男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会

  • 日時: 平成15年5月30日(金) 10:00~11:16
  • 場所: 内閣府5階特別会議室
  1. 出席者
    • 島野 会長
      原  会長代理
      大津 委員
      奥山 委員
      北村 委員
      小谷 委員
      小西 委員
      住田 委員
      瀬地山委員
      林  委員
      前田  委員
      若林 委員
  2. 議題
  3. 議事内容
    島野会長
    ただいまから女性に対する暴力に関する専門調査会の第24回会合を開催いたします。
     前回の会合では、女性に対する暴力の今後の課題について関係省庁からの意見聴取を行いました。本日はこれまでの検討を踏まえ、性犯罪と売買春の課題について、当専門調査会の意見の取りまとめを行います。
     なお、本日の検討に際しては、関係省庁の施策や御意見等を伺う必要もあろうと思われましたので、前回と同様に関係省庁の方にも同席いただいております。
     それでは、本日の配布資料等につきまして事務局から説明をお願いいたします。
    久保内閣府男女共同参画局推進課長
    それでは、本日の配布資料につきまして御説明させていただきます。
     まず資料の1でございますけれども、これまでの専門調査会でお出しいただきました御意見と、それから前回10月の関係省庁からの説明を基に作成をいたしたものでございます。これにつきましては、事前に皆様方にファックスでお送りさせていただいたところでございます。本日は、これをたたき台といたしまして御議論いただければと思っております。
     続きまして資料の2でございますけれども、この専門調査会でおまとめいただく全体の構成案でございます。資料の1がここにあります「1今後の課題」に当たるところでございまして、構成案といたしましては「はじめに」のようなものがありまして「今後の課題」があり、そして「データ資料」、「参照条文」などではどうだろうかというふうに事務局で案をつくらせていただいたところでございます。
     それから、今後の課題につきましては、暴力そのものに関するものと、暴力そのものではないけれども関連する部分ところがあろうかと思いますけれども、暴力そのものではなく関連する部分といいますのは、それぞれの項目の最初にまとめのようなところがございますので、そこのところに少し書かせていただいているところでございます。
     それから、資料の3と4は前回、委員の皆様方から御要望のあったものでございまして、資料の3は強姦の認知件数と女性警察官等の推移でございまして警察庁の方からお出しいただいているものでございます。
     資料の4は、ptsd以外の精神障害が傷害罪に当たるとされた事例について法務省から資料をいただいているところでございます。
     続きまして、資料の5でございます。女子差別撤廃委員会からの最終コメントが出されましたが、それに対しまして各省庁においてどのように取り組むのかという取組の方向性をまとめたものでございます。これは、先だって苦情処理・監視専門調査会の資料として配布されたものでございます。この中では、資料5の4ページから11ページが暴力に関わるところでございます。4ページから11ページまでの各省庁における取組の方向は、前回この暴力に関する専門調査会で各省から御説明いただいたところと同じでございますけれども、1点だけ、資料5におきましては、最終コメントで近親姦というところを特出ししているということもありますので、この近親姦につきまして苦情処理・監視専門調査会の方からこちらの暴力の専門調査会の方でも御議論いただきたいという会長からの要望があったところでございます。
     そのほか、DV関係を含めまして要望をいただいておりますので、それを机の上に置かせていただいているところでございます。以上です。
    島野会長
    それでは、まず報告書の構成案について、資料2は事務局からの説明のとおりでよろしいでしょうか。「はじめに」で、1は今後なのか現下なのかという感じがいたしますけれども、とりあえず「今後の課題」。2の「データ資料」というのは、暴力の現状と各省庁等の取組という、今まで現状という形でまとめていたような事項、3が「参照条文」になっておりますが、これでよろしいでしょうか。

    (異議なし)

     それでは、そのように進めることといたしまして、本日の議題である「女性に対する暴力についての今後の課題1(性犯罪、売買春)」の検討を始めます。
     それでは、資料1をごらんください。まず、最初のテーマである「性犯罪」について検討をいたします。はじめに、総論の部分につきまして御意見をお願いいたします。
     それでは、この総論の部分は一応このままにしておいて、各省庁の方から何か特に御意見ございませんか。総論の部分について、よろしゅうございますか。
     次に「(1)加害者の厳正な処罰」の「ア 強姦罪の法定刑の引上げ」につきまして、御意見をお願いいたします。
    住田委員
    今回は強姦罪だけを1つ取り上げてあると思うんですが、私自身は性犯罪全体をほかとの、特に財産犯とのバランスで見直していただきたい。例えば、強制わいせつ等も含めて検討に入れていただきたい。確かに強姦罪も象徴的だと思いますが、これにとどまらない検討をお願いしたいと思っております。
     もう一つは後にも出てくるんですけれども、「痴漢等の取締りの徹底」というのがウにあるんですが、実は痴漢はすべて条例でございまして、移動中の電車内等の犯罪というのは非常に例が多いわけです。そうすると都道府県をまたいでの行為というのもよくありますので、これは今までは法律上の犯罪ではないという意識だったんだと思いますが、これだけ各県に条例がそろっているということになりますと法律上の犯罪にし、なおかつ法定刑についても少し上限を見直すこともあり得るのではないかと考えています。
    島野会長
    住田委員の御意見については、いかがでしょうか。
    瀬地山委員
    痴漢のことは全く同意見で、強制わいせつでなるべく一括して取り締まるようにしていただきたいと思います。行われている空間が満員の鉄道である場合が多いわけで、各鉄道会社で、例えば最低限の調査が行われるとか、取組に関して鉄道会社に何らかの要請をするとか、そういう具体的な防止策というのを講じていただきたい。今までの取り締まり方を見ていると、ちょっと触ったぐらいでというような認識が多過ぎて、もう少し重篤な犯罪であるという認識が必要ではないかと思います。
    前田委員
    皆さんとそんなに違わない点なんですけれども、痴漢に関しては非常に現場としても苦労されておられて、強制わいせつでいくか、迷惑条例でいくかというのは非常に微妙です。認知は強制わいせつはものすごく増えているんですけれども、検挙は条例違反の方が増えているんです。ここのところ徐々に強制わいせつの側に移していっていると思うんです。ですから、今度は強制わいせつの下限を上げてしまうと、強制わいせつが使いにくくなるとか、いろいろ微妙なところがあると思いますので、その辺は現場の感覚で使いやすいように、ポイントはやはり被害者の側に立って適正かつ迅速な摘発ができる手段としてどれが合理的かということで、いずれにせよ痴漢対策についてもう一歩突っ込んで、強姦ももちろん重要ですけれども、是非そこをお願いしたいと思います。
    島野会長
    それでは、アの「強姦罪の法定刑の引上げ」のところで、この専門調査会の提言としてなお書きというのは必要と考えられますか。
    林委員
    その点を発言したかったのですけれども、私の理解では、ここで議題になり、なおかつ引上げについて消極的な意見というのは出席者の中になかったと思います。
     そうしますと、この日本語の文章なんですけれども、「その引上げについては検討する必要がある」ということで、積極にも消極にも読める書き方になっていますね。これがちょっとここの総意と違うのではないかと思いました。だから、書くとすれば、「他の凶悪犯罪の対処の在り方などを考慮しながら引上げについて検討する」ということで、引上げの方向を検討するというニュアンスが出ないと、これだと引き上げないということも含めて検討するというふうに読めるのではないかと思いました。
    島野会長
    ほかに御意見はありませんか。林委員は、ほかの凶悪犯罪の対処の在り方と合わせて検討するとおっしゃいましたが。
    林委員
    それも要らないのではないかと思います。
    前田委員
    それに関しては、やはり同じような類型で刑の重さで、確かに片一方で強盗と強姦の比較というのはごもっともな御指摘なんですけれども、それもバランスから出てきている面があるわけです。あとは傷害致死とか、強姦致傷という181条があって、それも3年以上なんですね。強姦と強姦致傷で同じでいいかという議論はすぐ出てくると思います。
     決してそういうことをやることによって強姦罪の法定刑の引上げを引き伸ばすとか、そういうことではなくて、やる以上はそこの目配せもあってやっていますよという方が、引上げにも結局早道であるという意味で、やはり検討せざるを得ないであろう。
     ただ、ここのなお書きの書きぶりは林先生のおっしゃるとおりで、趣旨としてここで法定刑の引上げについて反対の意見は全くないわけですから、引上げを前提にして合わせて他の犯罪の法定刑との均衡も視野に入れておく必要があるという形に直していただければと思うんです。
    島野会長
    今の御意見を踏まえて、修文の仕方はこちらで検討させていただきます。ほかにアのところで御意見ございませんか。法務省、その他の関係省庁からは御意見ございますか。よろしいでしょうか。
     それでは、先ほど推進課長からお話がありましたが、近親姦の問題につきまして何か御意見はございますか。
    前田委員
