第4回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成13年9月26日(水) 15:00~17:25
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      大沢 委員
      神野 委員
      高尾 委員
      橘木 委員
      永瀬 委員
      福原 委員
      師岡 委員
  2. 議事
    • (1) 開会
    • (2) 雇用システムに関するアンケート調査 (案) について
    • (3) 自己評価システムの検討について
    • (4) 女性と税制、社会保障制度、雇用システムに関する委員報告の論点について
    • (5) 今後のスケジュールについて
    • (6) 家計経済と女性について(報告者:御船美智子お茶の水女子大学教授)
    • (7) 閉会
  3. 議事内容
    大澤会長
    定刻になっておりますので、ただいまから男女共同参画会議影響調査専門調査会の第4回会合を開催いたします。
     お手元の議事次第に従いまして進めさせていただきます。今日は、雇用システムに関するアンケート調査(案)、自己評価システム等について御検討 をいただいた後、「家計経済と女性について」の有識者の御報告と質疑を行っていく予定でございます。
     まず、雇用システムに関するアンケート調査(案)について、事務局から資料の説明をお願いします。
    浜田参事官
    それでは、資料の1の「雇用システムに関するアンケート調査(案)」をごらんいただきたいと思います。
     まず、1番目の調査の目的でございますけれども、企業の配偶者手当といった諸手当とか、あるいは福利厚生の現状、それから、それらの今後の予 定についてアンケート調査を行うと。前回申しましたモデルケース・ワーキングチームで、税、社会保障、雇用システムに関する分析を行うわけですが、 そのうちの雇用システムの関係の基礎資料を提供することを目的にしております。それから、調査期間はこの9月から来年の2月末でございますが、そ の詳しい日程は後でまた申し上げます。
     それから、3番目の調査手法と進め方でございますが、関連資料やデータを収集整理する。これはアンケート票の設計とか、その後の集計、報告書の 作成に必要な関連資料・データを収集・整理する。例えば賃金制度とか複利厚生制度、そういったものの資料を収集するということです。
     それから、この調査に当たりましては、アドバイザリー・スタッフからアドバイスを受けるという予定でおります。これはアンケート票の設計とか、集計取 りまとめということについてアドバイスを受けるということで7名程度と考えておりますが、ワーキングチームの先生の皆様を想定しておりまして、そういう 方々からアドバイスを受けながら調査をしたいというふうに思っております。
     それから、<3>で調査の実施でございますが、まず対象は全国の大手有力企業、上場企業2,600 、店頭登録約900 、合計3,500 社、これは『会社四季 報』に載っている会社を対象としたいと思います。それから調査方法は郵送。回収率はなかなか大変なんですが、4割を確保したいと思っております。
     次のページにまいりまして、調査の実施時期ですが、10月中旬から11月下旬ということで考えております。調査項目、調査票は後で申し上げますけ れども、企業の属性ということで、業種や従業者数、賃金、それから調査の主目的であります手当の話で、配偶者手当等の家族手当、住宅手当、それ から福利厚生の方では社宅とか、退職年金とか、人間ドックの費用補助といったことを考えております。
     調査の具体的なスケジュールですが、関連資料・データの収集・整理をやりまして、あと調査票の設計、これは9月中旬から10月初旬、この専門調査 会でも御検討いただいて、その後速やかに、(3) にありますようにアンケート調査を実施したいと思っております。それを集計・分析をいたしまして、1月 中旬に、またこの専門調査会を開きたいと思っておりますが、そこに集計・分析結果を提出したいというふうに考えております。あと報告書の作成を2月 末までというような予定で考えております。
     それでは、次のページから具体的なアンケート調査の調査票について御説明いたします。表紙を1枚めくっていただきまして2ページのところですが、 まず、家族手当ですけれども、そういう制度があるかどうかを聞きまして、支給者数と総額を男女別に聞く。あと配偶者・子ども、それぞれ一人当たりで 幾らかというのを聞く。
     その次に問4で、支給条件として配偶者の収入金額というのが条件になっているかというのを尋ねます。まず(1) で「はい」となっているということであ ると、(2) で具体的な支給条件ということで、これは103 万という税制上の被扶養者、それから130 万の社会保険上の被扶養者、それ以外の場合は具 体的に幾らというのを聞くというようなことで考えております。
     それから問5で、非正規の従業員(パート等)について、同じような家族手当が支給されるかどうか。される場合でも、(2) にありますように正規従業員 と同じ金額か、それよりも低いかというのを聞きたいと思っております。
     次に3ページでございますけれども、住宅手当です。こういう制度があるかどうか。これは手当とか家賃補助とかあると思いますが、あるかどうか。ある 場合につきましては、それに支給条件があるか。支給条件としては、住居の名義人である。借家だと契約の名義人、持ち家だと登記の名義人。それか ら世帯主である。配偶者が受給していない。そういった条件があるかどうかということを聞きたいと思います。
     それから支給金額が一律かどうか。一律以外の場合はどういうことで差をつけているか。管理職かどうか、扶養家族がいるかどうか、既婚・未婚といっ たことです。ここでも問9で、非正規従業員について支給されるかどうかというのを聞きたいと思います。
     それから次に、福利厚生制度ですけれども、まず社宅です。これも「ある」、「ない」を聞きまして、その後4ページにまいりまして、ある場合は入居条件 ということで、勤続年数、世帯主である、扶養者がいる、本人の年齢、性別といったこと、これは該当するものすべてに○をつけてくださいということで聞 きたいと思います。
     それから退職年金制度ですが、いわゆる企業年金ということで、厚生年金基金とか適格年金等ですけれども、まずあるかどうか聞いて、ある場合に は、勤続年数が要件がどうかで、要件になっている場合は何年以上かということを聞きたいと思います。
     それから医療とか健康関係で、人間ドックの費用補助制度があるかどうか。これは会社が主体になっているものということで、企業が行うものというこ とで聞きたいと思います。ある場合には、問15で年齢が支給条件であるか。支給条件となっている場合は年齢を記入してもらう。それから、問の16で配 偶者にも支給されるかどうかということをお聞きします。
     5ページにまいりまして問17ですが、配偶者の収入金額が費用補助の条件かどうかということ。これはほかの問のところでもこういう問を聞いているん ですが、支給条件となっている場合は、やはり同様に税制上の103 万か、社会保険上の130 万かその他かというようなことを聞きたいと思います。
     それから問の18では、人間ドックへの費用補助の総額と利用者の数というのを、本人・配偶者別に聞きたいと思います。
     それから、その次の今後の予定のところでは、問の19にございますように、今まで聞きました家族手当、住宅手当、社宅、退職年金、人間ドック、それ からあと、遺族・遺児育英年金制度というのを行っているところがございまして、これについては、ここで現にあるかないかも含めて聞きたいと思っていま す。選択肢としては「充実する」、「現行制度のまま」、「縮小する」、「廃止する」、制度がないような企業もあるわけですから、「制度はないが導入を検 討」、「導入の予定はない」、そういう選択肢で考えております。
     それから6ページにまいりまして、補問ということで手当といったようなこととは少し違うんですけれども、家族の配慮というようなことで、こういう転勤時 に家族の事情を考慮するかということを聞きたいと思います。これは配偶者の事情、子どもの事情、親の事情とそれぞれについて聞きたいと思います。 配偶者だと仕事、子どもだと教育、親だと介護といったことがあると思いますけれども、そういうのを配慮するような制度があるかどうか。制度はないけれ ども、運用上配慮している、制度もないし配慮もしていないと、そういう選択肢を考えております。
     最後に企業の属性ということで、まず業種ということで、そこに25ありますが、そのどこかを選んでいただく。それから従業員数、これは正規・非正規、 男女別ということで書いていただく。
     それから7ページにまいりまして、管理職の人数、あと平均勤続年数。最後に問24で正規従業員の賃金総額というのを聞きたいというふうに考えてお ります。
     以上でございます。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。ここまで調査票をつくってまいりますのに、ここにいらっしゃる委員の中でもお忙しい中、御意見をくださった 委員もいらっしゃいます。また、それ以外にもほかの専門調査会のメンバーの方などにもお伺いをして、このようなものをまとめていただいておりますけ れども、御意見や御質問がございましたら、どうぞお願いいたします。
    福原委員
    「人間ドック」というのは正しい言葉なんですか。官庁用語かなんかで決まっているんでしょうか。私どもの会社の場合は、「定期健診(何と 何と何を含む)」ということになって、人間ドックというと一晩泊まりとか、そういうふうなイメージがあるんじゃないかなと思うんですけれども、その必要は 必ずしもないのではないでしょうか。今いろいろ診断機器が発達しているので。
    大澤会長
    これは実務の方にもお聞きしているんですが、職場で一斉に行われるようなものというよりは、むしろエクストラの。
    福原委員
    そうではなくて、私どもの会社では、これとこれとこれとをやるようなところに行って、それの領収証をもらえば、会社でそれを負担するという ことになっているわけです。人間ドックという言葉でもって正確な定義があるなら、それだったら、それをちょっと書いておく必要があると思うんです。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。これは確認をしておきます。
    師岡委員
    今おっしゃられたように、定期健康診断、これは全職員を対象にしたものと、人間ドックというのは希望者のみ、一部自己負担という形のも のとあるんじゃないですか。それは明確に整理した方がいいかもしれません。
    大澤会長
    一応補助金が払われるケースを想定しておりますので、全員が必ずというものではございません。それ以外のものを想定していますが、 混同のないように、ここは明確にしたいと思います。どうもありがとうございます。
    坂橘木委員
    企画されていて、これから変更は不可能だと思うんですが、企業福祉というのは大企業と中小企業で全く違うんです。何で大企業だけ選 んでやっているのかよくわからないんですが。
    大澤会長
    これについては事務局の方から何かございますか。
    浜田参事官
    これは比較的行われているところというようなことで考えました。配偶者手当なんかにしても、そもそもそういうもの自体がないとなると、 余りここで検討するような差も出てこないということで、ありそうなところを考えたんです。
    坂橘木委員
    ありそうなところで何を知りたいんですか。
    浜田参事官
