業はもうかるという話になっているんです。
     そういう格好ですから、今のいろんな雇用、賃金構造を前提にしますと、辞めたくても辞められない層が、結果的に男性だけ正規社員として優遇されているという統計になるんで すが、実態はそうじゃなくて、すごい残酷な時代に入っているんです。
    岡沢会長代理
    女性は逆でしょう。若い段階で辞めたくないのに辞めさせられる。
    小島委員
    雇用流動性をやると、どうも能力と適性に応じて相互乗り入れができるんじゃないかと思うんです。
    永瀬委員
    ちょっと伺いたいんですけれども、企業年金がポータブルじゃないというのは制度の問題だと思うんですけれども、キャリアのポータビリティーというのは、どんなふう な形でそれは可能になり得ると思いますか。
    小島委員
    それは専門職とか、要するに、仕事の専門性を評価する仕組みがないとだめです。企業は大体2年くらいでがらがら変えて、全部をジェネラリストにするわけですよ。
    永瀬委員
    つまり、もう職務評価という基準はだめだと。
    小島委員
    そうですね。だから例えば、山一証券はつぶれましたね。一旦倒産したら解雇になるわけですね。労使協約がなくなって、それを待っていたように、メリル・リンチが採 用したわけですが、個人全部に面接したわけです。あなたは何ができますかというと、ずっと残っている人は、「部長は勤まります。」。「そんなもの要らない。具体的に何ができるの か」というと、「頑張ります」と言う。新人と同じじゃないかと。
     要するに、キャリア形成ができていないんです。そういうことで全体が動いているシステムが企業内労働システムなんです。だから、プロは非常に生まれにくいんです。
    岡沢会長代理
    全くその逆が北欧でして、北欧がソーシャル・モビリテイーが高くて、キャリアは全部ポータブルなんです。その代わり1つだけ非常にシビアな現実がありまして、 パブリックなポストもプライベートなポストも、補充は全部新聞広告公募なんです。もしくはインターネットでの公募なんです。だから、その社内に何年いたかということは、ほんの少 しはメリットになるけれども、基本的にはほかから、より能力のある人が来たらそちらの方が優先なんです。両方とも企業もしくはパブリックセクターが望んでいる能力に達していな きゃ両方とも不採用なんです。そういう意味では非常にシビアな形を取っているんです。
     そのときに年齢と性ということを条件に排除してはならないということになっていて、女性の社会参加が比較的進んだんです。それでも現実に問題はあるんです。パブリックセク ターとプライベートセクターである程度住み分けたりしているというところがあります。○永瀬委員 プライベートセクターでも公募なんですか。
    岡沢会長代理
    基本的には公募です。だから、非常にシビアな世界なんです。
    永瀬委員
    プライベートの場合は強いることはできませんから、公募するという文化があるということなんですか。
    岡沢会長代理
    そうですね。なぜかというと、どこの企業も普通の国民が払った税金でつくった道路を使っているんだから、いかに民間企業といえども自分たちの製品を国民と無 関係な道路で運搬しているわけじゃない。だから、それは企業の社会的責任だということで、毎日、新聞が非常に厚いんですが、その部分はほとんどが仕事の求人広告なんです。 そして、今みたいに景気がいいときですと、どんどん厚くなっていくわけです。給料を払いますから、より優秀な人材を採りたいという形で、非常にはっきりしています。だから、景気 がいいと、不動産広告と求人広告がどんどん厚くなっていく。
    永瀬委員
    日本の土壌がある中での新しいキャリアのポータビリティーというのはどんなふうですか。
    坂橘木委員
    やはり小島さんが言われたように、もう変革期だと思います。それこそ役所だって2年に一回ずつ代わっていて、何をやっていましたかと言うと、2年に一遍代わりまし たと。
    小島委員
    政治家も総理大臣しか勤まらない人がいるというようで、全く変わらない。○橘木委員 これは役所も企業も、そういうような人材形成もそろそろ変えなきゃいけない時 期に来ているんじゃないですか。もう変わりつつありますけれどもね。今度メリル・リンチに行った山一の人はどうなんですか。もうメリル・リンチで相当のキャリアなり職種なりを得 られたんですか。