    御指摘のとおり、近親姦と家庭内での性的な犯罪的行為というのが一致するわけではありません。近親姦というのは特定の対応というか、国によっては特別の構成要件がありますが、家庭内での男女間の性的な問題についていま一歩踏み込んで議論するということは必要かと思います。
     ただ、この御趣旨がちょっとよくわからないんですが、強姦罪の法定刑が引き上げられるとそれなりの効果があります。別個の外国のような近親姦の規定を設けるという趣旨では恐らくないんだろうと思うんです。文化的な伝統とかいろいろあって、それだけ取り出すというのは、現にたくさん行われている国であるからそれを処罰するという構成になっているんですね。それで、DVがこれだけ議論されて、ここでの御努力がいろいろあって解決されるようになってきて、家庭内での性的な行為について一歩踏み込むようになってきた。それを発展させていくことが私は一番重要で、そのために啓発とかの方が当面は一番重要かと思います。
     構成要件を書き換えるとか何とかというよりは、現場でもいま一歩前に出た家庭内での性的な行為に対しての介入ですね。強姦罪の構成要件解釈も微妙に動いてきているわけです。かつては夫婦間に強姦がないというような議論があったわけですけれども、我々の世界では教科書的に書くときでも当然夫婦間に強姦はあり得ると。古いコンメンタールでは夫婦間に強姦はないというものはありましたけれども、今はもうない。それから支配関係にあるとか、そういう力関係を利用したものも犯行を困難にする一部には入れ得る。そこの解釈を動かしていくための啓発が非常に重要で、今は非常にいい機会だと思います。
     ただ、今のトレンドを進めるために何が大事かというと、ここは強姦罪の法定刑の引上げだけで、むしろ啓発活動みたいなものをきちんとやっていただくということが非常に大事なのではないかと考えております。
    島野会長
    若林委員はこのことについて御意見ございますか。
    若林委員
    基本的な考え方は今、前田委員のおっしゃったことと同じなんですが、DV法ができたために、その効果としてどれほど関係職種の意識にインパクトがあったかということを考えると、スウェーデンとか、アメリカとか、先進諸国で特別の構成要件で設けられているというようなことも考えれば、十分そこまで考えてもいいのではないかと考えます。
     現場の感覚として、法律があるかないかはすごい違いなんですね。DVも法律ができる以前から問題は指摘されていたのですが、法律ができたということでその法律の及ぼす副次的な効果ということを考えれば、近親姦についても何らかの見える形でうたった方が私は効果的だと思います。
     付け加えますと、児童福祉法などもその点の理念は高々とうたっているんですが、具体的に突っ込んでいないんです。ですから、そういった意味でやはり各論的な条文をつくるとか、そういったことが効果があると思います。
     それと今、前田委員が言われたこととこの点は全く同じなんですが、意識啓発ということがすごく重要だと思います。近親姦を考えると、特に被害者側の意識にも問題を感じます。ですから、そういった意味で一般的な義務教育段階から意識啓発を意識的に行うということを文部科学省なども含めて御検討いただけたらいいかと思います。
    島野会長
    確か若林委員からかつてこの専門調査会で参考にお配りいただいたかと思いますが、「児童の性的虐待と刑事法」で、児童福祉法違反ということで家庭裁判所で成年刑事事件を扱っている。特に義理の父親等からの強姦というのか、性交といったものは取り扱われているようですけれども、家庭裁判所でこれを処理することについての御意見は何かございますか。
    若林委員
    家庭裁判所で成人の刑事事件として扱うことは積極的に受け止めています。家庭裁判所は児童への対応の専門的な配慮ができる専門職種がいますし、そういった意味からやはり通常の刑事事件と異なった配慮をした上で法律が運用されるのではないかと思います。
    北村委員
    今の被害者の意識の問題、あるいは義務教育の中での教育ということをもう少し具体的に話していただけますか。
    若林委員
    警察で被害届があって、捜査に入って汗水流した段階で被害者が示談をする、告訴を取り下げる、あるいは被害を宥恕(ゆうじょ)するというふうに気持ちが非常に動きやすいわけです。そういった意味から多分、捜査に当たられる方は無力感を感じるのではないかと思うわけです。
     それと、家事事件などでDVの事件を見ていても、関係者全員はこの暴力はDVであるということを認識できるにもかかわらず、被害者本人は加害者が目の前で土下座をして謝ると、そこで気持ちが変わってしまうというふうな客観的に物事が見えないという現実があります。ですから、警察庁の方とか、そういった方から聞かれた方がよりわかるかもしれません。
    住田委員
    今、若林委員は親告罪の関係でいろいろおっしゃっていましたが、私が担当した事件はいずれもほかの事件があり、その過程でそういう強姦をしている状況があるということがわかったものです。ほかの事件というのは、父親が子どもに対して、娘が3人ぐらいいたんですが、それぞれと性的関係を持っておりまして、1人の子どもから産まれた子どもを虐待の上で死亡に至らしめたという事件です。実はその子どもの母親というのは自分の娘であり、またほかの娘ともそういう関係を取り結んでいるということが発覚したんです。
     また、似たような事件をほかの地検でやったこともあるんですけれども、そういう事件を見ますと、要するに近親姦というのは親告罪にしたから発覚するとかというものではなくて、幼いころから性的な虐待といいますか、そういう状況が続いていて、その中で父親とそういう関係であるのが子どもにとって幸せで、家庭内で実権を握られるという極めて特異な形での家族関係が形成されておりまして、娘がいざほかの男性と結婚しようとしたときに父が妨害事件を起こしたということが発覚の発端になったこともあります。結局、新たな家族ができないでその中で閉鎖的な家族関係がずっと続く、その中ではその父親が極めて強大な権力を握って、娘たちの自立を阻害するという事件でした。
     そうしますと、近親姦というのは本当に表に出にくい。それはたまたま命が失われるという事件が起きたから出てきただけで、氷山の下に潜んでいる案件でして、これに対してそういう近親姦を犯罪だという形で明示することによって威嚇的な効力というのがあるとすれば、それは結構なことかと思いますが、どうもそういう家族を見てみますと、普通の法律的な意識など一切なく、父親というのは自分の支配下の者をすべて意のままに操っているという状況があると思うんです。
     このような場合、被害者である子どもの方から何らかの形で法的な援助、いろいろな援助を差し伸べる必要があるかと思いますので、私は刑法の対処というよりもやはり児童虐待の観点からの対処の方が大事かと思っております。そうしますと、たまたま刑法犯ではなく児童福祉法違反等で発覚したものであれば、被害者のケアという意味から言うと、家庭裁判所の方でのいろいろな連携が考えられますので、その方が望ましいのではないか。刑法での対処はちょっと難しいのではないかと思います。
     これは私のささやかな数件の事例の中での感想です。
    小西委員
    私は法的な議論についてはよくわからないんですけれども、発覚しにくくて、被害者の方が罰しようと思ってもほとんど手が打てないという方が臨床の現状であると思います。私が見ているのは、全然司法との関わりを持っていないケースの方が多いのですけれども、本当にダメージが大きいですね。普通の生活が基本的なところから覆されてしまうようなダメージの大きさに対して法律的に非常に無力で、例えば傷害暴行罪は当然あるんだけれども、DV防止法を私たちが必要としているのと同じように、やはり何か法的な対処ができなくては現状では手が打てていない。手が打てていないから少ないように見えているだけという、ひと昔前のDVや成人の強姦と同じような状況にあると思います。
     ただ、児童虐待防止法でというのは正論なんですけれども、実は対象となってくる年齢が性的虐待の方がかなり高いんですね。しかも証拠として残らないことが多いので、恐らくこれから児童虐待防止法のさまざまな強制的な手続というのは身体的な虐待を中心になされざるを得ないだろうと思います。それから、死亡例なども乳児が一番多いですよね。ですから、小さい年齢に偏っていくというふうに考えると、大体、中学、高校ぐらいのところに1つ山があるような形の性的虐待は、恐らく児童虐待の方の法規だけでは対処し切れないのではないかと考えています。
     具体的に、例えば刑法の中で扱うのがいいのか、あるいは別の形を考えるのかはともかく、何らかの法的な規制がはっきりと言葉に書かれることが必要だし、それによって政策が行われることがないと、今のところは本当にまだ見えていないという現状にあると私は思っています。
    島野会長
    今、家裁で扱っているのは児童福祉法違反ですね。
    小西委員
    そうです。もちろん扱われてはいるんですけれども、そこまでいけないケースがほとんどということです。
    原会長代理
    私も幾つかの質問があるので教えていただきたいのですが、1つは今の小西委員のお話の小学校高学年から中学生ぐらいのときに近親による強姦が起こったとして、そのことを口に出して、私はこういう被害を受けていますと言えるようになるときというのが、早くても高校だし、もしかしたら20歳過ぎとか、また40になってから、実は私はという場合がある。そういう場合に、法律としてどうなるのか。もうあなた大人なんだから、子どものときに始まったことだから児童虐待だよと言えるのでしょうか。その辺も含めて何か法的なものができて、こういう法律がありますよ、だからあなたは守られるんですとか、それからこういうことはいけないことで、ちゃんと日本という国はこのことについて気をつけなければいけないと言っているんですよという法律があれば、おっしゃる啓発活動もそれを基にできて、なるほどそうかということで、人びとの考え方が変わると思います。先ほどからの発言にあるようにDV法はそういう役割を果たしていると思いますし、男女共同参画社会基本法ももっと大枠で似たような役割を果たしていると思うんです。
