男女共同参画社会の将来像検討会(第2回)議事要旨

  • 日時: 平成15年9月26日(金) 16:00~18:00
  • 場所: 内閣府5階特別会議室

(出席者)

座長   本田 和子
お茶の水女子大学長
委員   阿部 正浩
獨協大学経済学部助教授
 同   江原 由美子
東京都立大学人文学部教授
 同   大石 亜希子
国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部第二室長
 同   田中 早苗
弁護士
 同   南 砂
読売新聞東京本社編集局解説部次長
 同   宮本 みち子
千葉大学教育学部教授
 同   山下 仁
社団法人農村生活総合研究センター研究員
 同   山田 昌弘
東京学芸大学教育学部助教授

(報告者)

森本 惠美
逗子幼稚園・第二逗子幼稚園理事長・園長
河合 和
財団法人シニアルネサンス財団事務局長

(事務局)

名取 はにわ
内閣府男女共同参画局長
土肥原 洋
内閣府大臣官房審議官(男女共同参画局担当)
山崎 日出男
内閣府男女共同参画局総務課長
竹内 大二
内閣府男女共同参画局企画官

(議事次第)

  1. 開会
  2. 議題
    • (1)家庭の将来について
      • <1>男女共同参画社会の将来を考える主な指標について(追加)
      • <2>子どもの視点からの男女共同参画社会について
        報告者 森本 惠美 逗子幼稚園・第二逗子幼稚園理事長・園長
      • <3>高齢者の視点からの男女共同参画社会について
        報告者 河合 和 財団法人シニアルネサンス財団事務局長
    • (2)アンケートについて
    • (3)その他
  3. 閉会

(配布資料)

資料1
男女共同参画社会の将来を考える主な指標について(追加)
資料2
子どもの視点からの男女共同参画社会について(森本惠美氏報告資料)
資料3
高齢者の視点からの男女共同参画社会について(河合和氏報告資料)
資料4
アンケートについて
資料5
男女共同参画社会の将来像検討会(第1回)議事要旨

(概要)

○事務局の人事異動に伴い、名取内閣府男女共同参画局長より自己紹介があった。

「男女共同参画社会の将来像考える主な指標について(追加)」(資料1)に基づき、事務局から説明が行われた。

(山田委員)
家庭のデータを読む際には、家族構成の変化を念頭に置くべきである。例えば、一人暮らしが増えているので、家族団らんの役割が減少するのは当然である。データの解釈にお いては、その背景を把握する必要がある。
(大石委員)
独身者は、男女どちらも結婚相手に家事・育児能力を期待しているが、お互いにすれ違っているように感じる。

