第1回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成13年5月18日 (金) 15:00~17:06
  • 場所: 官邸大客間
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      大沢 委員
      岡澤 委員
      神野 委員
      木村 委員
      小島 委員
      高尾 委員
      高山 委員
      永瀬 委員
      師岡 委員
  2. 議事
    • (1) 開会
    • (2) 委員あいさつ
    • (3) 運営規則について
    • (4) 本専門調査会における議論の進め方について
    • (5) 自由討議
    • (6) 閉会
  3. 議事内容
    坂東局長
    定刻を過ぎましたので、内閣官房長官は、少し遅れておりますけれども、先にスタートさせていただきたいと思います。ただいまから男女共同参画会議影響調査専門調査会の第1回会合を開催させていただきます。
     私は、この専門調査会及び男女共同参画会議の事務局を担当しております内閣府の男女共同参画局長の坂東でございます。どうぞよろしくお願いいたします。しばらくの間議事の進行を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
     まず、内閣官房長官がお見えになってから、官房長官と次に松下副大臣にごあいさつをいただこうと思いますので、先に私の方から、本専門調査会の設置と資料1から3に基づきまして、本専門調査会の位置づけについて御説明をさせていただきます。
     本専門調査会の設置の趣旨につきましては、また改めて官房長官の方から御紹介がありますけれども、本年4月3日男女共同参画会議におきまして設置が決定されて、男女共同参画社会の形成に影響を及ぼす政府の施策について調査検討を進めるということで、特に税制とか、社会保障制度などを中心に皆様に検討をしていただきたいと思っております。
     また、辞令を机の上にお配りしてあるかと思いますが、本専門調査会との関係で内閣総理大臣から8名の専門委員の任命をいただいております。高尾委員は公募で加わっていただいております。また、これを受けまして、男女共同参画会議の議長である内閣官房長官から本専門調査会に属すべきものとして、8名の専門委員及び4名の男女共同参画会議議員、計12名の指名並びに本専門調査会の会長として大澤真理専門委員の指名をいただいております。
     男女共同参画会議の設置、所掌事務についてはお手元の資料1「男女共同参画社会基本法(抜粋)」をご覧ください。それから、専門委員、専門調査会については資料2「男女共同参画会議令」に規定がございます。また、男女共同参画会議の下に、このほかに4つの専門調査会が置かれており、資料3「男女共同参画会議の全体構成(イメージ図)」がございますが、ほかの4つの「基本問題、女性に対する暴力、苦情処理・監視、仕事と子育ての両立支援」は既にスタートしておりまして、この「影響調査」が最後にスタートをする専門調査会ということになります。それぞれの専門調査会では、学識経験の深い方々に委員になっていただいおります。大変皆様もお忙しいところを快く就任していただきまして、私ども事務局としても心から御礼を申し上げますし、事務局として全力でこの審議のお手伝いをさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
     それでは、以後の議事の進行につきましては、大澤会長にお願いしたいと思いますが、今、内閣官房長官がお見えになりますから、官房長官のごあいさつ、副大臣のごあいさつをいただいた後に会長に議事の進行をお願いしたいと思います。
     この男女共同参画会議というのは1月6日にスタートをしております。本会議の議員の先生方は任期が2年ということです。それぞれ5つの専門調査会に議員も加わっていただいておりますし、新たに専門委員も加わっていただいているのですが、専門委員の任期は決められていないということですが、専門調査会としては一応2年程度を目途として御審議をしていただきたいと思っております。

    (福田内閣官房長官入室)

    坂東局長
    それでは、内閣官房長官・男女共同参画担当大臣福田康夫様がお見えになりましたので、審議に先立ちまして、ごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
    福田内閣官房長官
    内閣官房長官の福田でございます。今日は大変お忙しいところをお集まりいただきまして本当にありがとうございます。
     この男女共同参画会議の下にいろいろな会議を立ち上げまして、それぞれ専門の見地から御検討をいただくということでございます。仕事と子育てから始まりまして5つ目でございます。今日は影響調査専門調査会ということでございます。大変大事な仕事でございますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。
     我が国においては、男女共同参画の実現に向けてこれまで様々な取組が着実に進められてまいりましたが、今後、小泉内閣の下で男女共同参画会議の機能を存分に発揮しつつ、より一層男女共同参画社会の形成に邁進してまいりたいと考えております。
     影響調査専門調査会は、本年4月3日の男女共同参画会議において設置が決定されました。男女共同参画社会の形成に影響を及ぼす政府の施策について調査検討を進めるということとされておりまして、特に税制、社会保障制度などを中心に皆様に検討していただきたいと考えております。
     委員の皆様方におかれましては、大澤会長のもと、その学識経験を存分に生かしていただき、本専門調査会における検討の成果が男女共同参画社会の形成に大きく寄与することを期待申し上げる次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
    坂東局長
    ありがとうございます。次に、松下副大臣からごあいさつをいただきます。
    松下副大臣
    松下忠洋でございます。福田官房長官を助けて働いてまいりたいと考えておりますし、皆さん方のお知恵を沢山いただいて良い成果があがるようにしたいと考えております。
     官房長官にもいろいろ相談しながら、府や省の中にもこれを推進する仕組みをつくっていったらどうかということで、副大臣会議等にも提案させてもらっておりまして、同じように1府12省のそれぞれの中に男女共同参画の推進会議というようなものをつくって一緒にやっていけたらと思っております。そういうことも実現させながら一緒にやっていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
    坂東局長
    どうもありがとうございました。なお、内閣官房長官は、この後また公務が詰まっておりますので、ここで退席いたします。
    福田官房長官
    お話をお伺いしたいのですが、今ごあいさつしたばかりで誠に申しわけありませんが、これで退席します。どうぞよろしくお願いいたします。

    (福田内閣官房長官退室)

    坂東局長
    それでは、大澤会長に議事の進行をお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
    大澤会長
    大澤真理と申します。男女共同参画会議議長の内閣官房長官から御指名をいただきまして本調査会の会長ということになりました。よろしくお願いいたします。初会合でもありますので、まず私の方から簡単にごあいさつを申し上げまして、引き続いて委員の皆様から1人2分程度でごあいさつをいただければと思います。
     なお、資料4には、この専門調査会の委員名簿が配布されておりますので、御参照ください。
     そこでまず、影響調査とはなにか。これをどのように進めていくのかについては、この後事務局からも資料の御説明をいただき、またフリートーキングをしてまいりたいと思いますけれども、私がこれまで若干の調査とか研究とかをした限りでは、諸外国に確立した前例はないといってよろしいのではないかと思います。そもそも男女共同参画社会基本法の中の第4条、社会制度慣行における配慮、それから第15条、国と地方公共団体が施策を企画・立案し、実施するに当たっては、男女共同参画社会の形成に及ぼす影響に配慮しなければならないという、この第4条と第15条というのが諸外国の関係法令には余り例を見ない規定でございます。法律学者の中には基本法についての賛否がございますけれども、この4条と15条に関しましては、幾ら評価してもし過ぎることはないというような、ほとんど絶賛に近い評価をいただいておりますが、そういう例を見ない期待されている条文が生きるも生かされないも、この影響調査専門調査会にかかっているところが大でございまして、このような責任が全うできるものかどうか私も自信があるわけではございませんけれども、知恵の足りないところは体力で補ってでも務めてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。それでは、大沢真知子委員にお願いいたします。
    大沢委員
    はじめまして、日本女子大学の大沢です。
     私はたまたま6か月ぐらい前に経済産業省から連絡をもらいまして、男女共同参画委員会は私的な委員会だということなので、その委員会の座長を引き受けるよう言われ、私にとっては晴天の霹靂ということだったのですが、それで私的な研究会を何回か重ねてまいりました。同委員会では労働経済という視点から税制とか、社会保障制度とか、保育所の問題などを考えてまいりまして、今月の終わりに報告書がまとまり、今、最終段階にかかっております。そういった報告書の研究結果などをこの調査会の中で皆様にお諮りして御意見をちょうだいできたらと思っております。
     その会合の中でも、男女共同参画社会というのは一体どういう社会なのかということをもう少し深めるべきだというような議論もございまして、私個人の意見としましては、男女はともかくとして、個人が自由に選択できる社会というふうに考えております。つまり、いろいろな選択をしたときに、ある選択をした方が、そうではない選択よりも得をするというようなことがない。それぞれが個人の目標に従って、男であるとか女であるとかに関係なく、目標を持ち、そういった目標をなるべく多くの選択肢の中から選べるという、そういう個人を基本とした社会が日本でこれから求められているのではないかというようなことを思っております。こうしたことも含めて皆様と議論を交わしていけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
