男女共同参画会議(第9回)議事録

  1. 開催日時:平成15年1月21日(火)17:30~18:20
  2. 場所:官邸大会議室
  3. 出席議員
     
    小泉 純一郎 内閣総理大臣
    議長
    福田 康夫 内閣官房長官
    議員
    片山 虎之助 総務大臣
    森山 眞弓 法務大臣
    川口 順子 外務大臣 (代理 矢野 哲朗 外務副大臣)
    坂口 力 厚生労働大臣
    大島 理森 農林水産大臣 (代理 太田 豊秋 農林水産副大臣)
    平沼 赳夫 経済産業大臣 (代理 西川 太一郎 経済産業副大臣)
    扇 千景 国土交通大臣
    鈴木 俊一 環境大臣 (代理 弘友 和夫 環境副大臣)
    石破 茂 防衛庁長官
    谷垣 禎一 国家公安委員会委員長
    岩男 壽美子 武蔵工業大学教授、慶応義塾大学名誉教授
    神田 道子 東洋大学長
    君和田 正夫 株式会社朝日新聞社専務取締役編集担当
    住田 裕子 弁護士
    橘木 俊詔 京都大学経済研究所教授
    林 誠子 日本労働組合総連合会副事務局長
    樋口 恵子 東京家政大学教授
    福原 義春 株式会社資生堂名誉会長
    古橋 源六郎 財団法人ソルト・サイエンス研究財団理事長
    山口 みつ子 財団法人市川房枝記念会常務理事
    (説明者)
    島野 穹子 女性に対する暴力に関する専門調査会長
    (説明者)
    大澤 眞理 影響調査専門調査会長

    (議事次第)

    1. 開会
    2. 議題
      • (1)「ライフスタイルの選択と税制・社会保障制度・雇用システム」について
      • (2)今後の進め方及び最近の男女共同参画社会の推進に関連する動きについて
    3. 閉会

    (配布資料)

    資料1
    「ライフスタイルの選択と税制・社会保障制度・雇用システム」に関する報告
    資料2
    年金改革の骨格に関する方向性と論点[PDF形式:604KB] 別ウインドウで開きます
    資料3
    女性に対する暴力に関する専門調査会について[PDF形式:59.7KB] 別ウインドウで開きます
    資料4
    男女共同参画基本計画と男女共同参画会議について[PDF形式:52.9KB] 別ウインドウで開きます
    資料5
    国の審議会等における女性委員の参画状況調べ[PDF形式:87.3KB] 別ウインドウで開きます
    資料6
    男女間の賃金格差問題に関する研究会報告[PDF形式:389KB] 別ウインドウで開きます
    資料7
    男女共同参画会議(第8回)議事録(案)

【議事内容】

内閣官房長官
ただいまから、第9回男女共同参画会議を開催いたします。
早速でありますが、総理からごあいさつをお願いいたします。
内閣総理大臣
今日は新年初めてですが、いつもありがとうございます。
この会議が設置されて早くも2年が経過しますが、男女共同参画に対する我が国社会の理解は確実に広がっていると思います。
また、女性の社会進出の機会が増大するとともに、家事や育児に対する男性の姿勢にも変化が生じるなど、男女共同参画社会の定着に向け、着実な進展が見られています。
しかし、この方向が進展する一方で、少子化問題、あるいは子供の教育やしつけに対する影響が指摘されています。家事、育児、介護といった家庭内の労働について、社会的にも経済的にも外での活動と同様に評価すべきであるという声もあります。
男女共同参画社会が進む陰で、手助けを必要とする家庭内の高齢者や子供を置き去りにすることはできないと思います。夫婦ともに社会に出ることの代償として、家事の省力化が優先されて、家庭のぬくもりが失われることに対する不安も少なくありません。
男女共同参画社会の実現に向けて、改革を一層推し進めることは当然であります。しかし、その改革は、世代や性別を超えて理解され、受け入れられるものでなければなりません。改革の「光と影」、男女共同参画社会の「光と影」の両面に目をやりながら、影の部分を克服するための議論を深めていくことが重要です。皆様におかれましては、男女共同参画社会の将来像について、多面的で、長期展望に立った活発な議論をお願いします。

(報道関係者退室)