○森本園長より、「子どもの視点からの男女共同参画社会について」(資料2)に基づき、報告が行われた後、質疑応答が行われた。

(森本園長)
両親は子どもにとって男女の身近なモデルである。
 保護者の年齢は20代から40代で、30代が最も多いが、最近、特に感じるのは、楽をすることになれてしまい、面倒なことや手間暇をかけることをしない人が増えてきたというこ とである。例えば、徒歩で通園できる距離にいても、楽だから、あるいは面倒だからという理由で、通園バスを利用したいと望む人が増えている。
 食生活も変化してきており、手作りするのが億劫という人が増えてきている。ひじきの煮物を給食で初めて食べるという子どももいるし、ハンバーグは作るものではなく、お店で 買ってくるものと思っている子どももいる。豊かに見えて、実は狭い世界でしか生活していないと感じる。
 就労している女性の方が育児に対して悩みが少ないのは、保育所など、相談したいときにできるいろいろなサポートがあるからで、幼稚園入園までそういう機会がなく、子どもと接 する時間が長い専業主婦の方が不安感が強いのは当然である。
 情報をうまくキャッチできる人と、子どもとだけ向き合ってしまう人という二極化が進んでいると思う。
 当園の母親たちからは、それほど夫の育児支援に対する強い不満は聞こえてこない。夫が家計を支えているのは事実であり、育児にそれほど関わることができないのは仕方が ないと考えているようだ。
 家庭では、まず、人として一人前になることを育て、それから男性として、女性としての在り方を考えるべきである。
 今は、自分だけの狭い価値観で生活していくことも可能となっているが、親の偏った価値観を子どもに伝えるのは良いことなのか。自分はどのような家庭を築くのか、どのような生 き方をするのかを明確にすることが必要。
 親子の信頼関係も夫婦の信頼関係も希薄だと子どもが不安定になる。信頼関係をつくることができる家庭が望まれる。幼児は絶対的信頼関係の中で育つ必要があるので、母、 父との信頼関係がつくることができる社会にしていくべきだ。
 自ら選択して専業主婦をしているという人もおり、嫌々専業主婦をしている人だけではない。また、当園には、自分で子育てをし、子どもが大きくなったら働きたいという人が多い。1 割程度は自分の生きがいということで、パートで働いている人もいる。
(南委員)
夫婦関係が良くない場合、子どもが不安定になると言われるが、悪い夫婦関係を続けるよりは離婚した方が良いのかどうか、判断は簡単ではないと思うがお考えがあれば。絶対 的信頼関係についてももう少し御説明いただきたい。
(森本園長)
離婚は個人の価値観の問題であるので一概には言えない。当園にも離婚し再婚したという人が1割くらいはいる。毎日小競り合いをし、子どもを連れて離婚したが、今は幸せな再 婚をしているという人もいる。
 絶対的信頼関係については、人を信頼するための基本的な力であり、子どもが求めている間は与えるということだと思う。当園では、預かり保育を行っている。たいていの子ども は何の問題もなく過ごすことが多い。特殊事例かもしれないが、週3日間フルタイムで働いている3歳児の母親がおり、預かり保育を17時30分までしている。先日の行事で他の 子どもたちは母親と向き合ってダンスを踊ることができたが、その子どもだけ母親の足にまとわりつき踊れなかった。本人は預かり保育をされることを望んでいないので、他の子ど もたちは親が迎えに来て帰るのに、自分だけ残されるので不安になることが多いようだ。普段の生活の中でいかに信頼関係を築いていくかが重要だ。
(江原委員)
お話の中で父親の姿があまり見えてこなかったが。
(森本園長)
以前はそうでもなかったが、最近は入園式・卒園式にはおしなべて両親が揃って来る。それ以上は母親の仕事だと言う父親もいるが、保育参加を実施すると、父親の希望も大変 多い。父親が来たときには仕事の一端を子どもたちに知らせてもらうようにしている。
 常々のことはやはり母親が多いが、要所要所では父親も参加してもらうようにしている。
(山田委員)
昔の方がはるかに父親のサポートは少なかったと思うが。
(森本園長)
母親の中には、時間があるのだからもっと育児に関わって欲しいという人もいるが、父親としては、育児をしたいが時間的に無理という場合もある。母親たちが求めているのは精 神的サポートである。
(山田委員)
育児に対する女性の意識が変化し、要求水準が上がったのではないかと思う。
(宮本委員)
先ほどの1人だけダンスを踊れなかった子どもの事例については、保育所は全員が17時、18時であるのが当たり前だが、幼稚園は他の子どもが早く帰る中、1人だけ遅くなる のでという理由が考えられる。
(森本園長)
よく量より質と言われるが、時間よりも日々の子どもへの接し方で信頼関係を築くことが大事であると思う。
 ただし、個人差もあるが乳幼児期の子どもには圧倒的に量を求める時期もある。