    そういうところでどういう実態になっているか。例えば、収入制限にしても、どれぐらい制限しているか、あるいは額がどれぐらいになって いるかということを聞きたいと思ったんです。
    坂東局長
    恐らく大企業なんかの方が、労働者の報酬、仕事に対する報酬じゃなしに、いろいろなフリンジベネフィットという家族手当のようなものが ついていて、それが労働者の妻がどういうライフスタイルを選ぶか。働くか、専業主婦でいるか。働くにしても 103万円以下にするかというようなところに 大きな影響を与えるのではないかということを調べるための調査なんです。
    大澤会長
    全国的な実態については、ある程度既存の厚労省などでの調査でもわかっていて、それによって企業規模別にかなり格差があるというこ とも広く知られているわけなんですけれども、それよりも、むしろ、ある制度のあるところについて、それの支給条件がどうなっているかということを、ジェ ンダーというんでしょうか、ライフスタイル、世帯類型でもってある程度類推できるようにというような設計です。
    坂橘木委員
    なるほど。
    大澤会長
    政府の行う調査が余り重複してもいけないので、既存の調査等の質問項目の重複を検討いたしましたが、1つは、集計の時期が違ってい て間に合わないということと、それから、こちらとしての問題関心に沿った質問にしようということで、こんなようなものをつくってみた次第です。
    坂橘木委員
    私は個人的には、5ページの「今後の予定」というところに非常に関心がありまして、私の個人的な意見は、これを全部やめて賃金で払え という極端なことを言っているんですけれども、そんなようなことをちょっと入れてくれるような手立てはありませんか。
    坂東局長
    師岡先生の方は何か御意見があるんじゃないですか。
    大澤会長
    廃止するという。
    坂橘木委員
    廃止じゃない。賃金で払えというんです。大企業にこれだけ優遇があって……。
    大澤会長
    つまり現金給与に振りかえると。
    坂橘木委員
    現金給与にかえろというのが私の個人的な考えなのですが。
    大澤会長
    現金給与に振りかえるという選択肢があってもよいのではないかと。
    坂橘木委員
    それで十分です。
    大沢委員
    私もそう思います。
    大澤会長
    もともとこの質問は、たしか大沢委員の御意見に基づいて入れようということになったものなので。
    師岡委員
    ジェンダーの問題に絡む領域だと思いますね。ですからこそ、全体のパイをどういうふうに配分するかというところでかかわる課題だと思い ます。まず、実態を出していただいて傾向を見るといいますか、例えば、これは労働組合あたりでも、女性の立場からと男性の立場からは、この部分は 考え方が非常に異なる部分があると思います。
    坂橘木委員
    でも、これは企業に聞いているわけですね。だから、男女の違いというのは、この答えには余り出てこないですね。
    坂東局長
    実質的には、ほとんどこういうのを受け取っているのは世帯主である男性労働者であることが多いわけです。
    師岡委員
    例えば、女性がこの制度を受け取るときには説明が要るわけです。証明書であるとかいろんなものが必要ですから、なかなかその適用が 受けにくいという実情もありまして。
    永瀬委員
    細かいところなんですけれども、4ページの〔退職年金制度〕の問13ですが、勤続年数は受給資格要件ですかとなっていますが、これは厚 生年金基金と適格年金と企業独自の年金というので、特に適格は企業独自にはありそうなんですけれども、その辺は少し制度が違ったりするということ はないでしょうか。
    大澤会長
    そうですね。どの年金であるかというのがないと困りますね。
    永瀬委員
    もう一つさらに細かいことを言うと、2ページの問5と3ページの問9で、「非正規従業員(パート等)」と書いてありますけれども、最近、契約 社員も増えていますし、また再就職した、元従業員に対する給付とかはかなり違うのではないかという気がするんですが、ここも少し定義づけをきちんと しないとなかなか答えにくいかもしれない。つまり、一部にはしているという企業が意外といるかもしれないという気がしますけれども。
    大澤会長
    すみません。今の傾向なんですが、つまり非正規といった場合に、労働力調査の特別調査なんかで出てくるパート、アルバイト、それから 嘱託、契約、派遣というふうな大きな括りがございますね。これらについて、嘱託というのは比較的適用されていることが多いというふうに理解してよろし いのかしら。
    永瀬委員
    わからないですけれども、パートはすごく低いと思うんですけれども……。
    福原委員
    契約でもいろんな条件なものがありますからね。一概に契約とは言えないですね。
    永瀬委員
    あと再雇用された男性従業員の基本的な形としてはどうなんでしょうか。それは年金になりますから。
    福原委員
    それはケース・バイ・ケースなんですね。
    師岡委員
    私もお尋ねしたいんですけれども、有期雇用の場合でも、例えば短期雇用であっても、ずっと繰り返される場合には、支給要件に該当する 方もいらっしゃるんだと思うんです。ですから、今、雇用の多様化の中で、企業ごとにそういうことは細かく違いが出てくる可能性があるのではないかと 思うんです。ですから、ここはあくまでも非正規従業員というところをきちんと見たいのかどうかということが明確になれば、その辺はクリアできるかなとい うふうに思いましたけれども。
    福原委員
    再就職の場合に、非正規なのか正規なのかというのはなかなか難しいところですね。
    坂東局長
    嘱託というのは、今までの正規の社員が60歳定年で退職をなさった後、再雇用の場合は非正規なのかなと思っていましたけれども、そう でもないわけですか。
    福原委員
    そういう方もあるでしょうし、40歳で辞めて、よその会社に行ったけれども、また戻ってきて、会社は喜んで雇ってあげるよという場合もあり ますね。それから、これは女性の場合もあるんですよ。出産で辞めますと言って辞めてしまったんだけれども、辞めなくてもよかったんだけれども辞めて しまって、また暇になったから、もとのスキルを使わせてくださいという場合もありますね。
    大澤会長
    6ページをごらんいただきますと、非正規とはとか、派遣は除くとか、出向については云々という注が幾つかついていまして、実はこれは フェイスシートなんです。21、22、23、24と。フェイスを頭にもってきていたのを後ろに持っていった関係で言葉の定義が後ろに行ってしまった。しかし、こ うやってよく見てみれば、2のところに非正規と出てきたときに何もついていないのはまずいので、これは注のつけ方を工夫して間違えないようにしたい と思います。もしかして、「はい」、「いいえ」以外に非正規の中でも種類によるとかというのを設けた方が。
    永瀬委員
    あるいはもう一つ、選択肢を増やして3で「一部に支給する」というのを入れるんでしょうか。
    師岡委員
    派遣、出向、給与がどちらから出るのかで違ってくるところがありますね。
    大澤会長
    一応派遣は入れないつもりなんですけれども、それから出向は在籍の場合だけというようなことを考えておりますけれども。
    大沢委員
    問22では入っていた方がいいですね。派遣は除くとか。
    大澤会長
    それは問の22の下にあるんですが、問の5のところについていなかったので、むしろ初めて出てくるところにつけないといけないかというこ とを今申しております。
    永瀬委員
    問20の転勤の話なんですけれども、単身赴任は何人ぐらいいるのかとか、手当は出ているかどうかとか、そういったような項目というの は、これが入っていれば、それなりにあるとも言えますし、もしかして転勤を容認するというのが、こうした様々な家族手当の裏返しなのかなという気もし ますけれども、そういう項目は、特には今回は関心はないということでしょうか。
    大澤会長
    関心がないわけではないんですが、回収率4割以上というのを目指していまして、これは御承知のようにかなり厳しい数字なんです。その ために、当初はもう少し多数の質問を考えていたのを、削りに削り、絞りに絞ってここまできたというような状況でして。
    永瀬委員
    この考慮するための制度というのは、転勤を考慮するのではなくて、お金を出すなどの考慮をするという意味だととってよろしいわけです ね。
    大澤会長
    そうですね。
     よろしいようでしたら、今いただきました御質問なんですけれども、これは調査の期間が大変限定されているために、この専門調査会全体としての仕 事のタイムリミットが厳しいということがすべて連動しているんですが、10月中旬からもう実施に入りたいと思っておりまして、今いただきました御意見に ついては私の方で引き取らせていただいて、あと私の責任で調査票を仕上げて発送するということをここでお認めいただければと思いますが、いかがで しょうか。
     (「結構です」の声あり)
    大澤会長
    ありがとうございました。それでは、この点はどうもありがとうございました。
     次に、自己評価システムの検討について、これも事務局から資料の説明をお願いいたします。
    浜田参事官
    では、資料2をごらんいただきたいと思います。この自己評価システムにつきましては、資料2にチェックシートの参考例というのがござ いますが、これが影響調査の研究会というのが去年までございまして、やはり大澤会長に座長をしていただいたのがあるのですけれども。
    大澤会長
    皆様の机上に一応報告書が置いてございます。
    浜田参事官
    その中にあるチェックシートの参考例というのがあるんですが、ただ、そのままでは実際に自己評価をやるときには使いにくいとか、実用 的でないというようなことがございまして、そこで1枚目に戻っていただきまして、こんなぐあいに今後検討を進めていけばということなんですけれども、ま ず目的としましては、広く各省の施策の企画・実施・結果評価の各段階に男女共同参画の視点を取り入れていく。そういうための自己評価システムとい うことで、今の参考例にございますような、チェックシートとそれを解説するマニュアル、そういうものをつくっていくということでどうかと考えております。
     検討方針でございますけれども、今申しましたように、男女共同参画社会の形成に影響を及ぼします政府のすべての施策が自己評価の対象となり得 る。したがって、このチェックシートというのは、それぞれの政府の施策の担当者が自ら自己評価するときに使いやすい実用的なものである必要がある。 そこで、チェックシートの調査項目につきまして、実際の自己評価に適用できるようにわかりやすく解説する実用マニュアルを作成する必要があるので はないかというふうに考えております。
     具体的な検討方法でございますけれども、先ほどのチェックシート、これに関しまして、自己評価に適用する場合の疑問点などにつきまして、実際に自 己評価を担当することになる行政機関からの意見を踏まえまして、マニュアル案を事務局の方で作成したいと思います。その際には、このチェックシート はあくまでも参考例ですので、これ自体も検討していきたいと思いますが、そのマニュアル案につきまして、この専門調査会で検討していただきまして、 実用マニュアルを作成するというような手順でお願いしたい。そういうことではいかがかというふうに考えております。
     チェックシートの参考例ですが、実施前(事前)、実施開始後(進行中)、実施後(事後)と、それぞれについて必要な事項を書いたものでございますけ れども、それぞれに担当のところで自ら評価してもらうためには説明をするマニュアルが要るのではないかということでございます。