内閣官房長官
どうもありがとうございました。
ただ今、総理からのお話の中に男女共同参画社会の将来像ということがございましたが、これについては、後ほど、また御議論いただきたいと思います。
引き続きまして、議員の任命についてお知らせをいたします。
任期満了に伴い、1月6日付で議員の任命がございましたが、新たに株式会社朝日新聞社専務取締役編集担当君和田正夫議員及び新潟県知事平山征夫議員が任命されましたので、お知らせをいたします。
平山議員は本日は所用によりまして、御欠席でございますが、君和田議員から一言ごあいさつをお願いいたします。
君和田議員
御紹介いただきました朝日新聞の君和田です。経済部記者を長い間やっておりました。そういった面からお手伝いすることができたら幸せだと思っております。
内閣官房長官
どうもありがとうございました。
それでは、早速でございますが、議事に入らせていただきます。初めに、影響調査専門調査会からの報告でございます。
昨年4月に中間報告について本会儀で御報告をいただいた後、国民からの意見募集を行いました。それらを踏まえまして、引き続き専門調査会で検討を行い、12月に「『ライフスタイルの選択と税制・社会保障制度・雇用システム』に関する報告」をまとめていただきました。それでは、専門調査会の大澤会長から御報告をいただきます。どうぞ。
君和田議員
大澤でございます。お手元に資料1としまして、冊子がございます。冊子を開けていただきますと、概要が別のホチキス止めになってございます。基本的には、この概要に基づいて御報告申し上げます。
極めてかいつまんで申しますと、この報告は、3つのことを提言しております。1つは、税制について、配偶者控除及び同特別控除の廃止・縮小。これが1点でございます。2点は、年金制度について、いわゆる第3号被保険者制度の見直しを提言してございます。3点目に、雇用システムについては、家族手当等の見直しを提言し、かつ働きに見合った処遇というものの望ましさについて、今後、検討を進めていくと結んでございます。
これで言ってしまえば終わりのようなのですが、もう少し御覧いただきますと、背景等でございます。冊子の真ん中にピンクの紙が入っていて、以下が図表になってございますが、図-1ページを御覧ください。これは同時出生集団、コーホートによって男性の実質賃金が年齢でどのように伸びるかということを見たわけでございます。
日本の男性労働者の賃金というのは、若いころから50代の前半にかけてかなり高い上り坂を描くということが従来言われておりましたが、コーホートによって、このように生涯の賃金プロファイルが寝てきていると。これが共働き世帯が多数になってきたことの背景でございます。
このようなことを背景にして、制度、慣行の見直しを行い、ライフスタイルの選択にできる限り中立性を確保していく観点から、諸制度の検討をいたしました。国民の皆様からいろいろと御意見をいただきまして、その中には、中立性確保は良いけれども、家族との結び付きの薄弱化を助長し、少子化傾向を促進するのではないかという御懸念の意見も見られました。
そこで、今回は、今の図表の図-5ページを御覧いただきますと、合計特殊出生率と育児期の30代の女性の労働力率の関係というのを掲示いたしました。御覧いただきますと、沖縄と東京は外れておりますが、おおむね右上がりの、したがいまして、育児期の女性の労働力率の高い県で出生率も高いというようなデータを補充いたしました。
中立性確保に伴う少子化対策、子育て支援策の必要性につきましては、いろいろと御指摘をいただきまして、これは子供を生み育てることにやさしい社会の転換に向けて、様々な配慮が必要だということを示しております。
そして、先ほど申しました3つの提言でございますが、税制については、中間報告の時点で既に固まっていた提言でございまして、15年度の税制改革に配偶者特別控除の原則廃止ということを盛り込んでいただいております。