    小島委員
    まずこれまでどおりに近い処遇を3年間くらいはします。その後は個別面談です。解雇も含めてです。
    坂橘木委員
    メリル・リンチも大幅カットでしょう。その人たちはメリル・リンチにいたときに、相当なキャリアを積まれたんでしょう。
    小島委員
    採用が始まったのは98年でまだ3年間ですから、キャリアは無理です。今リストラするのは、要するに個人相手のホール(セール)です。それは国内もみんなずんと しぼんでしまって、仕事がなくなった方ですから、キャリアはレベル・アップしていないと思うんです。
    大澤会長
    自分は何ができて、こういう経験を積んでいるから、こういう能力もこれから付くはずだみたいな、欧米流にcv(curriculum vitae)と言うんでしょうか、自分を売り込む ための履歴書みたいなものを書かせることを始めた企業はそこそこあるようで、そういうのにひな形みたいなものをつくって、情報提供して広めようというような取り組みを厚生労働 省の中央職業能力開発審議会、現在は労働政策審議会ですが、そこでの議論では出ております。
     ただ、先ほどの北欧のお話なんですけれども、その割には民間企業の管理職の女性比率というのは、カナダ、アメリカ、オーストラリアに比べて高くはないですね。
    岡沢会長代理
    管理職はほとんどがパブリックセクターです。
    坂東局長
    パブリックの方が給料は低いんです。
    坂橘木委員
    民間には女性の管理職は余りいないんですか。
    大澤会長
    カナダ、オーストラリアですと、30%、40%、管理職は女性というのは当然なんですが、北欧はそういう意味では全然低いです。
    岡沢会長代理
    先ほど言いましたけれども、ちょっとした住み分けみたいなことがありまして、今、非常に大きな問題になっているのは、高等学校、大学のときの進路指導のときの オリエンテーリングがうまくいっていなかったのではないか、18歳前後のときに、一番得意な点数を取れた科目がその人の適性と考えてしまったんではないかということで、日本に 比べると相当違いますけれども、やはり経済学であるとか、法学であるとか政治学というところに女性が大量に進出するようになりました。だけれども、テクノロジーは圧倒的にまだ 男性です。
     スウェーデンなどというのは工業国家ですから、テクノロジーが強いところ、経済学が強いところというのは、就職とかが非常にいいわけで、 キァリアアップのチャンスがあるわけで す。ところが、どうしても18歳の段階で女性が得意なところというのは、語学系か教育系か文学系に行ってしまって、そうすると、受け皿としては、パブリックセクターに行かれる方が 非常に多くなってしまう。それが結果として、同一年齢で言う男女の賃金格差に発展する。だから、公務員の世界は圧倒的に女性で、女性の管理職の世界です。プライベートセタ クーは圧倒的に男性の世界で、管理職も圧倒的に男性が多いという形を取っています。
     これが今どういう影響力があるかというと、教育の問題というのが1つ。
     あとプライベートとパブリックの相互乗り入れというの相当ありますので、その辺はそれほどではないです。我々が深刻ぶるほどにはないです。
    坂橘木委員
    日本は全くないですね。
    岡沢会長代理
    先ほど言いましたように、基本的にはポスト公募ですから、だから、民間企業に勤めている人間が今度は役所に応募してみたり、その役所の給料が今は低いけ れども時間外労働がないところ、パブリックセクターにいる人は少し給料の多いところにアプライしてみようかという形の相互乗り入れも可能です。
    坂橘木委員
    そうすると、企業風土なり文化まで来ますね。例えば日本だと先ほど言ったように公務員と民間とは入ったときから別という感じがして、こんなのは全然ゼロですね。
    坂東局長
    最近は少しずつ交流が始まっておりますが。
    坂橘木委員
    ほとんどないでしょう。ゼロと言った方がいいでしょう。
    坂東局長
    うちの局には任期付き公務員の方がいらっしゃいます。
    坂橘木委員