     やはり何かそういうことがあるということが日本における啓発活動で、幾らビラをつくっても、小さいパンフレットをつくっても、それで随分お金をかけても、なかなかそれが本当にそうだとは思っていただきにくい。もともと意識のある人はこういうものをいただけば、そうだそうだと思うのであって、もともと意識がない方にわかっていただくには、やはりこういう法律がありますという解説の本が出るとか、そういうものも含めていろいろなところで講習会などがあるのが大事かなというふうに感じて、啓発が大事だというときにどうやって啓発するかということも工夫が必要かと思います。
    前田委員
    今、原会長代理のおっしゃるとおりで、小西委員にもつながってそのとおりだと思います。
     ただ、近親姦を処罰するというときに、近親姦の要件というのは合意があろうとなかろうと、一定の近親関係のある者での性的関係を処罰するというものですよね。確かにこういうものを表にあぶり出すために、そういうもの全部が規範として違法である。種の保存とか、そういう観点から言ってもこれは好ましくないとか、宗教的なこととかいろいろあってやるわけですね。
     ただ、どうもお話を伺っていると、それを出すことが小西委員、原会長代理が御指摘になったような問題解決をするためのツールとして合理性が必ずしもないんじゃないか。私も、条文がこういう宣言をすることによってある意味で一番鋭い啓発みたいな機能を持つということは大賛成なんですけれども、そのためにも家庭内での性関係は一切合意があってもだめですよと宣言することよりは、やはり私は児童福祉とか児童虐待とかの観点で、それと絡めて家庭の中にもっと今、進んでいるような形で、支配関係の下での性的関係を強要することがいけないんだと。
     完全な合意の下での家庭内の性関係は悪だという考え方も十分あるわけですが、それを処罰するような法律までつくることが合理的かどうかは、いろいろな議論があり得ると思うんです。それがあった方があぶり出しやすいというのは、そこまではわかるんですけれども、それよりはもっと早く中学生、高校生辺りが親から強要された強姦に当たるようなものをいかに導き出すか。これは手続の問題なども含めて考えていかなければいけないので、刑法でぽんとつくれば何か解決するかというと実は非常に弱いものです。これは細かい手術をするのに日本刀でやってしまうみたいなところがありますので、若林先生の御意見と違ってしまって申し訳ないんですけれども、私などは近親姦をつくるというのはちょっと厳しいかなという感じを持っているということです。
    若林委員
    今、前田委員のおっしゃる御懸念は私も同感です。私が何か目に見える形で法律をと言ったのは、近親姦そのものを構成要件にした法律をつくるということを意味するのではなくて、児童虐待の一類型ということで、まだ意思表示が自分でできない児童について、どういう法律がいいか私も考えておりませんが、原会長代理がおっしゃるように目に見えるものを何か法律という形でつくるという意見です。
    原会長代理
    資料5のcedawの5ページ、「強姦罪・近親姦について」の内閣府のコメントで、「児童虐待(近親者による性的虐待)」というふうに括弧が入っているのはどういう意味でしょうか。強姦罪・近親姦についてということだから、いろいろなタイプの児童虐待の中で、ここでは「近親者による性的虐待」ということで括弧が入ったのかどうか。これは内閣府に確認すべきことなのかもしれないんですが、それを知りたいと思います。
     もう一つ、ここで今、私たちこの専門調査会で使っている「近親者」というのはどの範囲なのか確認させていただけたらと思いました。
     それから、先ほどの前田委員のお言葉の中で、「完全な合意による性的な交渉」とありましたが、「完全な合意」というのはものすごく幅があるのではないでしょうか。そういうことは法律の上ではどんなふうに対応されるのでしょうか。
    久保内閣府男女共同参画局推進課長
    内閣府でそこに書かせていただきましたのは、前回この会議で項目だけ書いたところがあったかと思いますが、そのときの表現を拾っただけの意味でございます。
     それから、女子差別撤廃委員会の最終コメントの議論のときに近親者の範囲とか何かを議論したということではないです。
    島野会長
    それでは、今日は近親姦というテーマを取り上げ、多くの委員が関心を持っていらっしゃるし、いろいろな御意見をお持ちということがわかりました。ここで今日、専門調査会としての意見を取りまとめるのは無理があるかと思いますので、今日のいろいろな御意見を整理して、また次の機会にお諮りしたいと思います。
    大津委員
    シェルターではDVで逃げてこられているお母さん、それから子どもたちの中に、やはり親から性的な虐待を受けている子どもたちが多いんです。それと、メンタルで入ってくる女性たちの中にもいろいろな経験を探ってみると、やはり親からの性的な虐待によって大人になってしまって、そして心の問題を出している。それで、小さい子どもたちがどうやったらそのことを訴えられるかというのも、helpに来てからお母さんは父親から虐待を受けてきたと言うけれども、子どもたちの中にはそのことを訴えられる子どももいる。だけど、訴えられない子どももいる。
     それから中学生、高校生、特に中学生の子どもたちがとても大変で、父親の下で母親が子どもは虐待されていると言っているのに、子どもが言えない。というのは、父親からコントロールされていますから、母親と一緒に行けばこのまま学校を続けられないという経済的な不安ですね。
     そういう子どもたちが訴えていることを、いわゆる福祉関係者にどうやったらそのことを聞いていただけるか。母親の側が一生懸命言ったとしても、子どもがそれはないと言ったら、それはもうないのかもしれないことになってしまって、子どもたちを救えない現状を私たちは度々見ています。どうやったら子どもたちの訴えが聞き出せるのかということを関係者の方々に知恵を出していただきたいと思います。
    原会長代理
    強姦罪・近親罪のことではなくて性犯罪に入るかと思われることなんですが、最近、性的な目的を持って子どもを誘拐したり、連れ去ったり、それから誘拐まではしないけれども性行為をして道路上に放り出すとか、そういうことが度々起こっているようでございますが、このことについてもこの委員会で討議の対象に入れていただければと思います。今のところ項目としてはそれがどこに入るかわからないんですけれども。
    島野会長
    今日お配りした資料1の「1 総論」の2番目のパラグラフで「最近、多発している」云々というのがありますが、これは男の子の例もあるけれども。
    原会長代理
    「女性・児童に対する」とかの表現はいかがでしょうか。でも、それは「逮捕」と言うんでしょうか。
    島野会長
    もう少し違った問題点の指摘ですね。
    原会長代理
    登校途中の連れ去りなどが今日のテレビでも放映されていましたが、文言は後で考えたいと思います。
    島野会長
    それでは、今、原会長代理から御指摘のあった、児童に対する近親姦ではないけれども、他人による性的な虐待等々についても先ほどの近親姦の問題と同じように、もう少し論点を整理してお諮りしたいと思います。
    林委員
    それに関して、今後の論点整理のためのお願いなんですけれども、国連の委員会の言っている「近親姦を個別の犯罪として刑罰法令に含めること」という意味は、強姦罪から近親姦を独立させて、1つは構成要件は同じだけれども法定刑を加重するという考え方と、前田先生がおっしゃったように、暴行・脅迫は要らないんだ、合意があったとしてもとにかく一定の関係の人のときには強姦罪が成立するんだという考え方があり得るというか、そういう法制をとっている国は多いわけですね。あるいは、近親姦以外でも教育とか雇用とか支配関係にある人の間での性的関係というのは、暴行・脅迫はなくても、あるいはあった場合により加重するという考え方があると思います。
     だから、旧改正刑法案ですか、法務省が出していたものなどにも入っていましたよね。そういうもので既にほかの国で加重している例ですとか構成要件を変えている例があるんでしたら出していただいた方が、ここで議論しやすいのではないかと思いますので、それをお願いします。
    島野会長
    この件について、関係省庁から何か御意見ございますか。
    法務省
    近親姦に関する他の国の法定刑、あるいは加重形態は今、手元にございませんので、調べさせていただいて回答させていただきたいと思います。
    島野会長
    よろしくお願いします。
     それでは、1ページの下の「イ 盗撮に関する法整備」について、どうぞ御意見をお願いいたします。前田委員、何かございませんか。
    前田委員
    このように書いていただければ、私は問題提起した側としては意をくんで書いていただけていると思っております。どんどん私は被害の可能性が拡大していって、マスコミの問題にもつながると思うんですが、女性を商品化するといいますか、それともつながって、これが日常の意識の中で薄く広く蔓延していきますので逆に非常に問題で、スカートの中や何かを盗撮するということは非常に重大な問題であるという意識を何らかの形で提示する。
     それは先ほど原先生がおっしゃったような意味で、法律というものを使ってそういう規範をつくっていくというやり方もあると思います。いろいろな可能性があると思うんですが、警察としても今ある条例などの使い方にいろいろ苦労されておられると思うので、より実効性のあるものですね。ツールがどんどん新しくなってきていますので、そこも含めて今後関心を持っていただきたいということで、当面はこういう文書を書いていただくのは非常にありがたいと思っております。
    住田委員