それから年金でございますが、概要の3ページにまいりますと、ここで中間報告からかなり書き込んでございます。その際、従来は、世帯単位ではなくて、個人を単位とする制度への移行ということが言われてまいりましたが、個人単位化とは何ぞやということは、意外と深められていなかった面がございます。そこで、それをとらえ方として3通り、就業調整の問題、いわゆる103万円の壁や、130万円の壁の前で、労働時間や収入を抑えてしまうという問題の解消が個人単位化ではないか、2番目には、遺族年金によって生じている様々な問題を解決することが個人単位化ではないか、3番目は、年金給付の所得代替率を均等化することが個人単位化ではないかという検討をいたしまして、その結果として、所得分割を行えば、第3号被保険者に何らかの形で負担を求め、また、遺族年金における掛け捨て問題のかなりの部分を解消していくことができるというような展望を示しております。
ここで、給付の所得代替率の均等化ということが、場合によりまして、ちょっとお耳に慣れないことかもしれません。そこで冊子の後ろから3ページ、図-70ページを見ていただきますと、これは日本を含む諸国の年金制度比較の表でございます。図-70ページでは、国の表頭がないのですが、一番左側が日本の制度でございます。上から2番目コラムに世帯による所得代替率の差、試算の一例と掲げてございますが、日本は夫片稼ぎ世帯の場合には、年金給付の夫の賃金に対する代替率は52.5%、共稼ぎですから、これは2人の賃金に対する2人の年金の代替率は42.8%、男性単身では37.5%、女性単身では53.4%という試算の例がございます。なお、厚生労働省におかれましては、もう少し仮定を置いて4通りくらいの所得代替率の試算をなさっていらっしゃいます。この共稼ぎに比べて、片稼ぎの所得代替率は高いということを、それを均等化することが個人単位化ではないかというとらえ方もあると検討をいたしました。
そして、夫婦の間で所得を分割し、保険料を算定して、年金も分割をしていくという方法を取れば、掛け捨て問題と遺族年金の問題はかなり解決できるという展望を示しました。
それから、4ページ目にまいります。公的年金枠組み改革の議論というのもいたしまして、先ほどの資料の中に、簡単に年金の制度体系の絵がございますが、この中から「『スウェーデン』型」、それから「基礎年金税限定型」、これは、最近経営者団体が提言なさっているものでございます。3番目に、第3号は、第1号の方に統合してはどうかという3種類の提案を取り上げて、中立性の観点から評価をいたしました。
聞くところによりますと、12月5日の経済財政諮問会議におきまして、塩川財務大臣が提出された資料の中では、スウェーデン型の参照を求めていらっしゃるようでございます。スウェーデン型の場合には、最低保障は付きますが、所得比例に一本化してございます。これに対してアメリカや日本のシステムというのは、垂直的な所得再分配の要素を含んでおりまして、そういう意味ではアメリカや日本の年金制度はいわば社会主義的であり、スウェーデンの年金制度は業績主義的な年金制度であるということが、これらの型の検討からも出てくるところでございます。
以下については、既に申しました家族手当等の見直し、そして、働きに見合った処遇ということが概要にまとめてございます。
以上でございます。
内閣官房長官
ありがとうございました。
それでは、ただいまの御報告に関連して、坂口議員から御発言がございます。
坂口議員
私の方から年金につきまして、少し御報告を申し上げておきたいと思います。
今年1年かけまして、年金制度の見直しを行わせていただいて、来年の通常国会に新しい年金制度を出させていただきたいと思っておりまして、1年間、各種団体、国民の皆様方の御意見をお聞きをしたいと思っております。
大きく分けますと、2つございまして、1つは、年金制度の根幹に関わりますところを、現在の制度のままの延長線上でいくのか、そこにも先ほどスウェーデン方式などのお話も出ましたが、そうしたところに若干そこを書いていくのかという問題が一方でございます。
それに合わせまして、今、御報告がございました女性と年金の問題、それから、少子化対策の問題、これらの問題を年金制度とどう連結していくのか。女性の問題は根幹に関わってくるところが多いわけでございますが、その辺りのところが一番中心でございまして、今年1年かけてその辺りをやらせていただきたいと思っておりますので、御報告だけ申し上げたいと思います。
内閣官房長官
総理が所用によりまして、退席いたします。
内閣総理大臣
よろしくお願いいたします。

