男女共同参画会議(第38回)議事録

【開催要領】

  1. 開催日時: 平成23年2月15日(火) 17:50~18:13
  2. 場所: 総理大臣官邸4階大会議室
  3. 出席議員
    議長
    枝野 幸男 内閣官房長官
    議員
    与謝野 馨 内閣府特命担当大臣(男女共同参画)
    江田 五月 法務大臣
    細川 律夫 厚生労働大臣(代理 小宮山 洋子 厚生労働副大臣)
    鹿野 道彦 農林水産大臣
    中野 寛成 国家公安委員会委員長
    家本 賢太郎 株式会社クララオンライン代表取締役社長
    岩田 喜美枝 株式会社資生堂代表取締役執行役員副社長
    大塚 陸毅 東日本旅客鉄道株式会社取締役会長
    岡本 直美 日本労働組合総連合会会長代行
    鹿嶋 敬 実践女子大学教授
    加藤 さゆり 前全国地域婦人団体連絡協議会事務局長
    佐々木 常夫 株式会社東レ経営研究所特別顧問
    辻村 みよ子 東北大学大学院教授
    林 文子 横浜市長
    宮本 太郎 北海道大学大学院教授
    山田 昌弘 中央大学教授
    出席者
    蓮 舫 内閣府特命担当大臣(行政刷新)
    山花 郁夫 外務大臣政務官

【議事次第】

  1. 開会
  2. 議題
    • 今後重点的に取り組むべき課題と専門調査会の設置について
  3. 閉会
枝野内閣官房長官
ただいまから、男女共同参画会議を開催いたします。
  本日は、国会日程の都合で若干開会が遅れましたことをおわび申し上げます。また同時に、予定どおりでしたらば、総理も出席をする予定で楽しみにしておりましたが、遅れた結果、外交日程が入っておりまして、出席できなくなったことを大変申し訳ないということで、皆さんによろしくということでございますので、お伝えさせていただきます。

(報道関係者退室)