    賛成意見ですが、これは盗撮から始まっていますけれども、プライバシーを保護法益とする刑法犯というのは非常に少ないわけです。しかし、今やインターネットを通じての法益侵害の程度が強まったなどというなまやさしいものではなくて、単なる精神的侵害を超えたかなり重大な被害が生じているという現実がございます。そういう観点からも私はその中の一つの位置づけとして、こういう犯罪は新たにきちんとした形で対処するようなものをつくるということに賛成です。
     性犯罪の観点ももちろん大事なんですが、プライバシー保護という観点からも、刑法犯として考えるべきものがより増えてきているのではないかと考えています。今は住居侵入と信書開封しかないんです。
    島野会長
    プライベートな空間に侵入するという問題ですね。
    林委員
    最近、女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツについて、羞恥心という言葉を使うことについて非常に抵抗を持つ女性たちがいます。つまり、それを恥ずかしいと思わせてきたのは男性中心主義だということで、むしろ女性の性的自己決定権、自分の裸をだれに見せるかは私が決めるという自己決定権の問題だというとらえ方をする人がいますので、私自身はまだ自分の考え方を決めかねているんですけれども、この性的羞恥心という言葉には要注意だと思います。
    島野会長
    それでは、ウに移ります。「痴漢等の取締りの徹底」につきまして、御意見をお願いいたします。
    瀬地山委員
    先ほども申し上げましたが、これについてはまず少なくともどこでどれぐらい発生しているかという調査が欲しいです。今あるのは、今までに経験した回数というのを「配偶者等からの暴力に関する調査」で聞いているだけです。実態が全くつかめていなくて、例えば何線のどういう時刻にどういう被害が集中しているかといったことを調べようと思えばできるはずです。その上で初めて対策を考えられるわけで、今はまだその手前の段階という印象を持っています。
    住田委員
    先ほどの繰り返しですが、この場でも申し上げておきます。
     いわゆる痴漢は迷惑防止条例に当たり、強制わいせつに当たらないレベルのものが条例として対象になっているわけなんですが、条例にゆだねた趣旨というのは、地方の実情に応じてそれを犯罪とするか、しないか、刑罰法令として科すかどうかということを検討するためだろうと思いますが、その根本にはこの程度のものは法律上の犯罪とするに足りない非常に些細なものであるという意識が当時はあったんだろうと思います。
     しかし、今やポスターにも「痴漢は犯罪です」ときちんと書かれておりますように、全国的にもこういう問題については犯罪であるという認識が高まっているんだと思います。そうしますと、単なる条例違反という感じで考えられるよりも、やはり法律上の犯罪である。しかも、それは法定刑としては条例以上のものもきちんと用意されて、繰り返されるものに関して言えば、今の条例でのものを超えた刑できちんとした対処がし得るようにすることが必要と考えます。
     それからもう一つ、やはり条例は各県ばらばらでして、ほぼ同じ内容とは言っても微妙に異なっております。電車の中の移動で突然どこどこの条例とどこどこの条例が変わったとか、そういうばかばかしいこともありえます。そういう意味で私は現場での不都合と、一般国民に対しての啓発の一環というレベルからしても、法律上の犯罪として整備されることをお願いしたいと思います。それを刑法に入れるか、どこに入れるかはお任せしたいと思いますけれども、少なくとも条例から出していただきたいという意見です。
    島野会長
    ほかにございませんか。各省の皆様、よろしいですか。
    吉田警察庁生活安全局生活安全企画課長
    意見というわけではございませんけれども、電車が県境をまたいでいくということは、特に首都圏では警視庁と埼玉、神奈川、千葉とが条例改正で協調していまして、地方での協調はあります。
     あとは条例による罰則ですけれども、今、資料を持っていませんが、最近この条例は延べ数十回いろいろな観点から改正されているんですが、その中でいわゆる痴漢、盗撮等の取締り規定が強化されているわけですけれども、大都市部では大体6か月の懲役、確か50万の罰金というのが大勢だと思うんですが、地方部ではまだ3万の罰金程度のところや5万くらいのところも相当あるということで、かなり考え方に地域差があるのもまた事実でございます。実態のこともあるんだと思いますが、地方の方では余り実態がないんだろうとも思います。
    原会長代理
    実態がないというのは、把握できていないということですか。
    島野会長
    満員電車がないということですね。
    吉田警察庁生活安全局生活安全企画課長
    満員電車がないということもあるかもしれませんし、やはり地方の方が人が落ち着いていてそういう行為に及ぶ人がいないというところは実態としてあると思います。あれば、ほかの県で、同じ警察のことですから、うちの県でもいっぱい問題になっているといえば条例改正はどこの県も皆していますから、それがなされないのはなされないだけのことはあると思います。
    島野会長
    それでは、次にエで「ptsd以外の精神障害が傷害罪等の対象になり得ることの周知」につきまして御意見をお願いいたします。
    小西委員
    基本的にはこれはこういう方向で言っていただくのが正しいと、多くの精神科医も考えると思います。それで、実際に判例を私は全部知っているわけではありませんけれども、見ていても、ただ診断のあるなし、ptsdのあるなしではなくて、実際の障害のありようというようなことを判定していかなくちゃいけないとか、特にここは刑事ですけれども、民事などでもそういう動きはあって、それは当然だろうと思うんです。
     それで、幾つかこのような場合に診断される事の多い障害もあるので、それは是非このままお願いしたいと思うんですが、そういうふうにするときの一つの要件としては、結局そうなりますとその司法関係者にいろいろな認定がゆだねられる形になるわけですね。どうしてptsdがこれだけ最初に使われてきたかというと、当然ptsdの診断基準の中によくも悪くもですけれども、因果関係そのものを含んでいるというところで、ある意味では使い勝手がよいということで使われているわけです。
     そうしましたら、それを外したときにもきちんと精神的な傷害ということについて司法関係の方が理解を持っている。あるいは、性暴力に関して、強姦に関して偏見を持っていないということが前提で初めてこれは成り立つことなんです。
     例えば、米国の診断基準などをつくっている学会の議論を見ますと、ptsdから因果関係の部分を外してもいいんじゃないかというような意見も最近は出ています。うつ病などと同じようにその症状だけでとらえて、その因果関係の判断というのは臨床の診断の中には必要ないんじゃないか。それはこの病気がないということではもちろんなくて、その因果関係については非常に周知のことであるので、例えば心因性でこういうことが起こってくるということは周知であるから入れなくてもいいというところまでアメリカの社会がきているんだというふうにも考えられると思います。
     そういう意味から言うと、日本でこれをやるときに必要なことは、もう一回性犯罪に対する司法関係者や,一般社会の偏見、被害者の方に問題があるというような考えとか、たいしたことはないという偏見などが生まれないという教育を保障していただくということが必要だと思います。そうでないと、逆戻りになってしまう可能性もあります。
     それで、文言について言うと最後のところですね。「ptsd以外の精神障害についても傷害罪等の対象になり得ることの周知を積極的に図るべきである」。だれにというところがやはり問題じゃないかと思います。例えば、実際に自分が経験する例でもいまだに司法の関係すべてですね。弁護士さんも裁判官も検事さんも含めて、皆がこういうことをわかっている感じでは全然ない。ケースによってすごく違うんですね。少なくとも司法関係者、それから医学の関係者にはこういうことを周知というか、ちゃんと教育するんだということを書いていただいた方がいいのではないかと思います。
     それからもう一つ、このことに関わっている医者の立場からしますと、例えば精神的な障害に対して意見書を付けたり、鑑定書を付けたり、意見を述べたりということが必要になってくることが多いわけですが、今それをやるとものすごく自分の負担が大変なんですね。それで、普通の臨床をやっている医師ではこれはとてもやれないと思いながらやっていますが、当然のことながらそういうことに関わる医者が非常に少数になっています。
     暴力被害によって起こってくる精神障害に対する医学的な判断というものが刑法の中でこれからずっと使われていくんだとするのでしたら、医師の負担というものをある程度減らしてちゃんと安心して診断できる形にしてもらわないと、なかなかここから一歩が医学の中でも進んでいかないのではないかと思います。
    島野会長
    今の小西委員の御意見に対する御質問等はありませんか。
    大津委員
    医師の負担を減らすということですが、その負担というのはどういうものでしょうか。
    小西委員
    例えば今、大体私がこういう形でいただくときには鑑定書なり、意見書なり、そうでなければ供述を取っていただいて調書の形で出すということになりますけれども、まずかなり時間がかかります。それで、例えば鑑定書をきちんと出そうと思って、米国のような先進の国で取られている鑑定書の要件を満たそうと思うと、やはり数時間から10時間くらいかかってしまうんです。
     今度は調書で取るとすると、例えばどこかに伺って何時間か話をして自分の調書を点検して、しかも大体もめているケースだと証人として呼び出されます。それで、証人として呼び出されるとその日は少なくとも半日は取られて、かつ臨床家から考えるとそんなことは聞かれてもちゃんと答えられるわけはないということを質問されるということになりがちです。法律家からすれば大事なことなんでしょう。そこは当然すれ違いがありますが、何にしても精神的な負担感も非常に大きいんです。