(内閣総理大臣退席)

内閣官房長官
それでは、ただいまの件で他に御意見ございますでしょうか。
片山議員
税制の御指摘がございましたが、私どもが担当しております地方税の個人住民税の均等割は、夫婦を1つの単位として、一体であるということで、現在は夫が均等割を払っている場合には、妻の方は所得があっても払っていないのです。所得割は払ってもらっているのです。均等割は払ってもらっておりませんので、大変良い指摘をいただきましたので、是非、これは払っていくように、政府税調でもそういう議論が多いものですから、是非考えたいと思います。ありがとうございました。
内閣官房長官
その他、いかがですか。
それでは、御意見等ございませんでしたら、進ませていただきます。影響調査専門調査会では、ただいまの御意見等も踏まえまして、引き続き検討を進めていただきたいと思っております。
次に、今後の進め方及び最近の男女共同参画社会の推進に関連する動きについて報告をしていただきます。
初めに、女性に対する暴力に関する専門調査会について島野会長からお願いいたします。
島野会長
本専門調査会は、配偶者暴力防止法が平成13年4月に成立したことから、この法律を円滑に施行するために必要となる事項について検討を行いました。平成14年4月以降は、夫、パートナーからの暴力以外のテーマ、具体的には性犯罪、売買春、セクシュアル・ハラスメント、ストーカー行為等についての検討を行っております。
なお、参考といたしまして、配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談件数等に関する資料をお付けしております。そちらを御覧ください。
平成14年4月から11月までの8か月間に、計2万4,020件、月平均約3,000件の相談が寄せられております。そのほとんど、99.6%が女性からの相談でございまして、年齢で見ますと、30代が最も多くなっております。
また、保護命令につきましては、平成13年10月13日から、平成14年11月のまでの間に計1,137件が発令されております。
私からは以上でございます。
内閣官房長官
ありがとうございました。
ただいま島野会長から、配偶者暴力防止法に基づいて相談業務等を行っている配偶者暴力支援センターについても御報告いただきましたが、配偶者暴力防止法が施行されてから、1年以上経過いたしましたので、法律の施行状況等についても、今後、調査検討をいただきたいと思っております。よろしゅうございますか。