    公務員の人は民間に行っていますか、行っていないでしょう。
    坂東局長
    サントリーとかいうところへ、2、3年という感じで交流には行っております。
    大澤会長
    北欧諸国は政治家でクオーターと言うんでしょうか、選挙の候補者の名簿を女・男と並べたりするので、クオーター制度のある国かと思われているが、雇用に関して ポジティブ・アクションとか、ましてクオーターというのはありませんね。
    岡沢会長代理
    パブリックのポストは大体少数の方の性を基本は40%は優先的に取ってくださいというのがあります。ところが、民間企業については、企業をつぶしてまでそれに こだわるだったら、罰金を払った方がいいという経営者もいますから、パブリックセクターについては、少数の性を最低40%は取る。これもまたいろんな問題を起こしているんです。 ちょっと例を出しますと、大学は基本的には公立の大学ですから、そこで女性史の教授を採用しようとする。そうすると、大学院生は圧倒的に女性研究者しかいない。ところが、少 数性を40%と言うと、数少ない男性の女性史研究者の中から教授をリクルートしなければならないという問題がどうしても出てきます。
     結局、そのポストも全部公募ですから、世界中に向かって開きますから、例えばヨーロッパとかアメリカの研究者の男性がアプライしてきて、そのポストに就くということもあります。 パブリック部門はそうなんですけれども、プライベートセクターの方は努力目標としての40%というのは、男女機会均等オンブズマンが一生懸命努力して、それに努力目標に達し た企業を実名で報道したりして一生懸命しているんですけれども、民間企業というのは、逆に言うと、企業の国籍を移すという方法もありますから、パブリックセクターと違って、プラ イベートセクターの場合は、こうしたグローバリゼーションの中で、スウェーデンの企業でなくしてしまえばいいわけです。だから、いろんな問題が起こっているというのは事実です。
     ただ、基本的にその問題については、余り大きな問題になっていないのは、さっき言ったようにソーシャル・モビリティーが大きいですから、世界の職場で働こうという前提でキャリ ア・プランを考えている人が余りいないから、まあ衝撃度は少ないくらいになってはいます。その辺は一つの問題点だろうと思います。
     それと、ちょっと気になったのは、社会保障制度等々などで、結婚というものが一つのキーワードになっている。そして、高学歴の女性が職場を一時離脱した期間が長くなるという のは、結婚というものがある程度のガードをしているとするならば、現に今結婚している。そのある瞬間から離婚すればその日から働くわけですから、とりあえず結婚というのは非 常にカンフタブルな状態にあるとするならば、なぜ日本の女性が今、初婚年齢が上昇して、25歳、29歳の未婚年齢がこれほどまでに急速に上昇したのかという、若い世代の結婚 観と、ある一定の年齢層以上の結婚観との違いが、もしか非常に大きなカルチャーのギャップが出てきたんだとするならば、結婚とか離婚という考え方、もしくは事実婚とか法的な 結婚という問題をどのような形で、今からこういう制度の中に組み込んでいくかというのは、ある程度提案するべきかしないべきか。それはちょうど非正規従業員と正規従業員との 関係かもしれません、その事実婚と正式な法的な結婚との関係というのは。だけれども、実際問題として、正式に結婚しているからかなりのベネフィットが得られて、事実婚だからも らえないとしたら、これは非常に不合理な制度じゃないか。その辺のことをどのような形で盛り込んでいくのか。
     基本的にはこれだけ平均寿命が長くなって、離婚発生率がこんなに低いというのは珍しいんじゃないかと思うんです。
    大澤会長
    今は増えてはおります。やはり正規の結婚をしている方がいろいろなベネフィットはありますね。
    岡沢会長代理
    あるんでしょうね。そうすると、結婚が一つの歯止めになっているのかどうか。もう少しわかりやすく言えば、自らの感情を吐露するよりも、この制度があるから、 余り自分の感情どおりのことは言うのはやめようと思っているのかどうかです。
    坂東局長
    結婚までやると、中間まとめでは難しいのではないかなという気がします。
    坂橘木委員