     以上でございます。
    大澤会長
    ただいまの報告について、御意見や御質問をちょうだいできたらと思いますが、いかがでしょうか。
    坂東局長
    恐らくア、イ、ウ、「政府の重点施策」とか、「性別による偏りが大きいと予想される施策」とか、「資源投入量が多い施策」というのは、それ ぞれ具体的にどういう施策なのかというイメージが浮かびにくいのかなと。まず、そこらを例を挙げて説明をする必要があるかなという気はするんですけ れども。
    大澤会長
    これをつくりましたときには、特定の領域ではなくて、あらゆる領域に該当するようにと考えて、したがって中身がない、実体のないもので 抽象的につくっているわけなんですけれども、実際使うときには、それぞれ領域を特定して、例えば高齢者福祉なら高齢者福祉とか、それから農業農村 関係であれば何とかとか、そういったときにはチェックすべきポイントというのは、個別の対象領域やどういう政策手段を使うかということによって具体的 なポイントは違ってくるわけですから、具体例でもって示さないと、この分野でこういうのだったら、自分のところにはこういうことが考えられるかなというイ メージを持っていただきにくいわけなので、そういうのが必要だろう。その例示を何にするかということも含めて少し考慮中というところなんです。特に具 体的な政策領域、分野で例を挙げてくるときには、その担当省庁の御協力もいただかないとなりませんので、特にこういうところがおもしろそうだから やってはいかがかというような御意見も、あるいは御質問もちょうだいできるといいんですが。
    坂東局長
    基本計画で直接カバーしていない施策について自己チェックをするということですね。少なくとも影響調査専門調査会での評価はしない で。
    大澤会長
    計画に載っているものについては、監視専門調査会の仕事かなというふうに考えて、もちろんオーバーラップしている部分はございますけ れども。
    坂東局長
    余り関係施策とは考えられていない、例えば道路とか補助整備事業とかですね。
    大澤会長
    そうですね。割合と女性の福祉とか、あるいは母子とかということで関係のありそうであっても、必ずしも波及効果とか間接的な影響という のが考えられていない場合もあり得るので、そういうのも全く排除されるというわけではないと思いますけれども。これは全面的なケーススタディというよ りも、使い勝手のよいチェックシートないし、メモリーチェックなんていう言葉が使われることもありますけれども、例えば、何かについて起案しようと思うと き、この分野だったら、これとこれとこれはちゃんと考えてから起案してくださいというようなのが、手にとって見て、ああ、そうだったというふうに思っても らえるようなものなので、大部にわたってはいけないというのは第一の要請ですし、この手のものは海外調査をさせていただいたときに、特に国際援助 機関にオーストラリアでもカナダでも訪ねたりしているわですけれども、そういうところは、かなり分野別のメモリーチェックとか、チェックシートとか言われ るものをつくっていまして、それなどは随分参考になるなとは思ったんですけれども。
    坂東局長
    widに相当するという。
    大澤会長
    そうですね。widですとか、このごろはgadという、ジェンダー・アンド・ディベロプメントというふうに言っておりますけれども。
     特に現在、御意見や御質問がないようでしたら、次回以降のために、これは協力いただけそうな省庁等とも御相談をして、例となる分野を挙げてくると いうことでしょうかね。
    福原委員
    この表を拝見すると、ア、イ、ウという項目があって、アは「政府の重点施策」、ウは「資源投入量が多い施策」、これは全部ダブっているん ですね。ですから、政府の重点施策イコール資源投入量が多いというのは当たり前の話なので、これは1つにまとめちゃって構わないんじゃないでしょう か。表をわかりにくくしているだけではないかという気がするんです。
    大澤会長
    「政府の重点施策」というのは、比較的短期・中期的に重点を置かれているものというようなことをイメージしていまして、ウの「資源投入量 が多い施策」というのは、制度として大きなものがある。健康保険制度ですとか年金制度ですとか、それはずっとあるものなのであって、短期的なもので はない。
    福原委員
    例えば、ア、イ、ウの説明をちょっとお変えになった方が誤解がないと思いますけれども、つまり、ウは制度として長期的に行われているも のとか、表現はお任せいたしますが、アは「政府の短期的重点施策」かもしれませんね。
    大澤会長
    あるいは「当面の」とか。
    坂東局長
    まさに「骨太」なんていうのはアに相当するわけですね。
    大澤会長
    「骨太の方針」のようなものはそうなんですけれども、あれはどちらかというと、小さな政府にするために行われていますから、資源投入量 という意味で見ると、知恵は入れているかもしれないけれども、人や金は減らそうという方向でやっているという意味では違うというような区別がつくのか もしれません。
    永瀬委員
    調査に当たって必要な性別データが存在するかというのが一番最初の項目なんですけれども、性別だけではなくて、有配偶かどうかと か、そういうことが実はとても重要であったりするけれども、そこがないことがよくあるように思います。つまり未婚か既婚かというので、実は随分違って いたりする場合が、特に女性の場合は大きいでしょうね。
    大澤会長
    近ごろは性別データはないというのはほとんどないんですけれども、集めているけれども、集計にときに分けていないというのは結構ある ので、そうすると、個票をちょうだいという話になるんです。
     どうも御議論ありがとうございました。これについては、先ほど申し上げましたように、具体的な例示する分野というのをこれから選んでいくということで 進めてまいりたいと思います。
     次に、女性と税制、社会保障背制度、雇用システムに関する委員の御報告の論点について事務局がまとめてくださいましたので、資料の説明をお願 いします。
    浜田参事官
    それでは、資料の3について御説明いたします。これは、前回と前々回に、それぞれ御専門の委員の方から御報告してくださったもの の論点をまとめさせていただいたものでございます。
     女性と税制、社会保障、雇用システムということでございますが、まず、税制の関係でございます。これは神野委員に御報告していただいたことでござ いますが、人的控除は配偶者控除、配偶者特別控除が関係してきますけれども、これにつきましては、課税単位と家族配慮というのが日本では混合さ れているところがある。配偶者控除などは家族配慮であって、個人単位を否定したというわけではないということです。そういう課税単位が個人単位であ るというのは、結婚に中立ですし、分業の利益が働かない共稼ぎ夫婦が軽く課税されて公平でもある。日本は、課税単位ということでは個人単位なん ですけれども、一方で家族配慮が非常に大きい。扶養家族に対する控除が本人の基礎控除以上あるということで、最低生活費非課税という目的以上 の家族政策的な意図があるのではないかということです。それから配偶者特別控除ですが、これは個人単位なのに、共稼ぎ夫婦の方が片稼ぎ夫婦よ り重く課税されてしまう。そういうことが起きているということです。
     それから、青色申告制度の専従者給与の話でございますが、自営業者の本来の姿として妻も働いている、それが本来の姿なんでしょうけれども、そう いう場合所得の分割は理にかなう。だから、二分二乗というのが適しているわけですが、こういう課税単位の選択ということで議論すべきことを優遇措置 で対応する。そういうことをしてしまうと、家族配慮という措置に租税上の優遇措置の導入という連鎖反応が出てくる。具体的には、所得の分割というの が自営業者夫婦だけじゃなくて、それだけではおかしいということで、給与所得者の場合にも配偶者特別控除という形で導入されてしまう。したがいまし て、課税単位などの制度的公平性という観点から対応すべき問題を優遇措置で対応すべきでないということでございます。
     それから、相続税・贈与税ということにつきましては、相続税に配偶者の無制限控除方式というのが導入されているわけですが、これは相続税の最も 重要な課税根拠の一つであります富の集中排除という点から問題であるということでございます。
     それから、課税の公平と支出政策の重視ということでは、税の上での優遇措置の導入で課税の公平が損なわれるだけではなくて、税制上のジェン ダーバイアスが生ずる。したがって、こういう優遇措置というのは、支出政策で対応すべきである。そういう支出政策で対応すべきジェンダー問題を怠っ ていることから、税の方でそういうことが生じていることが多いということでございました。
     それから、次のページですが、社会保障制度です。これは木村委員の御報告の論点でございますけれども、まず女性の老後と社会保障ということで は、年金が男性に比べて低い。これは賃金が低いし、勤続年数も短い、そういうことの反映である。
     そこのところをどうするかということの一つの対応が第3号ということなんですが、(2) の社会保険制度における配偶者・被扶養配偶者の扱いのところに ございますように、その第3号被保険者制度につきましては、専業主婦世帯で夫の所得が高い。そういう傾向が一般にございまして、そういうことから考 えますと、所得の高い世帯を優遇するという加入者間の公平の問題があるのではないだろうか。次の「・」で女性の労働供給を抑制しているという問題 がある。あと遺族年金です。こちらの方も女性の労働供給を抑制しているんではないか。自分で働いていても、将来の年金が増えないというか、そう いったことで労働供給を抑制しているのではないか。そういうことでございました。
     それから離婚・再婚による社会保障受給権の変化ということで、離婚すると遺族厚生年金、2階の部分が受給できない。そうなると年金分割ということ なんですが、木村委員はそこは難しいのではないか。それよりも遺族年金自体をやめてしまった方がいいのではないか。そういう御意見でした。
     それから、雇用システムについて永瀬委員の御報告の論点でございますが、全般的な日本の社会制度、雇用システムの特徴としまして、主な稼ぎ 手に対する生活保障を中心としていて、妻に対しては、その世帯主、主な稼ぎ手を通じた保障をしているのではないか。あと、子どもの養育は母親が私 的に負担する、そういう暗黙の前提があるのではないか。その結果、女性は男性と同じように働くか、あるいは主婦になって、男性を通じて守られるか、 そういう二極化が起こりやすいのではないかというような全般的な制度的問題があるということです。
     次のページで雇用システムの関係では、正社員と非正社員の格差がある。正社員は世帯賃金と申しますか、世帯を養えるような賃金をもらっていて、 解雇からも守られやすい。でも、その一方で正社員は人事異動で転勤とか残業、そういったことが拒否しにくいし、あと退職金なんかにありますように、 年功的な処遇で転職が難しいということがございます。
     一方、非正社員の方は正社員等の賃金格差が大きいですし、ボーナスな退職金といった諸報酬、家族手当や福利厚生、そういうものがない。そのた め子どもを育てる必要のある女性は、正社員の働き方を続けるのは難しくて、専業主婦になったり、非正規雇用に移動したりする。あと高学歴女性ほど 仕事に戻らない傾向がある。非婚・非出産が増加する。有職主婦の労働時間、これはいわゆる賃金労働というんですか、そういう市場労働、家庭での 労働、それをあわせたものが長いといったような問題が起きているということです。あと配偶者手当の関係では、配偶者手当の半数が103 万で所得制 限ということになっていますので、その結果、有業既婚女性の4割が就業調整を意識していて、しかも夫の収入が高くなるほど就業調整をする。そういう 傾向があるのではないかというような論点でございました。