枝野内閣官房長官
それでは、議事に入ります。議事進行は与謝野大臣にお願いいたします。
与謝野男女共同参画担当大臣
昨年12月に第3次男女共同参画基本計画を閣議決定いたしました。この基本計画を実効性をもって推進していくため、男女共同参画会議を活用しながら、重要な課題について議論を深め、取組を進めていきたいと思います。
 それでは、今後、男女共同参画会議において重点的に取り組むべき課題と専門調査会の設置について御議論いただきたいと考えております。
 まずは、重要課題について、有識者議員から資料1のとおり御意見をいただいておりますので、鹿嶋議員から御説明をお願い申し上げます。
鹿嶋議員
鹿嶋でございます。資料1に基づき、「検討すべき重点項目」についての考えを説明をいたします。
 まず「女性活躍推進法」です。
 今、雇用者が6,000万人ぐらいいる中で、女性が4割を占めておりますが、その処遇状況といいますと、3、4ページをお開きいただきたいと思います。
 3ページを見ますと、まだ管理職なども欧米先進国などに比べると極めて少なく、10.6%です。
 4ページですが、民間の課長相当職に絞りますと6.5%という状況です。
 6ページを開けてください。働く女性の約6割が第一子を出産すると、それを契機に退職しているという現実があります。その下のグリーンで縁取った箱の中に書いてありますが、女性の就業継続率は現在38%です。女性の育児休業取得率は9割ぐらいですが、実際にはそれを取得せずに辞めてしまう女性が多いということです。
 ここには書いておりませんが、高学歴女性の労働力率はM字型カーブを描いていません。どちらかというと右肩下がりでキリンの首のような形、キリン型といいますか、そういう傾向がございまして、一旦家庭に入ってしまうとなかなか労働市場には出てきません。ここ数年は改善されつつあるとはいえ、そういう傾向があります。
 ということで、もう一度6ページの就業希望者ですが、20代後半から40代前半の女性の184万人が就業したいと思っています。こう考えますと、保育所待機児童が年間2~3万人おり、それは10万人分の保育所を作れば解決すると思われがちですが、潜在的には100万人単位のニーズがある可能性があります。言葉を変えれば保育所の供給が需要を喚起する、つまり作れば作るほど需要が顕在化する可能性があるわけで、それくらい女性の就業ニーズは高いということです。
 7ページですが、生産年齢人口は1995年をピークに減少しています。2011年時点でそれは日本の人口の63.8%ですが、2030年に入りますと5割台になってきます。そのような状況下では、労働市場の中で女性をいかに活用していくかが、この国にとって重要な課題だと思っています。「眠れる資源」と言うと女性に叱られるかもしれませんが、私はそういう資源を大切にする、たとえば均等処遇を徹底していくことなどがこれからの日本にとって大事なことなのだろうと思います。
 男女共同参画は人権という視点も大事ですが、女性の活躍という言葉に象徴されるような、政治経済の分野の中でいかに女性を位置づけていくかということも、男女共同参画を地に足が生えた状況にするには大切なことだと思っております。
 続いての重点項目として、「ポジティブ・アクションの推進」があります。
 いま述べたような、女性が活躍する時代にするにはポジティブ・アクションが欠かせません、政府目標としては、2020年までに指導的地位に占める女性の割合を3割にするというのが公約です。それを受けて第3次基本計画では、政治の分野では女性の国会議員の候補者のクオータ制の導入の検討や、男女共同参画を推進する企業を公共調達などで評価するインセンティブの付与、さらには民間企業には女性登用の目標と期間を決めて努力していただくゴール・アンド・タイムテーブル方式の推進を盛り込んでいます。これについても今後どう推進していくかが大きな課題になります。
 次は「女性に対する暴力の根絶」です。
 8ページをご覧ください。配偶者からの暴力相談件数は年々増えてきておりまして、見出しにありますように7年間で倍増しています。直近の数字、平成21年度で7.2万件。これはほとんど女性からの相談ですが、706件、0.9%ほど男性からの相談もございます。
 そしてもっと深刻なのは、その下の赤で囲ってあるところ。「どこ(だれ)にも相談しなかった」人が62.6%、要するに相談したくてもできなかったという人たちがいるということです。
 以上述べました女性活躍推進法、ポジティブ・アクションの推進、女性に対する暴力の根絶を大きな柱、重点項目にして、それが基本計画の中で本当に実行されているのか、成果目標は達成されるのかなど、進捗状況を継続的に監視する必要があります。監視機能の強化については、基本計画の中でも触れられている点です。
 第3次基本計画は実効性あるものにしたいと、総理を始め、今まで閣僚の皆さんからも言われました。私どもの答申の内容もかなり踏み込んだものになり、それを受けて閣議決定していただいた計画も、大変いいものができていると思いますし、また多くの女性たちからそのような評価をいただいております。それはとりもなおさず、これを契機に日本を大きく変えたいという願望の現れだと思っております。今、日本は少子化問題とか、生活困難とか、様々な問題を抱えておりますが、それを男女共同参画というキーワードでくくってみると、いろんな問題点や解決策が見えてくると私は確信しております。むろん私ども民間の参画会議の議員も頑張りたいと思いますが、閣僚の皆さんも是非よろしくお願いしたいと思います。
 どうぞよろしくお願いします。
与謝野男女共同参画担当大臣
どうもありがとうございました。この御意見を踏まえ、今後の進め方や専門調査会の設置について、末松副大臣から説明を願います。
末松内閣府副大臣
ただいまの鹿嶋議員からの御提言を踏まえまして、内閣府として案を作成いたしました。資料2をお開きいただきたいと思います。
 2枚目の「参考」とあるところに、現在の4つの専門調査会が書いてありますけれども、これを資料2の1ページ目の3つの専門調査会にということです。
 1番目に、「基本問題・影響調査専門調査会」で、幅広い分野を対象に基本的な問題等について審議をする。2番目に「女性に対する暴力に関する専門調査会」。これは重要な課題なので、引き続き専門調査会で調査をする。3番目に「監視専門調査会」。これは実施状況等、フォローアップをしっかりやっていく。
 この3つの調査会を設置して進めてはいかがかということを御提案申し上げたいと思います。
与謝野男女共同参画担当大臣
それでは、御意見のある方に御発言をいただきたいと思います。
 辻村議員、お願いします。
辻村議員
東北大学の辻村と申します。よろしくお願いいたします。
 私は憲法学、ジェンダー法学を専攻いたしておりますので、法律学の観点から、例えばポジティブ・アクションの合憲性とか、そういった研究をこれまでしてまいりました。我が国では、とりわけ政治、経済と学術分野における男女共同参画が遅れておりますので、ここでポジティブ・アクションという方策を有効、適切に用いることが必要だと考えます。
 実際には、誤解もありまして、ポジティブ・アクションといいますと、一般に強制的な議席割当制のようなクオータ制を考えて、憲法違反だとか、そういう議論がありますが、世界的な例を調査いたしました結果、当然に、憲法違反にならないポジティブ・アクション、クオータ制もございます。すなわち、厳格なクオータ制などと、緩やかな両立支援、インセンティブの付与、その他のたくさんの措置を有効、適切に組み合わせながら、進めていく必要があると思っております。