    でも、大事な視点であることは、例えば離婚時の厚生年金とか、そんなことはここで議論しているんだったら、離婚の前の結婚ということも、全くもって無視するのはで きないと思います。
    永瀬委員
    どういうふうに書くかはわからないんですけれども、母子世帯の問題を一言どこかに入れていただけると思います。非常に貧困率が高い。
    坂東局長
    どういたしましょうか。事務局としましては、中間のまとめを3月に出すとしたら、社会保障制度というのは、もともとは年金だけに限定するつもりだったです。ですから、 ここに書いてある<1>から<4>も年金関係の論点だけになっているのはお気づきだと思うんですけれども、表題を変えて、中身の方を変えないので、羊頭狗肉になってしまっているん ですが、もし本当に社会保障制度全般について論点を出すんだとしたら、先ほど御指摘いただいたように、医療保険、介護保険、雇用保険、それから児童手当、そういったような部 分まで全部この中に広げるということになりますと、3月はちょっと無理だなという感じがするので、そこらは次の段階で。こういう指摘があるという感じで、深くは突っ込まない。一応 戦線は、年金を頭に置いた部分に、特に女性と年金のところの有力な参加者の先生方もおられますので、そうした部分を中心に行うのか、そこのところを御判断、御議論いただきた いと思います。
    大澤会長
    論点というところに入れるには、この場での議論が足りないようなことについては、1の「社会制度・慣行の現状」というところに、国際比較の側面を入れて盛り込んで いけばいいんじゃないか。日本の制度はこういう特徴がありますよというのは、諸外国との比較で言えることなんで。
    坂東局長
    ここに例えば医療保険、介護保険、雇用保険の現状と問題点という感じですか。
    大澤会長
    はい。現状で、それが直ちに問題点と言えないにしても、他国との比較ではこのような特徴が言えるというようなことは、これはワーキング・チームの報告が近々上 がってまいりますので、その辺り精査して、盛り込むということが十分できると思います。○坂東局長 そこのところに年金や医療保険、介護保険で、横並びでいきますかね。
    坂橘木委員
    このグループでこうあるべきかということまでは当然言えないです。ほとんど議論していないしね。年金は多少は議論しましたけれども、ほかの社会保障については、 会長が言われたようにほとんど議論していないです。
    大澤会長
    このような点が議論の対象になるであろう。そういう意味での論点整理というのはできると思います。ただ、論点の社会保障のところも、年金の方で扶養されていると 認められるための年収の限度額を130 万から65万に下げてはというポイントが出ていまして、これは健康保険にも連動しないと本来おかしいことですから、そんなふうに年金から 切り込んでいっても、雇用保険や介護保険はどうするんだということは出てまいりますから、そうやって論点として提示はできるんじゃないかと思います。
    坂東局長
    65万は130 万の半分ということで余り深い議論で出てきた数字ではないんです。
    永瀬委員
    慶応大学の樋口先生が最初に、何例か報告する中で挙げられて、最終的にそれが報告書の中に残っていったということです。
    大澤会長
    特に根拠はないけれどもとおっしゃいながら、例えば65万ということをおっしゃったんです。
    永瀬委員
    私は拝見しますと、(2)の社会保障制度の年金のことは、ほぼ女性と年金検討会で出ているようなところが出ているように思うんですけれども、それをこの会議でど うなのかということはまだ十分に話はされていなかったような気もします。
     それから、同じことを繰り返すのも余り意味がないように思うんです。やはりこの会議としては、もう少し年金以外も含めて幅広い視点が要求されているのかなという気もするんで すが、いかがでしょうか。
     実際問題としては、余り話し合っていないかもしれないけれども、例えば雇用と年金との関係とか社会保障との関係というのは、年金のところでは話せないわけですけれども、ここ では話し得ることなのかなという気はします。
    坂橘木委員
    そうかもしれませんね。ここではもうちょっと幅広い視点から提言とか、そういうものをしてほしいという期待はあるでしょうね。