    大澤会長
    神野委員どうぞ。
    神野委員
    東京大学の神野でございます。
     私は財政学を担当しておりまして、伝統的なドイツ財政学をやっております。これは今では亜流でありますが、東京大学としては正統な講座でございますので、正統な東京大学の財政学を受け継いでおります。そういう事情がございまして、今アメリカで私の考え方に対して物凄い批判が起きております。特に一番激しいのはグレッドノーブルという合理的選択理論の先鋒者が私に与えたレッテルは、コンサバティブ・ユートピアン(保守主義的理想主義者)ということだそうであります。アメリカモデルを目指して改革を進めようとする日本を阻止するコンサバティブであるけれども、理想主義者であるということであろうかと思いますが、男女平等ということに関して言えば、ユートピアンでありますので、ユートピアンとして人間の社会というのは、人間はそれぞれのかけがえのない能力を最大限発揮すべきであるというように考えておりますので、男性も女性もそれぞれの個性を発揮しながら有償労働にも無償労働にも参加して発揮していくシステムを考えています。コンサバティブでありますから家族を重視し、決して女性が男性化するということではなくて女性が女性として、それぞれの個性を発揮しながら有償労働にも無償労働にも男性も女性も参加できる、そういう視点から考えていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
    木村委員
    地方財政審議会委員の木村と申します。この審議会は「審議会」の中では唯一フルタイムの審議会でして、皆さんに審議会だけで食べていけるのですかというような話や、週に何回出席するのですかなどと聞かれます。
     今まで専門としてやってきましたのは社会保障全般と国の財政、地方の財政です。地方の財政は主に介護保険などをやってまいりました。男女共同参画については、どういう社会になるのかというのが骨格的にはよくわかるけれども、詰めなければならないこともあるかと思います。これから一緒に何かを練り上げていく楽しさというのをみんなで分かち合えれば非常に良いなと思っております。よろしくお願いいたします。
    小島委員
    小島です。日本経済新聞社で、ずっと新聞記者をやっており、35年近くなります。したがって専門はありませんが、専門知識のある人と多くのネットワークをつくって、いい話を勉強させていただくというのが私の仕事です。
     ということで、今までに感じたことを述べてみますと、恐らく日本は歴史的にも大変で、世界でも特異な波高で人口動態の劇的な変化があり、また、長寿ということも基本的なところですが、労働人口が激減する過程がもう始まりつつあるということです。少なくともそれは今の定年制とか、女性の社会参画率ということを前提にすると、日本の社会はだんだん先細ってしまうということです。それで、これをカバーしていくには、ぜひとも一番の大きな傘としてはエージフリーですね。働く能力があり、意思があるという人がいろいろな分野で、ngoであれ、公的な分野であれ参画できる社会がいいと考えます。その中に当然男性も女性も、ジェンダーフリーがその中にある。それが重なることによって、日本の社会の人口革命が進む中で、本当に懐の深い豊かな成熟社会にチャレンジできるのではないかという感じで見ております。よろしくお願いします。
    高尾委員
    初めまして、高尾まゆみと申します。よろしくお願いいたします。
     皆様は随所で顔を合わせていらっしゃる方々が多いのではないかと思いますけれども、私は本当に初めて、こうしたところに出させていただきました。公募ということで、もちろん大変緊張はしております。私は今新聞を、国内を4つと海外を2つ読んでいるのです。でもそれはアルバイトでして、自分で全部新聞代を払っているわけではないのですけれども、たまたま読売新聞で記事を見まして、そういう市民感覚は大変拍手を贈りたいと思いました。そういう意味で全く有識者ではないところから公募をするというのは拍手を贈りたいという気持ちです。いいと思ったことにはレスポンスをしようと常日ごろ思っていますので、作文で応募をしたのです。自分を是非委員にしてくださいというような気持ちは全くございませんでした。そうしたら、こういうことになりまして、突然電話が入り、面接の知らせがあり、そのときも私がなるとは全く思っていませんでした。そうしたら高尾さんにお願いしたいということで、晴天の霹靂の方がこの中に何人かいらっしゃるかと思いますが、私が一番晴天の霹靂の委員だと思います。
     ですから、私は自分が何百万という専業主婦とか主婦と言われる方々の代表選手だというようには余り思っておりません。ただ、日本でのm字型女性のライフスタイルの一つのモデルケースではないかと思うのです。出産退職をして家庭に入り、それからまた有償労働に戻っていくというような特徴的なことがありますけれども、その一つのサンプルとして見ていただければ良いし、私もそういうつもりで会議に参加させていただければというように思っています。
     そういうわけで、さっきからお話が出ているように、有識者の方、経験者の方ということで期待をしておりますと官房長官からのお話がありましたが、全くそういうことがないわけで、しかし、そういう意味では気軽に思ったこと、感じたことを述べていいですよというようにおっしゃってくださったので、そういうようにさせていただこうかと思います。
     個人的には、かなり実質的な男女平等というか、男女参画ということにこだわっていた部分がありまして、私は足かけ5年スイスのチューリッヒにおりました。私は配偶者があるわけですけれども、その配偶者が学生だったということもありまして、どうもスイスに行ってみると男女関係とか、夫婦関係、家族関係、地域社会というのが違うのですね。何でそうなのだろうか、彼も時間がありましたので、随分そういうことについて話をしてきたところで私なりのオリジナリティとか、そういうことがあるのかないのか自分でもクエスチョンですけれども、そういうことで御迷惑をおかけすることも多いと思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
    高山委員
    一橋大学の高山でございます。
     私は元来年金しか研究していませんので、ほかのことは余りわからないのですけれども、15年もやっていますので、年金分野における限界生産性はゼロに近いわけであります。そこで何かほかのことをやらないと、まだ学者としては何かやらなきゃいけないと思いまして、少子化とかそういうことに少し関心を移しつつあります。たまたまその中で、男の働き方を変えようというタイトルのペーパーを書いたのです。かつて男女平等ということで、いろいろなスローガンがあったと思いますけれども、男に女性が合わせるという形では世の中うまくないという理解だと思います。そういう中で言葉が男女共同参画に変わったというように私は理解しております。どうも日本の男の働き方は異常ではないかという理解でありまして、これをもっと変えないと男も暮らしにくい、住みにくいし、結果的に女性も楽しくないという形だという理解の主張をしたわけです。この委員会でどういう貢献ができるかわかりません。少し勉強させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
    永瀬委員
    お茶の水女子大学の永瀬と申します。
     私の専門は労働経済学でございまして、女性が働くことについて、ずっと考えてまいりました。先ほどm字型労働という話も出ましたけれども、どうして日本はそこで非常に落ちるのか、また、日本の特徴はどうしてそういうことが生じているのか。それは労働市場と家庭内生産のあり方と両方があると思うのです。あるいはそれに対して保育園等はどういう役割を果たし得るのか、それに対するどういう形の仕組みのあり方というのが変更をもたらし得るのかといったようなことに関心を持ってやってまいりました。それからパート労働にも大変関心を持ってやってまいりました。最近は年金とか少子化の問題等、全体としては労働経済学の枠組みを使って分析するようなことですが、そのようなことに関心を持っております。
     ただ、私は男女共同参画というこの会議で果たしてどういうプラスの貢献ができるのか余り自信がないというところもございますので、勉強させていただきたいなと思っております。
     日本社会の良いところもいろいろあると思うのですけれども、そして、いろいろな人がそこそこ満足して生きているような気もするのですけれども、しかし、どうも何か歪みがあって、あるところに行ってしまっているような気がします。例えば、高学歴化が進んでいるのに女性の離職が多いとか、なかなか子どもが生まれないとか、何か少し一つ一つの様々制度のピースがそういうところに行ってしまっているような気がしますので、それが未来のある維持可能な21世紀の日本社会の新しい制度の方に移行できたら良いなというような気持ちは持っております。
    師岡委員
    日本労働組合総連合会の副会長をしております師岡でございます。
     私は自治労の副委員長も兼務をしておりまして、焦らず、慌てずといったことで、長い間労働組合をやってまいりました。今東京に出てきておりますけれども、出身県は福岡県でございまして、大分に近い田舎の方に住んでおります。三世代同居で仕事をし続けてまいりましたので、社会保障制度の問題が女性の生き方や働き方に大変大きな影響があるということを身をもって感じた訳で、高齢になった年寄りを見ながら、そしてまた子どもたちの世代を見ながら様々に思いを持っているところでございます。