 とくに、政治分野につきましては、どうしても政治的なイニシアティブが必要でございまして、それなくしては何も進みませんので、閣僚の皆様方にもよろしくお願い申し上げたいと思います。また、専門調査会でも、理論的にこの点について検討を加える必要があると考えております。
与謝野男女共同参画担当大臣
大塚議員、どうぞ。
大塚議員
初めて参加させていただきますJR東日本の大塚でございます。よろしくお願いいたします。
 当社は極めて典型的な男性社会の会社でございました。実は、深夜業が女性はできないという制限が以前はありましたが、1999年の労働基準法の改正以来、女性の採用が非常に多くなりまして、今では、例えば山手線の車掌は3分の1が女性であります。
 それと、やはり育児といいますか、保育ということを考えたときに、駅に保育園があるというのは非常に便利ではないかということで、エキナカ保育というのをずっと進めてきております。現在40か所ほどございますけれども、これを近々60か所、さらに100か所ぐらいの保育園を設置したいと考えております。
 こういう形で、できるだけ会社としても努力をしてまいりたいと思っておりますが、1つは、現在まだどうしてもある種の規制が残っているところがございます。こういったことにつきましても、是非御議論をいただきたいと思います。
 それから、一番大切なことは、一方的に押し付けるというよりも、やはりそれぞれの企業が自主的に取り組んでいく方向にいかに持っていくかということが、実は一番有効な方法だと思います。これまでも色々なところで既に男女共同参画のことについては提言等が出ております。経団連でも出しておりますし、同友会でも出ております。そうしたものをやれるものから着実に、できればスピーディーに具体化していくことが一番大事だと思いますし、その際に何が隘路になっているのか、なぜできないのかという課題を分析して、そしてこうすればできるという方向に持っていくことが、私は非常に大事なことではないかと思っております。
 ひとつよろしくお願いいたします。
与謝野男女共同参画担当大臣
宮本議員、お願いします。
宮本議員
北海道大学の宮本でございます。政治学の立場から、社会保障等を研究している者ですけれども、こうした観点からしましても、日本社会の中で男女共同参画というのが経済成長戦略の上でも、あるいは社会保障改革の上でも、もはや単なるお飾りではなくて、課題の中心、ど真ん中にあるんだということがだんだん見えてきているように思います。
 1つ象徴的な議論としては、ゴールドマン・サックス社のレポートが、男女共同参画型経済といいますか、ウーマノミクスこそ日本経済成長のカギであるということを論じていることなども想起されるかと思います。
 併せて、男女共同参画が論じられる条件というのは、1999年に男女共同参画社会基本法ができて以来、大きく変わってきていることも感じます。これまでの男性正社員の安定した雇用があって、そしてそこに家族の扶養が委ねられていた時代が終わってしまった。男性の中でも非正規の社員が増え、彼らは結婚し、家族をつくることも難しくなってきているわけです。こうした中で男女共同参画というのは、単に家族の呪縛から女性を解き放つということにとどまらず、若い男女が結婚し、家族をつくり、つながり合い、支え合いながら、同時に共に社会に参画をしていく、そのことを丸ごと支えるということが必要であり、男女共同参画の目指す課題というのは、非常に重層的、多層的になってきているんだろうと思います。
 ある講演会で演者が、参加している大学生の男の子たちに、夫婦同姓、別姓をどう思うかと問うた場面に居合わせたことがございます。男の子たちの多くが、やはり夫婦同姓がいいと手を挙げたんです。そら見たことかと演者はしかりつけたわけなんですけれども、その中で男の子が手を挙げて、そうではないんだと。こういう社会の中で、自分の姓を変えてもいい、相手と同じ姓でありたいんだと言ったわけであります。こうした気分をすくい取るということが非常に大切ではないかとも思います。
 男女共同参画社会には、そういう意味では、強い経済を支えると同時に、優しい社会をもつくっていく。この2つの課題が求められているのかなと思います。
 以上でございます。
与謝野男女共同参画担当大臣
江田大臣、どうぞ。
江田法務大臣
どうもありがとうございます。実は、この男女共同参画社会基本法制定のときに、私は参議院の担当の理事でございまして、これは参議院先議で始まった法律で、前文をつくるのにいろいろ苦労して、21世紀の最重要課題だということで法律をつくった当時のことを思い出しておりまして、もう21世紀に入ってかなり経ちますが、まだこういう状況ということで、是非ひとつこの専門調査会をつくって、お力をお借りできればと思います。
 菅総理大臣が先日の施政方針演説の中で、女性の社会参加、さらに男性の家庭参加ということも言っておりまして、重要な問題意識を持っておりますので、是非お力をお貸しください。我々も頑張ります。
与謝野男女共同参画担当大臣
佐々木先生、何かありますか。
佐々木議員
今回初めて参加させていただきました佐々木です。私は男女共同参画というと、女性にとっ ての生きやすい社会をつくることのように聞こえますが、ビジネスマン生活を40年してきまして、現在も依然として男性にとっても住みにくい社会だと感じているんです。
 ですから、女性も男性も、健常者も障害者も、みんなが生きやすい社会をつくっていく必要があるんだろうと思っています。そんな気持ちでこの会議に臨みたいと思っています。
与謝野男女共同参画担当大臣
他にございますか。山田議員、どうぞ。
山田議員
引き続き議員を務めさせていただいております山田昌弘でございます。
 私は、本当に宮本先生と意見を同じくするんですけれども、男女共同参画が大きく進まなかったことが、もちろん多少は進んだんですが、日本社会、特に経済を停滞させた1つの原因ではないかと思っております。
 労働の面で女性を活躍させない慣行もしくは子育てしながら活躍できないという点も1つあります。加えて、私が今、注目しているのは需要の側面で、前々回の参画会議でも述べさせていただいたんですけれども、日本の男性の小遣いが世界で最低のランクにあるということで、それはなぜかというと、共働きが進んでいる国は男性も結構消費しているんだけれども、共働きが進んでいない日本社会ではなかなか消費が活発化されない。つまり、需要を上げるためには共働きをすることが一番いいと思います。私も先ほど総務省統計局でデータをいじっておりまして、共働きの方が持ち家率が高いというデータはちゃんと出ております。
 また、先ほど宮本先生がおっしゃったように、男だけが稼がなければならないという意識が結婚を少なくさせて、少子高齢化をもたらしていることの1つの原因だと思います。逆に言えば、それだけ伸びしろがあるわけで、男女共同参画を推し進めれば、労働力はどんどん増えて、いい労動力が参加する。そして需要不足が解消されて、消費が活発化する。そして少子高齢化も改善されるというように、男女共同参画を強力に推し進めることこそが、日本の経済社会を活性化させるものだと強く思っておりますので、是非よろしくお願いいたします。
与謝野男女共同参画担当大臣
他に御意見はございますか。それでは、次に進んでよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。それでは、いただいた御意見を踏まえながら、各専門調査会で議論を行っていくこととし、原案のとおり、3つの専門調査会を設置することに御異議はございませんか。