    永瀬委員
    社会保障の詰めた議論というのは、それだけでも何十回もやらないと、どうにもならないと思うんですけれども。特に男女共同参画の視点からというのは、1つのポイ ントだと思うんです。
    坂橘木委員
    おっしゃるとおりだと思います。そうなると、やはり幅広い制度から議論した方がいいということになりますね。
     私は個人的にはこの2ページの(3)の雇用システムに関するところをもうちょっと、わっと言った方がいいような気がしていまして、いわゆる正規社員と非正規社員の賃金格差も 今、日本は拡大中なんです。非正規社員の多くが女性に固まっていますから、男女間の賃金格差、日本だけが先進国の中で唯一拡大中なんです。正規職員の間の男女間賃金 格差は縮小なんです。これはいい傾向なんですけれども、非正規まで含めると、男女間の賃金格差は拡大傾向なので、これをどうするかというのは私は非常に重要な問題だと思 うんで、先ほどそちらからも出ましたように、これに対して我々が何か物を言うという機会があってもいいような気はするんですが、いかがでしょうか。
     企業に要求しても、企業は高い賃金を非正規に出せませんと言われたら、終わりなんだけれども、一番有名なオランダの取り組みというのは、ワークシェアリングの方でパートと 正規の1時間当たり賃金は差を付けてはいけないというのは法律で決めた。そういう国すらあるわけで、日本ではいきなりそこまでは絶対に無理でしょうけれども、日本でそんな法 律がつくれますか。
    坂東局長
    法律はできないでしょうけれども、今、雇用が厳しい中で、ワークシェアリングというのは、経営者側も組合側も言い出してはいますけれども、その最大のネックは、同 一労働同一賃金が確立していないで、それこそフリンジ・ベネフィットとか、年功部分が多いということだと思いますので、法律にはならないだろうと思いますけれども、そういった部 分の格差を少なくしなければ、ワークシェアリングを幾ら声を大にしても、実現することは難しいだろうくらいは言えるかもしれません。
    大澤会長
    1つのとっかかりは、いわゆるパート労働法、短時間雇用者の雇用管理の改善に関する法律というのが93年にできています。3年後に見直しと言って、女性少年問題 審議会に掛かったけれども、そのときには見直しにはならなかったので、また、見直ししなければいけないという時期に来ていることは確かなんです。
     実はこの法律の第3条の中に、短時間雇用者についても、一般の従業員との待遇の均衡に配慮すること、という努力義務が雇い主に課されているんですが、この第3条の強化・ 改正というんでしょうか、この辺は具体的には課題になるのかなと思います。
    坂橘木委員
    やや逆な発想をすれば、正規社員の1時間当たり賃金の縮小というのも、オプションとしてはあり得るんです。格差縮小ということはね。非正規を上げるというのと、正 規を下げるというのでね。ところが、連合は全くだめでしょう。10円下げるということくらいしか言っていないです。
    坂東局長
    ベースアップを凍結するのだけでも大変な決断だという感じですね。
    大澤会長
    そんなことを言っていると、nttみたいに分割して子会社にしたら、一遍に2割とか3割下げられますね。
    坂東局長
    雇用システムで経営者の側の方たちは、どんどん合理化しようといろいろ知恵を絞っているわけですね。
    小島委員
    どんどんつぶれますから、雇用ゼロになりますから。
    坂橘木委員
    どういうことですか。今までの賃金体系だとつぶれると。
    小島委員
    そうです。例えばさっきのような賃金についての話、8万円が2万円になったと。同じ仕事をさせるんです。子会社に落とすんです。出向です。仕事は同じことをやるん です。賃金は3割減と。それがいっぱい出てきているんです。それは継続雇用を維持するという前提ですから、そうなるんです。
    坂橘木委員
    それは労働者側も、雇用が確保されるならば、賃金カットも受け入れますよと。企業の規模が小さくなるとか、分割とか、nttの話を言われたけれども、そういう思考 は労働者側にもあるんですかね。
    小島委員