     以上です。
    大澤会長
    ありがとうございました。ただいまの報告について御質問等ございましたら、いかがでしょうか。御報告をいただいた御本人からはもう御確 認をいただいていると思いますけれども、もしかして、今、気がついたんだけれども、違っていたというようなこともございましたら。
    坂橘木委員
    永瀬委員に質問なんですけれども、女性の二極化というのは、今起こっているんですか、それとも。
    永瀬委員
    起こっております。二極化というのは、結婚しないで正社員で続けるというのと、結婚したら辞めるか、出産したら辞めるかして。
    坂橘木委員
    じゃ、三極化じゃないですか。
    永瀬委員
    結婚しないで続けるとしても年齢が経っていくと、意外と非正規に移っていったり、労働力率が落ちたりしています。しかし、最近の主な傾 向としては働き続けながら結婚しない、どっちかというとそっちが出ていますね。働き続けながら結婚しないというのが一極です。それから、1997年の第 11回出生動向基本調査の特別集計では育児休業などもあるので、出産しながら働き続けるというのは増えたと思ったんです。でも、97年時点ではむし ろ若い世代で落ちていたのです。不況の影響もあると思いますけれども、専業主婦化というのが一時的に子どもを出産した時点で増えて、どの程度増 えているかというと、例えば7割だったのがもう少し増えたとかその程度の増え方ですけれども、少なくとも97年で見ると、新しいコホートで第一子出産 後1歳時の専業主婦率は落ちいていなかった。むしろ若干上がっていて、そのかわり仕事へのカムバックは早くなっているんです。つまり、パートでより 早く労働市場に戻るという形は進んでいるけれども、就業継続というのは余り進んでいない。高学歴化や意識変化といった効果がどこに出ているかとい うと、結婚しないまま仕事を続けるというところで出てきている。しかし、結婚すると減ってはいるがまだ随分辞めているのが日本的なところなんです。そ して出産して第一子が1歳になった時点では、いろんなところに書きましたけれども、大都会だと大体85%が専業主婦になっている。若いコホートで主 婦になる人の割合が落ちいていない国というのがすごいなと。
    坂橘木委員
    学歴の高い層と低い層だと、どっちが専業主婦になる傾向は高いんですか。
    永瀬委員
    それは学歴の低い層です。
    坂橘木委員
    女性の学歴ですよ。
    永瀬委員
    女性の学歴が高い層は働き続けます。これは昔からそうでした。ただ、どちらかというと、学歴の高い働き続ける層がもっとぐっと上がって いないわけです。そして、学歴の低い層は意外と落ちいている。
    坂東局長
    最近は48%とか49%が高等教育を受けるような時代ですから、高学歴女性そのものがインフレ化しているんじゃないですか。
    永瀬委員
    そういうこともあるかもしれません。最近の新聞等を見ますと、今度こそ、この次の調査では上がってくるのかなと思いますものね。ただし 大沢委員の御研究で、一定のコホートで、30代ぐらいででしたよね。
    大沢委員
    そうですね。これは御船先生も御存じかもしれませんけれども、家計研の調査、パネルデータの方で見ると、やはり人的資本の蓄積効果 というのは見られます。
    永瀬委員
    全体で見た場合に。
    大沢委員
    それは36ぐらいなんですけれども、前回は未婚で、その後結婚した人というふうにステータスがある時点で分かれるわけです。その時点で 結婚した人の属性をいろいろと分析してみると、やはり人的資本を過去に蓄積した人ほど蓄積し続けるというような傾向は少し見えてきています。
    福原委員
    二極化というふうに割り切ってしまってよろしいんでしょうかね。
    永瀬委員
    労働市場の労働条件自身が正社員と非正規で非常に格差がございますね。そして、結婚して一たんそこを離職すると非正規の方にしか 入りにくく……。
    福原委員
    そうとも言えないと思うんですけれども、少しずつ変わっていると思いますけどね。
    大澤会長
    やはり二極化という言葉のイメージだと思うんですが、二極化と言いますと、前は正規分布だったのが、二こぶの分布になるみたいなイ メージもあるので、そこに疑問が出るんじゃないかと。
    坂橘木委員
    働く人と働かない人がだんごになっているということですか。
    永瀬委員
    これは言い方が悪いですね。主婦となって男性を通じて守られるわけではなくて、非正規労働に従事しつつやはり被扶養配偶でとどまる 者も多いという表現ですか。
    福原委員
    あるいはそこに学歴を入れるかですね。
    高尾委員
    男性と同じように働こうと思っている人が多いと思いますが、主婦となって男性を通じて守られるというふうな意識はないですね。
    大澤会長
    この守られるは生活保障の意味なんでしょう。
    永瀬委員
    そういう意味なんですけれども、生活保障の基本的な部分を男性に依存し、非正規で多少……。この書き方は確かにすごく時代遅れる聞 こえますね。
    福原委員
    時代遅れじゃなくて、見る人がすごく単純に考えちゃうおそれが。
    永瀬委員
    そうですよね。御指摘ありがとうございました。
    大澤会長
    今まで真ん中に厚いだんごがあったのが、2つに分かれているというふうに聞こえるのもあれかなと。それから私は、今日、木村委員が御 欠席なんですけれども、最後の年金分割は難しく、それよりも遺族年金を廃止する。時間がなくなって確かこういうふうに最後のところでおっしゃっている んですけれども、こうなりますと、年金分割しないで遺族年金を廃止してしまうと基礎年金しかなくなって、そんな厳しいことを本当におっしゃったんだろう かという気もいたしますので、その点もう一度確かめてみたいと思いますけれども、そういう資料でございました。よろしいでしょうか。
     次の今日お話しいただく御船先生もお見えでございますけれども、その前に、今後のスケジュールについての説明を事務局からお願いいたします。
    浜田参事官
    では、資料の4の当面のスケジュールにつきまして簡単に申し上げます。この次の第5回(10月25日)と、第6回(11月29日)を予定して おりますが、これはどちらもモデルケース関連の制度、税や社会保障、雇用システム、そういうものについても関係省等からのヒアリングを予定しており ます。その次の第7回は今日調査票の御議論をいただきました雇用システムに関するアンケート調査の結果を御報告したいと思います。5、6、7回い ずれもワーキングチームの研究経過報告をしたいというふうに思っております。その後、第8回、第9回はワーキングチームの中間結果、それを受けた中 間報告、あと先ほど申しました自己評価のマニュアルの案について御検討をいただければ、そのような予定で考えております。
    大澤会長
    何か御質問はございましょうか。
    坂橘木委員
    今いろいろやり取り、申請の話をやっていますね。いつごろ個票は出てくるんですか。
    大澤会長
    まだ申請していません。
    浜田参事官
    先生方のいろいろな御希望がございまして、ちょっと当初の予定よりは御要望をまとめるのに時間がかかっているんですけれども、何と か今月中には正式の申請じゃないですけれども、まず統計局の方に相談に行きたいというふうに思っております。
    大澤会長
    それでは、こういう日程で進めさせていただきたいと思います。
     それでは次に、家計経済と女性について、家計経済を専門に研究していらっしゃる御船美智子お茶の水女子大学教授から御報告をお願いいたしま す。
     御船さん、どうもお忙しいところありがとうございました。また、大部のレジュメと資料を用意していただきまして、資料5でございます。
     では、30分ほどでお願いいたします。
    御船氏
    (御茶の水女子大学教授)
    この度は、このような大変な調査会にお招きいただきましてありがとうございます。私は、今、御紹介いただきまし たように家計経済を専門にしておりまして、本日は、「家計経済と女性」という題で30分ほどお話しさせていただきたいと思います。
     非常にルーズな性格が災いしまして、図表の説明がなかったものですから、今日、表裏で図表の説明及び出典等々を示しました。参考文献への追加 も含めてごらんいただければと思います。
     家計経済と女性という問題意識は、世帯単位で扱われていた今までの世帯経済の考え方が実情に合っていないのではないかというものです。従来 家計が一つの単位として扱われて、その家計費がどのように人々の生活を賄っているのか。それが実質的に増加しているのか調査研究されてきまし た。生活水準の指標として、かなり伝統的に家計調査がなされてきました。
     国の統計といたしまして家計調査が大正15年から実施されています。国勢調査が大正9年でございますので、生活問題の中心に家計というのが位 置づけられてきたことがわかります。しかし、最近では世帯全体の費用を見ていて、それが実際に生活水準をすべての世帯に関してあらわしているだろ うかということが疑問になっています。また一方で、世帯内の不平等ということが特にイギリスなどの研究から触発された経緯がございます。つまり世帯 内の世帯員間の生活の平等というのが本当に守られているのかという問題意識でございます。日本の家計に関して特に家計管理を研究している人た ちは、主婦は大蔵大臣だとか、財布のひもを握っているのは主婦だとかという、マスコミあるいは一般の新聞等々の論調に対して、本当にその家計の 管理をしているのか。家計管理はしていても、それが家計内で強いというふうに考えられるかどうかということに疑問を思っておりました。その辺につきま しても今日御報告させていただきたいと思います。
     報告の内容といたしましては、まず家計の個別化、個計化、そして家計の管理権、あるいは家計管理者が誰なのかということ、フローの問題、さらに、 ストックの内容、そこに如実にあらわれている夫の妻の関係を見ていきます。3番目に財産の名義とか財産の使用、あるいは処分権について、そして4 番目は世帯内の分配についてといふうに銘打っていますけれども、まとめとして報告させていただきたいと思います。
     まず、家計の個別化ですが、皆さん御存じのように家計組織の変化ということが言われています。1980年代後半から一世帯一家計論について、現実 の家計は本当にそうなのか、個計と共同家計が組み合わされているのではないかということが観察等々で行われてきました。当時、国民生活セン ター、今は秋田大学に移られた小林綏枝さんなども、その御主張をなさっております。私は、実は小林さんのいろいろな主張に賛同しましたものですか ら、最初の問題意識は、小林さんに触発されたものです。
     家計経済が個別化していくというときに幾つかの側面が見られるわけですが、収入の増大というのが大きい要因としてあります。共同支出、必需支出 というものを賄う以上の収入があって、共同家計への求心性というのが弱まっているということ。また、それと同時並行的に進んでいったわけですけれど も、収入源泉の個人化というのございます。1つは、3世代世帯家計での年金の存在、そして第2に共稼ぎです。私は「共働き」というのは好きじゃなく で、「共稼ぎ」というふうについつい使ってしまうんですが、第3に、子どもの若者期が長くなったことに伴ってアルバイト収入が増大したという側面があり ます。