(「異議なし」と声あり

それでは、女性に対する暴力に関する専門調査会では、配偶者暴力防止法の施行状況等についても、調査検討を進めていただきます。
続いて、先ほど総理からお話がありました男女共同参画社会の将来像についてでございます。
男女共同参画に関する問題につきまして、少子化の問題、家庭の在り方、世代間の意識の差、企業の意識など、様々な観点から多くの御意見をいただいておりますが、男女共同参画社会づくりを更に進めるとどのような社会になるか、将来像が見えてこないため不安を持つという人もいるのではないかと思います。更に、男女共同参画社会づくりを進めていくためには、どのような取組が重要であるか、あるいは男女共同参画社会が進むとどのような社会になるかなど、長期的な展望で考えていくことが必要であると考えます。
そこで、早速、本日この場で皆様で御議論をいただきたいと思いますが、その前に、これまでの男女共同参画会議の取組状況や、今後のスケジュールについて、事務局から説明願います。
坂東局長
それでは、今まで男女共同参画会議でどのような事項について御検討いただいたか、また、今後、特にこの2年間、どのような御検討をいただくかについて、資料4に基づきまして、簡単に説明させていただきます。
まず、今まで行っていただいた分野でございますが、平成12年12月に閣議決定されました男女共同参画基本計画では、11の重点目標を掲げております。それが左側に<1>から<11>までございます。それに沿いまして、男女共同参画会議の方では、先ほど御報告いただきました影響調査専門調査会ですとか、あるいは今、御検討をいただいております「女性のチャレンジ支援策」、あるいは平成13年6月に意見を決定していただきました「仕事と子育ての両立支援策」等について、御検討をいただいております。また、計画の推進の部分でございますが、「苦情処理及び人権侵害における被害者の救済に関するシステムの充実・強化」について、専門調査会の方から御意見をいただいております。
このほかにも、各省庁、内閣府等で施策を推進しておりますが、それは割愛させていただきます。
1枚めくっていただきまして、今回、新たに議員の任命を行っていただいたわけですが、現在のメンバーで今後2年間に、今までのペースでいきますと、8回程度、第16回まで会議を予定しております。
本日、影響調査専門調査会の御報告をいただきましたが、今後、「女性のチャレンジ支援策」、あるいは女性に対する暴力、苦情処理情報システムの検討、更に雇用システム等々について、各専門調査会の方から、検討結果を挙げていただきます。
同時に、今、総理の方から御指示のございました長期展望等々を検討いたしまして、次期基本計画の検討の材料にしたいと考えております。
簡単でございますが、以上でございます。
内閣官房長官
それでは、先ほど申しました将来像について御意見ございましたら、どうぞ御発言を願いたいと思います。
樋口議員
私は、つい先だって『自由と民主』にも書かせていただきましたが、男性も女性も画一化してしまうのが男女共同参画ではないかとか、あるいは女性が外に出ることによって、いろいろな弊害があるのではないかと言われますが、将来像について、抽象的に言えば、本当に象徴的に申し上げますと、私は「第九」の合唱部分だと思っております。
つまり、男と女は性別がありますし、出していく声も、個性の違いはもちろん、カウンター・テノールもあれば、カンウター・アルトがあって良いのですが、男性と女性が自分の精一杯の声を挙げていくと、あのような多種大量の楽器がどこからやってきても対応できる男女の混声合唱ができるわけです。男女共同参画社会というのは、少しも不安を持つような社会でも何でもなくて、抽象的に言えば、私は「第九」の合唱の世界だと思っております。むしろ今までの社会の方が人類の合唱ではなくて、場合によって男声の合唱であり、場合によっては女声の合唱であったので、将来像としては、イメージとしてはそのようなことを描いております。
大変具体的なことに話が進むようですが、発言の機会をいただきましたので、大澤会長の御報告の後に申し上げるべきだったのかもしませんが、私、昨年、一昨年くらい、NGO「高齢社会をよくする女性の会」として、ある財団から助成金をいただきまして、女性、特に、高齢者の住宅問題の調査に取り組みました。
また、女性と仕事の未来館におきましても、働く女性と住宅関連のイベントをいくつかいたしまして、私は高齢者が安心して老いることができ、あるいは子供を地域そろって見守っていく、もちろん、家庭の責任は最重要なのですが、地域全体で子育てに関わっていくという、地域全体の4世帯共住型のまちづくりというのはとても大事だということに気が付きました。意識の変革ばかりでなくて、経済活性化に向けてもまちづくりという視点に男女共同参画ということを取り入れていただきたいと思っておりますのが1つ。
これはますます焦点が小さくなるのですが、住宅調査をしておりまして、やはり一人暮らし高齢者の8割は女性ですし、女性が、特に都心に家を借りて住んでおりますと、契約更新ごとに住宅条件がどんどん悪くなって、劣悪な住宅条件のところに入っていくということがございます。それと、また飛躍するようですが、関連性があるのですが、防災というものと重ね合わせていきますと、阪神・淡路大震災のときなども、死者は女性の方が1,000人くらい多うございますし、防災上でも女性が災害弱者の立場にいるというこを含めまして、是非、防災上もまちづくり上も住宅建築上も、男女共同参画という視点を取り入れていただきたいと思っております。国土交通省で平成13年につくっていただいた「高齢者の居住の安定確保に関する法律」は大変ありがたいことだと思っております。女性、特に高齢女性の視点から、中央防災会議でもいろいろ御検討いただいているようですが、こちらの影響調査専門調査会の課題などにも入れていただきたいということが、小さな点ではまず具体的なお願いでございますし、是非、男女共同参画と住宅づくり、まちづくりという視点もこれからの検討の中に入れていただきたいと思っております。