    ないですね。企業としては、ワークシェアリングをやって、シェアして、雇用が増える。しかし、トータルの労働コストが縮まない限りは経営上全然メリットがない。それ だったら、平均賃金が30分の1の中国に全くかなわないだけではなくて、欧米にもかなわないという話です。
     要するに、労働コストを下げなきゃいけない。総コストの中の労働コスト比率を下げる。そのためにはどうするか。賃下げができなければ、要するにセクションを減らす。あるいは 分社化するというところで今はとどまっているわけです。個人ごとに格差を付けると言っても、全体の賃金ファンドは一定なんです。その中での査定、裁量、配分部分をどういう順序 で増やして。だから労働コストは下がってないんです。ただ、それによってできる人に多少インセンティブを付けて、組織として活性化しようというところにとどまっているので、抜本 的な改革では全然ない。
    永瀬委員
    ウェィジファンド(wage fund)一定という中に、非正規社員のも入っているんですか。正規の中のウェィジファンド一定ということですか。
    小島委員
    正規の中のです。非正規社員を増やすのは、全体の賃金支払い額を減らすためです。
    永瀬委員
    さっきのウェィジファンドは一定下でという場合には。
    小島委員
    ワークシェアリングです。これは難しいんです。そこで縛っていて、企業が成り立たなくなると、みんな海外に出てしまいますからね。特に製造業はね。
    岡沢会長代理
    これは非常に誤解される部分なんですけれども、1960年代に北欧がやったことはシステムとしてそうだったんですよ。結局、実際的には賃下げにはしないと。そ の代わりあのとき一切インフレは起こさないということをベースにして、実質的に賃下げしたんですよ。
     そして、少子高齢化が進んだために、税負担が高くなった、1人では食べられなくなったということですね。どうしたかといったときに、女性が社会参画して、1世帯当たりとにかく2 人の所得生活者、2人の消費者、2人の納税人口と増やしてくれとやった。その代わり税制もそう変える、インフレは起こさない。そして、先ほど、スウェーデンで言うとわかりにくい のが、正規と非正規ということではなくて、全員がフルタイムでやるかパートタイムでやるかということは全員が全く同じ形で年金の計算をしていく。それが可能なidカードがあったわ けなんですけれども、それをベースにして、人生の中で、何度もライフスタイルをこうしていいと。それは全部労働時間は自動的にidカードで計算、蓄積ができて、年金も自動的にポ イント化されているというふうにしていく。
     そして、実際問題として、今、特にノルウェーとスウェーデンは非常に経済財政がいいんですけれども、結果として、今の賃金水準が非常に低いんです。北欧の今の賃金水準、日 本円に直したら皆さんびっくりされると思うんですよ。しかし、60年代、日本でボルボを買っていた人が何人いたか、ほとんど買えなかった。しかし、今のボルボというのはものすごく 安い車になっている。それぐらい、インフレは抑圧する、その代わり賃金も上げない。その代わり、各世帯当たりの苦しい分だけはもう一人働き手と納税者を増やしてほしいという形 にしたんですね。
     だから、今、北欧などでよく議論するときには、1世帯当たり労働時間、1世帯当たり所得、1世帯当たり納税人口。
    坂橘木委員
    1人当たりという感じはないわけですから。
    岡沢会長代理
    だから、結局、1人当たり大体今1,560 時間ぐらい働いているんですが、2人で働いていると3,000 時間働いている。何しろ日本よりも我々の方が長時間労働だと いう言い方をしますね。そして、納税人口は倍いる、そして消費人口も倍いるから、その分だけ消費に金が回ったという言い方をします。
    坂橘木委員
    そうすると、オランダも一緒ですね。1.5 、1は男性か女性かわからないけれども、1.5 にして、1の人と0.5 の人の時間当たり賃金は変えないということをやっています ね。
    永瀬委員
    まさにそれが今の日本に必要な気がするんですけれども、なぜそれをしないのかが不思議なんですけれども、なぜなんですか。
    岡沢会長代理
    例えば、今、私たちが一番心配しているのは失業率の問題なんですが、北欧諸国の5%と日本の5%というのはやはり意味が違うんですよ。