     そういうことのすべてがほとんどボランティアでしか行われない構造になっている。それだと、普通に臨床でこういうptsdを扱ってもよいと思っている医者でさえ少数なんですけれども、そこまでやる人はもっと少数になってしまいます。実際に自分が見ている患者さんでも、裁判について前にかかっていた先生に言ったら、そのことは協力しないと言われたというケースが非常に多いですし、もし私が受けるつもりになればものすごくたくさんそういうケースがくると思いますが、自分でも負担が大き過ぎてたくさんは受けられない状況なんです。
     自分自身も、それは日常の業務としてやれているわけではなく、ほとんど使命感でやっているという状態なので、これでは普及しない。普及しなければ、裁判の中でその診断が適正に行われるとか、あるいは診断の質を確保していくということも難しいと思うんです。
     これは精神鑑定全体に関わってくる問題だとは思いますけれども、司法の中の精神医学というものの位置付けが日本では非常に弱いというところとも絡んで、未整備の部分は本当に未整備だと思います。
    住田委員
    先ほどのプライバシーについてきちんと法律ができるということを望んだのとつながることで、小西委員がおっしゃったこととも関連しますが、今まで日本は精神的な苦痛とか、目に見えない被害に対しては、よく言えば慎重、悪く言えば臆病であったという感じがします。最近は名誉棄損については類型化をして損害賠償額についてもかなりアップが図られてきた。それはそれなりのものとして私は評価したいと思っています。
     そういう意味では、こういう目に見えないものに対してようやく研究が進んできて、いろいろな具体例も集積されて、この場合はこのくらいでいいというふうに裁判官にもわかってくれば、そこまで難しいことを言わなくなってくるはずで、私は、ちょうど今がその過渡期じゃないかという感じがしています。そういう意味でも、目に見えないものに対して、より具体的な研究成果が出て、それが裁判などを通じていろいろなところで広まっていく。一時は大変だと思いますけれども、よろしくお願いします。
     ただ、裁判でも、精神的な被害以外の傷病名などが出ているとちゃんと慰謝料は認めますけれども、単なる精神的な苦痛に対しての慰謝は、精神的苦痛を除いた病名が付いてもなかなか認めてもらえないきらいがあることは事実です。
    島野会長
    これについては、法務省その他御意見ございますか。よろしいですか。
     ありがとうございました。
     次に「(2)被害者への配慮とケア」の「ア 女性の被害者の立場に立った刑事手続の実施」につきまして御意見を伺います。
    林委員
    ここで書かれているのは、証人への付添いから始まりまして、いわゆる公判請求された後のことに主眼が置かれていますけれども、実際には捜査の段階での警察とか検察庁での取調べが苦痛であるという被害者が多いわけですので、やはりそこについてのジェンダーの視点からの取組ということに触れるべきではないかと思います。
     そうしないと、「特に」の部分で私は別に弁護士だから弁護人を防御するわけではないんですけれども、「弁護人の尋問に配慮すべきである」ということだけ書かれていますが、実際にはその前の段階の捜査公判での警察、検察もひどいじゃないかということがありますので、この書き方は検討していただきたいんです。
     それと「特に」の部分ですけれども、配慮する、しないというよりは今はレイプ・シールド法みたいな形で、性犯罪の被害者についての尋問事項自体を制限するという立法の動きがありますね。ここでは余り議論しませんでしたから直接触れていないんだと思いますけれども、配慮する、しないというよりは、もう少し先進国の取組というのは進んでいるのではないかと思います。
     ちなみに、明日ジェンダー法学会というものが設立総会を開きますが、報告の1つに強姦被害者に対する保護ということで、慶応大学の谷田川さんが報告しますので、その報告で参考になるものが出ましたら、またここでも資料を提供したいと思います。
    前田委員
    私も基本的には同じなんですけれども、ただ、法曹教育の見直しという中で、やはり女性被害者の視点の教育みたいなものがなかったんだと思うんです。そういうことも非常に大事で、御指摘のように捜査官による女性への配慮もあります。
     ただ、弁護士さんに対してこういうことを今まで一度も言ったことはないので、これは画期的なことで、被害者にとっては相手の男性側の弁護士に相当苦しめられてはいるんですよ。ですから、それは大事なことだと私は思います。
    原会長代理
    自分の弁護士さんからも二次被害に遭わされるんですね。だから、相手側だけじゃないんです。
    前田委員
    そうですね。だから、法曹たる者、被害者の気持ちをもっとわかってやれというところは基本的に同じなんですけれども、弁護人という言葉が出てくるのは画期的なことだと私は思っています。
    小西委員
    アの最後の3行で「警察では、臨床心理士によるカウンセリングをはじめとする被害者対策を、検察庁では」と書いてあります。これはとてもいいことだし、実効を上げているところがあることも存じていますけれども、基本的にこれは対策と言いながら、例えば臨床心理士によるカウンセリングができるところは全国全部ではありませんし、違っていたら教えていただきたいんですが、検察庁の被害者支援制度は比較的年齢の高い男性が多いので、性犯罪被害者が相談しやすいかというと、まだそういう状況になっていないと思うんです。ですから、こういうものが試行として取り入れられたのはとてもよろしいですけれども、やはりこれを全国レベルのサービスとしてやっていくというふうに書いていただいた方がいいかなと思います。
    原会長代理
    この専門調査会で話題になっているような状況における被害者の方々に寄り添う形でのカウンセリングが現状で、どの程度可能なのか。カウンセリングの多様性が確保されるような方向での臨床心理士の資格認定が必要かと思います。
    小西委員
    臨床心理士は学会認定資格なので、今は臨床心理士の養成に関する認定協会があって、そこがやる試験で認定されます。
    原会長代理
    だけど、大学院は文部科学省の認可ではないのですか。
    小西委員
    大学院の認可も認定協会なんです。
    原会長代理
    それを文部科学省がオーソライズしているわけでしょう。文部科学省がオーソライズしないと、あの大学院は設置できないわけですよね。
    小西委員
    そうではないですね。私が答えることかどうかわからないんですけれども、自分はその指定校の教員ですので。
     文部科学省の大学院の設置基準は設置基準としてあるんですけれども、それと別に認定協会の認定を取るための基準というのがもっとより厳しく、例えば臨床心理士野教員が何人とか、そういう設定があって、協会からの指定を取るという形になっています。
     もちろん協会には、例えば文部科学省のobの方がいらっしゃるとか、そういうことはありますけれども、直接的には文部科学省とは関係ないと思います。ただ現実として臨床心理士がスクールカウンセラーなどをおもな対象としていて少なくともこういう事件とか、被害を受けた人への介入ということをメインに置いてこなかったことは事実だと思います。
    原会長代理
    もう一つはその方々のジェンダー意識ですよね。
    小西委員
    そのジェンダーについても、ある意味では臨床心理の教育というのが非常にジェンダー意識の薄いところで行われてきていたというのも事実だと、私の個人的意見ですが思っています。
     ただ、例えば臨床心理士の学会の中には、最近は被害者支援部会というのができていまして、対応しなくちゃいけないという気持ちはあると思います。ただ、十分かというと全く十分ではないと思いますけれども。
    原会長代理
    多様な状況やニーズに対応できるようになっていただきたいです。
    小西委員
    もう一つは、現実に私はその中で被害者支援に取り組んできているので、むしろ私のところでやっている教育というのは主流ではないわけですけれども、その立場から言いますと今、スクールカウンセラーに払われる時給と、それから配偶者暴力相談支援センターで相談員に払われる時給と余りにも違う。スクールカウンセラーならば食べていけるけれども、配偶者暴力相談支援センターの相談員は自分の給料では食べていけない。夫の給料がなくては食べていけないにもかかわらず、被害者に自立を促すという非常に矛盾した状況にあります。
     そういう待遇の格差というのは結局その質の差を生み出してしまいますし、それから教育する方のモチベーションにも関わってくるので、やはりそれは大事なことだと思います。
     それから、ジェンダーの問題というのは、本当に学会の中とか、そういうところでももっと扱われなくてはいけないと思います。いろいろ問題があるのは事実だと思います。
    島野会長
    非常に参考になりました。ありがとうございました。ほかに、アについてはよろしいでしょうか。
     では、イに移ります。「女性警察官の採用の拡大」につきまして、御意見をお願いいたします。警察庁はいかがですか。
    吉田警察庁生活安全局生活安全企画課長
    特にございません。
    小西委員
    是非お願いしたいことですが、今、警察で調査をしますと、すべての性犯罪者の調書を取るときに女性が担当することがほぼ実現されているというふうに答えられるし、実際に変わってきたと思います。しかし実態としては調書が取れる婦人警察官だけではなくて、男性警官の横に女性の職員が付いているとか、そういうことも含めてになっていますので、被害者の方の調査を見ますと、自分は女性警察官に調書を取ってもらったという方はまだ半数ぐらいにとどまっていたと思います。やはりもっと実質的に、少なくとも最初に調書を取るところでは女性を望む人が圧倒的だと思いますので、これは是非やっていただきたいと思います。