     たまたま出身は福岡県というところにおりましたので、先ほど大澤会長からお話がありました国と地方公共団体がどのように協力をしてこの施策を進めていくのかということを考えてみますと、行政の側面から、そして労働組合という側面からも、この問題をしっかり受けとめてかかわりを持っていくということを大事にしたいというように思っているところでございます。労働組合も組織率が2割でございますので、労働者全体の思いを受けとめられているのかどうかということは大変心配もされるところでございますけれども、ここの中にあって男女共同参画型の労働組合運動、こういったところについても極めて難しさも感じながら、現在自分の居場所を改めて確認をしているような状況でございます。 組合に働く女性たちの思いということからすれば、キャリア志向という女性たちも当然多くいらっしゃいますし、また地方に行けば行くほど、まだお茶くみ問題からも解放されないといった問題も幅広くありまして、少しそういった課題も整理をしながら、ある意味では都市型と地方型といいますか、そういったところへの問題も整理をして取り組んでいく必要があるのではないかというようにも思っております。2分ということでございますので、また後の議論の中に私が見える立場から意見なども出させていただいて、この影響調査専門調査会に何か貢献ができればと思っているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。今後の調査審議に期待が持てそうな感じがいたします。
     それでは、お手元の議事次第に従いまして、本日の審議を進めさせていただきます。
     次は議事次第3の「運営規則について」でございます。この専門調査会の運営規則につきまして、事務局が案を用意しておりますので説明をお願いいたします。
    浜田参事官
    男女共同参画局参事官の浜田と申します。よろしくお願いいたします。
     それでは、資料5「影響調査専門調査会運営規則(案)」に基づいて御説明したいと思います。この運営規則は、既に立ち上がっておりますほかの専門調査会と同様のものでございます。
     まず、第2条の調査会の招集ですが、これは会長が招集する。それから委員の欠席の場合ですが、御欠席の場合、代理出席というのはできない。ただし、書面により意見を提出することはできるということです。それから議事ですが、会長が御出席して、委員の過半数の出席、それが定足数ということでございます。議事は、出席委員の過半数をもって決するということです。また、議事要旨と議事録を公表させていただきたいと考えておりまして、議事要旨、議事録とも発言された方のお名前が出ますが、よろしくお願いしたいと思います。あと、会長代理を会長の御指名で決めていただきます。以上です。
    大澤会長
    このような運営規則(案)が用意されておりますけれども、御質問や御意見はいかがでしょうか。
    高山委員
    議事録についてですが、第6条に「一定期間を経過した後」と書いてありますね。一定期間とはどのぐらいを念頭に置かれているのでしょうか。
    坂東局長
    1か月程度ということです。
    大澤会長
    これは調査会に諮るわけですから。
    坂東局長
    その次の調査会で速記録をご覧いただいてから、その後公表ということになるかと思います。
    大澤会長
    よろしいでしょうか。
     では、決定させていただいてよろしいでしょうか。

    (「異議なし」と声あり)

    大澤会長
    ありがとうございました。それでは、この運営規則について原案のとおり決定いたします。
     決定されたばかりの運営規則第7条をご覧いただきますと、会長は会長代理を指名するということになっております。会長代理として本日遅れて出席されるという御連絡をいただいております岡沢憲芙委員を指名させていただきたいと思います。
     続いて議事次第の「4 本専門調査会における議論の進め方について」です。関連して事務局が資料を幾つか用意しておりますので、これを御説明いただくことにして、その質疑応答や、さらにフリートーキングは御説明の後にまとめて時間をとらせていただきます。
     それでは、引き続き資料の説明をお願いします。
    浜田参事官
    それでは資料6から御説明をしたいと思います。
     資料6「影響調査専門調査会の調査対象(案)」でございますけれども、2つ考えてみてはどうかということで、まず1つは、男女共同参画社会の形成に影響を及ぼす政府のすべての施策がこの専門調査会の調査対象となり得る。そういう観点から検討の第1段階としまして、広く各省の施策の企画・実施・結果評価といった、そういう各段階に男女共同参画の視点を取り入れていくための自己評価システムを構築する。具体的には後で申しますが、チェックシートの作成といったようなことを考えてはどうかということでございます。
     それから2つ目としまして、こうやって広い施策が対象にはなるのですが、それと同時に特に女性のライフスタイルの選択に影響が大きい制度等があると考えられますので、そういうのを重点的に取り上げてはどうかということです。具体的には税制とか、社会保障制度とか、雇用システムなどが考えられるのではないかと思います。特に5年に一度の年金改正の時期、従来どおりだと2004年ということになるのだろと思いますが、そういうものを視野に入れながらモデルケースによる研究、このモデルケースも後で御説明しますが、そういうものから着手してはどうかと考えております。またその議論の中で、例えばアンペイドワークとか、夫婦別産制とか、離婚時・死別時の財産分与における主婦の寄与分、そういう関連する問題も必要に応じて適宜取り上げていってはどうかというように考えております。
     それから次の資料7ですが、これはこの専門調査会のスケジュール案でございます。今日はこういうことで今後の議論の進め方について討議していただくということで、次回から2回は委員の方々にレポートをお願いできればと思います。レポートのテーマとしては、ジェンダー影響評価の全般的な話、それから就労調整と社会制度や雇用システムとの関係、その次の回では、女性と社会保障制度と女性と税制の関係、そういったようなことでレポートをいただければと思っております。その後に先ほど申し上げたモデルケースの話とそれから自己評価、チェックシートとかについて申しましたけれども、そういう自己評価方法について討議していただきまして、それに基づきまして9月以降、そのモデルケースと自己評価方法の検討を進めていくということでいかがかと思います。モデルケースの方につきましては、後で申しますが、ちょっとした解析ということを考えていまして、中間結果まで6か月、最終結果まで1年ぐらいかかるのではないかと思っております。モデルケースについて、適宜そういう解析内容の報告をするとか、あるいは専業主婦の方からヒアリングをするとかそういったことをしていってはどうか。それから自己評価方法の検討につきましては、関係省庁からのヒアリングをしてはどうかといったようなことで考えております。
     次の資料8でございますが、これが先ほど申しましたモデルケースの説明でございます。まず1にございますように、女性のライフコース別のモデルケースを組んでシミュレーションをしてみてはどうか。シミュレーションの内容としては、例えば配偶者控除とか、第3号被保険者とか、配偶者手当とか、そういったものと女性のライフコース、生き方の選択との関係を考えてみてはどうか。その際、男性についても必要に応じて解析の対象に組み入れてはどうかということでございます。これは一応解析ということですので、この専門調査会の検討を技術的に支援するために、大学教授クラスの方を主任研究者として、あとポスドククラスの方とかを研究の補助者にして、作業をするワーキングチームというのをつくって、そういうモデルケースに関する分析素材の提供をしてはどうかということでございます。
     そのモデルケースで考えられるものですが、「2.」にあるような「場合分けの例」があるのではないかと思います。もちろん、これについては、ほかにもこんな場合分けの例というのは考えられると思いますので、そのあたりは、ここでの御議論を踏まえて場合分けというのは考えていきたいと思いますが、事務局の方でも基本的なものということで例として挙げておりますのは、結婚をする/しない、そのときに退職する/しない、出産をする/しない、そのときに退職する/しない、子育ての仕方として育児休業とか/保育所とか、あと再就職をする/しないといったような、あと離婚、死別、再婚とか、いろいろそういう場合分け、そういう区分の基準が考えられるのではないかと思います。
     ここでは基本的な例ということで挙げましたけれども、そこの*印にございますように、これだけでも場合分けを掛け合わせていけばモデルケースは100 を超えてしまいますので、先ほどのワーキングチームでは、もちろんそれぞれについて素材の提供はするわけですけれども、ただ、この専門調査会での議論の対象として100 を超えると余りにも多過ぎますので、その中でも代表的、典型的なものに絞り込んではどうかと思います。
     結果のイメージとしましては、先ほどの女性の生き方、ライフコースの選択と税や社会保障や雇用システムとの関係、こういうライフコースだと税金をどれだけ払って、社会保障の給付がどれだけあってと、そういったイン/アウトの関係、そういったものを明らかにするというようなイメージで考えています。
     作業の見込みですが、スケジュールで申しましたように中間結果は6か月、最終結果1年間ぐらいかかるのではないかと思いますけれども、順次解析結果をこの専門調査会の審議の素材として提供できるというふうに考えております。
     それから次の資料9でございますが、これは男女共同参画影響調査研究会という、大澤会長に座長をしていただいた研究会なのですが、その研究会の報告書を事務局なりに骨子をまとめたものでございます。この専門調査会の議論も、この影響調査研究会の報告書がもとになるというか、出発点になるのではないかというように思いまして、この骨子をおつけした次第です。
     まず、本骨子の1つ目の意義・目的ということですが、男女共同参画の実現ということのためには、あらゆる社会制度や慣行に男女共同参画の視点を反映させる必要がある。あらゆる社会制度や慣行が対象になり得るということです。
     それから2つ目の必要性・有益性ということですが、政府の施策をできる限り男女共同参画社会の形成の促進に資するようにするために必要であるということです。「2.」の最後の2行、政策評価との関係なのですけれども、政策評価において問題のない施策でも、男女共同参画の影響調査の結果、男女共同参画社会の形成、そういう観点からは改善が望まれることもあり得るということです。つまり政策評価というのは、その政策の目的に照らしてという評価ですが、この影響調査の方は男女共同参画という目的です。そちらの方に照らしてどうかという話なので、それは政策評価とは違うであろうと、そういうことでございます。