     また、支出の方を見てみましても、共同支出の減少というのがあります。私が1992年に書きました「家計の個別化について」という論文の中で、平成 元年の全国消費実態調査を使わせていただきまして、お小遣いあるいは個計から出ている支出と本体、ここでは共同家計というふうに言っているんで すけれども、本体から出ている支出というのを合わせて、本体から出ていない個別化している部分というのが何%ぐらいあるかを費目別に計算しまし た。食料費というのは夫の方の小遣いから外食が出ていくというふうなことがありまして、その当時21.9%でした。住居とか光熱、これは家計の本体か ら出ている。教養娯楽費というのが37.4%というふうにして個別化しているということで、可処分所得の3割の貯蓄も加えますと、かなりの部分が共同家 計本体ではなくて個計から出ているという印象がありました。消費支出は個人の生活行動の増大が背後にありますので、食事の個別化とか、あるいは 交際の個人化というような形で進んでいきます。
     貯蓄に関しましては、日本の場合、御存じように夫婦別産制でございますので、個人名義ということで、夫、妻、それぞれ最初から分けています。こう いう家計の個別化、あるいは家計組織の構造を見ていきますと、共同性というのは実態からみると本当かなとますます疑問になるわけです。この共同 性、これを支える伝統的なジェンダー規範、ジェンダー規範とわざわざ言わなくても、伝統的な規範の弱体化というのがありまして、そのことから家計は どうあるべきかということではなくて、資源管理や交渉や業績主義、こういうようなもので家計が組織化されているというような状況になりつつあるのでは ないかというふうに考えております。
     恐れ入りますけれども、調査の内容をある程度頭に入れていただく方がいいかなと思いまして、今日お配りした2ページ目の調査についてというところ をごらんください。時間の省略上、今日報告に使わせていただきます調査に関してざっと説明させていただきます。と申しますのは、対象の女性の年齢 が違いますので、最初に調査の対象者等々、地域もちょっと頭に入れていただければと思います。
     家計経済研究所の消費生活に関するパネル調査は今年8年目なんですけれども、最初に始めたのは1993年の10月の調査でございます。これは 1993年の時点で満24歳から34歳の女性を対象にして、調査地域は全国に至っております。そのうち図表に関しましては、有配偶女性についてのデー タだけを取り出しております。パネル調査は辞退しない限り、その同一人を毎年調査するということになります。したがいまして、パネル調査の2年度と いうのは、1年度から1年加齢しているということになります。
     後ほど財産のデータをお示しするんですけれども、そのときに使いますものが2種類ございます。1番目は東京女性財団調査というもので、「家庭生活 についての調査」です。東京都内、島しょを除くところで、対象は45歳から65歳の有配偶女性でございます。調査時期が1997年1月、これはびっくりとい うか、ああ、そうでしょうねというふうに思われると思うんですけれども、有効回答率が30.5%です。ですから、これが代表しているというふうにはそもそも 考えられないわけです。
     これは妻調査なんですが、夫調査を同じ年の10月に同じ地域で有配偶男性を対象にして行いました。その有効回答率はさらに低くなりまして22.1% でございます。ですから、回答の数457 ないし332 というような数、これで物事をすべて言えないというお断りをしておきます。これが90年代の後半に45 から65なんですが、核家族調査というのを1999年7月に行った、これも家計経済研究所が「新現代核家族の風景」というまとめをしているものです。核 家族調査とここでは呼ばせていただくんですけれども、首都圏30キロメートル圏内の在住で妻年齢が35から44歳です。ですから、年齢からいいますと、 一番若いのがパネル調査の対象者、その次に核家族の対象者、そして財産をある程度蓄積しているだろうなという対象の東京女性財団調査という流 れでございます。
     元に戻っていただきまして、2枚目に移らせていただきます。30分という限られた時間なので非常に早口で申しわけないんですけれども、家計の管理 権の問題です。家計組織のタイプ、恐れ入りますけれども、図表というふうに書いた方の図表1及び図表2、右側に小さな表を添付してございますけれ ども、それをごらんください。これは図表についての説明というところをごらんいただきたいと思うんですが、先ほど大沢真知子先生の方から家計経済研 究所のパネル調査のデータについてお話があったんですが、そのパネル調査です。パネル調査の第1年度の調査票を作成した時、該当調査文の終了 した時、あなたの家計組織はこういうタイプですよというような例示のためにつくったものなんですけれども、それが家計組織のタイプの一番細かい分類 でございます。「手当タイプ」というのが11%です。手当タイプと申しますのは、簡単に言ってしまうと専業主婦世帯で、男性が、この金額で家計を賄いな さいというふうに手当の形で渡すものです。そして「委任タイプ」というのは、僕の給料はこれだけだから、すべて君に任すからよろしくお願いしますという のが委任タイプでございます。共働きの方は、「一体タイプ」は両方の収入を合わせて、それを大体妻が管理する。「扶養タイプ」は、大体パートの主婦 に多いんですけれども、自分の収入は家計に入れないで自分のポケットに入れる、家計そのものは夫の収入で賄うというような形です。「拠出タイプ」と いうのは、夫、妻それぞれが共同の財布にお金を入れて、それを妻が管理する。それから「支出分担タイプ」というのは、そもそも共同の財布を持たない で、夫の財布、妻の財布からそれぞれ共同の支出を出していく。その他「夫管理タイプ」には、いろいろな形があるんですけれども、夫管理タイプとしてま とめてしまいました。
     それを見ますと、先ほど申し上げましたように、このパネル調査の対象者は、子どもがまだ非常に小さい段階ですので、大体専業主婦の世帯が多くな るという特徴があるわけですが、それでも、その中で共稼ぎをしている世帯もあります。「手当タイプ」と「委任タイプ」、これが専業主婦世帯なんですが、 「委任タイプ」が45.3%と非常に多い。しかし、「手当タイプ」も専業主婦世帯の中では2割ぐらいあるということです。つまり、日本の妻というのは、家計 の財布の紐をすべて握っているというわけでは絶対にないということです。
     それから、共働きの方でも、「夫管理タイプ」が6.2 %、これも私はもう少し少ないと思っていたんですが、夫管理タイプも少なからずあるということです。 その下に少し細分類をしたんですが、夫管理というのは、夫の管理の力が強いというふうに思われる「手当タイプ」と「夫管理タイプ」を足したものでござ います。大体2割ぐらいは家計を夫が管理しているというふうに言った方がいいじゃないかというふうに思いました。もちろん「妻管理」というのは多いわ けですが。「共同」というのは拠出タイプ、それから「分離」というのが2.7 %、支出分担タイプというのがございます。
     家計組織の規定要因ですが、図表の次のページを見ていただきたいと思うんですけれども、ここで明らかなことは、金融機関に勤める男性、それから その妻というのが専業主婦世帯で多く、しかも手当タイプになるという傾向が強くなっております。これは専業主婦になっていると夫の収入が多い。夫の 勤め先が1人から4人というような小規模の場合に夫の管理タイプが多くなっています。夫の年収が少ない場合に、やはり片働きタイプは少なくて、一体 タイプとか夫管理タイプが多くなっています。拠出タイプ、支出分担タイプというものに関しましては、夫との収入というのは余り関係が見出せません。こ れは妻の方の収入の方にかかわってきます。パートでは一体タイプや扶養タイプが多く、常勤となりますと拠出・支出分担タイプ多く、夫管理タイプも多く なっていきます。妻の収入に関しましては、高いほど支出分担タイプというのが多くなりまして、一体タイプというのは中間的な所得ということが言えると 思います。片働きの夫というのは、全体的に見ますと収入が少なければ妻に委任して、収入が多いと自分で管理をするというような傾向が見てとれると 思います。
     そういう家計組織類型別に夫妻間の格差というのがどういうふうになっているのかということが図表の4でございます。図表4を見ていただきますと、仕 事時間とか、通勤時間とか育児時間、これを働く時間ととらえました。妻の働く時間というのは、全体平均を100 とした場合に、やはり最も多いのが支出 分担タイプで、最も短いのが手当タイプです。内訳では仕事時間は支出分担タイプで非常に多くて、拠出タイプも長くなっています。拠出タイプとか支出 分担タイプというのは妻の収入が高いという、それを反映しているものと思われます。働く時間というのを、夫のそれを100 とすると、妻は平均的には102 ということになります。
     次に、図表5に移っていただきたいと思うんですけれども、これは家計の収入というものと管理額というものを対応させたものでございます。図表5を見 ていただきますと、夫の収入が高いのは委任タイプ、手当タイプの片働きタイプ、次に扶養タイプ、一体タイプ、そして支出分担タイプというのが続いて、 拠出タイプと夫管理タイプというのが最も少なくなっております。夫の収入から共通の財布へ入れる正味の額、これの割合は委任タイプと一体タイプとい うのが85%前後で最も多くて、扶養タイプはその次で8割ぐらい。そして拠出タイプ、手当タイプとなりますと6割ぐらいで、支出分担タイプというのは3割 に過ぎません。支出分担タイプでは、妻の収入が夫の3分の2に過ぎないにもかかかわらず、夫と妻はほとんど同額を共通の財布に入れているという状 況も見られます。
     次に、夫妻間の格差を見ていきたい。これがメインのテーマなんです。図表6の方に移っていただきますと、これは生活費と貯蓄を合わせた支出をそ れぞれ細かく見ています。生活費について誰のための支出ですかというふうに聞いた結果を示しています。ですから、生活費も共通、妻のため、夫のた め、子どものために分けています。その他の人のために支出というのもあったんですが、これは省略しました。それぞれ生活費と貯蓄というふうにして、 生活費と貯蓄を合わせたものを支出として、共通費は生活費の共通と貯蓄の共通の合計額になっています。
     ローンの返済ですが、実は財産の調査をやってからわかったんですが、夫の名義の家のローン支払いを妻がパートをして払っているなんていうことが ありますので、本当はローンの支払い、これも誰のローンをどういうふうに支払っているかということをやらなければいけなかったんですが、そのときはそ ういう問題意識がなかったものですから、ローンを一括共通費というふうにしています。
     ここで見られるのは、支出の夫妻間格差というのが委任タイプで最も大きいということです。妻の支出は夫の3割に過ぎません。一体タイプでも4割と 少なくて、収入があっても一体タイプは夫妻間格差が大きくなっています。この格差の原因としましては、子ども支出がありまして、これによって、まず妻 の支出が抑制される。夫管理が強い手当タイプとか夫管理タイプでは、管理している夫支出がそれほど抑制されないという状況があるわけですが、妻 が管理を任されている一体タイプ及び委任タイプ、つまり妻が管理しますと、妻が我慢するということが明らかに出ています。夫妻間格差が少ないのは、 支出分担タイプと拠出タイプです。けれども、それでも8割で、やはり妻の貨幣収入の少なさというのをそのまま反映しています。家計の原理というの は、共同にあるというふうによく言われているんですけれども、やはり貨幣収入の少ないものは、多く稼いで来る者よりも、生活費も貯蓄も多くできないと いうことを示しています。