    吉田警察庁生活安全局生活安全企画課長
    現実から言いますと、私の勤務したところでも、女性というのは事務職員も含めてです。そうじゃないと、配置ができないのが現状です。これは女性ばかりじゃなくて、今度は特に被疑者の問題がありますから、そのときに例えば身体検査をするとか、入浴だとか、そういうときに警察官を必ずしも全国どこでも与えられるという現状にはなっていない。
     ですから、そういう意味で継続的に拡大を進めて、最低限そちらの方からまず人が要るということです。土日辺りでも事務職員を仕事外、任務外の呼出して対応させるとか、地方は大体そうだと思います。
    住田委員
    アに入るのかなと今、思ったのですが、取調べの部屋のことです。被害者が事情聴取のために警察に行きますと、1階はいろいろな女性も出入りしているんですが、大体捜査部門は2階にあり、そこに上がって、しかも小さな小部屋に入れてもらうことが多いと思うんですが、そこに行き着くまでに正直なところ、いろいろな犯罪関係の方が出入りしていて、若い女性が入っていくととかく好奇の眼で見られて、そこだけでもかなり嫌な気持ちになったというような話を聞きます。
     そうしますと、場所的な配慮としても今、大分いろいろなお部屋をつくられたというふうには聞いているんですけれども、そういうことについても格段の御配慮をお願いしたいと思います。刑事手続の実施の中で捜査中における被害者の配慮の一環であろうかと思います。
    島野会長
    ただいまの意見と最初の意見も踏まえて、アとイを整理する必要があるように思います。起訴前の段階での配慮、施策、その他があるように思います。これはまた事務局に整理していただきたいと思います。そのほか、イについてなお御意見はございますか。
     それでは、ウで「被害者のケアのための対策」につきまして御意見をお願いいたします。
    北村委員
    ケア以前の問題かもしれませんけれども、ファーストコンタクトを求められるのが、いわゆる臨床の現場の医者であったりすることがあるわけですが、この辺りの医師、あるいは医療従事者に対する指導というか、認識不足が非常に目立っているだろうと思います。精神保健センターや保健所というのは、ひょっとしたらその次の段階での精神的ケアに当たる人たちだろうと思いますけれども、最初に被害に遭った人たちが訪れる可能性のある場所は、私どものような現場の医師のところだろうと思いますので、ここはやはり加えておいた方がよろしいのではないでしょうか。
    小西委員
    これはア、イ、ウの中では一番弱いなと私が見て思うところで、基本的にはケアについて、特に性犯罪の被害者のケアについてはやはり一般の方と一緒でなく、レイプ対象か、あるいは女性に対する暴力対象でもいいんですけれども、そういうトリートメントセンター的なものが各地域にあるという形でないとなかなか機能しないと思います。諸外国の状況を見てもそうですね。やはり非常に行きにくいですよね。
     それから、精神保健福祉センターの業務というのも非常に多岐にわたっていて、地域の精神保健福祉を支えているところで、現実にそういうところにお願いしても、うちでは見切れませんというような実質的な御返答をいただくことが非常に多いし、何かやはり新たな形で立ち上げていかないとなかなかケアはできないと思います。
     もちろん、今、北村先生が言われたように、一線の医師や、こういうところにいらっしゃる中核の医師に対して、ptsdの研修や、あるいは性犯罪に関しての偏見ということを知っていただくことはとても大事なことで、それはそれで今もやられていると思いますし、今後も必要だと思いますが、積極的な実際のケアという立場から言うと、やはり何かそういうものを立ち上げるということが今後は必要になってくると私は思います。
     特に大都市圏など、米国などだと各市にくらいでも置けるほど需要があるわけです。そう考えますと、そういうところには幾つか本当にあってもいいんじゃないかと思います。やはり女性の医師がいて、女性のカウンセラーがいて、あるいは警察がそこに来てくれるということがほしい。そういうケアができるところが地域にないと、なかなかこれは進んでいかない。
     例えば、さっきお話しした司法と関わる問題にしても、そういうところに司法と関わることに慣れた専門家がいれば比較的スムーズにいくと思うんですね。是非もう一歩進んで、今後は何かそういう地域のケアのセンターというものを立ち上げていただけるといいと考えております。
    原会長代理
    これは、私どもがこれからつくる報告書のようなものにどういうふうな形で盛り込めるのかはわからないんですが、先ほど少しお話があったように、女性被疑者の方や女性受刑者の方が不当な暴力にさらされている状況もあるわけですよね。そのことを私たち専門調査会は全く触れないでいいのかどうかということが検討事項かと思っております。
    島野会長
    そういう収容施設その他で性犯罪的な行為が行われているということについてですね。
    原会長代理
    少なくともそれを防ぐために、やはり啓発も必要かなと思っております。同じようなことをした被疑者でも、男の人が廊下を通るときはすっと通るけれども、女の人だったらじろじろ見られるとか、そういうことから始まって、いろいろです。
    島野会長
    職員ではなくて、同じ立場にいる男性と。
    原会長代理
    それにもあるけれども、職員からも見られる。男の被疑者だったら、また今日もいるかくらいでさっと通るということですが、そういうことも含めてです。
    島野会長
    わかりました。ほかに御意見ありませんか。
     それでは、(2)について関係省庁から御意見ございますか。
    吉田警察庁生活安全局生活安全企画課長
    意見ではないんですが、施設の話ですね。取調べと、部屋の話は改善はしているんですが、ルート等は庁舎の問題ですので、こちらの入り口からとか、なかなかうまくできないということがあります。そういう意味で進んでいない面がありますが、意識はしています。ではどうするかというと、具体的にはワゴン車を使って、被害者の事情聴取をするとかということで、施設内でやらないということもかなり進めております。
    北村委員
    被害者に遭った人たちに対する情報提供の必要性なんですけれども、例えば、レイプ被害に遭ったような人たちが私どもの施設に来たときに、もう既にシャワーを浴びてきたり、これは気持ちはよくわかりますけれども、この辺りに対してやはりきちんと情報がなされていれば、もちろん対応する医療機関が極めて少ないということもあるんでしょうが、レイプ診察キッドというものがあるんだそうでございまして、白いシーツを敷いて、そこで着衣を脱いでいただいて、そこに落ちてきたものを一切拾うというようなことが先進国では当たり前に行われているようですが、我々は十分そんな情報を持っていないということがございます。被害に遭った人たちがこういう形でファーストコンタクトを取る医療機関に行く必要があるんだという事前の情報提供があることが必要ではないかという感じがします。
    島野会長
    それでは次に「(3)犯罪の予防」のアの「性犯罪を助長するおそれのある雑誌、コンピューターソフト、ビデオやインターネット等の制限」につきまして御意見をお願いいたします。
    北村委員
    前回も議論しましたけれども、これは国内で対応し切れるものではとてもないと思います。だから、各国との連携の中でこういう問題を解決する道が探れるのかどうか。インターネットなどを通じて、一瞬にして日本を越えた各国情報が子どもたちにも目に止まるという状況の中で、「はじめに」の部分でも対策を講じていく必要があると非常に単純に書いてありますけれども、さてさてこの対策は果たしてどういう取組が可能なのかという辺りに非常に疑問を感じております。
     更に、予防という意味ではそれを使う側の教育というか、例えば学校教育などの機会を利用して、我々はよくメディアリテラシーという言い方をしますけれども、そういう教育を徹底して有益情報の取捨選択ができるような子供たちを育てていくという記述がどこかにあってもいいかなという感じがします。
    瀬地山委員
    これはずっと私も気にしていたことなのですが、まず1行目の「強姦、調教ゲームやsm等の物扱いするような内容の雑誌」というのが具体的に挙げられています。こういうことに関して不愉快だと思う人がいるというのは事実ですが、この記述自体はいわゆるコピーキャット仮説というものに基づいていて、特定の内容のものを見たらそのとおりのことを人がするであろうというふうな仮説が前提になっているわけです。
     ところが、強姦などというのは女性向けのポルノの中でもよく出てくる題材ですし、smというのは別に女性を傷つけるだけではなくて逆になる場合も当然あるわけです。こういったいわゆる内容規制、内容に立ち入った規制というのが意味があるのかどうかというのは私ははなはだ疑問であると思っています。
     それで北村先生のおっしゃったことと関わるわけですが、2点目はわいせつ概念と関わる問題です。前回ご説明のとおり、わいせつ概念というのは判例の積み重ねがあってなかなか変えるのは大変であると承知していますが、、明らかに今のインターネットの時代とはそぐわない概念になってしまっている。
     私はむしろ公共の空間ですね、例えば駅や広場など、そういうだれもが目にできる空間で見られるものについて、何か一定の縛りをかけるということが必要で、そういう形での棲み分けをして、内容規制に関しては意味を持つとは思えないと考えています。
    原会長代理
    瀬地山委員の御意見が1つのお立場ですね。ですが、この委員会で瀬地山委員の御意見と対立もする御意見をお持ちの方に、時間がないでしょうから10分くらいかけて資料を出していただいてヒアリングということでちょっと勉強しておく。
     瀬地山委員の意見がだめと言っているんじゃないんです。だけど、どんな話が今、行われているか。マスコミや情報とジェンダーという世界で、これは意見が多様だと思うんですけれども。