     それから「3.」の影響調査の実施上のポイントですが、まず調査の対象施策ですが、特に「政府の重点施策」、「性別に偏りが大きいと予想される施策」、「資源投入量が多い施策」、例えば予算が多いとかそういう施策が考えられます。それから調査の時期ですが、これは事前、進行中、事後といったタイミングが考えられます。それから調査項目の基本的な考え方としましては、女性、男性双方の実際的なニーズを満たすように努めているか。女性、男性のいずれかが施策の便益から排除されないようにしているか。施策の対象となる女性、男性双方の意見を聴くようにしているか。施策の企画・立案、実施において女性、男性双方が参加しているか。そういったところが基本的な考え方になるというようなことでございます。
     それからその次のページですが、これは影響調査のイメージ図です。今申し上げたことのイメージ図でございますけれども、そこにございますように、企画・立案、執行段階、実施後、それぞれに関して影響調査というのがあるということでございます。
     その次のページですけれども、これが先ほど資料6で申し上げたチェックシートで、この影響調査研究会での参考例でございます。影響調査研究会でも参考例として出ているチェックシートの例としてはこんなものが考えられます。事前、進行中、事後、それぞれに関して、例えば性別のデータが存在するかとか、女性、男性双方で利用参加しやすい形態になっているかとか、そういったことがチェック項目としてあるのではないかということでございますが、これはあくまでも参考例ということで影響調査研究会でも挙がっておりますので、これからこのあたりも専門調査会で御議論いただければと思います。
     それからその次ですが、これは先ほどの男女共同参画影響調査研究会の海外調査の骨子でございます。この研究会の関係でカナダ、オーストラリア、フィリピンの海外調査をしたわけですが、最初のフォーカルポイント、担当の部署のところにございますように、政府の中にそういう担当する部署がどこもある。あと、その下の根拠法というのも3か国ともあります。それから推進体制で見ますと、政府の中のフォーカルポイントだけではなくて、各省にそういう女性担当部局がある。そういったようなことでございます。
     次に、資料10でございますが、「政策評価について」という資料がございますが、これは右上にございますように、政策評価のガイドラインに基づきまして、私ども事務方の方で要約したものでございます。政策評価はその下、ローマ数字のiiの「政策評価の実施に当たっての基本的な考え方」というところにございますように、評価の時点としては、事前、事後、あと途中というのがあって、そういう時点では影響調査と似ているところがございます。
     それから、資料中のii―2「評価の観点、一般基準等」ということですが、これは必要性、効率性、有効性、公平性、優先性といったようなことが挙げられておりますけれども、これらの点は、政策の目的に照らしてどうかということでございまして、先ほど影響調査研究会の報告書のところで申しましたように、影響調査の方は男女共同参画という、そちらの視点から、そこのところは異なるということでございます。
     以上簡単ではございますが、資料について御説明いたしました。あと、それぞれのもう少し詳しい要約がその後についております。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。ただいまの事務局からの説明について、かなり簡潔にやっていただきましたので、御質問等多々あろうかと思いますのでお願いいたします。それから、説明に関連してこの資料が必要であるとか。議論する場合に必要と思われる資料の御要望がありましたら御指摘ください。いかがでしょうか。15分ぐらい時間をとって、まず質疑、その後自由討論というような形でできるかと思います。
    木村委員
    資料10の政策評価と、私たちの影響調査とは何らか関係するところがあるのですか。
    大澤会長
    これはだれがお答えすれば良いのでしょうか。
    浜田参事官
    視点が違うというのはあるのです。政策評価だとその政策自体の目標ということですが、影響調査の方は男女共同参画といった別の視点になりますので、そこの違いというのはございます。もちろん政策によっては目標自体に男女共同参画の視点を含むものもあるので、そのあたりではある程度重なることもあり得るとは思います。
    木村委員
    ここでは単にそれをお聞きしておくということでよろしいのですね。
    浜田参事官
    そうです。
    木村委員
    はい、わかりました。
    大澤会長
    いかがでしょうか。大小問わず、この際ですから初回に解決しておいた方がよいものは……。
    木村委員
    影響というのはすごく広いですよね。漠然とわかるようで、どの辺まで考えに入れるべきなのでしょうか。これは今から議論すればいいことなのかもしれませんけれども。
    大澤会長
    及ぼすと認められる影響ですから、その認める主体はだれなのかというのはありますけれども、その主体の一つは間違いなくこの専門調査会です。
    木村委員
    大澤先生がまとめられた資料9を見ているのですけれども、1番の「影響調査の意義・目的」のところで最後の3段がありますね。「女性と男性の役割、状況」、その次の段が「政府の施策が女性と男性にいかなる異なる影響を与えるか……」。先ほどの研究の骨子とかを見せていただくと、いろいろなライフコースを描くということは、同性の中でも影響が違うだろうと思う。そういうことは全部含んであるということですか。
    大澤会長
    はい。これはこの専門調査会の会長としてというよりは、前の研究会の座長としての私の理解を申し上げます。基本法の第4条を見ますと、社会における制度や慣行を通じて配慮するというときに、社会の制度や慣行が男性や女性の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立なものとしなければならないというようになっておりまして、そこに「影響」という言葉が出てくるのです。ですから、個人にとって制度に邪魔されないで自由な選択ができるか。個人の選択する環境として社会制度や慣行が中立的なものになっているかどうかという観点ですから、女性と男性でどちらが得か損かとかいう話ではございませんし、女性にとってもどちらのコースを行ったら得なのかという話でもございません。個人が中立な環境の中で自由に選択ができるようになっているかどうかということが基本法の目指しているところかと私としては理解しているのですけれども。
    木村委員
    政府というときには地方公共団体も含むのですか。
    大澤会長
    地方公共団体については、先程も少し申しました第15条で配慮しなければならないというのがあるのですけれども、しかし、この専門調査会が調査の対象とする施策は政府の施策です。
    木村委員
    国の方ですけれども、例えば税制の方を研究するときには、地方税だって同じような制度があるわけですね。だから入れざるを得ないこともありますね。個人個人の意思決定に関しては、分離するのではないでしょうか。
    大澤会長
    私は税制についてそんなに詳しいわけではないですが、地方税というのは、地方公共団体の裁量の限りでできることと、そうでなくて国の方で決まっていて、でも地方税と呼ばれているものがございますね。そうなりますと、国の施策ということでは地方税であろうとも検討の対象になるのではないかと思いますけれども、神野委員いかがですか。
    神野委員
    今、仮にどの税金、全体の税制を問題にするかどうかですが、差し当たって住民税その他でいくと、国の法制などに合わせてやっておりますので、総務省というか、木村先生のところでお決めになる話ではないかと思います。これも中央政府の判断かどうかという問題と同時に、国の制度と一応リンクしてしまっているので、そう大きく区分しなくても議論できる場合が多いということも言えると思います。
    師岡委員
    社会保障制度となると非常に幅が広いのですけれども、具体的には年金の問題というように出ているのですけれども、医療や介護、福祉という幅広い領域があるわけですが、これはすべて頭に入れてということになるのでしょうか。個別的にそういうふうに抜き出したような形で進めていくというようになるのか、その辺は何か考え方があればいいのですが。
    大澤会長
    これはこの専門調査会で議論の上、方向性を出していくことではないかと思います。年金は議論になることが多いですから、ここには例示として出ておりますけれども、この調査対象案というのも案でございますから、これから御議論いただいて方向をさらに具体化していくことになろうかと思います。
     それでは、岡沢委員が御到着でございますので、先ほど全員2分程度の自己紹介というのをやりました。それからまた岡沢委員がいらっしゃらないときではございましたけれども、運営規則に基づきまして会長代理に指名をさせていただきました。
     では、ごあいさつをお願いいたします。
    岡沢委員
    お懐かしい皆様がほとんどでございますが、岡澤でございます。
     昨日まで北京のapecに出ておりまして、ずっといろいろな会議の流れを聞いていて、私が住んでいる北欧の会議とは随分イメージの違う会議だなというのを痛感いたしました。それは、会議の運営もそうですし、構成要素もそうですし、今年のapec最大のテーマがヒューマン・キャパシティ・ビルディングなのに、デレゲーションの中にほとんど女性がいないというのはapecらしい雰囲気の会議だなというふうに聞いておりました。
     今日遅れまして申しわけございません。恐らく私がこういうところに呼ばれましたのは、北欧の経験をということだろうと思いますが、私は35年ずっと生活しておりますけれども、余り情緒論とか感情論をやらない国でございますので、経済的合理性で納得できないような制度は長続きしないという前提で何か議論ができればというのが本音でございます。よろしくお願いいたします。
    大澤会長
    ありがとうございます。また、あわせて会長代理としてのお働きを今後ともよろしくお願いいたします。
     議論の自然な流れで、やや自由討議的に進行しているかとも思いますが、また途中で思い出されましたら、資料や、あるいは事務局の説明に関しての質疑を入れていただいて結構かと思います。これから30分以上自由討議の時間がございますので、今後の会議ではなかなかこれだけの自由討議の時間はとれないかとも存じます。
    木村委員
    一つ確認だけいいですか。政府の施策の与える影響ですが、この施策というのは現行制度ですか。
    大澤会長
    そうです。新規のものだけではないという御質問でしょうか。