以上です。
内閣官房長官
大変興味深い御提案ありがとうございました。
神田議員どうぞ。
神田議員
私は教育に関わっているものですから、教育と関係して、男女共同参画ということを考えてみますと、特に男、女というよりも、一人一人の人間が、その持っている実力というか、その実力もやや職業的実力に偏る傾向がありますが、本当は人間として豊かに生きる実力というふうに考えておりまして、そういうものを伸ばしていくことなのだと思っております。それと同時に、もう一つは、男女にかかわらず、社会づくりに参画していく、そういう力を伸ばす教育を行っていくことなのだと私はとらえているのです。
現状では、男とか女とかいう社会的な枠にとらわれて、それぞれ持っている実力を十分伸ばしていないと思うのです。そこにやはり施策が必要だと考えております。私は大学教育に関わっておりますから、特にこれから大学教育というのは大変重要になる。今も重要ですけれどもね。
というのは、大学への進学率が50%になろうとしています。今までと違って2人に1人が大学教育を受ける時代がもうすぐ来るわけです。社会全体としてそういう状況がだんだん広がってきます。そうすると、大学でどういう人間を育てるか、単に職業人の養成ではなくて、もう少し、正に実力を伸ばすような教育が必要だと思っているのです。
同時に、慣習などを変えていくときの教育の重要性というのは大変、大きなものがございますから、大学教育に対する見方も、変えていかなければならない。
つまり、社会人の育成、社会の中堅になって引っ張っていく層というのが大学教育の中で生まれてくるという観点で取り組む必要があると私は考えているのです。
山口議員
今日は片山総務大臣がいらっしゃるので、是非、申し上げたいと思います。前に御報告があったかもしれませんが、男女共同参画社会基本法ができてから3年8か月経ち、各地で男女共同参画に関する条例ができております。現在、40都道府県、98市区町村で制定されているということです。そこでは、女性たちも男性たちも大いに加わって、私たちの良い町をつくろうという勢いなのです。特に福岡県の福間町では町長の号令で、日本で一番良い条例をつくろうということで制定されたそうです。一方、どうも男女共同参画社会基本法に照らすと、これはいかがなものかという条例制定の動きもあるわけです。地方公共団体で条例をつくりますから、それは地方公共団体のそれぞれの特質があってつくることでありますが、どうも男女共同参画社会基本法の趣旨が生かされていないのではないかというところもあるのです。
先ほど総理が男女共同参画ということで、光と影が生じていると、影の部分を心配していらっしゃいましたが、私ども、その話を聞いて実はショックだったのです。今、経済もきついけれども、経済がきついと守りの姿勢になっていく。私たちは男女共同参画社会で光を見出そうとしている途中なのですが、心配が先に立って、共同参画に足を引っ張るという現象があります。
これは男女共同参画社会基本法の精神をもっと地方公共団体に知らせると同時に、地方分権時代だから、地域独自の条例をつくっても良いのですが、男女共同参画社会基本法の精神と違ったものをつくるのはいかがかと思うのです。
男女共同参画宣言都市というのは、随分あちこちで行っています。宣言都市になっているのなら、なぜ男女共同参画社会基本法に照らしたものをつくらないのか、本当に疑問なのですが、反する現象を心配しています。
今年は統一地方選挙がございます。直接、参画会議では政治参画における女性の国会や地方議会への進出ということは議論しておりませんが、男女共同参画白書には数値が出ています。大臣御承知のように、全地方公共団体の女性議員の進出率というのは、都道府県、市区町村全議員中、女性は6.8%です。40%の議会に女性議員がいないのです。これは男女共同参画から言ったら大変偏っていると思うので、もっと挑戦しなければならないと思います。
特に地方公共団体は財政が困難ですが、現実に住民たちが財政のことを知るとか、仕組みを知るとか、政治的教養を高めて進出すると、地域が活性化するので、地方選挙のキャンペーンは、単なるきれいな選挙、投票運動のみならずその前にもっと自分たちの住む街の自治の学習をすすめるキャンペーンを張る必要があると思います。
結局それは、まちづくりなのです。今日、扇大臣がいらっしゃいますが、国土交通省などのまちづくり、特に駅前だとか、シャッター通りとか、まちの開発に男女共同参画がフォーラムを開いて、とても良いアイディアが寄せられたということを担当職員から聞いたことがあります。
結局、地域の男女共同参画とは、まずまちづくりなのです。地方公共団体を活性化しなければならない。そういう意味では男女共同参画というのは、非常に大事だと思いますので、男女共同参画社会基本法の精神に照らした条例づくりに大臣の方々も手を貸していただきたいと思っているのです。決して逆行するようなことはあってはならないと思いますので、その点の御議論をまたお願いしたいと思います。
片山議員
女性の方は立候補が少ないのです。だから、是非そういうキャンペーンも検討してみます。
それから、条例はいろいろあります。千葉県なども大きな問題になっているようです。その辺りは我々も全部つかまえているわけではありませんが、よくいろいろ調べてみましょう。