(「異議なし」と声あり)

与謝野男女共同参画担当大臣
それでは、専門調査会については、案のとおり設置することといたします。今後、速やかに専門調査会を開催し、精力的に検討を進めていただきたいと思います。
 第3次基本計画の推進など、男女共同参画がしっかりと進むよう、皆様方の御尽力を心よりお願い申し上げます。
 最後に枝野議長から、一言お願いを申し上げます。
枝野内閣官房長官
本日は時間もちょっとずれてしまいましたし、また若干短い時間になってしまったにもかかわらず大変有意義な議論をしていただきまして、本当にありがとうございます。
 若干、自己紹介的にアピールをさせていただきますと、90年代の半ばぐらいから男女共同参画政策をライフワークの1つにしてやらせていただいていて、多分男性議員でそういうのは本当に最初のころだろうと思っております。今に至る民主党の最初の一番小さな50人でスタートしたときの男女共同参画の責任者を務めさせていただきました。そういった意味では、この会の議長をさせていただくのは大変光栄に思っております。
 実は、今日総理が出席できればということでしたが、総理がおっしゃろうとしていたことを、私なりに解釈して申し上げれば、1つ、菅総理が「平成の開国」と言っておりますが、開国というのは、別に外国との関係で経済的に開国をする、いや、それは開国されているではないかという指摘もありますが、そういうことだけではなくて、むしろ精神的、社会的にいろんな意味で開いていこうということでもございまして、特に女性にとって開かれた社会をつくっていくということも含めた、広い意味での開国を進めていく必要があるということです。
 また、「最小不幸社会」を目指すということで総理はおっしゃっておられますが、まさに一人ひとりの幸せといいますか、どういったカップルで人生を過ごすのか、そのカップルの関係はどうあるのか、あるいはカップルではなく1人で生きていくのか、さまざまなことをそれぞれがみな自分の判断で選択をしていく。政治ができるのは、それぞれの判断の邪魔になる、妨害になるような不幸の種を取り除くことでございまして、男女共同参画を妨げる要素をいかに排除していくのかというところの視点というのは、重要な意味を持っているのではないか、そしてまた、安心して暮らせる社会のためにも男女共同参画を進めていかないといけないと。総理がおっしゃろうとしていたことを、私なりに解釈をして話をさせていただきました。
 いずれにしても、基本計画をいかに実効性あるものにしていくかということが重要でございます。私ども内閣の方もしっかりとやってまいりたいと思いますが、本日設置をいたしました専門調査会を始めとして、皆様方の今後ともの御協力をお願い申し上げて、本日の会議を終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
与謝野男女共同参画担当大臣
以上をもって、本会議を終了いたします。

(以上)