    木村委員
    今ある現行制度がどういった影響を及ぼしているのかを明らかにしようとのことですが。その場合にヒアリングされるのが専業主婦に偏っていますよね。
    大澤会長
    これを忘れてはいけないという意味ですか。
    木村委員
    働いている人とか、いろいろな人の影響だったら、ほかの方も聞かれないのですか。
    大澤会長
    つまり関係団体ですとか、組織されている方は、そういう組織を通じて意見が上がってくることが多いのですが、専業主婦の場合には、基本的には組織されていないことが多いので、声がなかなか上がってこないという配慮から、特に例示してあるかと思います。
    高尾委員
    初めてでよくわからないのですけれども、例えば、今の現行の税制度とか、社会保障制度について中立的でないと、こういう調査結果が出て、こういうふうに変更した方がいいという、例えば、この影響調査会で何らかの意見が出た場合に、どんな形でそれが社会に影響を及ぼすようになるのでしょうか。
    大澤会長
    この専門調査会としては、男女共同参画会議に報告をするということになります。そして会議の方は、これは法律や政令に基づきまして、必要と認める意見を総理大臣や関係大臣に意見を述べる、こういう任務を持っておりますので、私どもの仕事というのは、このような影響があることが判明したということを報告することだと思います。
    坂東局長
    また会議の議員のメンバーには、厚生労働大臣ですとか、財務大臣もおられるわけですから、ここの議論については十分フィードバックがあり得るはずだと思います。
    高尾委員
    わかりました。
    永瀬委員
    資料8のシミュレーションを行うというように書いてあるのですけれども、これはかなりの作業量なのではないかと想像がつくのですが、これを半年及び1年でするというのはなかなか、だれがするのか。半年もしくは1年でするとすれば、それをかなり中心的に仕事をする人がいないと、大学の業務の傍らに私などはよくやっていますけれども、こういう会議に報告するのを半年でとかいうのではなかなかとても大変でしょう。まだよくわからない段階でも報告して検討することというのは十分研究所ではあると思うのですけれども、それが全部議事録になって出ていくということになるわけですから、事務局がなさるのか、どういうようにするのかというところで少し疑問に思ったのですけれども。
    大澤会長
    これは局長から何かございますか。
    坂東局長
    私どもまだきちんと決めてはいないのですが、先生方のどなたかに主査になっていただいて、そこに書いてございますように、ポストドクタークラスの補助者の方に何人か加わっていただいて、作業はそういう若手の方たちにやっていただきたい。この調査会のメンバーで主査及び協力者の方たちにいろいろ御指導をいただいて、方向性を与えて作業をして、その結果を出していただくといったイメージを考えています。
    大澤会長
    議事録との関係なのですけれども、中間結果は6か月後、最終結果1年後で、これは紙で報告が出るので、この専門調査会で逐一議事録に残るというような、研究経過についていちいち説明や報告があって議事録へ残るという性質のものでは必ずしもないかと思いますが。 高山先生、いかがでしょうか。
    高山委員
    今日初めて見たのですが、私がかつて経済企画庁で客員の主任研究官をやっていたときの経験を申しますと、これだけのことをやろうとしたらかなりのエネルギーと時間を要しますね。ですから、あらかじめ目途をつけてお諮りになった方がよかったのではないかと思います。これから探してということになるとどうなのでしょうか。私、今日初めてお伺いしましたので、よくわかりませんが。
    大澤会長
    これはこれでまた案でございますから御意見をいただいて、少し大風呂敷を広げ過ぎていて引き受け手がいないのではないかとか、1年ではとても結論が出ないのではないかというような御意見をいただいて、どういうシミュレーションにするかということは決めていけばよろしいのではないかと思いますけれども。
    坂東局長
    恐らく厳密にやれば、このモデルケースで100 を超えてしまって大作業になりますので、当然効率のためにも典型的なものを7つ、8つ選び出していただく。例えば200 万円刻みで夫の収入全部をあげるということではなしに、大体中心値は650 万ぐらいですから、700 万前後あたりで上とか下といったことで切るとか、保育所あるいは育児休業というようなものも、余りケースを細かくしない方が現実的な結果が出てくるだろうと思います。ティピカルに我々が考えているのは、m字型で一旦やめる。その後就職をするときに103 万円を意識するかどうか。130 万円、社会保険料を意識するかどうか。いわゆる専業主婦、3号被保険者的な生き方をした方のケースは、どれだけコントリビュートして、どれだけのリターンを受けるかということと、逆に300 万円以下250 万円くらいの普通の働き方を30年ぐらいやったような人たちが、例えば自分の年金をもらうよりは、自分の夫の高額な遺族年金をもらった方が得になるというようなケースとか、損になるというケース、いろいろあり得るわけですが、そういったような個人としてどっちが得か損かということは本来の議論の目的ではないのですが、これほどいろいろなライフコースによって余り中立的ではない部分もあり得るのではないかということを計算してもらえれば非常にわかりやすいのかという気がいたします。
     さらには、年金を世帯単位でやるか、個人単位でするかというのは大変大きな議論なのですけれども、残念ながら、そこはどういう問題があるのかといったことについて、それこそシミュレーション的にきちんと詰めた議論がされて、私は寡聞にして知らないのですけれども、そういったようなことについても議論を深めるための一番基礎的な材料になるのではないかと思っております。恐らくこれから雇用が流動化していくときに、ポータブルな年金というような議論なども出ておりますし、いろいろな要素が今出てきておりますので、是非そういった典型的な要素を考慮したモデルケースで少しシミュレーションしていただければと我々は期待しております。
    高山委員
    もう少し具体的に聞きますけれども、ワーキングチームは我々のこの会議のもとに置くのか、外に置くのかというのがまずわからないのです。それから、研究資金の手当というか、これをやるにはお金がかかるわけです。コンピュータはどこのコンピュータを使うのかということがあります。それから、ポスドククラスの研究補助者を用意するというのですが、この補助者に対してどのぐらいの補助に関する謝金を用意しているのかとか、そういうことがわからないと、何がどれだけできるかということはわからないと思います。ワーキングチームの位置づけがどういう形なのか、もう少し話していただかないと、何ができるのかということがよくわからないということだと思うのです。
    浜田参事官
    予算的には、こちらの方で1,000 万円くらいの予算がございますので、その予算からポスドククラスの方とか、そういう作業をする方々に、それなりの謝金など、そういうお礼は出せるのではないかと思っております。また、ワーキングチームの位置づけですが、この専門調査会の下というか、下部組織のような厳密なものではないかもしれませんが、とにかくこの専門調査会のために素材を提供する。そういう結びつきになっているということでございます。
    大澤会長
    これは研究委託になるのですか、それとも違うのですか。
    浜田参事官
    そうです。委託費なり、請負費なり、予算的に言えば、そういう予算がございますので、それを使いたいと思っております。
    高山委員
    ここでやろうとしていることは、私はすべてサーチしているわけではないのですが、個別にいろいろな関心を持って今まで研究者がやっている筈ですよね。
    大澤会長
    それはさっきからお声をかけようと思っていたのですけれども、木村委員も大沢委員もそれぞれ関連する研究をなさっておりますから、その御経験に基づいた御意見などをいただければと思うのですけれども。
    大沢委員
    私たちがやったのは、パートで働いている人の年収が増えるに従って、夫婦合算の所得にどういう影響があるのか、税制などによって手取りがどう変化するのかというのはやっています。結果としては配偶者控除の問題ではなくて、企業の配偶者手当の103 万円あたりでその影響が出てきて、130 万円あたりで社会保障の影響が出てくるので、ぎざぎざの手取りになっていくというのと、それから、何時間ぐらい働くと手取りが以前の所得に戻るのかというと、大体160 時間働くとそこに戻る。かなり大きな影響があるというようなことはやりました。それぐらいです。でも、それだけでも3か月くらい学生と一緒にやって結構大変なのですね。保育所が幾らぐらいかかるのかとか、そういった細かいこととか、それにあと、介護保険がこれからかかってくるけれども、それはどうするのかとか、そういうところで余り大きな影響を与えないところは切りながらやっていったのですが、やる価値があるとは思うけれども、すごく時間がかかってなかなか大変ですよね、木村委員。
    木村委員
    大変だったかもしれないけれども、割り切ってやれば、モデルケースはそんなに大変ではないかもしれないという印象を私は持っています。あと局長が2つのことをおっしゃったように思っています。1つは、モデルケースの場合分けのことと、あと1つは、現実の制度での意思決定の時にどんな影響を及ぼしているかという2つですね。意思決定の方は、卒論で学生にさせたのとかいろいろな方法があるし、企業に聞き取りにいったのもあるし、もしこれがこの会議で絶対に必要というのだったら、何かできる方法を考えた方がいいのではないかと思います。大変だけれども、もし頼めば、今、篠塚先生なども割合フリーなお立場で全力投球してくださるかもしれません。
    大沢委員
    意思決定というのは、実際には103 万円で収入調整をするのかしないのかという調査ですか。
    木村委員
    例えばヴィネット調査で学生がしたのは、これくらいの家の広さとか、これくらいの年収とか、それから、この条件だったら、あなたはあと1人子どもを産みますかとかいったことです。
    大沢委員
    想定したのですね。
    木村委員
    それから、企業ではパートの待遇のことで、どの程度の働き方に抑えているかとかですね。難しいかもしれないけれども、もしもこうした調査できちんとしたいというのであれば、できる方法を考える方が私はいいと思います。大変ですが。