     働く時間は、先ほど見ていただきましたように、妻の方が多いにもかかわらず、こういう貨幣収入のみを反映するような分配というのが行われていま す。一世帯一家計で見てしまうとわからないんですが、支出段階の夫妻間格差の問題というのが、大きくあります。
     働く時間と収入と支出という図表の7、これは帰属所得を加えて、そして夫妻間の格差、これを見ていこうというふうな思いがありまして、夫支出、妻支 出というようなものがどういうふうなっているのかということを見ているものでございます。帰属所得は、パートをしている人の時給換算をしています。です から、男性も女性も家事は同じ費用で計算してありますから、バイアスは若干は少なくなっていると思うんですが、手当タイプの場合、妻の収入というの は、夫の58%であるのに、妻の支出は夫の48%に過ぎず、やはり妻の支出が相対的に少ないというふうになっております。収入の割に妻支出が少な いということは、すべての類型に言えまして、妻は夫に比べて配分支出が少なく、経済的に不利を被っているということです。この配分差が大きいのが、 夫管理タイプ、一体タイプ、委任タイプ、こういうところで差が大きくなっています。妻は働いて家計に貢献している割には、妻個人の支出が夫に比べて かなり少なく、家計が夫管理であったり、逆に一体タイプ、委任タイプなど、家計を任された場合にそれが顕著となります。こういう差が比較的少ないの が、手当とか、扶養とか、拠出とか支出分担タイプの各タイプ、これは共同度の低いタイプです。共同度が高いといっても、内部の家族員のいろいろな 支出というのが保障されていないということがわかると思います。
     図表の8はよく引用される女性と男性のアンペイドワークとペイドワークの比較です。が、ミクロの家計の平均で非常に不安定な調査の結果だとは思う んですけれども、これと同じような状況が出てきているということで、添付させていただきました。
     レジュメに戻っていただきまして、次に管理というのがどういうふうに考えられているかを見ていきます。レジュメの2ページ目のデータは、今日お配りし たレジュメの家計管理に関する考え方についてのデータというところにお示ししておきましたけれども、パネル2年度目に初めてこの調査項目を入れてい ただきました。家計管理に対する考え方として、それが権利と思いますか、義務と思いますかというふうな質問をしました。「権利と考えている女性」は 19.3%、「義務だと考えている人」は80.2%で、決して日本の女性が、私はやりたいわと言って喜んでやっているわけではないということが分かります。 また家計管理が好きですか嫌いですかという質問もしています。好きと嫌いが43.2対56.4というふうにして嫌いな人の方が多い。半々というふうに見る べきなのか。そんなに喜んでやっているわけではないということで、先ほど見ましたように、少ないお金を任されてしまうわけですから、そんなに喜んで 管理できるものではないということだと思います。実感としても、私の専業主婦時代を考えますと、それは裏づけられるかなというふうに思います。
     こういうふうに家計のフローでは共同性がある程度確保されているんですが、その結果として、そういうアンペイドワークがどういうふうに財産に反映さ れているかということを見ていきましょう。実は財産のデータというのは本当になくて、先ほどのような形で、20%ないし30%の回収率の調査で考察しな ければいけないという苦しさを理解していただきたいと思います。女性と財産の問題というとらえ方がなされてこなかったことについてですが、ジェンダー の問題としてよりも階層格差の問題として今までとらえられてきたということと、財産の性格上、日々の生活問題としての緊急性が低かったということ と、それから、妻と財産、あるいは女性と財産というふうに問題化するには、前提として個人の財産という実態がないとできなくて、そういう考えがなかっ た。それから、妻の財産が少ないという現状認識が生まれにくいということがあると思います。妻の財産が少ない事実があったとしても、妻の被害者意 識がないし、夫の加害者意識もないし、社会全体で個人の財産に関する権利意識が希薄で、よって問題視されないという状況があって財産の問題が 全然取り上げられなかった。しかし、逆に言うと3つの要因から財産の問題が取り上げられるようになった。1つは先ほどから言っている個人化とか個別 化。2つ目には業績主義の台頭というのがあると思います。また、個人としての女性の権利の尊重、あるいは男女平等によるジェンダー関係の転換とい うのも、それが促進しているということはあると思います。
     こういう女性あるいは妻と財産という問題をあいまいにする要因としては、資産形成の障害というのがあると思います。アンペイドワークというものの評 価、これが問題として大きいと思います。つまり評価するか計算するかどうかということも問題なんですが、計算できるけれども、あいまいにしておく。計 算した結果を資産形成に当てるかというと、そうでもないという三重のバリアがあって、アンペイドワークというのが、実際に資産形成上、結実していかな いということがあります。
     それから、先ほどちらっとお話ししたと思うんですけれども、妻の稼得労働の成果が消える性格が持っていまして、子どもの教育とか住宅ローン返済を 賄うために消えていく性格を持っているということ。また、家族の生活費の共同性の中に埋没して問題性が鮮明にならないということ。また、これは非常 に根が深いと思うんですけれども、財産という貨幣のパワーというのを、女性にとっての愛とか、協力とか、それと対立するとらえ方があって、お金のこと を持ち出すともう離婚だよとかそういう考え方というのは、やはり愛と協力というのと、財産概念というもの、そのものがジェンダーバイアスを持っていると いうような状況があると思います。
     「妻と夫の財産」の問題の構造と財産の特質ということなんですけれども、こういうふうに一生懸命でやろうとしても、やはりプライバシーとしての財産と いう性格がありまして、先ほどの回収率で見ていただくように、あるいは個別にインタビュー調査をするわけですけれども、特に男性はしてくれない。調 査をしたときに、どうしてこんな調査をするかというふうに、妻調査の場合にも夫から電話がかかってくるというような報告も受けております。つまり、いか に夫がそういう財産関係に関して、妻の行動をセーブしようというか、監督しようというようなことが一部の男性に見られるという現実があるかと思いま す。
     財産の問題の中に、長期性と清算性という問題があると思います。つまり、一応貯蓄とか資産というのは使わないでいますので、どちらのものか、名 義そのものはあるんですが、使っていない状況だと余り強く言わなくてもいい。何かあそこにありそうというようなことがありますので、長期性がありま す。しかし、一たん事が起きてきますと、清算性というところにその財産が出てきます。だから仲がいいときには共同で、仲が悪くなると急に財産の分割 問題に直面するというので、そこではもう既に良好な関係が壊れていますので、結局、何も財産をもらわないで離婚するというようなことがあって、財産 を常日ごろきちんと話し合わないような状況というのがある。
     それから外部性と内部性という問題があります。資産の名義というのは外部性の論理なんですね。名義というものには、余りこだわらないという問題 があります。内部性というのは夫と妻が名義はどうであれ、そんなことはどうでもいいというようなことがありますので、財産の問題というのは内部性と外 部性が混沌とした状況の中で、両立というか、併存しているということがあります。
     あと、個人性と共同性という問題があります。先ほど共同の貯蓄というふうな言い方をしたんですが、そもそもこれはあり得ないんですけれども、やはり 家計のいろんなインタビューをしますと、これは誰のものでもないという声をききます。一応名義は夫のものだけれども、私たちのものよというような言い 方ですので、やはり共同性というのがある。しかし一方で、支出分担型の人たちというのは、最初から財産そのものを分けています。相手の財産を知ら ないというような状況もあります。それがいいかどうかはともかくとして現実としてはそれがあります。
     あと、身分・位座性と業績性ということで、妻というのは一種の身分だということですので、業績性となかなか一緒にならない。これだけ私が稼いだから 私のものよとかというふうにダイレクトにいかない。夫もそうなわけです。つまり、宙ぶらりんに浮いているお金というのがかなりあるということです。
     そういうことを前提にしながら、妻と夫の財産の実態というのを見ていきたいと思います。資料の図表9をごらんください。これは、資産の合計額別に資 産の内容種類別、夫名義、妻名義資産のある割合というものでございます。不動産が一番典型的にあらわれるんですけれども、夫名義の不動産を持っ ているのが62.1%、妻名義の不動産が23.6%というふうに妻は非常に少ないわけです。有価証券も夫と妻の差が大きくなっています。さすがに最近で は定期預金、この差が少なくなっていますし、生命保険も急激に妻の生命保険というのは増えています。しかし、不動産に関しては、女性が持っていな いということがあります。資産の合計額と妻の資産の関係ですが、まず夫の資産形成をしてから、次に妻の名義資産を形成しているということがみてと れます。まず夫が先、というふうになっております。
     次のページの図表10を見ていただきたいと思います。東京女性財団の調査を見ていただきます。夫調査・妻調査のこの夫・妻は、同一の夫妻ではあ りません。核家族調査の方は同一のカップルを調査しております。東京女性財団の方の調査は、妻調査と夫調査の平均が同じだったんです。妻の名 義資産が2.9 割、これは夫に調査してもそうでした。夫妻の名義資産を合計したものが10割、その中で妻がどのぐらいの割合か。専業主婦の人の妻名 義資産が2.5割、常勤雇用の場合には、妻は4.1 割というふうになかなかいい線にいっています。妻パートですと2.8 割、妻自営業・手伝いというのは2.6 割です。
     ここで注目したいことは、専業主婦の妻は、基本的にはその時点で働いていないということなんですが、妻パートなんかに比べても、遜色はないような 割合になっている。
     核家族調査の方を見ていただきますと、どちらかというと、夫の方が財産の妻名義割合を多く見積もるというような傾向があるようです。それを差し引 いて考えても、核家族調査というのは、先ほど申し上げましたように、ちょっと若い世代なんですけれども、若い世代の方が妻の名義資産が若干少ない ということがあります。核家族調査をしたときに、仮説というか、予想としては若い人はある程度財産を確保し始めているんじゃないと考えていたんです が、そうでもなかったということです。やはり子どもが小さいときの妻というのは非常に弱い存在で、そのことが出ているかなと解釈しました。
     「資産割合と経済的貢献」というところの図表の11を見ていただきたいと思います。特に、核家族でも女性財団でもいいんですけれども、要するに累積 収入割合というもの、今、専業主婦をやっていたとしても、以前専業主婦ではなかったかもしれないので、今までの御夫婦の収入の中で累積をする。 ずっと累積をしたときに、妻は何割ですか、夫は何割ですかというような形で聞いたものです。妻調査の全体というあたりを見ていただきますと、累積収 入割合というのは、妻が1.4 割です。累積家計費負担割合、どのぐらい家計費を負担してきたかといいますと1.3 割。この0.1割の差 というのは、先ほど の扶養タイプに見られるような家計に入れないというのが若干あり、それが反映したものと思われます。妻の収入は家計に入らないとよく言われている のですが、多くない収入の中でこれだけ入れている、結構入れているんだなということが確認できるかと思います。