内閣官房長官
それでは、福原議員から。
福原議員
一言、簡単な私のイメージを申し上げると、よその国のことだと言えばそれまでなのですが、ピーター・ドラッカーが自分の娘さんについて、自著の中で書いています。そのお嬢さんは、結婚して、マーチャント・バンクに入って、マネージャーになって、かなりな給料をもらって、良い家庭をつくって、子供を育てている。それなのに、木曜日の夜はコミュニティの教育委員会の財政委員会に1晩奉仕する。そういうことを女性がするようになるのはなぜだろうと、お父さんがびっくりしているわけです。それがアメリカなんだと。
日本も大体そういうコミュニティと家庭が両立するような社会になりつつあるのではないかというのが私の考えです。
林議員
私はこれからの将来像としては、働く時間をもう少し短くするということができれば、もっとゆとりを持った暮らし方だとか、家族的な責任の持ち方も変えていけると思っています。
例えば10時間を10人の人が働くよりも、6時間を20人で働くという方が労働力としても豊かになりますし、それぞれがもう少しゆとりを持った、まさにぬくもりが失われることのない、働いていてもぬくもりが失われることのない家庭や地域というものをつくることができると私は思っています。
現実にはそのようになかなかなっておらず、先ほどの総理のごあいさつの中で、大変、私も気になりしたが、光と影の両面があるということは事実だと思いますが、その影の原因を、まさに女性が社会参加をすることでそのようなことが起こっているという論調に取られますと、逆戻りと言いましょうか、回帰の方向に向かうような形でぬくもりを求めようとする。それであっては男女共同参画社会基本法の求めている姿に近づくことはできないだろうと私は思っています。
具体的に1つ申し上げますと、今日は坂口厚生労働大臣がいらっしゃいますが、労働基準法上の時間外労働の制限を年間360時間という法的根拠を持ったものに改正された。青天井からそうなったことは一歩大きな前進だったと思います。
ところが、昨年の4月に特別措置がなくなった後、150時間という時間外労働の制限に持っていく努力が、どのようになされたのか、あるいは今後、どのような方向でなされるのか、そこのところは明確にならないまま、今、推移しているのではないかと思います。
その辺りを法的な根拠で、働く時間の1つの制限を設けることによって、もう少し女性も男性も働きやすくなっていくと思いますし、まさに影と言われるのは、女性一人がその影の責任を負うのではなく、男女がその影をぬくもりに変えていくという方策として、その点から考え直す必要があるのではないかと思います。
同時に、今、働き方の多様性という名前で大変短い労働時間の人が出てきていることは良いことだと思いますが、多様性の名の下に、その人たちが税を払うこともできない程度の働き方になったり、あるいは社会保障、年金の掛金を負担する、あるいは資格もない程度の働き方になる。そういう人たちを今、既に3割近くもつくり出している。そういう形で取りあえずの企業の生き残りはできたとしても、そのような働き方をたくさんつくることで日本の将来に対する不安がたくさん生まれてくるというのでは、社会的な整備もできませんし、まさに、ぬくもりも本当にそこでは生まれるはずもないと思います。そういう観点からやはり働き方、働く時間、そして将来への安心と言いましょうか、労働者保護、多様な働き方をしても、保護を失われない将来への安心が得られるような法整備というものを真剣に考えなければいけない。大澤先生の先ほどの影響調査専門調査会の報告というのは、そういうところを今、目指そうとしている報告であったと私は思っております。
岩男会長
先ほどの総理のお話を伺っていて私、思い出したことがあります。それは、国連特別総会「女性2000年会議」で、私が政府代表団首席代表として行ったときに、私どもが先進国と考えているイギリスとカナダの代表から、「日本は良いですね。」と言われたのです。その理由は、「男女共同参画社会を目指し、男女を視野に入れて施策を進めている。自分たちは女性省をつくるというように、とにかく女性にフォーカスしてきたために、今、行き詰まっている。」というお話がございました。
私は先ほどの総理のお話を伺いながら、やはり私たちは、男女共同参画社会基本法成立以来、いろいろな面で不十分であったと感じました。その1つは、男女共同参画は女性だけのためであると、このように誤解されるようなことをしてきたのではないか。だから、やはり男性が、男女共同参画社会の実現はすべての人のために良いと考え、男性が一緒に推進したいと思うような説明が不十分であった。つまり、男性の視点に目を置いたときに、一体どのように私たちが進めようとしていることが見えるのだろうかということに対する配慮が少なかったのかと。今、私が会長をしております基本問題専門調査会は、「女性のチャレンジ支援策」を検討しておりますが、私は、当面は女性支援でありますが、やはり本当は男女を常に視野に入れて考えていかなければならないのではないかというのが1つなのです。
それから、少子化のことですが、これもやはり影の部分といわれるとすればそれは、誤解に基づくところがあるように思うのです。と申しますのは、私が去年行いました調査でも、働いている母親の方が専業主婦のお母さんよりも子育てを楽しんでいる割合が多くて、実際に産んでいる子供の数も多く、これから産もうと考えている子供の数も多いというデータが得られました。要するに、そういう事実に基づいた情報をもっと発信をして安心をしていただくということにも努めなければいけないだろうと思いました。