    坂東局長
    あり得るケースすべてということは非現実的だと思うのです。7つか8つに絞らなければならないと思います。
    大澤会長
    争点になっているところでやるしかないですよ。 永瀬委員何かお考えは。
    永瀬委員
    既にかなりされている部分もあると思うのです。でも、されていない部分もあって、そこにかなり投入して、それを本格的にやるということは非常に意味のあることだと思うのです。ただ、余り資源がない中でやるというのは、今までやられたことのプラスアルファはどこから出てくるのだろうかというのが少しわからないかなというところはあります。ですから、ある範囲でやるということなら前向きに取り組むということなのでしょうけれども。
    大沢委員
    それに関連して、100 万円の壁とよく言うのですけれども、実際には130 万円の壁の方が大きくて、みんなが本当に制度を理解して、それに合わせて収入調整しているのか、それとも100 万円の壁があるのだというふうに勝手に想定して、それでそれに合わせようとしているのかというのはわからなくて、計算して合理的に行動しているとも思えないのです。ただ、マスメディアなどで100 万円の壁ということが言われるようになってから、収入調整をしている女性が増えていることは事実で、年々収入調整をしていると答える人の割合は増えているという数字は見ています。影響があることは確かなのですが。
    大澤会長
    高尾委員はどのような印象を持たれていますか。
    高尾委員
    今の大沢先生のお話に関連してでしょうか。
    大澤会長
    その前からでも。
    高尾委員
    実際周りを見ていて、103 万円とか130 万円ということはかなり影響していると思います。
    大沢委員
    40才代の人と30才代の人と、その辺の年代の差もありますけれども、103 万円とか、130 万円という数字がどこから出てきたかとか、そういうようことは余り深く知らなくても、その数字そのものはかなりわかっているし、調整していらっしゃる方は非常に多いなとは思います。一方で、フルタイムではなくパートという形をとっていらっしゃる方にとっては、103 万円とか、130 万円というのはどっちみちとどかないという場合も多いのではないでしょうか。一般的にかなり区切って働いていらっしゃる方の場合、専門的な職業についておられるのではなく、いわゆるパート労働と言われる部分なのですけれども。ある程度専門的な部分を持たれていらっしゃる方々は、そういうことは当然気にせずにやっていらっしゃるのではないかと思います。
    永瀬委員
    実態としては103 万円が実際には多いとは思いますけれども、どうして130 万円ではないのだろうということに関しては、夫の配偶者手当とかにリンクされているのでというのがかなり103 万円のところが多いことにリンクしています。つまり夫の配偶者手当であることと、もう一つは、これはこの間聞いた話なのですけれども、月収8万円を超えると企業側はそこで源泉徴収をしなくてはならなくなるというようなことを聞いたのです。
    大澤会長
    つまり社会保険の関係ですか。
    永瀬委員
    いいえ、税金の方です。ですから、みなしでそこから始まるわけで、だから、8万円というのが、超えようかどうかというときに、一つの大きなステップになるのではないかというようなことを伺ったりしましたけれども。
    大沢委員
    企業の方もそれを意識して仕事を与えているということですか。
    永瀬委員
    8万円を超えたら税金を払う人として扱わなければいけないというような何かがあるのでしょうか。何かそういうのがあるのだということを聞きましたが、それなので、そこから税金が取られるようになるので、調整をするのだったらその手前というようになる人が多いのではないかということです。
    師岡委員
    そういうところの問題は、少し事情は違うかもしれませんけれども、介護保険制度でのヘルパーさんの仕事のあり方に端的にあらわれていると思うのです。登録型ヘルパーの問題と、それから仕事として生活が自立できる職として、きちっとかかわりたいと思う人たちが混在をしている状況の中で、まさに今お話に出ている103 万円、130 万円、これは事業主とのかかわりももちろんあるわけですけれども、非常に大きい。この影響調査専門委員会の中の仕事ではないかと思うのですが、もっと分析をしてきちっと表に挙げなければいけない課題だなというふうに思います。
    坂東局長
    女性と年金でいろいろ議論されているときに、例えば学生などの場合は、自分の収入がなくても払わなければいけないけれども、3号被保険者については免除することについてはどういう理屈づけですか、世代間の助け合い精神、社会の連帯ですか。
    永瀬委員
    それの御説明ですか。
    坂東局長
    はい。理屈づけというか。
    永瀬委員
    それについての御説明というのは、私よりも高山先生の方がいいと思いますけれども。
    高山委員
    1986年から新しい制度を実施したわけです。そのときにいろいろ議論があったわけです。専業主婦へも保険料を課した方がいいのではないかという意見が当然あったわけです。にもかかわらず、今の制度に整理したのは、それなりに公平な制度だという解釈をしたわけです。それは世帯間では、基本的に公平とみなし得ると、要するに二分二乗的な考え方なのですけれども、遺族年金のところだけはどう考えてみてもおかしいのですけれども、老齢年金だけで見れば、基本的には公平と言えるという解釈をしてあの制度の説明をし、多数の関係者の理解を得たことになっているのです。
    坂東局長
    遺族年金の方は本当に不思議ですよね。
    高山委員
    遺族年金はおかしいのですけれども、少なくとも老齢年金については、そういうことで当時説明をして、あのとき、内閣法制局でも男女平等に反するだとか、いろいろ特別なことに反するというような指摘はなかったのではないでしょうか。ですから、その後、いろいろな形の意見が出てきて、問題ではないかということになって、今、精力的に検討を進めているということだと思うのです。
    永瀬委員
    そのころは就業調整なんてなかったのですよね、ほとんど。
    高山委員
    いや。
    永瀬委員
    ありましたか。まだ壁が高くて、今ですと、週20時間働くと100 万円くらいの壁に達しますね。しかし、当時はもっと全体に時給が低かったのです。
    大澤会長
    壁も低かったですから。
    坂東局長
    壁も70万円とか、82万円とか言っていた時期がありますよ。
    永瀬委員
    でも、そんなにかかっていましたか。当時も80万と言われていた83年の分析をしたことがありますけれども、あのころもそうでした。でも、その後さらに壁は深く目前に迫ってきて、そしてパートとそれ以外の人の賃金格差がずっと拡大していったのは、だんだん目前に壁がきたもので、それが深くなったのではないでしょうか。それからその後、第3号の恩典を長期間受けている人も拡大していきましたね。そんなことではないですか。割合としては第3号の人はすごく増えましたね。5人未満のところに対しても第3号を適用しましたので。それから第2号は若干増えましたけれども、第1号が減った結果、全体としては3号の女性比率は上がっていった訳です。
    大澤会長
    3号というか、年金加入者に占める第3号の比率ですね。
    永瀬委員
    そうですね。
    師岡委員
    資料7に、今後の議論の進め方にかかわっての今の議論になっていると思うのですが、それぞれの専門調査会の委員、例えば、私がこれからのスケジュールの中でどのような役割があるのかということからすると、何かまた個別にこのスケジュールに沿って相談があるとかということなのか、例えば6月8日にはレポートで、この2つの問題が案として出ておりますけれども、レポートを出していただいたところで、それに関するやり取りを私どもとしてはすればいいということでしょうか。
    大澤会長
    はい。だと思います。あとは、この専門調査会のメンバーはかなりの関連領域をカバーはしておりますけれども、例えば家計研究の専門家がいらっしゃらないとか、カバーされていない領域もありますが、それはヒアリング等でお呼びするということは可能ですので。
    坂東局長
    こういう方がいらっしゃるから聞きたいということをおっしゃってくださればお聞きします。
    大澤会長
    この方にこのテーマでというような御提案をいただくということも期待したいと思うのですけれども。
    坂東局長
    この中の委員の先生方同士でも、是非あなたのこの研究について聞きたいとか、今最初のときにいろいろ御希望をお述べいただければありがたいと思います。
    木村委員
    この間、松下副大臣主催の研究会で弁護士の住田先生が法的におっしゃったのがすごくおもしろかったです。こういう年金問題とか、夫婦の財産分けのこととかです。
    大澤会長
    本調査会には民法学者がおりませんし、法律家がいらっしゃいません。
    小島委員
    103 万円の議論が大分出ていますが、少し感想を言いますと、103 万円という非常につまらぬ基準で、そういう制約で職業選択をするという社会ですと、能力があっても能力を十分発揮できない。それは社会参画の制約要件になっていますね。これは背景に控除とか補助、手当とかがあるわけです。控除とか手当という部分的な税制や措置が多い社会というのは、恐らく人口がいっぱい余っていて貧乏社会だと思うのです。ある程度社会が豊かになっていろいろ能力があれば、そういうのではなくて、要するに能力があればフルにやりたいところまで働ける。家庭の事情もいろいろあるでしょう。しかし、その事情が許せば働けるというようなことができるような仕組みをつくった方がいいと思うのです。それは先ほど議論があった共同参画社会であれば、もっと違う発想が必要であり、何も103 万円で職業と勤労時間を調節しなくてはいけないというのは非常にちまちました社会です。これは共同参画社会にはとてもならないですね。高山さんがおっしゃった二分二乗的な税制、家事労働も同等の価値があるとなれば、どちらが稼いでも合算にして半分に割ってしまうというやり方もあるし、結婚しないでばらばらにそれぞれ稼ぐやり方もあるでしょう。何かもう少し共同参画社会という大きな課題があるのだったら、そういう小さな選択を強制するような仕組みというのをチェックしていった方がいいのではないかと思うのです。こういう格好で手当があったりするのは、女性なり男性なりの労働をマージナルに扱っている社会なわけです。そこが一番の根本だと思うのです。手当で済ませる、これを2倍にしたらより共同参画になるか。そもそもマージナルにそういう労働を扱っていること自体がいけないのです、もっと基本原理です、こんな手当、こういう選択をしている先進国というのはあるのですか。