○河合事務局長より、「高齢者の視点からの男女共同参画社会について」(資料3)に基づき、報告が行われた。

(河合事務局長)
当財団は、内閣府国民生活局の所管であり、平成4年の設立である。約2,000名のシニアライフアドバイザーが電話相談などにあたっており、高齢者がどのようなことに悩んで いるか、いろいろなデータが集まってくる。それら悩みを集約したところ中高年男性が社会参加できないことによって種々な問題を引き起こしていることが分かった。その問題は、結 局は男女共同参画社会を実現することによって解決することが分かり、当財団と男女共同参画局の目的が同じであることを理解した。
 働きたくても働き口がない、ボランティア活動をしたいという気持ちはあってもなかなかできないというのが高齢者の現状である。
 1年ほど前、ある県の老人クラブの大会に行ったが、参加者1,200名はほとんど男性であった。各地域の役員の集まりであったとのことだが、会員の約6割は女性であれば、女性がもっと役員に登用されるべきだ。男性は縦の社会を作ってそこに収まることに心地よさを感じる傾向があるため男女共同参画とは逆をいっている。これでは社会参加と生きが い探しを促進しようとする老人クラブの設立趣旨が生かされていない。
 2020年には、高齢者率(65歳以上)は27.8%という予想もあり、支え合う社会ができないと豊かな社会にはならない。男性と女性が肩肘を張っていては支え合いはできない。
 年齢差別をなくせば、定年制がなくなる。定年制がなくなれば年功序列がなくなり、職能で評価されるようになる。そうなれば男女の差別はなくなる。年齢制限の問題は高齢者問 題であるとともに、男女共同参画の問題でもある。
 今は、10%が要介護で、80%は元気である。残りの10%がどちらに向かうのかが課題であり、要介護に向かうような社会にしてはいけない。そのためには、高齢者が地域に溶 け込み社会活動に参加できるようにする必要がある。
 社会を継続性あるものにするためには個々人が自立をし、それぞれの役割を認識しつつ支え合うことが必要である。これを実現するために定年後男性の地域社会への参加が求 められる。
 高齢者の70%は社会貢献を希望している。この内、実行しているのは30%で、40%にあたる約1,000万人の意思は無駄になっている。この方々が週2時間、年間100時間 社会貢献活動すれば、1時間1,000円で単純に計算して1兆円に相当する活動となる。意思の無駄はこれだけの損失でもある。
 現在、老人医療費は年間12兆円であるが、高齢者が楽しく社会参加でき、自分の役割があれば、病院に行く回数も減るのではないか。10回の内2回減るだけでも、かなりの老 人医療費削減につながる。
 いわゆる熟年離婚について、電話相談では妻からの相談が多い。夫が定年を迎える3年前くらいから相談が増えてくるようだ。
 熟年離婚が増えるのは、夫側の認識が足りないからであろう。妻は、夫が働いている間は1週間の内、土・日曜日の2日間だから尽くせるが、毎日はできないと思っている。一 方、夫は7日間でも変わらず尽くしてもらえると思っている。この認識の違いが定年後生活を考える妻には重荷となり、夫が気が付かない内に離婚への道を辿り始める。
 地域社会において妻は大先輩である。夫は定年するまでほとんど仕事一筋で、地域社会との関わりがない。すなわち生活というものをしてきていないのがほとんどである。しかし 定年後は、イヤでもこの両方との関わりを持たなければならない。ゆえに先輩に教えを請う必要がある。
 厚生労働省老健局で「介護予防・地域支え合い事業」を実施しているが、介護・介護予防に関する活動には、力や技量の面で男性ならではの能力が大いに必要となる。こういっ たところこそ定年退職した男性の出番ではないかと考えるが、それが上手くいっていない。
 介護に男性が参加するようになったら真の意味での男女共同参画社会であると思うが、男性にどのように介護を経験させるかが課題である。最初は男性が参加しやすいボラン ティア活動を用意し、気が付いたら介護をしていたという方法が良いかもしれない。

○事務局より、「アンケートについて」(資料4)に基づき、説明が行われ、議論が行われた。

(山下委員)
対象者が200~300人では少なすぎて属性分析ができないのではないか。
(竹内企画官)
アンケート調査は、本検討会における検討を補強する役割として実施したい。
(宮本委員)
審議会等委員となると比較的年齢の高い層が多くなると思うので、アンケート結果を使う際には、そこを意識した方が良いと思う。
(山田委員)
大きな分野として教育を除いているのは何故か。
(竹内企画官)
教育は男女共同参画を実現するためのツールだと考えているので、姿としてどうなるかという問いは想定していない。
(江原委員)
どのような教育を望むかということは聞く必要があるのではないか。
(大石委員)
このようなアンケート調査を実施すると、結果は現在の動向に流される傾向があるが、一方で変わるときはあっという間に変わっていく。現在、問題に直面している20代の人々等 に対するヒアリング等、質的な調査を行い、アンケートを補完する必要がある。
(山下委員)
「農山漁村における男女共同参画」は、(2)の分野別に入れたほうが良い。
(江原委員)
前回のデルファイ調査で予測と現状が大きくずれたところがあるが、なぜ、ずれてしまったのかの要因分析が必要ではないか。
(阿部委員)
このようなアンケートでの結果は20年後に全く違っているという指摘を受けかねない。外部要因がこう変わった場合、どうなるかといった問いにする必要がある。