     家事負担割合は妻の方が8.0 割です。名義資産割合が先ほどの核家族の調査ですと2.4 割ですので、こういうふうに見てきますと、累積収入割合、 家事負担割合、家計負担割合、こういうところを見ていっても、2.4 割というのは少ないのではないかというふうに私は思うわけです。それを裏づける結 果があります。妻は経済的貢献をどのぐらいしたと思いますかという質問に対し、夫も妻も、5.2 割と言っているんです。夫が言うには5.5 割。つまり妻の 経済的な貢献は5.2割 とか5.5割 というふうに考えられているのですから、それに比べて名義資産割合はぐっと抑えられているということです。
     次に、処分権ということなんですが、名義資産の処分権というのは単独で処分できるかどうかということです。自分の資産を自分がどういうふうに処 分できるか、相手に言わなくてもいいかどうかというようなことです。妻調査の夫名義に関して自由処分というのは、23.8%、相談すれば処分していいと いう相談処分が63%、相談処分というのは非常に多いということが言えます。ただし、妻名義に関しましては、共同性意識というのは、夫の名義の資産 に比べてかなり低くなっております。
     次のページの図表の13を見ていただきますと、今度は相手資産に対してそれを使用していいかどうか。使用を聞いているんです。相手資産に関して 共同に帰属していて、共同使用するというようなことで、妻調査での対夫の資産に関しては62.2%と共同帰属共同使用が非常に高い。夫名義であって も、それは夫のものではなくて2人で使えるよというふうに考えています。ところが妻の名義資産に関しては、これが若干低まっているということです。
     名義に関してどうしてそういうふうになっていくかというと、やはり図表の14で見ていただきますように、名義というのは非常に形式的だというふうに考 えられています。核家族調査の妻調査を見ていただきますと、名義というのは実質的なものであって、重要だよというのは46.2%、形式的で重要ではな いというのが53.8%です。妻では形式的で重要ではないという人と実質的に重要だという人が半々ぐらいです。ところが夫の調査を見ていただきます と、夫は形式的で重要ではないというふうに6割の人が思っていて、4割の人は重要だというふうに思っています。これはどうしてかと言いますと、夫は どんな調査を見てもそうなんですけれども、非常に共同意識が高い。たくさん持っている人が共同だ、みんなのものだよと言っても、最後には自分のもの だというふうに言えるのだから、これを信じていいか疑問に思うんです。日本の家族の調査をすると、内実はわからないんですが、本当に共同性を信じ ているというところがあります。それが若い層でも高齢層でも出てくる。余り大きな差がないということは、若いときに共同性が高いというのはわかるんで すが、年をとってもかなり共同性が高いということは、財産の問題というのを男性、夫が戦略的にやっているのかもしれないというふうにも、ちょっとうた がって見ています。というのは、自由回答を見ますと、2人のものだよと言いながら、僕のものだと考えている。「僕が死んだら君のものだよ」というのが あるんです。これは僕のものだと言っていることなんです。その共同性というのを、「2人のものだよ」と言って確保しておくというような状況が見られます。
     図表の15を見ていただきますと、資産というのはもちろん妻が働いた、夫が働いたというものと、それから相続によるものと、結婚前に蓄積したものと いうふうにあると思うんです。妻の資産割合が余り多くないというのは、収入もさることながら、相続というので余り多く相続しないという状況があります。 ですから、夫の場合には、夫の相続というのが非常に多く出てきて、かつ夫の収入があり、そして夫の結婚前というのは、そんなに大きくはないと思うん ですけれども、それでも、やはり貯めているということがあるかと思います。
     先ほど清算という問題を示しましたけれども、離婚のときの資産の分け方というのを最後に示しておきました。図表の16なんですけれども、「稼ぎに応 じて」というのと、「経済的貢献で」というのと、「2分の1」というのと、「わからない」というものです。「2分の1」という人が相対的には多くなっています。 しかし「経済的貢献で」とか、「稼ぎに応じて」というのもわずかにあります。「経済的貢献で」という意味は、稼ぎではなくてアンペイドワークも含めて評価 するということなんですが、ここで「わからない」と答えている人の問題があります。核家族調査では夫婦、女性財団調査では夫だけに調査をしていま す。夫はちょっとかっこよく2分の1にするよというふうに半分の人が言っているということは、離婚のときはそうするよといっていますが、この時点で離婚 していないわけですから、安泰だというふうに思っているのではないでしょうか。実際にはわからないこの数字の34.3%が前の3つの回答にどういうふう に分かれていくのかが重要な問題かと思います。
     レジュメの4ページをご覧下さい。3-6で結論めいたことをお話ししたいと思います。妻と財産の距離が非常に遠いということと資産割合が少ない、妻 の資産は二の次であるということです。遠い理由は、結局、家族の共同性ということで、個を主張するだけで問題視されるという状況があります。愛情が あれば忍耐すべきとか、謙譲が必要とか、子どものためとかということで、財産あるいは経済問題というのを重要視しないというのが自由回答などから 出てきています。先ほど申し上げたように、夫の財産は夫が死んだら、いずれは妻のものとなるというようなことで、やはり財産とか経済的平等を問題に しないという傾向があります。平等であるべきという認識以前に意識に上らないという状況がありました。あるいは家庭内の平等とは何かということを問 題にすることすらはばかれるような、そういう自由回答が多くなっておりました。
     課題といたしましては、やはり貨幣経済力というのと愛情を分離していくという、そういう考え方及び制度が必要で、法制度は結構そうなっているんで すが、実際の家計の中の運用段階で、それを活用しない、あるいは活用できないような力や所得の状況が一つあります。それから、調査をしていて分 かったことなんですが、男は経済、女は愛情というようなジェンダーバイアスがかなりかかっているということです。
     4ページの最後、今回の報告のまとめのような話で、個別化とか規範の揺らぎによって分配が課題となっていくと思うんです。今、専業主婦であって も、常勤であっても、それぞれのバイアスがかかっています。全体的に見て家族の生活のために自分が使えるお金を切り詰める頻度、これは核家族調 査で調査をしているんですけれども、よくあるというのと、全くないという比率を見ていきますと、やはり妻の方で家族の生活のために自分が使えるお金 を切り詰める頻度というのは非常に高いというのがどの形でもそれが多くなっています。平均で見ても妻が40.1%、夫は18.9%で、やはり共同性という 名で妻が自分の収入を取り崩していくという実態があると思います。結局、共同性と依存性というのが非常に問題になって、管理は力になるかというこ とを細かく見ていかなければいけないということで5ページです。
     家族構成員の生活水準というのは平等であって、誰がお金を稼いでいるかということは重要でないというふうには一概には言えない。共同性という名 ですから、男性の収入が多いからといって一応に男性がお金をコントロールしたり、妻より経済的に高いレベルの生活をしているとも限らないとも言えま す。依存性という問題ですが、これは実は最近読んだ、『家族に潜む権力という-スウェーデン平等社会の理想と現実』という本の中に書いてありました ので、そのままそうだなというところをかぎ括弧をつけて示しているんですけれども、男性よりも収入の低い女性というのが、男性と同じ生活水準を維持 して、同じレベルの消費をするためには、男性から女性にお金が移転しなければならない。実はこの移転が女性を夫に依存させることにもなって、移転 もどういうふうに考えたらいいかというのが非常に複雑になっているなということがあります。
     管理は力になるかというのは、これも2つの考え方があります。家計費をコントロールしている人が戦略的に資源を活用できる立場にはあります。管理 ではないです。コントロールです。ですから、お金をコントロールすることは、家族内での権力の一つの源泉となり得るということです。家計を管理してい る人が必ずしも家族のお金の戦略的コントロールもしているとは限らないということで、日本の場合の管理も、日常的な出し入れとか、作業をしていると いうレベルで、それを変えていかなければいけないかなというふうに思います。
     アンペイドワークをどう評価するかというのは、結局は財産の問題も家計の中のお金の問題でも考えなくてはいけないと思います。やはり賃金労働、こ れが例えば子どもを持つとやめざるを得ないとか、パートにせざるを得ない。そのことが結局は家事労働が一挙に女性の方に行ってしまう。一挙に来る というのは、結局は家事を一手に引き受けるわけですから、より働けなくなる、こういう循環の中で出てくるのであって、逆ではないということがありま す。それから、母性とかジェンダー規範というところが強いので、子どもを産む、すると家計の権力が変化することがわかります。調査でみても、子どもが いない段階は割合平等なんです。子どもが生まれてしまうと急にこの格差が大きくなるというようなことがあります。
     女性の経済上の余裕の変化というのは特に女性に強くて、このことは少子化ということにも議論が行くと思うんです。パネル調査というのは未婚の女性も含めていますので、親同居未婚と単身未婚と夫婦2人だけのときの妻、夫婦と子どもがいる母であり、妻であるという人たちの経済的余裕というの がどういうふうに変わっているのか、ラフに考えて変化をみました。未婚の場合は、被服と教養娯楽と貯蓄、有配偶の場合には妻の生活費と妻の貯蓄 というのを合算して、そして余裕度を見てみましたところ、親同居未婚を100とすると単身未婚、つまり独立すると68ぐらいになって、夫婦になると55に なって、夫婦と子どもになると31になる。これは非常に簡単なスケッチなんですけれども、こういうふうな変化がある状況で女性が子どもを産むはずもな いということになります。経済的なところだけから見ると、こういうふうにどんどん余裕がなくなっていくという状況があります。アンペイドワークをどういうふ うに評価するか、子どもを育てるということを女性に押しつけるということは避けなければいけないとは思うんですけれども、もし女性が担った場合に、ア ンペイドワークをそういう経済的なものとして、愛情とは別に、愛情はもちろん持っている、経済的な貢献というのをどういうふうに反映するかということが 財産の問題につながります。私も模索中なんですけれども、今のところ家計の中では解決できないでいて、財産の格差としてそのままであるということ でございます。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。盛りだくさんな内容を早口でしゃべっていただきまして、急がせて申しわけありません。御意見や御質問が ございましたらお願いします。
    坂橘木委員
    こういう仮説はどうですか。子どもができると、どうも夫の方が財産を持っているとか、そんな意識が出て、女の方は余りそういう意識がな いというようなのが出ていたと思うんですが、離婚のときに子どもをもらうのは大体女性が多いでしょう。だから、お金は夫に、子どもは妻にというすみ分 けがあるという解釈はどうですか。
    御船氏
    そういう解釈は初めてですね。つまり、子どもをもらうと、子どもはお金がかかります。成人をもらっているわけではないので、お金がかかりま すから、お金もきちんと子どもにつけていただかないと、より貧困化する。
    坂橘木委員
    でも、夫から見たら子どもを奪われたというのは大変なショックでしょう。
    坂東局長
    「まされる宝子にしかめやも」というふうな評価もあり得ると。
    坂橘木委員