    岡澤委員
    僕はないと思うのです。
    大澤会長
    スウェーデンの例について、岡澤委員から紹介してください。
    岡澤委員
    1971年の税制改革で一切そういうのはなくて、成人男女は全部独立した経済単位にしたのです。独立した人格は他の独立した人格に対して扶養されるということはあり得ない。全員が成人の確定申告の義務みたいなものができたのです。だから、みんな働きなさいというシステムに一気に切りかえたのです。
    小島委員
    一切税金を払いたくないという人は働かなければいいのですからね。
    岡澤委員
    働かなければいいのですね。
    小島委員
    選択の問題であって、これだと能力があっても、この制約で家庭に引っ込んでしまうとか、職場から引っ込んでしまうということだと、社会全体として能力がある人がしかるべきところで働けない。社会全体として活性化しない。したがって、社会自体が税金の計算をするにも担税力がだんだん下がってしまうかもしれないし、ましてこれからは能力のある人がちゃんと能力を発揮してもらって、それが社会の発展と成長につながってもらうのが一番いいわけです。そういう基本的なところを押さえた上で、それぞれの措置を評価するというのも必要ではないかと思うのです。
    大澤会長
    配偶者控除、配偶者特別控除の位置づけについては、神野委員にはまた別の財政学の立場からお考えがあるかもしれません。
    神野委員
    ここでの議論でほかの政策でもそうですが、部分的な合理性と総合的な合理性と混乱するのですね。だから、税金をかけるというのは経済力に応じた課税という目標と、それから男女平等という中立性とどうやってバランスさせるかということで、今二分二乗をやってしまいますと、物凄い経済的な力に関して不平等になるということですね。
     それから課税単位について、後でまた発表する機会がいただけるということですが、課税単位と控除とは全く別だということを御理解いただきたい。岡澤先生がおっしゃったような意味でいけば、日本はシャウプ勧告というすばらしい制度に基づいておりますので、世界で最も先進的な個人単位になっております。ただ、控除は全く別な話で、もともと配偶者控除というのはありません。つまり配偶者控除ではなくて、扶養控除1本で扶養されている者について控除を認めるということだったのが、配偶者と扶養家族との控除額を変えたために、別の名前が必要になって配偶者控除という名前ができたのです。今はまた一緒になってしまっておりますので、これも意味があるのかどうかということと、それから先ほどの成人とか、配偶者というのをどう定義するかということになっておりますし、スウェーデンなどは基礎控除しかないという場合がある。その場合に重要な点は税制だけでは話がいかないので手当の問題とあわせて、ここのシミュレーションはそこまでやるとここは大変なことになりますよね。
     スウェーデンなどでは負担のこういうことをやると、公共サービスの利益がどういうふうにいっているのか(どうやって出しているのかわかりませんが)、何歳で幾らもらっているのかというのがパッと出てきて、子どもの時代はこれだけの利益を交付として受けている。子どもはもちろんしていないのですが、負担はこれだけしていますと、そういうのがちゃんと出てきて、必ず負担と公共サービスの利益、これは現物と現金と両方をきちんと分けて書いているのです。そういうことまで多分やるとなると大変なので、先ほど局長がおっしゃったようにある程度割り切ってやらないと駄目で、例えば消費税一つにしても、結婚をするしないかで消費の額というのは違いますよね。だから、そういうことを言い始めると、ある程度割り切った税金で限定していかないと全体の税金でどうだということで出そうとするととても無理だと思いますから、ある程度割り切ったところでやるべきではないかと思います。
    大澤会長
    負担と給付については現物給付も含めて先行研究が皆無ではありません。ただ世帯単位なのですけれども。
    神野委員
    ああ、そうですか。
    坂東局長
    これは事務局としての発言ではなしに、ほとんど私の個人的なつぶやきだと思って聞いてくださるとありがたいのですが、例えば男女共同参画社会における税制を考えるときに、女性が、例えば専業主婦の方たちがいろいろ得をするような制度を温存するのか、それとも、男性も女性も社会を担う側に応分の負担をするのだと本気で得な部分を投げ捨てる決意を表明しなかったら、女の人たちが社会の一員である、社会を支えている側であるなんて言えないのではないか。いつも自分たちが得をするようなことばかりを言っているようではいつまで経っても本当の男女共同参画社会にはならないのではないかと思っているのです。そういう意味で小島委員がおっしゃったように、そういうちまちまといった形ではなくて、本来社会のコストをみんなで担うということの方が、大乗的な見地から見ればより賢いのだといったことを提言していただいてもいいのではないかと思うのです。
    小島委員
    103 万円があること自体がバリアですから。
    坂東局長
    それが得か損かということを考えているようでは、本来の男女共同参画社会には程遠いと思うのですけれども。きっとそういう言い方というのは、もちろん、いろいろな批判があると承知しているので、あくまで私のつぶやきだと聞いていただきたいのですが。
    諸岡委員
    今、局長がおっしゃたように、損得勘定じゃなくて、これからどういうふうに個人が共同参画型で臨んでいくのかというところに起点を置いて物事を捉えていけば、今おっしゃったようなことというのは問題意識としては共有できていくのではないかという思いも持っています。それはお互い意見を出し合って突き合わせしていくところからスタートすればいいことではないかと思っております。
    坂東局長
    今まで誤解されていたのですよね。扶養控除を少し上げてあげることが女性のための施策だというふうに、女性政策だ、女性のためになる政策だというふうに誤解して、少しずつ壁を上げることにしてきたわけですけれども、そういったような考え方を根本から先生方に議論していただければいいなと思います。
    高山委員
    この会議の目指すところについて私自身よく理解できていないということだと思うのですが、例えば、ここでモデル分析をやりましょうと言っていますね。これは最終的に言うとどういう選択が、得か損かをあらわすだけと僕は思うのです。こういうケースで今の制度を前提にすると、こっちが得ですよ、損ですよ、あるいはこちらがこれだけ損していますよという数字を示すことが多分目的の、だから中立性からどれだけ乖離しているかということを損得であらわすことになっているのではないかと私は推察するのです。ところが今、局長のおっしゃった今後どういう社会のあり方がいいかということを検討するという話になると、こちらでやろうとしているちまちまとしたことと少しずれが起こっているというふうに私は思っているのですが。
    坂東局長
    中立的ではないということが明らかになれば、それによって我々は考え直さなければいけないのではないかという提言に結びつくのであって、議論だけしていても、理念だけ闘わせても説得性がないわけです。こういうことによってこんなに不合理性が生まれていますよということは明らかにすることは必要だと思うのです。
    高山委員
    損得が余り大きくならないような制度とは何かということを調査会を通じて研究しましょうという理解でよろしいのですか。
    坂東局長
    それをもう少し、ライフスタイルの選択に中立的なという表現なのですけれども、正直な話、それよりもう少し男女共同参画社会のあるべき姿としての社会保障制度とか、税制はいかにあるべきかまで深めていただいてもいいのではないかと私は思っております。
    永瀬委員
    均等法ができましたね。そうするとすごく男性の働き方に参入できる人が増えたということでありますけれども、人間の幸せというのは、雇用労働だけではないと思うのです。それはどの人にとっても、恐らく仕事するということや、あるいは家庭でゆっくり過ごすということや、そういうことがすべてあると思うのですけれども、雇用機会均等法ができた影響でいいところもいろいろあったとは思いますが、しかし現実的には、一部の女性が男性のような働き方ができるようになって、むしろ非常に膨大な非正規の方ができていってしまったということがあると思うのです。だから、配偶者控除は返上しましょうというためには、単にみんなが男性並みに働ける、そういうのではなくて、もう少し幸せな姿が描けるように働くとか、あるいは家庭で過ごすとか、そういうことを含めて考えないと、結果としては二極化が進んでしまったような、あるいは一般にはなかなか受け入れがたいような提案になってしまってもよくないのではないかという気がします。だから、男性の働き方が変わる必要があるということや、あるいは若年女性に関しても、今正規労働に入れない人が拡大してしまっているわけです。それは男性に比べたら、入れない人たちというのははるかに女性が多いですね。政策としては均等法があるのですけれども、実態としては、むしろ入れない女性を拡大してしまっているということがあるのです。
    坂東局長
    非正規労働者の方たちは、社会保障の面等々から見て非常に格差が拡大してしまっているわけですね。そこを、例えば男性と女性と、短時間で社会保障制度ですとか、諸々の福利厚生も含めてオランダモデルに象徴されるような選択が可能な制度をつくっていかなければいけないのではないかというような議論にも通じるのではないかと思います。非正規だとそういったような部分からはすっかりこぼれ落ちてしまうということもあるのではないか。
    永瀬委員
    育児休暇もない、社会保険もないことになります。
    大沢委員