    前田委員
    委員を選んで何とかということではなくて、いろいろ議論はあり得ると思うんですが、今、東京でも条例改正をして、児童に有害な図書をどう規制するかで包括して入れようとしているんです。
     それで、必ず反対意見としては、そういうものを見たから犯罪を犯す。そういう情報というか、資料がなければ因果性がないんだから規制しちゃいけないんだというんですけれども、これは犯罪予防という題が出ているからそうなってしまうんですが、効果があるなしだけで条例をつくるわけではないし、この法律をつくれというのもそうだと思うんです。
     こういう女性を物扱いにするようなものを特に流すことが、社会にとってこの委員会としていいと考えるかどうか。表現の自由とのバランスがもちろんあるわけですけれども、警察の側からのデータなどではそれが原因になってやっている事件が何件も出てきてはいるわけです。ただ、それが科学的な因果性の論証になっているかどうかという議論はあるわけですが、そこがあるかないかというのは水掛け論なんだと思うんです。
     ただ、それと離れてもこういうものを規制して、女性を物扱いにしてやるようなものですね。それから、もう一つは児童の問題は切り分けなければいけないのかもしれませんけれども、これをどうするかという問題は両論併記でもいいんですが、私などはやはり規制すべきだという考えです。
     あとは、インターネットに関しての法整備は法務省が必死でやっておられますし、整備することによってインターネットでこういう社会だから内容規制が一切不可能だというのは私は違うと思います。世界も必死でやろうとしているわけですし、我が国でもこの委員会でも1回申し上げたんですが、明らかに175条に当たるようなものがかなり流れている。これがわいせつだというのは異論の余地のないものだと思います。決して好ましくないというのではなくて、わいせつ物そのものが流れています。それに対しての規制がやや遅れている。それは外国ではなくて、明らかに日本人が日本で流している。外国に置いていたりするかもしれませんけれども、それは法的な対応でたたけるんだと思うんです。
     ですから、その意味ではきちんとした対応で、一部の類型についてはそれをやったことによって収まった。イタチごっこかもしれないけれども、たたけるものはたたけるんだと私は思うので、是非それをやっていただきたい。
    林委員
    「性犯罪を助長するおそれのある」という言葉が見出しと最後のパラグラフに2回出てきますけれども、例えば「女性の性を商品化するような雑誌」ですとかに表現を変えることで、もし、より多くの人の賛同を得られるのであれば表現に工夫をしてはいかがでしょうか。
     それから、私は余りインターネットが詳しくありませんので、モバイルフィルタリング機能と言われても何のことなんでしょうと思うんですけれども、皆さん当然これはおわかりになるんでしょうか。
    島野会長
    これは、どなたか教えていただけますか。
    総務省
    モバイルフィルタリング技術と言いますのは、携帯電話の端末におきましてインターネットができると思うんですが、そのインターネットの中の有害情報に関しての遮断を利用者が行えるようにするという機能の技術開発を今後、行っていくものです。今、実際のパソコン上でのインターネットでのフィルタリングというのはできているんですが、モバイルの端末ではできていないので、その研究開発をするというシステムです。
    島野会長
    (3)の「犯罪の予防」という見出し、アの「性犯罪を助長するおそれのある」という書き方が、必ずしもこういったものが流布することを望まない、あるいは禁止すべきだということの1つの理由ではあっても全部ではない。そこをきちんと2つあることを書いた方がよろしいですね。
     それから、1番目のパラグラフに「今後ともこのような棲み分けの推進をする必要がある」。「棲み分け」という言葉は瀬地山委員の先ほどの御発言にもありましたけれども、ここでこのように「棲み分け」と書いてあるのが、必ずしも何と何をだれとだれとで棲み分けるのかがわかりにくいような気もいたしますので、ここのところは全体的にもう一度、文章を整理して書き直してみたいと思います。
     そのほか、御意見はございませんか。原会長代理のおっしゃったのも、そこの整理の中でできていくかなという感じもいたします。関係省庁もアのところはよろしいでしょうか。
     それでは、次にイの「性犯罪を助長するおそれのある文化を批判する啓発」のところに移ります。御意見をお願いいたします。
    瀬地山委員
    イは、何を念頭に置いてお話をしているのでしょうか。
    島野会長
    これは、さっき前田委員がおっしゃったことと重なりますね。
    前田委員
    アと書き分けた意味はどういうところにあるんでしょうか。事務局の御説明を伺った方がいいかと思いますが。
    久保内閣府男女共同参画局推進課長
    このような御発言があったので、一応項目として立ててみたのですが、おっしゃるとおりアの中にかなり入るという考え方もあると思います。
    原会長代理
    でも、私はそれに意見があります。つまり、メディアに関することをアが言っているのであれば、直さないと何を言っているかわからなくなるけれども、性犯罪を助長するおそれのある文化を批判する啓発というのはメディア以外のところにもあり得るから、言葉は工夫するとしても項目としては独立にあっていいんじゃないかと私は感じております。
    島野会長
    ほかに御意見ありませんか。関係省庁いかがですか。
     それでは、今日の討議のテーマであった1の性犯罪のついての討議を終わります。
     そして、2つ目のテーマである「売買春」について検討をいたします。初めに総論の部分につきまして御意見を承ります。
    北村委員
    リプロダクティブ・ヘルスという視点ではDVに関する今後の課題の中に性感染症や、望まない妊娠を入れていただいたことは大変うれしいわけですけれども、ここでの書き方はやや唐突というか、売買春が結果として性感染症や望まない妊娠の最大要因では実は必ずしもないわけでありまして、この4行の部分はちょっと違和感があるんですけれども。
    島野会長
    つなぐ文章がないという感じですか。
    北村委員
    売買春によって生じる性感染症の問題というような、性感染症の大半は実は日常における異性間と言わず、同性間を含めた性行為や性行為に類似する行為の結果として起こるものであって、この辺りの扱いはどうなんでしょうか。
    島野会長
    売買春はこういったことを派生させることは間違いではないですね。
    北村委員
    売買春の結果としてこういう問題が起こることはありますが、もちろんそれだけではない。私などは、実は性感染症の問題も、きちんとした予防行動が取れない。もちろんこれは男女2人の両性の問題であることは言うまでもありませんけれども、我が国にあってはその多くが男性の非常に無責任な対応が原因しているという意味で、まさにDVだという思いを持っていますし、望まない妊娠などの問題についても両性の問題であることは言うまでもないが、しかし、我が国においては男性の問題、世界も実はhivエイズの問題などについてはこんな言い方をしています。今、3,400万から4,600万のhivエイズとともに生きている人々がいると言うんですけれども、世界は7割が男女間、10%が同性、これは男性同性愛ですけれども、5%は薬物と言われておりまして、男がいなかったら感染は広がらなかっただろうという言い方を国際機関はしているんです。
     これをどうDVと結び付けていくのかは別ですけれども、そういう意識が取り分け女性に対する暴力というような観点も含めて考える機会があると非常にいいなという思いで、この問題をとらえていたんです。
     売買春の一つの問題ではあるが、ここだけに収めるものではない。これは近親姦の問題でもあったり、性犯罪の問題でもあったりするわけでしょうから。
    島野会長
    今の北村委員の御意見について、御意見ございませんか。
    大津委員
    ただ、先ほどの性感染症の問題は、例えば売買春において特に女性たちが受け身である。自分がそのことに対してノーと言えないというところにおかれるhiv、それから性感染症に侵されるということが多いと思うんです。地位的に低いところにおかれている、物として、商品として売買される以上は、女性たちがノーと言えない。売買春における女性たちの多くはこういう被害を受けやすいということがあるとするならば、やはりそこに問題があるのではないかと思います。
    島野会長
    北村委員の御意見は、もっとこれを売買春の場面だけに限定せずに訴えたいお考えなんですね。だけど、ここで4行書かれていることを削除した方がいいという御意見ではないんですね。
    北村委員
    例えば、連携して予防のための施策を実施しているのは、売買春が行われていることを前提として売買春というか、売る側に関わる人たちに対する啓発という話も含めているということなんですか。確かに、タイなどはこれによって今またhivエイズが増え始めているんですけれども、海外の事例としては急激にhivの拡大を抑えたということがあるんですけれども。
    原会長代理
    10年ぐらい前にですね。
    北村委員
    コンドームを売る側なのか、あるいは買う側も含めて徹底的に使用することを教育することで、急激な勢いで減少させたという事例はあるんです。
    原会長代理
    そのときは、私が売る側だとすると、「私はhivをもっています」とか、「エイズを発症しています」と言って、「それでもあなたは私を買いますか、それならばコンドームを付けてください」とか、タイではそういうこともしていたんですね。
    瀬地山委員
    少数意見であることを前提にして申し上げますが、この最初の1文は性労働論の観点から言うとちょっと違うかなというふうにやはり思います。売買春一般がすべて女性の尊厳を傷つける、あるいはその人権を軽視するという点には少し賛成しかねます。