    そういう解釈というのはあるんですか。
    御船氏
    それが経済的なというふうなことよりも、むしろ人間的というか、心の保障というか、そちらでやるしかなくて、心の保障をどういうふうにするか というのは、面接権だとかそういう形でしかできないと思うんです。つまり、男性は心をお金で示していくということができるんですが、今の状況では、女性が男性の心の傷をお金でできないわけですから、面接権とかそういうところで主張するべきではないでしょうか。それから、先ほど言ったように成人ま ではかなりお金がかかりますから、男性にとってはショックであったとしても、やはり育てなければいけないわけですから、それにはやはり扶養のための お金が要る。それは両方でやらなければいけないので、面接権と同時に男性は扶養のお金、つまり養育費というんですか、そういうものをきちんと出し ていただくような制度にしないとできない。育たないんです。
    師岡委員
    そうなんですけれども、私は離婚時の資産の分け方の考え方で、男性の方が49%という数値をおっしゃいましたね。子どもはどちらが引き 取るのかということとの相関性が少しあるのかどうかというふうに思いながら見ていたんですけれども。
    御船氏
    49%というのは女性財団の方ですね。
    師岡委員
    そうですね。
    御船氏
    女性財団の場合は、もう子どもが大きくなっていて、核家族の場合は、まだ子どもが小さいということです。
    永瀬委員
    大変興味深く、非常におもしろかったんですけれども、実はついこの間ドイツから帰ってまいりまして、ドイツでちょうど女性と年金というテー マで、ドイツの研究者と話をしていたんですが、ドイツでは、離婚すると年金は社会保険庁のところから二分される。それから財産も3種類あって、幾つ かの制度があるけれども、ある制度をとった場合には、結婚後のものは全く二分割される。別の制度の場合には、結婚前のものを含めて二分割される。 それから3番目は何でしたかしら、物すごく明確な二分割で驚いたんですが、日本の離婚時の財産分割というのは、大変基本的なことを聞くようで恐縮 なんですけれども、その実態と法制度というのは、御船先生ではなくて、もしかしたら神野委員に伺うべきかもしれないんですけれども。
    高尾委員
    関連したことなんですけれども、私も素人で申しわけないんですが、夫婦になって築き上げた財産の分配制度に関する日本の現在の法的 な部分がどんなことになっているのか。私もスイスとかドイツとかの制度は、友だちが言うには、結婚する時点でどういうふうにするかもう既に契約をする わけです。それをもって結婚をするので非常に明確になっているようなんですけれども、実際に日本ではどんなふうに。
    御船氏
    この本の中に東大の広渡先生が、日本の場合に夫婦財産契約という制度が本当はあるんですが、ほとんど使われていないということを示さ れています。基本的には別産制ですから、それぞれの名義、夫の資産、妻の資産というふうになっていますから、あとは財産分与の請求だとかそういう 形で処理をしていくということになります。それから、先ほどの心情的な手当は一方でやられていると思います。ただし、今日はバイオレンスの話はしな かったんですが、イギリスなんかで、こういう家庭内の家計の配分というのが、もともと夫が家計に入れないとかということがあって問題にされています。 日本ではバイオレンスの問題が後からクローズアップされたと同様に、家計に関してもほとんど入れていない男性は多分いるんだろうけれども、余りそう いうことが言われていないということがあります。従って、共同性が前面に出ていますけれども、もともと離婚の前には家計の共同性は破綻している。家 計として拠出していないという人たちがいます。どうして拠出しないかというと、使ってしまうわけですから、財産分与請求とか、そういうお金を請求して も、あるいは先ほどの養育費、これを請求しても払えないという夫の問題があります。そういう問題が一方であって、制度的には夫婦別産制、それから、 夫婦財産契約はほとんど使われていないという部分があります。
    神野委員
    先ほどの件は、そういう意味では、ドイツも二分二乗制度が入りますね。二分二乗制度が入る国は、もともとアメリカの南部諸州の民法が そうですけれども、財産共有なんです。共有だとみなされちゃいますので、だから二分二乗みたいな考え方が入りやすいので、今おっしゃったようになる わけですが、日本の場合には、昔の民法制度を引き継いだのではなくて、それを全部シャウプ勧告で個人単位にしてしまったから話が逆にややこしく なって、私の家族は神主でしたから伝統的なことをやりますので、婚姻をしたときには、うちの家内は、私の父と母と養子縁組をします。名字をあきらめ て家に入るわけですから、当然うちの父と母との子どもになりますし、それから当然ですけれども、離婚しても相続権は持ちます。
    坂橘木委員
    自分の親と。
    神野委員
    それは切れませんから養子縁組でやる。これが私の家のしきたりなんです。ところが、僕はびっくりしたんですけれども、他の人に聞いて みると、ほとんど婚姻養子をやっていないんですね。婚姻養子をなぜしないのかなと。逆に男が家に入ったときにも養子縁組をするのがしきたりです。と ころが、個人単位になってしまっていますので、贈与税の控除60万が上がる前にいってしまえば、財産を妻に贈与した場合には、これに贈与税がか かってしまいます。例えば私がうちの家内に、いろいろ家内も働いてくれているからということを評価して、財産を贈与しようとするとだめなんです。その 代わり生活費で贈与した場合には、基本的には贈与税は課税されないわけです。
    大澤会長
    その中からへそくりして自分名義の貯金をつくったら、それは全部大丈夫。
    神野委員
    それは大丈夫です。通常の贈与税を逃れる手は普通それですから、例えば、子どもが就職し、子どもの所得が1,000 万あるとすれば、そ の1,000 万すべてを財産形成に使用させ、生活費は親が贈与すれば、贈与税はかからないことになります。
    大澤会長
    図表の17を見てちょっと意外だったんですけれども、もう少しバブル経済のころの話なのかと思ったら、これは核家族調査だから、99年の 調査なんですね。近ごろ帰りにいっぱいやるお金もないだけではなく、昼御飯も外では食べられなくて、弁当を買ったり、おにぎり買ったりするサラリーマ ンが増えているという中では、この調査の結果は意外だったんですが、こんなものなのでしょう。
     それから先ほど財産分与という話が出ましたが、ほとんど協議離婚で、協議離婚の場合、養育費の取り決めをしている率ですらかなり低いので、財産 分与というようなことをどのぐらい話し合っているか、それ自体数が低いですね。やった結果として2分の1もらえるなんていうのは非常にラッキーな例外 ですから、実際に別れている夫婦では、財産分与というのは2分の1などはほど遠い実態がありますね。
    御船氏
    私たちはなかなか問題というか、そういう人たちを把握できないものですから、司法書士の方々に財産の問題をやっていらっしゃる方にヒアリ ングをしたとき、ほとんど財産分与はないということを言われました。それから養育費に関しても、かなり社会的地位があり、かつ一定の収入があるとい う人でないと、なかなか養育費が払ってもらえないというようなことがあります。
    坂橘木委員
    それはどっちに原因があるということも大事なんじゃないですか。
    永瀬委員
    余り関係ないんじゃないですか。
    坂橘木委員
    関係ないですか。
    永瀬委員
    私もデータで見たことがあるんですが、養育費を払っている率はすごく低いですね。
    坂橘木委員
    日本人というのは結婚するときに、余り離婚のことを念頭に置かずに情緒的に結婚するでしょう。先ほどドイツは結婚の前に財産を2分の1 に分けるというようなことを聞いてびっくりしましたけれども。
    御船氏
    ドイツはそういう小まめないろいろなマニュアルがあって、結婚するときにどういうことをやるかとか、ここのところは広渡先生が結構細かいこ とを書いてくださっているんですが、日本の場合は、最初から別産制であり、かつ夫婦財産契約をやるとかということもないし、それから別のことでも、た とえば家計管理のことを決めてから結婚しましたかという調査をすると全然決めていなくて、結婚して1か月目のお給料をどうするかというので、親のや り方をやったというような例が出されます。けれども、自分が期待していた形は夫の給料を全部渡してくれる形だったがそれをしてくれなかったので、とて もショックだったというのはよくあります。ですから、管理がしたい女性がさせてもらえないと結構ストレスになって、幾人か離婚をした人に聞きますと、や はり家計管理の夫と妻の考え方が全然違って、それで結構最初ショックで信頼関係みたいなことに読みかえてしまうというようなこともあります。もう少 しヒアリングをしないとできないですけれども。
    坂橘木委員
    あなたの書かれた男は経済、女は愛情とするのと逆じゃないですか。男の方が経済観念が強くて、女は愛情で動くというのと逆じゃない ですか。
    御船氏
    書いたことは規範としてそれが外側から言われているという意味です。これをはね返した、ですから、離婚したからそれを言うんです。つまり 私がヒアリングをしたのは、離婚した人たちがどうだったということを言いましたから、もうそのときには女は愛情とかというふうには規範には従っていま せんから。
    坂橘木委員
    女は結婚したときに経済が第一に来て、男は逆に愛情がという解釈ですか。ちょっと私、自分でも混乱しているんですけれども、妻が家計 を管理したいんだけれども、管理させてくれないから頭にきていると言われたからね。
    御船氏
    離婚したときに、その実態はそうだったというので、ここで言っていることは、特に結婚したときに、財産をこういうふうにするとか、ああいうふう にするとか、私は半分ほしいわとか、そんなことは言えないような状況というのが一般的にあるということです。ですから結局言わなかったんです。不満 に思っているんだけれども、愛情規範とか、お金のことに余り口出しをするのはよくないという規範が強いものですから。
    坂橘木委員
    女性側に。
    御船氏
    はい。
    師岡委員
    しかし、これは私の反省でもあるんですけれども、先ほど結婚時に家計管理の夫婦契約みたいな話が出ていましたけれども、私は家計管 理だけじゃなくて、出産・育児に関しても、その当時にきちっと話しておくということが、これから非常に大事ではないかと思っていますね。
    大澤会長
    いよいよ時間がなくなってしまいました。今日は御船先生、本当にありがとうございました。
     最後に事務局から連絡事項等手短にお願いいたします。
    浜田参事官
    それでは、次回でございますが、第5回の会合は10月25日木曜日の16時から18時を予定しております。場所はここの第3特別会議室 でございます。
     それから、あと議事録の方でございますけれども、まず第3回の専門調査会の議事録案、これは委員方限りということでお配りしております。この案に つきまして、何か修正すべき点がございましたら1週間ほどでお返事をお願いしたいと思います。そのいただいたものを集約いたしまして、次回の10月 25日のときに、またお諮りしました上でオープンということにさせていただきたいと思います。第2回の議事録の方は今日配付資料の6ということでお配 りしたもので、皆様の御意見を入れたものでございますので、これでオープンということにしたいと思います。
     以上、よろしくお願いいたします。
    大澤会長
    それでは、これで影響調査専門調査会の第4回会合を終わります。本日はどうもありがとうございました。

(以上)