    ここでは社会保障とか、税制度とか、女性が働くか働かないかにどういう影響があるのかということが中心になっていますけれども、日本の女性労働の問題というのを見ると、そういった制度があるから女性の能力が活用されないのかどうかというのは少し疑問なのですね。雇用均等法ができて女性の正社員の採用がどんどん減っている。良い仕事をしている人の数は増えている。しかしその数全体は非常に減っている。という訳で先ほど永瀬さんがおっしゃったとおりで、うまく言えないのですけれども、同じ仕事をしても男性の取り分の方が多くて、女性の取り分の方が少ないという構造ができ上がっている中で、これからは女性も応分の負担だけしようよというような話というのは説得力がないと思うのです。だから、応分の負担をしてくれるのだったら代わりに機会を与えてほしい。その機会を与えてほしいというときに努力して頑張りなさい。あなたたちはだめよというようなことではなくて、ではもっとお金をかけて保育所を整備します、ここまで国はやるのだといった、これに耐えられるだけの環境を作る。お金を出す、育児にかかる費用は社会が負担するということを宣言して、だから応分に負担してくれというような議論をしていかないと、ここの議論もいずれつぶされるのではないでしょうか。
     女性全体を巻き込むときに、どちらかというと選ばれる先生たちというのは、エリートで機会を与えられてきた人なのです。だから、自分の努力で保育所も確保できたし、環境を得ることもできたのだけれども、実際の日本の女子労働というのは、女性労働者というのはまだまだ恵まれていないのです。103 万円でちまちま働くしかない、精いっぱい働いて103 万円しか得られない。それはどうしてかというと、それに合わせて企業が賃金を抑えているからで、そういう仕事しか与えられない。例えば頑張ってみんな非正規から正規に変えたい。もっと労働時間を増やして働きたい。実際にその道というのは余りないのです。全くないわけではないけれども、結婚しているというだけで、私たちのデータでもモビリティというのは非常に少ないです。そういう状況の中で影響調査というのをやっても限界的なものしか、一般の女性にとっては、そうはいったって夫が24時間働いていて、子どもが病気になったときに、本当に孤立しているお母さんたちの話を聞いてきたので、影響度調査をやるときには、報告書が税制度に焦点を当てるにしても、もう少し保育とか、介護とか、そういうところに一体国がこの10年どれだけお金を使ってきたのか。これだけ少子高齢化で人口革命が起こっている10年間に一体日本の政府は何をしたのかということを、この調査会でちゃんと言ってもいいのではないでしょうか。そこら辺の議論がないままの社会保障、税制度は、またつぶされるのではないかという気がいたしました。
     私個人の意見ですが、是非、影響度を含めてもう少し広い意味での、私たち保育所のことも少し研究したのですけれども、保育所の民間サービスの参入なんかではかなり規制緩和があっても数が限られている。実は私は杉並区役所に行って子どもがいないにもかかわらず、子どもを保育所に入れるにはどうしたらいいのでしょうかと聞いてみたのです。そうするといかに不安な状況になるか。もし本当に私がこれから子どもを産むとすると、どこの保育所に入るかわからないから、とにかく1か月後かなにかに来て空きがあるかどうか見てくれとかになり、そういう意味で実態というのは、もっともっと足元の普通の女性が子どもを育てながら働けるような実態というのはまだないということを政治家の先生方に認識していただいて、是非よろしくお願いします。
    松下副大臣
    私、この会議に来て、初めどういう話なのかレベルがわからなかったのですが、小島委員の話からストンと落ちてきたのですよ。僕はそこが大事だと思っています。それから、坂東局長が話されたのと大沢委員の話が僕は一番大事なことではないかと思っているのです。男女共同参画社会でこれからそのものを築き上げていきたいというときに、働きたいというのであれば、本当に働ける環境を、出産とか育児とかという環境もきちんと整備した上で、自分の労働というものについては、それはパートならパートで、バリアが103 万円というのはあるにしても、それは後で議論するとしても、働いて、そして収入を得たら税金はちゃんと払う、そして働いたものは得るという仕組みを一緒にやっていくということが大事ではないかと思うのです。
     もっと働きたいのだけれども、それでいくと引かれてしまうので、ここでとめておくというところでとめてしまって、それでよかったというふうにはならないように思うのです。そこでバリアがあるのだったら、そこをもう少し税制改革なり何なりで議論していけばいいので、もっといい制度作りの余地は僕はあるのではないかと思うのです。ですから、後半の方の議論でしてきたことの方が随分盛り上がってきて話が通っていくように思うのです。
    師岡委員
    男女共同参画社会の形成の一番根幹をなすところの話だと思うのです。まず女性が働きに出るという環境が整っていないというところに今保育所の問題なんかがあると思うのです。さらには配偶者の働き方、これは非常に関係していますし、そこで何とかクリアした人たちについても親の介護の問題、ここでまた一番キャリア形成して力を発揮しようと思うときに介護の問題でどうしても抜けざるを得ない。これがm字型ということになるのだと思うのです。ですから、長く働き続けてきた私の立場からすれば、入口のところの問題と力を発揮するというところの介護の問題、この2つを何とか政策としてきちと保障しないと、女性が男性と対等に社会に参画して力を発揮するという世の中はこないのです。これは樋口座長の子育て支援の専門調査会で随分議論されて、今最終まとめに入っていただいていると思っておりますけれども、どこの専門調査会でも、この根っこのところをしっかり押さえてどう表に出していくのかということがないと、それぞれの調査会の中の仕事として生きないのではないかと思っています。
    松下副大臣
    政治家として発言すると、それはそのとおりだと思います。今も申し上げたのは、出産それから育児、子育て、今度は介護もありますけれども、そういうものは私としては政治の課題であるし、政治がきっちり受け止めて社会全体としてそこをきちんと整備していく、これは根幹にある一番大事なことだと思うのです。その上で女性の働きたいという意欲、あるいはいろんな時期もあるでしょうけれども、そういうものをどういうふうに報酬としてきちんとしていくかということで、その結果として、働く、報酬をもらう、そしてまた税金もきちんと納めるというような仕組みの中でやっていくべきです。103 万円にこだわって、何かそこが一つの議論の真ん中にあって、それがないと進まないような気がするのです。ですから、坂東局長が言われたけれども、基本論は確りと押さえて、制度の問題なんかは確りとつくり上げていく。そういったことが議論の基礎部分としてあるべきだということではないでしょうか。そこから出発のような気がしますけれども。
    師岡委員
    5万円収入があろうと、10万円収入があろうと、パーセンテージできちんと収入に見合った所得税を納めるということであれば、これはだれでも納得がいくのではないかと思います。
    松下副大臣
    税の問題で、しっかりと議論していけばいいわけですからね。週給制なのかどうかといった、いわゆる月給制度ですね。手当をもらう仕組みもまたひとつ働く場といいますか、それが出てこない気がするのですね。転職の問題も含めてですけれども、それが日本ではまだ過渡期にあるのか、どういうふうに移行しているのかよくわからないのだけれども、フリーターという形の人たちが200 万人近く増えてきているとなると、大きな地殻変動が起こっているのかとも思うのだけれども、そういうところも働くスタイルみたいなものが一方ではあるような気もします。男女の違いとは別に、あるいは主婦とパートの違いとは別に。
    坂東局長
    年功序列で生涯生活給という形で社宅のような福利厚生ですとか、あるいは生活費を将来中年の人たちに手厚くその労働以上に、こう言ったら怒られますけれども、きちんと手当をするといった形の日本型雇用は維持できなくなってきているというのは皆さん認識していらっしゃると思うのです。では、次にどういう形が21世紀男女共同参画社会で望ましい働き方を保障する社会保障制度であり、税制であるかということにつながっていくのではないかと思います。
    大澤会長
    どうもありがとうございます。大変盛り上がっていつまででも続けたい気分になってまいりましたが、定刻が参りました。高尾委員のお手が挙がっていましたが、どうぞ。
    高尾委員
    大沢先生や大臣のお話しをお伺いしていたところで少し感じたことがあったのです。
    大澤会長
    1分程度でお願いします。
    高尾委員
    はい。その制度をきちんとしていこうと、入口も出口もきちんとしていこうというようなことがあるのですけれども、そういうような制度が、大沢先生がおっしゃったように、ある程度のエリートというか、そういう方々はそれに対してかなり反応してこられると思いますけれども、それでもなかなか反応できない層も多いと思うのです。昔に比べればいろいろとできているわけです。ところが、それに対して反応できない女性自身とか、男性自身というのがありまして、その辺のところはどうなるのかというのがすごく私は感じているのですが。
    永瀬委員
    これと少し違うかもしれないのですけれども、メディアの影響というのは大きいと思うのです。メディアが流している情報というのが昔ながらの男性像と女性像を流していて、それは多分メディアの制作者が男性ばかりなのだろうと思うのです。テレビ局の人とか、新聞社の方に伺っても、余りに肉体労働が厳しいので女性は続けられないというのです。朝から晩までなので。それでああいう物すごいステレオタイプが毎日流され続けられていますよね。
    大澤会長
    今日はたまたま103 万円の壁のあたりにかなり議論が集中いたしましたけれども、大沢委員の御指摘もありましたように、別にこの専門調査会は税制に絞って影響調査をするというふうに決めているわけでもございませんので、今日のような幅広い議論も含めながら着地点を探ってまいりたいと思います。今日の御議論につきましては、事務局が議事録等を整理してくださいますので、次回以降さらに議論を進めてまいりたいと思います。
     次回は資料7の委員からのレポートと議論、今後概ね月1回のペースで開催してまいりたいと思います。
     事務局から何かございますか。
    浜田参事官
    既にお送りしておりますが、次回は6月8日の金曜日の15時から17時を予定しております。また場所等が決まりましたら、改めて御案内いたします。よろしくお願いします。
    大澤会長
    それでは、これで影響調査専門調査会の第1回会合を終わります。今日は活発な御議論をどうもありがとうございました。

(以上)