第6章 財政的整備

345.
女性の地位向上のための財政的及び人的資源は概して不十分であった。このことが今日に至る「婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略」実施の遅滞の一因であった。これまでの国連サミット及び諸会議でなされた関連の約束を含めて,行動綱領の完全かつ効果的な実施には,人的及び財政的資源を女性のエンパワーメントのために利用できるようにするための,政治的な関与が必要であろう。このためには,政策及び計画に関する予算の決定にジェンダーの視点を組み入れるとともに,男女の平等を確保するための特定の計画に十分な資金を供給することが求められよう。行動綱領を実施するためには,資金があらゆる部門にまたがった,あらゆる供給源から認識され,動員されることが必要である。計画内部及び計画相互における,政策の再策定と資源の再配分が必要かもしれないが,政策の変更が必ずしも財政的な意味を持たない場合もあり得る。革新的な資金供給源を含め,公共・民間双方からの追加資金の動員もまた,必要かもしれない。

A 国内レベル

346.
行動綱領の戦略目標を実施する主な責任は,政府にある。これらの目標を達成するために,政府は,女性が公共部門の支出から利益を受けている実状を体系的に見直し,生産能力の増強及び社会的ニーズへの対応という両目的の公共支出へのアクセスの平等を確保するように予算を調整し,かつ,他の国連サミット及び会議でなされたジェンダー関連の公約を実現するために努力すべきである。行動綱領を成功裏に実施する国内戦略を開発するために,政府は,ジェンダーに関する影響分析に着手するための資源を含む,十分な資源を配分すべきである。政府はまた,非政府機関,民間部門及びその他の機関に対し,追加資源の動員を奨励すべきである。
347.
女性の地位向上のための国内本部機構,また適当な場合,行動綱領の実施及び監視に寄与できるすべての機関に対し,十分な資源が配分されるべきである。
348.
女性の地位向上のための国内本部機構がまだない場合,又は常置機関として設置されていない場合は,政府は,そのような機構のために十分かつ継続的な資源が利用できるように努力すべきである。
349.
政府は行動綱領の実施を促進するために,過度な軍事費並びに武器製造及び獲得のための過度な投資を,国家安全保障と両立する範囲内で,適当な場合,削減すべきである。
350.
非政府機関,民間部門その他の市民社会の行為者は,行動綱領実施のために必要な資源を配分することを考慮するよう奨励されるべきである。非政府機関,特に女性団体及び女性のネットワーク,フェミニスト団体,民間部門その他の市民社会の行為者がこの目的に向けて寄与できるように,政府は彼らによる資源調達に対して支援的な環境を作るべきである。この点における非政府機関の能力が,強化され,高められるべきである。

B 地域レベル

351.
地域開発銀行,地域企業団体その他の地域機関は,貸付その他の各自の事業において行動綱領の実施に寄与するとともに,この目的のために資源の調達を助けるよう要請されるべきである。これらの機関はまた,その政策及び資金提供という自らの属性において,行動綱領を考慮することを奨励されるべきである。
352.
小地域及び地域機関並びに国連地域委員会は,適当な場合,かつ既存の権限の範囲内で,行動綱領実施のための基金の動員を支援すべきである。

C 国際レベル

353.
開発途上国,特にアフリカ及び後発開発途上国における行動綱領の実施のために,十分な財政資源が国際レベルにおいて提供されるべきである。行動綱領を実施する開発途上国の国家能力を強化するためには,先進国の国民総生産の0.7パーセントを全体的な政府開発援助にという合意目標のできるだけ早い実現に向けた努力と,行動綱領実施のための活動への割り当てを増加することが必要だろう。更に,開発協力に携わる国々は,ジェンダー・アプローチを組み入れることを通じて援助の質と有効性を改善するために,自国の援助計画に対する厳密な分析を行うべきである。
354.
世界銀行,国際通貨基金,国際農業開発基金及び地域開発銀行を含む,国際金融機関は各自の贈与及び貸付を綿密に調べ,融資及び贈与を途上国,特にアフリカ及び後発開発途上国における行動綱領の実施計画に充てるよう要請されるべきである。
355.
国連システムは,開発途上国,特にアフリカ及び後発開発途上国に対し,行動綱領の実施について,技術援助その他の形の援助を提供すべきである。
356.
経済が移行期にある国々の行動綱領の実施には,継続的な国際協力及び援助が必要となろう。専門機関及び部門機関を含む国連システムの諸機関は,女性の地位向上のための政策及び計画の策定及び実施におけるそれらの国々の取組みを促進すべきである。この目的のために,国際通貨基金及び世界銀行に対し,それらの取組みへの援助を要請すべきである。
357.
行動綱領の目標実現を促進するために,債務の管理及び削減に関する,「世界社会開発サミット」並びにその他の国連世界サミット及び会議の結果が実施されるべきである。
358.
政府開発援助と開発途上国の国家予算の平均して各20パーセントづつを基本的な社会計画に向けるという相互の約束に合意したパートナーである当事先進国及び開発途上国は,行動綱領の実施を促進するために,ジェンダーの視点を考慮すべきである。
359.
国連システムの開発基金及び開発計画は,その計画及び事業が行動綱領の実施及び次のプログラミング・サイクルにどの程度向けられているかを直ちに分析し,その技術援助及び資金提供事業において,女性と男性の不均衡の解消に向ける資源を十分に確保すべきである。
360.
国連の諸基金,計画及び専門機関,特にUNIFEM及びINSTRAWが女性のエンパワーメントの促進において,したがって行動綱領の実施において,各自の権限内で,中でも女性の地位向上のための研究,訓練及び情報活動,並びに開発努力にジェンダーの視点を組み入れるための技術・財政援助に果たす特別の役割を認識し,国際社会から提供される資源を十分なものとすべきであり,それが十分な水準に維持されるべきである。
361.
女性の地位向上を促進するためのその取組みにおける国連システムの能率及び有効性を改善し,行動綱領の目標達成を促進するその能力を強化するためには,国連システムのさまざまな部分,特に国連事務局の婦人の地位向上部,並びに女性の地位向上を促進する明確な権限を持つその他の部局及び補助機関を一新し,改革し,再活性化する必要がある。この点において,国連システム内の関係管理機関は行動綱領の効果的な実施に特別な考慮を加え,この目的に向けて最も効果的かつ能率的な資金の利用を実現するために,自らの政策,計画,予算及び事業を見直すよう奨励される。行動綱領の実施のために,国連の通常予算内からの追加的資源の配分も必要であろう。
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