併せてどうも私たちが仕事と子育ての両立支援を進めようとするときに、母親の視点が表に出てしまって、子供の視点をなおざりにしていると誤解される部分がある。それが不安感の元になっているのではないかと思いますので、そういうことも含めて努力していく必要があるように思います。
内閣官房長官
ありがとうございました。いかがですか。
神田議員
私、参画してどういう社会になるかということについては、それほど確定したものが出ていないのだと思うのです。むしろ、参画する機会が十分開かれていて、参画できるような状況がつくられて、しかも、参画する力がある。その中で皆が話し合いながら進めていくということが、私は方向なのだと思っているのです。そのときに基本になるのが、一人一人を尊重するということなのだと、ごく自然な、当然のことなのだと私は考えております。
住田議員
私、昨年度行われた「国民生活選好度調査」で家族観について伝統重視か多様性重視かについて見ると、男性では40代、女性では50代で、伝統重視から多様性重視という形で逆転してきておりまして、日本全体では今は伝統重視が若干多いのですが、多様性重視はこれからの若い方から、当然の趨勢になってくる。そうすると、ここにいるのは恐らく50代以上だと思いますので、私たちが考えている以上に、若い方の意識というは変わってきていると思うのです。だから男女共同参画も私たちが心配するほどには、そういう問題ではなくて、もっと自由に、自然に受け止めている世代が今、続いてきているはずだと思うのです。
ただ、その中で心配なのは、野放図な自由とか、個性も自律性もなく、ただ、今までのものに依存してしまうような、ある意味では未熟な大人が増えてきてしまっている。その萌芽として、犯罪とか離婚の増加とか、そういう現象面に数字として出てきていると思います。そういうことをしっかりと見据えていくことが影の部分についての対応策ではないかなと考えております。
内閣官房長官
ありがとうございました。扇議員、よろしゅうございますか。
扇議員
申し上げることはいろいろありますが、まちづくりもその他も、いろいろと取り組んでおります。
それから、2世帯、あるいは3世帯同居も、今まで550万が3,500万という異例なことが国会で、税制で通過しようとしております。2世帯同居、3世帯同居で、あるいは今の少なくとも第2次ベビーブーマーの人たちが1,000万人、これからマイホームを持ちたいと思っているのですが、頭金がないのです。私はそういう意味では、今度の税制が今国会で通れば、かなり皆さん方の御要望にかなうような世帯構成ができるのではないかということが第1点。
それから、もう一つ申し上げれば、少なくとも男女共同参画社会というのは、今、岩男会長がおっしゃったように、原点は私は男性の意識改革だと思っています。女性だけで集まって女性解放だとか、男女共同参画だと言うのは間違いであって、いかに男性の意識を変えていくかということが男女共同参画の原点であるということを私は絶えず言っております。女性だけで集まって話すことではないということでございます。
坂口議員
林議員から先ほど労働時間のお話が出ましたが、私もそう思っております。これから日本、いろいろなことをやっていかなければならないわけですが、労働生産性も高めていかなければならないわけです。その場合に、やはり労働時間の短縮とセットでやっていく必要があると私は思っております。
それから、三六協定なり何なりありまして、労働時間も一応やっていただいているのですが、それが現実問題としては守られていないのです。今、労働組合の皆さん方、連合の皆さん方にも、是非、つくったら、それを守るようにひとつ御努力くださいと、我々もバックアップしますと申し上げているわけでして、一生懸命我々もそこはやりたいと思っております。
内閣官房長官
ほかによろしゅうございますか。
それでは、大変ありがとうございました。いろいろ有益な御意見が出まして、この御意見を事務局で整理検討いたしまして、必要に応じてまた検討を進めたいと思います。
続きまして、事務局から説明がございます。
事務局
お手元の資料5、国の審議会等における女性の参画状況調べについて、簡単に御報告をいたします。
国の審議会等の女性委員は、平成17年度末までのできるだけ早い時期に、国際的な目標である30%を達成することを目標として、各省庁でも御努力をいただいておりますが、昨年、9月30日現在の女性委員の割合は、25.0%となっておりまして、一昨年9月の調査に比べまして、0.3ポイントの増加となっております。今後とも早期の実現に向けまして、各省庁の御理解、御協力をお願いしたいと思います。
内閣官房長官
資料6は、厚生労働省から配布をされておりますので、御参考にしてください。
その他、皆様方から御説明、御質問等ございましたら、どうぞ御発言ください。
特にございませんでしたら、大体以上でございます。どうも御苦労様でございました。 次に、既に皆様に御確認いただいております資料7の前回の会議議事録、また、本日の会議資料は本会議終了後、公開することでよろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

内閣官房長官
そのようにさせていただきます。
それでは、本日の議事要旨は従来どおり発言者の確認を経た上で、発言者名を明記して後日公表いたしますので、出席議員におかれましては、それまでの間は自らの発言を除き、対外的な公表は慎重にお願いいたします。
次回の会議につきましては、別途御連絡を申し上げます。
本日は本当にありがとうございました。

(以上)