     北欧の5%は実はものすごく大きいんです。昔は全員、完全雇用がペースでしたから。ところが、実際には今は1世帯当たり2人いますから、1人の所得があって1人が失業保険 で食べていくことにはそんなに難しいことではない。
     だから、ちょうど飛行機でも1つのエンジンが少し休養していても、片方で飛べるように、そして、夫婦で確実に働くことになっているから、片方がフルタイムで働いて、片方が2分 の1とか4分の3で働いても、それほど困らないし、また失業保険で食いつなぐこともそんなに難しくないという。
     だから、今北欧諸国の5%というのはそれほど深刻ではないです。まあ、何とかやっていけるだろうと、やはり日本における5%というのは、今、述べた結婚制度とかそういうこと全 部を含めた上での5コンマ数%ですから、非常に深刻な数字だと思うんです。
     だから、失業率統計というのは、その5%をどう読むかといったときに、北欧の5%と日本の5%はかなり、労働者における心理的なインパクトは違うと考えた方がいい。
    永瀬委員
    例えば、財務省の方がいらっしゃったときも、配偶者の103 万枠ですか、あれはどうしても外せないという御説明でしたね。根幹に関わるから簡単には外せない。年金 の第3号もやはり非常に根幹に関わるということであって、2人で負担してもらうというよりは、どうにか負担させないであげようというのが非常に強いように思うんですけれども、そ このところがどうしてそういうふうになるのかよくわからないんですけれども、どうしてそうなるんでしょうか。全く動かないですね。長いこと言われていても動かないのはなぜなんで しょうか。
    大澤会長
    多少方向性を出さないと事務局長は困ってしまうと思います。2ページの(2)の社会保障制度に関する論点というのは、現在では、載っているのは年金のみですけれ ども、もう少し幅広にというか包括的に見て、論点を抽出していくというようなまとめでよろしいでしょうか。
     それから、雇用システムは賃金格差の問題が挙がっておりますから、こういう論点でよろしいのではないかと思いますけれども。
    坂東局長
    存在ではなくて、格差は拡大なんだとか、いろいろ今日の議論でもございますが、育児休業などはどうするんですか。
    大澤会長
    育児休業は、これは社会保障と雇用システムをつないでいる制度なんですね。広い意味では社会保障というふうに言っていいと思います。
     それで、今後の手順なんですけれども、次回は2月22日でございますね。そのときには、何が出るかというと、中間報告に向けた議論のために、今度は中間報告案というのが出 なければいけないんでしょうか。
    坂東局長
    そうですね。ちょっと今日の感じでは、まだたたき台ではないかという気がして、案まで成長するか。
    大澤会長
    このままで行けば3月の専門調査会では、もう中間報告は了承して決めるということですから、実質議論ではないですね。
    坂東局長
    3月は日にちはもう決定していましたか。
    大澤会長
    18日です。
    坂東局長
    恐らく、会長預かりくらいにしていただければ、議論もいろいろして。最終的にこのままでは詰まらなくていいと思います。
    大澤会長
    そうしましたら、日程確認に入りましたので、参事官の方から、日程確認等等の御注意をお願いします。
    市川参事官
    次回、第8回でございますけれども、今ございましたけれども、2月22日金曜日の13時から15時半でございます。場所などはまた追って御連絡いたします。
     それから、第5回の議事録を資料2ということでお配りしておりますけれども、これは皆様の御意見に沿って修正したものでございますので、この後オープンにさせていただきたい と思います。
     それから、第6回の議事録案について、1週間ほどで御意見いただければありがたいと思います。そして、次の第8回のときに第6回の議事録を出して、その後オープンということ にしたいと思います。
     以上、よろしくお願いいたします。
    大澤会長
    それでは、まだ若干時間がございますけれども、これで影響調査専門調査会の第7回会合を終わります。
     本日は、どうもお忙しい中、ありがとうございました。

(以上)