     逆に、そのために警察の外側に現実にブラックマーケットが存在することとなり、そこで働く人たちの安全を実際には暴力団が守ってくれるという構造に現在なってしまっているわけです。その問題も考えるときに、今の売春を全部、人権を軽視してという形で論じるのは不可能なのではないかと思います。売買春がいいと言いたいのでは決してありませんけれども。
    島野会長
    こういう女性の性を商品化し云々という書き出しと、売春防止法は何を禁止している。その中で、その違反行為については処罰がある。あるいは児童買春ポルノ防止法では何を禁止している。その中の違反行為についてはこういう刑罰が科せられるというふうに、まずはその法規制を打ち出すというのはどうでしょうか。違法行為だということは、そういう規制法によって明確に人々に伝えることができると思うんです。
     瀬地山委員のお考えだと、そういう法律はあります。しかし、ブラックマーケットもこれあり、またこれによるほか収入が得られない。あるいは高い収入が得られないので、自らの意思で選んで売春を行う女性もいることを全面否定するような書き出しはまずいとおっしゃりたいんですか。
     だけど、法律で禁止されていることを書くと、そういう見解は一つの見解であるということがわかりますよね。
    瀬地山委員
    もちろん売春防止法では単純売春は可罰的違法性はないとしているわけで、それはその次の売買春一般のところにも書いてありますので、その意味は含まれているというふうに取れるかもしれませんけれども。
    島野会長
    住田委員はどのようにお考えですか。総論の持っていき方です。
    住田委員
    大学で教えるときに、売春防止法と児童買春の法律を罰則あるなしも含めて並べまして、今、日本の法規制はこうなっているという形で説明するんですね。それに対しては、若い学生でも、違和感がない。若い人だからもっと自由なことを言うのかなと思いましたら意外とそうではなかった。率直に言って驚きでした。
     ですから、今の法律の規制がどうなっているかということをまずきちんと認識していただくことから始まって、それに対する批判とか、考え方とか、世の中の見方というのは、これから国民の意見を聞きながら変わっていくものだと思いますが、現状をきちんともう一遍ここで書き切る。特に売買春は問題ないという方も、児童買春については合意があろうがなかろうが絶対に認めておられないわけですから、そういうことを含めて売買春の法規制や位置づけをすべて書いていただくことは、この専門調査会としてのスタンスをきちんと打ち出すということにもなるんじゃないかという気がしました。
    島野会長
    今の住田委員の御意見について、皆様御異論はなしですか。
     では、そのように考えて、少し修文をいたしましょう。関係省庁、総論のところはいかがですか。
     それでは、次に(1)の「売買春一般」につきまして御意見をお願いいたします。
    林委員
    管理売春という言葉が出てきますが、狭い意味での管理売春ですと、売春防止法12条の売春をさせる業のことを指すと思うんですけれども、実際の検挙件数を見ると管理売春というのはそれほど数は多くなくて、勧誘とか周旋とか場所提供です。私たちも管理売春で告訴状を持っていくと警察から、立件しにくいから場所提供に変えてくださいと言われたことが何回かあるんですね。
     だから、書いた方が別に12条についての特に重点的に取締りをしているという趣旨ではないのだとすると、ここは売春による搾取行為を中心に取り締まっているということになるんじゃないかと思います。
    原会長代理
    私は法律の用語はよくわからないけれども、もう少ししっかり売買春一般について書く必要があるのではないでしょうか。今のところ児童買春の文章の方が長くて、売買春一般の文章が短いので、バランスを考えるというのも今後の課題だと思いました。
     それから、先ほど北村委員がおっしゃった性感染症の問題なんですが、ここにちょっと表現を変えて入れるとすれば、やはり性犯罪のところにも性感染症の問題をどこかで入るようにしてバランスを取るのが1つなのか。
     もう一つは、いわゆる女性の健康の権利を侵すことがたくさん起こっているわけですね。これは女性に対する暴力であるとすれば、そういうものは今までの項目には含まれていなかったけれども、やはりそういうふうな意味の項目を1つ立てて、北村委員がおっしゃるような趣旨もそこでカバーして入れるようにすることはいかがでしょうか。
     それは法律という形にすぐ持っていけるようなものではないかもしれないけれども、そういうものがなかなか意識に上がってこないんですね。環境問題というと、人はわっと集まるし、若い方も集まるんです。「uncedプラス10」の環境に関するヨハネスブルグのngo会議のときは、若い日本の男女がngoで大勢いらしていました。でも、健康のことは余り人が集まらないんです。
     片や健康ブームというのがこれだけ今、日本の社会の中であるのに、このような大事なことについては男の人も女の人も余り関心がないことがとても不思議なんです。これも検討事項となるのではないでしょうか。
    島野会長
    女性の健康を侵害する結果をもたらす数々の暴力について、何か項目を立てて明確に主張しておくと。
    原会長代理
    ptsdとかその他のことも含めて、性感染症もということです。
    大津委員
    売買春一般でいわゆる買う側の男性たちのことは一言も書かれていない。売春防止法の中では、売ってはならない、買ってはならないというふうに書かれていると思うんですけれども、買う男性たちのことに関してはここでは余り取り上げられていないんですが。
    島野会長
    それも含めて総論にということで、禁止されているわけですから。
     非常に熱心な御議論が続いております。そこで、先ほど申し上げましたように、今日の議論は資料1の2の(1)の「売買春一般」まで中途で終わったということにいたします。事務局には本日の議事を踏まえて、資料1の修文をお願いいたします。
     なお、次回の会合ではセクシュアル・ハラスメントとストーカー行為等の課題について、検討ということになっておりましたが、今の「2.売買春」の(1)からもう一度御検討をお願いいたします。
     次に、資料6をごらんください。事務局に第23回会合の議事録案をまとめていただきましたが、これにつきましてはこのとおり決定し、内閣府のホームページ等で公開することとしてよろしいでしょうか。

    (異議なし)

     ありがとうございます。それでは、第23回会合の議事録につきましては速やかに公開することにいたします。
     なお、次回の専門調査会は来年1月16日金曜日に開催する予定としております。
     次に、誠に残念な御報告でございますけれども、若林委員が本日の会合を最後に、御都合により退任されることになりました。
     そこで、若林委員から一言ごあいさつをいただければと存じます。
    若林委員
    最後に貴重なお時間を割いていただいて、何か言うようにという御配慮いただきまして感謝いたします。
     大変、諸般の事情からわがままを申しましたが、快く局長に御承認いただきまして辞任することになりました。
     私は、これまでに貴重な御議論や資料をちょうだいして得るものが大変多く、この利益を放棄することを大変心残りに思います。そこで、最後にちょっと言い残したことを言わせていただきたいと思います。
     先ほどの近親姦のことですが、これは被害者を児童に限るという発想で何らかの具体的な施策が取れないかと考えます。児童虐待の視点からこの問題を取り上げることが現実的であり、かつ重要なことではないかということを付け加えます。
     それから、これまでに児童についていろいろな場面で取り上げていただきまして、関係省庁の御報告なども伺っている中での感想ですが、日本は子どもの権利条約を批准しましたが、関係法令の見直しが極めて遅れていると申しますか、具体的に動いておりません。是非法務省におかれてはその点を努力していただきたいということです。その中で特に気になりますのは、権利条約は、あらゆる行政手続、あらゆる司法手続において、子どもを単なる保護の対象ではなくて権利の主体として位置づける。そういった意味から意見表明権を認めていると受け取ることができますので、その点は単なる配慮では現実に動かないんです。ですから、具体的にそのことが徹底するような手立てを目に見える形でしていただけないものだろうかと思います。
     これまで意見表明権については、子どもの意見を尊重する、子どもにそういう機会を与えるべきだという視点から理解されていますが、その前提としては、あらゆる行政手続、あらゆる司法手続で、当該子どもが置かれている客観的状況を子どもに伝える。それを正確に伝え、理解させた上で子どもの意見を聞く。その視点がこれまでの議論では落ちている、弱いと思いますから、その点は是非とも関係省庁あるいはこれからの議論でよろしくお願いしたいと思います。
     今日の案もいろいろなところで配慮するというふうになっておりますが、その点は配慮するというのがいかに無力かということを最後に言わせていただきます。大変いろいろ勉強させていただいて心から感謝しております。今後とも、専門調査会で十分な意見を表明していただきますようにお願いして終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
    島野会長
    若林委員、どうもありがとうございました。今日の御意見、それから今までに承った御意見を今後の専門調査会の活動に生かしていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
     それでは、これで女性に対する暴力に関する専門調査会の第24回会合を終わります。本日は、どうもありがとうございました。